結論
ラスベガス・サンズ(LVS)は、2022 年に本拠のラスベガスの物件を売り、今はマカオ(子会社サンズ・チャイナ経由で約 7 割を保有。ベネチアン・ロンドナー・パリジャンなど)とシンガポール(マリーナ・ベイ・サンズ。以下 MBS。全額)の 2 地域だけで稼ぐ統合型リゾートの会社である。2025 年は売上 約 130 億ドル、調整後物件 EBITDA 約 52 億ドル(マカオ 約 23 億、MBS 約 29 億)、純利益 約 16 億ドル。MBS は売上の 4 割強で EBITDA の 5.6 割を稼ぎ、利益率は約 51% とマカオ(約 31%)より高い。
2026 年 1〜6 月の純利益は 9.1 億ドルと前年を上回ったが、4〜6 月はマカオの VIP 席の勝ち越し率(ホールド)が極端に低く、マカオの EBITDA は 4.3 億ドル(前年 5.7 億ドル)に落ちた(ホールドの影響は約 0.9 億ドル)。賭け金の量はどの層でも増え、VIP 席の量では会社の言うシェアが 4 位から 1 位(26%)に上がった。ただしマカオ市場は 9 月に 4 か月連続の前年割れで、株は年初の高値から大きく下げている。
バリュー投資の観点では、免許(マカオは 2032 年末まで、シンガポールは 2 軒だけ)が堀で、わかりやすい事業である。一方で自社株買いを続けた結果、自己資本はほぼゼロで、純負債は EBITDA の約 2.3 倍。中立の 10 年では EBITDA 82 億ドル(今の 1.6 倍)、純利益 24 億ドル、倍率は資本コスト 9.25%(基本 8.0% + quality +1.25%)の利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k)。上限 16.8 倍)の 8 割で約 13.4 倍、時価総額は約 325 億ドル(今の約 1.3 倍)と見る。k − g は 5 ポイント強しかなく、マカオの免税が続く前提とともに、結論の幅として読む。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、カジノ・リゾートは「免許が堀、現金が出るが、景気と規制と借金に弱い」事業である。10 年後も人は旅行で遊び、MBS のように代わりのない物件は残るだろう。株主のものになる利益は、純利益 約 16 億ドルに減価償却を足し、維持の設備投資(年 6〜7 億ドル)を引くと 20 億ドル台で、純利益より大きい。ただし 2026〜30 年は MBS の拡張に約 50 億ドルを使い、その利益が出るのは 2031 年以降で、新しい資本の回収は先になる。
堀の質は 2 つで違う。MBS は 2 軒の寡占で利益率が 5 割、堀は広がる。マカオは 6 社で競い、投下資本の回収に免許の約束(非ゲーミング投資)と販促のコストがかかり、利益率は 3 割どまりで堀は一定。経営は資本配分を自社株買いに寄せ、自己資本がほぼゼロになるまで株を消した。安く買えている時は有利だが、借金で買うと谷の年に身動きが取れなくなる。
値段との関係:利益ベースの倍率は、g 4%・ROIC から直した事業の ROE 約 58%・k 9.25% で上限 16.8 倍、その 8 割で PER 約 13.4 倍(10 年目の利益)。今の PER は GAAP で約 15 倍。中立の 10 年で時価総額は約 325 億ドル、還元の合計 293 億ドルを足して、年率では約 10% になり、資本コスト 9.25% をわずかに上回る。ただし k − g は 5 ポイント強しかなく、マカオの免税が切れ、免許の更新が厳しくなれば、結論は大きく下がる。安全域は、悲観でも還元と時価総額の合計が今の約 8 割ある点と、筋書きの確率の厚みにある。
何で稼ぐ会社か
収益の源は、カジノのゲーミング収入(VIP 席・プレミアム・マス席のテーブルとスロット)と、ホテル客室・商業施設・会議・エンターテインメントなどの非ゲーミング収入である。売上のおよそ 6 割がゲーミング、4 割が非ゲーミング(推定)。
マカオ(2025 年の売上 74.4 億ドル、調整後 EBITDA 約 23 億ドル、利益率 約 31%)は、コタイ地区のベネチアン、ロンドナー、パリジャンと、プラザ/フォーシーズンズ、半島側のサンズ・マカオからなる。ロンドナーは改装と再開業で 2026 年 1〜6 月の EBITDA が 4.15 億ドル(前年 3.58 億ドル)に増えた。マカオのゲーミング収入には約 35% の特別税がかかるが、ゲーミング事業の法人税は免除されている。MBS(2025 年の売上 約 57 億ドル、EBITDA 約 29 億ドル、利益率 約 51%)は、シンガポールで 2 軒しかない統合型リゾートの 1 つで、2025 年 10〜12 月の EBITDA 8.06 億ドルは四半期の過去最高。税率は 17%。2026 年 1〜6 月は売上 28.7 億ドル、EBITDA 14.8 億ドルと前年を上回った。
勝ち越し率(ホールド)の振れが短期の利益を動かす。VIP 席のチップの期待勝率はマカオ 3.3%、MBS 約 4.2% だが、2026 年 4〜6 月のベネチアンは 0.62%(前年 3.57%)にとどまり、マカオの EBITDA を約 0.9 億ドル押し下げた。費用は人件費・賭博税・減価償却が中心で、MBS の拡張(約 80 億ドル、2031 年 1 月開業予定)と、マカオ免許の投資の約束(2032 年末までに約 44 億ドル)が設備投資を決める。サイトの数量 × 価格では、各地域を「市場のゲーミング収入(実質)× 自社の取り分」を数量、物価の上昇を価格(rev_factor は非ゲーミングを含めた売上への換算)として置いた。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。第 1 は免許:マカオは 6 社の免許が 2032 年末まで、シンガポールは MBS とリゾーツ・ワールド・セントーサの 2 軒だけで、新規の参入が難しい。第 2 は規模と立地:コタイの 3 つの大型リゾートの集客力と、屋上のプールで知られる MBS という象徴的な物件。第 3 は VIP・プレミアム客の囲い込みで、2026 年 4〜6 月にマカオの VIP 席の量のシェアは 4 位から 1 位(26%)になったと会社は言う。
