結論
バス&ボディ・ワークスは、香り付きのボディケア、キャンドル、ハンドソープを売る米国の専門小売である。筆者の結論は割安だ。ただし、安さの理由は明白であり、ブランドの集客力が弱まり、自己資本がマイナスになるほど還元を続けた会社への不信が価格に表れている。
2025年度の売上は72.9億ドル、営業利益は11.6億ドル、純利益は6.5億ドルだった。営業利益率は2021年度の25%台から15.9%へ下がり、2026年8月までの決算でも北米店舗の客数減少が続いた。2026年度の売上見通しは前年比2.5〜4%減である。しかも2026年上期の利益には訴訟和解益と関税還付が含まれるため、表面上の増益を回復の証拠とは扱えない。
それでも、商品の寿命は長い。身体を洗い、香りを楽しみ、季節の贈り物を選ぶ行為は10年後も残る。米国のエアケア市場で約22%の占有率を持つブランドには価値がある。一方、入浴関連市場では占有率が2021年の15%から2025年の11%へ落ちた。堀は存在するが、広がっているとは言えない。
資本コストは9.75%とし、弱い消費環境と負債を反映して、やや悲観と悲観に合わせて45%の確率を割り当てた。10年後の中立では売上約100億ドル、純利益9.7億ドルを見込む。5つの筋書きを合わせた現在価値は約64.1億ドルで、基準時価総額の約42.1億ドルを52%上回る。ただし、この差を実現する条件は、客数の減少を止め、借金を増やさず利益を株主に戻し続けることである。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は商品よりも購買習慣を所有している。香りのある暮らしや小さな贈り物の需要は10年で消えにくく、ブランドが保たれれば大きな研究開発費なしに繰り返し現金を稼げる。2025年度のフリーキャッシュフローは8.7億ドルであり、帳簿上の自己資本がマイナスでも現金を生む商売であることは確かだ。
だが、オーナー利益は過去最高の利益率から考えてはならない。来店客が減る中で、値引きを増やして売上を守れば、現金の余裕も細る。2026年の関税還付と訴訟和解益は事業を維持するための収益ではない。将来のGAAP純利益はこうした利益を恒常化せず、株式報酬を費用に含めた金額で考える。
再投資先として魅力があるのは、売れる香りの企画、店舗の移転、供給網、海外提携である。赤字店を増やす投資や、割高な値段での自社株買いには価値がない。自社株買いを控えて負債を返すことも、残る株主にとって立派な資本配分である。
筆者は、ブランドが持つ一定の堀と、負債がもたらす脆さを両方評価したい。今の時価総額に対し、正常な利益と将来の還元には安全域がある。ただし、それは経営改革が完全に成功することを要求しないという意味であり、ブランドが構造的に負ける危険がないという意味ではない。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は北米の直営店と通販である。2025年度末には米国とカナダに1927店舗を持ち、米国外には提携先が運営する573店舗がある。北米店舗の売上は55.82億ドル、北米通販は13.95億ドル、海外の卸売・ライセンスなどは3.14億ドルだった。会社は会計上、単一の報告セグメントとしているが、商品の競争条件が異なるため、商品群ごとに稼ぐ力を考える必要がある。
北米売上の約42%はホームフレグランスで、主力はキャンドルと香りの芳香剤である。約37%はボディケアで、香り付きのローション、ボディウォッシュ、ミストなどを売る。約14%はハンドソープと消毒用品、残る約7%はギフトと小物である。製品単位の販売数量や実売単価は開示されていないため、値引き後の平均単価を推定し、商品個数の変化と価格の変化を区別した。
この商売は、毎日の必需品と気分で買う嗜好品の中間にある。石けんは繰り返し使われるが、香りや容器は流行に左右される。誕生日、年末商戦、季節限定の香りが購入のきっかけとなり、まとめ買いの販促が売上を押し上げる反面、定価をそのまま受け取れるとは限らない。
製品企画、香りの開発、店舗の見せ方、国内中心の供給網を結びつけている点が特徴だ。海外では直営店を大量に抱えず、提携先に店舗投資を任せる。2026年にはアマゾンなどの新しい販売経路にも進出した。ただし、販路が増えても自社店舗から売上が移るだけなら、会社全体の需要は増えない。
優良さと弱いところ
最大の強みは、香りと贈り物を結びつけたブランドの記憶である。季節ごとの商品展開と限定品を待つ顧客が存在し、約4000万人の会員基盤も販促に使える。店舗に入れば香りを試せることは通販専業に対する優位だ。米国に約1900店ある規模は、商品企画と供給の効率にもつながる。
ただし、堀は広いとは言い切れない。石けんやローションには買い替えの手間がなく、ダヴやソル・デ・ジャネイロなどに顧客が移ることを防げない。実際、米国の入浴関連市場では占有率を失っており、2025年度の北米店舗の単位面積当たり売上も約2%減った。値上げより販促が購買を動かしているなら、ブランド力を過大評価してはいけない。
利益率は小売として高いが、それだけで増分の資本収益率が高いとは言えない。自社株買いで帳簿上の自己資本がマイナス12.8億ドルとなったため、通常のROEは使えない。投下資本に対する営業利益を見れば事業にはなお収益力があるが、その収益の一部は過去の借金に支えられている。
AIエージェントが人月や操作画面の仕事を代替する型には当てはまらない。香りそのものは画面では提供できないからだ。一方、購入の入り口がAIによる商品比較に変われば、ブランド名より価格やレビューが選ばれ、値決め力は弱まる可能性がある。堀は強固なものとしてではなく、維持に投資を要する普通の堀として評価する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のホームフレグランス市場は、日常の芳香剤と嗜好性の高いキャンドルが重なる市場である。広い定義の北米ホームフレグランス市場は2025年に約90億ドルと推定される。一方、ユーロモニターの米国エアケア市場では、2025年のバス&ボディ・ワークスの金額シェアは22%だった。エス・シー・ジョンソンが18%、プロクター・アンド・ギャンブルとニューウェル・ブランズが各16%、レキットが11%で続く。市場の定義が異なるため、これらのシェアを売上に機械的に掛けてはいない。
