結論
アプティブ(APTV)は 2026 年 4 月 1 日に、売上の約 4 割を占めていた配線事業(EDS)をヴェルシジェント(Versigent)として分離し、コネクターなどの部品を作るエンジニアード・コンポーネンツ(EC)と、センサー・コンピュート・ソフトを作るインテリジェント・システムズ(IS)の 2 つが残った。台帳の 2025 年の数字(売上 204 億ドル・純利益 2 億ドル)は分離前の会社のものなので、起点は 2026 年のガイダンス(売上 127 億ドル、GAAP の純利益 8.6〜9.0 億ドル)に置いた。
2026 年 8 月に会社は売上の見通しを 3 億ドル下げた(中国の国内販売の不振と欧州高級車の中国向けの減産、立ち上げの遅れ、ソフトの期ずれ)。株価は 8 月の高値圏から 2 割以上下がり、時価総額は約 95 億ドル、純利益に対する倍率は約 11 倍になった。利益の稼ぎ手は EC(調整後営業利益率 約 16.6%)で、IS は約 10% と低く、全社の GAAP 営業利益率は約 11% である。
10 年後の中立は、世界の軽量車生産が 9,300 万台で横ばい、EC の搭載額が物価並みに伸び、IS が物価を下回る伸びで利益率を 12% に上げる姿で、純利益 15.6 億ドル、時価総額 約 133 億ドル(PER 約 8.5 倍。ROE が k を下回るので、倍率は 1÷k が頭になる)。悲観は、中国の現地メーカーと自動車メーカーの内製化に負ける構造的な敗北(確率 13%)で、時価総額は 50 億ドル台まで下がる。
バリュー投資の観点では、EC の堀は本物だが、IS の収益性と、顧客の上位 10 社が売上の 55% を占める交渉力の弱さが重く、ROE は 9〜10% と資本コスト(10%)をやや下回り、「優良ではあるが普通の自動車部品会社」と見る。確信度は中程度。今の値段(時価総額 約 95 億ドル)は、筋書きの加重平均から出した本質価値(約 67 億ドル)より高く、やや割高と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」を問う。EC のコネクター・高電圧部品は車が続く限り要る。IS は自動車メーカーの内製化と中国勢の追い上げで、10 年後に今より強いとは言い切れない。堀は EC で「保つ」、IS で「狭まる恐れ」。
オーナー利益は、純利益 8.8 億ドルから、成長に要る再投資を引いたもの。2026 年の FCF 見通しは 6.25〜7.25 億ドルで、純利益の 77%。時価総額 95 億ドルに対する FCF 利回りは約 7% で、10 年国債 5% を上回るが、顧客の値下げ要求と景気の谷で FCF が消える年がある(2025 年の FCF は分離前で 15 億ドル)。ROE は 9〜10% と資本コスト 10% を下回るので、成長のために利益を再投資しても価値は増えず、自社株買いを割安で行えるかが価値を決める。
資本配分は、EDS の分離は適切だったが、IS が長く低収益で、のれん 45 億ドルの収益が 10% に届かない。安全域は、悲観の筋書きでも EC のコネクター事業と純資産が床になる点にある。分からない部分は、IS のソフトが本当に稼ぐか、中国の売上が戻るかで、確信度は中程度。
何で稼ぐ会社か
ニュー・アプティブの売上は 2026 年のガイダンスで約 127 億ドル。エンジニアード・コンポーネンツ(EC、旧 ECG)は上半期の売上が 34.2 億ドル、調整後営業利益 5.59 億ドル(16.3%)、EBITDA 率は通期で約 22% と会社が説明する。自動車のコネクター・端子・ケーブル・高電圧部品などの部品を、世界の自動車メーカーに納め、銅などの原材料の価格は納入価格に転嫁される。産業・航空宇宙などの非自動車の売上も含む(事業の中身の詳細は 10-Q の抜粋では確認できず、推定)。
インテリジェント・システムズ(IS、旧 ASUX)は上半期の売上が 29.3 億ドル、調整後営業利益 2.70 億ドル(9.2%)。2026 年の第 1 四半期に、センサーとコンピュート、ソフトとサービスの 2 本に組み替えられ、ウィンド・リバー(組み込みソフト)も IS に入る。通期は売上ほぼ横ばい、EBITDA 率は 10% 台中盤と会社は言う。ADAS(運転支援)のレーダー・カメラ、車載コンピュート、クラウド・エッジのソフトが対象で、モービルアイ(Mobileye)、ボッシュ(Bosch)、コンチネンタル(Continental)、中国のホライゾン・ロボティクス(Horizon Robotics)などと競う。
