結論
TJX は T.J.マックス・マーシャルズ・ホームグッズ・ウィナーズ(カナダ)・TK マックス(欧州)などを運営する世界最大のオフプライス小売で、米国・カナダ・欧州・豪州に約 5,300 店を持つ。ブランド品や百貨店の余剰在庫を機会買いし、定価より 20〜60% 安く売る。2026 年 1 月期(kabufu の 2025/12 期)は売上 604 億ドル(+7%)、営業利益 72 億ドル(営業利益率 12.0%)、純利益 55 億ドル。2026 年 5〜7 月期は既存店 +4% だが、中核のマーマックス(T.J.マックス・マーシャルズ)は +1%(前期 +6%)に鈍り、経営者は「自分たちのミス(品揃えの実行)」と認めた。ホームグッズ・カナダ・欧州は既存店 +6〜7% と強い。
事業の質は極めて高い。2008〜09 年のリーマン級の不況でも増収で、百貨店の閉店とブランドの在庫増が追い風になる。最大のリスクは、すでに織り込まれた高い倍率と、店舗拡大(長期目標 7,500 店)が進む間に、アマゾン・ロス・ストアーズ・バーリントンとの競争で 1 店あたりの収益が薄まる点である。
バリュー投資の観点では、10 年後も存在し、今より強い可能性が高い事業で、資本配分も堅実(利益のほぼ全部を配当と自社株買いで返す)。資本コストは 7.75%(基本 8.0% + quality −0.25%)。利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k))は、g 4%・投下資本利益率 25% 前後で 10 年目の利益に対し上限 24.5 倍、その 9 割の約 22 倍を中立に置いた。店舗数と 1 店あたり売上から積み上げると、10 年後の中立は純利益 109 億ドル、時価総額 約 2,400 億ドルで、今の 1,662 億ドルの約 1.4 倍。配当を足した年率は +6〜7% で、資本コスト 7.75% に届かない。確率で重みをつけた期待は +6.0%、総合はほぼ適正(差 −6%)。k − g が 3.75% と薄く、k が 0.5 ポイント上がれば 10 年の倍率はさらに下がる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、TJX は事業を理解でき、10 年後も存在し、今より強い可能性が高い。堀は仕入れの規模と、景気が悪いほど良い在庫が出る構造で、これは広がりこそすれ狭まりにくい。消費者は「安く買う」習慣を一度つけると戻らず、百貨店の閉店が続く限り、オフプライスは小売の中で数少ない構造的な勝者である。オーナー利益は純利益とほぼ同じで(成長の再投資が小さい)、その大半が株主に返る。経営は慎重で、買収で価値を壊した歴史がなく、この点は高く評価できる。
問題は値段である。今の PER 30 倍は、10 年後の中立の利益ベースの倍率(約 22 倍)を上回り、「優良さへの人気」も含まれる。マーマックスの既存店が 1% に鈍り、ロスが +10% と伸びる局面で、k − g が 3.75% と薄く、k が 0.5 ポイント上がるだけで倍率はさらに下がる。結論は、事業としては「持ちたい優良企業」だが、今の値段は中立で配当を足して年率 +6〜7% と資本コスト 7.75% に届かず、悲観(構造で負ける)では 10 年でほぼ横ばいに崩れる。確信度は高い事業だが、値段の余裕は薄いと見る。
何で稼ぐ会社か
TJX の収益は 4 つの事業に分かれる。第 1 はマーマックス(米国・T.J.マックスとマーシャルズ、シエラ。約 3,000 店と推定、売上 366 億ドル、全社の 6 割)。調整後の営業利益率は 14% 台で、全社の利益の 7 割弱を稼ぐ。第 2 はホームグッズ(米国・ホームグッズとホームセンス、約 940 店と推定、売上 102 億ドル、利益率 12%)。家具・雑貨の機会買いで、家具店よりずっと安い。第 3 はカナダ(ウィナーズ・ホームセンス・マーシャルズ、589 店、売上 56 億ドル、利益率 13%)。第 4 はインターナショナル(英国・アイルランドの TK マックス、ドイツ・ポーランド・オーストリア・オランダ・スペイン、オーストラリア。約 750 店と推定、売上 80 億ドル、利益率 7%)。欧州はまだ若く利益率が低いが、既存店は +7% と強い。
稼ぎ方の本質は「仕入れ」にある。約 1,300 人のバイヤーが 2 万社を超える仕入れ先から、ブランドの余剰在庫・キャンセル品・季節外れ品を現金で買い、定価の 2〜6 割引で並べる。在庫は店に早く回し、宝探しの楽しさを作る(品揃えが毎週変わる)。固定の商品を持たず、在庫を持ち続ける費用が小さいので、景気が悪くなるほど良い在庫が出て、客も安さを求めて集まる。
