結論
エアビーアンドビーは、個人の家や部屋を貸す「ホスト」と旅行客を引き合わせる世界最大の民泊プラットフォームである。2025 年の泊数は約 5.3 億泊、取扱高は約 913 億ドル、売上は 123 億ドル(取扱高の約 13.5% が手数料)、営業利益は 26 億ドル(営業利益率 21.2%)、純利益 25 億ドル。2026 年 4〜6 月期は泊数が 10% 増、取扱高 +16%、売上 +17% と加速し、通期の売上見通しは「少なくとも 10 代半ば」、調整後の利益率は 35.5% 以上へ上がった。
事業の質は高い。物件を持たず、設備投資は売上の 1〜2% で、手元現金は 110 億ドルと借金(23 億ドル)を上回る純現金の会社である。ホストと客の双方が増えるほど互いに呼び合う効果と、広く知られたブランドで、広告費に頼らず客を集められる点が堀になる。一方で、各国の都市が民泊を規制し(ニューヨークはほぼ禁止、バルセロナは 2028 年に免許を更新しない)、供給の天井が見えている。ブッキング・ホールディングス(Booking Holdings)やエクスペディア・グループ(Expedia)がホテルと民泊の両方で競い、グーグルの AI が旅行の入口を握る危険もある。
バリュー投資の観点では、事業の強さは疑わないが値段が先走っている。数量(泊数)× 1 泊の売上で積むと、10 年後の中立は泊数 8.8 億泊、売上 338 億ドル(今の約 2.7 倍)、営業利益 93 億ドル、純利益 76 億ドル。10 年目でも年 1 割で伸びる途中だが、倍率は資本コスト 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)の利益ベースの正当化 PER(事業の ROE が高くても資本コストを超える稼ぎは先で薄れる。上限 17.4 倍)の 8 割にあたる 13.9 倍に置き、手元の純現金 88 億ドルを足して時価総額は約 1,126 億ドル。配当と自社株買いを足した年率は +4% 前後で資本コストに届かない。規制と AI の入口は倍率から割り引かず、やや悲観 22%・悲観 12% と厚い確率で表した。総合の差は -28% 前後で、結論はやや割高(事業は強いが、値段は資本コストを超える稼ぎが長く続く前提に寄っている)。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もあるかを問う。答えは、ある。人は旅行し、特に家族・グループ・長期滞在では「家を借りる」需要が残る。「今より強いか」は割れる。ブランドと物件の厚みは強まるが、供給は規制で頭打ちになり、ホテルチェーンやブッキングに脅かされる。堀は広がるより、守る面が大きい。
オーナー利益は、設備が軽いので純利益に近く、2025 年の約 25 億ドル、2026 年は 29 億ドル前後と見る。ただしフリーキャッシュフロー(約 46 億ドル)は株式報酬の戻しと客から預かる代金の時間差で膨らんでおり、株主が自由に使える正味の利益は純利益に近い。自社株買いの多くは株式報酬による増発を打ち消すだけで、見かけほど株主には残らない。
安全域では、今の PER 41 倍は、今後 10 年に売上が年 10% 以上伸び、営業利益率も上がり続けることを前提にしている。10 年後の中立で利益ベースの PER 約 13.9 倍と期末の純現金を置くと、配当込みの年率は +4.2% で資本コスト 8.75% に届かない。楽観(確率 10%)なら年率 +9% 前後、構造的に負ける悲観なら年 -8%。安く買えるわけではない。わかりにくいのは規制と AI の入口で、そのぶん確信度を下げた。経営の資本配分は大きな失敗が少なく、純現金の財務も健全だが、値段は事業の強さを先取りしており、安全域は小さい。
何で稼ぐ会社か
売上のほぼ全てが「民泊・宿泊」で、ホスト(個人や小規模の事業者)が掲載した家・部屋・アパートを客が予約すると、客からサービス料(約 14%)、ホストから手数料(約 3%)を受け取る。合計すると取扱高の約 13.5% が会社の売上になる。2025 年の泊数は約 5.33 億泊、1 泊あたりの取扱額(ADR)は約 171 ドル、1 泊あたりの売上は約 23 ドルである。2026 年 4〜6 月は ADR が 184 ドル(+5%)まで上がった。大きな家(グループ旅行)の比率が上がっているためで、泊数の 6 割強がアプリ経由という点も広告費の低さにつながる。
