結論
フォード・モーター(F)は、ピックアップの F シリーズ・スーパーデューティ・トランジットなどを売る商用車の「フォード・プロ」、ガソリン車とハイブリッドの「フォード・ブルー」、EV と電力貯蔵の「モデル e」、金融の「フォード・クレジット」で稼ぐ米国第 2 の自動車メーカーである。2025 年の売上は 1,873 億ドル、調整後 EBIT は 68 億ドルだったが、EV 計画の見直しで特別項目が 174 億ドル出て純損失は 82 億ドルに沈んだ。2026 年は見通しを 2 度上げ、調整後 EBIT 100〜110 億ドルと置くが、関税の還付 13 億ドルとアルミ供給の回復という一回限りの追い風を含む。
稼ぎの中心はフォード・プロ(利益率 10〜11%)で、モデル e の赤字(年 約 40〜48 億ドル)がそれを食う構図が会社の本質である。この赤字が 2029 年までに止まるかが価値の分かれ目で、10 年後の中立は、モデル e が収支均衡、全社の純利益が 117 億ドル、時価総額が約 1,170 億ドル(PER 10 倍)。中国勢・関税の低下・EV の赤字の再燃で構造的に負ける筋書き(確率 19%)は、時価総額が 220 億ドル前後まで下がる。倍率は利益ベースで、中立とやや悲観は資本コスト 10% の逆数(1÷k)の床 10 倍になる。
バリュー投資の観点では、フォード・プロの堀は本物だが、保証費用の重さと EV への資本の使い方に難があり、確信度は中程度とした。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。F シリーズと商用車は 10 年後も米国で売れる。堀は、商用車では「広がる」可能性があり、乗用では「保つ」に留まる。事業は存続するが、国内メーカー 3 社(GM・フォード・ステランティス)の競争で価格を決める力は弱く、強いのは商用車とトラックの範囲に限られる。
オーナー利益は、純利益から成長に要る再投資を引いたもの。フォードの設備投資は年 95〜105 億ドルで減価償却を大きく上回り、2026 年の調整後 FCF は 60〜70 億ドルと、調整後純利益(約 75 億ドル)にほぼ見合う。今の時価総額約 495 億ドルに対し、一回限り(関税還付・アルミの回復 約 23 億ドル)を除いたオーナー利益の利回りは約 10〜12% で、10 年国債 5% を大きく上回る。ただし 5〜8 年に一度の谷で利益は消えるため、この利回りは山の手前の値であり、谷を含む ROE は 12% 前後(2014〜2025 年の平均は約 10%)と見て、倍率は利益ベースで、ROE が k を超える筋書きも 1÷k の床(10 倍)に収まる。
資本配分は、2025 年に EV 計画の見直しで 195 億ドルを特別項目とし、2026 年に電池合弁も解消した。安全域は、時価総額が自己資本の 1.4 倍で、悲観の筋書きでも商用車・フォード・クレジットの純資産が床になる点にある。わからない部分は、モデル e の収支の行方と保証費用の下がり方で、確信度は中程度。
何で稼ぐ会社か
2025 年の売上 1,873 億ドルは 4 つに分かれる。フォード・ブルー(卸売 273 万台・売上 1,010 億ドル・EBIT 30 億ドル)は、F-150 などのピックアップ、ブロンコ・エクスプローラー・マスタング・メーバリック、欧州と新興国の乗用車を扱う。フォード・プロ(149 万台・663 億ドル・EBIT 68 億ドル)は、スーパーデューティ、トランジット、E シリーズなどの商用車と、有料のソフト・修理サービス(フォード・プロ・インテリジェンスの購読は約 90 万、2026 年の上半期で +20%)。米国の商用車(クラス 1〜7)の約 4 割を握り、利益率は 2024 年の約 13% から、アルミ供給の途絶と関税で 2025 年に 10.3% へ下がった。
モデル e(18 万台・67 億ドル・EBIT −48 億ドル)は、マスタング・マッハ E と E トランジット。2025 年 12 月に、全電動の F-150 ライトニングを終え、195 億ドルの特別項目(モデルの中止 約 85 億ドル、SK オンとの電池合弁の解消 約 60 億ドル、関連費用 約 50 億ドル)を計上し、低価格の「ユニバーサル EV プラットフォーム」の最初の車(2027 年にルイビルで作る中型ピックアップ、価格は約 3 万ドル)と、航続距離延長型の次期ライトニングへ軸を移した。ケンタッキーの電池工場は「フォード・エナジー」として電力貯蔵(年 20 GWh、約 20 億ドルの投資、技術は CATL から許諾、初出荷は 2027 年後半)に転用する。モデル e の黒字化は 2029 年を目標にする。
フォード・クレジット(売上 133 億ドル・税引き前利益 26 億ドル)は新車・中古車のローンとリースで、債務は 1,414 億ドルと自動車事業の借金(会社の有利子負債は 236 億ドル)より桁が大きい。ただし債務は金融の事業の仕入れで、自動車の現金・負債とは分けて考える。2025 年に自社株買いは行わず、配当 30 億ドルを支払った。
優良さと弱いところ
堀は 2 つある。第 1 は米国の商用車で、約 4 割のシェア、全米に張った修理・販売網、車両の稼働データを使う有料ソフトという 3 つが組み合わさり、ラム(ステランティス)・メルセデス・GM の追随を許していない。トランジットは米国最量販のバンで、スーパーデューティは 2026 年 7〜9 月期に 19 年ぶりの高い生産量だった。第 2 は F シリーズで、50 年連続で米国最量販の車、2026 年 1〜9 月は 56 万台とシボレー・シルバラードを 14 万台以上上回る。この 2 つが会社の利益の大半を生む。
