結論
トラクター・サプライは、ペット・畜産・庭・車・補修・作業着など農村と郊外の暮らしの用品を、米国 49 州の約 2,460 店(ほかに小型ペット店ペットセンス約 210 店)で売る米国最大の農村向け専門小売である。2025 年(12 月期)は売上 155 億ドル(+4.3%)、既存店 +1.2%、営業利益率 9.5%、純利益 11.0 億ドル。帳簿の ROE は 42% と高い。自社株買いで自己資本が縮んだ数字だ。倍率には 10 年後の筋書きの ROE(中立 33% 前後)を使った。2026 年は 4〜6 月の既存店が −1.5%(客数 −1.7%)に落ち、通期の既存店見通しは −1〜0%、営業利益率は GAAP で 8.0〜8.3%、ペットセンス約 75 店の閉鎖費用を計上し、2024 年 12 月に掲げた長期目標(売上 +6〜8%・利益率 10〜10.5%)を取り下げた。10 年の中立の筋書きは、市場が実質で年 +0.6%、シェアが出店で 1.08 倍、価格が物価並みの 1.41 倍で売上は約 248 億ドル、営業利益率は 9.0%、純利益は約 15 億ドル。資本コストは 8.75%(基本 8.0% + quality +0.75%。景気に強いが、リースと自社株買いで負債が重い)。利益ベースの倍率(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k))は上限 17.0 倍で、その 85% の約 14.4 倍を使った。結論はやや割高だ。確率で重みをつけた価値は今の時価総額を約 20% 下回る。中立の 10 年の年率は +5.9% で資本コストに届かない。一方、利益率が 2021 年の 10.8% から下がり続けており、地方に入るウォルマート・アマゾンへの客数流出が悲観の筋書きの中心である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見る点は三つある。第一に、10 年後もこの事業は存在し、今より強いか。農村の暮らしの消耗品は景気が悪くても買われ、店の近さは簡単に複製できないので存在は確かだが、堀は中程度で、ウォルマート・アマゾンが地方の汎用品に入るほど専門店の守る範囲は狭まる。第二に、オーナー利益(株主のものになる利益)。純利益 11 億ドルのうち、成長の元手(出店と配送網)に回る分を除いて配当と自社株買いが出せるが、2026 年は利益が減る一方で還元が利益と同額になり、借入が増えている。利益の質は、株式報酬が小さく(年 1 億ドル弱、推定)悪くない。第三に、資本配分。出店と自社株買いの規律は優れるが、ペットセンスの買収の失敗と、株価が高かった 2021〜24 年の自社株買いは価値を削った。今の PER は 16 倍で過去 20 期の中央(23 倍)より低く、一見有利に見えるが、利益ベースの式の中立は約 14.4 倍と今より低く安全域は薄く、利益率が 5 年続けて下がっている事実が最大の不確実性で、確信度は中程度。バリュー投資家なら、良い事業が売上の鈍さで割り引かれている局面として注目するが、2026 年 10 月の第 3 四半期決算と、年末に出る長期目標の出し直しを見て、利益率が下げ止まったかを確かめたい。
何で稼ぐ会社か
売上の柱は、ペット・畜産の消耗品(フード・飼料・薬)、メンテナンス用品(フェンス・ホース・燃料・車の補修)、季節品(庭・暖房・発電機・小型の農機具)、衣料・靴、そして商品を積んだ配送と電子商取引である。店は人口 5 万人以下の町や郊外の大型店(敷地内の屋外売り場つき)が中心で、会員制度(ネオ・ペット会員)や配送の拡大、ペット薬局(2024 年に買収したアリベット(Allivet))、法人向け、地域ごとの品ぞろえ、小売媒体事業など、2024 年 12 月の投資家説明会の『ライフ・アウト・ヒア 2030』で並べた施策が続く。店数は 2026 年 6 月末で 2,463 店、長期目標は 3,200 店(会社の推定市場は 2,250 億ドル)。ペットセンスは 2016 年に買収した小型ペット店で約 209 店、2026 年 7 月に約 75 店の閉鎖を決め、減損など 0.66 億ドルを計上した。収益の形は、粗利益率 36.4%(2025 年)から販管費率 27.0% を引いて営業利益率 9.5% 前後で、店の賃料・人件費・配送網が固定費として重い。需要は、消耗品(フード・飼料・燃料)が景気に強く、季節品や高額品(発電機・大型の庭用品)は天候・燃料価格・家計に左右される。輸入品は売上の約 11% で、関税の影響は家具や衣料の小売より小さい。設備投資は売上の 4% 前後(新店・配送網)、稼いだ現金は配当(年約 5 億ドル)と自社株買い(年 4〜8 億ドル)に回す。