地域は北米が 2026 年 4〜6 月に +10%、アジア太平洋 +6%(中国 +5%)、欧州 −8%。非自動車の売上は +12%(枠組みは年 8〜10%)で、ロボット・ドローン(年 3 億ドル級が目標、ドローンの受注は 5 年で 5 億ドル超)、データセンター・エネルギー貯蔵(現在は 0.5 億ドル未満)が育てる分野。顧客は上位 10 社で売上の約 55%、最大の 1 社で約 11%。2026 年の新規受注は年 200 億ドルが目標で、4〜6 月までに 100 億ドル。配当は無く、利益は設備投資(年 約 6 億ドル)と自社株買いに使う。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 に EC の規模と認定。コネクターや高電圧部品は、車の設計に組み込まれて数年単位で採用が続き、顧客が乗り換えにくい。EC の調整後営業利益率は約 16〜17% と、自動車部品としては高く、アンフェノール(Amphenol)や TE コネクティビティ(TE Connectivity)の 2 割前後に及ばないが近い。第 2 に新規受注の量で、年 200 億ドルの目標は売上(127 億ドル)の 1.5 倍強にあたり、数年先の売上に変わる。第 3 に IS の「センサー+コンピュート+ソフト」の一括提供と、ウィンド・リバー(産業・航空宇宙・防衛の組み込みソフト)で自動車以外へ広がる点。
弱みは 4 つ。第 1 に IS の収益性で、調整後営業利益率が 1 割に届かず、モービルアイやボッシュとの競争でセンサーとコンピュートの価格が毎年下がる。第 2 に顧客の集中で、上位 10 社が 55%、最大の 1 社が 11% と、値下げ要求に弱い。第 3 に中国で、2026 年の下方修正の原因は国内小売 −20% と欧州高級車の中国向け輸出の減産で、受注が地場のメーカーへ寄っても売上が追いついていない。第 4 に資本効率で、2025 年の ROE は台帳で 1.8%(分離前・損失計上)、分離後の 2026 年の見通しでも 10% 前後と、資本コスト 10% をやや下回る。FCF は純利益の 77% と、設備投資の重さで低い。2022〜2025 年の純利益は 6・6・29・18・2 億ドルと荒れ、営業利益率は 2008〜2009 年に赤字だった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界の軽量車生産は約 9,000 万台で、2026 年は中国の国内需要の不振と欧州の弱さで会社の想定より低い(IHS が見通しを下げたと説明会で言及)。10 年後の中立は 9,300 万台で、年 +0.35%。人口の伸びと買い替えの周期が相殺する。この数量に、1 台あたりの搭載額(部品の売上)が物価 3.5% で上がる。
構造の変化は 4 つ。第 1 に自動車の電動化の失速。米国で BEV の新車シェアは約 6%、ハイブリッドは 16% で、EV 専用の高電圧部品の伸びは遅れるが、内燃機関とハイブリッドも電装品は増える。第 2 に中国。国内の自動車メーカーが地場の部品に寄せ、外資の部品会社の中国向けの売上は伸びにくい。会社は中国の輸出向け案件(BYD の輸出)で補おうとしている。第 3 に自動車の内製化。テスラ型の、自動車メーカーがコンピュートとソフトを自社で作る動きは IS の領域を狭める。第 4 に非自動車。ロボット、ドローン、データセンター、航空宇宙・防衛は利益率が高く、資本負担が小さい。
循環の位置は「下りの途中」で、2026 年に 2 度目の引き下げがあった。業界ノートの部品の見方は営業利益率 8〜10%、PER 10〜13 倍、谷の PBR 0.6 倍。アプティブの GAAP 営業利益率は 2026 年で約 11%、10 年後の中立は約 22.5 ÷ 181 ≒ 12% と置いた(EC が 17%、IS が 12% から本社の調整を引く)。
資本政策と M&A
2026 年 4 月に EDS を分離し、約 19 億ドルの配当を受けて 18.47 億ドルの社債を償還した。6 月末の現金は 7.6 億ドル、有利子負債は 53.5 億ドルで純負債は約 46 億ドル、時価総額の約 48%。自己資本は 87.5 億ドルで、うちのれんが約 45 億ドル(ウィンド・リバー、インターケーブル、旧クラリオンなどの買収)。
還元は配当なしで自社株買いが中心。2026 年は 6 億ドル超(4〜6 月に 2.5 億ドル)、長期の方針は FCF の約 5 割。株式報酬は年 約 1 億ドル。正味の還元(payout_oku)は自社株買いから株式報酬の増発分を引いた。M&A は小さな買収(ボルトオン)を続ける方針で、ウィンド・リバーの減損テストは公正価値が帳簿を上回った。会社は分離後も「株主価値を最大にする追加の機会を評価する」と言い、IS の分離・売却の可能性は残る。
