結論
ベイル・リゾーツは、ベイル、ブリッケンリッジ、パークシティ、ウィスラー・ブラッコムなど、世界42のスキー場を運営する大手リゾート会社である。筆者の結論は割高だ。簡単には再現できない山岳資産を持つものの、その希少性だけでは、雪不足と重い借金を抱えた株式の値段を正当化できない。
最大の強みは、複数の有名スキー場を一つのシーズンパスで利用できるエピック・パスである。2026年7月期のリフト収入の約70%を事前販売のパスが生み、滑走人日の約73%をパス利用者が占めた。翌冬の雪が降る前に収入の相当部分が決まり、顧客との関係も翌年へ続く。この仕組みと、数十年かけて取得した山岳運営権には、本物の参入障壁がある。
しかし、2026年7月期には米国西部の歴史的な雪不足で滑走人日が13.4%減り、営業利益は約4.4億ドル、純利益は約1.5億ドルまで落ちた。2026年9月18日時点の翌シーズン向けパス販売も、枚数で約12%減少している。純負債は台帳基準で31.3億ドル、自己資本は2.4億ドルしかない。景気だけでなく、雪が少ない年が続くこと自体が株主の取り分を脅かす。
中立では、10年後の滑走人日が約1750万に戻り、名目単価の上昇によって売上が約46億ドルになると考える。それでも人件費、造雪設備、借り換え金利を負担すると、純利益は約3.9億ドルにとどまる。長期の資本コストは9.5%である。事業が成長しても、買収や多額の還元で傷んだ財務が十分に回復するとは限らない。
5つの筋書きと正味の株主還元を現在価値に戻した本質価値は約28.7億ドルで、台帳の時価総額52.5億ドルに対して約45%低い。10年間の還元込み期待年率は約1.5%となり、求める資本コストには届かない。スキー場そのものは長く残ると見るが、優れた山岳資産と優れた株式投資は同じではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まずベイルとウィスラーの山を、2036年に新しく作ろうとしたらどうなるかを考える。土地を確保し、森林利用の許可を取り、リフトや宿泊施設を整え、何十年もかけてブランドを築く必要がある。大規模リゾートの新設がほとんどない市場で、既存の42施設を束ねる会社には価値がある。十年後もスキーという体験は消えず、AIがその体験を代替することもない。
ただし、企業の資産が希少でも、株主に残る現金が少なければ高く評価できない。2026年のフリーキャッシュフローは約2.5億ドルだったが、配当の支払いだけで約3.2億ドルを要した。リフト、造雪、宿泊、人員への維持投資を削り続けることはできない。純利益より多い還元の不足分を借金に頼るなら、株主は実際には将来のキャッシュフローを前借りしている。
資本配分への評価は厳しい。買収はネットワークの堀を厚くしたが、2019年から2026年までを見ても、純負債が増える中で営業利益は伸びていない。天候と買収、還元の影響が混じるため増分ROICを正確には分離できないが、利益の改善が証明されるまで新たな買収の価値を先取りしない。今は買収より、既存施設の稼働、サービス品質、負債の削減を優先する方が株主にとって理にかなう。
筆者が求める安全域は、良い雪が降り、パス販売が戻った場合だけ成立するものではない。雪が悪い年、競合に顧客が移る年、借金を借り換える年を通して、残余利益が資本コストを上回る必要がある。中立でも10年後の時価総額は約44億ドルにとどまる。期間中の正味の還元を加え、割り引いても今の時価総額には届かない。会社の将来を否定するのではなく、株主に帰属する利益の値段を区別した結論である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はマウンテン事業である。北米、スイス、オーストラリアの42スキー場で、リフト券、シーズンパス、スキー教室、山上飲食、用品販売、レンタルを提供する。2026年7月期のマウンテン売上は約25.0億ドルで、全社の約88%を占める。売上のうち約14.5億ドルがリフト・パス収入で、残りは来場者が滞在中に使うサービスから生まれる。
リフトの商売は、滑走人日の数と、1滑走人日当たりの実現収入で決まる。2026年7月期は約1530万滑走人日、実現単価は約94.85ドルだった。この単価は高い日券だけの値段ではなく、シーズンパスの収入を実際の利用日数へ配分した平均である。雪が少なく利用日数が減ると、同じパス収入でも見かけの単価が上がるため、単価上昇をそのまま値決め力の改善とは読めない。
スキー教室は約2.8億ドル、飲食、用品・レンタル、その他のマウンテン収入は合計約7.8億ドルである。教室やレンタルの利用件数は十分に開示されないため、来場人日と1人日当たりの利用額で収益を捉える。遠方から数日滞在する旅行客は地元客よりこうしたサービスを多く使うため、同じ来場人日でも客層によって利益が変わる。
宿泊事業は約3.3億ドルの売上を持つ。ロックリゾーツのホテル、運営受託するコンドミニアム、グランドティトン国立公園の宿泊施設、交通、ゴルフなどである。保有・管理する客室は約4500室だが、すべてを自社が所有するわけではない。2026年の自社保有ホテルの平均客室単価は約325ドル、稼働率は52.1%だった。季節性が強く、一般の都市ホテルより稼働が低い。
不動産事業は土地の売却と開発計画を担当する。継続的に大量の住宅を建てる事業ではなく、スキー場周辺の土地を第三者の開発業者へ売り、宿泊施設や商業施設を増やす役割が中心だ。売却益は年度によって大きく振れるため、恒常的な利益の柱とは見ない。
この会社の特徴は、雪山への来場がすべての収入を生むことである。パスが売れれば翌冬の現金収入を先取りでき、来場者が増えれば教室、飲食、宿泊が連鎖して伸びる。逆に雪不足は複数の事業を同時に傷つける。しかもリフト、造雪設備、宿泊施設、人員の相当部分は、客が減っても維持しなければならない。
優良さと弱いところ
最大の堀は、山そのものの希少性である。北米では大規模なスキー場を新しく建設するための土地、森林利用許可、道路、リフト、水利権をそろえることが難しい。会社の年次報告書によれば、北米で大規模な新規デスティネーション型スキー場は45年以上ほぼ生まれていない。ベイルやウィスラーほどの立地と設備を、資金だけで複製することはできない。
二つ目の堀は、エピック・パスのネットワークである。コロラドの大型リゾートと東部・中西部の都市近郊スキー場を束ね、旅行先と普段滑る場所を一つの商品にできる。顧客は早期購入の値引き、同行者割引、レンタルや飲食の優待を受ける。パスの更新、利用履歴、予約情報も蓄積されるため、個別のスキー場より顧客を維持しやすい。
