結論
ロス・ストアーズは、TJX に次ぐ米国のオフプライス小売の 2 番手で、ロス・ドレス・フォー・レス(約 1,950 店)と、さらに低価格の dd's ディスカウント(約 380 店)を西部・南部を中心に運営する。ブランド品や百貨店の余剰在庫を機会買いし、定価の 2〜6 割引で売る。2026 年 1 月期(kabufu の 2025/12 期)は売上 228 億ドル、営業利益 27 億ドル(営業利益率 11.9%)、純利益 22 億ドル。2026 年 5〜7 月期は売上 63 億ドル(+13%)、既存店 +10%(2 期連続の 2 桁)で、伸びの主因は客数。営業利益率は関税の還付(一回限り)を除いても約 13.6% に上がり、通期の 1 株利益の見通しを引き上げた。
事業の質は高く、10 年後も存在し今より強い可能性が高い。ただし利益は 1 本足(米国の低価格帯の衣料・家庭用品)で、利益率は 2022 年の 10.7% から 2026 年の 13% 台まで振れる。直近の勢いのうち、どこまでが続くかが論点になる。
バリュー投資の観点では、積み上げた中立の 10 年は、店舗がロス 2,780 店・dd's 640 店、売上 488 億ドル、営業利益率 12.9%、純利益 49 億ドル。資本コストは 8.25%(基本 8.0% + quality 0.25%)。倍率は g 4%・ROE 28.5% の利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(筋書きの ROE − k)で、資本コストを超える稼ぎは先で薄れる)(19.2 倍)の 85% で約 16.3 倍、時価総額は約 800 億ドル。今の 768 億ドルとほぼ同じで、配当等を足しても年率 +3% 前後と、資本コストに届かない。確率で重みをつけた本質価値は今の時価総額を 3 割強下回り、総合は割高(差 −33%)。優良な事業だが、今の値段には安全域がない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ロスは事業を理解でき、10 年後も存在し、今より強い可能性が高い。堀は仕入れの規模と低価格の習慣で、これは百貨店の閉店が続く限り広がりこそすれ狭まりにくい。投下資本利益率は 30% 前後で、成長の再投資が小さく、オーナー利益は純利益の 8 割以上。経営は慎重で、買収で価値を壊した歴史がなく、純現金を持ち、利益の 7 割を返す。ここは高く評価できる。
弱点は、利益が 1 つの顧客層・1 つの国に偏ること、利益率が 10〜14% の幅で振れること、直近の勢い(既存店 +10%)に一時の要因が混ざっている可能性である。2026 年の営業利益率の上昇は還付の影響を除いても大きく、その半分は定着し半分は戻ると見て中立を置いた。
値段は、利益ベースの倍率 約 16 倍に積み上げた 10 年後の中立の純利益 49 億ドルを掛けると約 800 億ドルで、今の 768 億ドルとほぼ同じ。配当を足しても年率は +3% 前後で、資本コスト 8.25% に届かない。優良な事業だが、値段の余裕はない。結論は「持ちたい優良企業だが、買い急ぐ値段ではない」。確信度は事業については高く、利益率の水準については中くらい。
何で稼ぐ会社か
ロスの収益は 2 つの業態で、どちらも店舗が基本である。第 1 はロス・ドレス・フォー・レス(約 1,950 店と推定、売上の約 88%)。衣料・靴・家庭用品・玩具を百貨店の 2〜6 割引で売り、郊外の商業施設に、百貨店より小さい箱で出店する。客は中低所得層が中心。第 2 は dd's ディスカウント(約 380 店と推定、売上の約 12%)。ロスより 2〜3 割安い価格帯で、年収がさらに低い層を狙い、利益率はロスより低い。
稼ぎ方の本質は仕入れにある。バイヤーはブランドの余剰在庫・キャンセル品・季節外れの品を現金で機会買いし、さらに「パックアウェイ」(買った品を倉庫に寝かせ、翌季に売る)で在庫の幅を持つ。品揃えは毎週入れ替わり、客は「宝探し」で来店する。通販はほぼ持たず、来店が基本である。
店舗の経済は強い。1 店で 1,000 万ドル超を売り、新店は 3 年程度で採算が取れる。設備投資は売上の約 4%(新店・改装・物流センター)で、残りを配当と自社株買いに回せる。2026 年度は自社株買い 12.75 億ドル、配当は年 6 億ドル弱の計画。純現金は約 33 億ドル(リースを除く)。
セグメントごとの店舗数・売上は開示が薄く、ロスと dd's の店舗数は 2026 年 8 月 1 日の 1,952 店と 376 店から期末を推定し、売上は 1 店あたり売上の推定(ロス 約 1,040 万ドル、dd's 約 760 万ドル)で分けた。営業利益率はロス 12.2%・dd's 9.6% と置いた(会社は業態別の利益を出さない)。
