結論
オライリー・オートモーティブは、米国を中心にメキシコ・カナダを含む 6,695 店(2026 年 6 月末)を持つ自動車部品の小売・卸で、売上のほぼ半分を修理工場などのプロ向け、残り半分を自分で直す一般客(DIY)が占める。2025 年は売上 178 億ドル(約 +6%)、営業利益 35 億ドル(営業利益率 19.5%)、純利益 25 億ドル、既存店は +4.7% で 33 年連続の増加。2026 年 4〜6 月期は既存店 +6.0%(プロ約 +10%)で、通期の既存店見通しを 4〜6% に引き上げた。
需要は「車の台数 × 車齢 × 修理の必要」で決まり、平均車齢は約 13 年と過去最高で、景気が悪い時ほど古い車を直す需要が増える。業界は約 1,700 億ドルで、同社のシェアは約 10%。競合はオートゾーン(AutoZone)、アドバンス・オート・パーツ、NAPA(ジェニュイン・パーツ)。プロ向けは店舗から数時間以内に部品を届ける配送網が堀で、小売の中でも景気に強い。
バリュー投資の観点では、事業の質は申し分ない(10 年後も車は壊れ、直される)。弱点は値段と資本構成で、自己資本はマイナス(自社株買いの累積)、純負債 83 億ドルを抱え、今の PER は 29 倍と高い。資本コストは 7.5%(基本 8.0% + quality −0.5%)。数量 × 価格で 10 年を積み上げると、中立の 10 年後は営業利益 60 億ドル・純利益 39 億ドルで、投下資本の利益率が約 35%(借入を乗せた式の ROE 約 66%)と高く、伸びに要る元手がほとんど要らない。利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 2/3 ×(事業の ROE − k)。配送網と在庫の厚みの強い堀で残る割合 2/3)の 9 割に置いた中立の倍率は約 23 倍、時価総額は約 900 億ドル。配当は無く自社株買いが還元の全てで、中立の 10 年の年率は +5〜6% と資本コスト 7.5% に届かない。総合の差は約 −10% で、適正からやや割高。「質は最高、値段は妥当からやや高い」が結論である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず 10 年後を問う。オライリーは、車が走り続け、壊れ続ける限り需要がある事業で、わからなさは小さい。部品の配送網と、プロとの関係という堀は、10 年後も存在し、プロ向けの比率が上がる分だけむしろ広がる。EV と自動運転は車の寿命と整備の頻度を変えうるが、10 年の間に保有台数の大部分が入れ替わるとは考えにくい。
オーナー利益を見る。純利益 25 億ドルに減価償却を足して設備投資を引いた FCF は 2025 年に 16 億ドル(前年 20 億ドル)と、出店の設備投資がかさんで減った。株式報酬は小さく(推定)、時価総額 737 億ドルに対する利回りは約 2.2% と低い。これは 10 年国債 5% を大きく下回り、成長が年 +6% でも、倍率が縮めば合計は資本コスト 7.5% に届かない。
資本配分は優秀。ただし買い戻しを PER 20〜30 倍で続けており、倍率が高いほど 1 ドルあたりの価値は薄い。安全域は薄い:中立で年率 +5〜6% と資本コスト 7.5% に届かず、構造的に負ける悲観でも還元を含めて元本の約 9 割は残る(時価総額は今の約 6 割、還元で補う)。景気後退でも崩れにくい事業なので、いつか倍率が 20 倍前後まで下がる局面を待つ価値がある。素晴らしい会社だが、式で測れば値段は妥当からやや高い。
何で稼ぐ会社か
オライリーの売上は、顧客で 2 つに分かれる。一つは DIY(自分で車を直す一般客)で、バッテリー・ワイパー・オイル・ブレーキ部品・洗車用品などを店頭で買う。2025 年の DIY 売上は約 89 億ドル。客数はわずかに減っているが、単価の上昇(物価と部品の複雑化)で売上は低い 1 桁の増加が続く。もう一つはプロ(修理工場・整備士・車両管理会社)で、約 90 億ドル。プロは品切れと配送の遅れを最も嫌うので、店舗の在庫の厚み、1 日に何度もの配送、技術の問い合わせ、与信が選ぶ理由になる。2025 年 7〜9 月期の DIY とプロの売上はほぼ半々だった。
店舗は 2025 年末で 6,585、2026 年は純増 225〜235 店の計画で、新規出店が年 3.5% ほど売上を押し上げる。近年はメキシコ(2024 年にマヤサ(Mayasa)を買収)とカナダに広げており、いずれも売上に占める割合はまだ小さい。大型の買収は見込まないと会社は述べている。