値決め力は確かにある。高級リゾートの日券は高額で、2026年には滑走人日当たり実現収入も上昇した。ただし同年は滑走回数の減少が平均単価を押し上げており、純粋な値上げの成功とは区別すべきだ。さらに13〜30歳向けパスを約20%割り引く施策は、若年層の取り込みに価格の調整が必要になったことを示す。
資本効率は見かけほど高くない。2026年のROEは約61%だが、これは多額の配当と自社株買いによって自己資本が2.4億ドルまで縮んだ影響が大きい。営業利益の税引き後の額を、自己資本と純負債の合計で測ると、足元のROICは概算で10%前後となる。かつての買収と継続的な設備投資が、毎年資本コストを大きく上回る増分利益を生んだとは立証できない。
堀は強いが、広がり続けているとは言えない。競合のアイコン・パスも有力な山を束ね、顧客の選択肢を増やしている。暖冬が重なるほどパスの更新率と雪山ブランドへの信頼が傷み、強い資産が高い固定費へ変わる恐れがある。なお、現地の山岳設備と身体的な体験を売る事業であり、人月・席課金・操作画面をAIエージェントが置き換える事業類型には当たらない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
北米のスキー市場は成熟している。2025〜26年シーズンの北米全体の滑走人日は約7290万で、そのうちベイル・リゾーツの北米施設は約1310万、シェアは17.9%だった。前年は北米市場約8110万、同社約1540万でシェア18.9%だった。市場も会社も雪不足で大きく減ったうえ、同社のシェアは約1ポイント低下した。長期の数量成長を、観光産業全体の伸びと同じ速さで考えるのは危険だ。
最大の競争相手は、アルテラ・マウンテン・カンパニーが展開するアイコン・パスである。ディアバレー、マンモス、パリセーズ・タホ、スティームボートなどの有力施設が集まり、2026〜27年向けアイコン・パスの提携先は世界80デスティネーションに及ぶ。独立系ではアスペン・スノーマス、ジャクソンホール、スノーバードなども強い。アルテラや各独立系の年間滑走人日シェアは統一された形では開示されず、提携先の数をそのまま市場シェアとみなすことはできない。
市場は枚数よりも顧客の支出額が伸びてきた。高額な日券を買う代わりに、複数施設を利用できる事前購入パスへ移行することで、運営会社は天候に左右される当日券を減らせる。しかしパスが普及し切れば、新規販売を増やす余地は狭くなる。2026年秋の販売減少は、前年の雪不足による購入延期なのか、需要の飽和なのかを見分ける重要な材料となる。
10年先の最大の構造変化は気候である。標高の高い施設は相対的に有利だが、気温上昇によって降雪が不安定になれば、造雪のための水、電力、人員が一層必要になる。低標高の東部・中西部施設には、短い営業期間と設備費の負担が重なる。夏の観光やゴルフは補完収入にはなるが、会社自身も冬の利益を完全には代替できないと説明している。
宿泊市場では、周辺の独立系ホテル、貸別荘、エアビーアンドビーに加え、マリオットやヒルトンのブランドホテルとも競争する。スキー教室、レンタル、山上飲食は滑走人日が基礎市場となるが、各サービスの市場全体の売上や競合別シェアには信頼できる統一統計がない。土地売却も地域ごとの不規則な取引であり、恒常的な市場シェアを設定しない。
中立では2036年の北米滑走人日を約7800万と見る。ベイルの北米シェアが18%台半ばに戻れば、北米施設は約1450万滑走人日となる。海外施設を合わせた1750万滑走人日は、過去の良いシーズンを大幅に上回るものではない。競争と気候を考慮し、数量の強気な増加よりも、物価に沿った単価の回復を利益の中心に据える。
資本政策と M&A
経営は長年、スキー場の買収、設備投資、配当、自社株買いを組み合わせてきた。2016年にはウィスラー・ブラッコム、2019年にはオーストラリアのフォールズクリークとホッサム、2022年にはスイスのアンデルマット、2024年にはクラン・モンタナを取得した。これらは山岳ネットワークを広げたが、取得費用と設備投資に対して十分な増分ROICを生んだかは慎重に見る必要がある。
2026年7月期の配当支払額は約3.17億ドル、自社株買いは約0.45億ドルで、GAAP純利益の約1.48億ドルを大きく超えた。営業キャッシュフロー約4.80億ドルから設備投資を引いたフリーキャッシュフローも約2.5億ドルで、配当だけでもこれを上回る。年間の株式報酬費用は約0.28億ドルあるため、総還元をそのまま正味の株主利益とはしない。
自社株買いは累計約14.4億ドル実施され、2026年7月末時点で約122万株の取得余地が残る。ただし買い付けの金額や時期の約束はない。2026年9月には四半期配当の維持が発表された。2026暦年の中核設備投資計画は2.15〜2.20億ドル、成長投資等を含めると2.29〜2.34億ドルである。
会社が示す2027年7月期の見通しは、リゾート事業の調整後EBITDAが8.05〜8.65億ドル、帰属純利益が1.58〜2.33億ドルである。追加の効率化効果を見込むが、パス販売の弱さと物価上昇が相殺する。2028年までにさらに約0.30億ドルの費用削減を進める方針だが、長期の純利益やROICについて数値の約束はない。
財務では2030年度に約17.4億ドルの債務償還が集中し、借り換え能力が重要になる。会社定義の2026年7月末純負債は約29.2億ドルだが、評価の財務基準には添付factsの31.3億ドルを使う。分類の差を完全には照合できないため、差額を恣意的に利益へ加えない。
2026年10月には、オアシス・マネジメントが約9.6%の保有を示し、取締役候補を擁立する委任状争奪戦が進んでいる。サービス、価格設定、資本配分の改善を促す可能性はあるが、改革の成功や資産売却益は確定していない。大型の買収、非公開化、上場廃止について成立済みの合意は確認されず、継続企業の前提に重要な疑義を付す注記も確認されない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ベイル・リゾーツの山岳資産は他社が簡単に作れず、しかも北米最大級のスキー場群を一つのパスで利用できる。この二つの優位は10年後も残る。2026年の歴史的な雪不足は異常な一季であり、来場者が2025年の水準に戻るだけで、リフト収入と山上の付帯収入は大きく回復する。事前販売のパスがリフト収入の約70%を占める仕組みも、短い冬の収益を安定させている。