ボディケアの競争はさらに厳しい。米国の入浴・シャワー用品市場ではユニリーバが19%、バス&ボディ・ワークスが11%、プロクター・アンド・ギャンブルが9%を占める。自社のボディケアには香水ミストやローションも含まれ、市場の分類と完全には一致しない。それでも占有率が4ポイント低下した事実は、若い消費者への訴求力が弱まった証拠として重い。
ハンドソープと消毒用品では、ソフトソープ、ダヴ、タッチランドなどが競合する。チャーチ・アンド・ドワイトによるタッチランド取得は、携帯できる消毒用品も美容ブランドとして競争する時代を示した。機能だけなら大手日用品メーカーが安く供給できるため、香りと見た目で差を付け続ける必要がある。
市場全体の実質数量は長期に急増するものではない。人口と使用頻度の伸びは小さく、売上成長の大部分は価格と占有率による。中立では物価を年3.5%とし、商品価格には10年でおおむね1.4倍を反映したが、ボディケアの数量は減ると考える。住関連・専門小売の比較対象であるアルタ・ビューティなどより負債とシェア低下が重いため、同じ小売という理由で高い収益倍率は認めない。
資本政策と M&A
資本配分の歴史は、事業の優良さほど褒められない。2021年度と2022年度には自社株買いを大きく進め、その後も還元を続けた。2025年度だけでも配当約1.7億ドル、自社株買い約4.0億ドルを実施したが、期末の自己資本はマイナス12.8億ドルである。株数を減らすこと自体は価値を生まない。買い戻しの価格と、残る債権者への安全余裕が肝心だ。
添付の財務データによる現金は9.5億ドル、負債はリースを含めて約49.5億ドル、純負債は40.0億ドルである。SEC資料では、このうち通常の借入債務が約38.9億ドル、店舗などのリース負債が約10.6億ドルとなる。リースをさらに負債へ足して二重計上しない。年間のリース費用も約4.4億ドルあり、売上が落ちてもすぐには消えない。
会社は2026年度の売上を2.5〜4%減、フリーキャッシュフローを約6.5億ドルと見込み、会社見通しに自社株買いを織り込んでいない。設備投資は約2.7億ドルを予定し、2027年初めに満期を迎える債券約2.84億ドルへの対応を進める。経営改革では2年間で約2.5億ドルの費用削減を掲げるが、その一部は商品開発と販促へ再投資される。
2026年9月にはアクティビストのバリントン・キャピタルが売却検討を求めた。しかし、確認できる範囲で拘束力のある買収合意、非公開化決定、上場廃止予定、継続企業の前提への重大な疑義はない。買収価格の上乗せを前提にせず、独立した会社として評価する。長期の還元には具体的な金額の約束がなく、負債返済後の配当と買い戻しを条件付きで考える。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社には、株価の下落ほど事業が傷んでいないという見方が成り立つ。2025年度の営業利益率は15.9%で、物販小売として依然高い。2026年には売上が減っているが、北米通販は第2四半期に増収へ転じ、海外と提携卸売も伸びた。既存店の客数が落ちる時期に、新しい販売経路が広がることは将来の顧客獲得につながる。
ホームフレグランスでは米国のエアケア市場で22%のシェアを持つ。キャンドルや香り付きの芳香剤は、機能だけでなく季節感や贈り物として買われる。グレードやファブリーズと完全に同じ商品ではなく、価格だけで比較されにくい。会社のブランドへの投資と香りの企画が当たれば、次の10年も上位の地位を保てる。
ボディケアも衰退が決まったわけではない。香りのミスト、ローション、若年層向け商品が再び支持されれば、入浴関連市場で失った占有率を取り戻せる。アマゾンやアルタ・ビューティでの展開は、従来の店舗に入らなかった顧客への接点となる。海外は提携型なので、直営店ほど資本を必要としない。
費用削減が定着し、販促の効率が上がれば営業利益率の回復余地もある。2026年に自社株買いを見送ったのは、弱気の証拠であると同時に財務を立て直す機会でもある。年々の現金収入で債務を減らせば、将来の配当と買い戻しの余地が再び生まれる。強いブランドが残るなら、現在の価格はその利益の寿命を短く見過ぎている。
慎重な見方
最も気になるのは、香りが好きな顧客と、特定のブランドから買い続ける顧客を混同することである。米国の入浴関連市場で占有率が15%から11%へ落ちたことは、競争がすでに起きている証拠だ。若年層はソル・デ・ジャネイロやセフォラで新しい香りを発見し、日用品はダヴやプロクター・アンド・ギャンブルの商品で十分だと考えるかもしれない。
店舗の規模も両刃の剣である。米国とカナダに約1900店舗を抱えるため、来店頻度が落ちれば賃料と人件費が利益を圧迫する。2025年度は店舗数を増やしても単位面積当たり売上が減った。香りの流行を読み違えた在庫は値引きが必要となり、売上を保っても利益が増えない状態に陥る。
財務に逃げ道が少ないことも見逃せない。純負債は40億ドルと、現在の時価総額にほぼ匹敵する。自己資本はマイナスで、資産を売れば株主の取り分が十分に残る構造ではない。金利が高いまま借り換えが進み、利益が減れば配当や自社株買いは縮む。過去の積極的な買い戻しは、守りの厚さを削った。
さらに、2026年第2四半期の利益改善には0.8億ドルの関税還付が含まれる。第1四半期にも0.88億ドルの訴訟和解益があった。見かけの利益が改善しても、継続的な来店客数が戻ったとは言えない。ECとAIの購買窓口が価格比較を容易にし、ブランドの値決め力を弱めれば、10年後には利益をわずかしか残せない小売になりうる。
どちらに重みを置いたか
商品カテゴリーの寿命については強い見方が優勢だ。香りを楽しみ、石けんを使い、贈り物を選ぶ需要は残る。しかし、ブランドの占有率が回復する確信は乏しく、負債が損失の深さを増幅するため、確率は悲観側に寄せた。楽観とやや楽観は合わせて24%、中立31%、やや悲観と悲観は45%である。