利益の構造は、粗利益率 51% 前後(部品の仕入れの規模と物流で稼ぐ)、販管費の率が高い店舗運営、営業利益率 19〜20% という形で、同業のオートゾーンとほぼ並ぶ。セグメントごとの営業利益は開示が無いため、DIY 20.5%・プロ 18.5%(プロは粗利益率が低いが販管費の率が低い。推定)と置き、how に方法を書いた。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 は配送網(ハブ・アンド・スポーク)で、大きな物流拠点と地域のハブ店に在庫を重ねて置き、修理工場に当日中に部品を届ける。新規参入者がこの在庫と物流の密度を再現するには何年もかかる。第 2 はプロとの関係で、整備士は 1 度に使う仕入れ先を絞り、与信・技術情報・配送が一体で切り替えにくい。プロ向けの既存店は 4 四半期連続で 2 桁成長している。第 3 は規模で、年間 178 億ドルの売上が部品の仕入れ価格を下げ、粗利益率 51% を支える。
資本効率は高い。過去 12 期の営業利益率は 17.6〜22.0% で、リーマン前後でも 9.7% を下回らなかった(過去の最悪は 2008 年の 9.7%)。自己資本はマイナスで ROE は意味を持たないが、投下資本(純負債〔リース込み〕+ 自己資本)の税引き後利益率は約 35%(2025 年:税引き後営業利益 約 27 億ドル ÷ 約 75 億ドル)。経営は現場から昇進する保守的な風土で、出店・物流・買収はいずれも節度がある。
弱みは 3 つ。(1)DIY の客数がわずかに減っており、売上は単価の上昇で伸びている。(2)プロ向けの比率が上がると粗利益率が薄まる(2026 年 4〜6 月期は仕入れ原価の低下と物流の効率で相殺し、粗利益率 51.4% を維持)。(3)自社株買いを借入で増やしているため、負債が増えて金利の上昇で利払いが重くなる。堀は厚いが、値段がそれを織り込みすぎている点が最大の課題である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の自動車部品・修理の市場は約 1,700 億ドル(同社の CFO の発言)で、2026 年は +5% 前後の予測。需要の中心は保有台数(約 2.9 億台)と平均車齢(約 13 年)で、新車価格の上昇と高金利で買い替えが遅れ、古い車を直す需要が増えている。EV は部品点数が約 3 割少ないが、保有台数に占める割合が低く、10 年で部品の需要を大きくは減らさない。
競争は寡占に近い。部品小売はオライリー(約 6,700 店)とオートゾーン(米国中心で約 6,800 店規模、世界 8,031 店)が 2 強で、アドバンス・オート・パーツは店舗閉鎖を進め、NAPA(ジェニュイン・パーツ)は卸が中心。プロ向けはオライリーと NAPA が強く、オートゾーンは商業向けを急いで伸ばしている(2026 年度の商業向け +10.6%、売上の約 28%)。アマゾンのネット通販は DIY の小物を削るが、重い・急ぎ・技術相談が要る部品は店舗が強く、プロには効きにくい。新車ディーラーの整備部門も部品を自前で調達するため、プロの取り合いが続く。
循環のどこにいるか:2026 年は既存店 +6%(上半期 +7%)と好調で、関税による値上げの面もある。景気後退では DIY が増えるため、部品小売は景気に強い。業界ノートの中立(市場は名目で年 +4.5%、車齢の上昇で需要が増える)を使い、オライリーに特別な追い風・逆風は置かない。業界ノートの資本コストの目安は古いので使わず、SCHEMA_US の式(基本 8.0% + quality −0.5% = 7.5%)とした。
資本政策と M&A
還元は自社株買いが全てで、配当は出さない。2025 年の自社株買いは 21 億ドル、株数は年 2〜7% 減り続けてきた(直近 12 期で累積約 6 割減)。2026 年 4〜6 月だけで 15 億ドルを買っており、年間のペースは前年を大きく上回る。借入を増やして買う方針で、調整後の負債が EBITDAR の 2.5 倍前後に収まるように運営していると推定する。自己資本が -8 億ドルとマイナスなのはこの累積の結果で、借入の返済が滞るという意味ではない。
M&A はメキシコ(マヤサ)・カナダ(ヴァスト(Vast)の買収)など小さな部品卸・小売の買収が中心で、大型の買収は見込まないと述べている。ホームセンターの SRS・GMS のような価値を壊す大型買収の危険は小さく、資本配分は節度がある。出店は年 225〜235 店の純増で、新店の投下資本は小さく回収が早い。
