結論
マリオットは、世界 140 を超える国・地域に約 172 万室(推定)、30 を超えるブランドを持つ世界最大のホテル会社で、ホテルをほとんど自分では持たず、オーナーから総手数料(基本管理料・成果報酬・フランチャイズ料・提携カードの手数料)を受け取る資産の軽い事業である。2025 年(12 月期)は営業利益 41 億ドル、純利益 26 億ドル。2026 年 4〜6 月期は世界の RevPAR が +3.4%、純増客室が +4.5%、総手数料が +13% で、通期の総手数料は +11% の 60 億ドル超が見通しとして出ている。
事業の質は高い。客室の予定は約 62.9 万室で今の 3 割強に当たり、会員制度(ボンヴォイ)は 2.95 億人を超え、提携カードの手数料は上半期で 1.3 億ドル積み上がった。ただし自己資本はマイナス(自社株買いの累積)で、純負債は 168 億ドル。手数料収入は景気に連動し、2009 年は RevPAR −17%・株価 −68%、2020 年は営業利益が 4 億ドルまで落ちた。
バリュー投資の観点では、わかりやすく資産が軽い事業で、10 年後も存在し堀は広がる可能性が高い。一方で資本コスト 8.0%(基本 8.0% + quality 0%)と長期の成長 4% から利益ベースで出る倍率は、10 年目の利益に対し PER 23 倍前後が上限で、今の 39 倍はその約 1.7 倍。客室数 × 1 室あたり手数料で積み上げると、10 年後の中立は純利益 約 50 億ドル、PER 約 18.4 倍(利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 2/3 ×(事業の ROE − k)。手数料の商売で投下資本がごく小さく ROIC は 100% を超えるので、上限は 1÷(k−g) に近い)23.0 倍の 8 割)で時価総額 約 920 億ドル。今の時価総額(1,024 億ドル)を下回り、還元を足した年率は +2.7% で資本コストを下回る。優良だが今の値段は成長を織り込みすぎ、というのが結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。ホテルに泊まる、旅をするという需要は 10 年後も続き、マリオットは宿泊の習慣を会員制度とブランドで束ねる世界最大の会社で、わからなさは小さい。ホテルを自分では持たず、客室が増えるほど手数料が積み上がる事業は、物価に連動する売上の一部を取り、追加の資本が要らない。堀(会員・規模・カード)は広がる可能性が高い。
次にオーナー利益。純利益 26 億ドルは設備投資がほぼ要らないのでほぼそのまま株主のものになり、株式報酬を引いても約 24 億ドル。今の時価総額 1,024 億ドルに対する利回りは約 2.3% で、10 年国債 5% を大きく下回る。10 年の中立で純利益は 約 50 億ドルまで伸びるが、今の値段で買って 10 年持つと、配当と自社株買いを足した期待のリターンは年 +2.7% 前後で、資本コスト 8.0% には届かない。
資本配分は、純利益を上回る自社株買いで自己資本をマイナスにした。借金を使った自社株買いは、割安な時は価値を生むが、今の PER 39 倍では株主の価値を薄める恐れがある。良い面は、鍵金・IT 投資以外に資本を使わず、買収で価値を壊さない点。
安全域:事業の質は強いが、値段が式の倍率の約 1.7 倍で、安全域は逆にマイナス。楽観の筋書きでも今の値段に届くかが怪しく、優良な会社を妥当な値段で買う、という点では待つ価値がある。
何で稼ぐ会社か
収益は大きく 4 つ。第 1 は基本管理料(運営を受託するホテルの売上の約 3% 前後、2026 年 4〜6 月期 3.4 億ドル、+1%)。第 2 は成果報酬(利益の一定割合。海外の管理契約が過半を占め、同期 2.1 億ドル、+6%)。第 3 はフランチャイズ料(加盟するホテルの売上の約 4〜6%。同期 10.2 億ドル、+19%)で、ここに提携カード(JP モルガン・チェースとアメリカン・エキスプレス)の手数料が入り、同期だけで +0.7 億ドル。第 4 は直営・賃貸ホテルの純収益や分譲住宅のブランド使用料などその他。2026 年の総手数料は 60 億ドル超(+11%)の見通しで、2025 年は約 54 億ドル(推定)。
地域は、米国・カナダ(客室 約 105 万室・総手数料 約 34 億ドル、推定)と海外(約 67 万室・約 20.5 億ドル、推定)。海外の方が管理契約の比率が高く、成果報酬が景気と地政学で大きく振れる。2026 年は中東の RevPAR が 4〜6 月に −43% で、建設の遅れで純増が下限(4.5%)になる見通し。
マリオットの利益は「客室数 × 1 室あたり手数料(RevPAR × 料率)」に比例し、設備投資は鍵金(契約投資)と IT に限られる。営業費用は固定的な本社・会員制度・システムで、手数料が増えても費用は小幅にしか増えないので、手数料の伸びに対して利益の伸びが大きい。セグメントごとの手数料は開示が薄く、how に推定の方法を書いた。
優良さと弱いところ
