結論
デッカーズは、ランニングシューズの HOKA(ホカ)とブーツのブランド UGG(アグ)の 2 本柱を持つ靴の会社で、売上は 54.7 億ドル(2026 年 3 月期、+9.8%)、営業利益は 12.6 億ドル(営業利益率 約 23%)、純利益は 10.2 億ドル。売上の内訳は HOKA 47%・UGG 50%・その他 3%、販売経路は卸が約 6 割、直営(店舗とデジタル)が約 4 割、地域は米国 58%・海外 42%(海外は +27% で伸び、米国は横ばい)である。
2025 年 5 月に通期見通しを撤回して株価が急落し、2026 年 10 月の株価は 52 週の高値から約 3 割安い。会社は 2027 年 3 月期の売上 58.6〜59.1 億ドル(+7〜8%)、営業利益率 21.5% 超を見込み、2028〜30 年も売上は年 高い 1 桁増・営業利益率は 20% 台前半と示した。懸念は、ナイキ・オンが HOKA の作ったクッション性ランニングに踏み込むこと、UGG が流行の波に左右されること、関税(想定税率 12.5%)の費用である。
バリュー投資の観点では、10 年後も両ブランドは存在する確率が高いが、UGG は流行商品であり、HOKA は育って十数年のブランドで堀の厚さを確かめきれていない。資本コストは 9.25%(基本 8.0% + quality 1.25%)。積み上げた中立の 10 年は売上 89.6 億ドル・営業利益率 21.8%・純利益 15.6 億ドルで、時価総額は約 220 億ドル(今の約 1.9 倍)。デッカーズは元手がほとんど要らない(元手に対する利益率が 90% 台)。それでも堀が薄いので、超過の稼ぎは先で 3 分の 1 しか残らないと見た。総合はやや割安(差 +29%)。10 年の期待の年率は +10% で、資本コスト 9.25% を上回る。倍率は約 13 倍。ただし悲観側(やや悲観+悲観)の確率を 37% と厚く置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、デッカーズは「数字は素晴らしいが、10 年後の姿は読み切れない」事業である。事業は理解しやすい:靴を作って売り、委託工場と流通網で稼ぐ。事業に要る元手は小さく(売上の約 18%)、稼いだ利益のほとんどをオーナー利益として自社株買いで株主に返せる。これは強い。
一方で、10 年後も強いかを確かめるのが難しい。HOKA はこの 10 年で大きく育ったが、クッション性ランニングは参入が容易で、ナイキ(規模と販売網)とオン(高価格のブランド)が本気で来た。堀は広がるとまでは言えない。UGG は定番の強さがあるが流行と気候に左右され、2 ブランド依存に近い。堀の広さの評価は「HOKA が定番として残る」前提に依存する。
資本配分は良好(買収で価値を壊さず、自社株買いは株価が下がった時に増やしている)。中立の 10 年は純利益 15.6 億ドル・営業利益率 21.8%・利益ベースの倍率 約 13 倍と純現金で、時価総額 約 220 億ドル。今の値段は、悲観の筋書き(HOKA が競争で行き詰まり、UGG の流行が終わる)に近い織り込みに見える。確信度は事業の存続には高く、利益の水準と時期には中くらい。安全域は、構造的に負ける筋書きでも時価総額と還元の合計が今の約 8 割残る点にある。
何で稼ぐ会社か
収益は HOKA・UGG・その他のブランドの靴・衣料・小物で、卸(スポーツ用品店・百貨店・アマゾン・海外の販売会社)と直営(自社の店舗・サイト・アプリ)で売る。製造はベトナム・中国・インドネシアなどの委託工場で、デッカーズ自身は設計・マーケティング・流通を持つ。
HOKA は 2026 年 3 月期の売上 25.9 億ドル(+15.9%)、2026 年 4〜6 月期は +7.7%(7.04 億ドル)と減速した。厚底のクッション性で、ロードとトレイルのランナーを入口に、歩く・立ち仕事の人の日常靴へ広げてきた(クリフトン・ボンダイ・スピードゴート)。同じ四半期の直営は +17%、卸は +3% で、後半は海外の出荷時期のずれが戻り、加速すると会社は述べる。UGG は 27.4 億ドル(+8.2%)で、羊毛ブーツの冬物から、サンダル・スリッポン・メンズへ広げる「年間を通した」戦略を進める。冬の気温と流行に左右される点が事業の特徴である。その他(Teva など)は 1.4 億ドルまで縮み、コーラブラ(Koolaburra)は段階的に終了、サヌーク(Sanuk)は売却した。
全体を決める変数は 3 つ。第 1 は卸と直営の比率(直営は粗利益率が高いが集客費がかかり、卸は安定するが取り分が低い)。第 2 は海外:2026 年 3 月期の海外は +27% で、米国(+0.2%)の弱さを補った。第 3 は関税で、会社は想定税率を 10% から 12.5% に上げ、粗利益率は 57.7% から 56.5% 前後へ下がる見通し。
売上は数量 × 価格で置く。数量は「ブランドごとの靴・衣料の点数(万点)」、価格は 1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合)で、開示がないため、市場規模 × シェアと売上からの逆算で推定した(HOKA は約 2,800 万点、UGG は約 3,900 万点)。