論点は 2 つ。借入で自社株買いをするため、金利が 5〜5.75% に上がる世界では利払いが純利益を削る点(brief の推定では 10 年で +1 億ドル程度だが、買い戻しのための借入増を含めると 4〜6 億ドル増える)。もう一つは、PER 29 倍という高い値段で買い戻すことの是非で、倍率が下がる局面では買い戻しの価値が薄れる。 なお、決算期末後に実行済みの自社株買い 24.3 億ドル(10-Q・2026 年 1〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元(payout_oku)からは除いてある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
オライリーは、プロ向けの勢いが 4 四半期連続で 2 桁成長し、シェア 10% の業界で、まだ伸びしろが大きい。プロの整備士は店舗の在庫・配送・与信に縛られるため切り替えにくく、競合のオートゾーンも商業向けを急ぐが、オライリーは約 6,700 店の物流で一歩先にいる。平均車齢が約 13 年と過去最高で、新車価格と高金利が買い替えを遅らせる限り、部品の需要は物価を超えて伸びる。
財務の規律も厚い。出店は年 225〜235 店の純増で、新店の回収は早く、粗利益率は 51% 超を維持している。景気後退でも DIY が増えるため、2008〜09 年の営業利益率は 9.7% を下回らず、株価の下げも小さかった。堀が広がる中、市場が名目で年 +4.5% 伸び、シェアも毎年少しずつ上がれば、売上は 10 年で 1.8 倍、純利益は年 +5〜6%、自社株買いで 1 株あたりはさらに伸びる。
PER 29 倍は高く見えるが、投下資本の利益率が 25% を超え、成長が長く続く会社には、元手を増やさずに伸びる分の価値がある。ディフェンシブで成長するという稀な性質への対価であり、買い戻しで 1 株あたりの利益も伸びる。
慎重な見方
PER 29 倍は、利益ベースの中立(約 23 倍)を上回り、安全域がない。10 年の中立でも年率 +5〜6% で資本コスト 7.5% に届かず、配当が無い分は自社株買いだけがリターンになる。利益の伸びは年 +4〜5% にとどまり、倍率の縮みが成長を食う。
成長の質も揺らぐ。DIY の客数は減っており、売上は単価の上昇(関税で一部を転嫁した分)が支えている。プロ向けの比率が上がると粗利益率が薄まり、オートゾーン・アドバンス・オート・NAPA・ディーラーの整備部門が商業向けで追い上げて、プロの囲い込みの堀は想定より狭いかもしれない。2026 年の好調には関税による値上げと天候の押し上げがあり、一回限りの面もある。
自己資本が -8 億ドル、純負債 83 億ドルで、自社株買いを借入で増やす財務は金利 5% の世界では重い。EV と自動運転が車の寿命と整備の頻度を変え、アマゾンと AI の購入窓口が DIY の小物の価格を比べ尽くせば、10 年の構造的な悲観は無視できない。
どちらに重みを置いたか
事業の質と堀は強気の見方が強い(特にプロ向け・配送網)。値段の議論では、投下資本の利益率 35% を利益ベースで数えても 10 年の中立は約 23 倍・年率 +5〜6% で、資本コスト 7.5% に届かない。総合の差は約 −10% で、適正からやや割高。確率は楽観・やや楽観の合計を 32% とし、悲観は 10%(構造変化)に置いた。結論は「質は最高、値段は妥当からやや高い」。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 102.35 ドル845 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 41.21 ドル340 億ドル)。 今の値に割り戻すと 78.37 ドル647 億ドル、今との差 −14.8%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 127.46 ドル1,052 億ドル | 50.38 ドル416 億ドル | +93.3% | +6.8% | 17.78 ドル147 億ドル |
| やや楽観 | 22% | 118.35 ドル977 億ドル | 46.74 ドル386 億ドル | +79.4% | +6.0% | 36.32 ドル300 億ドル |
