結論
ブランズウィックは、マーキュリーの船外機、船舶用補修部品、ナビコの電子機器、ボストン・ホエラーなどのボートを売る米国の海洋産業大手である。筆者の結論は、事業には長く残る価値があるものの、2026年10月時点の値段はおおむね適正というものだ。船外機と補修部品は良い事業だが、船体製造の景気変動と電子機器買収の失敗を無視できない。
2025年の売上は53.6億ドル、資料上の営業利益は3.2億ドル、純損益は1.4億ドルの赤字だった。ナビコでは2024年に続いて2025年も大きな減損を計上した。2022年の売上68.1億ドル、営業利益9.5億ドルをそのまま正常な稼ぐ力とみなすのは危険である。高金利下では、新艇を買う家計と在庫を抱える販売店の双方が慎重になる。
ただし、事業が衰退する一方と見るのも違う。2026年第2四半期は売上15.58億ドルと前年同期比7.7%増え、GAAP営業利益も1.29億ドルに回復した。会社は2026年売上57〜58億ドル、フリーキャッシュフロー4億ドル以上を見込む。既存艇の整備需要、マーキュリーの高馬力製品、フリーダム・ボート・クラブの会員網が、新艇の不振を和らげている。ただし関税還付という一時的な追い風は、長期の正常利益から切り離す必要がある。
10年後の中立では、売上91.7億ドル、営業利益10.3億ドル、純利益6.3億ドルを見込む。エンジンの数量増と補修部品の浸透に、名目価格の上昇を組み合わせた姿である。会社全体の中立時価総額は約76億ドルとなる。一方、負債と買収の不確実性から慎重な筋書きにも重みを与えた。将来の時価総額と正味還元を資本コスト9.25%で割り戻した確率加重価値は約43.1億ドルで、基準時価総額約43.4億ドルとの差は約マイナス1%である。事業が良くなる余地と、そのために必要な再投資・時間・失敗の可能性がほぼ釣り合っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最も魅力があるのは、船を一度買った顧客との関係が長く続くことだ。ボートの船体は毎年買い替える商品ではないが、エンジンの保守や部品交換は繰り返し発生する。マーキュリーの整備網に入り込めば、性能、部品供給、修理のしやすさが一体となり、将来の取引を守る。単なる景気敏感な完成品メーカーより良い経済性を持つ理由はここにある。
しかし会社全体を安心して長く所有できるかと問われれば、答えには条件が付く。船舶市場の需要は家計の余裕によって大きく振れ、販売店の在庫調整は工場の稼働率を直撃する。経営が好況期の利益を恒久的と見誤れば、高い買収価格や過大な自社株買いに使ってしまう。ナビコの減損はその弱点を具体的に示した。借金が大きいため、会計上の利益が回復しても、そのすべてが自由な現金として株主に渡るわけではない。
オーナー利益は、継続的な製品開発、工場設備の維持、整備網の拡張を支払った後の現金で測りたい。2025年のフリーキャッシュフロー約4億ドルは底堅さを示すが、運転資金の解放や投資抑制で一時的に増えることがある。2026年以降の回復で、利益と同時に負債が減り、ナビコにも安定したGAAP利益が出るかを確認する必要がある。
本質価値を高く評価できる条件は、マーキュリーが高馬力の優位を保ち、補修部品が船の保有台数に対して着実に浸透することだ。それでも完成艇の景気循環と電子機器の競争が残る以上、会社全体に独占企業並みの倍率は払えない。中立の利益回復が実現すれば長期の株主価値は増すが、その達成までの不確実性を差し引くと、現状では大きな安全域を見いだせない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は船を売ることそのものではなく、船を動かし、維持し、使い続けるための商品を広く供給することにある。事業報告上は推進機関、エンジン補修部品、ナビコ、ボートの4部門である。ここでは最後のボート部門から会員制サービスなどを分け、経済性の異なる5つの事業として捉える。2025年の売上構成は、推進機関がおよそ36%、補修部品23%、ナビコ13%、ボート製造25%、会員制その他4%である。
推進機関の主役はマーキュリー・マリーンだ。船外機のほか船内外機、操作装置、プロペラを造り、造船会社と販売店に卸す。買い手は燃費、馬力、静粛性、修理拠点の多さで選ぶ。船外機の買い替え時には同じメーカーを選ぶ利点が大きく、整備する販売店にも専用の診断機器や技術が蓄積する。ヤマハ発動機、スズキ、ホンダ、トーハツと競うが、北米の大型船向け高馬力分野では有力な地位を築いている。
エンジン補修部品は、マークルーザー関連部品、消耗品、整備用品、ランド・アンド・シーなどを通じた他社製品の卸売りで稼ぐ。新艇の販売が止まっても、既に海上にある船はエンジンオイルやフィルター、故障部品を必要とする。2025年の同部門の営業利益は約2.2億ドルで、全社にとって最も確かな利益源の一つだ。継続購入と販売網が堀になっている。
ナビコはシムラッド、ローランス、B&Gなどの航海計器に加え、電力管理やデジタル操作システムを扱う。船体製造ではボストン・ホエラー、シーレイ、ベイライナーなどを保有する。ナビコはガーミンなどとの技術競争が激しく、船体製造は販売店の在庫調整に大きく左右されるため、同じ売上でも価値の安定性は低い。
残るフリーダム・ボート・クラブは、会員が船を所有せず利用できる仕組みを提供する。2025年末には約440拠点、6万超の会員権があり、加入時料金と会費を得る。関連する金融、保証、中古艇事業もボート部門に含まれる。会員制サービスは船を買わない人も水上レジャーへ呼び込むが、フランチャイズ、直営、周辺サービスで収益構造が異なるため、すべてを高利益の継続課金とみなさない。AIエージェントによる人月業務や席課金ソフトの代替には該当しない。航海ソフトの進歩は、電子機器の競争と製品価値の問題として扱う。
優良さと弱いところ
最も評価したい堀は、マーキュリーのエンジンと補修部品を結ぶ販売・整備の仕組みだ。船外機は単体の性能だけでなく、故障時に港の近くで直せるかが重要である。販売店が診断装置と整備技能を蓄積し、顧客が同じメーカーの部品を使い続けるほど、競合への乗り換えには手間がかかる。ランド・アンド・シーの広域物流も、小さな整備店が在庫を持たずに営業できる理由になっている。
値決め力は部門によって違う。マーキュリーは高馬力化と電子制御の組み合わせによって単価を改善してきた。2025年の推進機関売上は、数量の伸びが小さい中でも製品構成と価格の改善に支えられた。補修部品も既存艇が存在する限り需要が続く。一方、完成艇では競合ブランドや中古艇という代替品があり、販売店が在庫過剰になると値引き圧力が強まる。
