結論
イーベイ(eBay)は、個人や小規模店が中古品・コレクターズ・自動車部品・再販のブランド品などを売り買いする世界有数のオンライン市場である。2025 年の取扱高は約 796 億ドル、売上は 111 億ドル(取扱高の約 13.9% が手数料・広告・決済の収入)、GAAP の営業利益は 23 億ドル(営業利益率 20%)、純利益は 20 億ドル。2026 年 4〜6 月期は取扱高 224 億ドル(前年比 +15%)、売上 31 億ドル(+15%)、GAAP 営業利益率 21.6%(前年 17.6%)と、近年にない高い伸びになった。トレーディングカード・ラグジュアリー再販・自動車部品が牽引し、2026 年 7 月には中古ファッションのデポップ(Depop)を現金 14 億ドルで取得した。
事業の質は悪くない。物件や在庫を持たず設備投資は小さく、営業利益は株式報酬を引いたあとでも売上の 2 割を稼ぐ。ただし 2010 年代の取扱高は年 1〜3% 成長にとどまり、米国の e コマース(年 +9〜12%)にシェアを奪われ続けてきた。今回の加速は、カードのブームと関税・少額荷物の免税の廃止で海外の安売りサイトが遅れた分が重なっており、どこまで続くかは別の話である。2026 年 5 月にはゲームストップ(GameStop)が現金と株式で約 560 億ドルの買収を非拘束で提案し、取締役会が「信用できず魅力もない」と拒否した。
バリュー投資の観点では、数量(取扱高)× 価格(手数料率)で積むと、10 年後の中立は取扱高が実質で今の 1.2 倍、手数料率 14.6% で売上 214 億ドル、営業利益 49 億ドル、純利益 39 億ドル。倍率は資本コスト 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)、成長は物価並みの年 4% の利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(筋書きの ROE − k)。上限 17.5 倍)の 8 割で約 14.0 倍、時価総額は約 546 億ドル。強気なら 960 億ドルまであるが、構造的に負ければ 130 億ドル台まで落ちる。確率で重ねた総合の差は -26% 前後(配当込みの年率は 10 年の中立で +4% 前後)で、結論はやや割高。買収提案が成立すれば別だが、他人の財布に頼る話なので数えていない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家なら、まず 10 年後もあるかを問う。答えは、ある。収集品・部品・ブランド品の二次流通は、人が物を愛し買い替える限り残り、オンラインの比率はまだ上がる。ただ「今より強いか」は割れる。真贋保証・鑑定・出品データの厚みは堀として強まるが、新品の領域は 10 年以上負けてきたし、AI の入口と新しい収集品の取引所(ライブ配信)が品揃えの優位を削る。堀は広がるより、守る面が大きい。
オーナー利益は、設備が軽いので GAAP の純利益(株式報酬を費用に入れた値)に近く、2025 年の約 20 億ドル、2026 年は 22 億ドル前後。FCF は 2025 年 17 億ドル(純利益より小さい)で、株式報酬を戻した非 GAAP の利益より、株主に残る実際の利益はずっと小さい。自社株買いの多くは株式報酬の穴埋めであり、見かけの還元(約 30 億ドル)は、正味では 24 億ドル前後に縮む。
安全域は薄い。今の PER 26 倍は、今の高い伸び(取扱高 +15%)が長く続くことを前提にしているが、10 年後の中立は取扱高が年 +5.7%(実質 +2.1%)に落ち着き、利益ベースの PER 約 14 倍(k 8.75%・g 4%)、時価総額は 546 億ドル。配当込みの年率は +4% で、資本コスト 8.75% に届かない。楽観(確率 10%)でも年率 +9% 台で、勝てるのはその筋書きだけ。経営の資本配分は、デポップの価格 14 億ドル(売上の約 7 倍)が割高に見える点が気になる。収集品は需要が熱に左右されるため確信度を下げた。
何で稼ぐ会社か
売上の中心は、売り手が出品して買い手が落札・購入した取引にかかる成約手数料、決済の手数料、広告(プロモート・リスティング)である。取扱高 796 億ドルに対し売上 111 億ドルなので、手数料率(売上 ÷ 取扱高)は 2025 年 13.94%(前年 13.77%)で、広告と決済の取り込みで毎年少しずつ上がってきた。買い手は世界で約 1.36 億人(前年比 +2%、米国は +6%)、売り手は個人から事業者まで広い。