堀は 4 つ。第 1 は会員制度(ボンヴォイ 2.95 億人超)で、直販の予約を取り、旅行予約サイト(OTA)に払う手数料をオーナーのために下げる。オーナーがマリオットを選ぶ最大の理由である。第 2 は規模とブランドの幅で、ラグジュアリー(リッツ・カールトン、JW マリオット)から選べる宿(フェアフィールド、コートヤード)まで 30 を超えるブランドが、新規と既存ホテルのブランド切り替え(コンバージョン)の両方を取る。第 3 は提携カードで、クレジットカードの手数料が景気に左右されにくい収入になっている。第 4 は契約の長さで、手数料契約は 20 年前後と長い。
資本効率は非常に高い。ROE は自己資本がマイナスで意味がなく、設備投資は小さく、手数料の増加に対して追加の資本がほとんど要らない。営業利益率(払い戻し収益を含む全収益比)は 2022〜2025 年に 15〜17% で、2019 年の 9% や 2010 年の 6% より大きく改善した。経営はアンソニー・カプアーノ。
弱みは 3 つ。(1)景気連動:2009 年と 2020 年の落ち込みが深い。(2)オーナーとの力関係:ホテルのオーナーが手数料・鍵金・ブランド基準の費用に不満を持ち、ヒルトン、ハイアット、IHG、ウィンダム、チョイスの他社ブランドに切り替える余地がある。(3)自己資本マイナスで純負債 168 億ドル、自社株買いを借金で続ける設計は金利が高い今、利払いの負担が増える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ホテル業界は、米国の RevPAR が 2026 年に +2.8%(CoStar、2 月の +0.6% から引き上げ)、+2.5%(CBRE)、+4.5%(HVS)と予想が分かれる。稼働率は 63% 前後で横ばい、客室単価(ADR)が物価並みに上がる形。供給の伸びは +0.4% と小さく、ワールドカップとグループ需要が下支え。マリオットの米国・カナダは 4〜6 月に RevPAR +5.0% と業界を上回った。一方で海外は −0.5%(中東 −43%、欧州はプラス)。
フランチャイズ型のホテル会社は寡占で、マリオット(約 172 万室)とヒルトン(約 130 万室、純増 6〜7%、営業利益率 21%)が先頭、続いて IHG・ハイアット・ウィンダム・チョイスがいる。この中でマリオットは客室の数・会員数・提携カードで首位で、1 室あたりの手数料の高い管理契約の比率が高い反面、純増の速さはヒルトンに及ばない。新規客室の予定は約 62.9 万室(建設中 44%)。
循環のどこにいるか:米国の RevPAR は 2025 年に鈍り、2026 年にやや持ち直す局面で、景気の山ではない。海外は地政学(中東の紛争、中国の景気)で振れている。構造では、AI による予約・民泊(エアビーアンドビー)・長期滞在の需要が直販の優位に影響しうる。業界ノートの置き方(RevPAR 年 +3.5%、客室 年 +4〜5%、手数料収入 年 +7〜9%)に沿い(倍率は業界ノートの谷の PER 17〜20 倍でなく式で出す)、マリオットを特別に強く・弱くは見ていない。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買いが大きい。2026 年は 4〜6 月に自社株買い 11 億ドル、7 月末までで累計 22 億ドル(620 万株)、配当を合わせて 26 億ドルで、年換算では 50 億ドル前後(今の時価総額の約 5%)。2025 年は配当 7 億ドル、自社株買い 33 億ドルで、純利益 26 億ドルを上回り、純負債は 125 億ドル(2023 年)から 168 億ドルへ増えた。株数は年 −4〜7% で減ったが、株式報酬(年 約 2.5 億ドル、推定)で増える分があり、正味の還元は見かけより小さい。
自己資本はマイナスで、借り換えで利払いが増える(10 年で −3 億ドル、推定)。M&A は、2016 年のスターウッド買収でブランドを倍にしたあとは、大型の買収を控え、ブランドの買い足しと提携カード・分譲住宅の拡大に絞る。買う側として価値を壊す心配は小さいが、論点は自社株買いを割高な局面で続けていないか(今の PER 39 倍で借金を使っている)こと。買われる可能性は、時価総額が約 1,000 億ドルあり、ほぼない。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 18.2 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
マリオットの手数料収入は、客室数の純増(年 4.5〜5%)と RevPAR(物価並み)と提携カードの上積みで、年 +8〜11% 伸び続ける。2026 年の総手数料は +11% の 60 億ドル超、4〜6 月は米加の RevPAR が +5.0% と業界を上回り、客室の予定は約 62.9 万室で今の 3 割強。提携カードの手数料は上半期だけで 1.3 億ドル、JP モルガン・チェースとアメリカン・エキスプレスとの新契約で今後も伸びる。
事業は資産が軽く、設備投資がほぼ要らないので、手数料の伸びがそのまま利益と還元の伸びになる。年 50 億ドル近い還元(配当と自社株買い)で株数は年 −2〜3% 減り、1 株あたりの価値は手数料の伸びに自社株買いが乗って年 +10% を超える。会員制度は 2.95 億人超に広がり、直販が OTA の手数料を下げる。オーナーが離れにくい理由である。
