結論
オン・ホールディングは、スイス発の高機能ランニング靴を中心とする世界的なスポーツブランドである。筆者の結論はやや割高だ。2026年の売上成長と利益率の改善には実力があるが、現在の時価総額には、その勢いが長く続くことへの期待が相当含まれている。
2025年の売上は36.3億ドル、営業利益は4.5億ドルだった。2026年4〜6月期も為替を除く売上が21.6%増え、直販比率は45.7%、粗利益率は65.4%に達した。2026年9月には、2029年に売上56億スイスフラン以上、調整後EBITDA利益率22%以上を目指す新計画と、最大10億ドルの自社株買い枠を発表した。これは成長だけでなく、利益と資本配分の面でも一段進んだことを示す。
最大の強みは、CloudTecなどの独特な履き心地と外観を高価格の商品に結び付け、値引きを抑えながら世界に広げていることである。アジアには大きな余地があり、衣料の売上も急増している。ただし、2025年の売上の93%は靴である。ナイキ、アディダス、ホカ、アシックス、ニューバランスとの競争に終点はなく、ブランドの流行が変われば顧客は容易に乗り換える。
2035年の中立では売上約114億ドル、営業利益約17億ドル、純利益12億ドルを見込む。5つの筋書きを確率でならし、資本コスト9.0%で割り引いた現在価値は約83億ドルとなり、基準時価総額108.5億ドルを約23%下回る。期待する年率リターンは約5.6%である。優良な成長企業であることと、今の値段に十分な安全域があることは別の話だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オンは事業を理解しやすいが、将来の強さを測るにはまだ時間が必要な会社である。人々が走り、歩き、快適な靴を求める需要は10年後も残る。技術で靴そのものが不要になる可能性は低く、人口の増加と運動習慣の広がりが市場を支える。しかし、そこでオンが今と同じ人気を保てるかは別の問いだ。
評価したいのは、売上を増やすだけでなく、値引きを抑えて利益を厚くしている点である。2026年の高い粗利益率は、ブランドへの信頼が実際の購買行動に結び付いている証拠だ。顧客が製品を気に入り、次もオンを選ぶ習慣が広がれば、広告費を増やし続けなくても利益が残る。研究開発と物流に投じた資本が、その後の複数の製品世代で利益を生むなら、増分の資本利益率は十分に魅力的になる。
ただし、再投資に使うお金は無料ではない。直営店には家賃と人件費、競技用の商品には研究開発費が必要である。著名選手との契約や新競技への参入も、売上になる前から現金を使う。2025年の純利益2.5億ドルだけを見て長期の稼ぐ力を小さく見積もるのは誤りだが、将来の調整後利益をそのまま株主のものと考えるのも誤りだ。
筆者が最も気にするのは、堀の寿命である。ホカやアシックスの商品を選んだ顧客を、再びオンへ戻すには性能と魅力の更新が欠かせない。独自の外観だけでは十年分の超過利益は保証されない。会社は魅力的で、経営の投資判断もこれまでは成果を出している。それでも、少数株主が受け取る将来の現金と、今払う値段の間に余裕がなければ、優良企業であることだけを理由に高く評価できない。
何で稼ぐ会社か
オンの事業は、ランニング靴、スポーツ衣料、靴下などのアクセサリーから成る。会社が開示する製品別売上は2025年に靴が93.0%、衣料が5.6%、アクセサリーが1.3%だった。法律上の報告セグメントは一つであり、製品別の営業利益は開示されていない。製品ごとの収益性は、販売方法と必要な広告費の違いから推計する。
稼ぎ頭の靴には、普段履きのCloud、走行性能を重視したCloudsurferやCloudmonster、競技用のCloudboomなどがある。主力商品の米国での店頭価格はおおむね160〜190ドル、競技用の高級品はさらに高い。商品はスイスで設計し、製造の大半を外部工場に任せる。自社工場を大量に持たないため、製品開発とブランドづくりに資本を集中できる。
販売には二つの経路がある。2025年の卸売は売上の58.2%で、ディックス・スポーティング・グッズ、JDスポーツ、フットロッカーなどが主要な取引先である。残りの41.8%は自社サイトと直営店による直接販売だった。2025年末の直営店は67店で、中国に38店を持つ。直販は卸より客から受け取る売上が大きく、購買データとブランド体験を自社に残せる反面、家賃や販売員の固定費を負担する。
衣料はランニング、トレーニング、日常着へ広がっている。2025年の衣料売上は現地通貨で前年より68.2%伸び、2026年上期も46.4%増加した。まだ小さい事業だが、靴を買った顧客へ上下の服を売れることは、一人当たりの売上を伸ばす自然な経路になる。アクセサリーは靴下と帽子が中心で、単価は低いものの、購入頻度を高める役割がある。
会社が販売足数と商品別平均単価を公表していないため、数量は推定である。2025年の靴を約3130万足、会社の実現売上を一足約108ドルとみた。店頭価格そのものではなく、卸売の低い実現単価と直販の高い実現単価を混ぜた数字だ。衣料とアクセサリーも実際の販売点数を推定しており、10年後の売上はそれぞれの数量と単価から独立して考える。
優良さと弱いところ
オンの堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みは、製品設計とブランドの組み合わせにある。CloudTecの外観は遠くからでも分かり、履き心地とデザインの両方を理由に選ばれる。LightSprayは製法そのものを変える試みであり、単なる広告だけでは作れない製品の違いを生み出そうとしている。競技者の実績と日常での人気が互いを補強する構造も評価できる。