2026年秋のパス枚数の減少だけでブランドの衰退を判断するのは早い。会社は無制限パスが相対的に堅調で、短日数のパス購入者が購入を遅らせていると説明する。若年層向け割引、友人向けリフト券、食事とレンタルの改善が、休眠客や初心者を再び呼び込む可能性がある。都市近郊のスキー場からベイルやウィスラーへの旅行へ誘導できる点は、独立系スキー場にない力だ。
アルテラのアイコン・パスは強い競争相手だが、市場全体を広げる側面もある。高い日券を毎回買うより事前購入パスが得だと認識する人が増えれば、早期販売の習慣は定着する。欧州のアンデルマットとクラン・モンタナは、現地施設の改善と世界的なパス網への参加によって収益を伸ばす余地がある。
長い目では、来場人日が増えなくても、値段の上昇と飲食、レッスン、レンタルの利用拡大で売上が成長する。ベイルは2026年の低い利益水準から回復する余地が大きい。株主への配分を維持できるだけの現金が戻り、借金を徐々に減らせば、強いブランドの価値は現在の市場評価を上回りうる。
慎重な見方
本当の問題は一度の暖冬ではなく、暖冬の頻度が増えることだ。2026年は北米の滑走人日が大きく減り、ロッキー山脈では降雪量と積雪が歴史的な低水準になった。雪不足のたびに営業日数が短くなり、造雪に電力と水が必要になる。エピック・パスで収入を先取りできても、利用者が毎年満足しなければ翌年の更新は減る。実際、次期のパス枚数は9月時点で約12%減っている。
競争も構造的に厳しい。アルテラのアイコン・パスはディアバレー、マンモス、パリセーズ・タホを含む有力施設を結び、選べる旅行先を増やした。高い日券に対する不満や混雑、駐車場、リフト待ち、サービス品質が悪化すれば、ブランドの強さは逆に期待外れの大きさとなる。若年層への大幅割引は新規客を増やすが、既存客にも値引きが広がれば実現単価は伸びにくい。
財務の余裕はさらに小さい。2026年の自己資本は約2.4億ドル、純負債は約31億ドルである。2030年には大きな債務償還が集中する。今の配当はフリーキャッシュフローを上回り、暖冬が数年続けば自社株買いだけでなく配当を削る必要が出る。利益が低いのに還元を優先すれば、リフトや造雪設備を更新する資金が不足する。
スイスの買収は海外への分散だが、同じ雪の産業の中で地域を増やしているにすぎない。欧州でも気候や環境規制は残る。国立公園の宿泊運営権では新契約の手数料率が上がり、宿泊の収益力を押し下げる。価値の源である希少な山が、株主にとって高価な維持義務へ変わる筋書きこそ深く考える必要がある。
どちらに重みを置いたか
山岳資産とパス網の堀は本物であり、事業の存続では強気の見方が勝る。しかし株式の価値では、雪不足、負債、維持投資、配当の持続性を問う慎重な見方が勝る。確率は楽観とやや楽観を計27%、中立を38%、やや悲観と悲観を計35%とし、下側へ寄せた。AI代替が原因ではなく、天候の不確実性と固定費の大きさが理由である。
10年後の中立は純利益3.85億ドル、時価総額43.62億ドルとなる。正味還元を含む確率加重の現在価値は28.7億ドルで、今の52.5億ドルとの差は約マイナス45%である。強い堀には相応の価値を認めるが、買収や値上げの成功を前提に今の価格を正当化しない。結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 128.78 ドル46 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 49.32 ドル18 億ドル)。 今の値に割り戻すと 83.30 ドル30 億ドル、今との差 −45.1%、 期待の年率 +1.9%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 357.60 ドル128 億ドル | 89.41 ドル32 億ドル | +194.4% | +13.2% | 35.76 ドル13 億ドル |
| やや楽観 | 19% | 236.51 ドル85 億ドル | 75.44 ドル27 億ドル | +105.5% | +8.7% | 59.27 ドル21 億ドル |
| 中立 | 38% | 129.95 ドル47 億ドル | 58.67 ドル21 億ドル | +24.2% | +2.6% | 71.68 ドル26 億ドル |
| やや悲観 | 23% | 21.96 ドル8 億ドル | 22.35 ドル8 億ドル | −70.8% | −14.3% | 10.19 ドル4 億ドル |
| 悲観 | 12% | 6.71 ドル2 億ドル | 3.35 ドル1 億ドル | −93.4% | −26.0% | 1.21 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 128.78 ドル46 億ドル | 49.32 ドル18 億ドル | +17.3% | +1.9% | 178.11 ドル64 億ドル |
今の株価時価総額 151.83 ドル54 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:北米の滑走市場が成長し、エピック・パスと付帯消費がともに拡大 利益 8 億ドル · PER 15.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 357.60 ドル128 億ドル
雪の条件が平年並みに戻り、北米のスキー参加者は若年層と家族を中心に増える。2036年の北米市場は約9000万滑走人日となり、ベイルは北米のシェアを約20.5%へ広げる。海外を含む滑走人日は2150万に達する。アルテラのアイコン・パスは成長するが、ベイル、ブリッケンリッジ、ウィスラーのブランドと都市近郊施設の組み合わせが競争力を保つ。
エピック・パスの更新が進み、若年客の取り込みが成功する。リフト実現単価は2026年の約1.62倍となり、付帯サービスも客数と単価の両方が増える。スキー教室では新しい個人レッスン商品が浸透し、レンタルと食事の改善も客単価を押し上げる。スイスの既存買収施設も利用客を増やすが、まだ合意していない大型買収の利益は含めない。
売上は約63.6億ドル、営業利益は約14.2億ドルに達する。価格改定と稼働率の改善で固定費を吸収し、純利益は8.0億ドルとなる。2027年以降の利益累計は44億ドルで、正味還元32億ドルを差し引くと自己資本は14.4億ドルへ回復する。2030年の借り換えを乗り切り、純負債は約24億ドルへ減少する。株式報酬の相当額を除いた還元を続けられるほど、オーナー利益が厚くなる。