堀が会社全体に及ぶと考えるのは早計だ。ナビコでは2024年と2025年に多額の減損が生じた。買収時に期待した将来利益が十分に実現していない証拠であり、技術的な製品群を所有するだけでは高い資本利益率を保証しない。ガーミンはマリン機器で高い収益性を示しており、ナビコが同じ水準に戻れるかは未証明だ。
資本効率にも二面性がある。景気の良い2021〜2023年には高いROEを記録したが、2025年は赤字だった。過去10年のROE中央値は18%であり、これが構造的に伸び続けると考えるより、既存製品の収益性と景気による稼働率の変動を分けた方がよい。2025年末の純有利子負債は20億ドルに上り、時価総額の約46%に相当する。補修部品から稼ぐ現金は貴重だが、負債返済、製品開発、工場の維持に使われる分は自由な株主還元ではない。
10年後も船を所有し、水上で遊びたい人は存在すると見る。しかし水上レジャー全体の数量が大幅に増える必然性はない。長期の価値を生むのは市場の爆発的拡大ではなく、既存艇の維持需要を取り込みながら、強いエンジン事業へ資本を集中できるかどうかである。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国のボート市場は成熟しており、景気、家計の資産価値、船舶ローン金利、保管料に敏感である。全米海洋製造業者協会によると、2025年の米国船外機小売市場は約26.7万台、金額で35億ドルだった。台数は前年から3.9%減ったが、平均小売価格は3.2%上昇した。300馬力以上の高馬力機が約4万台を占め、価格と製品構成を改善できるメーカーには機会がある。世界市場の競合はヤマハ発動機、マーキュリー、スズキなどである。市場調査会社の2025年世界売上シェア推定では、ヤマハ約23%、マーキュリー約16%、スズキ約7%となる。ただし地域、馬力帯、新艇への搭載比率で順位は変わる。
会社が示した船外機シェア70%という事例は、2026年のウェストパームビーチ展示会という限定された市場の数字だ。世界シェアや米国全体のシェアに読み替えてはいけない。2030年に向けて米国の船外機シェアをさらに伸ばすという会社の目標も、達成済みの事実とは分ける。中立では競合から一定の搭載枠を奪うが、ヤマハやスズキが技術開発を止めるとは考えない。
船体市場については、2025年の米国新造動力艇小売が約22万台という業界統計がある。ただし個人用水上バイクを含む範囲と、会社が成長計画に用いる対象艇種約13.8万台は母集団が違う。完成艇の競合はマリブ・ボーツ、マスタークラフト、グループ・ベネトー、独立系の多数の造船会社である。ブランズウィックが全米の新艇を一手に供給しているわけではなく、ブランド別の販売価格と利益率にも幅がある。2035年の数量は、高級艇のシェア上昇と普及艇の価格競争を分けて判断した。
補修部品の対象市場は新艇販売ではなく、米国に蓄積された多数の既存艇と整備需要である。会社はランド・アンド・シーの米国海洋用品卸でのシェアを4割強と説明しているが、これは補修用品流通という限定市場の数字で、部品市場全体のシェアではない。販売店網への浸透は10年かけて進むと見る。ナビコが競う電子機器では、ガーミン、レイマリン、フルノなどが強い。世界のチャートプロッター市場だけでも2025年に約9.6億ドルという民間推定があるが、電力管理などを含むナビコ全体の市場とは比較できない。市場の区切りが異なるため、ナビコの世界シェアは断定しない。
今は2022年の需要の山から調整を経て、2026年に回復し始めた局面である。金利5%前後、物価上昇率3.5%が続く前提では、借り入れで買う高額な船の数量に強い伸びは期待しにくい。反面、既存艇の整備、使い方の会員制化、航海の安全性向上は景気の谷でも残る。衣料やスポーツ用品の同業比較だけで済ませず、自動車や住宅に近い耐久消費財の循環を重く見る必要がある。
資本政策と M&A
資本配分の成績は、株主還元の実績と買収の損失を並べて判断すべきだ。過去10年に配当と自社株買いを続け、2019年以降の買い戻しも大きかった。一方、買収を含む事業拡張によって、2015年の純現金に近い財務から2025年末の純負債20億ドルへと変わった。2022年の好況期には約4.5億ドルの自社株買いを実施したが、後から振り返ると、その資金を負債削減に回す余地もあった。自社株買いを実施した額と、長期の株主価値が増えた額は同じではない。
2019年のフィットネス事業売却によって海洋関連へ事業を集中した判断には筋が通っている。フリーダム・ボート・クラブへの投資も、船の利用人口を増やすという戦略と合う。しかし2021年のナビコ買収は、2024年の約0.85億ドル、2025年の約3.23億ドルという減損を経て、投下資本に十分な利益を生んだとは評価できない。今後の買収は規模よりも既存事業との相乗効果と現金回収率を重視すべきである。
2026年の会社見通しは売上57〜58億ドル、調整後営業利益率約8%、フリーキャッシュフロー4億ドル以上である。2026年8月の投資家説明会では、2030年の売上70〜80億ドル、営業利益率10〜13%、フリーキャッシュフロー5.5億ドル超を掲げた。負債倍率の低下と、2027年以降の年間1億ドル以上の自社株買いも目標とする。ただし調整後の利益にはGAAPと異なる項目があるため、予測純利益には株式報酬と通常の買収償却を費用として残した。
2026年9月には、2027年1月からアイネ・デナリが最高経営責任者になることが発表された。ナビコを率いてきた経歴は電子機器の立て直しに有利だが、次の大型買収に踏み出すなら警戒を強めたい。普通株主の取り分を削る支配株主や複雑な種類株構造は確認できない。公表資料上、合意済みの非公開化、上場廃止計画、継続企業の前提に関する重大な疑義も確認されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
マーキュリーは成熟産業の中でシェアを伸ばせる数少ない製品群を持つ。2025年の米国船外機市場は台数こそ縮んだが、高馬力化によって平均価格は上がった。大型船ではエンジンの信頼性と整備網が購入の決め手になる。2026年の展示会でマーキュリーが高い搭載シェアを確保したことも、特定の地域と馬力帯で商品力が強い証拠である。ヤマハ発動機やスズキが競合であっても、マーキュリーが高価格帯の搭載枠を増やす余地は残る。