店舗は 1 店で売上 1,000 万ドル前後と、百貨店より小さい箱で回転が速い。広告は少なく、通販は限る(オフプライスは店に来て買う習慣が強み)。設備投資は売上の約 3%(新店と既存店の改装)で、残りを配当・自社株買いに回せる。FY27 は自社株買い 25〜27.5 億ドル、配当は +13% の計画。セグメントごとの店舗数は開示が薄く、how に推定の方法を書いた。
優良さと弱いところ
堀は 3 層ある。第 1 は仕入れの規模:世界で最大のオフプライスの買い手として、ブランドの在庫を最初に見られ、最良の品を取る。売る側は TJX に出せば相場を壊さず現金化できるので、取引は続く。第 2 は景気に逆らう構造:不況で百貨店・ブランドの在庫が増え、買う側の質が上がり、客は安さを求める。2008〜09 年は増収で、株価の下げは -46% と大きかったが、これは倍率の縮みで利益の崩れではない。第 3 は店舗網と物流:5,300 店と各地の配送拠点は、新規の参入者が真似できない。
価格を決める力は、小売としては強いが、独占ではない。値付けは「ブランドの定価の 2〜6 割引」という相対の価格で、外から見える安さが売りなので、値上げの余地は物価並み。利益率は 12% 前後で、2014 年の 12.3% が過去の最良に近く、これを大きく超える利益率は考えにくい。投下資本利益率は高く(ROE 54%、リースを含む投下資本利益率は 25% 前後と推定)、成長に必要な再投資が小さいので、オーナー利益は利益の 9 割以上とみてよい。
弱い所は 3 つ。①マーマックスの既存店が 1% に鈍った(原因は品揃えの実行)。②インターナショナルの利益率が 7% と低く、欧州の賃金・賃料・競争(プライマークなど)に左右される。③関税で輸入原価が上がると、仕入れ値の交渉で一部は吸収できるが、2025 年の関税は利益率を圧迫した。経営陣は内部昇進が多く、大型の M&A で価値を壊した歴史がない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のオフプライスは、TJX・ロス・ストアーズ・バーリントンの 3 強で、衣料・家庭用品の市場(衣料だけで約 3,700 億ドル)より速く成長している。TJX は米国のオフプライスの約 6 割(ホームグッズを含む、推定)、ロス・ストアーズは売上 約 230 億ドル・約 2,200 店・営業利益率 12%、バーリントンは売上 約 115 億ドル・約 1,200 店・営業利益率 8〜9%。2026 年 5〜7 月期はロスの既存店が +10%(来店客数が 16% 増)と、低所得層の取り込みで TJX を上回り、TJX のマーマックスは +1% だった。ただし TJX は「競合店の近くでも遠くでも差はない」と見ており、自社の品揃えの問題と説明している。
追い風は、百貨店の閉店(メイシーズ・ノードストロームの縮小)、ブランドの在庫増(需要の読み違いと関税)、消費者の「安く買う」習慣の定着。向かい風は、①アマゾン・ウォルマート・ターゲットの低価格化、②ブランドが直営のアウトレット・オンラインで在庫を捌く動き(機会買いの供給が細る)、③関税で輸入原価が上がり、2025 年は利益率が圧迫された(2026 年は IEEPA 関税の還付が一回限りで入る)。
業界ノートの数量の置き方:オフプライスは年 +6〜7%(店舗数 +4%・既存店 +2〜3%)。衣料全体は年 +3%(物価に並ぶ程度)。TJX の長期の店舗目標は 5,285 店から 7,500 店へ(42% 増)、年 4% の店舗増を FY28 から始める。今の循環の位置は景気の中盤で、低所得層は圧迫されているが、オフプライスには来店が増える形(ロスの来店 +16%)。TJX の客の平均所得は百貨店・ロスより高く、K 字の上側の消費にも支えられる。
資本政策と M&A
資本政策は堅実で、利益の約 9 割を株主に返す。2025/12 期は配当 19 億ドル・自社株買い 25 億ドル(FCF 49 億ドルに近い)で、株数は毎年 1〜3% 減っている。FY27 は配当を 13% 引き上げ、自社株買い 25〜27.5 億ドルの計画(新しい枠 30 億ドル、2026 年 8 月 1 日で約 27 億ドル残)。現金は 60 億ドル、長期借入は約 29 億ドルで、リースを除く純負債はほぼゼロに近い。店舗の賃貸(リース負債)は別にあり、事業の一部である。
M&A は少ない。過去の大きな展開は欧州(1990 年代の英国の TK マックス)とカナダのウィナーズなど、自社の店舗モデルの横展開に限る。今後も大型買収はせず、新店と改装・物流への投資に回す方針(設備投資は上期 11.6 億ドル)。TOB や再編の可能性は低い(時価総額 1,662 億ドル)。
自社株買いの質は、割高な局面で買い過ぎると価値を壊す。今の PER 30 倍で買う自社株買いは、益回り 3.3% で、配当と合わせた株主還元利回りは約 2.6%。倍率が利益ベースの水準へ縮む世界なら、買った株の価値は縮む。株式報酬(SBC)は小さく、payout_oku は SBC による増発分を引いても配当 + 自社株買いの 95% 程度とみた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