価格を守る力にも証拠がある。2025年の粗利益率は62.8%に上がり、2026年4〜6月期には65.4%へ改善した。米国の追加関税を負担し、関税還付を含めなくても高い粗利益率を実現した点は重要だ。ただし、これは同じ商品の値札を上げても販売足数が減らないことの直接的な証明ではない。直販比率の上昇や高価格商品の構成変化も効いているため、純粋な値上げ力は慎重に見る。
成長投資の質は改善している。2025年の営業利益率は12.5%で、2022年の7.0%から上がった。直販店、物流、開発、広告へ先に資金を使い、その後に売上が増えれば固定費の負担が薄まる。2029年の調整後EBITDA利益率22%以上という会社目標は、再投資の成果を測る物差しとなる。ただし、調整後EBITDAは株式報酬や減価償却を含む最終的な株主利益ではない。
堀がまだ強固とは言い切れない点も明確だ。消費者がナイキやホカからオンへ乗り換える費用は小さく、逆も同じである。独占的な販売網もなく、規模ではナイキとアディダスに大きく劣る。2010年に生まれた比較的新しいブランドなので、複数の流行サイクルを越えた実績も十分ではない。AIエージェント代替の直接対象ではないが、AIによる商品開発や広告の効率化は競合にも広がり、差別化だけで高い超過利益を永続させる保証はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のスポーツ靴は巨大だが、すでに成熟した市場でもある。2025年のナイキの靴売上約295億ドルと、ユーロモニターが示した世界シェア22.9%から逆算すると、ブランド売上に近い比較母数は約1290億ドルになる。アディダスの世界シェアは12.2%である。会社ごとの卸売と直販の比率が違うため厳密な市場規模ではないが、オンの靴売上約34億ドルは、この物差しでは世界の2〜3%程度に相当する。
競争は激しい。ナイキは販売規模と広告費、アディダスは競技実績と世界的な流通網を持つ。デッカーズのホカは厚底ランニング靴で直接競合し、アシックスは競技用ランニング靴に根強い顧客を持つ。ニューバランスは機能性と普段履きを両立し、オンが狙う高所得層とも重なる。2025年にはナイキの世界シェアが低下し、オンなどの新興ブランドに機会が生まれた。ただし、既存大手が商品開発と卸売を立て直せば、この追い風は弱まる。
世界のスポーツ衣料市場は2025年に約2200億ドルとする民間推計がある。オンの衣料売上約2億ドルは、まだ市場の0.1%程度にすぎない。ここではルルレモン、ナイキ、アディダス、アンダー・アーマーが強く、靴の顧客を衣料に移せるかが鍵になる。靴下や帽子の市場は定義が一定せず、アクセサリー全体の正確なシェアは測りにくい。
市場全体の数量は、世界人口と運動習慣の広がりによって10年で緩やかに増えると見る。中立ではスポーツ靴の世界販売足数を約1.18倍とし、オンはシェアを高めることで自社の足数を約2.1倍にする。価格は物価3.5%を基本とし、10年で約1.41倍になる。2035年のオンの世界シェアは、同じ比較母数なら4〜5%程度を目指せるが、その後もシェアが同じ速さで増えるとは考えない。
現在の循環は、新興ブランドが大手からシェアを奪う成長局面にある。2026年上期のオンはアジア太平洋の現地通貨売上が約58%伸び、米州よりはるかに速い。しかし、景気が後退すれば高価格の靴は購入を先送りされる。さらに、ベトナムへの製造集中と関税、物流費の上昇は利益率を左右する。2026年に見込まれる関税還付は一回限りの利益として、10年後の正常な稼ぐ力には含めない。
資本政策と M&A
資本配分は、成長優先から株主還元との両立へ移り始めた。2021年の上場後は製品開発、物流、直営店、広告に資金を振り向け、2025年には営業キャッシュフロー4.1億ドル、フリーキャッシュフロー3.2億ドルを生み出した。これまで大規模な企業買収に頼らず、製品と販路を自力で広げてきたことは評価できる。
2026年9月には、2029年末までを期限とする最大10億ドルのクラスA普通株自社株買いを初めて承認した。2025年まで配当実績はなく、当面の配当についても数字の約束はない。2029年の売上56億スイスフラン以上、粗利益率65%以上、調整後EBITDA利益率22%以上は経営目標であって、最終純利益や年間自社株買い額を保証するものではない。
株式報酬には注意が要る。2025年の株式報酬費用は約0.8億ドルで、添付データの株数は前年比約2%増えた。自社株買いを行っても、その一部は報酬による希薄化を埋めるだけになる。10年の還元額は自社株買いの総額ではなく、株式報酬による株数増加の価値を差し引いた正味の金額である。
少数株主にとって最大の弱点は支配構造だ。創業者を中心とするグループは、2025年末時点で議決権の約56.1%を保有していた。クラスB株はクラスAに比べ資本額当たりの議決権が強く、一般株主の意思が経営判断に反映されにくい。資本配分がよい間は長期志向という利点があるが、過大な広告契約、割高な買収、還元の先送りが起きても外部株主には止めにくい。現時点で合意済みの非公開化や上場廃止計画は確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