新しい事業は 3 つ。第 1 に「サービス」(シェフ・フォト・送迎など)と「体験」。第 2 に 2026 年 5 月に発表した、ブティックホテル・レンタカー・食料品配達などをアプリに載せる拡張で、「家だけ」から「旅のあらゆる入口」へ広げる構想。第 3 に決済・広告の収入である。ただし今は売上の数 % 以下の小さな事業で、投資負担もあり利益はまだ出ていないと推定する。
費用の中心は人件費(株式報酬を含む)、広告費、信頼・安全の対応費である。会社は AI による顧客対応で 1 予約あたりの費用が前年比約 10% 下がったと説明している。景気には敏感で、2020 年は売上が 3 割落ちて営業損失が約 34 億ドル出たが、資産が軽く需要が戻ると利益も急速に戻った。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 は掲載物件の厚みで、ホテルチェーンでは取れない「その土地の暮らしの家」の供給が約 800 万件あり、特に長期滞在・グループ・家族向けでは代わりがきかない。第 2 は双方向のブランドと信頼の仕組み(レビュー・保証・決済)で、ホストと客のどちらも増えるほど価値が上がる。第 3 は直接来る客の多さで、泊数の過半が直接・アプリ経由なので、検索広告への依存がブッキングより小さい。
資本効率は極めて高い。設備投資が軽く、営業利益率は 21%(調整後の EBITDA では 35%)、フリーキャッシュフローは売上の約 38% で純利益を上回る(客から先に代金を預かる時間差と株式報酬の戻しを含む)。自己資本は 82 億ドルと小さく ROE は 30% 台だが、株式報酬が多い点は割り引いて見る。経営はブライアン・チェスキー最高経営責任者が創業から率い、2020 年の危機でも黒字化を早く達成した。自社株買いも積極的だが、株式報酬の増発を打ち消す分が大きい。
弱点は 3 つ。第 1 に供給が規制に縛られる(都市ごとの免許・上限日数・禁止)。第 2 にホテルの比率が低く、ビジネス出張や短期の需要はブッキングに劣る。第 3 に新事業(サービス・体験・ホテル)は過去にも何度か立ち上げて十分な収益に育っていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の宿泊市場は年約 60 億泊(ブッキングの業界ノートと同じ推定)で、オンライン予約は約半分、民泊は全体の 1 割弱。エアビーアンドビーは泊数約 5.3 億泊で、世界の宿泊の約 9% を占める。旅行需要の実質成長は年 3% 前後、1 泊の単価は物価並みの年 3.5% が基本だが、ADR は大きな家の比率とアジア・南米の増加で動く。2026 年は泊数が 10% 伸びており、市場平均を大きく上回る。
競合は 4 つの筋。第 1 にブッキング・ホールディングス(宿泊の約 12 億泊、ホテルと民泊を持ち、AI 時代の入口でも提携先に選ばれる)。第 2 にエクスペディア・グループ(バケーションレンタルのヴルボ(Vrbo)を持つ)。第 3 にホテルチェーンの会員制(マリオット・ヒルトンの直販と家の事業)。第 4 に中国のトリップ・ドット・コム(Trip.com)などアジアの旅行会社。民泊でアジア・欧州のシェアを広げるには、ブッキングとの競争が避けられない。
構造の変化は 2 つ。1 つ目は規制で、スペインは 2025 年 12 月に 6,500 万ユーロ(約 7,500 万ドル)の罰金を科し、バルセロナは 2028 年に免許の更新を止め、ニューヨークは 2023 年からほぼ全面的に禁止、パリも強化している。大都市の民泊が減る分は郊外・地方・新興国で補うことになる。2 つ目は AI で、グーグルなどが AI のエージェントで旅行を計画・予約する入口を作ると、直接来る客に頼るエアビーアンドビーも検索の入口に依存するようになる。会社は AI で顧客対応と検索の質を上げ、「入口の AI を自社で持つ」路線を進めるが、最上流の AI 検索はまだ試験の段階である。循環では、2026 年は旅行需要が堅調で加速中だが、景気後退では民泊も真っ先に予算を削られる。
資本政策と M&A
還元は積極的。自社株買いは 2024 年約 34 億ドル、2025 年約 38 億ドルで、2025 年 Q2 に新たに最大 60 億ドルの枠を設けた(残枠は 2025 年 Q3 時点で約 66 億ドル)。配当はない。ただし株式報酬で株が増えるため、実際に株数が減るのは年 1〜3%(2025 年は −3.0%)で、正味の還元は株式報酬の穴埋めを引いて見る。