優良さと弱いところ
優良さの核は三つある。第一に、立地と専門性である。人口の少ない町では、ペットフード・飼料・フェンス・作業着を一度にそろえられる大型店がほぼ唯一で、競合が出店しにくい。第二に、消耗品の比率の高さである。ペット・畜産・燃料などの繰り返し買う品が売上の大半を占め、リーマンの 2008〜09 年でも営業利益率は 4.5〜5.8% の黒字を保った。第三に、20 年以上続けてきた出店と自社株買いの規律で、1 株の価値を年 8% 前後増やしてきた。弱い所もはっきりしている。(1)営業利益率が 2021 年の 10.8% から 2025 年の 9.4% へ、2026 年は 8% 台へと 5 年連続で下がり、売上を伸ばしても利益が付いてこない(2025 年は販管費率が 26.4% から 27.0% に上がった)。(2)既存店の客数は 2026 年 4〜6 月に −1.7%、売上は出店で支えられており、店ごとの需要の伸びは弱い。(3)価格を決める力は中程度で、ペットフードやフェンスなど多くの品はウォルマート・アマゾン・ホームセンターでも買える。(4)ペットセンスの閉鎖は、買収で価値を壊した実例になった。(5)2026 年に自ら長期目標を取り下げ、経営の見通しの精度が試されている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の農村・暮らし向け小売の市場は、会社の推定で約 2,250 億ドル(2024 年)。ペット(約 1,500 億ドル規模)・畜産・庭・補修用品が混ざり、名目で年 +3〜5% だが、物価 3.5% を除くと実質 0〜+1% である。2026 年は、ガソリン高・干ばつ(南東部)・低所得層の節約で、季節品と高額品が弱く(5 月が最も悪い)、ペット・畜産の消耗品は底堅いが、ペット(愛玩動物)部門は全体より低く推移した。競合は五つに分かれる。(1)ウォルマート(Walmart)・ターゲット:農村の店でペットフード・園芸・衣料の汎用品を安く売る。(2)アマゾン(Amazon):地方の配送網に 40 億ドル超を投じると発表し、ペットの消耗品を翌日配送する。(3)ホームセンターのロウズ(Lowe's)・ホームデポ(Home Depot):庭・補修・季節品。(4)地域の農場・牧場用品店のルーラル・キング(Rural King、約 130 店)・フリート・ファーム(Fleet Farm)など:店数は少ないがトラクターを売る店もある。(5)ペットのチェーン(ペトコ(Petco))とネット(チューイ(Chewy)):ペットフードと薬。10 年の構造は、(1)ペットの高齢化と高単価化(薬・健康食)、(2)小規模の畜産・庭の趣味の増加、(3)地方の配送の競争激化、(4)人件費が物価を上回って上がること、の 4 点。関税は今の水準が続くと置く(2026 年は関税関連の追い風で粗利益率が上がった)。
資本政策と M&A
還元は配当(年約 5 億ドル、2025 年も増配を続ける)と自社株買い(2025 年 4 〜 8 億ドル、株数は年 1〜2% 減)が中心で、2026 年上期も配当 2.5 億ドル、自社株買い 2.5 億ドルを実施した。ただし利益は 2026 年に減る見込みで、還元は純利益とほぼ同額になり、有利子負債が 2026 年 6 月末で 21.5 億ドルに増えた(1 年前は 16.7 億ドル)。リースを含む純負債は 58 億ドルで時価総額の約 3 割と、負債の補正が効き始める水準である。買収は、ペットセンス(2016 年)で価値を壊し、アリベット(2024 年・ペット薬のネット販売)は成長の枠を広げる位置づけ。出店は年 80〜100 店のペースを保つが、投資の回収は店ごとの売上が落ちると遅れる。会社は 2026 年 12 月期の決算(2027 年 2 月)で長期目標を出し直す予定。TOB・再編の可能性は小さい(時価総額約 170 億ドル)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