カテゴリーは「集める」「直す」「安く買う」の 3 つに寄る。第 1 にトレーディングカード・スポーツ記念品・コインなどの収集品で、PSA などの鑑定会社と連携した真贋保証、AI で撮るだけで出品できるスキャン(累計 8,000 万回)が堀になる。第 2 にラグジュアリーの時計・バッグ・スニーカー、第 3 に自動車・二輪の部品で、適合する車種を確かめる仕組みが固い。ほかに中古のスマホ・家電、ライブ配信販売の eBay Live(取扱高が前年の約 8 倍)がある。
2026 年 7 月に取得したデポップは、Z 世代と若い層向けの C2C ファッション市場で、取扱高は 10 億ドル台、売上は 2 億ドル前後と推定する。今は小さく、取得で 2026 年の利益は薄まる。費用は人件費(株式報酬を含む)、配送や決済の費用、広告費、信頼・安全の対応費が中心で、非 GAAP の営業利益率は 28〜29%、GAAP では株式報酬と償却を引いて 20〜22% になる。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 は「他に代わりがない品揃え」で、30 年分の出品データと、絶版のカード・古い車の部品・廃番のブランド品といった「ここにしかない」在庫を持つ。第 2 は信頼の仕組みで、真贋保証・鑑定・返品保証・決済の一体運用は、新規の出品サイトが一から作るのに時間がかかる。第 3 は買い手の習慣で、収集家は世界中のコレクターが集まる場所に出品するのが最も高く売れると知っている。
資本効率は高い。設備投資は売上の数 % で、フリーキャッシュフローは営業利益と同程度、自己資本が自社株買いで縮んでおり帳簿の ROE は 40% 台に見えるが、投下資本(自己資本+純負債)に対する利益率は 20% 前後で、借金を使って伸びる前提の自己資本の利益率は 35% 前後と見る。2025 年は約 30 億ドルを株主に返し、配当と自社株買いは営業の稼ぎの大半を占める。
弱点も多い。1 つ目は取扱高の長い低成長で、アマゾン・ウォルマート・テム(Temu)・シーイン(Shein)に新品の領域で負け、中古・収集品に絞って生き残ってきた。2 つ目は収集品の景気で、カードの投機的な熱が冷めれば取扱高が一気に戻りうる。3 つ目は買収の巧拙で、過去のスカイプ・ペイパル・アドベンタ(Adevinta)の売却は結果として価値を生んだが、新しい大型買収(デポップ)の成否は未知数である。経営はジェイミー・イアノーニ最高経営責任者が 2020 年から率い、重点カテゴリーへの集中でコスト効率を改善した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
オンラインの個人間取引は、新品のオンライン小売(アマゾン)とは別の「二次流通」の市場である。世界の中古市場(衣料・収集品・部品・家電)は年 +8〜12% で伸び、オンライン化の比率がまだ低い。米国の e コマース全体は 2026 年 4〜6 月に前年比 +12.2%、小売全体に占める比率 17.1%(Census)で、年換算 約 1.36 兆ドル。イーベイの取扱高(世界合計)は単純に比べてその約 6% にとどまり、シェアは長く下がってきた。
競合は筋ごとに違う。収集品ではファナティクス・コレクト(Fanatics Collect)、ウィートナット(Whatnot、ライブ配信の収集品販売で急伸)、PSA・ベケット(Beckett)の鑑定付き取引所。ラグジュアリーではザ・リアルリアル(The RealReal)、ヴェスティエール・コレクティブ(Vestiaire Collective)、ファッションの再販ではポッシュマーク(Poshmark)・スレッドアップ(ThredUp)・メルカリ。自動車部品ではアマゾン、オートゾーン(AutoZone)、オライリー(O'Reilly)などの店舗がオンラインに進出している。新品はアマゾン・ウォルマート・Temu・Shein との値引きで負けている。
構造の変化は 3 つある。1 つ目は AI で、検索・購入の入口が対話型の AI に移ると、品揃えの深い市場は入口で選ばれにくくなる一方、真贋・鑑定・在庫の深さが差になる。2 つ目は関税で、2025 年に少額荷物の免税が廃止され、海外の安売りサイトの価格が上がったと見られ、中古が相対的に有利になった(この追い風は「関税の水準が続く」前提)。3 つ目は収集品のブームの循環で、ポケモンやスポーツカードの価格は 2025〜26 年に急騰した。景気後退では収集品・ラグジュアリーが真っ先に削られる。
資本政策と M&A