オンは、世界のスポーツ靴市場でまだ小さな存在だ。ナイキの世界シェアが22.9%あるのに対し、オンの比較可能な規模は2〜3%程度である。市場全体がほとんど伸びなくても、ナイキやアディダスが失った顧客を継続して獲得できれば、オンの販売足数は大幅に増える。2026年上期のアジア太平洋における現地通貨売上の約58%増は、その変化が北米だけの流行ではないことを示している。
ブランドの強さは利益率にも表れている。2026年4〜6月期の粗利益率65.4%は、関税の負担を含んだ数字である。直販の売上も現地通貨で34.3%伸びた。卸売の数量をむやみに増やさず、定価販売を守っているため、将来は売上が増えるほど広告費と物流費の比率が下がる余地がある。2029年に調整後EBITDA利益率22%以上を目指す計画は、この構造が働き始めた証拠になりうる。
衣料も重要である。2025年には全社売上の5.6%にすぎなかったが、2026年上期も高い成長率を維持した。ランニング靴からトレーニング、テニス、日常着へ顧客との接点を増やせば、一人が購入する商品の数を増やせる。サッカーとゴルフへの参入も、成功すれば全く別の購買機会を作る。会社の直営店は2025年末で67店と少なく、世界の主要都市で存在感を高める余地も大きい。
この成長を支えるのは、会社に借金の重荷が小さいことだ。研究開発、物流、直販への投資を営業活動で生み出す現金から賄える。さらに最大10億ドルの自社株買い枠が新設され、株主還元にも進展があった。2035年に靴の世界シェアが6%前後へ上がり、衣料が大きな柱になれば、オンは単なる新興ランニング靴メーカーではなく、世界的な総合スポーツブランドへ変わる可能性がある。
慎重な見方
成長が続いていることと、10年後も同じ競争優位があることを混同してはいけない。スポーツ靴は買い替えが容易で、顧客を契約で縛ることができない。厚いソール、特徴的な形、軽量素材の開発は他社も行っている。ホカ、アシックス、アディダスは競技性能で競争し、ニューバランスは日常のファッション需要を取る。オンの新製品が数世代続けて支持を得られなければ、定価販売を守る力は急に弱まる。
2026年の高い粗利益率には直販比率の上昇が効いている。だが直販店を増やすほど、賃料、販売員、内装、物流の固定費が積み上がる。2025年末の賃貸負債と契約済みの新規賃貸には相応の約束があり、売れなくなった時に費用をすぐ減らすことはできない。2025年の営業利益率12.5%は、ホカを擁するデッカーズの全社利益率にまだ及ばず、将来の高収益化には実行が必要である。
製造にも大きな集中がある。2025年の靴生産の約90%はベトナムで行われ、製造委託先は30社未満だった。関税、物流の混乱、品質問題が同時に起きれば、価格を維持しても原価が上がる。米国では高所得者向けの高価格靴が強みだが、消費不況では購入頻度が落ち、卸売業者も在庫を減らす。2026年の関税還付は長期の稼ぐ力を改善するものではない。
資本配分にも未解決の問題がある。2025年まで配当はなく、株式報酬によって株数は増えていた。2026年の自社株買いは前進だが、実際に株主へ戻るのは希薄化を差し引いた分だけである。創業者側が議決権の過半を握るため、外部株主が方針を変えさせる力は弱い。新競技への進出や大型の広告契約が利益を生まなければ、成長した売上の裏でオーナー利益が細る。人気の低下が数年続く悲観では、会社は存続しても高収益企業ではなくなる。
どちらに重みを置いたか
短期から2029年までの成長については強い見方に分がある。2026年上期の実績と新しい経営目標は、需要と値決め力の双方が強いことを示している。一方、2035年以降の堀の持続性には慎重な見方が勝つ。乗り換え費用がほぼなく、靴への依存度が高いからだ。
確率は楽観15%、やや楽観23%、中立34%、やや悲観20%、悲観8%とした。成長の上振れを十分認めながら、ブランドが成熟するまでの競争を軽く見ていない。確率加重の現在価値は約83億ドルで、基準時価総額に対して約23%のマイナスとなる。結論はやや割高だ。デッカーズやナイキとの比較でも、オンは売上成長では優れているが、長期の利益率と株主還元の実績でなお検証が必要である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 50.75 ドル169 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 5.45 ドル18 億ドル)。 今の値に割り戻すと 24.98 ドル83 億ドル、今との差 −26.1%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 15% | 109.02 ドル364 億ドル | 11.98 ドル40 億ドル | +258.2% | +14.7% | 18.15 ドル61 億ドル |
| やや楽観 | 23% | 70.93 ドル237 億ドル | 7.49 ドル25 億ドル | +132.1% | +9.4% | 18.04 ドル60 億ドル |
| 中立 | 34% | 45.61 ドル152 億ドル | 4.19 ドル14 億ドル | +47.4% | +4.2% | 16.93 ドル57 億ドル |
| やや悲観 | 20% | 11.66 ドル39 億ドル | 1.80 ドル6 億ドル | −60.2% | −9.3% | 2.69 ドル9 億ドル |
| 悲観 | 8% | 3.08 ドル10 億ドル | 1.80 ドル6 億ドル | −85.6% | −19.9% | 0.39 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 50.75 ドル169 億ドル | 5.45 ドル18 億ドル | +66.4% | +5.5% | 56.20 ドル188 億ドル |