優良さと弱いところ
堀は 3 つある。第 1 は HOKA の製品力:厚底のクッションを大衆へ広げた先行者で、ロードランニングの専門店・理学療法士・立ち仕事の人(医療・飲食)の口コミが強く、小売価格の高い価格帯でシェアを取っていると会社は述べる。第 2 は UGG のブランド力:40 年以上の歴史を持つ羊毛ブーツの代名詞で、ほかの流行に押される時期があっても定番として戻ってきた。第 3 は財務:現金 19 億ドル・借金(リース込み)4 億ドルで純現金は 15 億ドル、事業に要る元手が小さく、売上が伸びても追加の投資がほとんど要らない。
価格を決める力は強い。粗利益率は 56〜58%(ナイキは 42〜45%)、営業利益率は 21〜24% と靴の会社で最上位で、2026 年 3 月期の自己資本利益率は 41%(自己資本が現金を含むので、事業の元手に対する利益率はさらに高い)。
弱い所は 4 つ。①ナイキ(2027 年春の新ライン)とオン(新しいクッション材 Surreal)が、HOKA の作ったクッション性ランニングに本格参入する。②UGG は流行の影響を受け、2013 年 12 月期には営業利益がほぼゼロまで落ちた前例がある。③米国の売上が 2026 年 3 月期に横ばい(+0.2%)で、成長の大半を海外と直営に頼る。④2 ブランドに利益が集中する(HOKA と UGG で売上の 97%)。現在の最高経営責任者はステファノ・カロティ。2025 年 5 月に通期見通しの撤回で信頼を傷めたが、2026 年 7 月には利益見通しを上方修正した。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のスポーツ靴・衣料の市場は約 4,000 億ドルで名目の伸びは年 +4〜5%(業界ノート)。ランニングシューズはその一部で、厚底(マックスクッション)が数年続いた最大の成長分野である。UGG のいる「ファッション寄りの履物(ブーツ・スリッポン・サンダル)」は成熟した大きな市場で、成長はブランドの熱量とカテゴリー拡大で決まる。
競合は 4 つの型。①ナイキ:世界最大のブランドだが 2025〜26 年は立て直し中で、ランニングの新製品(2027 年春のライン)でクッション性の市場に戻ってくる。HOKA の競合として最も大きい。②オン(On):高価格のランニングで伸び、新しい Surreal フォームで HOKA に正面から当たる。③アシックス・ニューバランス・サッカニー・ブルックス:専門店の棚で HOKA と競う。④UGG の側は、クロックスなどの履物ブランドや類似品(安価品)との競争と、気候と流行の波。
業界の形は 3 つの変化の最中にある。第 1 はランニングの競争が「クッション性」へ収れんし、各社が似た製品を出す時期に入ったこと。第 2 は直営と卸の振り子で、デッカーズは直営(+13%)と卸(+2%)をどちらも伸ばしている。第 3 は関税:靴は輸入比率が約 75% で、2025 年の相互関税は原価を押し上げた(会社の想定税率は 12.5%)。2026 年は還付が出る会社(ナイキなど)もあるが、デッカーズの見通しは還付の回収を見込んでいない。
業界ノートはデッカーズを「年 +7〜9%(HOKA 年 +15% → 10%)、営業利益率 23%」と置く。2026 年 4〜6 月期の HOKA の伸び(+7.7%)はこれより低く、会社の枠組み(売上 年 高い 1 桁・営業利益率 20% 台前半)も下回るので、この会社は中立を年 +5% 前後・営業利益率 22% 前後(業界ノートより低め)とした。
資本政策と M&A
資本政策は自社株買いが中心で、配当はない。2026 年 3 月期の自社株買いは約 11 億ドル、2026 年 4〜6 月期は 3.4 億ドル(330 万株)で、残りの承認枠は 47 億ドルある。株数は毎年 2〜4% ほど減り、株式報酬は年 約 0.4 億ドルと小さいため、還元はほぼそのまま 1 株あたりの価値になる。
M&A は HOKA の買収(2013 年)が大成功で、その後は小規模(コーラブラの終了・サヌークの売却)。大型の買収の計画は見当たらない。現金は 19 億ドル、借金(リース込み)4 億ドルで純現金 15 億ドル。時価総額 118 億ドルの約 13% にあたり、純現金は額面どおり 1 ドルを 1 ドルで数えた。借金が小さいので、金利の変化による利益の変化もほぼゼロ。種類株や Up-C の構造はなく、台帳の株数が会社全体を表す。TOB や再編の可能性は、時価総額 118 億ドルでも低い。
2026 年に決算期末後すでに実行した自社株買い 3.4 億ドル(10-Q・2026 年 4〜6 月)は、今の株数(時価総額)に反映済みなので、10 年の還元には数えず、自己資本の起点(21.6 億ドル)からも外した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