さらに、保有艇に対する補修部品の販売が厚くなる。船の新規販売は金利によって上下しても、既に使われている船の整備は続く。ランド・アンド・シーの流通網、純正部品、整備店との関係が広がるほど、売上のうち新艇に依存しない部分が増える。フリーダム・ボート・クラブも、船を所有することに抵抗のある若い利用者に水上レジャーを広げ、将来の購入者を育てる。
2026年第2四半期の増収は、回復が机上の希望ではないことを示した。会社は2030年の売上70〜80億ドルを掲げているが、好調な製品と既存艇向け販売が組み合わされば、その後も成長を続けられる。ナビコではシムラッドの自動操船技術や電力管理の統合が実用化し、ガーミンとの競争の中でも採用が増える。船体製造では生産規模の回復によって固定費負担が下がる。
経営が大型買収を控えて負債を減らし、残った現金を株主へ返せば、2025年の赤字から大きな利益回復が起こる。2035年には売上が100億ドルを超える可能性があり、補修部品と電子機器の利益率が改善すれば、純利益も大幅に増える。今の時価総額だけでは、その成功の可能性を十分に示せていない。
慎重な見方
高馬力のエンジンは良い商品だが、それだけで会社全体の資本配分が良いことにはならない。2021年のナビコ買収後、2024年と2025年に多額の減損を記録したことが問題の中心だ。ガーミンは電子機器で高い利益率を維持しており、ナビコは技術を揃えても同じ収益力を実現できなかった。次の新製品でも競争が続き、開発投資を増やさなければ採用を守れない。シムラッドやローランスの顧客基盤が、そのまま高い買収収益率を意味するわけではない。
補修部品も完全な独占ではない。整備店や販売店は他社製品を扱うことができ、ヤマハ、スズキ、ホンダは長年の信頼と販売網を持つ。技術の世代交代で電動化や統合制御が進めば、従来のエンジンと純正部品を中心とする収益構造にも投資負担が生じる。独自規格が顧客を囲い込むほど、船体メーカーが調達先を分散させる動きも起こりうる。
完成艇では、中古艇の存在が新艇価格の上限を決める。高い保険料、係留料、金利によって新規購入者が減れば、工場は稼働率を失い、値引きと在庫処分に追われる。過去には世界金融危機に伴って営業赤字と大規模な株価下落を経験した。2022年の利益を標準とみなした買収や設備投資は、需要の谷で損失に変わりやすい。
さらに、2025年末には純負債が20億ドルあった。金利が下がることを前提にできず、2026年の増益には関税還付という一時的な要素もある。経営者交代後に再び成長投資を優先すれば、負債が十分減らないまま次の不況を迎える恐れがある。船外機で一定のシェアを維持できても、電子機器と船体製造が構造的に弱くなれば、株主に残る利益は小さい。
どちらに重みを置いたか
長期の競争力については、マーキュリーと補修部品の強さを評価する。ただし2025年の減損、純負債20億ドル、完成艇の景気感応度は無視できず、慎重な見方をやや厚く採った。確率は楽観8%、やや楽観20%、中立33%、やや悲観25%、悲観14%である。悪い側の合計39%は、海洋産業の不況が長引く可能性と資本配分の失敗を反映したもので、AI代替リスクを重ねたものではない。
中立の2035年純利益は6.3億ドル、時価総額は約76億ドルとなる。もっとも、悲観では電子機器が再び競争に負け、船体事業も低収益が続き、株主価値の大半が失われる。資本コスト9.25%で将来の還元を含めて割り戻すと、確率加重の本質価値は約43.1億ドルで、基準時価総額とほぼ同じだ。よい事業の部分だけを見るのではなく、会社全体を所有する責任を重視した結論である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 101.11 ドル67 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 36.77 ドル24 億ドル)。 今の値に割り戻すと 65.37 ドル43 億ドル、今との差 −13.2%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 241.17 ドル159 億ドル | 69.80 ドル46 億ドル | +312.8% | +18.2% | 24.88 ドル16 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 169.06 ドル111 億ドル | 53.11 ドル35 億ドル | +194.9% | +13.6% | 44.43 ドル29 億ドル |
| 中立 | 33% | 115.39 ドル76 億ドル | 42.49 ドル28 億ドル | +109.6% | +9.2% | 52.10 ドル34 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 34.20 ドル23 億ドル | 22.76 ドル15 億ドル | −24.4% | −3.4% | 14.24 ドル9 億ドル |
| 悲観 | 14% | 9.86 ドル7 億ドル | 6.07 ドル4 億ドル | −78.9% | −16.6% | 2.23 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 101.11 ドル67 億ドル | 36.77 ドル24 億ドル | +83.0% | +7.4% | 137.88 ドル91 億ドル |
今の株価時価総額 75.34 ドル50 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 8% 楽観:マーキュリーの高馬力優位が拡大し、ナビコも収益化 利益 12 億ドル · PER 13.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 241.17 ドル159 億ドル
米国の新艇市場は数量で緩やかに回復し、高馬力エンジンへの移行が続く。マーキュリーはヤマハ発動機とスズキが強い市場でも大型艇の搭載枠を広げ、売上換算数量は2025年の12万台から17万台へ増える。平均売上相当額は高馬力化と値上げによって約1.42倍になる。推進機関の営業利益率は16%へ上がり、独立した販売店との整備関係も維持される。
補修部品は既存艇への浸透とランド・アンド・シーの流通拡大で取引換算数量が146万件へ増える。電子機器ではシムラッドの自動操船、電力管理、統合操作が造船会社に広く採用され、ナビコがガーミンとの収益格差を大きく縮める。ナビコの営業利益率は17%へ回復するが、過去の買収減損を取り消して利益に上乗せすることはしない。