弱みは 3 つ。第 1 に品質と保証費用。2025 年のリコールは約 150 件・約 1,290 万台で過去最多、2026 年も更に増えるペースで、2023 年に保証費用は 48 億ドルに達した。会社は 2025 年に保証を 5 億ドル減らし、材料費と合わせて 15 億ドル削減したと言うが、米国の当局は 2025 年に 1.65 億ドルの制裁金を課し、監視役を置いた。第 2 に EV への資本の使い方で、2022〜2025 年のモデル e の累計損失は約 167 億ドル、さらに 195 億ドルの特別項目を出し、合わせて 360 億ドル近くが戻らない。第 3 に資本効率の波で、ROE は 2018 年 10%、2019 年 0%、2021 年 37%、2022 年 −5%、2024 年 13%、2025 年 −23% と大きく振れる。GAAP の営業利益率は 2015〜2025 年で −3.6〜5.3%(最良は 2015 年)に留まり、価格を決める力はトラックと商用車に限られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の新車(軽量車)は 2025 年に約 1,620 万台、2026 年は 1,600〜1,650 万台で、ここ 1 年は 1,650 万台前後が天井。平均取引価格は約 5 万ドルで前年比 +1% 未満、会社の想定する 2026 年の値上がりは約 +0.5%。ローン金利は 7% 前後で月額が重く、保有車の平均年齢は 12.8 年と古い。需要は買い替えの先送りとローンの重さが相殺して横ばい、というのが自然な見立てである。
構造の変化は 4 つ。第 1 に EV の失速。連邦の税額控除は 2025 年 9 月末に終わり、BEV の新車シェアは 2026 年 4〜6 月期に約 6%(前年 7%)、ハイブリッドは過去最高の 16%。フォードのメーバリック(ハイブリッド)は 7〜9 月期に 59.6% 増の過去最高で、ユニバーサル EV と航続距離延長型は、この流れを拾う選択である。第 2 に関税。輸入車の 25% が国内メーカーに追い風だが、部品の費用が上がり、2025 年のフォードの関税の純影響は約 20 億ドル。最高裁の判断で 2026 年は IEEPA 関税 13 億ドルの還付が出たが一回限りで、2026 年の純費用は 10 億ドル未満の見込み。第 3 に中国勢。BYD などは米国から締め出されているが、メキシコ・欧州・新興国で在来メーカーの利益源を削る。フォードは欧州でルノーと組み、2028 年に 2 車種の EV を出す。第 4 にソフトと自動運転で、フォードは商用のソフト課金と運転支援で追う。
循環の位置は「山の手前の横ばい」。在来メーカーの北米の営業利益率は 7〜9%(GM は 2026 年上半期に 9.3%)だが、フォードは欧州・新興国が足を引き、ブルー全体で 5% 台。10 年後の米国の軽量車は 1,600〜1,700 万台 × 平均 約 6.3 万ドル(約 1.05〜1.1 兆ドル)と置いた。
資本政策と M&A
配当は四半期ごとの定額で年 約 24 億ドル(2025 年の実績は特別配当を含めて 30 億ドル)、自社株買いは 2025 年に無し、2026 年の上半期に 3 億ドル。会社は「調整後の FCF の 40〜50% を株主に返す」という方針で、2026 年の FCF 見通しは 60〜70 億ドル、設備投資は 95〜105 億ドル(フォード・エナジーの立ち上げ 約 15 億ドルを含む)。2026 年 6 月末の会社の現金・有価証券は 223 億ドル、有利子負債は 236 億ドルで純負債は約 13 億ドルと、純現金はほぼ無い。流動性は 434 億ドル。
M&A は大型のものが無く、提携が中心(欧州でルノー、電池でも CATL の技術許諾)。EV 電池は SK オンとの合弁を 2026 年 4〜6 月に解消し、36 億ドル(ほぼ非現金)を特別項目に計上した。創業家が B 株で議決権の約 4 割を持つため、TOB(買収の提案)はほぼ起こらない。
資本配分の履歴はまだら。2006 年に資産を担保に入れて調達した借入が 2008〜09 年の危機を政府の救済なしで乗り切らせた一方、2022〜2025 年は EV に先に大きく張り、損失と特別項目で 360 億ドル近くを失った。今は EV と電力貯蔵への配分を絞り直し、フォード・エナジーに約 20 億ドルを別枠で入れる。株式報酬は小さく(年 数億ドル)、株数は 2025 年末で約 39.8 億株とほぼ変わらない。景気の谷では、フォード・クレジットの資金調達を守るため、配当は減額・自社株買いは停止に動く(悲観の還元は小さく置いた)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
フォード・プロは約 4 割のシェアを持つ米国の商用車の覇者で、2026 年の EBIT 見通しは 70〜75 億ドル、利益率 11% 台。アルミ供給の途絶(2025 年に約 20 億ドルの逆風)が 2026 年に約 10 億ドルの追い風へ反転し、2024 年の約 13% へ向かう素地がある。有料ソフトは約 90 万契約で上半期だけで 20% 伸び、数が増えるほど 1 台あたりの利益が上がる。
ブルーは、2026 年上半期の EBIT が 31 億ドルと前年を大きく上回り、通期の見通しを 50〜55 億ドルへ上げた。F-150・スーパーデューティ・ブロンコ・メーバリックは売れ筋で、7〜9 月期の米国の小売シェアは 12.1%(エスケープ終了を除くと +0.4 ポイント)、トラックと大型 SUV が好調。保証・材料費は 2025 年に 15 億ドル下がり、2026 年に更に 10 億ドル下がる見込みで、これは利益率に直接効く。
モデル e は、ライトニングの終了・SK オンとの合弁解消・ユニバーサル EV への一本化で、損失は 48 億ドル(2025 年)から約 40 億ドル(2026 年)へ縮み、3 四半期連続で改善している。約 3 万ドルの中型ピックアップは、補助金に頼らず売る設計で、2029 年の黒字化が実現すれば全社の利益は年 40 億ドル以上増える。フォード・エナジーは年 20 GWh の電力貯蔵で、AI データセンター向けの需要を取る別の成長源になる。
10 年後、ブルー 262 万台(利益率 7.5%)・プロ 172 万台(12%)・モデル e 80 万台(4%)・クレジット(18%)で、純利益は 189 億ドル、時価総額は 3,300 億ドル台まで伸びうる。
慎重な見方
2026 年の調整後 EBIT 100〜110 億ドルは、関税の還付 13 億ドルとアルミ回復の約 10 億ドルという一回限りを含み、土台は約 80 億ドルである。ブルーの利益率は 2025 年に 3.0%、2024 年も 5% 前後に留まり、GM の北米(8〜9%)に届かない。保証費用は 2023 年の 48 億ドルから下がったが、リコールは 2025 年に約 150 件・1,290 万台と過去最多で、2026 年も更に多く、品質の問題は 18 か月の約束を過ぎても改善が見えない。当局は 1.65 億ドルの制裁金と監視役を課した。