財務は強い。現金等 110 億ドル(顧客から預かった資金を含む)に対し有利子負債 23 億ドルで、純現金は約 88 億ドル(時価総額の 8.5%)。金利が高い局面では受取利息が毎年 5 億ドル前後入り、純利益を支える(金利の変化による利払いの変化は、純現金なので織り込み済みでほぼゼロ)。M&A は小さい買収(体験のスタートアップなど)が中心で、大型買収で価値を壊した過去は少ない。2026 年の買収の動きは確認できていない。買われる側になるには時価総額が大きく、可能性は小さい。今後の鍵は、新事業への投資を抑えつつ、株式報酬を減らして正味の還元を増やせるかである。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 21.4 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
エアビーアンドビーは、民泊という新しいカテゴリーを作った会社で、約 800 万件の物件と世界的なブランドは、ブッキングでもグーグルでも一から作れない。2026 年 4〜6 月は泊数が 10% 増、取扱高 +16%、売上 +17% と加速し、利益率も上がっている。アプリ経由が 64% で広告費に頼らず、AI の顧客対応で 1 予約あたりの費用も下がる。
数量では、世界の宿泊約 60 億泊のうち民泊のシェアはまだ 1 割弱で、泊数は年 7% 前後で 10 年伸びる余地がある。価格では ADR が物価(3.5%)以上に上がる傾向があり、ホテル・サービス・体験・決済の拡張でテイクレートも上がる。営業利益率は 21% から 30% 台へ上がる余地がある。新事業が当たれば、ホテル予約でブッキングのシェアを削り、10 年後の営業利益は今の 5 倍になる。成長がこれだけ続くなら、2 段階の式で PER 30 倍、時価総額は今の 3.4 倍になる。
慎重な見方
今の PER 41 倍は、10 年の高成長を織り込み済みである。民泊は規制に弱く、ニューヨーク・バルセロナ・パリ・アムステルダムなど大都市が次々と閉め出しにかかり、スペインは罰金まで科した。供給が減れば価格は上がるが、泊数は減る。2026 年の高成長は、前の年の低さ(2025 年は泊数 +8%)や為替(約 3 ポイント)の恩恵もある。
ブッキングは民泊とホテルの両方を持ち、AI 時代の入口でもグーグルの提携先に選ばれている。エアビーアンドビーは入口を検索大手に頼る面が小さいとはいえ、AI のエージェントが旅行を計画する時代になれば、直接来る客の優位は削られる。新事業(ホテル・サービス・体験)は過去にも立ち上げのたびに期待を裏切り、投資負担で利益率を押し下げてきた。株式報酬は売上の約 1 割あり、純利益の質を割り引く必要がある。旅行は景気後退で最初に削られる支出で、2020 年は営業損失が 34 億ドルに膨らんだ。
どちらに重みを置いたか
事業の質と成長の速さは強気の見方が強いが、倍率が高すぎる点は慎重な見方が強い。確率は、規制と競争で泊数の伸びが鈍るやや悲観を 22% と厚く置き、構造的に負ける悲観を 12% とした。倍率は利益ベース(資本コスト 8.75%、中立の 10 年は上限 17.4 倍の 8 割で約 13.9 倍)にし、規制と AI の不安で割り引くのをやめ、手元の純現金 88 億ドルを帳簿の値で数えた。中立の 10 年後の年率は資本コストに届かず、結論はやや割高。上振れ(楽観とやや楽観の合計 34%)を当てにしないと割安とは言えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 188.04 ドル1,113 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 62.97 ドル373 億ドル)。 今の値に割り戻すと 122.68 ドル726 億ドル、今との差 −30.2%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 327.15 ドル1,937 億ドル | 97.74 ドル579 億ドル | +141.7% | +9.2% | 42.49 ドル252 億ドル |
| やや楽観 | 24% | 252.20 ドル1,493 億ドル | 84.22 ドル499 億ドル | +91.4% | +6.7% | 80.74 ドル478 億ドル |
| 中立 | 32% | 190.17 ドル1,126 億ドル | 67.33 ドル399 億ドル | +46.5% | +3.9% | 82.40 ドル488 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 122.70 ドル726 億ドル | 41.99 ドル249 億ドル | −6.3% | −0.6% | 36.23 ドル215 億ドル |