トラクターサプライは、人口の少ない町で唯一の大型専門店であり、ペット・畜産・燃料の消耗品が売上の大半を占める景気に強い事業である。2008〜09 年でも黒字を保ち、2020 年のコロナ後は売上を 2 割伸ばして定着させた。2025 年は売上 +4.3%、既存店 +1.2%、営業利益 14.7 億ドルを保ち、2026 年に弱いのは、燃料価格が春の最盛期に重なったことと南東部の干ばつという一時的な要因である。5 月が悪く、4 月と 6 月は既存店が正だった。ペットセンス約 75 店の閉鎖は、弱い事業の整理で、全社の利益を押し上げる方向。会社は 3,200 店まで年約 90 店を出し続け、会員・配送・ペット薬局・法人向けで 1 店あたりの売上を伸ばす計画で、2,250 億ドルの市場に対しシェアは 7% に届かず、伸びしろは大きい。粗利益率は関税の追い風と自社ブランドで上がっており、販管費の効率化が戻れば利益率は 10% に戻る。ROE は 3 割前後で還元に回せる割合が大きく、地方でのウォルマート・アマゾンとの競争は、農場・牧場・ペット薬など専門品の領域では効かない。
慎重な見方
利益率は 5 年連続で下がっている。2021 年の 10.8% から 2025 年は 9.4% へ、2026 年は GAAP で 8.0〜8.3%。売上は出店で伸びているが、既存店の客数は 2026 年 4〜6 月に −1.7%、客単価は +0.2% で、店ごとの需要は弱い。会社自身が 2026 年に通期見通しを下げ、2024 年に掲げた長期目標(売上 +6〜8%・利益率 10〜10.5%)を取り下げたことが、計画の精度の低さを示す。2026 年の弱さを天候と燃料価格のせいにするが、消耗品が強いはずの事業でペット部門が会社平均を下回ったのは、ウォルマート・アマゾン・チューイへの客数流出の兆しである。アマゾンは地方の配送網に 40 億ドル超を投じ、ペットフードの翌日配送を地方に広げる。出店は 2,460 店から 3,200 店へ増やしても、既存の店の客を食う面があり、新店の投資の回収が遅れる。純負債は 58 億ドルで時価総額の 3 割に達し、2026 年は利益が減るのに配当と自社株買いを同額続けて借入が増えている。リーマンで株価は −44% だった。ペットセンスの買収の失敗は資本配分の質への疑問も生む。
どちらに重みを置いたか
両方に理がある。強気の見方は、消耗品の強さと立地の堀、2025 年までの利益の安定で、2026 年の落ち込みの一部が一時的という点に強みがある。慎重な見方は、利益率の 5 年連続の低下と客数減、会社が目標を取り下げた事実に強みがあり、構造的な悲観の筋書きを支える。10 年は中立の筋書き(市場は小さく伸び、シェア微増、利益率 9.0%)が最も確からしいと見て 35% を置き、楽観・やや楽観に合計 25%、やや悲観・悲観に合計 40% と、悲観側に寄せた。事業の質は高く、悲観でも赤字にはならないが、利益率の下げ止まりが確認されていない間は、楽観側に確率を厚く置かない。 利益ベースの倍率(資本コスト 8.75%、上限 17.0 倍の 85% で中立は約 14.4 倍)では、総合はやや割高(差 -20%)で、今の値段は先の利益率の回復を一部先取りしている。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 36.10 ドル192 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 16.55 ドル88 億ドル)。 今の値に割り戻すと 26.49 ドル141 億ドル、今との差 −23.7%、 期待の年率 +4.2%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 62.67 ドル334 億ドル | 18.23 ドル97 億ドル | +132.9% | +8.8% | 5.66 ドル30 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 50.53 ドル269 億ドル | 17.66 ドル94 億ドル | +96.3% | +7.0% | 12.27 ドル65 億ドル |
| 中立 | 35% | 41.81 ドル223 億ドル | 17.29 ドル92 億ドル | +70.2% | +5.5% | 20.68 ドル110 億ドル |
| やや悲観 | 26% | 24.73 ドル132 億ドル | 17.29 ドル92 億ドル | +21.0% | +1.9% | 10.92 ドル58 億ドル |
| 悲観 | 14% | 11.12 ドル59 億ドル | 11.09 ドル59 億ドル | −36.0% | −4.4% | 3.11 ドル17 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 36.10 ドル192 億ドル | 16.55 ドル88 億ドル | +51.6% | +4.2% | 52.65 ドル280 億ドル |