モデル e の黒字化目標(2029 年)は、2023 年の説明会で掲げた「2026 年に利益率 8%」から後ろへずれた前科がある。2026 年の損失は約 40 億ドルで、そのうち約 10 億ドルは新しい投資の追加。ユニバーサル EV の約 3 万ドルの中型ピックアップは、補助金の終わった市場で、トヨタ・ホンダのハイブリッドと価格で戦い、電池は CATL の技術許諾への依存を増やす。フォード・エナジーは、競合が先行する電力貯蔵に今から約 20 億ドルを入れるが、受注は EDF の枠組み(年 最大 4 GWh)のみ。
フォード・プロの 10% 超の利益率も永遠ではない。ラムとステランティスは値下げで追い、BYD などの安価なバンがメキシコ・欧州から入れば価格が崩れる。米国の販売が 3 割落ちる景気の谷(2009 年は −40%)では、固定費の重さで赤字になり、フォード・クレジットの債務 1,414 億ドルが同時に重くなる。
ブルーとプロの価格は物価に追いつかず(ローン月額の限界)、人件費・部品は物価で上がるため、名目の利益率は下がり続ける。10 年後の中立でも、利益率は今の見通しより 1 ポイント低く、モデル e が赤字のまま残る筋書きは、やや悲観と悲観の合計 45% に含まれる。
どちらに重みを置いたか
フォード・プロの強さと、保証・材料費の削減、モデル e の損失縮小は数字で確認できるので、楽観とやや楽観に 24% を置いた。ただし 2026 年の見通しには一回限り(関税の還付・アルミの回復 約 23 億ドル)が混じり、保証費用とリコールは構造の問題として残り、モデル e の黒字化は過去に後ろへずれたため、中立の利益率をブルー 5.3%・プロ 10〜11% に抑えて最も厚い 36%・31% を置いた。
慎重な見方が勝つのは、中国勢・関税の低下・EV の赤字の再燃(10 年でやや悲観 26%・悲観 19%)である。GM より悪い資本配分の履歴と、リコールの多さを加味して、慎重側の合計を 10 年で 45%(GM は 38%)に厚くした。それでも中立の時価総額は今の 2.4 倍ある(PER は床の 10 倍)。だから割安の結論は確率の置き方より、モデル e が止まるか・ブルーの利益率が 5% 台を保つかに最も敏感である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 23.70 ドル943 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 10.45 ドル416 億ドル)。 今の値に割り戻すと 15.63 ドル622 億ドル、今との差 +30.9%、 期待の年率 +11.1%(資本コスト 10.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 47.50 ドル1,890 億ドル | 19.13 ドル761 億ドル | +458.0% | +18.8% | 4.66 ドル186 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 36.69 ドル1,460 億ドル | 15.31 ドル609 億ドル | +335.5% | +15.9% | 8.84 ドル352 億ドル |
| 中立 | 31% | 29.40 ドル1,170 億ドル | 11.99 ドル477 億ドル | +246.7% | +13.2% | 12.83 ドル511 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 15.33 ドル610 億ドル | 7.26 ドル289 億ドル | +89.2% | +6.6% | 5.87 ドル234 億ドル |
| 悲観 | 19% | 5.45 ドル217 億ドル | 4.78 ドル190 億ドル | −14.3% | −1.5% | 1.94 ドル77 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 23.70 ドル943 億ドル | 10.45 ドル416 億ドル | +186.0% | +11.1% | 34.15 ドル1,359 億ドル |
今の株価時価総額 11.94 ドル475 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 7% ユニバーサル EV が世界で売れ、プロの価格力とソフトで利益が 2 倍以上に 利益 189 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 47.50 ドル1,890 億ドル
2035 年のブルーは 262 万台(世界の新車 約 5,000 万台 × シェア 5.2%)・1 台 4.92 万ドル(1.33 倍)・利益率 7.5%、プロは 172 万台・1 台 6.24 万ドル(1.40 倍。ソフトの購読が価格に乗る)・利益率 12%。モデル e は 80 万台(約 3 万ドルの中型ピックアップと小型車が北米・欧州で売れる)・利益率 4%、フォード・エナジーは 16 GWh・利益率 10%、クレジットは運用資産 2,100 億ドル・利益率 18%。調整後 EBIT は 252 億ドル、純利益 189 億ドル。10 年の正味の還元は 760 億ドルで、純現金は約 480 億ドルまで積み上がる。関税と EV の規制は緩い方向のまま、中国勢は米国市場に入れない。ラム・ステランティスの値下げは起きず、トヨタ・ホンダのハイブリッドにもピックアップと商用車の価格力で対抗する。
- フォード・ブルー(F-150 などのピックアップ・SUV・乗用車のガソリン車とハイブリッド、欧州・新興国を含む):数量 262(卸売台数(万台)= 対象市場(米国・カナダ・メキシコ・欧州・南米・アジア太平洋・中東アフリカの新車 約 4,800 万台)× シェア 約 5.7%)× 価格 4.92(1 台あたり売上(万ドル。部品・サービスを含む))→ 売上 1,289 億ドル・営業利益 97 億ドル。営業利益率 7.5%