今の株価時価総額 33.78 ドル113 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 15% 楽観:世界的な総合スポーツブランドへ成長 利益 24 億ドル · PER 14.8 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 109.02 ドル364 億ドル
オンは高価格ランニング靴で世界的な定番ブランドになり、ナイキとアディダスのシェアを継続して奪う。世界のスポーツ靴の実質数量が10年で約1.18倍になる中、自社の販売足数は約3130万足から9200万足へ増え、比較可能な世界シェアは6%台に達する。LightSprayの量産が進み、性能とデザインの差別化が続くことで、実現単価も173ドルへ上がる。
衣料はランニングからトレーニングと日常着に広がり、年間2900万着を販売する。サッカーとゴルフへの参入も一定の売上を生み、アジアでは直営店とオンラインが普及する。直販比率は50%を超え、値引きへの依存を低く保つ。靴の営業利益率は18.8%へ上がり、全社の営業利益は約33億ドルとなる。大手と同じ規模にはならなくても、強いプレミアム商品群を持つ会社に変わる。
経営は製品開発と物流への再投資を続けつつ、株式報酬による希薄化を超える自社株買いを実施する。10年間の純利益累計は約135億ドル、正味の還元は40億ドルとなり、自己資本は約115億ドルへ積み上がる。増分の収益性が資本コストを大きく超える状態が保たれ、2035年も競争優位が残る。
- フットウエア(ランニング・日常用・テニス・トレーニング):数量 92.0(年間販売数量(百万足、推定))× 価格 173(一足当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 159 億ドル・営業利益 30 億ドル。世界の実質需要約1.18倍とシェア上昇で販売足数約2.94倍。直販・技術革新によって実現単価は約1.60倍。
- アパレル(ランニング・トレーニング・日常着):数量 29.0(年間販売数量(百万着、推定))× 価格 84(一着当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 24 億ドル・営業利益 4 億ドル。靴の顧客への販売とトレーニング・日常着で数量約6.4倍。高価格衣料の構成が高まる。
- アクセサリー(靴下・帽子・小物):数量 17.0(年間販売数量(百万点、推定))× 価格 20(一点当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 3 億ドル・営業利益 1 億ドル。靴下・帽子の購入頻度が上がり、衣料との組み合わせ販売も進む。
倍率:k=9.0%、2035年以降のg=4.0%。市場実質数量+0.5%程度、シェア横ばい、価格+3.5%を基本とし、2029年までの高成長を永久に延長しない。余剰現金8億ドルを除いた事業自己資本107.35億ドルに対する利益24.45億ドルから事業ROE約22.8%。moatは普通、超過利益の残存割合0.5とするとRONIC約15.9%。正当化PERの2035年利益基準上限は約15.56倍。優れた開発力と直販の維持を認め、上限の約95%である14.79倍とした。現金利息0.112億ドルを事業利益から除き、余剰現金8億ドルの戻り方0.5を別に足す。
確率:靴の世界シェアが6%前後に達し、衣料・新競技も成功し、直販の高収益が維持される必要がある。2026年の実績と2029年の成長目標から十分考えられるが、大手が対抗しないことまでは期待できないため15%。
やや楽観 23% やや楽観:アジアと衣料が成長の第二段階を支える 利益 17 億ドル · PER 13.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 70.93 ドル237 億ドル
2029年の会社目標はおおむね達成され、その後は高い成長率が緩やかに落ち着く。世界のスポーツ靴需要は増え続け、オンはホカ、アシックス、ニューバランスと競争しながら、世界の高価格ランニング靴で確かな地位を築く。年間販売足数は7800万足となり、実現単価は161ドルへ上昇する。市場全体より速く伸びるが、ナイキとアディダスからのシェア獲得は次第に難しくなる。
アジア太平洋は米州に次ぐ大きな利益源となり、中国、日本、韓国で直販と卸売がともに成長する。衣料は年間2200万着となり、靴の売上に加える第二の柱へ育つ。サッカーとゴルフはブランドを広げる助けになるが、主な利益は依然としてランニング靴から生まれる。靴の利益率は17.5%、全社の営業利益は約24億ドルとなる。
大規模な買収は行わず、物流と自社店舗への投資を継続する。株式報酬による増発を上回る自社株買いが徐々に増え、正味の還元は10年間で25億ドルとなる。会社は強いブランドであり続けるが、成長期後半の競争に備えて、利益の相当部分を事業内に残す。
- フットウエア(ランニング・日常用・テニス・トレーニング):数量 78.0(年間販売数量(百万足、推定))× 価格 161(一足当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 126 億ドル・営業利益 22 億ドル。市場成長とシェア獲得で数量約2.5倍。価格は約1.49倍で、物価を少し上回る。