優良さと弱いところ
堀は 3 つ。第 1 は仕入れの規模と関係:2,300 店超の販売力を背景に、ブランドから余剰在庫を現金で最初に買える。TJX に次ぐ 2 位だが、売る側にとって「相場を壊さず現金化できる」窓口が複数あるのは価値で、ロスは 2026 年に取り扱いブランドの拡大を進めている。第 2 は低価格の立地:郊外の低家賃の立地に、小さな在庫の箱で出す。客が安さのために来る習慣は根強く、不況で良い在庫が増え客も増える(2008〜09 年も既存店はプラスを保った)。第 3 は店舗の経済の強さで、投下資本利益率は 30% 前後(リースを含む。推定)。
価格を決める力は小売としては普通以上で、値付けは「百貨店の定価の 2〜6 割引」という相対の価格のため、値上げは物価並みが限界。利益率は 2017 年の 14.5% が過去の最高で、2022 年の 10.7% が最近の底、2026 年は還付を除いて 13% 台。
弱い所は 4 つ。①顧客が低所得層に偏り、ガソリン・家賃・食料の上昇と最低賃金の引き上げに弱い(2026 年は逆に来店が増えた)。②米国 1 国・低価格帯 1 本足で、TJX のように欧州・カナダ・ホームの分散がない。③輸入比率が高く、関税の影響が大きい(2026 年は IEEPA 関税の還付 2.53 億ドルが一回限りで入った)。④経営者の交代(CEO ジム・コンロイ)後の改善はまだ 2 年ほどで、新体制の実績は短い。大型の M&A で価値を壊した歴史はなく、資本配分は堅実。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のオフプライスは、TJX(売上 604 億ドル・約 5,300 店・営業利益率 12%)、ロス(売上 228 億ドル・約 2,300 店・同 11.9%)、バーリントン(売上約 115 億ドル・約 1,200 店・同 8〜9%)の 3 強で、衣料・家庭用品の市場(衣料だけで約 3,700 億ドル、年 +2%)より速く成長している。業界ノートの中立は、オフプライス年 +6〜7%(店舗 +4%・既存店 +2〜3%)。
追い風は、百貨店の閉店(メイシーズ・ノードストロームの縮小)、ブランドの在庫増(需要の読み違いと関税)、物価高で「安く買う」習慣が定着したこと。ロスは 2026 年 5〜7 月期の来店客数が 16% 増(Placer.ai、業界ノート)と TJX のマーマックスの +1% を上回り、2 期連続の既存店 2 桁になった。TJX の経営者は「競合の近くでも遠くでも差はない」と見ており、差は品揃えの実行の違いとも読める。向かい風は、①アマゾン・ウォルマート・テム・シーインの低価格化、②ブランドが直営のアウトレットとオンラインで在庫を捌く動き(機会買いの供給が細る)、③関税で輸入原価が上がる(2025 年は利益率を圧迫、2026 年は還付が一回限りで入る)、④人件費(年 +4〜5%)。
循環の位置は、低所得層が圧迫されるがオフプライスには客が集まる局面。K 字の下側の消費に支えられた伸びなので、賃金が追いつけば客は百貨店・通販に戻る余地がある。業界ノートの置き方に従い、市場は年 +3%(物価に並ぶ)、オフプライスは年 +6〜7% で置いた。
資本政策と M&A
資本政策は堅実で、利益の約 7 割を株主に返し、残りを新店と物流に使う。2025/12 期は配当 5 億ドル・自社株買い 11 億ドル。2026 年度は自社株買い 12.75 億ドル(2 年枠 25.5 億ドルを 2026 年 3 月に承認)と配当で、純利益の 7 割前後。現金は 43 億ドル、有利子負債は 10 億ドルで純現金(約 33 億ドル)。
M&A は行わない方針で、成長は新店(2026 年度は 115 店に引き上げ。ロス約 90・dd's 約 25)と既存店。長期の店舗目標はロス 2,900 店・dd's 700 店(合計 3,600 店。業界ノートの記載)で、今の 2,328 店から 5 割増える余地がある。TOB や再編の可能性は低い(時価総額 768 億ドル)。
自社株買いの質は、割高な局面で買い過ぎると価値を壊す。今の PER は kabufu の実績利益に対し 35.7 倍(2026 年度の見込みの純利益に対しては約 29 倍)で、益回りは 3%。倍率が利益ベースの水準(約 16 倍)へ縮む世界なら、買った株の価値は縮む。株式報酬は小さく(年 1〜2 億ドル)、payout_oku は配当 + 自社株買いから株式報酬の増発分を引いた正味とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ロスは今、事業の勢いが最も強い。2026 年 5〜7 月期は既存店 +10%(前年 +2%)、客数が主因で、新規客・久しぶりの客・来店頻度の 3 つが同時に伸び、所得層・年齢を問わない。営業利益率は還付を除いても約 13.6% と前年から 2 ポイント伸び、会社の計画(+1.3〜1.5 ポイント)を上回った。通期の見通しを引き上げ、新店も 110 から 115 に増やしている。取り扱いブランドの拡大(2026 年)で人気ブランドの在庫が増え、品揃えの質が上がっている。