- フォード・プロ(スーパーデューティ・トランジットなどの商用車と有料ソフト・修理):数量 172(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 3.1%(米国の商用車は約 4 割))× 価格 6.24(1 台あたり売上(万ドル。ソフト・サービスを含む))→ 売上 1,073 億ドル・営業利益 129 億ドル。営業利益率 12.0%
- モデル e(マッハ E・E トランジットと、2027 年からのユニバーサル EV):数量 80.0(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 0.4%)× 価格 4.20(1 台あたり売上(万ドル))→ 売上 336 億ドル・営業利益 13 億ドル。営業利益率 4.0%
- フォード・エナジー(電力貯蔵用の電池):数量 16.0(電力貯蔵の出荷(GWh))× 価格 2.00(1 GWh あたり売上(億ドル))→ 売上 32 億ドル・営業利益 3 億ドル。営業利益率 10.0%
- フォード・クレジット(新車・中古車のローンとリース):数量 2,100(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.09(運用資産あたり収益率)→ 売上 186 億ドル・営業利益 34 億ドル。営業利益率 18.0%
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 10.00%・g 4.0%(北米の販売の実質 0.5%+商用の伸び 0.5%+価格 3.0%)・事業の ROE 19.2%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 13.1%、10 年目より先の正当化 PER 11.6 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 12.0 倍。景気の山の利益や価格競争があり利益の質が低いので上限の 70% は床の 1÷k(10.0 倍)を下回るので、1÷k に置く。
確率:楽観:モデル e が 4% の黒字、プロ 12%、ソフトとフォード・エナジーが育つ。業界ノートの楽観に当たる。全部当たる必要があるため 7%。
やや楽観 17% ブルーは 6% 台・プロは 11% を保ち、モデル e は小さな黒字 利益 146 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 36.69 ドル1,460 億ドル
2035 年のブルーは 252 万台・1 台 4.80 万ドル(1.30 倍)・利益率 6.2%、プロは 162 万台・1 台 6.00 万ドル(1.35 倍)・利益率 11%。モデル e は 65 万台・利益率 2%、フォード・エナジーは 12 GWh・利益率 10%、クレジットは運用資産 2,000 億ドル・利益率 17%。調整後 EBIT は 197 億ドル、純利益 146 億ドル。10 年の正味の還元は 610 億ドル。保証・材料費の削減が定着し、ブルーは欧州の縮小を新興国(レンジャーとエベレスト)で埋める。プロは有料ソフトの契約が 200 万を超え、1 台あたりの利益が増える。モデル e はユニバーサル EV が軌道に乗って 2030 年前後に黒字化するが、規模は小さい。関税は今の水準が続き、価格転嫁で吸収する。
- フォード・ブルー(F-150 などのピックアップ・SUV・乗用車のガソリン車とハイブリッド、欧州・新興国を含む):数量 252(卸売台数(万台)= 対象市場(米国・カナダ・メキシコ・欧州・南米・アジア太平洋・中東アフリカの新車 約 4,800 万台)× シェア 約 5.7%)× 価格 4.80(1 台あたり売上(万ドル。部品・サービスを含む))→ 売上 1,210 億ドル・営業利益 75 億ドル。営業利益率 6.2%
- フォード・プロ(スーパーデューティ・トランジットなどの商用車と有料ソフト・修理):数量 162(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 3.1%(米国の商用車は約 4 割))× 価格 6.00(1 台あたり売上(万ドル。ソフト・サービスを含む))→ 売上 972 億ドル・営業利益 107 億ドル。営業利益率 11.0%
- モデル e(マッハ E・E トランジットと、2027 年からのユニバーサル EV):数量 65.0(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 0.4%)× 価格 4.00(1 台あたり売上(万ドル))→ 売上 260 億ドル・営業利益 5 億ドル。営業利益率 2.0%
- フォード・エナジー(電力貯蔵用の電池):数量 12.0(電力貯蔵の出荷(GWh))× 価格 2.00(1 GWh あたり売上(億ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 2 億ドル。営業利益率 10.0%
- フォード・クレジット(新車・中古車のローンとリース):数量 2,000(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.09(運用資産あたり収益率)→ 売上 176 億ドル・営業利益 30 億ドル。営業利益率 17.0%
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 10.00%・g 4.0%(実質 0.3%+価格 3.5%=約 4%)・事業の ROE 17.0%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 12.3%、10 年目より先の正当化 PER 11.3 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 11.7 倍。景気の山の利益や価格競争があり利益の質が低いので上限の 70% は床の 1÷k(10.0 倍)を下回るので、1÷k に置く。
確率:ブルー 6% 台・プロ 11%・モデル e 小黒字。2023〜2024 年の山の水準が続く筋書きとして 17%。
中立 31% 優良だが普通の自動車会社:商用車が稼ぎ、モデル e は収支均衡 利益 117 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 29.40 ドル1,170 億ドル