ガバナンスは、2025 年の投資家説明会で分離の方針を決めてから実行した点は評価できる。一方で 2026 年に 2 回目の引き下げが入り、アナリストの格下げ(モルガン・スタンレー、ウルフ・リサーチ、フォックス)が出た。借り換えは 5.75% 前後に上がるが、既存の社債の利率(1.6〜5.75%)は低いものが多く、純利益への影響は年 0.3〜0.5 億ドルと小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
EC は、売上 70 億ドルで調整後営業利益率 16〜17%、EBITDA 率 22%、2026 年の下方修正の後も上半期の調整後営業利益は前年比 +11% と伸びている。銅などの価格転嫁と、高電圧・産業・データセンター向けの配線で、搭載額が物価以上に伸びる余地がある。非自動車の売上は +12% で、ロボット・ドローン(ドローンの受注は 5 年で 5 億ドル超)、エネルギー貯蔵は始まったばかり。
新規受注は年 200 億ドルの目標どおりで、4〜6 月までに 100 億ドル。売上 127 億ドルに対して非常に大きい受注が、立ち上げの遅れが解消した 2027 年以降に売上へ乗る。BYD の輸出向けと、遅れた欧州メーカーの立ち上げが 2027 年の追い風になる。2026 年の下方修正(約 3 億ドル)のうち、ソフトの期ずれ(0.5 億ドル)は 4〜6 月以降に戻る。
資本面は、EDS の分離で純負債が減り、FCF の約 5 割を自社株買いに回す。時価総額 95 億ドルに対して、2026 年の純利益 8.8 億ドルは PER 約 11 倍、FCF 利回り 約 7%。10 年後、EC が 1 台 116 ドル(1.50 倍)、IS が 94 ドル(1.45 倍)、利益率 18.5% と 15.5% に届けば、純利益は 22.6 億ドル、時価総額は 300 億ドル台になる。
慎重な見方
2026 年に 2 回引き下げが入った。国内の中国の販売が −20% で、地場の自動車メーカーが外資の部品から地場の部品へ寄る構造の変化は止まらない。欧州の高級車の中国向け輸出も戻らない。上位 10 社が売上の 55%、最大の 1 社が 11% で、値下げ要求を断れない。
IS は、調整後営業利益率が 9% で、上半期に前年を下回り、Q2 の利益率は 120 ポイント低下した。センサーとコンピュートは年 2〜3% で値下がりし、ソフトの売上は期がずれた。モービルアイやボッシュ、ホライゾン・ロボティクスとの競争で、売上は横ばいのまま。のれん 45 億ドル(ウィンド・リバー含む)が 10% に満たない ROE の原因で、IS の ROIC は資本コスト 10% を下回る。
FCF は純利益の 77% と低く、設備投資が年 6 億ドル、リストラが 1 億ドル前後と、毎年お金が出ていく。GAAP の営業利益率は約 11% でも、償却・リストラ・株式報酬で調整後との差が 4 億ドル近くある。景気の谷では、2020 年に株価が −48%、2022 年に −55% と、2 回続けて半値になった。ROE が資本コストを下回るなら、成長に回した利益の価値は増えず、PER は 10 倍が上限で、時価総額は今の 2 倍にはならない。
どちらに重みを置いたか
EC の堀と新規受注の大きさは数字で確認でき、非自動車の伸びも本物なので、10 年の楽観・やや楽観に 28% を置いた。しかし IS の利益率は 2026 年に下がり、中国と欧州の弱さは構造で、顧客の集中が価格を決める力を奪うので、中立の IS の利益率を 12%、EC を 17% に抑え、最も厚い 34% を置いた。
慎重な見方が勝つのは、IS の競争(10 年のやや悲観 25%)と、構造的な敗北(悲観 13%)で、合計 38%。倍率は ROE が 9% 台で資本コスト 10% を下回るので、利益ベースの PER は 1÷k の 10 倍が頭で、その 85% の約 8.5 倍にとどまる。結論は、IS の利益率と中国の売上がどこまで戻るかに最も敏感。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 57.56 ドル122 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 14.96 ドル32 億ドル)。 今の値に割り戻すと 31.48 ドル67 億ドル、今との差 −28.1%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 10.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 98.93 ドル209 億ドル | 23.68 ドル50 億ドル | +179.9% | +10.8% | 9.81 ドル21 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 80.64 ドル171 億ドル | 20.14 ドル43 億ドル | +130.0% | +8.7% | 20.16 ドル43 億ドル |