- マウンテン:リフト券・エピック・パス:数量 2,150(万滑走人日)× 価格 0.02(1万滑走人日当たり実現リフト収入(億ドル))→ 売上 33 億ドル・営業利益 12 億ドル。北米市場約9000万人日×シェア約20.5%に海外を加えた数量。実現単価は1.62倍。
- マウンテン:スキー教室:数量 2,150(万滑走人日)× 価格 0.00(1万滑走人日当たり教室売上(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。初心者育成と高単価の個人レッスンが定着し、利用率を含む実現収入が1.54倍。
- マウンテン:飲食・用品・レンタル・その他:数量 2,150(万滑走人日)× 価格 0.01(1万滑走人日当たり付帯売上(億ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 2 億ドル。滞在型旅行客の回復と飲食・レンタルの高付加価値化で1人日当たり収入は約1.60倍。
- 宿泊・国立公園施設・交通・ゴルフ:数量 165(万供給可能客室泊換算)× 価格 0.04(1万供給可能客室泊当たり宿泊部門売上(億ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。宿泊需要の拡大と物価超の客単価上昇。客室の実質供給も増える。
- 不動産・開発用地売却:数量 2.0(年間売却取引量指数(2026年=1))× 価格 0.09(売却取引量指数1単位当たり売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。第三者開発の進展で売却量が増えるが、不動産益への依存は小さい。
倍率:k9.5%、2036年以降のg4.0%。長期市場数量+0.7%、シェア寄与+0.2%、実現価格+3.1%を基礎とする。資本の必要量を示す事業ROEは約51.0%。これは税引き後営業利益10.62億ドルを自己資本14.4億ドルと想定純負債約24億ドルの合計で割るROIC約27.7%から、税引き後借入金利約4.3%と標準化負債比率1倍を使って補正した値である。強い堀の残存割合2/3からRONIC37.17%。正当化PERは(1-g/RONIC)/(k-g)×(1+g)=約16.87倍。その約90%の15.19倍を採用。価格、数量、サービスの上振れは利益に含まれるため、倍率は上限いっぱいにしない。GAAP純利益8.0億ドル×15.19倍=121.52億ドル。純負債の利払いを利益から控除済みなので、時価総額から借金を再控除しない。
確率:北米市場が2026年の7290万から約9000万滑走人日へ成長し、ベイルの北米シェアも約20.5%へ上がる必要がある。雪の回復、若年層の定着、競合への優位、借金削減がそろうため8%とする。
やや楽観 19% やや楽観:天候が正常化し、海外施設と付帯消費が堅調に伸びる 利益 6 億ドル · PER 13.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 236.51 ドル85 億ドル
2026年の雪不足を抜けると、北米の滑走市場は約8300万人日へ戻り、緩やかに成長する。ベイルの北米シェアは19%台半ばとなる。海外の施設も利用を伸ばし、全社の滑走人日は1930万となる。アイコン・パスと競争を続けるが、都市近郊と大型リゾートを結ぶエピック・パスの価値は保たれる。
パス販売は2027年以降に改善し、2026年の客数減少による実現単価の歪みも次第に解消する。値上げは物価を少し上回る水準で定着し、飲食、レンタル、教室の利用率も上がる。スイスの施設は設備投資の効果が出て、米国西部への依存を少し下げる。国立公園の運営権では手数料率上昇の負担が残るが、宿泊売上がこれを吸収する。
売上は約54.1億ドル、営業利益は約11.3億ドルになる。純利益6.0億ドルは金利負担を含んだGAAPの額である。借金を増やすような大型買収は実施せず、維持投資を優先したうえで10年間の正味還元は27億ドルとなる。純利益累計35億ドルから還元を差し引き、自己資本は10.4億ドルへ回復する。ROICは十分に高いが、価格と来場者の成長が永遠に続くとは考えない。
- マウンテン:リフト券・エピック・パス:数量 1,930(万滑走人日)× 価格 0.01(1万滑走人日当たり実現リフト収入(億ドル))→ 売上 28 億ドル・営業利益 10 億ドル。北米市場約8300万人日、シェア約19.4%。海外を加え、実現単価は1.54倍。
- マウンテン:スキー教室:数量 1,930(万滑走人日)× 価格 0.00(1万滑走人日当たり教室売上(億ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。高付加価値の個人指導が増え、来場人日当たり売上が約1.46倍。
- マウンテン:飲食・用品・レンタル・その他:数量 1,930(万滑走人日)× 価格 0.01(1万滑走人日当たり付帯売上(億ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 2 億ドル。食事とレンタルの改善、滞在型客の回復で客単価は約1.52倍。
- 宿泊・国立公園施設・交通・ゴルフ:数量 150(万供給可能客室泊換算)× 価格 0.04(1万供給可能客室泊当たり宿泊部門売上(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。供給可能客室泊と客室関連収入がともに増える。
- 不動産・開発用地売却:数量 1.5(年間売却取引量指数(2026年=1))× 価格 0.08(売却取引量指数1単位当たり売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。周辺用地の売却が少し増えるが、恒常利益への寄与は小さい。
倍率:k9.5%、g3.7%。2036年以降の市場数量+0.4%、シェア寄与0%、実現価格+3.3%で成長を組み立てる。税引き後営業利益約8.5億ドル、自己資本10.4億ドル、想定純負債26億ドルからROIC約23.4%。借入税後金利約4.3%と標準化負債比率1倍で事業ROE約42.3%へ補正する。強い堀の残存割合2/3でRONIC31.37%。正当化PERは10年目利益基準で約15.77倍であり、その約85%の13.40倍を採用する。成長の大部分を2036年までの利益増加に反映済みである。GAAP純利益6.0億ドル×13.40倍=80.40億ドル。
確率:2026年の異常な雪不足から回復し、既存リゾートの稼働と高付加価値化が進む筋書き。大規模なシェア奪取までは要らないが、パス販売の減少が一時的である必要があり19%。