完成艇は高級艇の構成比が上がり、販売店在庫も健全化する。フリーダム・ボート・クラブは会員換算12.5万件に拡大する。会社は大型買収より負債削減と自社事業への投資を優先する。GAAP純利益は2026年の約2.4億ドルから2035年の11.55億ドルへ増え、期間累計は76.75億ドルとなる。配当と買い戻しから株式報酬を引いた正味還元46億ドルを実施しても、自己資本は47.05億ドルへ積み上がる。製品開発に資本を投じたうえで株主へ利益を返せる、事業全体が強くなる筋書きである。
- 推進機関・マーキュリー:数量 170,000(推定高付加価値エンジン換算台数。実出荷台数ではない)× 価格 22,500(エンジン換算1台当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 38 億ドル・営業利益 6 億ドル。高馬力機の市場拡大とマーキュリーの搭載シェア上昇で数量換算1.42倍、価格相当額1.42倍。
- エンジン補修部品・用品流通:数量 1,460,000(年間整備・用品購入の艇換算取引件数。実際の顧客艇数ではない)× 価格 1,740(艇換算1件当たりの補修部品・流通売上相当額、ドル)→ 売上 25 億ドル・営業利益 6 億ドル。保有艇の整備頻度と販売網浸透が増え、取引量換算1.46倍。
- ナビコ・グループ:数量 350,000(航海機器・電装システム一式の推定販売換算件数)× 価格 5,100(システム換算1件当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 18 億ドル・営業利益 3 億ドル。統合航海機器と自動操船が広く採用され、ガーミンとの収益格差が縮小。
- 完成艇製造:数量 27,000(推定完成艇の高級艇換算出荷隻数)× 価格 108,000(出荷艇換算1隻当たりのメーカー売上相当額、ドル)→ 売上 29 億ドル・営業利益 3 億ドル。高級艇への構成改善と工場稼働率上昇により製造利益率が二桁へ。
- フリーダム・ボート・クラブと利用・金融サービス:数量 125,000(クラブ会員権と関連サービスを合わせた会員換算件数)× 価格 5,000(会員換算1件当たりの年間総売上相当額、ドル)→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。会員基盤が倍増し、成熟拠点の収益性と周辺金融・保証の利用が上昇。
倍率:k9.25%、2035年ROE=11.55÷47.05=24.55%、通常の堀で超過利益の残存割合1/2とし、RONICは約16.90%。gは高馬力市場の数量実質約0.5%、シェア上昇約0.5%、価格・製品構成約3%の名目合計4.0%。正当化PER=(1−0.04÷0.1690)÷(0.0925−0.04)×1.04=約15.12倍。好調でも完成艇と電子機器の循環が残るので上限の91%で13.76倍。通常の買収償却と株式報酬を含むGAAP純利益を基準とする。
確率:マーキュリーの大幅な搭載増、ナビコの利益率改善、完成艇の高収益化が同時に必要となる。会社の長期目標を大きく超える展開なので8%にとどめる。
やや楽観 20% やや楽観:高馬力と補修部品が伸び、ナビコの改善が進む 利益 9 億ドル · PER 12.9 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 169.06 ドル111 億ドル
マーキュリーの高馬力製品は米国と欧州の造船会社で採用を増やす。ヤマハ発動機との競争は続くが、製品更新と整備網によって高級艇市場のシェアを少しずつ伸ばす。推進機関の売上換算数量は15.5万台、平均売上相当額は2025年比約1.36倍となる。価格には物価上昇だけでなく大型機の構成比上昇が含まれる。
補修部品は既存艇の保守需要に支えられ、流通網の取引換算数量が135万件へ増える。ナビコはシムラッドやローランスの新製品が回復するが、ガーミンの利益率までは届かない。開発費を維持した後の営業利益率は14.5%となる。完成艇ではボストン・ホエラーなど高級ブランドが堅調で、普及価格帯は大きく伸ばさない。
フリーダム・ボート・クラブは会員換算10.5万件へ成長する。負債返済を進めたうえで配当と買い戻しを増やし、株式報酬を差し引いた正味還元は10年で35億ドルとなる。GAAP純利益は2026年の約2.2億ドルから2035年の8.65億ドルへ伸び、途中の利益累計は59.25億ドルとなる。自己資本は40.55億ドルへ積み上がる。事業は強くなるが、ナビコと完成艇が常に高収益という前提にはしない。
- 推進機関・マーキュリー:数量 155,000(推定高付加価値エンジン換算台数。実出荷台数ではない)× 価格 21,700(エンジン換算1台当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 34 億ドル・営業利益 5 億ドル。高馬力市場で選好され、数量換算が約29%増加。
- エンジン補修部品・用品流通:数量 1,350,000(年間整備・用品購入の艇換算取引件数。実際の顧客艇数ではない)× 価格 1,710(艇換算1件当たりの補修部品・流通売上相当額、ドル)→ 売上 23 億ドル・営業利益 5 億ドル。既存艇の整備と卸売りシェアの増加が続く。
- ナビコ・グループ:数量 300,000(航海機器・電装システム一式の推定販売換算件数)× 価格 4,970(システム換算1件当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 15 億ドル・営業利益 2 億ドル。ガーミンとの競争を続けながら製品刷新と原価低減に成功。
- 完成艇製造:数量 25,000(推定完成艇の高級艇換算出荷隻数)× 価格 101,000(出荷艇換算1隻当たりのメーカー売上相当額、ドル)→ 売上 25 億ドル・営業利益 3 億ドル。高級艇の需要が戻り、工場稼働率が改善。
- フリーダム・ボート・クラブと利用・金融サービス:数量 105,000(クラブ会員権と関連サービスを合わせた会員換算件数)× 価格 4,890(会員換算1件当たりの年間総売上相当額、ドル)→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。拠点を増やしつつ会員の継続率と関連サービス利用を改善。