資本効率は高い。税引き後の営業利益 ÷(自己資本+純負債)は 2025 年に約 18%、帳簿の自己資本利益率は自社株買いで自己資本が 16 億ドルまで縮み 100% を超える(式の ROE は ROIC から直した)。稼ぎの大半が現金に変わり、2023 年第 4 四半期以降に 60 億ドル超(発行済みの 16%)を自社株買いに回した。
弱みは 5 つ。(1)中国の富裕層と景気、資本規制に収益が結びつく。(2)ホールドの振れ。(3)借金:総負債 151 億ドル、現金 34 億ドルで、MBS の拡張費で純負債は増える。(4)許認可と税:マカオの免許更新(2032 年末)、配当にかかる税の合意が 2027 年末までで延長は保証がない。(5)創業者の家族が大株主で、会長兼 CEO の交代も 2026 年 3 月に予定されたと報じられ(実施は未確認)、経営の連続性に不確実さが残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
マカオのゲーミング収入は 2019 年の約 3,830 億パタカから、2025 年に約 2,470 億パタカ(推定、前年比 約 +9%)まで戻った。2026 年は 4〜6 月が横ばい〜+4%、7 月は −8.4%(ワールドカップと資本規制)、9 月は 180.6 億パタカ(前年比 −1.2%)で今年の最低を付け、4 か月連続の前年割れ。1〜9 月の累計は前年比 +3% 前後。供給は 6 免許(サンズ・チャイナ、ギャラクシー、ウィン、MGM チャイナ、メルコ、SJM)で、新規の大型投資は免許の約束(非ゲーミング)に沿って 2032 年末まで続く。
競争の形は、マス(一般客)と VIP の取り合いで、利益率は営業ベースでサンズが約 24%(EBITDA ベースでは約 40%)、ウィン 16〜20%、MGM 7〜12%(デジタルを含む)と、LVS の高さが目立つ。ただしこれはシンガポールの寄与が大きい。サンズ・チャイナは VIP 席の量でシェアを取りに行っており、その分ホールドの振れが利益に直接出る。
シンガポールは 2 軒の寡占で、MBS が約 7 割(推定)を占める。2026 年 4〜6 月は MBS の EBITDA が 6.89 億ドル(前年 7.68 億ドル)と減ったが、ホールドの影響(−0.37 億ドル)とワールドカップで 6 月の高額客が流れた分で、マスの売上は +5% だった。2031 年 1 月に開業予定の拡張(570 室超の新棟、1.5 万席のアリーナ、拡張されたカジノ)が来場者と利益を押し上げる見込み。
競合と照らすと、LVS がうまくいけば、マカオはシェア 21.5%・EBITDA 利益率 36% で EBITDA が 10 年後に 56 億ドル、MBS は 55 億ドルと合計 111 億ドル規模になる(中立は合計 82 億ドル)。競合のギャラクシー・メルコが VIP とプレミアムの販促で単価を削り、中国の景気が落ちれば、マカオの EBITDA は 20 億ドル前後で今を下回る。長期の変数は中国の経済、資本規制、日本の IR(大阪)などアジアの新規供給、MBS の免許更新と税。
資本政策と M&A
還元は厚い。2026 年の配当は年 8 億ドル弱(四半期ごと。1〜6 月は 4.0 億ドル)、自社株買いは 2023 年第 4 四半期以降で約 1.24 億株(発行済みの 16.3%)・60.3 億ドル、2026 年 4〜6 月だけで 7.9 億ドル。7 月に残りの枠を 60 億ドル(2029 年 7 月まで)に増やした。自社株買いの平均の取得額は今の株価より高く、株価が下がった今は同じ金額でより多くの株を消せる一方、借金で買う形になると利益の振れを大きくする。
借金は 2026 年 6 月末で総負債 151 億ドル、現金 34 億ドル、平均の借入コスト 4.6%(これから借り換えで 5.75% 前後へ上がる)。未使用の借入枠は各社のリボルバーで 43 億ドル、MBS 拡張の専用ローンで 47 億ドル。ラスベガスの売却の際の売り手融資 12.6 億ドルは 2026 年 5 月に全額返済された。
MBS の拡張は総額 約 80 億ドル(金融費用・土地代込み)、6 月末で 約 30 億ドルを支出済みで、残りの約 50 億ドルが 2026〜30 年にかかる。マカオは免許の約束で 2032 年末までに約 44 億ドル(うち非ゲーミング 約 41 億ドル)を投じる。M&A は計画になく、創業者の家族が大株主なので TOB の可能性は小さい。株式報酬は小さく、payout_oku は配当と自社株買いから株式報酬の分(年 0.7 億ドル)を引いた正味で、増資は想定しない(谷の筋書きでは自社株買いを止めて借金を抑える)。
2026 年に決算期末後すでに実行した自社株買い 15.4 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元には数えず、自己資本の起点(0.5 億ドル)からも外した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ラスベガス・サンズは、アジアで最も代えのきかない 2 つの物件を持つ。MBS は 2025 年 10〜12 月に四半期の過去最高の EBITDA 8.06 億ドル(利益率 50%)を出し、2031 年 1 月に 570 室超の新棟とアリーナを足して来場者と客室を増やす。マカオでは VIP 席の量のシェアが 4 位から 1 位(26%)になり、ロンドナーの改装で 1〜6 月の EBITDA が 4.15 億ドル(前年 3.58 億ドル)に増えた。会社の長期目標は、マカオで四半期 EBITDA 7 億ドル(年 28 億ドル)で、2025 年の 23 億ドルから約 2 割上がる。