| 中立 | 34% | 62.68 ドル133 億ドル | 16.92 ドル36 億ドル | +81.7% | +6.2% | 27.06 ドル57 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 36.30 ドル77 億ドル | 11.72 ドル25 億ドル | +9.6% | +0.9% | 12.01 ドル25 億ドル |
| 悲観 | 13% | 24.11 ドル51 億ドル | 2.74 ドル6 億ドル | −38.7% | −4.8% | 3.49 ドル7 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 57.56 ドル122 億ドル | 14.96 ドル32 億ドル | +65.5% | +5.2% | 72.52 ドル153 億ドル |
今の株価時価総額 43.81 ドル93 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 8% EC は電動化・産業・データセンター向けで伸び、IS はソフトとロボット・ドローンで稼ぐ会社に変わる 利益 23 億ドル · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 98.93 ドル209 億ドル
2035 年の世界の軽量車生産は 9,750 万台(新興国の普及で年 +0.9%)。EC は 1 台 116 ドル(1.50 倍。物価 1.41 倍に、電動車の高電圧部品・産業・データセンターの電源配線で実質 +6% の搭載額増)で売上 113 億ドル、利益率 18.5%(アンフェノール(Amphenol)や TE コネクティビティの 2 割前後に近づく)。IS は 1 台 94 ドル(1.45 倍。センサーの値下がりをソフトの売上の伸びが上回る)で売上 92 億ドル、利益率 15.5%(ウィンド・リバー、ロボット・ドローン年 3 億ドル級の案件が乗る)。純利益は 22.6 億ドル(ROE 12%)、10 年の正味の還元は 50 億ドル、純負債はほぼ無くなる。モービルアイ(Mobileye)やボッシュ(Bosch)に対して、センサーとコンピュートとソフトを一括で出せる強みが効く。
- エンジニアード・コンポーネンツ(EC):コネクター・ケーブル・高電圧部品など:数量 9,750(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 116(世界 1 台あたりの EC 売上(ドル。非自動車を含めて割り戻した値))→ 売上 114 億ドル・営業利益 21 億ドル。営業利益率 18.5%(調整後)
- インテリジェント・システムズ(IS):センサー・コンピュート・ソフト(ウィンド・リバー含む):数量 9,750(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 94(世界 1 台あたりの IS 売上(ドル。ソフトとサービスを含めて割り戻した値))→ 売上 92 億ドル・営業利益 14 億ドル。営業利益率 15.5%(調整後)
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 10.00%・g 4.0%(生産台数の実質 0.5%+搭載額の増加 0.5%+価格 3.0%)・事業の ROE 12.3%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 10.8%、10 年目より先の正当化 PER 10.5 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 10.9 倍。利益が振れやすいので上限の 85% に置き 9.3 倍。
確率:全部当たる必要がある上振れ。ソフトの目標(成長 中盤の 10% 台)と非自動車の拡大が同時に実現する筋書きとして 8%。
やや楽観 20% EC は物価以上に伸び、IS の利益率が 1 割台中盤へ上がる 利益 19 億ドル · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 80.64 ドル171 億ドル
2035 年の生産は 9,500 万台。EC は 1 台 113 ドル(1.46 倍)で売上 108 億ドル、利益率 17.7%(高電圧と産業向けの比率が上がる)。IS は 1 台 90 ドル(1.38 倍)で売上 85 億ドル、利益率 13.8%(ソフトの比率上昇と、センサーの値下がりを規模の経済が相殺)。調整は −4.4 億ドル、純利益 19.0 億ドル(ROE 11%)、10 年の正味の還元は 43 億ドル。ロボット・ドローン(年 3 億ドル級)と、データセンター・エネルギー貯蔵向けの電源配線が非自動車として年 8〜10% 伸び、全社の安定に効く。ただし自動車メーカーの値下げ要求と、中国メーカーの現地調達は続く。