TJX の強みは景気の波に逆らう仕組みである。不況ではブランドの在庫が増え、買い手として最良の品を安く確保できる。2008〜09 年は増収で、2020 年のコロナの谷でも 1 年で回復した。2026 年 5〜7 月期も、ホームグッズ(+7%)・カナダ(+6%)・欧州(+7%)が強く、マーマックスの鈍りは経営者が品揃えの実行の問題と認めており、第 3 四半期は好調な出足で第 4 四半期に 2〜3% へ戻る見込みである。
成長の余地も大きい。長期の店舗目標を 7,000 店から 7,500 店へ引き上げ、店舗増を年 3% から 4% へ速める。米国のマーマックスは約 3,000 店から 4,000 店超、ホームグッズは約 940 店から約 1,400 店へ増える余地がある。欧州と豪州は利益率 7% と低く、規模の効果で 10% へ上がる余地がある。百貨店の閉店とアマゾンに奪われる中価格帯の衣料は、オフプライスが取る。10 年で売上は年 +6〜7%、営業利益率は 12% から 12.5〜13% へ、純利益は 100 億ドルを超え、資本コスト 7.75% を上回る。2008 年の谷でも優良さは崩れなかったので、今の値段を払う価値がある。
慎重な見方
今の PER 30 倍は、利益ベースの中立(約 22 倍)を大きく上回り、10 年後も同じ倍率を保てる根拠がない。k − g は 3.75% と薄く、金利が 5% で高止まりする世界で、k がわずかに上がるだけで倍率はさらに下がる。マーマックスの既存店が 1% に鈍ったのは、品揃えの問題だけでなく、ロス・ストアーズの +10%・バーリントンの拡大・アマゾンの低価格化との競争の結果かもしれない。ロスが低所得層の来店 +16% を取る中、TJX は中価格帯で埋もれるおそれがある。
機会買いの供給も細る恐れがある。ブランドが直営のアウトレットとオンラインで在庫を捌けば、TJX が安く買える在庫は減る。関税で輸入原価が上がると、仕入れ値の交渉で吸収しきれず、営業利益率 12% は 2014 年の 12.3% に近い天井で、上振れの余地は小さい。店舗が 7,500 店に近づくほど、新店の売上が既存店より低くなり、1 店あたりの収益が薄まる(共食い)。欧州の利益率 7% は 10 年たっても上がらず、人件費・賃料の上昇で下がることもある。
結果として、純利益は 100 億ドル前後に留まり、PER が 18 倍へ縮めば、時価総額は 1,800 億ドル(今の 1.1 倍)程度で、配当を足しても年率 +3〜4% と、資本コスト 7.75% に届かない。安全域がない。
どちらに重みを置いたか
事業の強さは強気の見方が勝つが、値段の高さは慎重な見方が勝つ。確率は中立 35%、やや楽観 25%、楽観 15%、やや悲観 17%、悲観 8% と、楽観側にやや寄せた(事業が景気に逆らう構造と、店舗拡大が見えている点)。倍率は利益ベースで 10 年の中立 約 22 倍(g 4%・事業の ROE 60% 前後・k 7.75%、上限の 90%、×(1+g))とした。総合は差 約 −6% のほぼ適正で、事業は優良だが、k 7.75% で割り引くと今の値段に余裕はない。k − g が薄く倍率が k に敏感な点は割り引いて読む。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 200.81 ドル2,265 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 62.98 ドル710 億ドル)。 今の値に割り戻すと 138.55 ドル1,563 億ドル、今との差 −6.0%、 期待の年率 +6.0%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 15% | 254.68 ドル2,873 億ドル | 70.04 ドル790 億ドル | +120.3% | +8.2% | 48.71 ドル549 億ドル |
| やや楽観 | 25% | 231.19 ドル2,608 億ドル | 68.26 ドル770 億ドル | +103.2% | +7.3% | 74.86 ドル844 億ドル |
| 中立 | 35% | 212.98 ドル2,402 億ドル | 65.60 ドル740 億ドル | +89.0% | +6.6% | 97.50 ドル1,100 億ドル |
| やや悲観 | 17% | 143.10 ドル1,614 億ドル | 53.19 ドル600 億ドル | +33.2% | +2.9% | 33.37 ドル376 億ドル |