今の株価時価総額 34.73 ドル185 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 楽観:出店が計画どおり 3,000 店超まで進み、利益率 10.5% へ 利益 21 億ドル · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 62.67 ドル334 億ドル
農村・郊外の暮らし(ペット・畜産・庭・車・補修)の需要が実質で年 +1.1%(10 年で 1.11 倍。ペットの高齢化・小規模飼育の増加)、出店が 3,000 店を超え、会員・配送・ペット薬局(アリベット(Allivet))・法人向けが加わりシェアは 1.14 倍、価格は物価 1.41 倍にペット薬など高単価品の寄与で 1.43 倍。トラクターサプライの売上は 271 億ドル、ペットセンスは 7.4 億ドル、全体 278 億ドル(年 6.0%)。営業利益率 10.4%(長期目標の 10〜10.5%。固定費の薄まりと自社ブランド・配送の効率)、営業利益 29 億ドル、純利益 20.7 億ドル。競合との比較では、ウォルマート・アマゾンが取る汎用品の分より、農場・牧場の専門品と地方の店の近さで取り戻す分が大きく、ルーラル・キング(Rural King)など地域の専門店は店数で 10 倍以上離す。競合に負ければ中立(15.4 億ドル)に戻る。還元は 10 年合計 97 億ドル(株式報酬 10 億ドルと伸びに要る投資 38 億ドルを除く)、増資は無い。倍率は正当化 PER 17.0 倍の 9.5 割にあたる 16.1 倍に置いた。
- トラクターサプライ(店舗・ネット・ペット薬局):数量 2,498(米国の農村・暮らし向け小売の市場(億ドル、会社の見積もり 2,250 億ドル、2025 年の実質に固定))× 価格 10.8%(同社のシェア ×(2025 年=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 271 億ドル・営業利益 28 億ドル。トラクターサプライ:市場 × シェア × 価格
- ペットセンス(小型のペット専門店):数量 1,650(米国のペット用品・サービス支出のうち店頭小売(億ドル、推定))× 価格 0.4%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。ペットセンス:市場 × シェア × 価格
倍率:上限の正当化 PER 17.0 倍に対し、16.1 倍(9.5 割)に置いた。需要が安定し堀もあるので、中立(8.5 割)にさらに 1.0 割を上乗せした(上限の内側)。上限の中身は g 4.0%、RONIC 20.5%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 32.3%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 21 億ドル × 16.1 倍で 334 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:市場の実質 +1.1%/年・シェア 10 年で 1.14 倍・利益率 10.5%(取り下げた長期目標 10〜10.5%)を同時に満たす筋書き。2026 年に会社自身が目標を取り下げた事実と、出店余地の縮小を考え 7%。
やや楽観 18% やや楽観:出店が続き既存店 +2% 前後、利益率 9.7% 利益 18 億ドル · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 50.53 ドル269 億ドル
市場は実質 +0.8%/年(10 年で 1.08 倍)、シェアは出店(年 70〜90 店から徐々に減る)と会員で 1.10 倍、価格は物価並みの 1.42 倍。トラクターサプライの売上は 253 億ドル、ペットセンスは 6.6 億ドル、全体 259 億ドル(年 5.3%)。営業利益率 9.6%(2025 年の 9.5% より少し上。配送費と人件費の上昇を自社ブランドの粗利で吸収)、営業利益 25 億ドル、純利益 17.6 億ドル。競合との比較では、ホームセンター(ロウズ・ホームデポ)が庭・季節品でシェアを守る一方、ペットと畜産の消耗品で専門店の優位が続く。競合に負ければ利益は 10.9 億ドル程度に下がる。還元は 10 年合計 94 億ドル。倍率は正当化 PER 17.0 倍の 9.0 割にあたる 15.3 倍に置いた。