倍率:k9.25%、2035年ROE=8.65÷40.55=21.33%、堀は通常で残存割合1/2、RONIC約15.29%。gは成熟した船舶市場の実質数量約0%、シェア改善約0.3%、価格・商品構成約3.5%の合計3.8%。正当化PER上限は(1−0.038÷0.1529)÷(0.0925−0.038)×1.038=約14.31倍。ナビコの競争と完成艇の固定費を考慮し90%の12.88倍。
確率:マーキュリーの製品力と補修流通の実績があり、会社の2030年目標も後押しする。ただし2025年の減損を踏まえて20%とする。
中立 33% 中立:補修部品が支え、新艇が緩やかに回復 利益 6 億ドル · PER 12.1 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 115.39 ドル76 億ドル
米国の船外機市場は高金利の下で数量がほぼ横ばいとなるが、マーキュリーは高馬力製品と造船会社との関係によってシェアを緩やかに増やす。推進機関の売上換算数量は14.5万台となる。平均売上相当額は10年で1.34倍へ上がるが、これは名目物価約1.41倍をやや下回る。ヤマハ発動機とスズキの競争が続くため、値上げをすべて押し通せるわけではない。
補修部品は新艇の販売台数より既存艇の稼働に左右されるため、取引換算数量が125万件へ増える。ランド・アンド・シーの流通網が少しずつシェアを取る。ナビコは製品刷新と販売先の拡大によって黒字化するが、ガーミンほどの利益率には達しない。完成艇は販売店在庫が正常化するものの、構造的な高成長市場には戻らず、工場の固定費を慎重に管理する。
フリーダム・ボート・クラブは会員換算9.5万件まで拡大する。2026年の利益回復後も設備投資と研究開発を続け、2030年の純利益は約4.3億ドル、2035年には6.3億ドルに達する。10年間のGAAP純利益累計は44.6億ドルで、株式報酬を差し引いた配当と自社株買いの正味還元は28億ドルである。その結果、自己資本は32.9億ドルになる。ナビコの買収償却を利益へ足し戻さず、借り換え負担も反映した姿だ。市場の大幅な拡大ではなく、補修部品の反復需要と既存製品の採算回復で価値を作る。
- 推進機関・マーキュリー:数量 145,000(推定高付加価値エンジン換算台数。実出荷台数ではない)× 価格 21,300(エンジン換算1台当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 31 億ドル・営業利益 4 億ドル。市場の実質台数はほぼ横ばいだがマーキュリーがシェアを取り、平均単価は物価をやや下回る。
- エンジン補修部品・用品流通:数量 1,250,000(年間整備・用品購入の艇換算取引件数。実際の顧客艇数ではない)× 価格 1,680(艇換算1件当たりの補修部品・流通売上相当額、ドル)→ 売上 21 億ドル・営業利益 4 億ドル。既存艇向け整備とランド・アンド・シーの浸透により取引換算数量が25%増加。
- ナビコ・グループ:数量 270,000(航海機器・電装システム一式の推定販売換算件数)× 価格 4,950(システム換算1件当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 13 億ドル・営業利益 2 億ドル。統合航海機器の採用が増えるが、ガーミンとの競争で高収益化には限界。
- 完成艇製造:数量 22,000(推定完成艇の高級艇換算出荷隻数)× 価格 99,500(出荷艇換算1隻当たりのメーカー売上相当額、ドル)→ 売上 22 億ドル・営業利益 2 億ドル。完成艇の実質需要は緩慢な回復にとどまり、利益率は一桁後半。
- フリーダム・ボート・クラブと利用・金融サービス:数量 95,000(クラブ会員権と関連サービスを合わせた会員換算件数)× 価格 4,800(会員換算1件当たりの年間総売上相当額、ドル)→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。会員制の拠点拡大が進み、利用と保証などの周辺事業も成長。
倍率:k9.25%、2035年ROE=6.30÷32.90=19.15%。過去10年のROE中央値18.0%を大きく超える想定ではない。堀は会社全体では通常で残存割合1/2、RONICは約14.20%。gは船舶関連の市場数量実質0%、シェア獲得約0.2%、価格・構成改善約3.3%の合計3.5%。正当化PER=(1−0.035÷0.1420)÷(0.0925−0.035)×1.035=約13.56倍。循環とナビコの不確実性から上限の89%に相当する12.07倍とする。市場の現在倍率は使わず、GAAP純利益に掛ける。
確率:2026年の増収と会社の2030年計画には根拠があるが、2022年の利益の山を繰り返すとは限らない。既存艇向け需要の底堅さを重視して33%。
やや悲観 25% やや悲観:船体の低収益が続き、電子機器も苦戦 利益 3 億ドル · PER 8.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 34.20 ドル23 億ドル
米国の新艇市場は2026年にいったん持ち直すが、購入者の負担はその後も重い。マーキュリーは製品力を保つものの、ヤマハ発動機とスズキとの価格競争によって高馬力市場でのシェア拡大が鈍る。推進機関の売上換算数量は12.6万台にとどまり、名目単価も物価上昇に十分追いつかない。製造工場の稼働率が低いため営業利益率は10%まで下がる。
補修部品は引き続き利益を生むが、整備店で他社製品が採用され、卸売り価格にも競争が生じる。ナビコではシムラッドやローランスの新製品がガーミンの採用を十分に奪えず、開発費の負担が続く。完成艇の需要は低調で、高級艇の比率を上げても工場固定費を賄う力が弱い。フリーダム・ボート・クラブは会員を増やすが、拠点維持費も上がるため収益性の改善が限定される。
売上は72.4億ドル、営業利益は約5.0億ドルへとどまり、2035年のGAAP純利益は2.55億ドルである。利益は2030年前後に一度改善してから競争で鈍り、10年間の累計は24.85億ドルとなる。負債返済を優先するため株式報酬控除後の正味還元は15億ドルにとどめ、自己資本は26.15億ドルとなる。利益が残る会社ではあるが、成長投資の収益率が資本コストへ近づき、株主の取り分は大きく減る。