中立 38% 中立:来場者は過去の良い年に戻り、物価並みの値上げで利益が回復 利益 4 億ドル · PER 11.3 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 129.95 ドル47 億ドル
北米の滑走市場は2026年の約7290万から2036年に約7800万滑走人日へ増える。ベイルの北米シェアは18%台半ばに戻り、海外を合わせた全社滑走人日は1750万となる。これは2025年の全社滑走人日約1767万とほぼ同じである。エピック・パスのネットワークは残るが、アルテラのアイコン・パスも強く、長期の大幅なシェア拡大は期待しない。
リフトの実現単価は10年間で約1.41倍になる。これは物価3.5%が続く世界にほぼ沿う上昇であり、2026年の利用日数減少による見かけの高単価を無制限に延長したものではない。スキー教室、飲食、レンタル、宿泊も来場客の回復と値上げで伸びる。ただし人件費と造雪費用も増え、2022年の高い営業利益率へ完全には戻らない。
売上は約45.7億ドル、営業利益は約8.4億ドル、純利益は3.85億ドルとなる。純利益には借り換え後の利息と税、少数株主の取り分を織り込む。2030年の借り換えを経て純負債を抑え、今の還元水準は維持できないため、配当や買い戻しを長期的に調整する。10年間のGAAP純利益累計26.3億ドルに対して正味還元は21億ドルとなり、自己資本は7.7億ドルまで回復する。
希少な山岳資産とパスの堀は残るが、その価値は大きな利益成長よりも、長く続く適正なキャッシュフローとして評価される。中立の10年後は、現在より強い会社ではあっても、借金の制約から解放された会社ではない。
- マウンテン:リフト券・エピック・パス:数量 1,750(万滑走人日)× 価格 0.01(1万滑走人日当たり実現リフト収入(億ドル))→ 売上 23 億ドル・営業利益 8 億ドル。北米市場約7800万人日×シェア約18.6%に海外約300万人日を加える。実現単価は1.41倍。
- マウンテン:スキー教室:数量 1,750(万滑走人日)× 価格 0.00(1万滑走人日当たり教室売上(億ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。レッスン参加率はおおむね維持。客単価は10年で約1.38倍。
- マウンテン:飲食・用品・レンタル・その他:数量 1,750(万滑走人日)× 価格 0.01(1万滑走人日当たり付帯売上(億ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 1 億ドル。飲食・レンタル・その他の実現収入は約1.41倍。売上増に対して人件費も上昇。
- 宿泊・国立公園施設・交通・ゴルフ:数量 140(万供給可能客室泊換算)× 価格 0.04(1万供給可能客室泊当たり宿泊部門売上(億ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。客室泊換算は約15%増。名目客単価は物価に沿って約1.41倍。
- 不動産・開発用地売却:数量 1.1(年間売却取引量指数(2026年=1))× 価格 0.08(売却取引量指数1単位当たり売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。土地の小規模な売却を続けるが、利益の柱とはしない。
倍率:k9.5%、g3.2%。2036年以降の市場数量+0.4%、シェア寄与-0.3%、実現価格+3.1%から長期成長を算出した。帳簿のROEは自己資本が小さいため約50%となるが、倍率には使わない。営業利益8.39億ドルの税引き後約6.29億ドルを、自己資本7.7億ドルと想定純負債約28億ドルの投下資本で割り、ROIC約17.6%を得る。これに税引き後借入金利約4.3%と標準化負債比率1倍を適用し、事業ROE約30.7%とする。強い堀の残存割合2/3からRONIC23.63%。正当化PERは(1-g/RONIC)/(k-g)×(1+g)=約14.16倍で、その80%の11.33倍を採用。財務の弱さ、気候変動、維持投資の負担から上限まで評価しない。GAAP純利益3.85億ドル×11.33倍=43.62億ドル。純負債の増加利息は純利益に含め、さらに時価総額から借金を引かない。
確率:北米市場が年率約0.7%で増え、2025年の同社シェアにほぼ戻る筋書き。2026年の低い売上を出発点としながら、気候の悪化、アイコン・パスとの競争、費用上昇を均衡させる。最も起こりやすい状態として38%。
やや悲観 23% やや悲観:パスの更新が弱く、造雪・人件費・借り換えが利益を削る 利益 1 億ドル · PER 7.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 21.96 ドル8 億ドル
北米市場は2026年の約7290万から約7000万滑走人日へ縮み、ベイルの北米シェアは約16.5%へ落ちる。アルテラのアイコン・パスは有力リゾートを通じて旅行客を獲得する。ベイルでは若年層への割引を続けても新規客が十分に増えず、スキー場の混雑や価格への不満がパスの更新を妨げる。全社の滑走人日は1450万となる。
山岳設備の維持は簡単に減らせない。営業期間が短くなる地域では造雪費が増え、リフトと圧雪設備にも更新投資が必要となる。宿泊は稼働率が下がり、国立公園の運営費負担も重い。リフト実現単価は名目で上がるが、10年間で1.27倍にとどまり物価に負ける。付帯サービスの客単価も伸びにくくなる。
全社売上は約33.2億ドル、営業利益は約3.6億ドルである。借り換え後の利払いが純利益を圧迫し、帰属純利益は0.8億ドルに落ちる。2030年の償還には資産売却や運転資金の圧縮も使う。配当を大幅に減らし、自社株買いをほぼ停止するため、10年間の正味還元は8億ドルになる。純利益累計11億ドルから還元を差し引くと自己資本は5.4億ドルである。
事業は残っても、利益率と増分ROICは資本コストを十分に上回らない。スキー場を増やすことより既存設備の保全が優先となり、株主が高い倍率を払う理由は弱まる。
- マウンテン:リフト券・エピック・パス:数量 1,450(万滑走人日)× 価格 0.01(1万滑走人日当たり実現リフト収入(億ドル))→ 売上 17 億ドル・営業利益 4 億ドル。北米市場約7000万人日、シェア約16.5%。価格は10年で1.27倍にとどまる。