長期の余地も大きい。店舗は 2,328 店から、長期目標のロス 2,900・dd's 700(計 3,600)まで 5 割増える。1 店あたり売上は約 1,040 万ドルと TJX のマーマックス(約 1,220 万ドル)より低く、品揃えの質が上がれば追いつく余地がある。営業利益率は 2017 年に 14.5% を付けた実績があり、物流費の効率と規模の効果で 14% 台は再現できる。10 年で売上は年 +8%、純利益は 60 億ドルを超え、資本コスト 8.25% を上回る。不況でも 2008〜09 年は既存店がプラスで、純現金があり、投下資本利益率が 30% あるので、今の倍率は払う価値がある。
慎重な見方
2026 年の既存店 +10% と営業利益率の急回復には、一時の要因が混ざっている。関税の影響が緩んだ時期に同業の在庫が足りず、その客をロスが受けた面があり、値上げ前の駆け込みと、K 字の下側の客がロスに集まった面も大きい。賃金が追いつけば、客は百貨店やアマゾンに戻りうる。TJX のマーマックスが +1% に鈍ったのは、ロスに客を取られたのかもしれないが、翌年にはロスの伸びが TJX の水準に戻る可能性がある。
利益率の天井は 2017 年の 14.5% で、これを超える根拠は薄い。最低賃金の引き上げ・物流費・関税が重なれば、11% 台に戻る(2022〜25 年の実績)。店舗が 3,600 店に近づくほど新店の売上は既存店より低くなり、1 店あたりの収益が薄まる。米国 1 国・低価格帯 1 本足の分散のなさは、TJX にない弱さで、アマゾン・テム・シーイン・ウォルマートの低価格化に正面から当たる。
結果として、純利益は 40 億ドル前後で伸びが鈍り、利益ベースの倍率が約 15 倍に縮めば、10 年後の時価総額は 560 億ドル前後(今の約 0.7 倍)で、配当を足しても年率は +1% 前後と、資本コスト 8.25% を大きく下回る。
どちらに重みを置いたか
事業の強さと勢いは強気の見方が勝つが、利益率の持続性と値段は慎重な見方が勝つ。確率は中立 35%、やや楽観 23%、楽観 12%、やや悲観 20%、悲観 10% と、TJX(15/25/35/17/8)より慎重な側に寄せた(直近の勢いに一時要因が混ざること、1 本足の分散のなさ)。倍率は利益ベースで 10 年の中立 約 16.3 倍(g 4%・ROE 28.5%・k 8.25% の正当化 PER ×(1+g) の 85%)とした。総合は割高で、ロスは利益率が低く 1 本足の分だけ値段の余裕が小さい。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 232.03 ドル753 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 78.97 ドル256 億ドル)。 今の値に割り戻すと 158.15 ドル513 億ドル、今との差 −33.2%、 期待の年率 +2.8%(資本コスト 8.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 314.66 ドル1,021 億ドル | 90.62 ドル294 億ドル | +71.2% | +5.5% | 48.63 ドル158 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 282.97 ドル918 億ドル | 85.38 ドル277 億ドル | +55.6% | +4.5% | 84.72 ドル275 億ドル |
| 中立 | 35% | 246.26 ドル799 億ドル | 79.53 ドル258 億ドル | +37.7% | +3.2% | 114.02 ドル370 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 173.82 ドル564 億ドル | 73.98 ドル240 億ドル | +4.7% | +0.5% | 49.56 ドル161 億ドル |
| 悲観 | 10% | 82.33 ドル267 億ドル | 58.26 ドル189 億ドル | −40.6% | −5.1% | 14.06 ドル46 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 232.03 ドル753 億ドル | 78.97 ドル256 億ドル | +31.4% | +2.8% | 311.00 ドル1,009 億ドル |