世界の客室数は 10 年で約 1.45〜1.6 倍に増え、フランチャイズ料と提携カード、成果報酬が積み上がる。PER が 30 倍超なのは、成長が 8% 台と高く、10 年後も成長の途中なら 25 倍は保てるから。
慎重な見方
今の PER 39 倍は、資本コスト 8.0%・長期の成長 4% の式の上限倍率 23 倍の約 1.7 倍で、成長が 6〜8% 台残る分を入れても、10 年後には 18 倍前後まで縮む。倍率の縮みだけで、利益が 2 倍になっても時価総額はほとんど伸びない。
手数料収入は景気に連動する。2009 年は RevPAR −17% で株価は −68%、2020 年は営業利益が 4 億ドルまで落ちた。今の 2026 年は中東(RevPAR −43%)が重く、純増は下限の 4.5%、海外の成果報酬は +6% と伸びが遅い。米国の RevPAR の伸びは業界予想が +2.5%〜+4.5% と幅があり、2025 年に鈍った。
オーナーの力が構造的な脅威。手数料・鍵金・ブランド基準の費用に不満が溜まれば、ヒルトン・ハイアット・IHG への切り替えが進み、AI を使った予約や民泊が直販の優位を薄める。自己資本はマイナスで純負債は 168 億ドル、年 50 億ドルの還元は純利益 26 億ドルを上回り、借金で続けている。借り換えで金利は 5.75% 近くに上がり、利払いが増える。優良でも、今の値段で買って 10 年持つ期待の年率は +4% 前後で、国債 5% より低い。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方が強く、今の値段と倍率の根拠は慎重な見方が強い。確率は中立を 10 年で 40% と最も厚くし、楽観とやや楽観を 30%、やや悲観と悲観を 30%(景気後退の確率を厚く)に置いた。10 年の中立は PER 約 18.4 倍(g 4%・k 8.0% の利益ベースの正当化 PER ×(1+g) の 8 割)で、今の倍率には寄せていない。総合の差は約 -33% で割高。結論は「優良な事業だが、今の値段は成長を先に織り込みすぎていて、利益ベースの倍率では割高」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 334.08 ドル882 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 147.10 ドル388 億ドル)。 今の値に割り戻すと 254.86 ドル673 億ドル、今との差 −35.8%、 期待の年率 +1.9%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 526.18 ドル1,389 億ドル | 174.99 ドル462 億ドル | +76.7% | +5.9% | 56.09 ドル148 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 433.84 ドル1,145 億ドル | 163.62 ドル432 億ドル | +50.6% | +4.2% | 131.44 ドル347 億ドル |
| 中立 | 40% | 348.81 ドル921 億ドル | 152.25 ドル402 億ドル | +26.3% | +2.4% | 200.42 ドル529 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 223.49 ドル590 億ドル | 129.52 ドル342 億ドル | −11.0% | −1.2% | 70.60 ドル186 億ドル |
| 悲観 | 10% | 123.23 ドル325 億ドル | 102.99 ドル272 億ドル | −43.0% | −5.5% | 22.62 ドル60 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 334.08 ドル882 億ドル | 147.10 ドル388 億ドル | +21.3% | +1.9% | 481.18 ドル1,270 億ドル |
今の株価時価総額 396.80 ドル1,047 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:客室は 2035 年に約 275 万室、会員制度の堀で利益率が 70% 台後半へ 利益 66 億ドル · PER 21.0 倍 · 株価時価総額 526.18 ドル1,389 億ドル
米加の純増は年 +3.6%、海外は中東・インド・東南アジアの新規で年 +6.4%。客室は 2035 年に約 275 万室(今の 1.6 倍)。会員制度(ボンヴォイ 2.95 億人超)への直販が強まり、提携カードの手数料も増え、1 室あたり手数料は 10 年で米加 1.55 倍、海外 1.50 倍(物価 1.41 倍を上回る)。総手数料 133 億ドル、営業利益 103 億ドル、純利益 66 億ドル。還元は 10 年で 462 億ドル。倍率は正当化 PER 23.4 倍の 9.0 割にあたる 21.0 倍に置いた。ヒルトン(客室 約 130 万室、純増 年 6〜7%)に純増で追いつかれず、会員制度の差でオーナーの獲得でも優位を保つ。提携カードの手数料が景気に強い収入として積み上がり、成果報酬の振れも小さくなる。