- エンジニアード・コンポーネンツ(EC):コネクター・ケーブル・高電圧部品など:数量 9,500(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 113(世界 1 台あたりの EC 売上(ドル。非自動車を含めて割り戻した値))→ 売上 108 億ドル・営業利益 19 億ドル。営業利益率 17.7%(調整後)
- インテリジェント・システムズ(IS):センサー・コンピュート・ソフト(ウィンド・リバー含む):数量 9,500(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 90(世界 1 台あたりの IS 売上(ドル。ソフトとサービスを含めて割り戻した値))→ 売上 85 億ドル・営業利益 12 億ドル。営業利益率 13.8%(調整後)
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 10.00%・g 4.0%(生産台数 0%+搭載額の増加 0.5%+価格 3.5%)・事業の ROE 10.7%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 10.2%、10 年目より先の正当化 PER 10.2 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 10.6 倍。利益が振れやすいので上限の 85% に置き 9.0 倍。
確率:IS の利益率が 14% 近くまで上がり、受注が売上に乗り続ける筋書き。20%。
中立 34% 優良だが普通の自動車部品会社:EC は安定して稼ぎ、IS は収益性が少し上がる 利益 16 億ドル · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 62.68 ドル133 億ドル
2035 年の世界の軽量車生産は 9,300 万台(2026 年 9,000 万台から年 +0.35%。人口と買い替えの周期が相殺)。EC は 1 台 110 ドル(1.42 倍、年 +4%。物価 1.41 倍を転嫁し、搭載額は実質で年 +0.1% とほぼ横ばい)で売上 102 億ドル、利益率 17.0%。IS は 1 台 85 ドル(1.30 倍、年 +3%。物価を下回るのは、センサーとコンピュートが値下がりし、ソフトとサービスの比率が上がっても相殺しきれないため)で売上 79 億ドル、利益率 12.0%(2026 年の約 10% から、ソフトの規模の経済で +2 ポイント)。償却は減るがリストラと株式報酬は物価で増え、調整は −4.3 億ドル。純利益は 15.6 億ドル(2026 年の 1.8 倍、年 +6.6%)、自己資本 170 億ドル(ROE 9.2%)。10 年の正味の還元は 36 億ドル(FCF の約 5 割を自社株買い、株式報酬の増発を引いた後)。
- エンジニアード・コンポーネンツ(EC):コネクター・ケーブル・高電圧部品など:数量 9,300(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 110(世界 1 台あたりの EC 売上(ドル。非自動車を含めて割り戻した値))→ 売上 103 億ドル・営業利益 17 億ドル。営業利益率 17.0%(調整後)
- インテリジェント・システムズ(IS):センサー・コンピュート・ソフト(ウィンド・リバー含む):数量 9,300(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 85(世界 1 台あたりの IS 売上(ドル。ソフトとサービスを含めて割り戻した値))→ 売上 79 億ドル・営業利益 9 億ドル。営業利益率 12.0%(調整後)
倍率:利益ベース:事業の ROE 9.2%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)が k 10.00% 以下なので PER は 1÷k = 10.0 倍まで(ためた利益 1 ドルは 1 ドル未満の価値)。上限は 1÷k の 10.0 倍。値下げ要求と景気で利益が振れやすいので上限の 85% に置き 8.5 倍。
確率:業界ノートの中立(営業利益率 8〜10%、PER 10〜13 倍)に整合する落としどころ。34%(最も厚い)。