今の株価時価総額 236.67 ドル768 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 12% 楽観:客数の増加が定着し、店舗は長期目標の 3,600 店へ 利益 61 億ドル · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 314.66 ドル1,021 億ドル
ロスは 2026 年の客数の増加を足場に、新規客と若い層を保ち、1 店あたり売上が物価(1.41 倍)に実質 +10% を足した 1.55 倍まで伸びる。店舗はロス 2,900 店・dd's 700 店(計 3,600 店)と、長期目標をほぼ達成する。ブランドの余剰在庫の仕入れが広がり、関税が下がって粗利益率が戻り、営業利益率はロス 14.8%・dd's 11.5%、全社 14.3%(2017 年の最高 14.5% に近い)。売上 548 億ドル、営業利益 79 億ドル、純利益 61 億ドル。TJX・バーリントンから低所得層の客を取り続ける。
- ロス・ドレス・フォー・レス:数量 2,900(店舗数(店))× 価格 0.16(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 468 億ドル・営業利益 69 億ドル。1 店あたり売上の推定
- dd's ディスカウント:数量 700(店舗数(店))× 価格 0.11(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 80 億ドル・営業利益 9 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%・g 4.0%(店舗の増加と物価で 4%)・事業の ROE 33.2%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 20.7%、10 年目より先の正当化 PER 19.0 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 19.7 倍。客を取り続ける側だが、1 本足なので上限の 85% に置き 16.8 倍。
確率:客数の増加定着・関税の軽減・出店の前倒しが同時に要る。ロスは 10 年で 1.55 倍の 1 店あたり売上が必要で 12%。
やや楽観 23% やや楽観:既存店は物価に実質 +1%、店舗は目標の 9 割 利益 55 億ドル · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 282.97 ドル918 億ドル
1 店あたり売上は 10 年で 1.50 倍(物価 1.41 倍に実質 +6%:客数の増加が残る)、店舗はロス 2,850 店・dd's 670 店。営業利益率はロス 14.2%・dd's 11%、全社 13.7%。売上 519 億ドル、営業利益 71 億ドル、純利益 55 億ドル。TJX と並ぶ 3 強の一角として、百貨店の閉店で空いた立地を取り、客数の増加(新規客・若い層)が半分以上残る。関税は今の水準が続くが、仕入れ値の交渉と物流の効率で吸収できる。新店は既存店より売上が低いが、規模の効果で店舗の収益は保たれる。k − g は 3.45%)。
- ロス・ドレス・フォー・レス:数量 2,850(店舗数(店))× 価格 0.16(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 445 億ドル・営業利益 63 億ドル。1 店あたり売上の推定
- dd's ディスカウント:数量 670(店舗数(店))× 価格 0.11(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 74 億ドル・営業利益 8 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%・g 4.0%(店舗の増加と物価で 4%)・事業の ROE 31.1%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 19.7%、10 年目より先の正当化 PER 18.7 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 19.5 倍。客数の増加が定着する側だが、1 本足なので上限の 85% に置き 16.6 倍。
確率:会社の拡大計画どおりに店舗が増え、客数の増加が一部定着する。中立より厚い 23%。