| 中立 | 36% | 109.50 ドル904 億ドル | 43.10 ドル356 億ドル | +65.9% | +5.2% | 54.94 ドル453 億ドル |
| やや悲観 | 22% | 85.70 ドル707 億ドル | 35.83 ドル296 億ドル | +32.1% | +2.8% | 26.74 ドル221 億ドル |
| 悲観 | 10% | 52.96 ドル437 億ドル | 24.93 ドル206 億ドル | −15.3% | −1.7% | 7.79 ドル64 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 102.35 ドル845 億ドル | 41.21 ドル340 億ドル | +56.1% | +4.6% | 143.57 ドル1,185 億ドル |
今の株価時価総額 92.00 ドル759 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:プロの囲い込みが進み、シェアが 10 年で 3 割上がる 利益 43 億ドル · PER 24.5 倍 · 株価時価総額 127.46 ドル1,052 億ドル
車齢が 14 年を超えて整備の需要が増え、プロ向けの市場は 10 年で 1.18 倍(実質)、価格 1.41 倍。オライリーのシェアはプロ 13.5%、DIY 12.2% に上がり、売上は 349 億ドル、営業利益率 19.2%、営業利益 67 億ドル、純利益 43 億ドル。出店は年 200 店台を続け、配送網の差でオートゾーン・NAPA に勝つ。還元は 10 年で 416 億ドル。k − g は下限の 2.5%)。競合ではアドバンス・オート・パーツが店舗を閉じ、NAPA は産業部品に注力して、プロ向けの取り合いでオライリーの配送網が一段と優位になる。自社株買いの価値も高く、1 株あたりの利益はさらに伸びる。
- DIY(自分で直す一般客):数量 856(米国・メキシコ・カナダの DIY 向け市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 17.2%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 147 億ドル・営業利益 30 億ドル。DIY のシェアと利益率(物価指数 1.41)
- プロ向け(修理工場・整備士・車両管理):数量 1,062(米国・メキシコ・カナダのプロ向け(DIFM)市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 19.0%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 202 億ドル・営業利益 37 億ドル。プロ向けのシェアと利益率(物価指数 1.41)
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 4.0%(価格 3.5%+店舗とシェアの拡大。上限の 4% に)・事業の ROE 66.6%(ROIC に業界並みの借入 1 倍を乗せた値。帳簿の自己資本はマイナスで、自社株買いの累積による)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 46.9%、10 年目より先の正当化 PER 26.1 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 27.2 倍。プロ向けの取り合いに勝つ側なので上限の 90% に置き 24.5 倍。
確率:プロ向けの市場の実質の伸びが年 +1.7%、オライリーのシェアが年 +3%(10 年で 3 割強)で進む筋書き。確率は 10%。 シェアが 10 年で 3 割上がるには競合の不振も要る。10%。
やや楽観 22% やや楽観:シェアが年 +2.5% ずつ上がる 利益 41 億ドル · PER 23.8 倍 · 株価時価総額 118.35 ドル977 億ドル
プロ向けの市場は 1.16 倍(実質)、オライリーのシェアはプロ 13.0%、DIY 11.85% に上がる。売上 333 億ドル、営業利益率 19.2%、営業利益 64 億ドル、純利益 41 億ドル。物価 3.5% の中でも値上げと物流の効率で人件費を吸収できる。還元は 10 年で 386 億ドル。競合ではオートゾーンが商業向けで追うが、オライリーは配送網とプロとの関係でシェアを守り、新店の効果で年 2.5% ずつ上げる。EV の保有割合は 1 割台にとどまり、部品の需要に大きな影響はない。 営業利益率は DIY・プロとも物価の転嫁で守られ、プロ比率の上昇による粗利益率の薄まりも費用の効率化で吸収する。借入での自社株買いは続き、利払いの増加は純利益の伸びを少し削るにとどまる。