- アパレル(ランニング・トレーニング・日常着):数量 22.0(年間販売数量(百万着、推定))× 価格 73(一着当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 16 億ドル・営業利益 2 億ドル。靴の顧客との併売が広がり数量約4.8倍。衣料の規模拡大で広告費率が下がる。
- アクセサリー(靴下・帽子・小物):数量 13.0(年間販売数量(百万点、推定))× 価格 18(一点当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。購入点数は増えるが、全社における売上構成はなお小さい。
倍率:k=9.0%、g=4.0%。長期は世界の実質販売足数の緩やかな増加と物価並みの値上げが中心で、シェア獲得の速度は落ちる。余剰現金6億ドルを除いた事業自己資本88.35億ドルに対する事業ROEは約19.5%。moat普通の残存割合0.5からRONIC約14.3%、2035年利益基準の正当化PER上限は約14.97倍。成長と収益性が良好なため上限の約91%となる13.62倍を採用。現金利息を引いた利益に掛け、余剰現金は戻り方0.5で加算する。
確率:2026年の直販とアジアの強さ、2029年の中期目標達成を評価する。ただし長期にわたる高い販売足数の伸びと利益率改善の両立が必要なため、中立より低い23%。
中立 34% 中立:世界シェアを拡大し、その後は成熟したブランドへ 利益 12 億ドル · PER 12.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 45.61 ドル152 億ドル
オンは2029年に会社の売上目標に近づき、その後は成長率が落ち着く。世界のスポーツ靴の販売足数が10年で約1.18倍になる中、オンはナイキやアディダスから一定のシェアを獲得する。年間販売足数は約3130万足から6600万足へ増え、同じ物差しによる世界シェアは4〜5%程度になる。実現単価は物価上昇におおむね沿って153ドルとなる。
主力は引き続き靴だが、衣料が徐々に重要になる。年間1700万着の衣料を販売し、売上は約11億ドルとなる。アジアの成長は続くものの、米州では競争が増し、直販と卸売の双方で広告費を必要とする。靴の営業利益率は16.4%となり、全社では約15%の利益率を維持する。ホカを擁するデッカーズの高い利益率にはなお及ばない。
経営は新しい工場を大量に持たず、商品開発、物流、直営店へ再投資する。2026年に公表した自社株買いを実施し、その後も業績に応じて還元するが、株式報酬による増発を差し引いた10年の正味還元は14億ドルにとどまる。期間の純利益累計約72.5億ドルの大部分を成長のために残し、自己資本は約79億ドルへ増える。2035年以降の成長は物価と世界市場の緩やかな数量増が中心となり、若いブランド特有の高成長は永久には続かない。
- フットウエア(ランニング・日常用・テニス・トレーニング):数量 66.0(年間販売数量(百万足、推定))× 価格 153(一足当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 101 億ドル・営業利益 17 億ドル。世界の実質需要約1.18倍とシェア拡大で数量約2.11倍。単価は10年で約1.42倍となり、物価上昇にほぼ一致。
- アパレル(ランニング・トレーニング・日常着):数量 17.0(年間販売数量(百万着、推定))× 価格 65(一着当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 11 億ドル・営業利益 1 億ドル。世界のスポーツ衣料需要の増加を上回るシェア獲得を見込む。靴との併売により数量約3.7倍。
- アクセサリー(靴下・帽子・小物):数量 11.0(年間販売数量(百万点、推定))× 価格 16(一点当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。靴下・帽子の販売点数増と物価に近い単価上昇。
倍率:k=9.0%、2035年以降のg=4.0%。市場の実質数量成長約0.5%、シェア横ばい、価格上昇約3.5%を長期の成長源とし、2029年までの高成長を倍率へ重ねない。余剰現金4億ドルを除いた事業自己資本75.1億ドルに対する事業ROEは約16.0%。moat普通、残存割合0.5からRONIC約12.5%、2035年利益基準の正当化PER上限は約14.14倍。競合との価格競争とブランドの寿命を考慮し、上限の約89%である12.58倍を採用。全社純利益12億ドルから余剰現金の税引き後利息0.056億ドルを除いてPERを掛け、余剰現金4億ドルの戻り方0.5を別に足す。
確率:2026年の需要と2029年の会社計画を一定程度信頼しながら、2030年以降は競争が激しくなるとみる。靴の世界シェア獲得は可能だが、価格と営業利益率には持続可能な限界があり、最も起こりやすい34%。
やや悲観 20% やや悲観:値引き競争で高収益化が止まる 利益 4 億ドル · PER 9.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 11.66 ドル39 億ドル
ナイキとアディダスがランニング靴の商品開発を立て直し、ホカとアシックスも高価格帯で新製品を投入する。オンは世界の販売足数を4800万足まで伸ばすが、主力商品の鮮度を保つために値引きと広告を増やす。実現単価は139ドルとなり、10年間の物価上昇に負ける。世界シェアは増えても、中立ほど多くの顧客を獲得できない。