- 推進機関・マーキュリー:数量 126,000(推定高付加価値エンジン換算台数。実出荷台数ではない)× 価格 19,700(エンジン換算1台当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 25 億ドル・営業利益 2 億ドル。競合との価格競争で高馬力化の利益を取り切れず、数量も伸び悩む。
- エンジン補修部品・用品流通:数量 1,080,000(年間整備・用品購入の艇換算取引件数。実際の顧客艇数ではない)× 価格 1,620(艇換算1件当たりの補修部品・流通売上相当額、ドル)→ 売上 17 億ドル・営業利益 3 億ドル。整備需要は残るが他社品との競争で流通利益率が低下。
- ナビコ・グループ:数量 210,000(航海機器・電装システム一式の推定販売換算件数)× 価格 4,520(システム換算1件当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。製品更新への投資が重く、ガーミンとの競争で利益率が低迷。
- 完成艇製造:数量 18,500(推定完成艇の高級艇換算出荷隻数)× 価格 92,700(出荷艇換算1隻当たりのメーカー売上相当額、ドル)→ 売上 17 億ドル・営業利益 1 億ドル。販売店の在庫調整と中古艇競争により工場稼働率が低い。
- フリーダム・ボート・クラブと利用・金融サービス:数量 78,000(クラブ会員権と関連サービスを合わせた会員換算件数)× 価格 4,450(会員換算1件当たりの年間総売上相当額、ドル)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。拠点拡大は続くが会員獲得費と艇の維持費が重い。
倍率:k9.25%、2035年ROE=2.55÷26.15=9.75%、残存割合1/2でRONICは約9.50%。gは数量実質マイナス0.5%、シェア変化0%、価格上昇約3.0%の合計2.5%。正当化PERの上限は(1−0.025÷0.0950)÷(0.0925−0.025)×1.025=約11.19倍となる。低い増分資本利益率と完成艇の循環を反映して79%の8.84倍とする。中立の12.07倍より低く、現状の市場倍率を根拠にはしない。
確率:高金利と中古艇競争で船体製造の回復が弱く、ナビコの投下資本回収が遅れる可能性は小さくない。2025年の減損実績を踏まえて25%。
悲観 14% 悲観:電子機器で構造的に負け、新艇製造が低収益化 利益 1 億ドル · PBR 0.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 9.86 ドル7 億ドル
新艇市場は高金利、所有費用の上昇、中古艇への需要移行によって縮む。ヤマハ発動機とスズキが高馬力製品で強い競争を仕掛け、マーキュリーは主要造船会社の一部の搭載枠を失う。推進機関の売上換算数量は10万台に低下し、平均売上相当額も10年間の物価上昇を大きく下回る。補修部品は既存艇の維持で利益を残すが、独立整備店での他社部品の浸透により価格決定力が弱まる。
ナビコはガーミンなどに製品更新と販路で後れを取り、競争に必要な開発費を削れず低採算に陥る。自動操船技術も差別化の利益につながらず、既存製品の置き換えを迫られる。完成艇は保有ブランドを整理し、工場を縮小しても固定費を十分回収できない。フリーダム・ボート・クラブは存続するが、拠点の閉鎖と保有艇の維持費によって会員数の伸びが鈍る。
2028年には電子機器と船体事業で追加の減損が発生し、その後も赤字期間が続くと考える。10年間のGAAP純利益の累計はマイナス1.7億ドルとなる。会社は配当を大幅に減らし、買い戻しを停止する年もある。正味還元は期間全体で4億ドルにとどまり、2035年の自己資本は10.6億ドルまで縮む。最後には補修部品とマーキュリーの存続事業で純利益0.55億ドルを確保するが、ROEは資本コストを下回る。残る流通網、在庫、現金、設備を保守的に現金化した価値は6.5億ドル程度であり、継続事業の稼ぐ力を評価した価値よりやや大きい。過去の帳簿倍率には頼らず、売却可能資産の税引後回収額を株主価値の床とする。2035年の時価総額と期間中の正味還元を合わせても10.5億ドルにとどまり、現在の株主価値は大きく毀損される。
- 推進機関・マーキュリー:数量 100,000(推定高付加価値エンジン換算台数。実出荷台数ではない)× 価格 17,500(エンジン換算1台当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 18 億ドル・営業利益 1 億ドル。ヤマハやスズキに搭載シェアを失い、値上げも原価上昇に追いつかない。
- エンジン補修部品・用品流通:数量 950,000(年間整備・用品購入の艇換算取引件数。実際の顧客艇数ではない)× 価格 1,500(艇換算1件当たりの補修部品・流通売上相当額、ドル)→ 売上 14 億ドル・営業利益 2 億ドル。整備需要は残るが独立系流通との価格競争で利幅を失う。
- ナビコ・グループ:数量 160,000(航海機器・電装システム一式の推定販売換算件数)× 価格 4,050(システム換算1件当たりの平均売上相当額、ドル)→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。航海機器の競争に敗れ、製品開発費を回収できない。
- 完成艇製造:数量 12,500(推定完成艇の高級艇換算出荷隻数)× 価格 88,000(出荷艇換算1隻当たりのメーカー売上相当額、ドル)→ 売上 11 億ドル・営業利益 0 億ドル。工場集約後も稼働率が低く、完成艇はほぼ損益均衡。
- フリーダム・ボート・クラブと利用・金融サービス:数量 62,000(クラブ会員権と関連サービスを合わせた会員換算件数)× 価格 4,100(会員換算1件当たりの年間総売上相当額、ドル)→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。不採算拠点の整理により会員数はほぼ横ばい。
倍率:SCHEMA §1-3に従い、悲観の株主価値は継続事業の稼ぐ力と売却可能資産の税引後価値を比較して決める。2035年の純利益0.55億ドルを資本コスト9.25%で資本還元した稼ぐ力は0.55÷0.0925=約5.95億ドルとなる。これに対して、純現金と売却可能資産を負債・税・清算費用控除後で評価した床は6.5億ドルであり、こちらが大きい。したがって時価総額は6.5億ドルとする。表示上のPBR0.6132075472倍は、この6.5億ドルを2035年の減損後自己資本10.6億ドルで割った換算値であり、過去のPBRの底や谷から決めた倍率ではない。ROEは0.55÷10.6=約5.2%とk9.25%を下回るため、帳簿純資産をそのまま全額評価することも避ける。