- トラクターサプライ(店舗・ネット・ペット薬局):数量 2,430(米国の農村・暮らし向け小売の市場(億ドル、会社の見積もり 2,250 億ドル、2025 年の実質に固定))× 価格 10.4%(同社のシェア ×(2025 年=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 253 億ドル・営業利益 25 億ドル。トラクターサプライ:市場 × シェア × 価格
- ペットセンス(小型のペット専門店):数量 1,620(米国のペット用品・サービス支出のうち店頭小売(億ドル、推定))× 価格 0.4%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 7 億ドル・営業利益 0 億ドル。ペットセンス:市場 × シェア × 価格
倍率:上限の正当化 PER 17.0 倍に対し、15.3 倍(9.0 割)に置いた。需要が安定し堀もあるので、中立(8.5 割)にさらに 0.5 割を上乗せした。上限の中身は g 4.0%、RONIC 20.7%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 32.6%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 18 億ドル × 15.3 倍で 269 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:2025 年の実績(既存店 +1.2%、利益率 9.5%)が出店とともに続き、利益率が少し戻る筋書きとして 18%。
中立 35% 中立:市場は小さく伸び、シェア微増、利益率 9.0% 利益 15 億ドル · PER 14.5 倍 · 株価時価総額 41.81 ドル223 億ドル
市場は実質 +0.6%/年(10 年で 1.06 倍)、シェアは出店の余地が縮み 1.08 倍(2,463 店が 2,900〜3,000 店程度まで、既存店の客数は横ばい)、価格は物価並みの 1.41 倍。トラクターサプライの売上は 242 億ドル、ペットセンスは閉鎖後の 5.9 億ドル、全体 248 億ドル(年 4.8%。取り下げた目標の 6〜8% を下回る)。営業利益率 8.9%(2025 年の 9.5%・2026 年の調整後 8.5〜8.8% の間。人件費が物価を上回って上がる分を、自社ブランド・ペット薬・配送の粗利で埋めきれない)、営業利益 22 億ドル、純利益 15.4 億ドル。競合との比較では、ウォルマート・アマゾンは汎用の消耗品で地方に入り、専門店は農場・牧場・暮らしの専門品と近さで差をつけ続ける。競合に負ければやや悲観の利益 10.9 億ドルに下がる。還元は 10 年合計 92 億ドル(株式報酬と伸びに要る投資 21 億ドルを除く)。倍率は正当化 PER 17.0 倍の 8.5 割にあたる 14.4 倍に置いた。
- トラクターサプライ(店舗・ネット・ペット薬局):数量 2,385(米国の農村・暮らし向け小売の市場(億ドル、会社の見積もり 2,250 億ドル、2025 年の実質に固定))× 価格 10.1%(同社のシェア ×(2025 年=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 242 億ドル・営業利益 22 億ドル。トラクターサプライ:市場 × シェア × 価格
- ペットセンス(小型のペット専門店):数量 1,590(米国のペット用品・サービス支出のうち店頭小売(億ドル、推定))× 価格 0.4%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。ペットセンス:市場 × シェア × 価格
倍率:上限の正当化 PER 17.0 倍に対し、14.4 倍(8.5 割)に置いた。需要が安定し堀もあるので、上限の 8.5 割に置いた。上限の中身は g 4.0%、RONIC 20.8%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 32.8%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 15 億ドル × 14.4 倍で 222 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:取り下げられた長期目標(売上 +6〜8%・利益率 10〜10.5%)より控えめで、2026 年の見通し(売上 +3%、調整後利益率 8.5〜8.8%)を出発点に、出店の純増と物価で売上が年 5% 弱に戻る筋書きとして 35%。
やや悲観 26% やや悲観:汎用品を地方の量販に取られ、利益率 7.6% へ 利益 11 億ドル · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 24.73 ドル132 億ドル