2026 年 4〜6 月の悪化は、ベネチアンの VIP 勝率が 0.62%(期待 3.3%)だったという偶然の要素が大きく、ホールドを期待値に戻すだけでマカオの EBITDA は 0.9 億ドル増える。賭け金の量はどの層でも伸びた。
資本配分は、60 億ドルの自社株買いで発行済みの 16% を消し、7 月に枠をさらに 60 億ドル積み増した。株価が下がるほど同じ金額で多くの株を消せる。純負債は EBITDA の約 2.3 倍と、2008〜09 年の危機の時より軽く、MBS の拡張の資金は専用ローンで手当て済みで、完成後は借金を減らせる。今の PER 15 倍は、マカオの 4 か月の前年割れを織り込みすぎている。
慎重な見方
まず、マカオは中国の富裕層と景気、資本規制に収益が結びつき、市場は 2019 年の水準(3,830 億パタカ)に戻っていない。2026 年は 7 月が −8.4%、9 月も −1.2%(今年の最低)で 4 か月連続の前年割れ。台数は増えても、競合のギャラクシー・メルコが VIP・プレミアムで販促を増やせば、LVS がシェアを取った分は単価と利益率で削られる。マカオの EBITDA 利益率は 2026 年 1〜6 月で 27%(2025 年 31%)に下がっており、「ホールドのせい」だけでは説明できない。
次に、利益の質:マカオのゲーミング事業の法人税は免除、シンガポールは 17% で、実効税率は 19% と低いが、免除と、サンズ・チャイナの配当にかかる税の合意は 2027 年末までで延長の保証がない。切れると利益が 1 割近く減る。免許は 2032 年末までで、更新の条件が厳しくなる可能性がある。
さらに、借金と資本配分:自己資本は 5.8 億ドルしかなく、総負債 151 億ドル。MBS の拡張費 約 80 億ドルのうち約 50 億ドルがこれから出ていく。自社株買いの平均の取得額は今の株価より高く、借金で買えば谷の年に動けなくなる。2008〜09 年は株価 −98% だった。今の PER 15 倍は、高い振れと許認可のリスクを織り込んだ値段にすぎない。
どちらに重みを置いたか
MBS の寡占の強さと、自社株買いによる還元の厚みは事実で、中立の 10 年は EBITDA 82 億ドル(今の 1.6 倍)・純利益 24 億ドル・PER 約 13.4 倍(資本コスト 9.25% の利益ベースの上限 16.8 倍の 8 割)に置いた。一方で、マカオの利益率の低下(27%)、免税の期限、免許の更新、借金は確率に効かせ、悲観を 12% と厚めに置いた。10 年の確率は楽観 7%・やや楽観 20%・中立 38%・やや悲観 23%・悲観 12%。景気連動と免許への依存は quality で資本コストに入れ(+1.25%)、k − g が小さい点は結論の幅として読む。総合の差は +25% でやや割安。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 46.23 ドル302 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 41.64 ドル272 億ドル)。 今の値に割り戻すと 45.84 ドル300 億ドル、今との差 +25.5%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 9.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 100.32 ドル656 億ドル | 65.54 ドル429 億ドル | +354.0% | +16.3% | 11.61 ドル76 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 69.65 ドル456 億ドル | 52.84 ドル346 億ドル | +235.3% | +12.9% | 24.50 ドル160 億ドル |
| 中立 | 38% | 49.72 ドル325 億ドル | 44.74 ドル293 億ドル | +158.6% | +10.0% | 35.90 ドル235 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 23.12 ドル151 億ドル | 30.83 ドル202 億ドル | +47.7% | +4.0% | 12.41 ドル81 億ドル |
| 悲観 | 12% | 8.85 ドル58 億ドル | 19.97 ドル131 億ドル | −21.1% | −2.3% | 3.46 ドル23 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 46.23 ドル302 億ドル | 41.64 ドル272 億ドル | +140.5% | +9.2% | 87.87 ドル575 億ドル |
今の株価時価総額 36.53 ドル239 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:マカオが 2019 年を超え、MBS の拡張が当たる 利益 42 億ドル · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 100.32 ドル656 億ドル