| 悲観 | 12% | 57.92 ドル343 億ドル | 18.34 ドル109 億ドル | −56.6% | −8.0% | 9.15 ドル54 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 188.04 ドル1,113 億ドル | 62.97 ドル373 億ドル | +42.8% | +3.6% | 251.01 ドル1,486 億ドル |
今の株価時価総額 175.76 ドル1,040 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:泊数の成長が 10 年続き、ホテルも柱になる 利益 115 億ドル · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 327.15 ドル1,937 億ドル
10 年後(2035 年)、泊数は年 +7.0% で 10.5 億泊(世界市場 約 80 億泊 × シェア 13.1%)。1 泊の売上は物価(1.41 倍)に ADR とテイクレートの上昇で +6% を乗せた 33.64 ドル。新事業は取扱高 480 億ドル、テイクレート 15%(ホテル・サービスの手数料)で売上 102 億ドルの柱になる。営業利益率は民泊 33%・新事業 25%、営業利益は約 142 億ドル、純利益 115 億ドル。直接来る客の多さで広告費が低いまま、AI の入口を自社で作る。ブッキングのホテル事業のシェアを削る。PER は利益ベースの式(事業の ROE 60%)の 85% に余った現金を足して約 18.3 倍。自社株買いと配当で 10 年に正味約 579 億ドル。倍率は正当化 PER 18.1 倍の 9.0 割にあたる 16.2 倍に置いた。
- 民泊・宿泊(泊数 × 1 泊売上):数量 1,050(予約された泊数(百万泊)。世界の宿泊市場 約 60 億泊 × シェア 約 9%)× 価格 34(1 泊あたり売上(ドル)= 1 泊の取扱額(約 171 ドル)× テイクレート(約 13.5%)× 物価指数)→ 売上 353 億ドル・営業利益 117 億ドル。シェア 13%・価格 +6%
- 新事業(ホテル・サービス・体験・決済広告):数量 480(新事業の取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.21(取扱高に対する売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 102 億ドル・営業利益 25 億ドル。取扱高 480 億ドル・テイクレート 15%
倍率:上限の正当化 PER 18.1 倍に対し、16.2 倍(9.0 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(楽観 +1.0 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 28.1%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 47.5%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 48%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 0.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 115 億ドル × 16.2 倍(余った現金は別に足す)で 1937 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:規制の影響が主要都市に限られ、AI の入口でも優位を保ち、新事業が柱になる展開。10 年この条件が揃う確率は 1 割。
やや楽観 24% やや楽観:民泊は成長を保ち、新事業が少しずつ育つ 利益 93 億ドル · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 252.20 ドル1,493 億ドル