| 悲観 | 8% | 74.20 ドル837 億ドル | 42.55 ドル480 億ドル | −20.8% | −2.3% | 9.34 ドル105 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 200.81 ドル2,265 億ドル | 62.98 ドル710 億ドル | +79.0% | +6.0% | 263.78 ドル2,975 億ドル |
今の株価時価総額 147.38 ドル1,662 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 15% 楽観:関税が下がり、マーマックスが回復、店舗 7,800 店へ 利益 131 億ドル · PER 21.9 倍 · 株価時価総額 254.68 ドル2,873 億ドル
マーマックスの 1 店あたり売上が物価並み(10 年 1.40 倍)に戻り、店舗は 4,350 店(T.J.マックス・マーシャルズの追加 300 店を超える)。ホームグッズは 1,450 店、カナダ 820 店、欧州・豪州 1,150 店で、全社は 7,770 店と長期目標 7,500 店を超える。関税が元の水準へ下がり、仕入れ値の交渉力が戻って粗利益率が 1.5 ポイント上がる。マーマックス 15.6%、ホームグッズ 14%、カナダ 16%、欧州・豪州は規模の効果で 11.5% と、全社の営業利益率は 13.9%。売上 1,258 億ドル、営業利益 175 億ドル、純利益 131 億ドル。ロス・ストアーズやバーリントンから低所得層も取り、百貨店の閉店で空いた立地を取る。過去 20 年の最大 30 倍前後を上回るが、式の外では引かない)。
- マーマックス(米国・T.J.マックス・マーシャルズ・シエラ):数量 4,350(店舗数(店))× 価格 0.17(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 743 億ドル・営業利益 116 億ドル。1 店あたり売上の推定
- ホームグッズ(米国・ホームグッズ・ホームセンス):数量 1,450(店舗数(店))× 価格 0.15(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 223 億ドル・営業利益 31 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX カナダ(ウィナーズ・ホームセンス・マーシャルズ):数量 820(店舗数(店))× 価格 0.13(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 110 億ドル・営業利益 18 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX インターナショナル(英国・欧州・豪州):数量 1,150(店舗数(店))× 価格 0.16(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 182 億ドル・営業利益 21 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.75%・g 4.0%(店舗の増加と物価で 4%)・事業の ROE 58.2%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 33.0%、10 年目より先の正当化 PER 23.4 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 24.4 倍。客を取り続ける側なので上限の 90% に置き 21.9 倍。
確率:関税が下がる・マーマックスの鈍りが一過性・店舗目標の前倒しが同時に来る必要があり 15%。
やや楽観 25% やや楽観:既存店は物価並み、店舗は目標どおり約 7,500 店 利益 118 億ドル · PER 22.1 倍 · 株価時価総額 231.19 ドル2,608 億ドル
マーマックスの 1 店あたり売上は 10 年 1.38 倍(物価 1.41 倍よりわずかに低い:新店の売上が既存店より低く、共食いが少しある)、店舗は 4,200 店。ホームグッズ 1,380 店、カナダ 800 店、欧州・豪州 1,100 店で、全社は 7,480 店と長期目標に到達する。営業利益率はマーマックス 15%、ホームグッズ 13.5%、カナダ 15.3%、欧州・豪州 10.8% で、全社 13.3%。売上 1,192 億ドル、営業利益 159 億ドル、純利益 118 億ドル。ロス・ストアーズのように低所得層の来店を取りながらも、TJX は中所得層以上の客を保ち、マーマックスの 2026 年の鈍り(既存店 +1%)は一過性で終わる。関税は今の水準が続くが、仕入れ値の交渉で吸収できる。