2035 年のマカオ市場のゲーミング収入は 2025 年比で実質 1.35 倍、サンズの取り分は 21.5%(今 20%)。MBS は市場が実質 1.30 倍、取り分 71.5%(今 70%)。価格は物価指数で 1.45 倍。売上はマカオ 156.6 億ドル・MBS 109.2 億ドル、EBITDA は 56.4(利益率 36%)と 54.6(50%)で合計 110.9 億ドル(今の 2.12 倍)、営業利益 77.9 億ドル、純利益 41.5 億ドル(純負債 255 億ドル、純利息 19.0 億ドル)。還元は 10 年で 429 億ドル。
マカオは VIP 席の量のシェアを上げ続け、プレミアムマスと非ゲーミングで 2019 年を超える。MBS の新棟(570 室超)とアリーナが来場者と客室単価を押し上げ、利益率 50% を保つ。ロンドナーなどコタイの改装が一巡し、マカオの利益率が 36% へ上がる。ライバルのギャラクシー・メルコは取り分を譲る形。純負債は EBITDA の 2.3 倍を保ち、自社株買いで発行済み株をさらに減らす。倍率は正当化 PER 17.6 倍の 9.0 割にあたる 15.8 倍に置いた。
- マカオ(ベネチアン・ロンドナー・パリジャン・プラザ/フォーシーズンズ・サンズ・マカオ):数量 89.7(マカオ市場のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× サンズの取り分)× 価格 1.45(物価指数(2025 年 = 1.00。名目で上がる分)。rev_factor は非ゲーミングと営業収入を含めた売上への換算)→ 売上 157 億ドル・営業利益 56 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
- シンガポール(マリーナ・ベイ・サンズ):数量 44.6(シンガポール市場(2 軒)のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× MBS の取り分)× 価格 1.45(物価指数(2025 年 = 1.00)。rev_factor は非ゲーミングを含めた売上への換算)→ 売上 109 億ドル・営業利益 55 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
倍率:上限の正当化 PER 17.6 倍に対し、15.8 倍(9.0 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(楽観 +1.0 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 51.3%(k 9.25% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 93.4%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 49%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 42 億ドル × 15.8 倍で 656 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:マカオが中国の景気回復で 2019 年の名目水準を超え、MBS の拡張が目論見どおり利益を増やす強い 10 年。ただし免許・免税・景気の 3 つの不確実さがあり、全部が上に出る確率は小さく 7%。
やや楽観 20% やや楽観:マカオの市場は実質で年 +1.7%、MBS の拡張が利益を足す 利益 31 億ドル · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 69.65 ドル456 億ドル
2035 年のマカオ市場のゲーミング収入は 2025 年比で実質 1.18 倍、サンズの取り分は 21.0%(今 20%)。MBS は市場が実質 1.20 倍、取り分 70.5%(今 70%)。価格は物価指数で 1.43 倍。売上はマカオ 131.8 億ドル・MBS 98.0 億ドル、EBITDA は 44.2(利益率 34%)と 49.0(50%)で合計 93.2 億ドル(今の 1.78 倍)、営業利益 61.2 億ドル、純利益 31.2 億ドル(純負債 219 億ドル、純利息 16.6 億ドル)。還元は 10 年で 346 億ドル。
マカオは会社の目標(四半期 EBITDA 7 億ドル)を 2030 年代に超え、利益率は 33〜34% へ。MBS の拡張が 2031 年から利益を足し、利益率は 50% を保つ。VIP とマスの両方でシェアを守り、免税と免許は続く。倍率は正当化 PER 17.2 倍の 8.5 割にあたる 14.6 倍に置いた。
- マカオ(ベネチアン・ロンドナー・パリジャン・プラザ/フォーシーズンズ・サンズ・マカオ):数量 76.6(マカオ市場のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× サンズの取り分)× 価格 1.43(物価指数(2025 年 = 1.00。名目で上がる分)。rev_factor は非ゲーミングと営業収入を含めた売上への換算)→ 売上 132 億ドル・営業利益 44 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
- シンガポール(マリーナ・ベイ・サンズ):数量 40.6(シンガポール市場(2 軒)のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× MBS の取り分)× 価格 1.43(物価指数(2025 年 = 1.00)。rev_factor は非ゲーミングを含めた売上への換算)→ 売上 98 億ドル・営業利益 49 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