それでも中立の利益と還元に対し、今の時価総額は低い。10年後の現在価値は確率加重で約64.1億ドル、基準時価総額との差は約52%となる。結論は割安だ。ただし、事業を見誤ると資産の売却価値では救われない会社であり、利益より先に北米の客数と財務を確認し続ける必要がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 46.93 ドル94 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 21.33 ドル43 億ドル)。 今の値に割り戻すと 31.91 ドル64 億ドル、今との差 +40.1%、 期待の年率 +14.6%(資本コスト 9.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 138.86 ドル279 億ドル | 47.76 ドル96 億ドル | +719.6% | +30.1% | 13.06 ドル26 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 93.19 ドル187 億ドル | 38.81 ドル78 億ドル | +479.7% | +25.0% | 22.44 ドル45 億ドル |
| 中立 | 31% | 54.19 ドル109 億ドル | 27.36 ドル55 億ドル | +258.2% | +17.7% | 25.28 ドル51 億ドル |
| やや悲観 | 27% | 15.19 ドル31 億ドル | 9.95 ドル20 億ドル | +10.4% | +1.3% | 6.79 ドル14 億ドル |
| 悲観 | 18% | 2.57 ドル5 億ドル | 1.24 ドル3 億ドル | −83.2% | −18.3% | 0.69 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 46.93 ドル94 億ドル | 21.33 ドル43 億ドル | +199.8% | +14.6% | 68.26 ドル137 億ドル |
今の株価時価総額 22.77 ドル46 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 7% 楽観:香りのブランドが若年層に再び浸透し、利益率が回復する 利益 19 億ドル · PER 14.7 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 138.86 ドル279 億ドル
香り付きのキャンドルとボディミストが若い世代に再び定着する。商品企画と会員向け販促が改善し、米国エアケア市場での占有率は約22%から24%台に上がる。入浴関連市場でもユニリーバや新興ブランドから顧客を取り戻す。ホームフレグランスの実質販売個数は33%増え、ボディケアは31%増える。
値引きへの依存が下がり、商品の実売価格は10年でおおむね1.5倍になる。ハンドソープも使用頻度と詰め替え商品の普及で数量を増やす。海外提携店は880店に拡大し、アマゾンや専門美容店を通じた新しい販売経路も顧客層を広げる。営業利益率は全社で約20%に達する。
純利益は19.0億ドルとなり、10年間の累計純利益は132億ドルに達する。配当と自社株買いから株式報酬分を差し引いた正味の還元は96億ドルとする。増資を前提とせず、借金の返済と店舗の移転にも資金を残す。高い利益率は永続的とは考えず、10年後より先の成長率は3.8%に落ち着く。ブランドの堀はやや広がるが、競合を排除できるほど強くなるわけではない。
- 北米ホームフレグランス:数量 325(年間販売個数・百万個。会社が商品個数を開示しないため、売上と推定実売単価から逆算した基準数量)× 価格 18(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。数量に物価を含めず、値上げと販促の効果を単価に入れる)→ 売上 60 億ドル・営業利益 13 億ドル。実質販売個数は2025年度比1.33倍、実売単価は1.53倍。シェアを伸ばし販促を減らす。
- 北米ボディケア:数量 376(年間販売個数・百万個。推定実売単価で売上を割った基準数量)× 価格 14(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。新商品の高付加価値化と販促競争の両方を反映)→ 売上 52 億ドル・営業利益 10 億ドル。実質数量1.31倍、単価1.55倍。新商品が当たり、若年層のシェアを回復する。
- 北米ハンドソープ・消毒用品:数量 236(年間販売個数・百万個。ソープと消毒用品の合算推定数量)× 価格 8.25(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。詰め替えと携帯品の構成変化を含む)→ 売上 19 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質数量1.33倍、単価1.50倍。詰め替えと携帯用品が継続的な需要を支える。
- 北米ギフト・小物:数量 61.0(年間販売セット・百万点相当。商品構成が混在するため、販売点数は便宜的な推定)× 価格 15(セット・小物の推定平均実売単価・ドル/点)→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質数量1.25倍、単価1.50倍。ギフトのブランド力が高まる。
- 海外提携店・ライセンス・卸売:数量 880(海外提携店舗数・店。直営店ではなく、提携先が設備投資を負担する店舗数)× 価格 0.01(海外提携1店舗当たりの年間認識売上・億ドル。卸売、ライセンス、関連経路の売上を含む代理指標)→ 売上 7 億ドル・営業利益 2 億ドル。提携店880店。価格指標には値上げと新しい卸売経路の広がりを含む。
倍率:資本コストkは9.75%。物価3.5%に市場の実質成長とシェア上昇の一部を加え、10年目以降のgを3.8%とする。普通の堀の残存割合1/2を使い、事業ROE52%からRONICを30.9%とする。事業ROEは帳簿の高いROEを使わず、税引後営業利益約21.8億ドルを事業投下資本約53億ドルで割ったROIC約41%に、正常化した借入レバレッジの効果を加えた推定である。正当化PERは10年目利益基準で約15.30倍。優良な利益構成と一定の値決め力を評価して上限の96%である14.69倍とする。19.0億ドル×14.69倍=279.11億ドル。利払いは純利益に含み、負債を時価総額から再控除しない。