還元は積極的で、2025 年は配当と自社株買いで約 30 億ドル(営業の稼ぎの大半)を返し、株数は年 −5〜8% で減ってきた。配当は年で約 5.5 億ドル、買い戻しの残り枠は約 20 億ドル。財務は、現金 49 億ドルに対し有利子負債 67 億ドルと純負債(2026 年 7 月のデポップ 14 億ドルを入れて約 32 億ドル)だが、利払いは営業利益で十分賄える。金利の変化による利払いの変化は借り換えでほぼゼロ。
M&A の歴史は、大型の売却で価値を取ったことが多い(ペイパルの分離、スカイプ、StubHub、クラシファイド事業のアドベンタへの売却)。買う側では、2026 年のデポップ 14 億ドルが最も大きく、次に収集品の鑑定・カード関連の小さな取得がある。成立済みなので筋書きに入れ、立ち上げの赤字を織り込む。
ゲームストップが 2026 年 5 月に約 560 億ドル(現金と株式 半々)の買収を非拘束で提案し、取締役会が拒否した。保有は直接 約 4.3 百万株とオプション 約 39 百万株分(合計 約 10%、報道では 6.55%)で、特別株主総会の招集には 20% が要る。株式交換が主体で財務の裏付けも弱く、成立の可能性は小さいと見て、筋書きには入れない(買われる側の上振れは本質価値の外)。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 8.1 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
イーベイの強みは事実として数字に出ている。2026 年 4〜6 月は取扱高 +15%、売上 +15%、GAAP の営業利益率が前年の 17.6% から 21.6% へ 4 ポイント上がった。収集品(カード・記念品)は鑑定・AI スキャン・ライブ配信で「出品の手間」と「真贋の不安」という 2 つの壁を下げ、これまで店頭やカードショップでしか動かなかった在庫がオンラインに出てきている。ラグジュアリーも自動車部品も、出品データの厚みと適合・真贋の仕組みが、新規の市場が一から作れない堀になる。
数量では、世界の二次流通のオンライン化はまだ序盤で、年 +8〜12% の市場でシェアを維持するだけで取扱高は実質年 +3〜4% 伸びる。価格では、物価(3.5%)で 1 件あたりの取扱額が上がり、手数料率は広告(取扱高の数 %)・決済・鑑定付き取引・ライブ配信で 13.9% から 16% へ上がる余地がある。営業利益率は GAAP で 20% から 27% へ(非 GAAP で 35%)。デポップが若年層の入口として育てば、取扱高は 10 年で 7 倍になる。この筋書きなら 10 年後の純利益は 63 億ドル、PER 23 倍で時価総額は 1,450 億ドルと今の 2.7 倍。
慎重な見方
今の PER 26 倍は、2026 年の突出した伸び(+15%)が続くことを織り込んでいる。しかし 2010 年代の取扱高は年 1〜3% で、伸びたのはカードの熱と関税の特需という「一時的な要因」が重なった結果に見える。カードの相場が冷えれば、収集品の取扱高は 2〜3 割落ちうる。2022 年の利上げ局面でも株価は −51% 下がった。
構造では、新品はアマゾン・ウォルマート・Temu に負け続け、収集品ではウィートナット(ライブ配信)とファナティクス・コレクトが新しい買い手(Z 世代)を取り、AI の購買エージェントが「品揃えの深さ」を入口で比較しやすくする。収集品の鑑定はグレーディング会社(PSA)が主導し、手数料の一部を分け合うだけの立場になる恐れもある。デポップは売上の約 7 倍で買った高い買い物で、2026 年の利益を薄める。
買収提案も「割高の証拠」に見える。ゲームストップは株式交換の割合が高く、成立しても現金は半分で、取締役会が拒否した。本質価値は式で決まり、成熟後の PER は g 4%・k 8.75% の利益ベースで約 17 倍。今の 26 倍を正当化するには、10 年後も年 10% で伸びる必要がある。実際は取扱高が実質で年 +2% 程度に落ち着き、営業利益率は GAAP で 24%、純利益は 39 億ドル、時価総額は約 546 億ドル止まりと見る。
どちらに重みを置いたか