- DIY(自分で直す一般客):数量 848(米国・メキシコ・カナダの DIY 向け市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 16.7%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 142 億ドル・営業利益 29 億ドル。DIY のシェアと利益率(物価指数 1.41)
- プロ向け(修理工場・整備士・車両管理):数量 1,044(米国・メキシコ・カナダのプロ向け(DIFM)市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 18.3%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 191 億ドル・営業利益 35 億ドル。プロ向けのシェアと利益率(物価指数 1.41)
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 3.9%(価格 3.5%+店舗数の伸び)・事業の ROE 66.7%(ROIC に業界並みの借入 1 倍を乗せた値。帳簿の自己資本はマイナスで、自社株買いの累積による)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 47.0%、10 年目より先の正当化 PER 25.5 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 26.5 倍。堀が保たれ成長が続く側なので上限の 90% に置き 23.8 倍。
確率:堀が保たれ、プロ向けの比率が上がるが利益率は 19% 台を維持する筋書き。確率は 22%。 堀(配送網・プロとの関係)が保たれ、緩やかにシェアを取る筋書き。22%。
中立 36% 中立:優良な成熟小売として名目 +6% 台で伸び、営業利益率はプロ比率の上昇で微減 利益 39 億ドル · PER 23.2 倍 · 株価時価総額 109.50 ドル904 億ドル
米国の自動車部品市場は名目で 1.55 倍(価格 1.41 倍、実質の数量は年 +1%)。オライリーのシェアは DIY が 11.0% から 11.5%、プロが 10.0% から 12.5% に上がり、売上は 317 億ドル(年 +6.0%)、営業利益率 18.9%(プロ比率の上昇で粗利益率が薄まる)、営業利益 60 億ドル。借入での自社株買いが続き、金利が 5.75% に借り換えられて利払いは 10 億ドルに増える。純利益 39 億ドル。設備投資は売上の約 3%、還元は 10 年で 356 億ドル(借入で上乗せ)。
- DIY(自分で直す一般客):数量 840(米国・メキシコ・カナダの DIY 向け市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 16.2%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 136 億ドル・営業利益 27 億ドル。DIY のシェアと利益率(物価指数 1.41)
- プロ向け(修理工場・整備士・車両管理):数量 1,026(米国・メキシコ・カナダのプロ向け(DIFM)市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 17.6%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 181 億ドル・営業利益 33 億ドル。プロ向けのシェアと利益率(物価指数 1.41)
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 3.8%(価格 3.0%+数量とシェアの小幅な伸び)・事業の ROE 65.6%(ROIC に業界並みの借入 1 倍を乗せた値。帳簿の自己資本はマイナスで、自社株買いの累積による)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 46.2%、10 年目より先の正当化 PER 24.8 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 25.7 倍。配送網と在庫の堀が保たれる側なので上限の 90% に置き 23.2 倍。