10 年後、泊数は年 +6.1% で 9.6 億泊(シェア 12.0%)。1 泊の売上は 32.53 ドル(物価 1.41 倍に +2.5%)。新事業は取扱高 380 億ドル、テイクレート 14.5%、売上 78 億ドル。営業利益率は民泊 31%・新事業 22%、営業利益は約 114 億ドル、純利益は 93 億ドル。ホテルでブッキングを脅かすには至らないが、サービス・体験・広告が少しずつ伸びる。規制はヨーロッパで強まるが、アジア・南米・米国の郊外で補う。PER は利益ベースの式の 85% で約 18 倍。自社株買いは株式報酬の穴埋めを引いて 10 年で正味約 499 億ドル。倍率は正当化 PER 18.0 倍の 8.5 割にあたる 15.3 倍に置いた。
- 民泊・宿泊(泊数 × 1 泊売上):数量 960(予約された泊数(百万泊)。世界の宿泊市場 約 60 億泊 × シェア 約 9%)× 価格 33(1 泊あたり売上(ドル)= 1 泊の取扱額(約 171 ドル)× テイクレート(約 13.5%)× 物価指数)→ 売上 312 億ドル・営業利益 97 億ドル。泊数 +6.1%・価格 +2.5%
- 新事業(ホテル・サービス・体験・決済広告):数量 380(新事業の取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.20(取扱高に対する売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 78 億ドル・営業利益 17 億ドル。取扱高 380 億ドル
倍率:上限の正当化 PER 18.0 倍に対し、15.3 倍(8.5 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(やや楽観 +0.5 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 27.7%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 46.6%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 47%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 0.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 93 億ドル × 15.3 倍(余った現金は別に足す)で 1493 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:規制は大都市の一部、新事業は育つが柱には届かない展開。足元の成長の延長に近い。
中立 32% 中立:成熟した優良企業として年 +10% の売上成長 利益 76 億ドル · PER 13.9 倍 · 株価時価総額 190.17 ドル1,126 億ドル
10 年後、泊数は年 +5.1% で 8.8 億泊(市場 約 80 億泊 × シェア 11%)。1 泊の売上は物価並みの 31.74 ドル(手数料率は横ばい)。新事業は取扱高 300 億ドル、テイクレート 14%、売上 59 億ドル。売上は 338 億ドルで今の約 2.7 倍(年 +10.6%)、営業利益率は民泊 29%・新事業 20%、営業利益は約 93 億ドル、純利益は 76 億ドル。規制で主要都市の民泊が減り、郊外・地方・新興国で補う。ブッキング・エクスペディアとはシェアを分け合う。規制と AI の不確実さは倍率でなく確率で表した。今の PER 41 倍には寄せていない。自社株買いと配当は株式報酬の穴埋めを引いて 10 年で正味約 399 億ドル。倍率は正当化 PER 17.4 倍の 8.0 割にあたる 13.9 倍に置いた。
- 民泊・宿泊(泊数 × 1 泊売上):数量 880(予約された泊数(百万泊)。世界の宿泊市場 約 60 億泊 × シェア 約 9%)× 価格 32(1 泊あたり売上(ドル)= 1 泊の取扱額(約 171 ドル)× テイクレート(約 13.5%)× 物価指数)→ 売上 279 億ドル・営業利益 81 億ドル。泊数 +5.1%・シェア 11%
- 新事業(ホテル・サービス・体験・決済広告):数量 300(新事業の取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.20(取扱高に対する売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 59 億ドル・営業利益 12 億ドル。取扱高 300 億ドル