事業の質(堀・資本効率)は強気の言い分が強いが、今の値段と成長の持続性は慎重な言い分が強い。確率は、構造で負ける悲観を 10%、やや悲観を 22% と、10 年の取扱高が今の水準に戻る筋書きを厚く置いた。倍率は利益ベース(資本コスト 8.75%・g 4%、中立は正当化 PER 17.5 倍の 8 割で約 14.0 倍)で、買収提案の上振れも筋書きに入れていない。中立の年率は +4% 前後で資本コストに届かず、結論はやや割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 124.12 ドル552 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 52.01 ドル231 億ドル)。 今の値に割り戻すと 87.84 ドル391 億ドル、今との差 −28.0%、 期待の年率 +3.7%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 220.99 ドル983 億ドル | 62.67 ドル279 億ドル | +132.4% | +8.8% | 28.37 ドル126 億ドル |
| やや楽観 | 25% | 164.61 ドル733 億ドル | 57.28 ドル255 億ドル | +81.8% | +6.2% | 55.47 ドル247 億ドル |
| 中立 | 33% | 122.70 ドル546 億ドル | 53.01 ドル236 億ドル | +44.0% | +3.7% | 57.98 ドル258 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 76.94 ドル342 億ドル | 47.39 ドル211 億ドル | +1.9% | +0.2% | 27.35 ドル122 億ドル |
| 悲観 | 10% | 34.49 ドル154 億ドル | 35.03 ドル156 億ドル | −43.0% | −5.5% | 6.95 ドル31 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 124.12 ドル552 億ドル | 52.01 ドル231 億ドル | +44.3% | +3.7% | 176.13 ドル784 億ドル |
今の株価時価総額 122.04 ドル543 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:二次流通のオンライン化に乗り、手数料率が上がる 利益 63 億ドル · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 220.99 ドル983 億ドル
10 年後(2035 年)、取扱高は実質 1,250 億ドル(今の 1.6 倍。名目で年 +8%)、手数料率は広告・決済・鑑定付き取引・ライブ配信で 16.0% まで上がる。デポップは実質 80 億ドルへ 7 倍に育ち、売上 25 億ドル、本体と合わせた売上は 307 億ドル(今の約 2.8 倍)。営業利益率は本体 27%(非 GAAP で約 34%)・デポップ 12%、営業利益 79 億ドル、純利益 63 億ドル。ウィートナットに勝ち、AI の購買エージェントの標準の提携先にも入る。純負債 32 億ドルは引く。倍率は正当化 PER 17.3 倍の 9.0 割にあたる 15.6 倍に置いた。
- 本体の市場(取扱高 × 手数料率):数量 1,250(取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質)= 世界の二次流通のオンライン市場 × シェア)× 価格 22.6%(手数料率(売上 ÷ 取扱高、2025 年 13.94%)× 物価指数)→ 売上 282 億ドル・営業利益 76 億ドル。取扱高 1250・手数料率 16.0%
- デポップ(若年層向け中古ファッション):数量 80.0(デポップの取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質、推定))× 価格 0.31(取扱高に対する売上の比率(手数料率)× 物価指数)→ 売上 25 億ドル・営業利益 3 億ドル。取扱高 80・手数料率 22%
倍率:上限の正当化 PER 17.3 倍に対し、15.6 倍(9.0 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(楽観 +1.0 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 22.7%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 36.7%(帳簿の自己資本 ROE は 40% 超か自己資本が負・極小なので使わず、ROIC 31%(税引き後営業利益 ÷(その筋書きの自己資本+今の純負債))+(ROIC − 税引き後の借入金利 4.4%)× 業界並みの負債の比 0.2(純負債 ÷(自己資本+純負債)。1 まで)で出した値)。時価総額は、書いた純利益 63 億ドル × 15.6 倍で 983 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:二次流通のオンライン化と AI 時代の真贋・鑑定の優位がそろい、新しい取引所にも勝つ展開。10 年の取扱高の低成長の歴史を踏まえ 1 割。