確率:業界ノートの中立(市場 約 1.55 倍、営業利益率は横ばい)に従い、新店と配送網でシェアが毎年少しずつ上がる分を足した。確率は 36%。 市場の伸びと緩やかなシェア上昇。36%。
やや悲観 22% やや悲観:オートゾーンとディーラーにプロを取られ、利益率が下がる 利益 33 億ドル · PER 21.4 倍 · 株価時価総額 85.70 ドル707 億ドル
プロ向けの市場の伸びが実質 +1%(10 年で 1.10 倍)にとどまり、オートゾーンの商業向け強化、NAPA、ディーラーの整備部門が取り合って、オライリーのシェアはプロ 11.3%、DIY 10.8% 止まり。アマゾンが DIY の小物を削る。営業利益率は 18.0%、売上 283 億ドル、営業利益 51 億ドル、純利益 33 億ドル。還元は 10 年で 296 億ドル。競合の動きに加えて、関税で上がった仕入れ原価を転嫁しきれず、粗利益率が 1 ポイント薄まる。自社株買いは続けるが、利払いが増えて純利益の伸びを削る。
- DIY(自分で直す一般客):数量 824(米国・メキシコ・カナダの DIY 向け市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 15.2%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 125 億ドル・営業利益 24 億ドル。DIY のシェアと利益率(物価指数 1.41)
- プロ向け(修理工場・整備士・車両管理):数量 990(米国・メキシコ・カナダのプロ向け(DIFM)市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 15.9%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 158 億ドル・営業利益 27 億ドル。プロ向けのシェアと利益率(物価指数 1.41)
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 3.5%(価格 3.0%+数量の微増)・事業の ROE 62.2%(ROIC に業界並みの借入 1 倍を乗せた値。帳簿の自己資本はマイナスで、自社株買いの累積による)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 44.0%、10 年目より先の正当化 PER 23.0 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 23.8 倍。商業の取り合いで押される側なので上限の 90% に置き 21.4 倍。
確率:商業向けの競争が激しくなり、シェアが伸びず、プロ比率の上昇で利益率が下がる筋書き。確率は 22%。 プロ向けの取り合いは既に始まっている。22%。
悲観 10% 悲観:構造的に負ける(EV・自動運転・プロの取り合いで優良さを失う) 利益 23 億ドル · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 52.96 ドル437 億ドル
車の保有台数に占める EV の割合が高まり、部品点数が約 3 割少ない分で DIY の市場は実質 −5%(10 年)。プロ向けも +5% にとどまり、シェアは DIY 9.5%・プロ 9.8% に下がる。価格を上げられず営業利益率は DIY 17%・プロ 15%(全社 15.9%)。売上 233 億ドル、営業利益 37 億ドル、純利益 23 億ドル(今の 9 割)。借入での自社株買いは利払いが増えて細り、還元は 10 年で 206 億ドルにとどまる。アマゾンと AI の購入窓口が小物の価格を比べ尽くし、プロの囲い込みの堀も狭まる。店舗網・物流網・在庫が床で、二重には下げていない。
- DIY(自分で直す一般客):数量 760(米国・メキシコ・カナダの DIY 向け市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 13.4%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 102 億ドル・営業利益 17 億ドル。DIY のシェアと利益率(物価指数 1.41)