倍率:上限の正当化 PER 17.4 倍に対し、13.9 倍(8.0 割)に置いた。新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れるので 8.0 割に置いた。上限の中身は g 4.0%、RONIC 22.8%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 36.8%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 37%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 0.0(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 76 億ドル × 13.9 倍(余った現金は別に足す)で 1126 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:業界ノートの中立(宿泊の泊数 年 +5〜6%、単価 物価並み、手数料率 横ばい)に沿う。規制は供給の天井、新事業は投資負担をこなして黒字化。
やや悲観 22% やや悲観:規制と競争で成長が鈍り、優良さが薄れる 利益 52 億ドル · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 122.70 ドル726 億ドル
10 年後、泊数は年 +3.9% で 7.8 億泊(シェア 9.8%)。1 泊の売上は 30.15 ドル(物価 1.41 倍に対しテイクレートと ADR で −5%)。新事業は取扱高 220 億ドル、テイクレート 13%、売上 40 億ドル。営業利益率は民泊 24%・新事業 14%、営業利益は約 62 億ドル、純利益は 52 億ドル。主要都市で供給が減り、AI の入口でブッキングとホテルが優先され、広告費が上がって手数料率が下がる。事業は残るが、もう高成長の優良企業ではない。g 3.5%・事業の ROE 35% の利益ベースの式の 85% に余った現金を足して PER 約 15 倍。自社株買いは株式報酬を引いて 10 年で正味約 249 億ドル。倍率は正当化 PER 17.2 倍の 7.5 割にあたる 12.9 倍に置いた。
- 民泊・宿泊(泊数 × 1 泊売上):数量 780(予約された泊数(百万泊)。世界の宿泊市場 約 60 億泊 × シェア 約 9%)× 価格 30(1 泊あたり売上(ドル)= 1 泊の取扱額(約 171 ドル)× テイクレート(約 13.5%)× 物価指数)→ 売上 235 億ドル・営業利益 56 億ドル。泊数 +3.9%・価格 −5%
- 新事業(ホテル・サービス・体験・決済広告):数量 220(新事業の取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.18(取扱高に対する売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 40 億ドル・営業利益 6 億ドル。取扱高 220 億ドル
倍率:上限の正当化 PER 17.2 倍に対し、12.9 倍(7.5 割)に置いた。中立(8.0 割)より 0.5 割低くした。利益の質が悪い筋書きだからだ。上限の中身は g 4.0%、RONIC 22.1%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 35.5%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 52 億ドル × 12.9 倍(余った現金は別に足す)で 726 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:大都市の規制が広がり、AI の入口と競争で手数料率が下がる展開。業界の見通しとして現実味が高い。
悲観 12% 悲観:規制と AI で供給と入口を失い、優良企業でなくなる 利益 25 億ドル · PER 12.3 倍 · 株価時価総額 57.92 ドル343 億ドル
10 年後、主要都市の規制が全面化し、ホストの撤退で供給が減る。AI のエージェントがホテルとブッキングを優先し、エアビーアンドビーは入口を失う。泊数は年 +1.2% で 6.0 億泊、1 泊の売上は 27.61 ドル(テイクレートと ADR で基調より約 13% 下)。新事業は取扱高 120 億ドルにとどまる。営業利益率は民泊 16%・新事業 6%、営業利益は約 28 億ドル、純利益は 25 億ドル(2025 年の利益と同じ水準)。もう優良企業ではなく、仲介者として g 2.5%・事業の ROE 20% の利益ベースの式の 85% に余った現金を足して純利益の約 14 倍。自己資本は 55 億ドルで PBR は 5 倍台になり、床は純利益 × 倍率で測る。自社株買いは 10 年で正味約 109 億ドル。