アジアの店舗拡大は続くが、新店の売上が既存店より弱くなり、賃料と人件費が固定費として残る。衣料は年間1000万着で伸びが鈍り、サッカーやゴルフへの参入も大きな利益を生まない。靴の営業利益率は10%へ下がり、全社の営業利益は約6.5億ドルとなる。会社は存続し、一定のブランド価値を保つが、デッカーズのような高利益率には届かない。
経営は2026年に承認した自社株買いの一部を行うものの、後半は還元を抑え、在庫と店舗の立て直しに資金を使う。株式報酬による増発を差し引いた10年間の正味還元は6億ドルとなる。期間の純利益累計は約33億ドルで、自己資本は約48億ドルとなる。再投資の利益率は資本コスト近くまで低下するため、残した利益が高い株主価値を生むとは考えない。
- フットウエア(ランニング・日常用・テニス・トレーニング):数量 48.0(年間販売数量(百万足、推定))× 価格 139(一足当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 67 億ドル・営業利益 7 億ドル。数量は1.54倍まで増えるが、競合回復によりシェア獲得が鈍化。値引きで実現単価は物価を下回る。
- アパレル(ランニング・トレーニング・日常着):数量 10.0(年間販売数量(百万着、推定))× 価格 58(一着当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。競合衣料との競争で販売点数の伸びが鈍る。広告と値引きの負担が残る。
- アクセサリー(靴下・帽子・小物):数量 7.0(年間販売数量(百万点、推定))× 価格 14(一点当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。靴の顧客増が鈍り、アクセサリーの購入点数も伸びにくくなる。
倍率:k=9.0%、g=3.0%。靴市場の実質数量増が続いても、オン自身のシェア獲得が止まり、価格も物価ほど上げられない。事業自己資本45.85億ドルに対するROEは約9.1%で、資本コストにほぼ等しい。RONIC約9.0%、2035年利益基準の正当化PER上限は約11.5倍だが、再投資の超過利益がほとんどないため9.2倍とする。中立の12.58倍を下回り、事業の稼ぐ力による価値は現金利息を除いた利益に対応する。余剰現金2億ドルには戻り方0.5を適用する。
確率:ナイキの立て直しとホカ、アシックス、ニューバランスとの競争により、2029年の目標が未達となる筋書き。ブランド自体は残るが、高価格と利益率を同時に守れない場合として20%。
悲観 8% 悲観:ブランドの人気が一巡し、構造的にシェアを失う 利益 1 億ドル · PER 9.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 3.08 ドル10 億ドル
2029年までに一定の成長を実現した後、主力のCloud系製品が競合に追いつかれる。ホカ、アシックス、アディダスが競技性能と履き心地で選ばれ、オンの外観が新鮮さを失う。新しい製法も十分な差別化につながらず、ブランドの人気は数年にわたって低下する。年間販売足数は2800万足まで減り、世界市場が増える中でシェアを失う。
高価格を維持できず、実現単価は124ドルにとどまる。これは物価上昇を大きく下回り、実質では値下げである。衣料は650万着、アクセサリーは400万点となり、靴に代わる利益の柱には育たない。直営店の家賃と人件費は販売数量ほど早く減らせず、在庫処分と広告費が利益を圧迫する。全社営業利益は約1.5億ドルとなり、かつての高成長ブランドから小規模な競争企業へ変わる。
純利益は2026〜2029年に一度増えた後、2030年以降に縮小する。2035年までの累計純利益は約29億ドルとし、直線的な利益の推移よりも前半の利益を大きく、後半を小さく見込む。正味の自社株買いは前半の6億ドルに限られ、後半は停止する。会社は倒産せず一定の現金と売れる商品を持つが、ROEは資本コストに届かず、蓄積した自己資本をそのまま株式価値とはみなさない。
- フットウエア(ランニング・日常用・テニス・トレーニング):数量 28.0(年間販売数量(百万足、推定))× 価格 124(一足当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 35 億ドル・営業利益 2 億ドル。実質市場が成長する中で販売足数は現在より減る。プレミアムの価値を失い、価格上昇は物価を大きく下回る。
- アパレル(ランニング・トレーニング・日常着):数量 6.5(年間販売数量(百万着、推定))× 価格 54(一着当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。ブランドの人気低下によって衣料のシェアも拡大せず、値引きが常態化する。
- アクセサリー(靴下・帽子・小物):数量 4.0(年間販売数量(百万点、推定))× 価格 13(一点当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。靴の購入客が減り、関連商品の購入数も減少する。
倍率:k=9.0%、g=2.0%。事業の長期数量が減少し、価格も物価に届かないため、名目成長を低く抑える。余剰現金1億ドルを除く事業自己資本42.6億ドルに対するROEは約2.6%。RONICは約5.8%となり、2035年利益基準の正当化PER上限は約9.5倍。新しい投資の利回りが資本コストに届かず、ブランドの堀も弱いため9.0倍にとどめる。事業の稼ぐ力と余剰現金の戻り方による価値は約10.3億ドルで、売れる資産の税後床8.5億ドルを上回る。過去のPBRの底は用いない。