倍率:上限の正当化 PER 17.2 倍に対し、14.6 倍(8.5 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(やや楽観 +0.5 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 40.8%(k 9.25% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 72.3%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 38%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 31 億ドル × 14.6 倍で 456 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:会社の長期目標(マカオの四半期 EBITDA 7 億ドル)に近い形に市場の回復が加わる筋書き。20%。
中立 38% 中立:マカオは市場の伸びが名目で年 +4%、MBS は拡張で取り分が上がる 利益 24 億ドル · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 49.72 ドル325 億ドル
2035 年のマカオ市場のゲーミング収入は 2025 年比で実質 1.05 倍、サンズの取り分は 21.0%(今 20%)。MBS は市場が実質 1.15 倍、取り分 70.0%(今 70%)。価格は物価指数で 1.41 倍。売上はマカオ 115.7 億ドル・MBS 91.9 億ドル、EBITDA は 37.0(利益率 32%)と 45.1(49%)で合計 82.1 億ドル(今の 1.57 倍)、営業利益 50.1 億ドル、純利益 24.2 億ドル(純負債 197 億ドル、純利息 15.2 億ドル)。還元は 10 年で 293 億ドル。
マカオは 2026 年のホールドと販促の影響を除いた利益率 32% に戻り(2025 年 31%)、会社の目標をおよそ達成。MBS は取り分を 70% に保ち(新棟の来場増は市場全体の伸びに入れた)、新しい客室・アリーナの減価償却と人件費で利益率は 49% へわずかに下がる。免税と免許は続き、景気の谷が 1 回来るのを平均に含める。2025 年比の純利益は 1.5 倍で、EBITDA の伸びより低い(利払いが増える)。倍率は正当化 PER 16.8 倍の 8.0 割にあたる 13.4 倍に置いた。
- マカオ(ベネチアン・ロンドナー・パリジャン・プラザ/フォーシーズンズ・サンズ・マカオ):数量 68.1(マカオ市場のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× サンズの取り分)× 価格 1.41(物価指数(2025 年 = 1.00。名目で上がる分)。rev_factor は非ゲーミングと営業収入を含めた売上への換算)→ 売上 116 億ドル・営業利益 37 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
- シンガポール(マリーナ・ベイ・サンズ):数量 38.6(シンガポール市場(2 軒)のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× MBS の取り分)× 価格 1.41(物価指数(2025 年 = 1.00)。rev_factor は非ゲーミングを含めた売上への換算)→ 売上 92 億ドル・営業利益 45 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
倍率:上限の正当化 PER 16.8 倍に対し、13.4 倍(8.0 割)に置いた。新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れるので 8.0 割に置いた。上限の中身は g 4.0%、RONIC 33.8%(k 9.25% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 58.4%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 31%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 24 億ドル × 13.4 倍で 325 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:業界ノートの中立(マカオ名目で年 +3〜4%、シンガポール年 +4%)に沿う。2026 年の悪化(4 か月の前年割れ)と、景気の谷 1 回分を平均の利益率に織り込んだ。38%。
やや悲観 23% やや悪い:マカオで取り分と利益率が下がり、拡張の利益が小さい 利益 13 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 23.12 ドル151 億ドル
2035 年のマカオ市場のゲーミング収入は 2025 年比で実質 0.95 倍、サンズの取り分は 19.5%(今 20%)。MBS は市場が実質 1.05 倍、取り分 69.0%(今 70%)。価格は物価指数で 1.38 倍。売上はマカオ 95.1 億ドル・MBS 81.0 億ドル、EBITDA は 26.6(利益率 28%)と 37.3(46%)で合計 63.9 億ドル(今の 1.22 倍)、営業利益 32.9 億ドル、純利益 12.8 億ドル(純負債 166 億ドル、純利息 13.1 億ドル)。還元は 10 年で 202 億ドル。