やや楽観 25% やや楽観:シェアを保ち、広告と決済で手数料率が上がる 利益 49 億ドル · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 164.61 ドル733 億ドル
10 年後、取扱高は実質 1,100 億ドル(今の 1.38 倍。名目で年 +7%)、手数料率は 15.2%。デポップは実質 60 億ドルへ育ち、売上 18 億ドル、本体と合わせた売上は 254 億ドル。営業利益率は本体 25.5%・デポップ 8%、営業利益 62 億ドル、純利益 49 億ドル。新品との値引き競争は避けつつ、収集品・自動車部品・ブランド品で堀を保ち、ウィートナットなどの新しい取引所とはシェアを分け合う。AI の購買エージェントの入口でも一定の位置を得て、手数料率の引き下げ圧力は小さい。倍率は正当化 PER 17.6 倍の 8.5 割にあたる 14.9 倍に置いた。
- 本体の市場(取扱高 × 手数料率):数量 1,100(取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質)= 世界の二次流通のオンライン市場 × シェア)× 価格 21.4%(手数料率(売上 ÷ 取扱高、2025 年 13.94%)× 物価指数)→ 売上 236 億ドル・営業利益 60 億ドル。取扱高 1100・手数料率 15.2%
- デポップ(若年層向け中古ファッション):数量 60.0(デポップの取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質、推定))× 価格 0.30(取扱高に対する売上の比率(手数料率)× 物価指数)→ 売上 18 億ドル・営業利益 1 億ドル。取扱高 60・手数料率 21%
倍率:上限の正当化 PER 17.6 倍に対し、14.9 倍(8.5 割)に置いた。中立の 8.0 割に、利益の質がよい分を上乗せした(やや楽観 +0.5 割)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 24.3%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 39.8%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 49 億ドル × 14.9 倍で 732 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:シェアを保ちつつ広告・決済で稼ぎが厚くなる好調。業界ノートの中立〜やや良い領域。
中立 33% 中立:実質 +2% で成熟し、利益率はゆるやかに上がる 利益 39 億ドル · PER 14.0 倍 · 株価時価総額 122.70 ドル546 億ドル
10 年後、取扱高は実質 980 億ドル(今の 1.23 倍。2026 年の +9% で大半を使い、その後は年 +1〜2%。名目で年 +5.7%)、手数料率は 14.6%(広告・決済で緩やかに上昇)。本体の売上は 202 億ドル、デポップは実質 45 億ドルで 13 億ドル、合計 214 億ドル(今の約 1.9 倍)。営業利益率は本体 24%(非 GAAP で約 31%)・デポップ 6%、営業利益 49 億ドル、純利益 39 億ドル。アマゾンなど新品に負け続け、収集品・ブランド品・部品で守る。純負債 32 億ドルを引く。今の PER 26 倍には寄せていない。倍率は正当化 PER 17.5 倍の 8.0 割にあたる 14.0 倍に置いた。
- 本体の市場(取扱高 × 手数料率):数量 980(取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質)= 世界の二次流通のオンライン市場 × シェア)× 価格 20.6%(手数料率(売上 ÷ 取扱高、2025 年 13.94%)× 物価指数)→ 売上 202 億ドル・営業利益 48 億ドル。取扱高 980・手数料率 14.6%
- デポップ(若年層向け中古ファッション):数量 45.0(デポップの取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質、推定))× 価格 0.28(取扱高に対する売上の比率(手数料率)× 物価指数)→ 売上 13 億ドル・営業利益 1 億ドル。取扱高 45・手数料率 20%