確率:ボディケアのシェア低下を反転させ、ホームフレグランスでも占有率を伸ばすには商品改革と新販路の双方で成果が必要である。利益率が20%近くへ回復する可能性を7%とした。
やや楽観 17% やや楽観:商品改革が当たり、販路の拡張が純増需要を生む 利益 14 億ドル · PER 13.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 93.19 ドル187 億ドル
キャンドルとソープの安定した需要に加え、ボディケアの新商品が売上減少を止める。エアケア市場での首位の地位を維持し、入浴関連市場の占有率も緩やかに回復する。北米の実質販売個数は、ホームフレグランスが18%増、ボディケアが15%増となる。競争相手が多いため、値上げの大半は物価に沿ったものにとどまる。
アマゾンやアルタ・ビューティの販売経路は、既存店からの移動だけではなく新しい顧客の獲得にもつながる。海外提携店は775店となり、卸売売上が増える。費用削減の一部が持続し、商品企画と広告への再投資も実る。全社の営業利益率は約18%に回復するが、好調だった2021年度の水準までは戻らない。
純利益は14.0億ドルで、10年間の累計は108億ドルとなる。正味の株主還元78億ドルは、配当と自社株買いから株式報酬による希薄化分を引いた値である。先に負債を軽くし、その後に買い戻しを増やす。事業の堀は概ね維持されるが、入浴用品の競争は続くため、10年目以降の名目成長は3.6%と考える。
- 北米ホームフレグランス:数量 288(年間販売個数・百万個。会社が商品個数を開示しないため、売上と推定実売単価から逆算した基準数量)× 価格 18(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。数量に物価を含めず、値上げと販促の効果を単価に入れる)→ 売上 50 億ドル・営業利益 10 億ドル。実質数量1.18倍、単価1.46倍。首位の地位を保ち商品構成が改善する。
- 北米ボディケア:数量 330(年間販売個数・百万個。推定実売単価で売上を割った基準数量)× 価格 13(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。新商品の高付加価値化と販促競争の両方を反映)→ 売上 43 億ドル・営業利益 8 億ドル。実質数量1.15倍、単価1.46倍。新製品が失ったシェアの一部を取り戻す。
- 北米ハンドソープ・消毒用品:数量 213(年間販売個数・百万個。ソープと消毒用品の合算推定数量)× 価格 7.98(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。詰め替えと携帯品の構成変化を含む)→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。実質数量1.20倍、単価1.45倍。繰り返し購入が支える。
- 北米ギフト・小物:数量 54.7(年間販売セット・百万点相当。商品構成が混在するため、販売点数は便宜的な推定)× 価格 15(セット・小物の推定平均実売単価・ドル/点)→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質数量1.12倍、単価1.45倍。ギフトの客数が増える。
- 海外提携店・ライセンス・卸売:数量 775(海外提携店舗数・店。直営店ではなく、提携先が設備投資を負担する店舗数)× 価格 0.01(海外提携1店舗当たりの年間認識売上・億ドル。卸売、ライセンス、関連経路の売上を含む代理指標)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。提携店775店。海外の値上げと卸売経路の増加を反映する。
倍率:gは3.6%。物価3.5%に実質需要の小幅な伸びとシェア安定を加えたものであり、ROEから成長率を作らない。k9.75%、普通の堀の残存割合1/2、事業ROE43%によりRONICは約26.4%。帳簿のROEは自社株買いで歪むため、税引後営業利益約16.6億ドルと投下資本約47億ドルによるROIC約35%から、正常な負債比率を使ってROEを推定した。正当化PER上限約14.55倍の92%に当たる13.38倍を使う。純利益14.0億ドル×13.38倍=187.32億ドル。
確率:キャンドルとソープの競争力は残っており、新商品と海外卸売が改善する余地がある。ただしボディケアの失地回復は簡単ではないため17%とした。
中立 31% 中立:ホームフレグランスは安定、ボディケアのシェア低下が続く 利益 10 億ドル · PER 11.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 54.19 ドル109 億ドル
ホームフレグランスの市場は成熟しており、顧客の使用個数は大きく増えない。それでもブランドの首位級の地位が残り、10年で販売個数は3%増える。ハンドソープは消耗品として底堅く、個数は4%増える。これに対しボディケアは、ユニリーバや新興美容ブランドとの競争で占有率を失い、実質数量が9%減る。ギフトは景気とともに増減し、実質数量は小幅減となる。
商品の実売単価は物価上昇に概ね追随するが、ボディケアとギフトでは値引きが残るため1.41倍には届かない。海外提携店は720店に増え、新しい卸売経路の売上が補う。全社売上は約100億ドルとなる。営業利益率は約15.8%にとどまり、2025年度とほぼ同じ水準である。経営改革の費用削減効果は販促、物流、人件費の上昇に相殺される。
純利益は9.7億ドルとなる。金利が高い世界で借り換えが進むため、財務費用は2025年度より税前で約1億ドル増えると考え、純利益に織り込む。10年間の純利益累計は79億ドル、正味の還元は55億ドルとする。配当を保ちながら自社株買いを再開するが、過去のような大規模還元には戻さない。市場の実質成長とシェア低下を相殺した先の名目成長率は2.9%である。