ギャラクシー・メルコの販促と、日本・東南アジアの新規供給で、サンズの取り分は 19.5%(今 20%)、マカオの利益率は 28% に下がる。サンズ・チャイナの配当にかかる税の合意が失効して実効税率は 20% に上がる。MBS の新棟は稼働が思ったより上がらず、利益率は 46%、取り分は 69%。借金は EBITDA の 2.6 倍に膨らみ、自社株買いは大きく絞る。還元の合計が純利益の合計を上回るのは、減価償却の分の現金から払うため(資産の売却はしない)。倍率は正当化 PER 15.7 倍の 7.5 割にあたる 11.8 倍に置いた。
- マカオ(ベネチアン・ロンドナー・パリジャン・プラザ/フォーシーズンズ・サンズ・マカオ):数量 57.2(マカオ市場のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× サンズの取り分)× 価格 1.38(物価指数(2025 年 = 1.00。名目で上がる分)。rev_factor は非ゲーミングと営業収入を含めた売上への換算)→ 売上 95 億ドル・営業利益 27 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
- シンガポール(マリーナ・ベイ・サンズ):数量 34.8(シンガポール市場(2 軒)のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× MBS の取り分)× 価格 1.38(物価指数(2025 年 = 1.00)。rev_factor は非ゲーミングを含めた売上への換算)→ 売上 81 億ドル・営業利益 37 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
倍率:上限の正当化 PER 15.7 倍に対し、11.8 倍(7.5 割)に置いた。中立(8.0 割)より 0.5 割低くした。利益の質が悪い筋書きだからだ。上限の中身は g 4.0%、RONIC 23.1%(k 9.25% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 36.9%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 21%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 13 億ドル × 11.8 倍で 151 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:ギャラクシー・メルコとの販促競争と、免税の一部が切れる形(配当税の合意の失効)。2026 年 1〜6 月のマカオの利益率が 27% に下がった現実に近く、中立の次に厚い 23%。
悲観 12% 悲観:免許・免税の条件が悪化し、中国の景気とシェアで構造的に負ける 利益 5 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 8.85 ドル58 億ドル
2035 年のマカオ市場のゲーミング収入は 2025 年比で実質 0.90 倍、サンズの取り分は 18.0%(今 20%)。MBS は市場が実質 1.00 倍、取り分 68.0%(今 70%)。価格は物価指数で 1.32 倍。売上はマカオ 79.5 億ドル・MBS 72.7 億ドル、EBITDA は 20.7(利益率 26%)と 31.3(43%)で合計 51.9 億ドル(今の 0.99 倍)、営業利益 21.9 億ドル、純利益 4.9 億ドル(純負債 145 億ドル、純利息 12.5 億ドル)。還元は 10 年で 131 億ドル。
マカオ免許の更新は条件が厳しくなり(賭博税・追加投資)、免税も切れて実効税率は 24%。ギャラクシー・メルコとの競争と中国の景気で、サンズの取り分は 18%、市場は実質 0.9 倍にとどまる。MBS は新棟が重い借金だけを残し、取り分 68%・利益率 43%。純負債は EBITDA の 2.8 倍に張り付き、自社株買いは大半が止まる。還元の合計が純利益の合計を上回るのは、減価償却の分の現金から払うため(資産の売却はしない)。2008〜09 年の再現(株価 −98%)ほどの存続の危機は想定しないが、優良な会社ではなくなる形。
- マカオ(ベネチアン・ロンドナー・パリジャン・プラザ/フォーシーズンズ・サンズ・マカオ):数量 50.1(マカオ市場のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× サンズの取り分)× 価格 1.32(物価指数(2025 年 = 1.00。名目で上がる分)。rev_factor は非ゲーミングと営業収入を含めた売上への換算)→ 売上 80 億ドル・営業利益 21 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
- シンガポール(マリーナ・ベイ・サンズ):数量 32.6(シンガポール市場(2 軒)のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× MBS の取り分)× 価格 1.32(物価指数(2025 年 = 1.00)。rev_factor は非ゲーミングを含めた売上への換算)→ 売上 73 億ドル・営業利益 31 億ドル。市場の実質ゲーミング収入(億ドル)× 取り分、と物価指数