やや悲観 25% EC の価格転嫁が遅れ、IS が競争で薄利に沈み、中国の現地メーカーに奪われる 利益 10 億ドル · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 36.30 ドル77 億ドル
2035 年の生産は 9,000 万台(横ばい。EV が失速して内燃機関が残るが、中国の需要は頭打ち)。EC は 1 台 106 ドル(1.36 倍。顧客の値下げ要求と、中国メーカーとの競争で物価を下回る)で売上 95 億ドル、利益率 15.3%。IS は 1 台 75 ドル(1.15 倍。センサーとコンピュートが年 −2〜3% で値下がりし、ソフトの伸びが追いつかない)で売上 67 億ドル、利益率 7.5%。調整 −4.3 億ドル、純利益 9.6 億ドル(ROE 6.2%)と、2026 年とほぼ同じ。物価で売上は増えても、利益は物価を引いた実質では約 3 割減。還元は 25 億ドルに留まる。
- エンジニアード・コンポーネンツ(EC):コネクター・ケーブル・高電圧部品など:数量 9,000(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 106(世界 1 台あたりの EC 売上(ドル。非自動車を含めて割り戻した値))→ 売上 95 億ドル・営業利益 15 億ドル。営業利益率 15.3%(調整後)
- インテリジェント・システムズ(IS):センサー・コンピュート・ソフト(ウィンド・リバー含む):数量 9,000(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 75(世界 1 台あたりの IS 売上(ドル。ソフトとサービスを含めて割り戻した値))→ 売上 67 億ドル・営業利益 5 億ドル。営業利益率 7.5%(調整後)
倍率:利益ベース:事業の ROE 6.3%(筋書きの純利益 ÷ 自己資本)が k 10.00% 以下なので PER は 1÷k = 10.0 倍まで(ためた利益 1 ドルは 1 ドル未満の価値)。上限は 1÷k の 10.0 倍。ROE が k を下回るので PER は 1÷k が頭で、上限の 80% に置き 8.0 倍。
確率:IS が利益を出せないまま競争(モービルアイ、ボッシュ、現地メーカー)に負ける構造。慎重な見方の中心で 25%。
悲観 13% 中国の現地メーカーと自動車メーカーの内製化で構造的に負け、IS は赤字、のれんを減損する 利益 −3 億ドル · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 24.11 ドル51 億ドル
2035 年までに、中国のコネクター・ケーブルの供給者(ラックスシェア(Luxshare)など)が価格を 3 割下げて世界に出て、EC は 1 台 89 ドル(1.15 倍。物価を大きく下回る)で売上 77 億ドル、利益率 9%。IS は自動車メーカーのコンピュートの内製化(テスラ型)と中国のホライゾン・ロボティクス(Horizon Robotics)やモメンタ(Momenta)の価格攻勢で 1 台 55 ドル(0.85 倍)、売上 48 億ドル、利益率 −3%。ウィンド・リバーなどののれん 25 億ドルを減損し、純損失は 3.2 億ドル、自己資本は 84.6 億ドル(のれんの 45 億ドルのうち 25 億ドルを減損した後)。還元は 10 年で 5.8 億ドルに留まる(業績が崩れる前の自社株買いのみ)。式では浅くせず、自己資本に PBR 0.6 倍を掛ける。還元は 2026〜2028 年に実行済みの自社株買いで、業績が崩れた後の期間の純利益の合計を上回る分は手元の現金と借入(資産の売却は無し)で払った。売却に頼らない。
- エンジニアード・コンポーネンツ(EC):コネクター・ケーブル・高電圧部品など:数量 8,600(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 89(世界 1 台あたりの EC 売上(ドル。非自動車を含めて割り戻した値))→ 売上 77 億ドル・営業利益 7 億ドル。営業利益率 9.0%(調整後)
- インテリジェント・システムズ(IS):センサー・コンピュート・ソフト(ウィンド・リバー含む):数量 8,600(世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める)× 価格 55(世界 1 台あたりの IS 売上(ドル。ソフトとサービスを含めて割り戻した値))→ 売上 48 億ドル・営業利益 −1 億ドル。営業利益率 -3.0%(調整後)