- 米国・カナダ(フランチャイズと管理契約):数量 150(客室数(万室))× 価格 0.50(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 75 億ドル・営業利益 60 億ドル。米国・カナダの客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
- 海外(管理契約の比率が高い):数量 125(客室数(万室))× 価格 0.46(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 57 億ドル・営業利益 41 億ドル。海外の客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
倍率:上限の正当化 PER 23.4 倍に対し、21.0 倍(9.0 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(楽観 +1.0 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 61.8%(k 8.00% + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k))、moat は 強い。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 88.7%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 47%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 66 億ドル × 21.0 倍で 1389 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:純増が 10 年にわたり年 +4% 台、1 室あたり手数料が物価を上回り続け、直販の会員制度も堀として強まる。全部がそろう確率は低く 8%。
やや楽観 22% やや楽観:客室は年 +4% で増え、手数料は年 +7.5% で伸びる 利益 58 億ドル · PER 19.7 倍 · 株価時価総額 433.84 ドル1,145 億ドル
米加の純増は年 +3.4%、海外は年 +5.7%(コンバージョンと新ブランド)。客室は約 263 万室。1 室あたり手数料は米加 1.50 倍、海外 1.44 倍。管理契約の成果報酬が戻り、フランチャイズの比率は上がるが営業利益率は保たれる。総手数料 123 億ドル、営業利益 94 億ドル、純利益 58 億ドル。還元は 432 億ドル。倍率は正当化 PER 23.2 倍の 8.5 割にあたる 19.7 倍に置いた。会員制度と提携カードの上積みで、1 室あたり手数料は物価を少し上回る。ヒルトンやハイアットとの競争は続くが、オーナーの離反は限られ、純負債は 300 億ドル前後に収まる。
- 米国・カナダ(フランチャイズと管理契約):数量 146(客室数(万室))× 価格 0.49(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 71 億ドル・営業利益 56 億ドル。米国・カナダの客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
- 海外(管理契約の比率が高い):数量 117(客室数(万室))× 価格 0.44(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 52 億ドル・営業利益 37 億ドル。海外の客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
倍率:上限の正当化 PER 23.2 倍に対し、19.7 倍(8.5 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(やや楽観 +0.5 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 56.4%(k 8.00% + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k))、moat は 強い。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 80.6%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 42%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 58 億ドル × 19.7 倍で 1145 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:世界最大のホテル会社で、会員制度・提携カード・規模の堀は広がる側と見る。22%。