2035 年のブルーは 245 万台(世界の新車 約 5,000 万台 × シェア 4.9%。2025 年の 273 万台から、エスケープ終了と欧州の縮小で減る)・1 台 4.78 万ドル(1.29 倍、年 +2.6%。物価 3.5% を下回るのはローン月額の限界と廉価車の復活)・利益率 5.3%、プロは 155 万台・1 台 5.97 万ドル(1.34 倍)・利益率 10%。モデル e は 50 万台で収支均衡(2029 年の黒字化目標は 2〜3 年遅れる)、フォード・エナジーは 8 GWh・利益率 8%、クレジットは運用資産 1,950 億ドル・利益率 16.5%。調整後 EBIT は 161 億ドル、利払いの増加(−3 億ドル)を引いた純利益 117 億ドル(ROE 15.6%)。10 年の正味の還元は 480 億ドル(FCF の約 55%)で、純現金は約 300 億ドルまで積み上がる。F シリーズと商用車の堀は保たれ、保証費用は下がるが 2015〜2018 年の水準に戻る程度。「優良ではあるが普通の自動車会社」。
- フォード・ブルー(F-150 などのピックアップ・SUV・乗用車のガソリン車とハイブリッド、欧州・新興国を含む):数量 245(卸売台数(万台)= 対象市場(米国・カナダ・メキシコ・欧州・南米・アジア太平洋・中東アフリカの新車 約 4,800 万台)× シェア 約 5.7%)× 価格 4.78(1 台あたり売上(万ドル。部品・サービスを含む))→ 売上 1,171 億ドル・営業利益 62 億ドル。営業利益率 5.3%
- フォード・プロ(スーパーデューティ・トランジットなどの商用車と有料ソフト・修理):数量 155(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 3.1%(米国の商用車は約 4 割))× 価格 5.97(1 台あたり売上(万ドル。ソフト・サービスを含む))→ 売上 925 億ドル・営業利益 93 億ドル。営業利益率 10.0%
- モデル e(マッハ E・E トランジットと、2027 年からのユニバーサル EV):数量 50.0(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 0.4%)× 価格 3.90(1 台あたり売上(万ドル))→ 売上 195 億ドル・営業利益 0 億ドル。営業利益率 0.0%
- フォード・エナジー(電力貯蔵用の電池):数量 8.0(電力貯蔵の出荷(GWh))× 価格 2.00(1 GWh あたり売上(億ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 1 億ドル。営業利益率 8.0%
- フォード・クレジット(新車・中古車のローンとリース):数量 1,950(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.09(運用資産あたり収益率)→ 売上 172 億ドル・営業利益 28 億ドル。営業利益率 16.5%
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 10.00%・g 3.5%(実質 0%+価格 3.5%)・事業の ROE 15.6%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 11.9%、10 年目より先の正当化 PER 10.8 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 11.2 倍。景気の山の利益や価格競争があり利益の質が低いので上限の 70% は床の 1÷k(10.0 倍)を下回るので、1÷k に置く。
確率:業界ノートの中立(在来メーカーの利益率 4〜6%)の中位に、プロとクレジットの上乗せ。最も厚い 31%。
やや悲観 26% 競合と中国勢で利益率が 2024 年の 6 割に落ち、EV の損失がくすぶる 利益 61 億ドル · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 15.33 ドル610 億ドル
2035 年のブルーは 225 万台(欧州の撤退に近い縮小、エスケープ終了、トヨタ・ホンダのハイブリッドへの流出)・1 台 4.60 万ドル(1.24 倍。値引きが続く)・利益率 3.5%、プロは 145 万台・1 台 5.60 万ドル(1.26 倍。ラムの値下げとメキシコ経由の安価なバンで価格が伸びない)・利益率 8.5%。モデル e は 35 万台で損失 10 億ドル、フォード・エナジーは 3 GWh で小さな赤字、クレジットは貸倒の増加で運用資産 1,800 億ドル・利益率 13%。調整後 EBIT は 91 億ドル、純利益 60 億ドル(ROE 11%)。10 年の正味の還元は 290 億ドルで、純現金は約 145 億ドル。関税の低下で競争が戻り、リコールと保証の費用がくすぶる。2024 年の純利益(59 億ドル)を名目でも超えない、利益の半分近くが物価で消える姿で、プロの堀は薄まる。
- フォード・ブルー(F-150 などのピックアップ・SUV・乗用車のガソリン車とハイブリッド、欧州・新興国を含む):数量 225(卸売台数(万台)= 対象市場(米国・カナダ・メキシコ・欧州・南米・アジア太平洋・中東アフリカの新車 約 4,800 万台)× シェア 約 5.7%)× 価格 4.60(1 台あたり売上(万ドル。部品・サービスを含む))→ 売上 1,035 億ドル・営業利益 36 億ドル。営業利益率 3.5%
- フォード・プロ(スーパーデューティ・トランジットなどの商用車と有料ソフト・修理):数量 145(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 3.1%(米国の商用車は約 4 割))× 価格 5.60(1 台あたり売上(万ドル。ソフト・サービスを含む))→ 売上 812 億ドル・営業利益 69 億ドル。営業利益率 8.5%
- モデル e(マッハ E・E トランジットと、2027 年からのユニバーサル EV):数量 35.0(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 0.4%)× 価格 3.70(1 台あたり売上(万ドル))→ 売上 130 億ドル・営業利益 −10 億ドル。営業利益率 -8.0%