倍率:上限の正当化 PER 17.5 倍に対し、14.0 倍(8.0 割)に置いた。新しく投じる資本の稼ぎは先で薄れるので 8.0 割に置いた。上限の中身は g 4.0%、RONIC 23.7%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 38.6%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 39 億ドル × 14.0 倍で 546 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:業界ノートの成長(米国の e コマース +9%)より低い +5.7% に落ち着き、利益率は緩やかに上がる。
やや悲観 22% やや悲観:収集品の熱が戻り、新しい取引所に取られる 利益 26 億ドル · PER 13.2 倍 · 株価時価総額 76.94 ドル342 億ドル
10 年後、2026 年のカード特需が戻り、ウィートナットやファナティクスが収集品の買い手を取って取扱高は実質 820 億ドル(今の 1.03 倍。2026 年の水準から約 6% 低い)。手数料率は 14.0% で伸びず、デポップは実質 25 億ドルにとどまる。売上は 168 億ドル、営業利益率は本体 20%(今と同じ)・デポップ 0%、営業利益 32 億ドル、純利益 26 億ドル。固定費の重さで利益率は上がらず、デポップは立ち上がりが遅れて小さいまま。配当と自社株買いは続けるが、株価が下がる分の買い戻しの効果は小さい。倍率は正当化 PER 17.6 倍の 7.5 割にあたる 13.2 倍に置いた。
- 本体の市場(取扱高 × 手数料率):数量 820(取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質)= 世界の二次流通のオンライン市場 × シェア)× 価格 19.7%(手数料率(売上 ÷ 取扱高、2025 年 13.94%)× 物価指数)→ 売上 162 億ドル・営業利益 32 億ドル。取扱高 820・手数料率 14.0%
- デポップ(若年層向け中古ファッション):数量 25.0(デポップの取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質、推定))× 価格 0.25(取扱高に対する売上の比率(手数料率)× 物価指数)→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。取扱高 25・手数料率 18%
倍率:上限の正当化 PER 17.6 倍に対し、13.2 倍(7.5 割)に置いた。中立(8.0 割)より 0.5 割低くした。利益の質が悪い筋書きだからだ。上限の中身は g 4.0%、RONIC 24.1%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 39.4%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 26 億ドル × 13.2 倍で 342 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:2026 年のカード特需が戻り、ライブ配信や新しい取引所が収集品の買い手を取る。10 年の低成長の歴史が 2 割台の厚みの根拠。
悲観 10% 悲観:入口と収集品を失い、優良な市場でなくなる 利益 12 億ドル · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 34.49 ドル154 億ドル
10 年後、収集品はウィートナットや鑑定会社に、検索の入口は AI に取られ、イーベイは「何でも売れる市場」ではなくなる。取扱高は実質 600 億ドル(今の 0.75 倍)、手数料率は競争で 12.5% へ下がり、売上は 108 億ドル。営業利益率は本体 14%(固定費の重さ)、デポップは −5%、営業利益 15 億ドル、純利益 12 億ドル。配当と自社株買いは続くが小さくなる。倍率は稼ぐ力の式(純利益 ÷ 資本コスト 8.75% を成長 2.5% で調整した利益ベースの値)で約 12.8 倍に置き、今や過去の PER には寄せていない。自己資本は小さく PBR は使わない。