中立 40% 中立:世界最大の手数料事業として客室は年 +3.8%、手数料は年 +7.3% で伸び、倍率は平常化 利益 50 億ドル · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 348.81 ドル921 億ドル
客室は 2035 年に約 250 万室(今の約 1.45 倍。米加 年 +3%、海外 年 +5%)。1 室あたり手数料は物価(10 年 1.41 倍)に提携カードの上積みを足し、手数料の低い選べる宿・長期滞在の比率の上昇を引いて、米加 1.45 倍、海外は新興国の比率が増えるため 1.38 倍。総手数料 112 億ドル(今の約 2.1 倍)、営業利益 84 億ドル、純利益 50 億ドル。純負債は 300 億ドル前後まで増えて利払いは約 17 億ドル。還元は 10 年で 402 億ドル(純利益の合計 約 390 億に純負債の増加分を足し、株式報酬の希薄化分を引き、2026 年に実行済みの自社株買い 18 億ドルを除いた)。倍率は正当化 PER 23.0 倍の 8.0 割にあたる 18.4 倍に置いた。
- 米国・カナダ(フランチャイズと管理契約):数量 141(客室数(万室))× 価格 0.47(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 66 億ドル・営業利益 52 億ドル。米国・カナダの客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
- 海外(管理契約の比率が高い):数量 109(客室数(万室))× 価格 0.42(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 32 億ドル。海外の客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
倍率:上限の正当化 PER 23.0 倍に対し、18.4 倍(8.0 割)に置いた。新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れるので 8.0 割に置いた。上限の中身は g 4.0%、RONIC 50.4%(k 8.00% + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k))、moat は 強い。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 71.5%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 38%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 50 億ドル × 18.4 倍で 920 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:業界ノートの中立(客室 年 +4〜5%、手数料収入 年 +7〜9%、営業利益率横ばい〜+1 ポイント)に、10 年のうちの景気の谷を 1 回分織り込んだ置き方。40%。
やや悲観 20% やや悲観:オーナーとの手数料交渉と海外の弱さで、客室は年 +2.5%、手数料は年 +5.5%、利益率は 70% 割れ 利益 35 億ドル · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 223.49 ドル590 億ドル
純増が米加で年 +2.5%、海外で年 +3.9% に鈍り、客室は約 232 万室。オーナーが手数料の引き下げを求め、他社ブランド(ヒルトン・ハイアット・IHG)や民泊への切り替えが進んで、米加の 1 室あたり手数料は 1.33 倍、海外は中東・中国の成果報酬の戻りが遅く 1.25 倍。総手数料 95 億ドル、営業利益 66 億ドル、純利益 35 億ドル。自社株買いは細り、還元は 342 億ドル。倍率は正当化 PER 22.5 倍の 7.5 割にあたる 16.9 倍に置いた。10 年のうちに景気の谷が 2 回来て、そのたびに自社株買いが止まり、純負債が積み上がる。会員制度の優位は残るが、直販の手数料の根拠が弱まり、オーナーとの交渉で手数料の率が下がる。
- 米国・カナダ(フランチャイズと管理契約):数量 134(客室数(万室))× 価格 0.43(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 58 億ドル・営業利益 43 億ドル。米国・カナダの客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
- 海外(管理契約の比率が高い):数量 98.0(客室数(万室))× 価格 0.38(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 38 億ドル・営業利益 24 億ドル。海外の客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