中立 35% 中立:店舗は 3,400 店へ、1 店あたり売上は物価並みに実質 +2.5% 利益 49 億ドル · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 246.26 ドル799 億ドル
店舗は 10 年でロス 1,915 店から 2,780 店(年 +3.8%)、dd's 368 店から 640 店と、長期目標(ロス 2,900・dd's 700)の 9 割に達する。1 店あたり売上は 1.45 倍(物価 1.41 倍に実質 +2.5%:2026 年の客数の増加は残るが、新店の売上が低く共食いが少しある)。営業利益率はロス 13.4%・dd's 10%(規模の効果で上がる)、全社 12.9%。売上 488 億ドル(年 +7.9%、2026 年度から年 +6.6%)、営業利益 63 億ドル、純利益 49 億ドル。借り換えの金利はほぼ影響しない(純現金のため)。TJX(利益率 12.7%)と並ぶ水準。k − g が 3.45% で、TJX の 2.6% より余裕がある)。
- ロス・ドレス・フォー・レス:数量 2,780(店舗数(店))× 価格 0.15(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 420 億ドル・営業利益 56 億ドル。1 店あたり売上の推定
- dd's ディスカウント:数量 640(店舗数(店))× 価格 0.11(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 68 億ドル・営業利益 7 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%・g 4.0%(店舗の増加と物価で 4%)・事業の ROE 28.5%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 18.4%、10 年目より先の正当化 PER 18.4 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 19.1 倍。直近の勢いの半分が定着する側で、1 本足なので上限の 85% に置き 16.3 倍。
確率:会社の長期の出店計画に沿い、直近の客数の増加は半分程度が残る。35%。
やや悲観 20% やや悲観:TJX・バーリントン・アマゾンに客を取られ、利益率 11.4% 利益 38 億ドル · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 173.82 ドル564 億ドル
客数の増加が戻り、1 店あたり売上は 10 年で 1.34 倍(物価 1.41 倍に実質 −5%:客数の減少と値引き)、店舗はロス 2,650 店・dd's 560 店。バーリントンが店舗を増やし、アマゾン・ウォルマート・テム(Temu)・シーインが低価格で客を奪い、関税が高いまま、最低賃金が上がり続ける。営業利益率はロス 11.8%・dd's 8.5%、全社 11.4%(2022〜25 年の 10.7〜12.2% の範囲)。売上 425 億ドル、営業利益 48 億ドル、純利益 38 億ドル。 直近の既存店 +10% の勢いは一時の要因(同業の在庫不足・駆け込み)が剥がれて既存店は +1〜2% に落ち着き、新店の売上は既存店より低く、1 店あたりの収益が薄まる。
- ロス・ドレス・フォー・レス:数量 2,650(店舗数(店))× 価格 0.14(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 370 億ドル・営業利益 44 億ドル。1 店あたり売上の推定
- dd's ディスカウント:数量 560(店舗数(店))× 価格 0.10(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 55 億ドル・営業利益 5 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%・g 3.5%(成長が鈍り 3.5%)・事業の ROE 27.0%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 17.6%、10 年目より先の正当化 PER 16.9 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 17.5 倍。低価格の通販に客を奪われる側なので上限の 85% に置き 14.8 倍。
確率:オフプライスの競争は激しく、ロスの低所得層への依存と人件費の上昇は懸念。20%。
悲観 10% 悲観:構造で負ける(低価格競争と在庫供給の細り、利益率 8%) 利益 21 億ドル · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 82.33 ドル267 億ドル