倍率:式どおり:g 1.5%(g はこの筋書きの数量と価格から置いた)、ROE 23.2%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 14%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)、k 9.25%。(1−g÷RONIC)÷(k−g) の値は来年の利益に対する倍率なので、10 年目の利益には ×(1+g) で 11.8 倍。RONIC = k + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k)= 16.2%。上限の正当化 PER 14.4 倍の 8.2 割で、上限の内側。10 年目の利益の伸びは年 10% 未満なので 1 段。時価総額は、書いた純利益 5 億ドル × 11.8 倍で 58 億ドル。
確率:10 年のうちに「もう優良ではなくなる」確率として 12%。免許の更新が厳しくなる・免税が切れる・中国の需要が落ちる・MBS の拡張が重い借金だけを残す、のどれかが当たる形。2008〜09 年に株価 −98% の前例がある。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
マカオ(ベネチアン・ロンドナー・パリジャン・プラザ/フォーシーズンズ・サンズ・マカオ)
マカオのゲーミング収入と非ゲーミング(客室・商業施設・会議)。サンズ・チャイナ(約 7 割保有)。EBITDA ベース。
| 数量マカオ市場のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× サンズの取り分 | 価格物価指数(2025 年 = 1.00。名目で上がる分)。rev_factor は非ゲーミングと営業収入を含めた売上への換算 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 61.8 | 1.00 | 74 | 23 |
| 10 年後 中立 | 68.1 | 1.41 | 116 | 37 |
取り方:マカオ市場の 2025 年のゲーミング収入 約 2,470 億パタカ(約 309 億ドル。推定)× サンズの取り分 20%(推定。VIP 席の量では 26% と会社は言う)= 61.8 億ドル。売上 74.4 億ドル(サンズ・チャイナの 2025 年の売上)を 61.8 で割った 1.204 が、非ゲーミングと営業収入を含めた換算。op_oku は調整後の物件 EBITDA(1〜6 月 11.01 + Q3 6.01 + Q4 6.08 = 23.1)で、減価償却・本社費・開発費などは adjust_oku に全部入れた。
シンガポール(マリーナ・ベイ・サンズ)
MBS のゲーミング収入と非ゲーミング(客室・商業施設・会議)。全額保有。EBITDA ベース。
| 数量シンガポール市場(2 軒)のゲーミング収入(2025 年のドルで測った実質、億ドル)× MBS の取り分 | 価格物価指数(2025 年 = 1.00)。rev_factor は非ゲーミングを含めた売上への換算 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 33.6 | 1.00 | 57 | 29 |
| 10 年後 中立 | 38.6 | 1.41 | 92 | 45 |
取り方:シンガポールの 2 軒のゲーミング収入 約 48 億ドル(開示なし。推定)× MBS の取り分 70%(推定)= 33.6 億ドル。MBS の売上 56.7 億ドル(1〜6 月 25.51 + Q3 約 15.2 + Q4 約 16.0)を 33.6 で割った 1.688 が、非ゲーミング(客室・商業施設・会議)を含めた換算。EBITDA は 13.73 + 7.43 + 8.06 = 29.2(利益率 51.5%)。
リスクと懸念
中国の景気と資本規制で、マカオの収益が長く低迷する
マカオは中国の富裕層と観光客に収益が結びつき、2026 年は 7 月が前年比 −8.4%、9 月も −1.2%(今年の最低)で 4 か月連続の前年割れ。市場は 2019 年の水準(約 3,830 億パタカ)に戻っておらず、中国の景気や資本規制がさらに強まれば、マカオの EBITDA(2025 年 約 23 億ドル)は 20 億ドル前後に下がる。悲観の筋書きに入れた。
マカオの免許(2032 年末)と、免税・配当税の合意の期限
免許は 2032 年 12 月末まで。更新の条件が厳しくなる、賭博税や追加投資の約束が増える恐れがある。マカオのゲーミング事業の法人税は免除されているが、サンズ・チャイナの配当にかかる税の合意の延長は 2027 年末までの申請で、認められる保証はない。切れると実効税率が 19% から 24% 近くへ上がり、利益が 1 割近く減る(やや悲観・悲観に入れた)。
ホールド(勝ち越し率)の振れで、四半期の利益が大きく動く
VIP 席のチップの期待勝率はマカオ 3.3%、MBS 約 4.2%。2026 年 4〜6 月はベネチアン 0.62% とプラザ/フォーシーズンズ −1.15% が響き、マカオの EBITDA を約 0.9 億ドル、MBS を 0.4 億ドル押し下げた。偶然で増減するが、低いホールドが続くと「利益の質」を疑わせ、株価の倍率を押し下げる。
借金と自己資本のほぼゼロ:谷の年に身動きが取れなくなる
総負債 151 億ドル、現金 34 億ドル、LVS 株主の自己資本は 5.8 億ドル(2026 年 6 月末)。2023 年第 4 四半期以降に 60 億ドル超の自社株買いを借金も使って進め、MBS の拡張費の残り約 50 億ドルも出ていく。借り換えで金利は 4.6% から 5.75% 前後へ上がる。2008〜09 年は株価が −98% だった前例があり、不況で EBITDA が 4 割落ちると利払いの負担が重くなる。