市場は実質 +0.2%/年(10 年で 1.02 倍)、シェアは 1.0 倍(出店の純増分を、ウォルマート・アマゾンの地方配送と量販への客数流出が相殺)、価格は物価に届かず 1.40 倍。トラクターサプライの売上は 214 億ドル、ペットセンスは 4.8 億ドル、全体 219 億ドル(年 3.5%)。営業利益率 7.5%(今より約 1.8 ポイント低い。値引き・ポイント還元・人件費・配送費の上昇)、営業利益 16 億ドル、純利益 10.9 億ドル。競合との比較では、ウォルマートの地方の店とアマゾンの配送がペットフード・消耗品の客数を取り、専門品でしか優位が残らない。この筋書きでも黒字で、配当は守る。還元は 10 年合計 92 億ドル。倍率は正当化 PER 16.1 倍の 7.5 割にあたる 12.1 倍に置いた。
- トラクターサプライ(店舗・ネット・ペット薬局):数量 2,295(米国の農村・暮らし向け小売の市場(億ドル、会社の見積もり 2,250 億ドル、2025 年の実質に固定))× 価格 9.3%(同社のシェア ×(2025 年=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 214 億ドル・営業利益 16 億ドル。トラクターサプライ:市場 × シェア × 価格
- ペットセンス(小型のペット専門店):数量 1,545(米国のペット用品・サービス支出のうち店頭小売(億ドル、推定))× 価格 0.3%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。ペットセンス:市場 × シェア × 価格
倍率:上限の正当化 PER 16.1 倍に対し、12.1 倍(7.5 割)に置いた。中立(8.5 割)より 1.0 割低くした。競争で利益率が下がる筋書きだからだ。上限の中身は g 4.0%、RONIC 17.0%(k 8.75% + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k))、moat は 普通。式は (1−g÷RONIC)÷(k−g)。事業の ROE 25.2%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))。時価総額は、書いた純利益 11 億ドル × 12.1 倍で 132 億ドル。純負債と利払いは純利益に入っているので、借金はさらに引かない。
確率:既存店の客数が 2026 年に減っている実績(4〜6 月は客数 −1.7%)と、利益率の低下傾向(2021 年 10.8% → 2025 年 9.4% → 2026 年 8% 台)が続く筋書きとして 26%。
悲観 14% 悲観:構造的にシェアと利益率を失い、もう優良ではなくなっている 利益 5 億ドル · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 11.12 ドル59 億ドル
10 年の途中でリーマン級の不況に一度あい、その後、ウォルマートとアマゾンの地方配送(アマゾンは 40 億ドル超を地方網へ投じると発表)・ペットのチェーン・ホームセンターに客数を分けられる。市場は実質 −3%(農村人口の減少と家計の弱り)、シェアは 0.85 倍、価格は値引きで物価に届かず 1.30 倍。トラクターサプライの売上は 160 億ドル(今の 150 億ドルの 1.07 倍。物価で 30% 上がる中で実質 −18%)、ペットセンスは 2.9 億ドル、全体 163 億ドル。営業利益率 5.4%(2008 年 4.5%・2009 年 5.8% より少し上で、今の 9.4% よりずっと下)、営業利益 9 億ドル、純利益 5.0 億ドル。もう優良な小売ではなく、店の固定費と配送網の費用がのしかかるが、必需の消耗品があり赤字にはならない。還元は 10 年合計 59 億ドルと、利益の大半を払い出す。
- トラクターサプライ(店舗・ネット・ペット薬局):数量 2,183(米国の農村・暮らし向け小売の市場(億ドル、会社の見積もり 2,250 億ドル、2025 年の実質に固定))× 価格 7.4%(同社のシェア ×(2025 年=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 161 億ドル・営業利益 9 億ドル。トラクターサプライ:市場 × シェア × 価格