HOKA は先行者として、クッション性ランニングの「定番」の座を固めた。2026 年 3 月期の売上は 25.9 億ドル(+15.9%)、2026 年 4〜6 月期の直営は +17%。海外はまだ入口で、ロード・トレイル・日常靴(立ち仕事)の 3 つの入口を持つ。ナイキとオンが来ても、HOKA は小売価格の高い価格帯でシェアを取っていると経営陣は述べ、専門店・理学療法士の推薦という、後発が一晩で作れない口コミを持つ。
UGG はサンダル・スリッポン・メンズへの拡大で、冬物の 1 本足から年間商品へ移りつつあり、粗利益率は 56〜58% と高い。会社の枠組みは売上 年 高い 1 桁・HOKA 低い 2 桁・UGG 中位の 1 桁で、2026 年 7 月にも利益見通しを上方修正した。純現金と、事業に要る元手の小ささから、利益のほとんどを自社株買いに回せる。
10 年で売上は年 +8〜9%(HOKA 年 +11〜12%)、営業利益率は 24% 近く、純利益は 24 億ドル。利益ベースの倍率(g 4%)で時価総額は約 330 億ドル(今の約 2.8 倍)。この場合、HOKA がナイキ・アディダスに並ぶ第 3 の柱のブランドになる。
慎重な見方
HOKA の減速は始まっている。2026 年 4〜6 月期は +7.7%(前年同期は +20% 前後)、卸は +3% にとどまり、会社は「出荷時期のずれ」と説明するが、ナイキとオンの新クッション製品は 2027 年に棚へ並ぶ。クッション性ランニングは製品の差が小さく、参入が簡単で、最終的に価格競争と値引きで利益率が下がる。HOKA の営業利益率(概算で約 26%)は、競争が激しくなるほど守りにくい。
UGG は流行の影響を受ける商品で、売上 27.4 億ドルがそのまま続く保証はない。流行が反転すれば数量が 3〜4 割落ちうる。2013 年 12 月期に営業利益がほぼゼロまで落ちた前例がある。関税も、想定税率 12.5% への引き上げで粗利益率は 57.7% から 56.5% 前後へ下がり、さらに上がれば利益率の天井が下がる。米国の売上は 2026 年 3 月期に横ばいで、成長は海外と直営にほぼ頼っている。
10 年後の営業利益率は 19% 前後に落ち、売上は年 +2.7%(HOKA +4.5%・UGG +1.2%)、純利益は 11 億ドルで、倍率(g 3.0%)は約 11 倍。時価総額は 135 億ドル(今の約 1.1 倍)で、配当がないぶん期待は小さい。これはさらに悪い筋書き(HOKA が値引きに転じ、UGG の流行が終わる。時価総額 55 億ドル)を除いた中間である。
どちらに重みを置いたか
事業の質(粗利益率・元手の小ささ・財務・還元)は強気の見方が勝ち、競合の参入と UGG の流行の影響は慎重な見方が勝つ。確率は 10 年で中立 35%、やや楽観 20%、楽観 8%、やや悲観 25%、悲観 12% とし、悲観側(やや悲観+悲観)を 37% と厚くした(ナイキ 35%、ガーミン 33%)。HOKA の競合が複数で強いこと、UGG が流行商品であること、2 ブランドに利益が集中していることの 3 点で悲観側を厚くした。倍率は利益ベース(中立は g 4.0%・事業の ROE 96%・k 9.25%、上限の 75% で約 13 倍)で測った。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 142.62 ドル197 億ドル(+ 配当配当と自社株買いの合計 80.26 ドル111 億ドル)。 今の値に割り戻すと 110.45 ドル153 億ドル、今との差 +29.5%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 9.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 238.17 ドル329 億ドル | 108.92 ドル151 億ドル | +307.0% | +15.1% | 27.77 ドル38 億ドル |
| やや楽観 | 20% | 194.20 ドル269 億ドル | 97.35 ドル135 億ドル | +241.9% | +13.1% | 58.31 ドル81 億ドル |
| 中立 | 35% | 158.90 ドル220 億ドル | 86.50 ドル120 億ドル | +187.8% | +11.1% | 85.89 ドル119 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 97.35 ドル135 億ドル | 72.76 ドル101 億ドル | +99.5% | +7.1% | 42.53 ドル59 億ドル |
| 悲観 | 12% | 39.78 ドル55 億ドル | 30.09 ドル42 億ドル | −18.1% | −2.0% | 8.38 ドル12 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 142.62 ドル197 億ドル | 80.26 ドル111 億ドル | +161.3% | +10.1% | 222.88 ドル308 億ドル |