ブランドが在庫を自社のオンラインと直営で捌き、オフプライスの仕入れが細る。同時に低価格の通販(アマゾン・テム・シーイン)とウォルマートが客を奪い、ロスの 1 店あたり売上は 10 年で 1.12 倍にとどまる(実質で大きく減る)。値引きの増加と関税・賃金の上昇で営業利益率はロス 8.5%・dd's 5%、全社 8.1%(2006〜07 年の 7.0% に近い)。店舗はロス 2,350 店・dd's 450 店で増加が止まる。売上 312 億ドル、営業利益 25 億ドル、純利益 20.5 億ドル(今を下回る)。
- ロス・ドレス・フォー・レス:数量 2,350(店舗数(店))× 価格 0.12(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 274 億ドル・営業利益 23 億ドル。1 店あたり売上の推定
- dd's ディスカウント:数量 450(店舗数(店))× 価格 0.08(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 38 億ドル・営業利益 2 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 8.25%・g 3.0%(店舗の増加が止まり 3%)・事業の ROE 19.2%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 13.7%、10 年目より先の正当化 PER 14.9 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 15.3 倍。オフプライスの仕入れが細る側なので上限の 85% に置き 13.0 倍。
確率:ロスは店舗数・仕入れの規模で堀があるが、低所得層の財布に依存する一本足で、構造の変化に弱い。10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ロス・ドレス・フォー・レス
米国の郊外型オフプライス。衣料・靴・家庭用品を百貨店の 2〜6 割引で売る。西部・南部が中心。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,915 | 0.10 | 200 | 24 |
| 10 年後 中立 | 2,780 | 0.15 | 420 | 56 |
取り方:店舗数は 2026-08-01 の 1,952 店(dd's 376 店と合わせて 2,328 店、前年同期 2,233 店)から、2026 年 1 月期末の合計を約 2,283 店と推定して分けた(ロス 約 1,915・dd's 約 368)。売上 227.5 億ドルのうち dd's を 28 億ドルと推定し、残りのロス 199.5 億ドルを店舗数で割って 1 店約 1,040 万ドル。営業利益率はロス 12.2% と置き 24.4 億ドル(全社 27.1 億ドルから dd's を除いた)。
dd's ディスカウント
ロスより 2〜3 割安い価格帯で、さらに年収の低い層を狙う低価格業態。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 368 | 0.08 | 28 | 3 |
| 10 年後 中立 | 640 | 0.11 | 68 | 7 |
取り方:店舗数は推定 368 店(2026-08-01 は 376 店)。1 店あたり売上は約 760 万ドルと推定(ロスの約 7 割。開示が無いため業界の水準から置いた)で、売上 28 億ドル。営業利益率はロスより低い 9.6% と置き 2.7 億ドル。
リスクと懸念
2026 年の勢いの反動
2026 年 5〜7 月期の既存店 +10%(前年 +2%)と営業利益率の上昇には、同業の在庫不足・値上げ前の駆け込み・低所得層の乗り換えといった一時の要因が混ざる可能性がある。翌年から既存店が +1〜2% に鈍れば、中立の想定(年 +3.5〜4%)を下回り、利益率も 12% 台に戻る。
関税と仕入れ値
衣料・靴・家庭用品の輸入比率は 7〜8 割。関税の水準は動かさず「今の水準が続く」を中立とした。IEEPA 関税の還付(2.53 億ドル、1 株利益の約 7%)は一回限りで正常利益から除いた。関税が再び上がれば、仕入れ値の交渉で吸収しきれず利益率が下がる。
低所得層への依存と賃金
ロスの客は中低所得層が中心で、ガソリン・家賃・食料の上昇に弱い。一方で最低賃金の引き上げと店舗の人件費は年 +4〜5% で上がり続け、物価並みの値上げで吸収できなければ営業利益率が 11% 台に戻る(2022 年は 10.7%)。
低価格の競争(TJX・バーリントン・通販)