- ペットセンス(小型のペット専門店):数量 1,500(米国のペット用品・サービス支出のうち店頭小売(億ドル、推定))× 価格 0.2%(同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。ペットセンス:市場 × シェア × 価格
倍率:式どおり:g 1.5%(g はこの筋書きの数量と価格から置いた)、ROE 10.7%(帳簿の自己資本 ROE(その筋書きの純利益 ÷ 自己資本))、k 8.75%。(1−g÷RONIC)÷(k−g) の値は来年の利益に対する倍率なので、10 年目の利益には ×(1+g) で 11.8 倍。RONIC = k + 残る割合 0.50 ×(事業の ROE − k)= 9.7%。上限の正当化 PER 12.4 倍の 9.6 割で、上限の内側。10 年目の利益の伸びは年 10% 未満なので 1 段。時価総額は、書いた純利益 5 億ドル × 11.8 倍で 59 億ドル。
確率:10 年の途中でリーマン級の不況に一度あい、そのうえで地方への量販・ネットにシェアを奪われる筋書き。2008〜09 年に株価 −44%、利益率 4.5% を経験した事業で、悲観の下限 5% を超える 14%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
トラクターサプライ(店舗・ネット・ペット薬局)
米国 49 州の約 2,463 店と電子商取引。ペット・畜産・庭・車・補修・作業用品を農村・郊外の顧客に売る中核事業。
| 数量米国の農村・暮らし向け小売の市場(億ドル、会社の見積もり 2,250 億ドル、2025 年の実質に固定) | 価格同社のシェア ×(2025 年=1 とした物価指数。10 年 1.41 が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,250 | 6.7% | 150 | 15 |
| 10 年後 中立 | 2,385 | 10.1% | 242 | 22 |
取り方:全社 155.2 億ドルからペットセンス(非開示。約 209 店・推定 5.5 億ドル)を引いて 149.7 億ドル。市場は会社が 2024 年 12 月の投資家説明会で示した 2,250 億ドル(2024 年の見積もり。家計の消耗品・ペット・畜産・庭・補修用品を含む)を実質の基準に使い、シェアは 6.65%。営業利益は全社 14.7 億ドル(利益率 9.5%)のほぼ全部が本体、ペットセンスは損益ゼロと置いた(非開示)。
ペットセンス(小型のペット専門店)
約 209 店の小型ペット用品店。2026 年 7 月に約 75 店の閉鎖を発表した。
| 数量米国のペット用品・サービス支出のうち店頭小売(億ドル、推定) | 価格同社のシェア ×(物価指数。10 年 1.41 が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,500 | 0.4% | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,590 | 0.4% | 6 | 0 |
取り方:売上は非開示で、1 店約 260 万ドルと見て 209 店で 5.5 億ドルと推定。市場は米国のペット支出約 1,500 億ドル(推定。業界団体の公表値の丸め)に対するシェア 0.37%。損益は 2026 年に減損を計上するほど弱く、ゼロと置いた。
リスクと懸念
利益率の低下が止まらない
営業利益率は 2021 年 10.8% から 2025 年 9.4%、2026 年は GAAP で 8.0〜8.3%(調整後 8.5〜8.8%)。販管費率は 2025 年に 26.4% から 27.0% へ上がった。人件費は物価を上回って上がるので、既存店が +2〜3% を割ると利益率は下がりやすい。1 ポイントは営業利益で約 1.6 億ドル、純利益で約 1.2 億ドル、倍率 30 倍なら価値で約 37 億ドルに当たる。
既存店の客数が減っている
2026 年 4〜6 月は客数 −1.7%、客単価 +0.2%、既存店 −1.5%。売上の +2.3% は出店が支えた。燃料価格・干ばつ・低所得層の節約が理由と会社は言うが、ペット部門が会社平均を下回ったことは、天候だけでは説明できない構造の兆しの可能性がある。
ウォルマート・アマゾンの地方進出
アマゾンは 40 億ドル超を地方の配送網に投じると発表し、ウォルマートは農村の既存店でペットフード・園芸・衣料を安く売る。ペットフードなど繰り返し買う消耗品が最も狙われ、専門品(フェンス・畜産用品・薬)は守れても、客の来店回数が減れば固定費の負担が増す。
ペットセンスの失敗と資本配分