- マウンテン:スキー教室:数量 1,450(万滑走人日)× 価格 0.00(1万滑走人日当たり教室売上(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。受講率と高額レッスンの需要が弱まり、利益率も低下。
- マウンテン:飲食・用品・レンタル・その他:数量 1,450(万滑走人日)× 価格 0.01(1万滑走人日当たり付帯売上(億ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 0 億ドル。近距離・低支出の客が増え、飲食とレンタルの単価は物価を下回る。
- 宿泊・国立公園施設・交通・ゴルフ:数量 125(万供給可能客室泊換算)× 価格 0.03(1万供給可能客室泊当たり宿泊部門売上(億ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。宿泊需要が停滞。管理費と国立公園の運営権費用が利益を圧迫。
- 不動産・開発用地売却:数量 1.0(年間売却取引量指数(2026年=1))× 価格 0.07(売却取引量指数1単位当たり売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。土地売却は継続するが、継続利益への寄与はない。
倍率:k9.5%、g1.2%。2036年以降の市場数量-0.5%、シェア寄与-0.8%、実現価格+2.5%である。事業が成熟しても雪不足と価格競争が利益を削る。帳簿ROEは純利益0.8億ドル÷自己資本5.4億ドル=約14.8%で、40%を超えないためこれを元手効率に使う。強い堀の残存割合2/3を形式上適用したRONICは約13.03%。正当化PERは約11.07倍となるが、利益の継続性、固定費、借り換えの制約から7.75倍とする。中立11.33倍より低く、事業の稼ぐ力を基本にした値であり、過去の谷の倍率は使わない。純利益0.8億ドル×7.75倍=6.20億ドル。
確率:今後も雪不足の年が繰り返され、アイコン・パスへの流出と価格への不満が重なる状態。事業は存続し黒字も残るが、利益の回復が鈍る確率として23%。
悲観 12% 悲観:暖冬の常態化と顧客流出で山岳資産が重荷になり、再建が必要 利益 −1 億ドル · PBR 1.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 6.71 ドル2 億ドル
暖冬が繰り返され、雪を作っても営業できる日数と地形が減る。北米の市場は約6500万滑走人日まで縮小し、ベイルの北米シェアは14%台半ばに落ちる。アイコン・パスや積雪条件の良い独立系リゾートに旅行客が移り、都市近郊施設では利用が大きく減る。海外を含む全社の滑走人日は1180万となり、2026年よりさらに約23%少ない。
パスの価格は長期の物価上昇についていけなくなり、リフト実現単価は10年間で約1.14倍しか上がらない。スキー教室、飲食、レンタルでも利用率が落ちる。宿泊は営業赤字が続く。設備を維持するための資金需要と、雪不足による利用者減少の悪循環が生じる。スイス施設の買収はこの問題を解決せず、リゾートの一部は売却や縮小の候補になる。
売上は約23.8億ドル、営業利益は約2.5億ドルに縮む。借り換え金利と償却負担によりGAAP純損失は約0.65億ドルとなる。配当と自社株買いは早期に停止し、10年間の正味還元は最初の時期を中心に1.2億ドルしか残らない。途中の損失・減損を含む純損益累計はマイナス1億ドルとなり、期末自己資本は0.2億ドルまで薄くなる。
この状態では正常な利益倍率に意味がなく、保有する山岳施設、土地、宿泊施設の処分可能価値と負債の優先順位が株主の取り分を決める。希少資産には残存価値を認めるが、債権者より後ろにいる普通株主の価値は大きく傷む。未成立の買収や救済取引からの上振れは含めない。
- マウンテン:リフト券・エピック・パス:数量 1,180(万滑走人日)× 価格 0.01(1万滑走人日当たり実現リフト収入(億ドル))→ 売上 13 億ドル・営業利益 3 億ドル。北米市場約6500万人日、ベイルの北米シェア約14.5%。実現単価は物価を大きく下回る。
- マウンテン:スキー教室:数量 1,180(万滑走人日)× 価格 0.00(1万滑走人日当たり教室売上(億ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。レッスン参加率の低下と固定的な指導体制の負担。
- マウンテン:飲食・用品・レンタル・その他:数量 1,180(万滑走人日)× 価格 0.00(1万滑走人日当たり付帯売上(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。利用者が低支出化し、名目の付帯売上単価も現在を下回る。
- 宿泊・国立公園施設・交通・ゴルフ:数量 105(万供給可能客室泊換算)× 価格 0.03(1万供給可能客室泊当たり宿泊部門売上(億ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。ホテルとコンドミニアムの稼働率が低く、固定的な費用が残る。
- 不動産・開発用地売却:数量 0.5(年間売却取引量指数(2026年=1))× 価格 0.08(売却取引量指数1単位当たり売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。保有土地の売却は進むが、通常の売上としては小さく、再建目的の資産売却益は利益に積み上げない。
倍率:2036年のGAAP純利益は赤字のためPERではなく、現時点の自己資本2.4億ドルを分母とする資産床のPBR1.0倍で測る。2036年の自己資本0.2億ドルに積み上げ倍率を掛けない。山岳施設と土地には売却可能な価値があるものの、純負債31.3億ドルに加えてリースと施設維持の約束があるため含み益を加算しない。現在の自己資本2.4億ドル×PBR1.0倍=2.40億ドル。これは倒産を確定したゼロ評価ではなく、事業再建後に普通株へわずかな取り分が残る筋書きである。
確率:温暖化による営業日数の短縮、パスの更新率低下、アイコン・パスへの流出、高い負債が同時に悪化する尾部事象。大規模リゾートの希少性から事業の完全消失は想定しないが、株主価値が大きく毀損する確率として12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
マウンテン:リフト券・エピック・パス
スキー・スノーボードの滑走権を販売する主力事業。事前購入パスと当日・日数券を含み、実現収入は滑走人日と販売商品の構成によって変わる。