- 本体の市場(取扱高 × 手数料率):数量 600(取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質)= 世界の二次流通のオンライン市場 × シェア)× 価格 17.6%(手数料率(売上 ÷ 取扱高、2025 年 13.94%)× 物価指数)→ 売上 106 億ドル・営業利益 15 億ドル。取扱高 600・手数料率 12.5%
- デポップ(若年層向け中古ファッション):数量 10.0(デポップの取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質、推定))× 価格 0.24(取扱高に対する売上の比率(手数料率)× 物価指数)→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。取扱高 10・手数料率 17%
倍率:式どおり:g 1.5%(g はこの筋書きの数量と価格から置いた)、ROE 26.1%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))、k 8.75%。(1−g÷RONIC)÷(k−g) の値は来年の利益に対する倍率なので、10 年目の利益には ×(1+g) で 12.8 倍。RONIC = k + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k)= 17.4%。上限の正当化 PER 16.2 倍の 7.9 割で、上限の内側。10 年目の利益の伸びは年 10% 未満なので 1 段。時価総額は、書いた純利益 12 億ドル × 12.8 倍で 154 億ドル。
確率:リーマン級の不況に加え、構造的に入口(AI)と収集品の取引所を失い優良でなくなる。確率は 1 割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
本体の市場(取扱高 × 手数料率)
収集品・ラグジュアリー・自動車部品・中古品の二次流通市場。成約手数料・決済・広告で取扱高の約 13.9%。
| 数量取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質)= 世界の二次流通のオンライン市場 × シェア | 価格手数料率(売上 ÷ 取扱高、2025 年 13.94%)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 796 | 13.9% | 111 | 23 |
| 10 年後 中立 | 980 | 20.6% | 202 | 48 |
取り方:2025 年の取扱高 796 億ドル(10-K)× 手数料率 13.94% = 売上 111 億ドル。取扱高は世界合計で、米国の e コマース(年換算約 1.36 兆ドル)と単純に比べると約 6%。GAAP の営業利益 23 億ドル(率 20.4%)をほぼ本体の利益として置く(2025 年はデポップを持っていないため、下のデポップは取得後の見込みを今の値として置く)。
デポップ(若年層向け中古ファッション)
2026 年 7 月に 14 億ドルで取得した C2C のファッション市場。Z 世代の入口。
| 数量デポップの取扱高(億ドル、2025 年の価格に直した実質、推定) | 価格取扱高に対する売上の比率(手数料率)× 物価指数 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 11.0 | 0.18 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 0.28 | 13 | 1 |
取り方:開示が乏しく、取扱高 約 11 億ドル・売上 約 2 億ドル(手数料率 18% 前後)・営業損益ほぼゼロと推定(取得価格 14 億ドル ÷ 売上 約 2 億ドル = 約 7 倍)。2025 年の eBay の売上には入っていない(取得前)。
リスクと懸念
収集品・カードの熱が冷める
2025〜26 年のトレーディングカードの価格高騰は、取扱高の伸びの大きな部分を占める。熱が冷めれば、収集品の取扱高は 2〜3 割戻りうる。景気後退でも収集品とラグジュアリーが先に削られる。伸びの質が低いまま、倍率だけが期待の高さで跳ねている点が最大の懸念。
新しい取引所と AI の入口に品揃えが比較される
ウィートナットのライブ配信、ファナティクス・コレクト、各社の鑑定付き取引所が収集品の買い手(Z 世代)を取り、検索・購入が対話型の AI に移ると、品揃えの深さが入口で選ばれにくくなる。手数料率の引き下げ圧力や、広告費の増加につながる。