- フォード・エナジー(電力貯蔵用の電池):数量 3.0(電力貯蔵の出荷(GWh))× 価格 1.90(1 GWh あたり売上(億ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。営業利益率 -5.0%
- フォード・クレジット(新車・中古車のローンとリース):数量 1,800(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.09(運用資産あたり収益率)→ 売上 157 億ドル・営業利益 20 億ドル。営業利益率 13.0%
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 10.00%・g 3.0%(実質 −0.5%+価格 3.5%)・事業の ROE 11.0%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 10.3%、10 年目より先の正当化 PER 10.1 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 10.4 倍。利益の質が低く競争も強いので上限の 70% は床の 1÷k(10.0 倍)を下回るので、1÷k に置く。
確率:モデル e の赤字が残り、ブルーが欧州と新興国で縮み、プロの値下げが進む慎重な見方の中心。リコールと保証の履歴から GM より厚い 26%。
悲観 19% 中国勢・関税の低下・EV の赤字の再燃で構造的に負ける 利益 −36 億ドル · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 5.45 ドル217 億ドル
2035 年までに中国の EV と安価な商用バンが価格 −30% で世界に出て、関税の低下で米国にも入り、ブルーは 180 万台まで落ちる(1 台 4.45 万ドル。値引きで名目も上がりにくい)・利益率 −2%、プロは 120 万台・1 台 5.0 万ドル・利益率 4%(大口の法人顧客が値下げを要求)。モデル e は 15 万台・損失 5 億ドル(利益率 −30%)、フォード・エナジーは撤退、クレジットは貸倒で運用資産 1,500 億ドル・利益率 7%。調整後 EBIT は −24 億ドル、純損失 36 億ドル。EV の追加の減損で自己資本が 100 億ドル近く減り、10 年の正味の還元は 190 億ドル(配当は減額)、自己資本は 362 億ドル(還元は資産の売却ではなく、利益が落ちる前の利益と現金から払ったもの)。
- フォード・ブルー(F-150 などのピックアップ・SUV・乗用車のガソリン車とハイブリッド、欧州・新興国を含む):数量 180(卸売台数(万台)= 対象市場(米国・カナダ・メキシコ・欧州・南米・アジア太平洋・中東アフリカの新車 約 4,800 万台)× シェア 約 5.7%)× 価格 4.45(1 台あたり売上(万ドル。部品・サービスを含む))→ 売上 801 億ドル・営業利益 −16 億ドル。営業利益率 -2.0%
- フォード・プロ(スーパーデューティ・トランジットなどの商用車と有料ソフト・修理):数量 120(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 3.1%(米国の商用車は約 4 割))× 価格 5.00(1 台あたり売上(万ドル。ソフト・サービスを含む))→ 売上 600 億ドル・営業利益 24 億ドル。営業利益率 4.0%
- モデル e(マッハ E・E トランジットと、2027 年からのユニバーサル EV):数量 15.0(卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 0.4%)× 価格 3.60(1 台あたり売上(万ドル))→ 売上 54 億ドル・営業利益 −16 億ドル。営業利益率 -30.0%
- フォード・エナジー(電力貯蔵用の電池):数量 0.0(電力貯蔵の出荷(GWh))× 価格 2.00(1 GWh あたり売上(億ドル))→ 売上 0 億ドル・営業利益 0 億ドル。営業利益率 0.0%
- フォード・クレジット(新車・中古車のローンとリース):数量 1,500(平均運用資産(億ドル))× 価格 0.09(運用資産あたり収益率)→ 売上 128 億ドル・営業利益 9 億ドル。営業利益率 7.0%
倍率:構造的に負けた後の定着で営業赤字。自己資本 362 億ドル(期首 360 + 10 年の純利益の合計 192 − 還元 190)の 6 割を床に置く。営業赤字でも、フォード・クレジットの純資産(貸出債権が裏付け)と商用車の事業は売れるので、減損後の自己資本のうち売れる資産の税後の目安を 6 割とした。時価総額 217 億ドルは自己資本の 0.6 倍。
確率:中国の EV とバンが世界に出て、関税が下がり、EV の赤字が再燃して、もう優良でなくなる。EV に先に張って 360 億ドル近く失った履歴から 19%(通常より厚め)。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
フォード・ブルー(F-150 などのピックアップ・SUV・乗用車のガソリン車とハイブリッド、欧州・新興国を含む)
乗用・ピックアップ・SUV のガソリン車とハイブリッドの卸売と部品。F-150・ブロンコ・メーバリック・マスタングが利益の中心で、欧州と新興国は薄利。
| 数量卸売台数(万台)= 対象市場(米国・カナダ・メキシコ・欧州・南米・アジア太平洋・中東アフリカの新車 約 4,800 万台)× シェア 約 5.7% | 価格1 台あたり売上(万ドル。部品・サービスを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 273 | 3.70 | 1,010 | 30 |
| 10 年後 中立 | 245 | 4.78 | 1,171 | 62 |