倍率:営業赤字の全社の稼ぐ力ではなく、売れる資産で床を置く。コネクターの EC は営業利益 6.9 億ドル(税引き後で約 5.3 億ドル)を保ち、資本コスト 10% で割ると約 53 億ドル。これは減損後の自己資本 84.6 億ドルの約 6 割(PBR 0.6 倍)にあたる。EV(純有利子負債を足す)÷ 営業利益は 227 倍と全社では意味をなさず、借金の重さは k の debt と悲観の深さに入れている。
確率:もう優良ではなくなる構造的な敗北の筋書き。顧客の上位 10 社が売上の 55% を占める点を重く見て 13%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
エンジニアード・コンポーネンツ(EC):コネクター・ケーブル・高電圧部品など
自動車向けのコネクター・端子・ケーブル・高電圧部品などの部品(事業の中身は推定)。産業・航空宇宙などの非自動車も含む。銅などの原材料は価格に転嫁される。調整後営業利益率 16〜17%。
| 数量世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める | 価格世界 1 台あたりの EC 売上(ドル。非自動車を含めて割り戻した値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9,000 | 78 | 70 | 12 |
| 10 年後 中立 | 9,300 | 110 | 103 | 17 |
取り方:分離後の会社の 2025 年の通期の数字は台帳に無いので、2026 年のガイダンス(分離後)を起点にした(fy は台帳の 2025/12 に合わせた)。2026 年上半期の EC の売上 34.2 億ドル(前年同期 +4%)、通期は「低〜中位の 1 桁増」と会社が言うので 69.8 億ドル。世界の軽量車生産 9,000 万台 × 1 台あたり 77.6 ドル = 69.8 億ドル(万台 × ドル × 0.0001 = 億ドル)。調整後営業利益は上半期 5.59 億ドル(16.3%)から通期 11.6 億ドル(16.6%、EBITDA 率 約 22% と整合)。価格(搭載額)は物価 3.5% の転嫁を基本に、10 年で 1.42 倍(物価 1.41 倍並み)。2026 年の売上の伸びが 1 桁前半だった実績と、顧客の値下げ要求を踏まえた。
インテリジェント・システムズ(IS):センサー・コンピュート・ソフト(ウィンド・リバー含む)
ADAS 用のレーダー・カメラ、車載コンピュート、車載・産業のソフトとサービス(ウィンド・リバー含む)。2026 年に「センサーとコンピュート」と「ソフトとサービス」の 2 本に組み替え。調整後営業利益率 約 10%。
| 数量世界の軽量車生産(万台)。シェア・採用率は価格(搭載額)に含める | 価格世界 1 台あたりの IS 売上(ドル。ソフトとサービスを含めて割り戻した値) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 9,000 | 65 | 59 | 6 |
| 10 年後 中立 | 9,300 | 85 | 79 | 9 |
取り方:2026 年上半期の IS の売上 29.3 億ドル(前年同期 +0%)、通期はほぼ横ばいと会社が言うので 58.6 億ドル。世界の軽量車生産 9,000 万台 × 1 台あたり 65.1 ドル = 58.6 億ドル。調整後営業利益は上半期 2.70 億ドル(9.2%)、下半期にソフトの売上が戻ると見て通期 5.9 億ドル(10.1%)。価格(搭載額)は物価を下回る:センサーとコンピュートが毎年値下がりし、ソフトの比率上昇が一部を相殺するため、10 年で 1.30 倍(年 +2.9%、物価 1.41 倍より低い)を中立とした。
リスクと懸念
IS の収益性が上がらない
IS の調整後営業利益率は 2026 年上半期に 9.2%(前年 9.7%)で、Q2 は EBITDA 率が 120 ポイント下がった。センサーとコンピュートは年 2〜3% の値下がりで、ソフトの売上は 2026 年に期がずれた。モービルアイ・ボッシュ・ホライゾン・ロボティクスとの競争で、利益率が 10% を超えなければ、のれん 45 億ドルの収益が資本コストを下回り続ける。
中国と欧州の弱さ
2026 年の下方修正 3 億ドルのうち 1.5 億ドルは顧客の生産計画の変更で、中国の国内小売 −20% と、欧州高級車の中国向け輸出の減産が原因。2026 年上半期の中国の売上は −4%、欧州 −7%。会社は 2027 年に欧州の中国向けが戻ることに懐疑的で、中国の輸出向け(売上の約 1 割)が構造的に縮むおそれがある。
顧客の集中と値下げ要求
上位 10 社が売上の約 55%、最大の 1 社が約 11%。自動車メーカーは部品の毎年の値下げを要求し、銅などの原材料の価格転嫁が遅れる年は利益率が下がる。IS で自動車メーカーがコンピュートとソフトを内製化すれば(テスラ型)、IS の市場そのものが狭まる。