- 民泊・宿泊(泊数 × 1 泊売上):数量 600(予約された泊数(百万泊)。世界の宿泊市場 約 60 億泊 × シェア 約 9%)× 価格 28(1 泊あたり売上(ドル)= 1 泊の取扱額(約 171 ドル)× テイクレート(約 13.5%)× 物価指数)→ 売上 166 億ドル・営業利益 27 億ドル。泊数 +1.2%・価格 −13%
- 新事業(ホテル・サービス・体験・決済広告):数量 120(新事業の取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 0.17(取扱高に対する売上の比率(テイクレート)× 物価指数)→ 売上 20 億ドル・営業利益 1 億ドル。取扱高 120 億ドル
倍率:式どおり:g 1.5%(g はこの筋書きの数量と価格から置いた)、ROE 15.4%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))、k 8.75%。(1−g÷RONIC)÷(k−g) の値は来年の利益に対する倍率なので、10 年目の利益には ×(1+g) で 12.3 倍。RONIC = k + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k)= 12.1%。上限の正当化 PER 14.1 倍の 8.7 割で、上限の内側。10 年目の利益の伸びは年 10% 未満なので 1 段。時価総額は、書いた純利益 25 億ドル × 12.3 倍で 343 億ドル。
確率:リーマン級の景気後退に加え、10 年の間に主要都市の民泊が全面的に閉められ、AI の入口をホテルと検索大手に握られる構造的な負けが起きる。確率は 1 割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
民泊・宿泊(泊数 × 1 泊売上)
ホスト(個人・小規模事業者)の家・部屋の予約仲介。客のサービス料とホストの手数料で取扱高の約 13.5%。
| 数量予約された泊数(百万泊)。世界の宿泊市場 約 60 億泊 × シェア 約 9% | 価格1 泊あたり売上(ドル)= 1 泊の取扱額(約 171 ドル)× テイクレート(約 13.5%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 533 | 23 | 120 | 28 |
| 10 年後 中立 | 880 | 32 | 279 | 81 |
取り方:2025 年の泊数 5.33 億泊(二次情報)。売上のほぼ全て 120 億ドルを泊数で割り、1 泊あたり約 22.5 ドル(取扱高 913 億ドル ÷ 5.33 億泊 = 約 171 ドル × 13.5% + 他)。営業利益は全社 26 億ドルと新事業の赤字(約 2 億ドル)から逆算し約 28 億ドル(利益率 23%)。売上(億ドル)= 泊数(百万泊)× 1 泊の売上(ドル)× 0.01。
新事業(ホテル・サービス・体験・決済広告)
2026 年 5 月に広げたブティックホテル・レンタカー・食料品配達、サービス・体験、広告。
| 数量新事業の取扱高(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定) | 価格取扱高に対する売上の比率(テイクレート)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 25.0 | 0.12 | 3 | −2 |
| 10 年後 中立 | 300 | 0.20 | 59 | 12 |
取り方:サービス・体験・広告の合計を売上約 3 億ドル(全社の約 2.5%)、取扱高 25 億ドルと推定(開示がなく、テイクレート 12% から逆算)。立ち上げ費用で営業損益は約 −2 億ドルの赤字と推定。
リスクと懸念
規制による供給の天井(大都市の民泊禁止)
ニューヨークは 2023 年からほぼ全面禁止、バルセロナは 2028 年に免許を更新せず、パリ・アムステルダムなども強化している。スペインは 2025 年 12 月に 6,500 万ユーロの罰金を科した。主要な都市の供給が減ると、郊外や新興国で補うにしても泊数の伸びが鈍る。規制は一度かかると戻らず、広がる方向にしか動かない。
AI の入口とブッキング・エクスペディアの競争