TJX が品揃えを立て直し、バーリントンが店舗を増やし(約 1,200 店)、アマゾン・ウォルマート・テム・シーインが低価格を広げれば、ロスの客数の増加は止まる。1 国・1 価格帯の 1 本足で、TJX のような欧州・カナダの分散がない。
機会買いの供給の細り
ブランドが直営のアウトレットとオンラインで在庫を捌けば、安く買える在庫が減る。2026 年の在庫は 31 億ドルと前年比 +18% で、パックアウェイ(買い置き)が膨らむ局面は値引きが増えるリスクを伴う。構造の悲観の核になる。
店舗拡大による共食い
長期目標の 3,600 店に向けて年 +4% で出店を続けると、新店の売上は既存店より低くなり、立地の取り合いも起きる。1 店あたりの収益が薄まれば、店舗の増加が利益の伸びに結びつかなくなる。中立では 1 店あたり売上を物価より実質 +2.5% と控えめに置いたが、共食いが強ければこれも下振れする。
高い倍率の縮み
今の PER は kabufu の実績に対し 35.7 倍(2026 年度の見込みで約 29 倍)で、利益ベースの倍率(中立の 10 年で約 16 倍)を大きく上回る。k が 0.5 ポイント上がれば倍率はさらに下がる。利益が伸びても株価が動かない期間がありうる。
今後の分かれ目
- 第 3・第 4 四半期の既存店が会社の見通し(+6〜7%・+4〜5%)を上回り、翌年も +4% 台を保つ
- 客数の増加が定着したと判断でき、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。中立の 10 年の 1 店あたり売上(物価に実質 +2.5%)が上振れる。
- 翌年の既存店が +1〜2% に鈍り、営業利益率(還付除き)が 12% を下回る
- 2026 年の勢いが一時だったと分かり、やや悲観の確率を上げる。倍率が縮む前に利益の伸びが止まる。
- IEEPA 関税の還付が追加で入る、または関税の水準が下がる
- 粗利益率が戻る楽観に近づくが、還付は一回限りなので正常利益には入れない。
- TJX のマーマックスの既存店が +3% 台に戻り、ロスとの差が縮まる
- 2026 年のロスの伸びに競合の弱さが混ざっていたと分かり、中立の 1 店あたり売上を少し下げる材料になる。
- ブランドが直営のオンライン・アウトレットを広げ、ロスのバイヤーが扱える在庫の幅が減る
- 構造の悲観(10 年)の確率を上げる。取り扱いブランド数とパックアウェイの水準の推移を見る。
- k が 8.25% を超えてさらに上がる
- k − g が 4% を割り、倍率はさらに下がる。割り戻した価値は今をさらに下回る。
見ておくもの
- 既存店売上(客数と客単価)と、TJX のマーマックス・バーリントンの既存店との差
- 営業利益率(還付を除く)と粗利益率、関税の水準
- 新店の売上と店舗数の純増(年 +4% の達成)
- 在庫・パックアウェイの水準と値引きの程度
- 配当と自社株買いの額、株数の減少率
- PER の水準(利益ベースの倍率との比較)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER(35.7 倍、2026 年度の見込みで約 29 倍)に寄せず、利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(筋書きの ROE − k)で、資本コストを超える稼ぎは先で薄れる)に k 8.25%(基本 8.0% + quality 0.25%)・g 4%・ROE(筋書きの純利益 ÷ 自己資本、中立 28.5%)を入れ、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) とした 19.2 倍の 85%(約 16.3 倍)に置いた。業界ノートの倍率にも、過去の分布にも寄せず、k − g の薄さで式の外から割り引くこともしていない。結果として今の実績 PER よりずっと低い倍率になり、総合は割高になった。売上は店舗数と 1 店あたり売上から積み上げ、今の株価を見て決めていない。直近の既存店 +10% は中立で半分程度を定着と置いた。純現金は余った現金として立てず、純利益(受取利息を含む)× PER とした。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 0.25%。オフプライスは景気後退でも既存店が落ちにくく cycle は 0、値決めは普通で pricing は 0、純現金で debt は 0。利益が米国の低価格帯 1 本足で、通販・ウォルマートの低価格化に当たる(life +0.25%)。個別のリスク(直近の勢いの一時要因・関税・最低賃金)は k に足さず、悲観の確率と悲観の営業利益率・g・ROE で表した。