景気の谷と固定費
世界の軽量車生産が 2 割落ちる景気の谷では、EC・IS とも固定費が重く、リストラが 3 億ドル超に膨らむ。株価は 2020 年に −48%、2022 年に −55% と 2 回続けて半値になった。純負債 46 億ドル(時価総額の 48%)で、谷の年は FCF が消え、自社株買いが止まる。
のれんの減損と資本効率
のれん 45.5 億ドルと無形資産 19.4 億ドルが自己資本 87.5 億ドルの 7 割を占める。ウィンド・リバーの減損テストは 2026 年に公正価値が帳簿を上回ったが、IS の利益が伸びなければ減損の恐れが残る。ROE は 9〜10% と資本コスト 10% を下回り、成長のための再投資で価値が増えない。
分離後の追加の再編と自社株買いのタイミング
会社は EDS の分離後も「追加の機会を評価する」と述べ、IS の売却・分離の可能性がある。実行の遅れや、割高な価格での買収・自社株買い(2026 年に 6 億ドル超)で、価値が壊れるおそれがある。借り換えで利払いは年 0.3〜0.5 億ドル増えるが、純利益 8.8 億ドルの 3〜6%。
今後の分かれ目
- 2026 年 10 月 29 日の第 3 四半期で、IS の調整後営業利益率が 10% を超え、ソフトの売上が戻る
- IS の利益率の置き方(中立 12%)を上げ、10 年の楽観・やや楽観の確率を上げる。2026 年の下方修正が一時的だったと評価する。
- 2027 年の見通しで、中国の売上が前年比プラスに戻り、BYD の輸出向けの立ち上げが売上に乗る
- 世界の生産と搭載額の置き方を上げ、やや悲観の確率を下げる。
- さらに引き下げが入り、純利益が 8 億ドルを割る(2026 年の通期)
- やや悲観・悲観の確率を引き上げる。IS の競争と顧客の値下げが構造だと評価する。
- IS の売却・分離、または大型の買収が発表される
- 売却なら、IS の収益性と、のれんの価値を反映して時価総額を見直す。大型買収なら、のれんの上積みと資本効率の低下を警戒し、確率を悲観寄りにする。
- 世界の軽量車生産が年率 8,000 万台を下回る(前年比 −10% 超)
- 悲観の確率を引き上げる。固定費・リストラ・自社株買いの停止が同時に出る筋書きに近づく。
- 新規受注が年 200 億ドルを下回る、または非自動車の売上の伸びが 8% を割る
- 売上の置き方(受注が数年先の売上へ変わる)を下げ、10 年の中立の搭載額を下げる。
見ておくもの
- 四半期の EC・IS の売上と調整後営業利益(特に IS の利益率が 10% を超えるか)、通期のガイダンス(2026 年 純利益 8.6〜9.0 億ドル、FCF 6.25〜7.25 億ドル)
- 世界の軽量車生産(IHS)、中国の国内小売、欧州高級車の中国向け輸出、北米の販売
- 新規受注(年 200 億ドルの目標)と、そのうち非自動車(ロボット・ドローン・データセンター)の割合
- 自社株買いの額(年 6 億ドル超)と純負債(約 46 億ドル)、設備投資と FCF の純利益に対する比率
- IS のソフトの成長率(中盤の 10% 台の目標)と、センサー・コンピュートの価格の動き、ウィンド・リバーの減損テスト
- 上位 10 社の売上の比率(約 55%)と最大顧客(約 11%)、原材料(銅)と関税の影響
倍率と資本コストの決め方
売上は、EC と IS を「世界の軽量車生産 × 1 台あたり搭載額」で積み、今の株価ではなく ROE・成長・資本コストから倍率を決めた。k は 10%(基本 8.0% + quality 2.0%)。10 年の倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/3 ×(筋書きの ROE − k)。部品は車会社の値下げ要求で堀が弱い)の 80〜85% だが、ROE が k に近いか下回るので、中立と やや悲観は 1÷k の 10 倍が頭になる。悲観は営業赤字で、PER でなく EC 事業の稼ぐ力を資本コストで割った床(PBR 0.6 倍)で置いた。今の PER にも、業界ノートの部品の倍率にも寄せていない。台帳の 2025 年の数字(分離前、純利益 2 億ドル)は使わず、分離後のガイダンスを起点にした。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 2.0%。車の生産で利益が大きく振れ(cycle +0.75%)、上位顧客の値下げ要求が強く(pricing +0.5%)、純負債が時価総額の 5 割近く(debt +0.5%)、中国勢と内製化の圧力がある(life +0.25%)。事業は傾いておらず上乗せなし。個別のリスク(顧客の集中・中国・IS の競争)は k に足さず、筋書きの幅と悲観の確率で表した。