- マーマックス(米国・T.J.マックス・マーシャルズ・シエラ):数量 4,200(店舗数(店))× 価格 0.17(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 707 億ドル・営業利益 106 億ドル。1 店あたり売上の推定
- ホームグッズ(米国・ホームグッズ・ホームセンス):数量 1,380(店舗数(店))× 価格 0.15(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 210 億ドル・営業利益 28 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX カナダ(ウィナーズ・ホームセンス・マーシャルズ):数量 800(店舗数(店))× 価格 0.13(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 105 億ドル・営業利益 16 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX インターナショナル(英国・欧州・豪州):数量 1,100(店舗数(店))× 価格 0.15(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 170 億ドル・営業利益 18 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.75%・g 4.0%(店舗の増加と物価で 4%)・事業の ROE 62.1%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 34.9%、10 年目より先の正当化 PER 23.6 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 24.6 倍。マーマックスの鈍りが一過性に終わる側なので上限の 90% に置き 22.1 倍。
確率:店舗の拡大は会社の計画どおりで、ホームグッズ・欧州の好調が続く。事業の強さを評価して中立より厚い 25%。
中立 35% 中立:店舗は年 3.3% 増、1 店あたりは物価よりやや低く、PER は約 22 倍 利益 109 億ドル · PER 22.0 倍 · 株価時価総額 212.98 ドル2,402 億ドル
店舗は 10 年で 5,285 店から約 7,300 店へ(年 3.3% 増、FY28 から 4%)。マーマックス 4,100 店・ホームグッズ 1,350 店・カナダ 780 店・欧州・豪州 1,070 店。1 店あたり売上は物価(1.41 倍)より低い 1.36 倍(新店は既存店より売上が低く、客数は横ばい)。営業利益率はマーマックス 14.5%・ホームグッズ 13%・カナダ 14.5%・欧州・豪州 10%(規模の効果で 7% から上がる)、全社 12.7%。売上 1,146 億ドル(年 +6.6%)、営業利益 146 億ドル、純利益 109 億ドル。ロス・ストアーズは年 +6%、バーリントンは店舗拡大を続け、3 強でシェアを分け合い、TJX は米国のオフプライスの約 6 割を保つ。借り換え金利の上昇は純利益で 1 億ドル程度の減。
- マーマックス(米国・T.J.マックス・マーシャルズ・シエラ):数量 4,100(店舗数(店))× 価格 0.17(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 681 億ドル・営業利益 99 億ドル。1 店あたり売上の推定
- ホームグッズ(米国・ホームグッズ・ホームセンス):数量 1,350(店舗数(店))× 価格 0.15(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 202 億ドル・営業利益 26 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX カナダ(ウィナーズ・ホームセンス・マーシャルズ):数量 780(店舗数(店))× 価格 0.13(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 101 億ドル・営業利益 15 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX インターナショナル(英国・欧州・豪州):数量 1,070(店舗数(店))× 価格 0.15(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 162 億ドル・営業利益 16 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.75%・g 4.0%(店舗の増加と物価で 4%)・事業の ROE 60.6%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 34.2%、10 年目より先の正当化 PER 23.5 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 24.5 倍。店舗拡大が続き 3 強でシェアを分け合う側なので上限の 90% に置き 22.0 倍。