グーグルの AI が旅行の計画と予約の入口を握ると、直接来る客が多いエアビーアンドビーも検索の中の 1 つの選択肢になる。ブッキングは民泊とホテルを両方持ち、提携先として AI の入口にも入っている。ホテルへの拡張はブッキングのシェアを直接削る分、反撃を呼ぶ。
今の高い倍率(PER 41 倍)と成長の鈍化
2026 年は泊数 +10%、売上 +17% と加速しているが、為替(約 3 ポイント)や前年の低さの恩恵もある。成長が年 10% を割ると、今の PER 41 倍は一気に縮む。市場は 10 年の高成長を既に織り込んでいる。
株式報酬と見かけの還元
株式報酬は売上の約 1 割あり、毎年の自社株買い(約 38 億ドル)の相当部分は増発の穴埋めに消える。見かけのフリーキャッシュフロー(約 46 億ドル)は、株式報酬の戻しと客から預かる代金の時間差で膨らんでおり、株主の取り分は純利益に近い。
旅行需要の景気感応度
2020 年は売上が約 3 割落ち、営業損失は約 34 億ドルに膨らんだ。民泊は旅行の予算が削られる時に真っ先に落ち、ホストが貸すのをやめて供給も減る。資産が軽く、需要が戻れば利益も戻るが、谷は深い。
新事業の立ち上げ失敗
サービス・体験・ホテル・レンタカーは過去にも立ち上げを繰り返してきたが、期待ほどの収益には育っていない。投資の負担で利益率が上がらない、または下がる期間が続く危険がある。ホテルはブッキングとエクスペディアの本拠で、後発として値引きや広告費で客を奪いにいくと、民泊で稼いだ利益を新事業が食う形になりうる。
今後の分かれ目
- ニューヨーク・パリ・東京・ロンドンなど主要都市で民泊の上限や禁止が広がったら
- 泊数の伸びが年 2〜3 ポイント下がる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- グーグルの AI 予約でエアビーアンドビーが優先されず、ブッキングが優先されたら
- 直接来る客の優位が崩れる。広告費が上がり、手数料率が下がる。悲観の確率を上げる。
- ホテル・サービス・体験が黒字化し、取扱高が全体の 1 割を超えたら
- 新事業が柱になる。楽観とやや楽観の確率を上げ、営業利益率の上限を上げて見る。
- 泊数の伸びが年 5% を割り込み、売上の伸びが 1 桁前半に落ちたら
- 今の高い倍率は維持できない。中立の倍率を 2〜3 倍下げて見る。
- 旅行需要が急減し、泊数が前年比マイナス 10% 以下になったら
- 悲観に近づく。自社株買いは止まるが、純現金が大きいので回復は早い。
- 株式報酬が売上の 1 割を下回り、正味の還元が増えたら
- オーナー利益が上がる。payout の置き方を引き上げてよい。
見ておくもの
- 泊数の伸びと ADR(為替除く)、取扱高の伸び
- アプリ経由・直接来る客の比率(広告費の対売上比)
- 主要都市の規制の動き(ニューヨーク・バルセロナ・パリ)
- ホテル・サービス・体験の取扱高と利益
- グーグルの AI 予約の展開とエアビーアンドビーの扱い
- ブッキング・エクスペディアの民泊・ホテルの伸び
- 営業利益率と、株式報酬を差し引いた正味の還元
倍率と資本コストの決め方
今の PER 41 倍を見る前に、民泊(泊数 × 1 泊の売上)と新事業(取扱高 × テイクレート)に分け、物価 3.5%(10 年 1.41 倍)を価格に、市場の伸びとシェアを数量に置いて売上と営業利益を積んだ。次に k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)・g 4%・事業の ROE(顧客の預り金と現金を除く。上限 100%)の利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k))の 8 割に倍率を置いた(10 年の中立は 13.9 倍)。期末の純現金は 1 ドルで足す。規制と競争の不確実さは倍率から引かず確率で表した。ブッキングと比べ堀は普通(残る割合 1/2)と見た。今の高い倍率に引きずられず、結果が割高側に出てもそのまま出した。悲観・やや悲観は 3 割強と厚く置いた。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β 1.17 × 5%。資本コスト k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%(v2。株価の揺れ(β)は使わない)。旅行は景気で振れるが、設備が軽く純現金で財務の危うさはない。規制や AI の入口による個別のリスクは k に足さず、確率(やや悲観 22%・悲観 12%)と泊数・手数料率で表した。事業は傾いていないので extra は 0。