MBS の拡張(約 80 億ドル)の遅れと費用の上振れ、回収の遅さ
総額は当初の 33 億ドルから約 80 億ドルへ膨らんだ(土地代・金融費用込み)。契約上の期限は 2029 年 7 月で、完成見込みは 2030 年 6 月、開業は 2031 年 1 月。延長はシンガポール政府の承認が要る。完成が遅れる、拡張後の稼働と単価が思ったより上がらない、人件費が上がる、のどれが起きても、新しい資本の回収は 2030 年代に先送りされる。
マカオの競争:シェアを取るための販促が利益率を削る
サンズ・チャイナは VIP 席の量でシェアを 4 位から 1 位(26%)に上げたが、その代償として利益率が下がっている(1〜6 月は 27%、2025 年 31%)。ギャラクシー・メルコ・ウィン・MGM チャイナ・SJM は VIP とプレミアムで同じことをでき、販促の競争が続けば取り分を守る費用が増える。
経営の連続性:創業者の家族が大株主、会長兼 CEO の交代
創業者の家族が株の過半に近い持ち分を持つ(持ち分の割合は 2021 年時点の報道)。2025 年 3 月に、2026 年 3 月 1 日付で会長兼 CEO がゴールドスタインからデュモンへ交代する計画が報じられた(実施は確認できていない)。大株主の売却や方針の変化は資本配分に響く。TOB の可能性は小さいが、大株主が株を売れば需給の圧迫になる。
今後の分かれ目
- マカオが四半期 EBITDA 7 億ドルの目標を達成し、MBS の拡張が計画どおり 2031 年に開業する
- マカオ 28 億ドル・MBS 45 億ドルの EBITDA が 2030 年代前半に見え、中立〜やや楽観の筋書き。倍率が式の値(20 倍台)なら 10 年後の時価総額は 560〜790 億ドル。
- マカオ市場の前年割れが 2027 年まで続き、サンズ・チャイナの利益率が 27% にとどまる
- マカオの EBITDA は 22 億ドル前後で横ばい、純利益は今と同程度。やや悲観の筋書きに近づき、倍率の根拠である成長(g)と ROE が下がるので、時価総額は今を下回る可能性もある。
- サンズ・チャイナの配当にかかる税の合意が 2027 年末で切れ、延長されない
- 実効税率が 19% から 24% 近くへ上がり、純利益は約 1 割減る。式の倍率には影響しないが、10 年の純利益が下がり、還元の余力も減る。
- 3 年以内にリーマン級の景気後退と、中国の景気悪化が重なる
- マカオの EBITDA は 4 割近く、MBS は 2 割減って営業利益は半減し、純利益は 3 億ドル前後に落ち、自社株買いは止まる。谷の年の時価総額は、ならした利益(約 9 億ドル)× 谷の PER で、今の約 4 割(110 億ドル前後)。
- MBS の拡張が 2031 年より遅れる、または費用が約 80 億ドルを超える
- 開業が 2032 年にずれると、10 年後の利益を 1〜2 年分失い、純負債の増加で自社株買いの余力が減る。やや悲観に近づく。
- 自社株買いの枠 60 億ドルを、今の安い株価で借金に頼らず使い切る
- 発行済みの約 1 割が減り、同じ純利益でも利益の持ち分が増える。ただし payout_oku は正味の還元に入れてあり、追加の上振れではなく中立〜やや楽観の前提に近い。
見ておくもの
- マカオの月次のゲーミング収入(前年比)とサンズ・チャイナのシェア・マス席の量
- ホールド(VIP 席の勝ち越し率)の四半期ごとの振れと、マカオの EBITDA 利益率(27% → 30% 超へ戻るか)
- MBS の四半期 EBITDA(6〜8 億ドル台)と拡張の進捗・費用・開業時期(2030 年 6 月完成、2031 年 1 月開業の見込み)
- サンズ・チャイナの配当にかかる税の合意の延長(2027 年末)と、マカオ免許の更新の議論
- 純負債 ÷ EBITDA(2.3 倍前後)と自社株買いの金額、借り換えの金利
- ギャラクシー・メルコ・ウィン・MGM チャイナのマカオでの販促と取り分
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額 249 億ドル(2026 年 7 月の約 315 億ドルから、4 か月連続のマカオの前年割れで下げた値)や今の PER 約 15 倍を見る前に、マカオとシンガポールを「市場の実質ゲーミング収入 × 取り分 × 物価指数」で積み上げ、EBITDA → 営業利益 → 純利益を出した。倍率は k 9.25%(基本 8.0% + quality +1.25%)・g 3〜4% の利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k))の 7〜9 割とし、g は市場の実質・シェア・価格で出して ROE から出していない。ROE は帳簿(自己資本ほぼゼロで 100% 超)でなく ROIC から直した。結果は総合でやや割安(差 +25%)と出たが、倍率(中立 13.4 倍)は今の PER とほぼ同じで、割安は 10 年の利益の伸び(今の 1.5 倍)から来る。倍率を今の株価に寄せたりはしていない。k − g が小さい点を結論の幅として読む。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β 0.98 × 5%。資本コスト k = 基本 8.0% + quality +1.25% = 9.25%(v2。株価の揺れ(β)は使わない)。景気連動の強さとマカオの免許・政策への依存を cycle と life で見た。免許・免税・経営の交代・ホールドの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は傾いておらず(2026 年上半期の純利益は前年を上回る)、extra は 0。