確率:業界ノートの中立(オフプライス年 +6〜7%)に沿い、マーマックスの鈍りは数四半期で戻るが、店舗の増加で共食いが少し出る。
やや悲観 17% やや悲観:競争でマーマックスの 1 店あたりが伸びず、関税が高止まり 利益 86 億ドル · PER 18.8 倍 · 株価時価総額 143.10 ドル1,614 億ドル
マーマックスの 1 店あたり売上は 10 年で 1.30 倍にとどまり(物価 1.41 倍に負ける:客数の減少と、ロス・ストアーズ・バーリントンとの競争)、店舗は 3,850 店。全社の店舗は 6,700 店で、長期目標に届かない。関税が高いまま続き、機会買いの供給はブランドの直営販売で細り、粗利益率が 1 ポイント下がる。営業利益率はマーマックス 13%・ホームグッズ 11.5%・カナダ 13%・欧州・豪州 8.5%、全社 11.3%。売上 1,022 億ドル、営業利益 115 億ドル、純利益 86 億ドル。
- マーマックス(米国・T.J.マックス・マーシャルズ・シエラ):数量 3,850(店舗数(店))× 価格 0.16(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 611 億ドル・営業利益 79 億ドル。1 店あたり売上の推定
- ホームグッズ(米国・ホームグッズ・ホームセンス):数量 1,250(店舗数(店))× 価格 0.14(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 180 億ドル・営業利益 21 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX カナダ(ウィナーズ・ホームセンス・マーシャルズ):数量 740(店舗数(店))× 価格 0.13(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 93 億ドル・営業利益 12 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX インターナショナル(英国・欧州・豪州):数量 960(店舗数(店))× 価格 0.14(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 138 億ドル・営業利益 12 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.75%・g 3.5%(成長が鈍り 3.5%)・事業の ROE 41.0%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 24.4%、10 年目より先の正当化 PER 20.2 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 20.9 倍。競争で 1 店あたり売上が物価に負ける側なので上限の 90% に置き 18.8 倍。
確率:マーマックスの鈍りが続き、ロス・アマゾンとの競争が強まる筋書き。起こりうる程度で 17%。
悲観 8% 悲観:構造で負ける(在庫の供給が細り、オフプライスの優位が薄まる) 利益 50 億ドル · PER 16.7 倍 · 株価時価総額 74.20 ドル837 億ドル
ブランドが在庫をオンラインと直営のアウトレットで捌き、アマゾンが余剰在庫の直販を拡大して、TJX が安く買える在庫が減る。バイヤーの強みが薄まり、マーマックスの 1 店あたり売上は 10 年で 1.15 倍にとどまり(客数が減り、値引きが増える)、店舗の増加も 5,900 店で止まる。営業利益率はマーマックス 10%・ホームグッズ 9%・カナダ 10%・欧州・豪州 5% で、全社 8.3%。売上 812 億ドル、営業利益 67 億ドル、純利益 50 億ドル。 仕入れの優位が薄れ、機会買いの供給が細る一方で、店舗の固定費と賃金は上がり続け、利益率は戻らない。ただし店舗網と配送網は残り、売上は年 +3% 程度を保つ。
- マーマックス(米国・T.J.マックス・マーシャルズ・シエラ):数量 3,500(店舗数(店))× 価格 0.14(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 491 億ドル・営業利益 49 億ドル。1 店あたり売上の推定