約 209 店のうち約 75 店を 2026 年 7 月に閉鎖し、減損など 0.66 億ドルを計上した。2016 年の買収は価値を壊した実例。同じ 2026 年に有利子負債が 21.5 億ドルに増え、配当と自社株買いが利益と同額になっており、利益が弱い時の還元の維持は、借入頼みの面がある。
出店余地の縮小
2,463 店から会社の目標 3,200 店まで年 80〜100 店を出し続けるのは、新店の売上が既存店並みに立ち上がる前提。新店が既存店の客を食う面や、小さな町での出店余地の縮小があれば、売上の伸びは年 4% 台に落ち、利益率の改善も遅れる。
関税と物価
輸入は売上の約 11%。2026 年は関税関連の粗利益の追い風が運賃の上昇を上回ったが、関税の還付や水準の変更で粗利益率が 0.3〜0.5 ポイント動きうる。物価(3.5%)が続く前提でも、低所得層の消耗品への支出が減れば客数が落ちる。
景気後退での株価の下落
2008〜09 年は株価が山から谷で −44%、営業利益率は 4.5〜5.8%。消耗品が強く黒字は保ったが、純負債が時価総額の 3 割あるため、2026 年の水準なら株価はさらに 5 割前後下がりうる。2020 年のコロナでは −10% にとどまった(需要が増えた)。
今後の分かれ目
- 2026 年 10 月 22 日の第 3 四半期決算で、既存店が +1% 以上に戻り、客数が正になる
- 2026 年 5 月の落ち込みが一時的だった証拠で、利益率 9% 近くへの回復が見え、やや楽観・楽観に確率を寄せる。
- 既存店が 2026 年下期も −1% 前後で、客数が減り続ける
- ウォルマート・アマゾンへの流出が構造的と判断でき、やや悲観の筋書きに近づく。利益率 8% 前後が定着し、倍率も縮む。
- 2027 年 2 月に出し直す長期目標で、利益率を 10% 以上とし売上 +5% 以上を掲げる
- 取り下げ前の計画に戻る信頼が回復し、楽観寄りに確率を移す。逆に利益率目標が 9% 以下なら、中立より低い。
- アマゾンの地方配送が広がり、ペットフードの客数が 2 年続けて減る
- 消耗品という堀が崩れ、ペット部門のシェアが 5〜10% 下がる。やや悲観から悲観へ近づく。
- ペットセンスの閉鎖が計画通り進み、残る約 134 店が黒字になる
- 全社の利益は 0.2〜0.4 億ドル押し上がるが、売上の 3% 未満なので価値への影響は小さい。
- リーマン級の不況(失業率の急上昇)
- 売上 −4%、営業利益率 6% 前後まで落ち、株価は 4〜5 割下落しうる。消耗品で黒字は保つが、自社株買いは止まる。
見ておくもの
- 既存店売上の客数と客単価の内訳(2026 年 10 月 22 日の第 3 四半期決算と 2027 年 2 月の通期決算)
- 営業利益率と販管費率の推移(GAAP 8.0〜8.3% → 回復するか)
- 長期目標の出し直し(2027 年 2 月):売上の伸び・利益率・出店数
- ペット部門の売上と、アマゾン・ウォルマート・チューイの地方配送の広がり
- 有利子負債(21.5 億ドル)と自社株買い・配当の合計が純利益を上回るか
- 出店数(年 80〜100 店)と新店の売上の立ち上がり
倍率と資本コストの決め方
倍率はすべて利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/2 ×(ROE − k))の 7.5〜9.5 割(中立は 85%)で出し、今の PER 16 倍や過去 20 期の中央 23 倍・業界ノートの 18〜22 倍に寄せていない。ROE は 10 年後の筋書きの純利益 ÷ 自己資本(中立 33% 前後、40% 以下なので帳簿のまま)。k は基本 8.0% + quality +0.75% の 8.75%、g は市場の実質・シェア・価格の内訳で 4% まで。中立の 10 年の倍率は約 14.4 倍で、今の 16 倍より低い。k が 1 ポイント上がれば倍率は 2 割近く下がるので、悲観・やや悲観の確率を 40% に厚くし、悲観の深さを利益率 5.5% と稼ぐ力の式で表した。今の株価は筋書きを作った後に最後に比べた。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 5% + β 0.67 × 5%。資本コスト k = 基本 8.0% + quality +0.75% = 8.75%(v2。株価の揺れ(β)は使わない)。景気に強い生活必需品の小売だが、リースと自社株買いによる負債の重さを debt で見た。個別のリスクは k に足さず、筋書きの利益率と確率、悲観の深さで表した。extra は 0。