新品のオンライン小売に負け続ける構造
アマゾン・ウォルマート・Temu・Shein は新品の取扱高を年 +10% 前後で伸ばしている。イーベイの取扱高は 10 年以上これを下回ってきた。2026 年の関税による追い風は、関税の水準が下がれば消える。
デポップの統合と高い取得価格
取得額 14 億ドルは売上の約 7 倍で、2026 年の利益を薄める。Z 世代向けのファッションはポッシュマーク・スレッドアップ・ヴィンテッド(Vinted)との競争が厳しい。統合と立ち上げが遅れれば、14 億ドルは回収できず減損もありうる。
買収提案をめぐる資本配分のゆがみ
ゲームストップの提案が続くと、防衛のための費用や自社株買いの増額、経営の注意の分散が起きる。取締役会は拒否したが、提案の再提出や敵対的な動きの余地は残る。成立すれば、株主は現金の半分と相手の株式を受け取る形で、相手の財務を背負う。
株式報酬と自社株買いの正味
自社株買いは配当と合わせ営業の稼ぎの大半を占めるが、株式報酬による増発を打ち消す分が大きく、株数の減少ほど株主には残らない。GAAP の純利益(株式報酬を費用に入れた値)で見る必要があり、非 GAAP の見かけの利益より約 3 割小さい。
今後の分かれ目
- カードなど収集品の相場が前年の高値から 3 割以上下がり、取扱高の伸びが 1 桁に戻ったら
- 収集品の取扱高が下がり、取扱高の実質は今の水準に戻る。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ゲームストップが再提案し、取締役会が交渉に応じたら
- 買収の確率は上がるが、現金の比率と財務の裏付けが決め手。現金比率が高い提案なら、株主の取り分は本質価値より上になりうる(筋書きには入れていない)。
- ウィートナットやファナティクスが収集品のシェアを大きく奪い、イーベイの収集品の取扱高が前年割れになったら
- 手数料率の維持が難しくなり、悲観の筋書き(取扱高が実質で 25% 減)に近づく。
- イーベイが AI の購買エージェントの標準の提携先に入ったら(検索大手・対話型 AI 各社)
- 入口の不安が和らぎ、手数料率と取扱高の伸びを引き上げる。楽観・やや楽観の確率を上げる。
- デポップの取扱高が年 +30% で伸びて営業黒字化したら
- 新事業が本業を超えて伸びる余地が出て、楽観の筋書き(取扱高 80 億ドル)に寄る。
- 関税の引き下げ・少額荷物の免税の復活が起きたら
- 海外の安売りサイトが戻り、新品・日用品の競争が再燃する。中古の相対的な優位が弱まり、取扱高の伸びが鈍る。
見ておくもの
- 取扱高の伸び(為替除く)と手数料率(売上 ÷ 取扱高)、広告の比率
- 収集品(カード・記念品)の取扱高と相場、PSA の鑑定件数
- eBay Live の取扱高と、ウィートナット・ファナティクスのシェア
- デポップの取扱高・営業損益と統合の費用
- ゲームストップの持ち分の変化と、取締役会の対応
- GAAP の営業利益率と、株式報酬を引いた正味の還元
- 米国の e コマースの比率(Census 四半期)と関税の動き
倍率と資本コストの決め方
今の PER 26 倍を見る前に、取扱高(実質)× 手数料率 × 物価指数で売上を積み、営業利益率・税から純利益を出した。倍率は k 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%)・g 2.5〜4%・ROE(筋書きの純利益 ÷ 自己資本。40% 超は投下資本の利益率から出し直した)の利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(筋書きの ROE − k)で、資本コストを超える稼ぎは先で薄れる)の 7〜8 割で、10 年目の利益に ×(1+g) を掛けた。純負債 32 億ドルはそのまま引き、買収提案の上振れは入れていない。結果がやや割高に出たがそのまま出した。前提の弱点は、2026 年の取扱高 900 億ドルが一時的な要因を含むこと。ABNB などと確率の置き方を揃え、悲観を 1 割、やや悲観を 2 割強とした。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β 1.21 × 5%。資本コスト k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%(v2。株価の揺れ(β)は使わない)。安定した現金を生む事業だが、取扱高は横ばいで競合に押される。競合や規制による個別のリスクは k に足さず、確率と筋書きの手数料率で表した。extra は 0。