- ホームグッズ(米国・ホームグッズ・ホームセンス):数量 1,100(店舗数(店))× 価格 0.13(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 143 億ドル・営業利益 13 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX カナダ(ウィナーズ・ホームセンス・マーシャルズ):数量 670(店舗数(店))× 価格 0.11(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 76 億ドル・営業利益 8 億ドル。1 店あたり売上の推定
- TJX インターナショナル(英国・欧州・豪州):数量 800(店舗数(店))× 価格 0.13(1 店あたり売上(億ドル))→ 売上 102 億ドル・営業利益 5 億ドル。1 店あたり売上の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.75%・g 3.0%(店舗の増加が止まり 3%)・事業の ROE 34.5%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 普通(残る割合 0.50)→ RONIC 21.1%、10 年目より先の正当化 PER 18.1 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 18.6 倍。仕入れの堀が薄れる側なので上限の 90% に置き 16.7 倍。
確率:ブランドの直販・アマゾンのリセールでオフプライスの仕入れが細る構造変化。堀が深いので 8%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
マーマックス(米国・T.J.マックス・マーシャルズ・シエラ)
米国のオフプライスの中核。ブランドの余剰在庫を機会買いし、定価の 2〜6 割引で売る。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,000 | 0.12 | 366 | 53 |
| 10 年後 中立 | 4,100 | 0.17 | 681 | 99 |
取り方:売上 366 億ドル(FY26 開示)を店舗数 約 3,000(推定:全社 5,285 店から他の 3 事業の店数を引いた)で割り 1 店 約 1,220 万ドル。営業利益は調整後利益率 14.4% から 53 億ドル。
ホームグッズ(米国・ホームグッズ・ホームセンス)
家具・雑貨・インテリアのオフプライス。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 940 | 0.11 | 102 | 12 |
| 10 年後 中立 | 1,350 | 0.15 | 202 | 26 |
取り方:売上 102 億ドル(FY26 開示)を店舗数 約 940(推定)で割り 1 店 約 1,085 万ドル。利益率 約 12%。
TJX カナダ(ウィナーズ・ホームセンス・マーシャルズ)
カナダのオフプライス。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 595 | 0.09 | 56 | 8 |
| 10 年後 中立 | 780 | 0.13 | 101 | 15 |
取り方:売上 56 億ドル、店舗 589(FY26 末)から 約 595 とみて 1 店 約 940 万ドル。セグメント利益率 13.4%(報告ベース)。
TJX インターナショナル(英国・欧州・豪州)
TK マックス(欧州)・TK マックス豪州。まだ若く利益率が低いが伸びが速い。
| 数量店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 750 | 0.11 | 80 | 6 |
| 10 年後 中立 | 1,070 | 0.15 | 162 | 16 |
取り方:売上 80 億ドルを店舗数 約 750(推定)で割り 1 店 約 1,070 万ドル。調整後利益率 7.3%。
リスクと懸念
マーマックスの既存店の鈍り
2026 年 5〜7 月期の既存店は +1%(前期 +6%)。経営者は品揃えの実行の問題とするが、ロス・ストアーズが +10% で来店を取る中、原因が競争ならば回復は遅れ、全社の利益の 7 割弱を稼ぐ事業の利益率と倍率に響く。
高い倍率の縮み
今の PER 30 倍は利益ベースの中立(約 22 倍)を大きく上回る。k − g が 3.75% と薄く、金利が高止まりして k が 0.5 ポイント上がるだけで倍率はさらに下がる。利益が伸びても株価が動かない期間がありうる。
関税と仕入れ値