確率:過去には世界金融危機に深い損失を経験し、ナビコは直近2年にも減損が続いた。事業消滅は前提とせず、構造的な競争敗北の可能性に14%を与える。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
推進機関・マーキュリー
船外機、船内外機、電子制御装置、プロペラなどを製造し、造船会社と販売店へ供給する。高馬力エンジンの製品構成と整備網が競争力の中心である。
| 数量推定高付加価値エンジン換算台数。実出荷台数ではない | 価格エンジン換算1台当たりの平均売上相当額、ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 120,000 | 15,900 | 19 | 2 |
| 10 年後 中立 | 145,000 | 21,300 | 31 | 4 |
取り方:2025年10-Kの推進機関の社外向け純売上19.081億ドルを基準とする。実際の世界出荷台数と平均卸売単価は全製品で一体開示されないため、2025年の米国船外機小売26.7万台、平均小売価格約1.31万ドルというNMMA統計と、高馬力・船内外機・電子制御品を含む製品構成を照合し、12万台、1万5900ドルという売上換算の仮想単位に変換した。米国市場の台数や世界シェアをこの12万台から直接推計しない。営業利益1.93億ドルは10-KのGAAP部門利益に基づく。NMMA資料:https://www.nmma.org/press/article/25461
エンジン補修部品・用品流通
マーキュリー純正部品、消耗品、海洋用品、ランド・アンド・シーの広域卸売りを担う。既存艇の保守による反復需要を獲得する。
| 数量年間整備・用品購入の艇換算取引件数。実際の顧客艇数ではない | 価格艇換算1件当たりの補修部品・流通売上相当額、ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000,000 | 1,210 | 12 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,250,000 | 1,680 | 21 | 4 |
取り方:2025年10-KのEngine Parts & Accessories純売上12.101億ドル、営業利益2.203億ドルを基準とする。部品の個数、整備来店件数、卸売り先の購入件数を会社は合算開示していない。年間100万件は実際の顧客数ではなく、広域の保有艇市場と海洋用品卸を一つの単位に直すための取引量指数である。単価1210ドルは部品売上と卸売り売上を含むため、個人が一年に整備へ支払う額と同一ではない。会社が公表するランド・アンド・シーの流通市場シェア4割強を成長余地の参考にする。
ナビコ・グループ
シムラッド、ローランス、B&Gなどの航海機器と、電力管理・船内電子制御製品を供給する。ガーミンなどとの競争と開発費が収益を左右する。
| 数量航海機器・電装システム一式の推定販売換算件数 | 価格システム換算1件当たりの平均売上相当額、ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200,000 | 3,600 | 7 | 0 |
| 10 年後 中立 | 270,000 | 4,950 | 13 | 2 |
取り方:2025年10-Kのナビコ社外向け純売上7.205億ドルを使用する。航海計器、電力管理、船内配線などを含み、単一機器の実台数は公表されていないため、20万システム換算と3600ドルの平均売上相当額を仮定した。2025年のGAAP営業損失は3.396億ドルだが、大部分に買収資産減損が含まれる。ここでの営業損失0.05億ドルは大型減損等を除いた通常事業のGAAPに近い稼ぐ力を捉えるための推定値であり、実際のGAAP部門利益ではない。通常の買収償却は将来予想で再び費用に含める。
完成艇製造
ボストン・ホエラー、シーレイ、ベイライナーなどの船体を製造・販売する。高級艇の製品構成と工場稼働率が利益率を決める。
| 数量推定完成艇の高級艇換算出荷隻数 | 価格出荷艇換算1隻当たりのメーカー売上相当額、ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 18,000 | 73,000 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 22,000 | 99,500 | 22 | 2 |
取り方:2025年のBoatセグメント純売上15.241億ドルから、Business Accelerationが約14%を占めるという10-Kの開示に基づいて約2.089億ドルを除き、船体製造の売上を13.152億ドルと推定した。船種ごとの出荷隻数と卸売単価が一体開示されないため、1万8000隻と7万3000ドルを高級艇換算の仮想単位として採用した。地域や船種が異なる米国市場統計から正確な市場シェアは計算できない。部門営業利益3,220万ドルを、製造0.282億ドルと会員制その他0.040億ドルへ按分した額は分析上の推定である。
フリーダム・ボート・クラブと利用・金融サービス
会員制ボート利用、フランチャイズ、販売店金融、延長保証、中古艇取引などの新しい利用モデルを提供する。
| 数量クラブ会員権と関連サービスを合わせた会員換算件数 | 価格会員換算1件当たりの年間総売上相当額、ドル | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60,000 | 3,482 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 95,000 | 4,800 | 5 | 1 |
取り方:2025年10-KによるとBusiness AccelerationはBoat部門売上の約14%、フリーダム・ボート・クラブは約440拠点と6万超の会員権を持つ。この14%をBoat部門純売上15.241億ドルへ適用して2.089億ドルと推定した。6万件で割った3482ドルは会費そのものではなく、金融・保証・中古艇など他の事業を含む会員換算の総売上額である。営業利益0.04億ドルは単独開示がないため保守的に推定した。
リスクと懸念