今の株価時価総額 85.28 ドル118 億ドル(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:HOKA が定番を守り、UGG が年間商品に。営業利益率 24% 利益 24 億ドル · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 238.17 ドル329 億ドル
HOKA が「クッション性ランニングの定番」を守り、ナイキ・オンが来ても小売価格の高い価格帯でシェアを保つ。数量は HOKA 2.15 倍・UGG 1.22 倍(サンダル・スリッポン・メンズの拡大で年間商品化)、価格は物価の 1.41 倍にほぼ並ぶ(HOKA 1.38 倍:海外の販売会社向けの卸が増え平均単価がやや希薄化、UGG 1.40 倍)。売上 125.0 億ドル(年 +8.6%)、営業利益率 23.9%(HOKA 27%・UGG 34%、本社費は売上の 5.4%)、純利益 23.7 億ドル。会社の枠組み(売上 年 高い 1 桁)を上回る。長期の g は上限の 4.0%(市場 実質 +1.0% + 価格 +3.5% + シェア +0.5% は 5% だが、上限で 4% に置く)。
- HOKA:数量 6,020(販売点数(万点)= ランニング・クッション靴の市場 × HOKA のシェア)× 価格 128(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 77 億ドル・営業利益 21 億ドル。点数と平均単価の推定
- UGG:数量 4,758(販売点数(万点:靴・衣料・小物の合計)= 履物市場 × UGG のシェア)× 価格 98(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 47 億ドル・営業利益 16 億ドル。点数と平均単価の推定
- その他:数量 140(販売点数(万点))× 価格 95(1 点あたりの平均販売単価)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。点数と平均単価の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 9.25%・g 4.0%(市場 実質 + 価格 3.5% + シェア拡大で上限の 4% に)・事業の ROE 102.1%(帳簿 ROE が高く自己資本が薄いため ROIC から直した値)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 40.2%、10 年目より先の正当化 PER 17.2 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 17.8 倍。HOKA が第 3 の柱に育つ側だが、流行と競争で利益が振れやすいので上限の 75% に置き 13.4 倍。
確率:HOKA の守り・UGG の年間商品化・関税の据え置きが同時に要る。10 年で売上 2.3 倍・利益率 24% の筋書きで 8%。
やや楽観 20% やや楽観:会社の枠組みどおり、営業利益率 23% 利益 19 億ドル · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 194.20 ドル269 億ドル
会社の枠組みどおり、HOKA が低い 2 桁から次第に 1 桁後半へ落ち、UGG は中位の 1 桁増から年 +3〜4% へ。数量は HOKA 1.72 倍・UGG 1.08 倍、価格は HOKA 1.38 倍・UGG 1.40 倍。売上 104.0 億ドル(年 +6.6%)、営業利益率 23.3%(会社の「20% 台前半」の上寄り)。ナイキ・オンの参入で HOKA の伸びは鈍るが、卸の棚は守る。純利益 19.2 億ドル。長期の g は上限の 4.0%(市場 実質 +0.5% + 価格 +3.5% + シェア +0.5% は 4.5% だが、上限で 4% に置く)。
- HOKA:数量 4,816(販売点数(万点)= ランニング・クッション靴の市場 × HOKA のシェア)× 価格 128(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 61 億ドル・営業利益 16 億ドル。点数と平均単価の推定
- UGG:数量 4,212(販売点数(万点:靴・衣料・小物の合計)= 履物市場 × UGG のシェア)× 価格 98(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 41 億ドル・営業利益 14 億ドル。点数と平均単価の推定