取り方:2025 年の卸売は 272.8 万台、売上 1,010 億ドル(決算発表)で 1 台 約 3.70 万ドル(万台 × 万ドル = 億ドル、rev_factor 1)。対象市場約 4,800 万台(米国 1,620・カナダ 190・メキシコ 140・欧州 約 1,700・南米 約 350・豪州・東南アジア・中東アフリカ ほか)× 5.7% は推定。EBIT 30.2 億ドル(調整後、利益率 3.0%。ノベリスのアルミ火災が約 20 億ドルの逆風)。価格は物価(10 年 1.41 倍)でなく中立で 10 年 1.29 倍(年 +2.6%)に置いた。業界ノートの平均取引価格の見通し(約 4.9 → 約 6.3 万ドル)と同じで、ローン月額の限界と廉価車の復活のため。
フォード・プロ(スーパーデューティ・トランジットなどの商用車と有料ソフト・修理)
商用車(バン・スーパーデューティ・E シリーズ)の卸売と、有料ソフト・修理・充電。米国の商用車の約 4 割を握り、利益率は 10% 超。
| 数量卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 3.1%(米国の商用車は約 4 割) | 価格1 台あたり売上(万ドル。ソフト・サービスを含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 149 | 4.46 | 663 | 68 |
| 10 年後 中立 | 155 | 5.97 | 925 | 93 |
取り方:2025 年の卸売は 148.8 万台、売上 663 億ドルで 1 台 約 4.46 万ドル。EBIT 68.4 億ドル(利益率 10.3%。2024 年は約 13%)。米国のクラス 1〜7 の約 40%(シェア 40.4%)。価格は物価並み(10 年 1.34 倍。年 +3.0%)を基本にした。フォード・プロは車に有料ソフト・サービスを重ねて 1 台あたりの収益を上げられるため、乗用車(ブルー)より物価に近く置いた(物価 1.41 倍までは置かない)。
モデル e(マッハ E・E トランジットと、2027 年からのユニバーサル EV)
全電動車と、2027 年にルイビルで始まるユニバーサル EV(約 3 万ドルの中型ピックアップ)。ライトニングは 2025 年末に全電動の生産を終えた。年 40〜48 億ドルの赤字。
| 数量卸売台数(万台)= 対象市場 × シェア 約 0.4% | 価格1 台あたり売上(万ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 17.8 | 3.76 | 67 | −48 |
| 10 年後 中立 | 50.0 | 3.90 | 195 | 0 |
取り方:2025 年の卸売は 17.8 万台、売上 67 億ドルで 1 台 約 3.76 万ドル。EBIT −48.1 億ドル(2026 年の見通し 約 −40)。中立の価格は 10 年 1.04 倍(約 3 万ドルのユニバーサル EV へ車種が安い方へ移るため、ミックスで下がる。物価を下回る理由)。
フォード・エナジー(電力貯蔵用の電池)
ケンタッキーの旧 BlueOval SK 電池工場を使う電力貯蔵(BESS)。年 20 GWh の計画で、初出荷は 2027 年後半。会社は Model e の中で開示する。
| 数量電力貯蔵の出荷(GWh) | 価格1 GWh あたり売上(億ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.0 | 2.20 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 8.0 | 2.00 | 16 | 1 |
取り方:2025 年は売上無し(2027 年後半に初出荷)。数量は GWh、価格は 1 GWh あたり売上(1 kWh あたり約 220 ドルの電池システム = 2.2 億ドル/GWh と置いた)。中立の価格は 10 年で 2.0 億ドルに下がる(電池の値下がりが物価を上回るため。物価を下回る理由)。2026 年の損失は Model e の中に約 10 億ドル含まれる。
フォード・クレジット(新車・中古車のローンとリース)
フォード車の購入者向けローンとリース。債務 1,414 億ドルは自動車事業とは別に管理される金融の事業の借金。
| 数量平均運用資産(億ドル) | 価格運用資産あたり収益率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 0.09 | 133 | 26 |
| 10 年後 中立 | 1,950 | 0.09 | 172 | 28 |
取り方:2025 年の平均運用資産は約 1,500 億ドル(債務 1,414 億ドルと自己資本から推定)、売上 132.7 億ドルで収益率 8.85%(リースの減価償却を含む)。EBT 25.6 億ドル(利益率 19.3%)。価格(収益率)は金利が上がった分だけ上がる前提で 10 年 8.8%。金融の事業の借金は、純利益の金利の変化の推定から除いた。
リスクと懸念
モデル e の赤字が止まらない
モデル e の損失は 2025 年に 48 億ドル、2026 年の見通しは約 40 億ドル(ユニバーサル EV とフォード・エナジーの追加投資 約 10 億ドルを含む)。黒字化の目標は 2029 年だが、2023 年に掲げた「2026 年に利益率 8%」は後ろへずれた。補助金の終わった市場で約 3 万ドルの中型ピックアップが売れなければ、年 30〜40 億ドルの赤字が続き、全社の利益の 3〜4 割を食う。
品質・リコールと保証費用
2025 年のリコールは約 150 件・約 1,290 万台で過去最多、2026 年はさらに増えるペース。保証費用は 2023 年の 48 億ドルから下がったが(2025 年に材料費と合わせて 15 億ドル削減)、リコールの約 8 割がソフトの修正で、根本の設計・品質の問題が消えたとは言えない。当局は 2025 年に 1.65 億ドルの制裁金を課し、監視役を置いた。保証が再び増えれば、ブルーの利益率は 3% 台へ戻る。
関税の水準と一回限りの要素
2025 年の関税の純影響は約 20 億ドル。2026 年は IEEPA 関税の還付 13 億ドル(うち 約 5 億ドルが 2026 年に現金で戻り、約 8 億ドルは 2027 年)が利益を押し上げ、純費用は 10 億ドル未満の見込み。還付は一回限りで、関税が上がる・新しい関税が出る・部品の費用が上がると、2026 年の見通し(調整後 EBIT 100〜110 億ドル)は崩れる。見通しは新しい関税と中東の大きな緊張、米国の景気後退を除いている。