- プロ向け(修理工場・整備士・車両管理):数量 945(米国・メキシコ・カナダのプロ向け(DIFM)市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定))× 価格 13.8%(オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41))→ 売上 131 億ドル・営業利益 20 億ドル。プロ向けのシェアと利益率(物価指数 1.41)
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 7.50%・g 3.0%(価格 2.5%+数量の減少)・事業の ROE 54.3%(ROIC に業界並みの借入 1 倍を乗せた値。帳簿の自己資本はマイナスで、自社株買いの累積による)・moat 強い(残る割合 0.67)→ RONIC 38.7%、10 年目より先の正当化 PER 20.5 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 21.1 倍。EV と通販で DIY が縮む側なので上限の 90% に置き 19.0 倍。
確率:EV と自動運転で整備の頻度が減り、アマゾン・ディーラー・オートゾーンにプロを取られる。もう優良ではなくなっている筋書き。確率は 10%(PER が高いため厚く)。 EV・自動運転・AI の購入窓口で優良さを失う確率。PER が高く傷が深いので 10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
DIY(自分で直す一般客)
店頭・通販で部品・用品を買う一般客。客数は横ばいから微減、単価で伸びる。
| 数量米国・メキシコ・カナダの DIY 向け市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定) | 価格オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 800 | 11.0% | 88 | 18 |
| 10 年後 中立 | 840 | 16.2% | 136 | 27 |
取り方:業界 約 1,700 億ドル(CFO の発言)のうち DIY を 800 億ドル、プロ(DIFM)を 900 億ドルと置く(推定)。2025 年の DIY 売上 約 88 億ドル(7〜9 月期の DIY 23.0 億ドル × 4 の目安)÷ 800 = シェア 11.0%。営業利益率 20.5%(プロより粗利益率が高い)は推定で、全社 35 億ドルから逆算。売上 = 市場(実質)× シェア × 物価指数。競合はオートゾーン(DIY 比率が高い)、アドバンス・オート・パーツ、ウォルマートなどの量販店、アマゾン。
プロ向け(修理工場・整備士・車両管理)
修理工場へ配送する部品の卸売り。プロ向けは 4 四半期連続で 2 桁成長。
| 数量米国・メキシコ・カナダのプロ向け(DIFM)市場(億ドル、2025 年の値段に直した実質、推定) | 価格オライリーのシェア × 物価指数(2025 年=1。中立で 10 年 1.41) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 900 | 10.0% | 90 | 17 |
| 10 年後 中立 | 1,026 | 17.6% | 181 | 33 |
取り方:プロ市場を 900 億ドルと置き(推定)、2025 年のプロ向け売上 約 90 億ドル(7〜9 月期 23.1 億ドル × 4 の目安)÷ 900 = シェア 10.0%。営業利益率 18.5%(粗利益率はプロの方が低いが、販管費の率が低い。推定)。競合は NAPA(ジェニュイン・パーツ)、オートゾーンの商業向け(売上の約 28%、+10.6%)、アドバンス・オートのカーケスト、ディーラーの整備部門。売上 = 市場(実質)× シェア × 物価指数。
リスクと懸念
値段(倍率の縮み)
PER 29 倍は利益ベースの中立(約 23 倍)を上回る。k が 0.5 ポイント上がれば式の倍率は大きく下がり、安全域はほぼ消える。倍率が縮めば、配当の無い株の 10 年のリターンは資本コスト並みにとどまる。
競争(プロ向けの取り合い)
オートゾーンは商業向けを +10.6%(売上の約 28%)で急ぎ、NAPA とディーラーの整備部門も動く。プロの囲い込みの堀は配送網に依存し、価格競争や在庫の拡大が起きれば、プロ比率の上昇の中で利益率が下がる。筋書きでは悲観の確率と筋書きに反映し、資本コストには足していない。