- その他:数量 120(販売点数(万点))× 価格 95(1 点あたりの平均販売単価)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。点数と平均単価の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 9.25%・g 4.0%(市場 実質 + 価格 3.5% + シェア拡大で上限の 4% に)・事業の ROE 99.9%(帳簿 ROE が高く自己資本が薄いため ROIC から直した値)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 39.5%、10 年目より先の正当化 PER 17.1 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 17.8 倍。HOKA の伸びが続く側だが、流行と競争で利益が振れやすいので上限の 75% に置き 13.3 倍。
確率:会社の枠組み(売上 年 高い 1 桁・営業利益率 20% 台前半)を達成する筋書き。会社は 2026 年 7 月に利益見通しを上方修正しており 20%。
中立 35% 中立:HOKA 年 +5〜6%、UGG 横ばい、営業利益率 22% 利益 16 億ドル · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 158.90 ドル220 億ドル
HOKA は 2027 年の後半に加速するが、2029 年以降は年 +5〜6% へ落ち着く(10 年で数量 1.43 倍、価格 1.38 倍)。UGG は定番(ブーツ)に年間商品(サンダル・スリッポン)を足しても数量がほぼ横ばい(0.97 倍)、価格は物価並み(1.41 倍)。その他は縮小。売上 89.6 億ドル(年 +5.1%)、営業利益率 21.8%(HOKA 24.5%・UGG 32%、本社費 5.6%)。関税(想定 12.5%)が粗利益率を 1〜1.5 ポイント下げ、直営の費用が重なって、会社の「20% 台前半」の中ほどに落ち着く。純利益 15.6 億ドル。長期の g 4.0% の内訳:市場 実質 +0.5% + 価格 +3.5% + シェア ±0%(ナイキ・オンに奪われる分と HOKA の海外の伸びが相殺)。
- HOKA:数量 4,004(販売点数(万点)= ランニング・クッション靴の市場 × HOKA のシェア)× 価格 128(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 51 億ドル・営業利益 13 億ドル。点数と平均単価の推定
- UGG:数量 3,783(販売点数(万点:靴・衣料・小物の合計)= 履物市場 × UGG のシェア)× 価格 99(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 37 億ドル・営業利益 12 億ドル。点数と平均単価の推定
- その他:数量 100(販売点数(万点))× 価格 97(1 点あたりの平均販売単価)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。点数と平均単価の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 9.25%・g 4.0%(市場 実質 0% + 価格 3.5% + シェア 微増で 4%)・事業の ROE 96.2%(帳簿 ROE が高く自己資本が薄いため ROIC から直した値)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 38.2%、10 年目より先の正当化 PER 17.1 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 17.7 倍。景気・流行・競争で利益が振れやすいので上限の 75% に置き 13.3 倍。
確率:枠組みをやや下回る。HOKA 年 +5〜6%・UGG 横ばいの最も確からしい筋書きで 35%。
やや悲観 25% やや悲観:ナイキ・オンに棚を取られ、UGG は流行が冷める。営業利益率 19% 利益 11 億ドル · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 97.35 ドル135 億ドル
ナイキ・オンが棚を取り、HOKA の伸びが年 +4〜5% に鈍り(数量 1.12 倍、値引きで価格 1.38 倍)、UGG は流行が冷めて数量 0.80 倍。売上 71.7 億ドル(年 +2.7%)、営業利益率 19.1%(HOKA 21.5%・UGG 30%、本社費 5.8%)。関税が下がらず、卸は値引きを迫られる。純利益 11.1 億ドル。長期の g 3.0% の内訳:市場 実質 0% + 価格 +3.5%(競争で物価に届かず +3.0%)+ シェア 0%(HOKA・UGG とも競合に奪われる分と海外の伸びが相殺)。
- HOKA:数量 3,136(販売点数(万点)= ランニング・クッション靴の市場 × HOKA のシェア)× 価格 128(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 40 億ドル・営業利益 9 億ドル。点数と平均単価の推定
- UGG:数量 3,120(販売点数(万点:靴・衣料・小物の合計)= 履物市場 × UGG のシェア)× 価格 99(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 31 億ドル・営業利益 9 億ドル。点数と平均単価の推定