倍率:上限の正当化 PER 22.5 倍に対し、16.9 倍(7.5 割)に置いた。中立(8.0 割)より 0.5 割低くした。利益の質が悪い筋書きだからだ。上限の中身は g 4.0%、RONIC 39.5%(k 8.00% + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k))、moat は 強い。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 55.3%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 30%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 35 億ドル × 16.9 倍で 590 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:ホテルのオーナーとの交渉、直販の優位の薄まり、海外の地政学(中東・中国)で 10 年の成長が鈍る。20%。
悲観 10% 悲観:構造的に負ける(オーナーが離れ、直販と AI 予約で手数料の力が崩れる) 利益 22 億ドル · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 123.23 ドル325 億ドル
純増が年 +1.5% 台に止まり、客室は約 207 万室。ホテルのオーナーが大手の手数料の高さに反発して独立系・他社ブランドへ流れ、AI を使った予約・民泊(エアビーアンドビー)が直販の会員制度の優位を薄め、1 室あたり手数料は米加 1.15 倍、海外 1.05 倍と物価を大きく下回る。総手数料 73 億ドル、営業利益 47 億ドル、純利益 22 億ドル。借金は増え続け利払いは 18 億ドル。還元は 272 億ドル。もう優良なフランチャイズ会社ではなくなり、成長も止まる。ただし客室の約 207 万室と会員制度は残り、事業そのものが消えるわけではない。
- 米国・カナダ(フランチャイズと管理契約):数量 122(客室数(万室))× 価格 0.37(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 46 億ドル・営業利益 33 億ドル。米国・カナダの客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
- 海外(管理契約の比率が高い):数量 85.0(客室数(万室))× 価格 0.32(1 万室あたりの総手数料(億ドル))→ 売上 27 億ドル・営業利益 16 億ドル。海外の客室数(万室)と 1 万室あたりの総手数料
倍率:式どおり:g 1.5%(g はこの筋書きの数量と価格から置いた)、ROE 38.1%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 21%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 1.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)、k 8.00%。(1−g÷RONIC)÷(k−g) の値は来年の利益に対する倍率なので、10 年目の利益には ×(1+g) で 14.8 倍。RONIC = k + 残る割合 0.67 ×(事業の ROE − k)= 28.1%。上限の正当化 PER 21.4 倍の 6.9 割で、上限の内側。10 年目の利益の伸びは年 10% 未満なので 1 段。時価総額は、書いた純利益 22 億ドル × 14.8 倍で 325 億ドル。
確率:10 年で優良さを失う確率として 10%。会員制度と規模の堀が厚く、全部が同時に崩れる確率は低い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
米国・カナダ(フランチャイズと管理契約)
米国とカナダの客室から受け取る総手数料。提携カードの手数料も含む(推定)。
| 数量客室数(万室) | 価格1 万室あたりの総手数料(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 105 | 0.32 | 34 | 26 |
| 10 年後 中立 | 141 | 0.47 | 66 | 52 |
取り方:客室 約 105 万室(推定。世界約 172 万室の約 6 割)に、総手数料 約 34 億ドル(推定。全社約 54 億ドルの約 63%)を割って 1 万室あたり 0.324 億ドル(1 室あたり約 3,240 ドル)。営業利益 26 億ドル(手数料比 76%)と置き、全社の本社費・その他収益は adjust で調整。開示が薄く推定。
海外(管理契約の比率が高い)
米加以外の客室から受け取る総手数料。管理契約の成果報酬が景気・地政学で振れる。
| 数量客室数(万室) | 価格1 万室あたりの総手数料(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 67.0 | 0.31 | 21 | 14 |
| 10 年後 中立 | 109 | 0.42 | 46 | 32 |
取り方:客室 約 67 万室(推定)に、総手数料 約 20.5 億ドル(推定)を割って 1 万室あたり 0.306 億ドル。成果報酬の過半が海外で、営業利益 14 億ドル(手数料比 68%)と置く。推定。
リスクと懸念
景気後退と旅行需要の急減