- 北米ホームフレグランス:数量 251(年間販売個数・百万個。会社が商品個数を開示しないため、売上と推定実売単価から逆算した基準数量)× 価格 17(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。数量に物価を含めず、値上げと販促の効果を単価に入れる)→ 売上 42 億ドル・営業利益 7 億ドル。実質数量1.03倍、単価1.39倍。市場成熟の中で首位級を維持する。
- 北米ボディケア:数量 261(年間販売個数・百万個。推定実売単価で売上を割った基準数量)× 価格 12(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。新商品の高付加価値化と販促競争の両方を反映)→ 売上 32 億ドル・営業利益 5 億ドル。実質数量0.91倍、単価1.36倍。シェア低下と販促競争が続く。
- 北米ハンドソープ・消毒用品:数量 185(年間販売個数・百万個。ソープと消毒用品の合算推定数量)× 価格 7.76(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。詰め替えと携帯品の構成変化を含む)→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質数量1.04倍、単価1.41倍。使用頻度の安定と物価連動。
- 北米ギフト・小物:数量 46.9(年間販売セット・百万点相当。商品構成が混在するため、販売点数は便宜的な推定)× 価格 14(セット・小物の推定平均実売単価・ドル/点)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質数量0.96倍、単価1.36倍。贈答の需要は残るが販促が多い。
- 海外提携店・ライセンス・卸売:数量 720(海外提携店舗数・店。直営店ではなく、提携先が設備投資を負担する店舗数)× 価格 0.01(海外提携1店舗当たりの年間認識売上・億ドル。卸売、ライセンス、関連経路の売上を含む代理指標)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。提携店720店。店舗増と卸売拡大、物価並みの売上単価を反映する。
倍率:10年後のgは2.9%。市場の実質数量は横ばい近く、ボディケアのシェア低下が物価3.5%の一部を打ち消すためである。k9.75%、普通の堀の残存割合1/2、事業ROE34.5%からRONICは22.1%。帳簿のROEは過去の買い戻しで不適切なので、税引後営業利益約11.7億ドルを想定投下資本約43億ドルで割ったROIC約27%に、業界並みの借入比率の効果を加えた。正当化PERの上限は10年目利益基準で約13.05倍。客数の減少とシェア低下による利益の不確実性を反映して86%の11.23倍とする。9.7億ドル×11.23倍=108.93億ドル。
確率:米国エアケアでの首位とソープの継続需要は残るが、ボディケアのシェア低下も実際に確認されている。いずれか一方に偏らないものの、負債の重さから31%にとどめた。
やや悲観 27% やや悲観:新興ブランドに顧客を奪われ、値引きと固定費が利益を削る 利益 4 億ドル · PER 7.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 15.19 ドル31 億ドル
若年層の香りの流行が変わり、セフォラなどの美容専門店や新興ブランドへの顧客流出が続く。米国エアケア市場では、グレード、ファブリーズ、ヤンキーキャンドルなどと価格面で競うことになり、バス&ボディ・ワークスの占有率は十数%台に下がる。ボディケアの実質数量は30%減り、ホームフレグランスも18%減る。
売れ残った香りの商品を値引きするため、実売単価は10年で物価上昇より低い伸びにとどまる。店舗数を減らしても賃料と閉店費用が残り、物流や人件費を十分に吸収できない。ハンドソープも競合の安価な商品に押される。海外提携店は625店にとどまり、販路拡大は北米の落ち込みを補えない。
全社売上は約74億ドルと、10年前とほぼ変わらない。営業利益率は約10.6%へ低下し、純利益は3.9億ドルになる。2027〜2030年の店舗整理や販促投資で利益が一度細るため、10年間の純利益累計は43億ドルとする。債務返済を優先し、正味の株主還元は20億ドルへ縮小する。事業は黒字を保つが、ブランドの超過収益は薄まり、先の名目成長率は1.2%に落ちる。
- 北米ホームフレグランス:数量 200(年間販売個数・百万個。会社が商品個数を開示しないため、売上と推定実売単価から逆算した基準数量)× 価格 16(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。数量に物価を含めず、値上げと販促の効果を単価に入れる)→ 売上 31 億ドル・営業利益 4 億ドル。実質数量0.82倍、単価1.30倍。シェア低下と販促増加が重なる。
- 北米ボディケア:数量 201(年間販売個数・百万個。推定実売単価で売上を割った基準数量)× 価格 11(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。新商品の高付加価値化と販促競争の両方を反映)→ 売上 23 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質数量0.70倍、単価1.26倍。若年層のブランド離れが続く。
- 北米ハンドソープ・消毒用品:数量 149(年間販売個数・百万個。ソープと消毒用品の合算推定数量)× 価格 7.26(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。詰め替えと携帯品の構成変化を含む)→ 売上 11 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質数量0.84倍、単価1.32倍。大手日用品メーカーとの競争で値引きする。
- 北米ギフト・小物:数量 36.1(年間販売セット・百万点相当。商品構成が混在するため、販売点数は便宜的な推定)× 価格 12(セット・小物の推定平均実売単価・ドル/点)→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質数量0.74倍、単価1.22倍。ギフト需要と利益率が弱まる。