新艇需要と販売店在庫の循環
新艇は金利、家計の資産価値、保険料、係留費に左右される高額な耐久消費財である。消費者の購入が減ると販売店が発注を止め、メーカーの工場稼働率が低下する。2008〜2009年の業績悪化は、需要が大きく落ちた際に固定費が利益を急激に削ることを示している。2026年の販売回復が最終需要によるものか、在庫補充によるものかを区別する必要がある。
ナビコの競争と買収減損
ナビコでは2024年と2025年に続けて大きな減損が発生した。航海計器はガーミン、レイマリン、フルノなどと競争しており、新製品の投入とソフトウェア更新に継続投資が必要である。2026年に増収へ転じても、GAAP利益と追加投資を差し引いた現金収益が回復しなければ、過去の買収が株主価値を増やしたとは言えない。
純負債と借り換え金利
2025年末の純有利子負債は20億ドル、現金等は2.8億ドルである。海洋産業の不況で営業利益が縮むと、利息と借入返済の負担が重くなる。長期の前提では借り換え金利を約5.75%とし、従来の低金利借入へ永続的に依存しない。フリーキャッシュフローの回復分を大型買収や過剰な自社株買いに回すと、安全余裕が十分に回復しない。
マーキュリーのシェアと値決め力
マーキュリーの高馬力エンジンは有力だが、ヤマハ発動機、スズキ、ホンダなどが継続的に製品開発を進めている。展示会で高い搭載率を記録しても、世界市場全体で同じシェアを獲得したわけではない。船体メーカーが調達先を分散させれば、数量成長は鈍る。原材料費、関税、排ガス規制対応の費用を販売価格へ十分に転嫁できなければ、強い製品の利益も減る。
補修部品の流通競争
既存艇の整備は比較的安定した需要だが、純正部品だけでなく独立系の消耗品と競合する。ランド・アンド・シーの流通シェアは特定の卸売り市場での強みを示すもので、世界の全部品市場を支配しているわけではない。販売店が仕入れ先を増やし、価格比較を容易にすると、取引量が増えても粗利益率が低下する可能性がある。
経営者交代と再投資の質
2027年に最高経営責任者が交代する。技術とナビコに詳しい経営者が既存の問題を立て直す可能性がある一方、成長を急ぐ大型買収へ向かう危険もある。過去の減損を考えると、買収後のROICと現金回収、負債倍率を継続して確かめたい。株式報酬を打ち消す買い戻しを株主への純還元と混同しないことも必要だ。
電動化・自動操船・環境規制
電動船外機、自動操船、統合電装、排ガスや水域の利用規制は10年間の製品競争を変える可能性がある。マーキュリーが既存の技術を更新できれば高付加価値化の機会だが、新たな電池や制御システムが従来の部品収益を減らすこともある。AIエージェントによる席課金ソフトの代替は事業に該当しないものの、航海システムの技術革新には競争上の影響がある。
今後の分かれ目
- 2026年から2028年にかけてマーキュリーの高馬力搭載シェアが継続的に上がり、利益率も改善する
- 数量増が販売店在庫の回復だけでなく競争力によるものと判断でき、やや楽観と楽観の確率を上げる。
- エンジン補修部品の販売数量が新艇市場を継続的に上回って伸び、営業利益率20%以上を維持する
- 既存艇の継続需要と流通網の堀が確認できるため、中立の利益確度を高める。
- ナビコのGAAP営業利益が通常の買収償却後も安定して黒字化し、追加減損が止まる
- 過去の買収の失敗からの改善が進んだと判断し、中立のナビコ利益率の達成可能性を高める。
- 2027年以降も完成艇の販売店在庫が高止まりし、新艇の値引きと工場休止が続く
- 単なる景気の谷でなく市場の構造的縮小を疑い、やや悲観と悲観へ確率を移す。
- 2030年までに会社が掲げた売上70〜80億ドルと営業利益率10〜13%を、買収依存ではなく達成する
- 数量と価格の成長が会社計画に沿っている証拠となり、10年後の利益予測の下振れリスクが減る。
- 純有利子負債が着実に減り、追加買収なしで利益とフリーキャッシュフローが増える
- 借り換えへの脆弱性が下がり、将来の配当と正味自社株買いを厚く評価できる。
- 新経営陣が大型買収を再開し、投下資本利益率とフリーキャッシュフローが悪化する
- ナビコ買収の問題が繰り返される恐れがあり、長期の成長率だけでなく株主還元の見積もりを引き下げる。
見ておくもの
- 米国の船外機小売台数と高馬力機の構成比、マーキュリーの実際の市場シェア
- 推進機関の数量変化、製品構成・価格変化、セグメント営業利益率
- 補修部品の数量成長、ランド・アンド・シーの流通シェア、利益率
- ナビコのGAAP営業利益、通常の買収償却、製品開発費、追加減損
- 完成艇の出荷数量と平均販売単価、販売店の在庫日数、工場稼働率
- フリーダム・ボート・クラブの会員権数と拠点数、会員継続率
- 純有利子負債とフリーキャッシュフロー、株式報酬控除後の正味株主還元
- 2027年の経営者交代後の買収方針と投下資本利益率
- 2026年10月29日公表予定の第3四半期決算と通期ガイダンスの改定
倍率と資本コストの決め方
評価は2026年10月23日の株価や現在・過去のPERを使わず、各事業の実質数量、名目価格、営業利益率から2035年のGAAP利益を積み上げた。資本コスト9.25%は米国株の基本8.0%と景気循環・値決め力・負債・寿命によるqualityの合計である。倍率はROEの超過収益が将来の増分投資で薄まる正当化PERから求め、10年目利益用に翌年成長分を加えた。中立12.07倍は式による上限13.56倍の約89%で、株価へ合わせた逆算ではない。悲観は2035年の継続事業の稼ぐ力約5.95億ドルと、売却可能資産の税引後回収額6.5億ドルを比較し、大きい方の6.5億ドルを時価総額とした。悲観のPBR約0.6132倍は、この資産価値を減損後の自己資本で割った表示上の換算値であり、過去の谷のPBRから選んだ数字ではない。2025年の減損と資料上の営業利益の定義の違いは明示し、将来純利益に一過性の関税還付や通常の買収償却の足し戻しを含めない。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本資本コスト8.0%にqualityプラス1.25%を加え、kは9.25%。βや市場のPERからは計算しない。ガーミンの8.5%、ハスブロの9.0%、デッカーズの9.2%に対し、ブランズウィックは船舶ローンと販売店在庫に左右され、純負債も大きいため高めとなる。存続を直ちに疑う状態ではないのでdistress上乗せは設けず、ナビコの買収リスクは筋書きの利益率と確率で扱う。