2009 年は RevPAR −17%・株価 −68%、2020 年は営業利益が 4 億ドルまで落ちた。手数料は売上連動で、固定費は軽いが、成果報酬と海外の管理契約は深く落ちる。純負債 168 億ドルは、不況時に自社株買いを止める必要を生み、株価の下げを深くする。
オーナーとの交渉・ブランドの切り替え
ホテルのオーナーが手数料・鍵金・ブランド基準の費用(改装・IT)に不満を持ち、ヒルトン・ハイアット・IHG・ウィンダム・チョイスへ切り替える、または独立系に戻る恐れ。手数料の引き下げ要求は 1 室あたり手数料の伸びを鈍らせ、10 年の悲観の主因。
倍率の縮み
今の PER 39 倍は式の倍率(約 23 倍)の約 1.7 倍。k が 8.0%、k − g が 4.0% で、成長が 8% 台から 4% へ落ち着く過程で倍率は縮む。利益が 2 倍になっても倍率の縮みで時価総額が伸びず、1 株の値は横ばい圏に張り付く恐れがある。
純負債と自社株買いの持続性
自己資本はマイナス、純負債は 168 億ドルで、還元は純利益を上回る。借り換えで金利が 5.75% 近くに上がると、年 +2〜3 億ドルの利払いが増える。割高な局面での借金による自社株買いは、1 株の価値を薄める。
中東・地政学
4〜6 月に中東の RevPAR が −43%、客室の純増が下限(4.5%)にとどまる見通し。中東はドバイ・サウジの新規と高級ブランドの成長の源で、紛争が長引けば海外の成果報酬と純増が 2027〜28 年まで遅れる。
AI 予約・民泊と直販の優位
AI アシスタントによる予約や、エアビーアンドビーなど民泊の拡大が、会員制度への直販の優位と OTA 手数料の抑制を弱めうる。直販の優位が崩れれば、オーナーがマリオットに払う手数料の根拠が弱くなる。10 年の悲観の筋書きの主因の 1 つで、早い段階では見えにくい。
今後の分かれ目
- 米国・カナダの RevPAR が 4 四半期続けて +4% を超えたら
- 客室単価の力が戻った証拠で、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。1 室あたり手数料の伸びが物価を上回る。
- 成果報酬の海外が 2 年続けてマイナスになったら
- 中東・中国の弱さが構造的とわかり、やや悲観の確率を上げ、海外の手数料の伸びを 1 ポイント下げて見る。
- ホテルのオーナーとの手数料の引き下げや大手チェーンの契約解除が広がったら
- 10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。営業利益率を 2〜3 ポイント下げて見る。
- 純負債が 250 億ドルを超えて自社株買いを続けたら
- 還元の質が下がり、利払いの増加を純利益に、資本効率の低下を ROE に入れて倍率を引き直す。利払いの増加が純利益を削る。
- 景気後退が始まり、米国の失業率が 7% を超えたら
- RevPAR は −10〜−17%、営業利益は −20〜−25%。ならした利益に過去の谷の PER(2009 年の底で約 12 倍)を掛けた値が床になるが、自社株買いは止まり、時価総額は 2009 年のように 5〜7 割下がりうる。
見ておくもの
- 世界・米加・海外の RevPAR(稼働率と客室単価の内訳)
- 純増客室数と予定の客室数(今 約 62.9 万室)
- 総手数料の内訳(基本管理・成果報酬・フランチャイズ・提携カード)
- 中東の RevPAR と建設の進み
- ホテルのオーナーとの契約更新・切り替えの動き
- 純負債と自社株買いの額、利払い
- 提携カードの手数料(上半期 1.3 億ドル)
倍率と資本コストの決め方
今の PER 39 倍と今の時価総額を見る前に、米加と海外に分け、客室数 × 1 室あたり総手数料で売上を積み、営業利益率で利益を置いた。倍率は k 8.0%(基本 8.0% + quality 0%)・g 4% を、利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 2/3 ×(事業の ROE − k)。投下資本がごく小さく ROIC は 100% を超えるので、上限は 1÷(k−g) に近い)に入れ、10 年目の利益に ×(1+g) を掛けた値の 7〜9 割に置いた(10 年の中立 約 18.4 倍)。今の 39 倍や過去の PER の中央(約 31 倍)への寄せはしていない。結果は中立の 10 年で今の時価総額を下回り、還元を足しても年率 +2.7% で、割高が出た。今の倍率より低く置いたことは自覚しており、楽観でも今の値に届くかを点検した。10 年の悲観は利益ベースの式の 7 割台(約 15 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 5% + β 1.11 × 5%。資本コスト k = 基本 8.0% + quality 0% = 8.0%(v2。株価の揺れ(β)は使わない)。手数料中心の資産の軽い事業で、景気連動はあるが固定費が軽く、世界最大のブランド網が堀。借金は少し重いが利息は営業利益で十分に賄える。オーナーとの交渉・中東などの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。