- 海外提携店・ライセンス・卸売:数量 625(海外提携店舗数・店。直営店ではなく、提携先が設備投資を負担する店舗数)× 価格 0.01(海外提携1店舗当たりの年間認識売上・億ドル。卸売、ライセンス、関連経路の売上を含む代理指標)→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。提携店625店。海外事業も販促競争を受ける。
倍率:gは1.2%。物価上昇を実売価格に転嫁しきれず、実質数量とシェアも縮む。k9.75%、普通の堀の残存割合1/2、事業ROE20%からRONICは約14.9%。事業ROEは税引後営業利益約5.8億ドルと投下資本約43億ドルによるROIC約13.4%に、正常な借入比率の効果を加えた推定である。利益の持続性が弱くなるため、正当化PER上限約10.88倍の72%である7.83倍とする。中立の11.23倍より低い。3.9億ドル×7.83倍=30.54億ドル。過去の谷の市場倍率は根拠にしない。
確率:入浴関連市場で既にシェアが低下し、北米の客数も弱い。事業は存続するが利益率と還元が目減りする展開を現実的な27%とした。
悲観 18% 悲観:ブランドの地位が崩れ、店舗網は利益より負担となる 利益 1 億ドル · PER 7.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.57 ドル5 億ドル
香りの商品は売れ続けるが、このブランドを選ぶ理由が薄くなる。米国エアケア市場での占有率は約22%から十数%前半へ落ち、ボディケアでも若年層を取り戻せない。ホームフレグランスの実質販売個数は38%減り、ボディケアは48%減る。商品開発で競合に後れ、値上げをすると客が離れるため、実売単価の上昇は10年の物価上昇を大きく下回る。
不採算店を閉じても、賃貸契約と物流の固定費が利益を圧迫する。ギフト事業は小幅な赤字となり、海外提携店も470店へ減る。全社売上は約49億ドルまで縮み、営業利益率は約7.5%となる。営業利益は3.69億ドル、純利益は0.72億ドルしか残らない。利益のほとんどを借り換え費用と事業維持に使う。
2027〜2031年に店舗閉鎖、商品減損、在庫処分による損失が生じるため、10年間の純利益累計は20億ドルにとどまる。配当は削減し、自社株買いはほぼ止まり、正味の還元は2.5億ドルとなる。自己資本は累計利益の留保によって4.7億ドルになるが、その帳簿額を悲観の床には使わない。稼ぐ力が弱いため、10年後の時価総額は5.17億ドルにとどまる。会社は存続するものの、かつての優良なブランド小売ではなくなる。
- 北米ホームフレグランス:数量 151(年間販売個数・百万個。会社が商品個数を開示しないため、売上と推定実売単価から逆算した基準数量)× 価格 14(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。数量に物価を含めず、値上げと販促の効果を単価に入れる)→ 売上 21 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質数量0.62倍、単価1.16倍。ブランドの占有率と値決め力が低下する。
- 北米ボディケア:数量 149(年間販売個数・百万個。推定実売単価で売上を割った基準数量)× 価格 9.90(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。新商品の高付加価値化と販促競争の両方を反映)→ 売上 15 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質数量0.52倍、単価1.10倍。美容専門店と新興ブランドに負ける。
- 北米ハンドソープ・消毒用品:数量 114(年間販売個数・百万個。ソープと消毒用品の合算推定数量)× 価格 6.49(値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。詰め替えと携帯品の構成変化を含む)→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。実質数量0.64倍、単価1.18倍。差別化できず安価な日用品に押される。
- 北米ギフト・小物:数量 24.4(年間販売セット・百万点相当。商品構成が混在するため、販売点数は便宜的な推定)× 価格 11(セット・小物の推定平均実売単価・ドル/点)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。実質数量0.50倍、単価1.10倍。季節商品が売れ残り赤字になる。
- 海外提携店・ライセンス・卸売:数量 470(海外提携店舗数・店。直営店ではなく、提携先が設備投資を負担する店舗数)× 価格 0.01(海外提携1店舗当たりの年間認識売上・億ドル。卸売、ライセンス、関連経路の売上を含む代理指標)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。提携店470店。海外の撤退と取引条件の悪化を反映する。
倍率:市場の実質数量とシェアが縮み、値上げも物価に届かない。10年目以降は長期の名目成長を認めずgを0%とする。k9.75%。税引後営業利益約2.73億ドルと、負債を含む投下資本約44.7億ドルから求める事業ROICは約6.1%で、資本コスト以下となる。再投資に超過利益がないため、正当化PERの上限は1÷kの約10.26倍。構造的敗者の利益の不安定さを反映し、その70%である7.18倍とする。0.72億ドル×7.18倍=5.17億ドル。現在の自己資本はマイナスで資産売却による正味回収額もゼロ以下のため、将来の帳簿純資産に床の倍率を掛けない。
確率:ボディケアのシェア低下と北米客数減少が長く続けば、ブランドの収益力は大きく失われる。純負債とリース負担が重く、失敗時の株主価値が薄いため18%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
北米ホームフレグランス