DIY の客数の減少
DIY の客数はわずかに減り、売上は単価(物価と関税の転嫁)が支えている。単価の上昇が止まれば DIY は減収に転じ、アマゾンなどの通販・量販店に小物の価格比較で削られる。筋書きでは悲観の確率と筋書きに反映し、資本コストには足していない。
借入での自社株買い
自己資本は -8 億ドル、純負債 83 億ドル。2026 年 4〜6 月だけで 15 億ドルを買い、借入を増やす方針と推定される。金利 5〜5.75% で借り換えると利払いが増え、景気後退と重なれば還元の持続性が試される。
EV・自動運転・AI
EV は部品点数が約 3 割少なく、自動運転で事故と整備の頻度が変わりうる。10 年では保有台数の入れ替えが限られるが、20 年先を見れば部品の需要の構造が変わる。AI の購入窓口がネット通販に流れれば、DIY の入口を奪われる。
関税と仕入れ
部品の多くは輸入で、関税は仕入れ原価を押し上げ、価格に転嫁してきた。2026 年の既存店の好調には関税による値上げの面があり、転嫁が止まれば粗利益率の維持が難しくなる。筋書きでは悲観の確率と筋書きに反映し、資本コストには足していない。
今後の分かれ目
- 既存店売上が 2027 年に +3% を割ったら
- 2026 年の +6% が関税と天候の押し上げだったとわかり、やや悲観の確率を上げる。成長の鈍りは g と ROE に入れて倍率を引き直す(式の外では下げない)。
- プロ向けの既存店が 2 桁を割り、オートゾーンの商業向けが上回ったら
- プロの囲い込みの堀が想定より狭いと判断し、10 年のシェア上昇を取り下げる。
- リーマン級の景気後退(失業率 8% 超)が来たら
- DIY が増え、既存店は −2〜+5% にとどまるが、倍率が 29 倍から 20 倍前後へ縮み、株価は −30〜40% になりうる。配当が無いので値下がり以外の緩衝が小さい。
- 借入による自社株買いが金利の上昇で止まり、調整後の負債の水準を 2.0 倍へ下げ始めたら
- 還元の持続性が下がったということで、payout を 3 割減らして見直す。株数の減少も止まる。
- EV の新車販売の割合が 5 割を超え、保有台数に占める割合が 2 割を超えたら
- 部品の需要の構造変化が現実になり、10 年の悲観の確率を上げ、市場の実質の伸びを下げる。
見ておくもの
- 既存店売上(客数・客単価、プロ・DIY の別)
- プロ向けの既存店と、オートゾーンの商業向けの伸び
- 粗利益率と営業利益率(プロ比率の上昇の影響)
- 純負債・調整後負債 / EBITDAR と自社株買いの額
- 平均車齢と走行距離、新車価格
- 新規出店の数とメキシコ・カナダの伸び
倍率と資本コストの決め方
今の PER 29 倍を見る前に、DIY とプロの 2 つに分け、市場(実質)× シェア × 物価指数で売上を、営業利益率で利益を積み上げた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 2/3 ×(事業の ROE − k)。配送網と在庫の厚みの強い堀で残る割合 2/3)に、k 7.5%(基本 8.0% + quality −0.5%)・g 3.0〜4%・ROE(自己資本がマイナスなので ROIC 29〜36% に業界並みの借入 1 倍を乗せた値)を入れ、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) とした値の 9 割に置いた(中立 約 23 倍)。式の外の割り引き・今の 29 倍・過去の倍率への寄せはしていない。悲観は構造(EV・通販で DIY が縮み、プロの取り合いで利益率が下がる)から積み上げ、二重に下げていない。債務・競争・倍率の縮みは k に足さず、悲観の確率と悲観の g・ROE で表した。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality −0.5%。景気後退でも修理需要が落ちにくい(cycle −0.25%)うえ、プロ向けの配送網と在庫の堀で値決めを保てる(pricing −0.25%)。一方、自社株買いのための借金(debt +0.25%)と EV 化の長期の懸念(life −0.25%)を見て、下げは強い堀の下限 −0.5% に収めた。個別のリスク(DIY の客数減・オートゾーンとの競争・倍率の縮み)は k に足さず、筋書きと確率で表した。