確率:製品の人気低下が複数世代にわたり続き、プレミアムブランドの価格決定力を失う厳しい筋書き。2026年時点の技術開発力と直販の実績を評価し8%に抑えるが、靴への集中と乗り換え費用の小ささから排除はできない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
フットウエア(ランニング・日常用・テニス・トレーニング)
CloudTecやLightSprayなどの技術を使った高価格の靴を、卸売と直販で販売する。2025年売上の93%を占める中核事業である。
| 数量年間販売数量(百万足、推定) | 価格一足当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 31.3 | 108 | 34 | 4 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 153 | 101 | 17 |
取り方:2025年20-F開示の靴売上2804.4百万スイスフラン、全社売上3014.0百万スイスフランの比率93.0%を、factsのドル建て全社売上36.3億ドルへ適用し33.77億ドルとした。販売足数とASPは非開示である。米国でCloudsurferなどの店頭価格が160〜190ドル程度、競技用はさらに高く、全社の販売経路が卸売58.2%・直販41.8%であることから、会社に入る加重平均実現単価を108ドルと推定し、約3127万足を逆算した。これは観測された数量ではなく、卸売の実現単価を小売より低くした推定値である。製品別利益は非開示のため、全社営業利益4.5億ドルのうち4.29億ドルを、売上構成と衣料の立ち上げ費用を考慮して推定配賦した。
アパレル(ランニング・トレーニング・日常着)
機能性シャツ、パンツ、ジャケット、トレーニング衣料を展開し、靴の顧客への追加販売と新しい競技分野の開拓を狙う。
| 数量年間販売数量(百万着、推定) | 価格一着当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.6 | 45 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 17.0 | 65 | 11 | 1 |
取り方:2025年20-Fの衣料売上169.9百万スイスフラン、全社売上の5.6%をfactsのドル建て売上へ換算して2.05億ドル。会社は販売着数を開示していない。直営店とオンラインの衣料価格、卸売の低い実現単価、靴より小さい注文規模を考慮し、平均45ドル、約455万着と推定した。世界のスポーツ衣料市場は2025年約2200億ドルとする民間推計があるが、販売段階の違いから会社売上とのシェア比較には幅がある。製品別営業利益は非開示であり、立ち上げ段階の開発・広告費を考慮して0.16億ドルと推定した。
アクセサリー(靴下・帽子・小物)
靴下や帽子などを靴・衣料と組み合わせて販売する。単価は低いが、既存顧客の購入点数を増やす役割がある。
| 数量年間販売数量(百万点、推定) | 価格一点当たり会社実現売上(米ドル、卸売と直販の加重平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4.8 | 10 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.0 | 16 | 2 | 0 |
取り方:2025年20-Fのアクセサリー売上39.6百万スイスフランをfactsの全社ドル売上に比例換算して0.48億ドルとした。2025年の成長は主に靴下と帽子による。販売点数は非開示のため、低価格の靴下が数量の中心で、卸売取引が含まれることから平均実現単価10ドル、約478万点と推定した。アクセサリーは靴下以外も含むため、世界の靴下市場をそのまま全体の市場規模とはしない。製品別営業利益は開示がなく0.05億ドルと推定配賦した。
リスクと懸念
ブランドの流行と競合によるシェア喪失
オンの2025年売上の93%は靴であり、製品の人気への依存が大きい。顧客が他社へ乗り換える費用はほとんどない。ナイキとアディダスの開発力が回復し、ホカ、アシックス、ニューバランスが高価格帯で競争を強めれば、値引きを増やさずにシェアを取ることは難しくなる。人気の低下が複数の製品世代で続くと、数量、単価、利益率が同時に悪化する。
ベトナムへの製造集中と関税
2025年の靴生産の約90%はベトナムに集中していた。現地の労働力不足、貿易政策、物流混乱、品質問題が起きると、生産量と原価の両方に影響する。短期的には米国の追加関税を負担しながら高い粗利益率を維持したが、それが10年続く保証はない。製造先を移すにも時間と費用がかかり、販売価格へ転嫁できない場合は利益率が下がる。
直営店と物流施設の固定費
直販比率の上昇は粗利益率を押し上げるが、店舗の賃料、販売員、内装費、倉庫の固定費を増やす。2025年末には約6.2億スイスフランのリース負債に加え、新規契約の賃貸約1.5億スイスフランがあった。IFRSでは既にリースが貸借対照表に計上されている。売上が落ちても契約費用は残るため、悲観では在庫処分と閉店費用が利益を大きく削る。
新競技への進出と開発投資の失敗