キャンドル、壁差し込み式芳香剤と関連商品。ブランドの香りと季節限定品で差別化する主力商品群。
| 数量年間販売個数・百万個。会社が商品個数を開示しないため、売上と推定実売単価から逆算した基準数量 | 価格値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。数量に物価を含めず、値上げと販促の効果を単価に入れる | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 244 | 12 | 29 | 5 |
| 10 年後 中立 | 251 | 17 | 42 | 7 |
取り方:2025年度の北米売上69.77億ドルに会社の決算説明資料のホームフレグランス構成比約42%を掛け、29.30億ドルとした。実売の個数と単価は非開示なので、キャンドルの定価と頻繁な値引きを踏まえ平均12ドルと仮定し、年2億4417万個に相当するとした。営業利益5.13億ドルは独立採算の開示ではなく、商品の粗利と店舗費用を配分した推定値である。ユーロモニターの米国エアケア市場での2025年シェアは22%。市場定義が異なる北米ホームフレグランス市場約90億ドルとは単純に割り算しない。参考:https://www.euromonitor.com/air-care-in-the-us/report
北米ボディケア
ボディミスト、ローション、ボディウォッシュ、クリーム、香水など。若年層の流行と新商品の成否が数量を左右する。
| 数量年間販売個数・百万個。推定実売単価で売上を割った基準数量 | 価格値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。新商品の高付加価値化と販促競争の両方を反映 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 287 | 9.00 | 26 | 4 |
| 10 年後 中立 | 261 | 12 | 32 | 5 |
取り方:2025年度北米売上69.77億ドルに会社資料のボディケア構成比約37%を掛け、25.81億ドルと推定した。商品個数と実売単価の開示はないため、複数点購入の値引きを踏まえ平均9ドルとし、年2億8678万個相当とした。商品群の営業利益4.26億ドルは配賦推定である。ユーロモニターでは米国の入浴・シャワー用品市場のシェアが2021年15%から2025年11%へ低下した。ただし、同市場にはミストやローションの一部が含まれないため、シェアを売上へ直接掛けない。参考:https://www.euromonitor.com/bath-and-shower-in-the-us/report
北米ハンドソープ・消毒用品
香り付きハンドソープ、詰め替え、携帯用消毒用品。使用頻度が高いが、機能面では大手日用品メーカーと競争する。
| 数量年間販売個数・百万個。ソープと消毒用品の合算推定数量 | 価格値引き後の推定平均実売単価・ドル/個。詰め替えと携帯品の構成変化を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 178 | 5.50 | 10 | 1 |
| 10 年後 中立 | 185 | 7.76 | 14 | 2 |
取り方:会社の2025年度決算説明資料では北米売上の約14%がソープと消毒用品で、69.77億ドルの14%を9.77億ドルとした。定価とまとめ買いを考慮した推定平均実売単価5.5ドルから、年1億7764万個相当とした。2025年はこの商品群が前年比で一桁台半ばの増収となり、ソープ詰め替えはソープ売上の1割弱であった。会社は数量、平均単価、商品群別営業利益を開示しておらず、1.47億ドルは営業利益率15%の配分推定である。
北米ギフト・小物
ギフトセット、包装済み商品、芳香剤のアクセサリーなど。季節商戦と贈答需要の影響を強く受ける。
| 数量年間販売セット・百万点相当。商品構成が混在するため、販売点数は便宜的な推定 | 価格セット・小物の推定平均実売単価・ドル/点 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 48.8 | 10 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 46.9 | 14 | 6 | 1 |
取り方:2025年度の北米売上69.77億ドルに、会社資料のギフト・その他構成比約7%を適用して4.88億ドルとした。商品点数と平均単価の開示はない。包装品と小物の混合単価を10ドルと仮定すると年4880万点相当となる。2025年はギフトの販売が好調だったものの、数量の持続性は不明である。営業利益0.42億ドルは季節商戦の値引きと包装費用を考えた配賦推定である。
海外提携店・ライセンス・卸売
海外の提携店舗への商品供給とライセンス収入。2026年以降に増える米国内の新規卸売経路も将来の販路拡張として考慮する。
| 数量海外提携店舗数・店。直営店ではなく、提携先が設備投資を負担する店舗数 | 価格海外提携1店舗当たりの年間認識売上・億ドル。卸売、ライセンス、関連経路の売上を含む代理指標 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 573 | 0.01 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 720 | 0.01 | 6 | 1 |
取り方:会社の2025年度の国際事業売上3.14億ドルと、期末の海外提携店573店を使用した。3.14億ドルを573店で割ると1店当たり約0.00548億ドルの会社認識売上に相当する。これは提携店の店頭売上ではなく、卸売とライセンスを含む会社側の収入である。期末店舗数で年間売上を割る近似には期中出店の誤差がある。2026年以降の米国内卸売の増分は将来の単価指標にも含める。商品群別営業利益の開示はないため0.32億ドルは推定である。
リスクと懸念
負債と借り換え