| 数量万滑走人日 | 価格1万滑走人日当たり実現リフト収入(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 1,530 | 0.01 | 15 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,750 | 0.01 | 23 | 8 |
取り方:2026年7月期10-Kの世界合計滑走人日1529.9万、Lift revenue14.51068億ドル、ETP94.85ドルから構成した。北米市場7290万滑走人日×ベイルの北米シェア17.9%=約1310万滑走人日で、海外約220万を加える。パス収入約70%、パス利用者の来場約73%。実現単価はパスの売上を利用人日で割るため、販売価格だけでなく実際の利用回数にも動かされる。営業利益4.4億ドルはマウンテンのGAAP営業利益の分析用配分であり、会社がリフトだけの営業利益として開示した数値ではない。
マウンテン:スキー教室
初心者向け講習、グループレッスン、個人レッスンを提供する。売上は来場者数、レッスンへの参加率、実際の受講単価によって決まる。
| 数量万滑走人日 | 価格1万滑走人日当たり教室売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 1,530 | 0.00 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,750 | 0.00 | 4 | 1 |
取り方:2026年10-KのSki school revenue2.78050億ドルを世界の滑走人日1529.9万で割り、1滑走人日当たり約18.17ドルの教室売上とした。レッスンの実受講件数と平均単価は開示されないため、参加率を含めた実現収入である。北米の滑走市場7290万人日が主な基礎市場だが、教室だけの市場売上や競合シェアは推定しない。営業利益は分析用配分。
マウンテン:飲食・用品・レンタル・その他
山上レストラン、約330の用品販売・レンタル拠点、夏季のリフト観光、その他の施設利用から収益を得る。滞在型旅行客の比率が高いほど来場人日当たりの支出が増える。
| 数量万滑走人日 | 価格1万滑走人日当たり付帯売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 1,530 | 0.01 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,750 | 0.01 | 13 | 1 |
取り方:2026年10-KのDining2.22518億ドル、Retail/rental2.82774億ドル、Other2.68774億ドルの合計約7.74億ドルを添付factsの丸めに合わせ7.75億ドルとして扱う。滑走人日1529.9万で割ると1人日約50.7ドルになる。夏季収入も含むため季節ごとの純粋な客単価ではないが、年度の総需要と付帯収入を結び付ける物差しとして使用する。用品の実販売点数とレンタル件数は非開示。営業利益は分析用配分。
宿泊・国立公園施設・交通・ゴルフ
自社保有ホテルと管理受託するコンドミニアム、国立公園の宿泊施設、交通、ゴルフを運営する。客室収入と宿泊に伴う飲食・サービス収入を含む。
| 数量万供給可能客室泊換算 | 価格1万供給可能客室泊当たり宿泊部門売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 122 | 0.03 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 140 | 0.04 | 5 | 0 |
取り方:2026年10-Kの保有ホテル客室収入0.87976億ドル÷RevPAR169.04ドルと、管理コンドミニアム客室収入0.73665億ドル÷RevPAR105.39ドルから、合計約121.95万の供給可能客室泊を推定した。宿泊部門売上3.28827億ドルには飲食、交通、国立公園施設、ゴルフ、管理人件費の精算も含め、1供給可能客室泊当たり約270ドルに換算する。約4500の保有・管理客室すべてが通年供給されるわけではない。営業利益は減価償却を含む分析用配分で、同部門の会社開示EBITDAとは異なる。
不動産・開発用地売却
スキー場周辺の保有土地を第三者の開発業者に売却し、宿泊設備や商業施設の整備につなげる。取引件数と物件の大きさによって売上が大きく変わる。
| 数量年間売却取引量指数(2026年=1) | 価格売却取引量指数1単位当たり売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/12 | 1.0 | 0.06 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1.1 | 0.08 | 0 | 0 |
取り方:2026年10-KのReal Estate revenue0.06193億ドルを基準とし、実際の区画数ではなく売却取引量の指数を1とした。取引物件の広さと売上認識時期が一定でなく、土地の実際の平均販売単価は算出できないため、仮の取引単位を使う。2026年の不動産EBITDA0.07371億ドルには土地売却益等が含まれるが、継続営業利益としてはほぼゼロとし、売却益を恒久利益にしていない。
リスクと懸念
気候変動と降雪不足
最大の長期リスクである。2025〜26年シーズンには米国西部の降雪が歴史的な低水準となり、会社全体の滑走人日が13.4%減少した。気温上昇は雪不足だけでなく造雪に必要な電力、水、設備費も増やす。高標高の施設に強みがあっても、低標高の施設が重荷となる可能性は残る。夏季観光だけで冬の利益を代替することは難しい。
エピック・パスの需要飽和と更新率低下
2026年9月18日時点の翌シーズン向けパス販売は、枚数約12%減、売上金額約6%減だった。会社は購入の遅れも原因と見るが、雪不足による不満や新規顧客の減少が構造的なら、早期販売という事業の安定装置が弱まる。2026年の高い実現単価は利用日数減少の影響も受けており、値決め力の改善と混同してはならない。
純負債と2030年の借り換え
台帳基準の純負債31.3億ドルは時価総額の約6割に達する。会社定義のネットレバレッジもEBITDAの約3.9倍であり、2030年度には約17.4億ドルの償還が集中する。米国の10年金利5%、借り換え金利約5.75%という前提では、古い低利の借金の利払いは増えうる。暖冬による利益減少と重なると、配当削減や資産売却が必要になる。