アルミの供給と一社依存
ノベリスのオスウィーゴ工場の火災(2025 年 9 月と 11 月)で F シリーズの生産が減り、2025 年に約 20 億ドルの逆風、2026 年は約 10 億ドルの追い風と見込む。2026 年 9 月末にも部品の短期的な問題で F-150 の生産が止まった。F シリーズと商用車はアルミ車体に依存し、1 社の火災が全社の利益を数十億ドル動かす構造は、サプライヤーの分散が進むまで残る。
景気の谷とフォード・クレジットの重さ
新車ローンの金利は 7% 前後、保有車の平均年齢は 12.8 年。景気が悪化すると販売が 3〜4 割落ち(2009 年は −40%)、値引きが急増し、ブルーの固定費が重くなって赤字になる。フォード・クレジットの債務は 1,414 億ドルで、会社(クレジット除く)の有利子負債 236 億ドルの 6 倍。延滞と中古車価格の下落で貸倒が膨らむと、自動車の赤字と同時に出る。2009 年の破産は避けたが、次の谷でも流動性(434 億ドル)を使う。
中国勢と提携への依存
BYD などの中国の EV と安価なバンは米国から関税で締め出されているが、関税が下がればメキシコ経由で米国にも来る。欧州・新興国ではすでにフォードの利益源を削っている。フォードは欧州でルノー、電池ではケンタッキー工場に CATL の技術許諾と、中国系の技術に頼る面が増えており、米国の規制と政治(中国の技術への制限)で計画が変わるおそれがある。
資本配分の履歴と株主への還元の弱さ
2022〜2025 年の EV は累計損失 約 167 億ドルに特別項目 195 億ドルを加え、360 億ドル近くが戻らない。2025 年は自社株買い無しで配当 30 億ドルのみ、2026 年の上半期の自社株買いは 3 億ドル。会社は FCF の 40〜50% を返す方針だが、設備投資 95〜105 億ドルの重さと EV への追加投資で、還元は GM(年 60 億ドルの自社株買い)に及ばない。創業家が議決権の約 4 割を持ち、少数株主の意見が通りにくい面もある。
今後の分かれ目
- モデル e の四半期の損失が 2027 年に入っても 8 億ドルを下回らない(2026 年 4〜6 月期は 9.2 億ドル)
- 黒字化の目標(2029 年)は実現しないと見て、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。モデル e の損失が構造になる。
- ユニバーサル EV の中型ピックアップが 2027 年に予定どおり出て、月 2 万台を超える
- モデル e の損失縮小と、補助金に頼らない EV の黒字化を評価し、10 年の楽観・やや楽観の確率を上げる。約 3 万ドルの価格帯は、ハイブリッドとの競争に耐える。
- 米国の新車販売の年率が 1,400 万台を下回る(前年比 −12% 超)
- 悲観の確率を引き上げる。ブルーの固定費とフォード・クレジットの貸倒が同時に出る筋書きに近づく。
- 関税が大きく下がる(輸入車の 25% が撤廃・縮小される)
- 国内生産の優位が薄れ、トヨタ・ホンダ・ヒュンダイの競争が戻る。10 年のやや悲観・悲観の確率を上げる。一方、部品の費用は下がる。
- リコールの件数が 2027 年に減り、保証費用がさらに 10 億ドル下がる
- 品質の問題が解決に向かうと見て、ブルーの利益率の置き方を上げ(5.3% → 6% 台)、10 年の楽観・やや楽観の確率を上げる。
- フォード・エナジーが 2027 年後半に初出荷し、EDF 以外の大口契約(年 5 GWh 以上)を取る
- 電力貯蔵を第 2 の成長源と評価する。約 20 億ドルの投資の回収が見え、10 年のエナジーの置き方を上げる。出荷が遅れる・価格が崩れるなら下げる。
見ておくもの
- ブルー・プロ・モデル e・クレジットの四半期の EBIT と、会社が示す年の見通し(2026 年は調整後 EBIT 100〜110 億ドル)
- 米国の新車販売の年率(1,600〜1,650 万台)、平均取引価格、値引き、ローン金利と延滞(サブプライム)
- F シリーズ・スーパーデューティ・トランジットの販売台数と米国の小売シェア(シボレー・ラムとの比較)、フォード・プロの有料ソフトの契約数
- リコールの件数と保証費用(四半期)、当局の制裁と監視の動き
- モデル e の損失とユニバーサル EV の立ち上げ(2027 年のルイビル)、フォード・エナジーの受注と初出荷(2027 年後半)
- 関税費用の純額と還付の現金の入り(2026 年 約 5 億ドル・2027 年 約 8 億ドル)、輸入車の関税・USMCA の見直し
- 会社(クレジット除く)の現金と有利子負債、FCF(2026 年 60〜70 億ドル)、配当・自社株買いの額、フォード・クレジットの貸倒と運用資産
倍率と資本コストの決め方
今の株価ではなく ROE・成長・資本コストから倍率を決めた。売上は、ブルー・プロ・モデル e・フォード・エナジー・クレジット(運用資産 × 収益率)で積んだ。資本コストは 10%(基本 8.0% + quality 2.0%)、倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/3 ×(ROE − k)。堀が薄いので 1/3)の 70% を目安にしたが、これが床の 1÷k(10 倍)を下回るので、中立までは 1÷k の 10 倍に置いた。今の PER や過去の PER には寄せていない。結果は やや割安。効くのはブルーの利益率(中立 5.3%)、モデル e の赤字が止まるか、悲観の確率(10 年で 45%)だ。価格を物価並み(1.41 倍)にせず、ブルー 1.29 倍・プロ 1.34 倍にした理由は how に書いた。自動車の金融子会社の借金は、純利益の金利の変化の推定から除いた。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 2.0%。販売台数で利益が大きく振れ(cycle +0.75%)、価格は競争と関税に左右され(pricing +0.5%)、金融子会社の貸倒と年金を抱え(debt +0.25%)、EV への転換と中国勢で需要の形が変わる(life +0.5%)。事業は傾いておらず(2026 年は黒字・流動性 434 億ドル)上乗せなし。個別のリスク(EV の赤字・保証費用・関税)は k に足さず、筋書きの幅と悲観の確率で表した。