純負債約40億ドルは基準時価総額とほぼ同じである。借入債務に加え店舗リースという固定の約束があり、2025年度の自己資本はマイナスだった。借り換え金利が約5.75%の環境で営業利益が低下すれば、債務の維持が株主還元に優先する。過去の買い戻しの規模を将来にも当然に続くものとして扱ってはいけない。
若年層の離反とブランドの寿命
米国の入浴関連市場で占有率が2021年の15%から2025年の11%へ低下した。香りの嗜好は変わりやすく、ソル・デ・ジャネイロなどの新興ブランドが顧客を獲得している。ブランドの認知度が高くても選ばれなければ価値は減る。ボディケアの数量減少がホームフレグランスにも広がれば、会社全体の利益率が下がる。
店舗固定費と客数の減少
2025年度の単位面積当たり店舗売上は約2%減った。店舗を増やしても生産性が下がると、賃料、人件費、在庫、物流の固定費が利益を押し下げる。リースの契約は売上減少と同じ速さでは減らせない。閉店時には撤退費用や設備の減損も発生するため、売上の小幅減が営業利益の大幅減につながる可能性がある。
商品改革と販路拡大の失敗
経営改革は香りの商品企画、デジタル、卸売、新しい顧客への訴求を同時に進めている。費用削減の額が大きくても、売れる商品を生む能力が下がれば本末転倒だ。アマゾンや美容専門店への展開も、新規顧客の獲得でなければ自社店舗の売上を移すだけとなる。販路が増えたという事実と、会社全体の利益が増えることを混同してはいけない。
製品安全、原材料、関税
香料、化粧品成分、包装資材には安全規制や表示義務がある。原料費や関税の上昇を値上げで吸収できなければ粗利益率が下がる。製品回収や安全性への不信は、香りと安心感を売るブランドにとって特に大きな傷となる。供給網が米国内に比較的集中していても、輸入する原料や包装材、物流費への影響は残る。
一時利益の恒常化
2026年第1四半期の営業利益には訴訟和解益約0.88億ドルが含まれ、第2四半期には関税還付約0.80億ドルが含まれた。さらに上期には税務案件の解決による税効果もあった。これらを来年以降の通常の利益率に持ち込むと、収益力を大きく見誤る。営業利益の表面上の増減だけでなく、一時項目を除いた客数、粗利、固定費を見る必要がある。
AIによる購入経路の変化
物理的な石けんやキャンドルを売る会社であり、人月課金や業務ソフトのAIエージェント代替には当たらない。ただしAIが商品の検索、価格比較、購入を仲介するようになると、店舗で偶然商品に出会う機会が減る。商品が価格とレビューで比較されるほど、販促費の負担と値引き圧力が増えるおそれがある。ブランド指名で購入される割合が堀の強さを決める。
今後の分かれ目
- 北米の既存店取引件数が四半期ごとに増加へ転じ、ボディケアの実質販売数量も伸び始めたら
- 商品改革が顧客を取り戻している証拠となる。中立よりやや楽観の筋書きへ重心を移し、営業利益率の回復と還元拡大の持続性を確認する。
- 米国エアケアのシェアが22%を維持し、入浴関連市場のシェアが11%から回復したら
- ブランドの堀が再び広がる証拠である。ホームフレグランスだけでなくボディケアの数量を上方修正でき、楽観側の確率を高める理由になる。
- 北米の店舗当たり売上が減り続け、営業利益率が12%を割ったら
- 固定費と販促競争が効き始めたと判断する。売上の名目成長だけでは救えず、やや悲観の数量と利益率を中心に再評価する。
- 純負債が継続的に減り、フリーキャッシュフローを使った債務返済と配当が両立したら
- 財務の下振れが小さくなる。過去のような大規模自社株買いを急がず、余剰資金を着実に還元する会社として評価を高める。
- 費用削減が計画どおり進んでも客数と粗利益率が回復しなければ
- 利益の改善は一時的な経費圧縮であり、増分の投資収益率が高まったとは扱わない。販路拡大の成果とブランド占有率を先に確認する。
- 拘束力のある買収契約や非公開化の合意が正式に発表されたら
- 独立企業としての10年価値とは別に、対価、成立条件、規制承認、株主が受け取る金額を確認する。それまでは売却の噂を本質価値の上乗せには使わない。
- 関税還付と訴訟和解益を除いた営業利益が前年を大きく下回り続けたら
- 2026年の表面上の増益を事業回復と見なさず、正常利益を下方修正する。買い戻し再開の時期も遅らせて考える。
見ておくもの
- 北米直営店の既存店売上を客数と客単価に分解した変化
- ホームフレグランス、ボディケア、ソープの売上と商品別数量の開示
- 米国エアケア市場の占有率と入浴関連市場の占有率
- 若年層の新規会員、会員の再購入頻度、会員販促の効率
- 北米通販と新規卸売経路の増収が既存店の減収を上回るか
- 一時的な関税還付、訴訟和解益、税効果を除く営業利益率
- 純負債、リース債務、債券償還、自社株買い再開の条件
- 海外提携店舗数と会社認識売上の伸び
- 経営改革による費用削減と商品開発・広告への再投資の成果
- アクティビストの要求に対する取締役会の正式な対応
倍率と資本コストの決め方
事業の将来価値は、会社開示の北米商品構成比を出発点に、商品群ごとの実質販売個数、値引き後の実売単価、営業利益率から考えた。実際の販売数量と平均単価は非開示なので推定であり、物価3.5%の効果は価格にのみ入れた。倍率は現在や過去の市場PERから決めていない。資本コスト9.75%、商品の市場成長とシェアから求めたg、投下資本から推定した事業ROE、普通の堀の残存割合1/2による正当化PERの内側に収めた。負債と店舗リースは既に財務データの純負債に含まれ、二重に引かない。米国会計では店舗リースは既に貸借対照表に計上されており、家賃を営業費用に含む形で比較した。今の値段との比較は最後に行った。5つの確率を合計1.00として割り引くと現在価値64.13億ドル、基準時価総額42.11億ドル、差は+52.3%となり、結論は割安である。
資本コスト 9.8% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にqualityの+1.75%を加えて9.75%。βや市場倍率は使わない。2025年度は黒字で現金創出力もあり、継続企業として存続が危うい状態とまでは判断しないため、distressの特別上乗せはゼロとする。ブランドの衰退と財務の弱さは、数量、営業利益率、悲観の確率でも表現する。同領域のアルタ・ビューティやホーム・デポより高いのは、負債と占有率低下の違いによる。