アルテラとアイコン・パスによる競争
アルテラのアイコン・パスは、ディアバレー、マンモス、パリセーズ・タホなど強い施設を束ね、旅行先の選択肢を広げている。来場者が雪質、混雑、サービス、価格で乗り換えれば、ベイルのパス更新率と山上消費の双方が落ちる。2025年から2026年にかけて北米滑走人日シェアは18.9%から17.9%へ低下した。天候の違いもあるため単年で競争敗北とは決めないが、長期の観察が必要だ。
配当・自社株買いと維持投資の衝突
2026年7月期の配当約3.17億ドルはフリーキャッシュフロー約2.5億ドルを上回り、さらに自社株買いも実施した。山岳設備には継続的な更新が必要であり、造雪やリフトの維持を先送りして還元を続ければ、長期の競争力を損なう。株式報酬も正味還元を減らす。取締役会が負債削減と株主還元の優先順位を誤る危険がある。
許認可・水利権・労働費用
多くのスキー場は公有地の利用許可や賃貸契約に依存し、造雪にも水利権が必要となる。環境規制、渇水、地域住民との対立で設備の拡張や更新が遅れる恐れがある。グランドティトン国立公園の新たな15年運営契約は議会審査を条件として選定されており、手数料率と施設改善義務が従来より重い。従業員の住宅と人件費の上昇も、利益率を削る。
資本配分と株主提案を巡る不確実性
オアシス・マネジメントは2026年秋に約9.6%の保有を示し、取締役候補を擁立した。外部からの改革圧力はサービスや資本配分の改善につながりうるが、経営陣との対立が長引けば実行が遅れる。大型買収や資産分離を伴う案が浮上しても、税、債務、許認可、取引費用を考えなければならない。まだ合意していない再編益を本質価値に含めない。
今後の分かれ目
- 2026〜27年シーズンのパス最終売上が前年比横ばい以上へ戻り、翌年も更新が改善したら
- 2026年秋の販売減少は購入時期のずれだった可能性が高まる。中立からやや楽観への確率を移し、実現単価と付帯消費の回復を確認する。
- 全社の滑走人日が2シーズン連続で1800万を超え、北米シェアが19%台へ戻ったら
- 数量面での回復と競争力を認める。飲食、レンタル、レッスンも増えるなら、営業利益率20%超の持続可能性を再評価する。
- 北米の市場滑走人日が3年平均で7000万を下回り、同社の北米シェアも17%を割ったら
- 気候と顧客流出が一時的でないと判断し、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。造雪投資の費用と減損の可能性を改めて見積もる。
- 純負債が20億ドル台前半へ減り、EBITDAに対する純負債倍率が3倍を下回ったら
- 借り換えの危険が大きく減る。配当の持続性が改善し、将来の利払いと資本配分の評価を上方修正できる。
- 2030年の大型債務償還を高い金利でしか借り換えられず、純負債倍率が4.5倍を超えたら
- 配当削減、設備投資の見直し、資産売却の可能性を重くする。純利益と正味還元を下げ、やや悲観側の比重を増やす。
- 造雪関連の費用と設備投資が増える一方で、滑走人日が回復しなくなったら
- 希少なスキー場が強い堀であるという評価を弱める。価格上昇が人件費と造雪費に吸収され、増分ROICが資本コストを下回る筋書きへ移す。
- 取締役会の改革で買収を抑え、維持投資後のフリーキャッシュフローと負債削減を優先する方針が定着したら
- 改革の発表だけでは評価を変えず、実際のROIC、顧客満足度、負債残高、正味還元を確認する。数年にわたる実績が出れば資本配分の質を引き上げる。
見ておくもの
- 北米市場の年間滑走人日、ベイルの北米滑走人日とシェア。2026年は市場7290万、同社1310万、シェア17.9%
- 全社の滑走人日とETP。2026年は約1530万滑走人日、ETP94.85ドル。利用回数の減少による単価上昇と実際の値上げを分ける
- エピック・パスの販売枚数、販売日数、販売金額、翌年更新率、無制限パスと短日数パスの構成
- 雪不足と営業日数、ロッキー山脈・タホ・カナダ・スイス・オーストラリア別の降雪条件と造雪費用
- スキー教室、飲食、用品・レンタルの滑走人日当たり実現収入と費用率
- 宿泊のADR、RevPAR、稼働率、国立公園運営権の更新条件と利益率
- リゾートReported EBITDA、GAAP営業利益、フリーキャッシュフロー、ROICの推移
- 純負債、ネットレバレッジ、2030年の借り換え条件、リース債務と財務制限条項
- 配当、自社株買い、株式報酬、設備投資の優先順位と株主提案の結果
倍率と資本コストの決め方
現在の時価総額約52.5億ドルや市場PERから10年後の価値を決めていない。2026年の実際の滑走人日、ETP、マウンテンの各売上、宿泊のRevPARを起点として、2036年の市場数量とシェア、名目の実現単価、営業利益を積み上げた。FY2026は実際には7月決算だが、添付factsに合わせて2026/12と表示し、10年後を2036/12とした。
倍率は基本8.0%とquality+1.5%からk9.5%を決め、成長率gを市場、シェア、価格から独立に求めた。帳簿ROEが自社株買いで極端に膨らむため、楽観から中立にはROICと標準化負債比率で補正した事業ROEを使う。強い堀でも、増分利益の超過利回りが先で薄れる正当化PERの上限を守った。中立の上限約14.16倍に対する11.33倍は利益の質に基づくもので、現在や過去の市場倍率への寄せではない。
純利益はGAAP基準で、株式報酬や設備償却を戻していない。借り換えによる利払い増を純利益に含め、純負債を時価総額から重ねて引かない。純現金の上乗せもない。2026年の自己資本2.4億ドルから各筋書きの純利益累計と正味還元を差し引き、期末自己資本と一致させた。悲観の資産床は現在の自己資本を参照し、将来積み上がった自己資本にPBRを掛けていない。米国基準ではリースがすでに貸借対照表に計上されており、宿泊と山岳施設の固定的な支払義務は悲観の利益率にも残した。
確率加重の10年後時価総額と正味還元を、時価総額には10年間、還元には平均5年間の資本コストで割り引くと約28.7億ドルとなる。現在の時価総額約52.5億ドルとの差は約マイナス45%であり、結果に合わせて結論を割高とした。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にquality+1.5%を加えた9.5%。βや現在の市場PERからは決めない。負債と気候への依存を反映する一方、直ちに継続企業として存続が危うい状態ではないためdistress上乗せはゼロ。景気悪化や個別の経営判断は数量、利益率、確率で扱う。