LightSprayの量産や、サッカー、ゴルフ、トレーニングへの展開は大きな機会である。しかし、新しい製法が広い価格帯で採算に合うかはまだ検証が必要だ。新競技では既存大手が選手、クラブ、流通を押さえており、宣伝費が先行する可能性がある。新商品が定番にならなければ、広告と開発に使った現金は十分な利益を生まない。
創業者支配と株式報酬による希薄化
創業者グループは2025年末時点で議決権の約56.1%を保有し、一般のクラスA株主は重要な意思決定を左右しにくい。2025年には株式報酬の費用が約0.8億ドルあり、添付データの株数も約2%増えた。2026年に承認した10億ドルの自社株買いは前進だが、実際の買い戻し額と株式報酬による増発を比べなければ、既存株主への正味の還元は分からない。
スイスフランと海外売上の通貨差
オンはスイスフランで決算を発表し、米州、欧州、アジアで売上を得る。2025年には為替評価損が1.73億スイスフラン発生し、純利益が営業利益より大きく減った。うち相当部分は未実現の評価損だった。10年の価値はドル建てとし、為替の筋書きによる利益を見込まないが、報告上の利益と実際の現金収支は年度ごとに大きく異なりうる。
高い成長目標と株主価値の違い
2029年の会社目標は売上と調整後EBITDAの成長を示すが、希薄化後の一株当たり価値や、資本コストを超える投資利回りを約束するものではない。2030年以降に成長率が落ちると、広告、物流、店舗に投じた資金の回収が遅れる可能性がある。成長の勢いだけで企業価値を測ると、ROEの低下と新規投資の利回りの悪化を見落とす。
今後の分かれ目
- 2027年以降も靴の現地通貨売上が年15%以上伸び、直販比率が50%前後へ上がる
- 数量の伸びと販路の改善が同時に進んでいる証拠となる。楽観・やや楽観の確率を引き上げ、2035年の靴の販売足数と営業利益率を上方修正する。
- 2029年の売上が56億スイスフラン以上、調整後EBITDA利益率が22%以上になる
- 会社の中期目標が実際の利益に結び付いたことを確認できる。ただしIFRS営業利益率と純利益率も同時に改善していることを確かめてから、中立の価値を引き上げる。
- 粗利益率が60%を継続して下回り、値引きが複数四半期続く
- 直販比率が増えても価格決定力を守れなくなった可能性が高い。靴の実現単価と営業利益率を下げ、やや悲観・悲観の確率を引き上げる。
- 衣料の売上構成が10%を超え、製品別利益を伴って成長する
- 靴への集中が緩み、既存顧客の購入点数を増やせていると判断できる。衣料の数量と利益率を引き上げ、ブランドの寿命に対する不確実性も低下する。
- 2029年までの10億ドルの自社株買いで、株式報酬を差し引いた株数が持続的に減少する
- 株主還元が単なる希薄化の穴埋めでないことを確認できる。将来の正味還元を増やし、余剰現金が株主に戻る割合も再評価する。
- ベトナムへの靴生産集中が低下し、他国でも品質と原価を保てる
- 貿易政策と供給停止に対する耐久力が増す。短期の製造原価は上がる可能性があるため、粗利益率への影響と供給の安定性を合わせて判断する。
- 2030年以降に世界の販売足数が横ばいとなり、直販店の営業費用が増え続ける
- 市場のシェアを取る成長期が終わり、再投資の利回りが低下したと判断する。中立の販売足数と利益率を下方修正し、長期の倍率を引き下げる。
見ておくもの
- 靴の販売数量の会社開示開始、または売上成長を数量と実現単価へ分解できる資料
- 靴・衣料・アクセサリー別の現地通貨売上成長率と売上構成
- 米州・アジア太平洋・欧州の成長差と、アジアの売上構成比
- 直販売上比率、直営店数、既存店売上、ECの成長率
- 粗利益率65%前後の維持、定価販売比率、在庫回転と値引き
- IFRS営業利益率と調整後EBITDA利益率の差、株式報酬費用
- 2029年の売上56億スイスフラン以上、調整後EBITDA利益率22%以上の進捗
- ナイキ、ホカ、アシックス、アディダスとのシェアと商品価格の比較
- 自社株買いの実行額、株数の純減、余剰現金とリース負債の推移
- LightSprayの量産規模、製造原価、主力商品への展開と再購入率
倍率と資本コストの決め方
価値の出発点は株価ではなく、製品別の販売数量と会社実現単価である。2025年の製品別売上は20-Fの比率をfactsのドル建て財務へ合わせ、販売足数と単価は非開示であることを明示して推定した。2035年の利益は売上と営業利益率から出し、倍率にはk=9.0%、成熟後のg=2〜4%、事業ROE、RONIC、堀の残存割合を使った。中立PER12.58倍は正当化上限約14.14倍の89%であり、市場の現在または過去のPERから求めていない。悲観では帳簿上の自己資本をそのまま床にせず、現金、売掛金、在庫の回収価値を税後・処分費控除後で見た。オンは既にIFRSでリース負債を計上しており、直営店の固定費を悲観利益から消していない。クラスB議決権株は10分の1の経済的持分換算で時価総額に含まれ、さらに株主持分を割り引く二重計算はしていない。結果として割高方向の結論になったが、現在の株価に価値を寄せる調整はしていない。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にquality+1.0%を加えて9.0%。デッカーズの9.2%に近いが、直販の粗利益率と純現金を評価してわずかに低くした。ただし、デッカーズより営業利益率が低く、ブランドの歴史も短いので大きな品質割引は認めない。β、過去の株価変動、現在の市場倍率は使わない。