衣料・靴・家庭用品の輸入比率は 7〜8 割。関税で輸入原価が上がると、仕入れ値の交渉で一部は吸収できるが、2025 年は利益率を押し下げた。関税の水準は動かさず「今の水準が続く」を中立としている。IEEPA 関税の還付は一回限りで、正常利益には含めない。
機会買いの供給の細り
ブランドが直営のアウトレットとオンライン、アマゾンのリセールで在庫を捌くと、TJX が安く買える在庫が減る。オフプライスの堀の中心が仕入れなので、この変化は構造の悲観の筋書きの核になる。供給が細ると値引きの深さと品揃えの鮮度が落ち、客数と利益率の両方に響く。
店舗拡大による共食い
長期の店舗目標を 7,500 店へ引き上げ、年 4% の店舗増に加速する。店が増えるほど新店の売上は既存店より低くなり、1 店あたりの収益が薄まる。ロス・ストアーズ・バーリントンも出店を続け、立地の取り合いになる。
欧州・豪州の利益率
インターナショナルの利益率は 7.3% と低い。賃金・賃料・競争(プライマークなど)で上がらないか、下がると、全社の利益率 12% の維持と店舗拡大の価値が弱まる。欧州は事業が若く、物流と仕入れの規模の効果がまだ出きっていないので、10% 前後への上昇を中立に置いたが、上がらない場合の下振れが大きい。
消費者の二極化と不況
低所得層は圧迫され、ロスに行く一方、高所得層は百貨店や高級店に戻る可能性もある。急な不況では TJX は増収となった歴史があるが、関税・賃金の上昇と重なると、利益率が 10% に落ちる筋書きも否定できない。
今後の分かれ目
- マーマックスの既存店が第 4 四半期から 2〜3% に戻り、その後も +3% 台を保つ
- 鈍りは一過性だったと判断でき、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。中立の 10 年の時価総額の確度が上がる。
- マーマックスの既存店が +1% 前後のまま 2 四半期以上続く
- 競争(ロス・アマゾン)が原因の疑いが強まり、やや悲観の確率を上げ、倍率の縮みが早まる見通し。
- IEEPA 関税の還付が確定し、関税の水準が下がる
- 粗利益率が 1 ポイント上がる楽観の筋書きに近づくが、還付は一回限りなので、正常利益には含めない。
- ブランドが直営のアウトレット・オンラインを拡大し、TJX の仕入れ価格の優位が薄まる
- 構造の悲観(10 年)の確率を上げる。バイヤーの数と仕入れ先の数の推移を見て判断する。
- 金利(10 年国債)がさらに上がり、k が 8.25% を超える
- k − g が薄くなり、倍率は中立でさらに下がる。割り戻した価値は今を下回る。
- 欧州・豪州の利益率が 9〜10% へ上がる
- 店舗拡大の収益性が高まり、10 年後の営業利益率 12.7% が現実的になる。
見ておくもの
- マーマックスの既存店売上(客数と客単価)と、ロス・ストアーズ・バーリントンの既存店との差
- 営業利益率(12% の維持)と粗利益率、関税の水準と還付
- 店舗数の純増(年 4% の達成)と新店の売上
- インターナショナルのセグメント利益率(7.3% の推移)
- 配当と自社株買いの額、株数の減少率
- PER の水準(利益ベースの倍率との比較)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の PER 30 倍に寄せず、利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(事業の ROE − k))に k 7.75%(基本 8.0% + quality −0.25%)・g 3〜4%(上限 4%)・事業の ROE(投下資本利益率から直した 60% 前後)を入れ、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) とした上限の 9 割(10 年の中立 約 22 倍)を使った。k − g の薄さや過去の PER の分布で式の外から割り引くことはしていない。悲観は利益率と成長の低下を構造から積み上げ、倍率の縮みとの二重取りにならないようにした。結果として今の倍率より低い値になり、k への敏感さ(k が 0.5 ポイント上がれば中立の 10 年はさらに下がる)を自覚している。売上は店舗数と 1 店あたり売上から積み上げ、今の株価を見て決めていない。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality −0.25%。オフプライスは景気後退でも増収で(2008〜09 年)cycle −0.25%、値決めは普通で pricing は 0、純負債が小さく(リース込み 73 億ドル)debt は 0、店舗網と仕入れの規模で寿命も普通(life は 0)。個別のリスク(マーマックスの既存店の鈍り・ロスとの競争・関税)は k に足さず、悲観の確率と悲観の営業利益率・g・ROE で表した。