- その他:数量 80.0(販売点数(万点))× 価格 95(1 点あたりの平均販売単価)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。点数と平均単価の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 9.25%・g 3.0%(市場 実質 0% + 価格 3.0% + シェア 0%)・事業の ROE 83.8%(帳簿 ROE が高く自己資本が薄いため ROIC から直した値)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 34.1%、10 年目より先の正当化 PER 14.6 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 15.0 倍。ナイキ・オンに棚を取られる側なので上限の 75% に置き 11.3 倍。
確率:競合が複数で強く、UGG が流行商品。HOKA の鈍化が続く筋書きで 25%。
悲観 12% 悲観:構造的に負け、売上は伸びず営業利益率 15% 利益 5 億ドル · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 39.78 ドル55 億ドル
構造的に負け、優良ではなくなる筋書き。HOKA はナイキ・オン・アシックスとの値引き競争で数量が 0.65 倍に落ち(価格 1.38 倍)、UGG は流行の終わりで数量 0.56 倍(価格 1.40 倍)。売上 45.3 億ドル(年 −1.9%)、営業利益率 11.9%(HOKA 15%・UGG 22%、本社費 6.2%)、営業利益 5.4 億ドル、純利益 4.5 億ドル。2013 年に UGG の利益がほぼゼロまで落ちた前例と同じ型の崩れで、卸は値引きを迫られ、関税も転嫁しきれない。ブランドは残り、純現金も厚いが、稼ぐ力は今の半分以下になる。長期の g 2.0% の内訳:市場 実質 0% + 価格 +3.0%(値引きで物価に届かず)+ シェア −1.0%(競合に奪われ続ける)。還元は 10 年で 42 億ドル。
- HOKA:数量 1,820(販売点数(万点)= ランニング・クッション靴の市場 × HOKA のシェア)× 価格 128(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 23 億ドル・営業利益 3 億ドル。点数と平均単価の推定
- UGG:数量 2,184(販売点数(万点:靴・衣料・小物の合計)= 履物市場 × UGG のシェア)× 価格 98(1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合))→ 売上 21 億ドル・営業利益 5 億ドル。点数と平均単価の推定
- その他:数量 60.0(販売点数(万点))× 価格 91(1 点あたりの平均販売単価)→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。点数と平均単価の推定
倍率:利益ベース:正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)。k 9.25%・g 2.0%(市場 実質 0% + 価格 3.0% + シェア −1.0%)・事業の ROE 58.9%(帳簿 ROE が高く自己資本が薄いため ROIC から直した値)・moat 弱い(残る割合 0.33)→ RONIC 25.8%、10 年目より先の正当化 PER 12.7 倍。10 年目の利益に ×(1+g) で上限 13.0 倍。ブランドの勢いを失う側なので上限の 75% は床の 1÷k(10.8 倍)を下回るので、1÷k に置く。
確率:HOKA の値引き競争と UGG の流行の終わりが重なる。ブランドの規模と純現金があり大きくはなく 12%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
HOKA
厚底のクッション性ランニングシューズ(ロード・トレイル・日常靴)。卸と直営。
| 数量販売点数(万点)= ランニング・クッション靴の市場 × HOKA のシェア | 価格1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2,800 | 93 | 26 | 7 |
| 10 年後 中立 | 4,004 | 128 | 51 | 13 |
取り方:点数と単価は推定(開示なし)。売上は開示の 25.9 億ドル(2026 年 3 月期、+15.9%)。ランニング・クッション靴の市場と HOKA のシェアから点数を置き、単価は売上 ÷ 点数で逆算した。営業利益はブランド段階の概算(約 26%)。2026 年 4〜6 月期は +7.7%。
UGG
羊毛ブーツ・スリッポン・サンダル・メンズ。冬物から年間商品へ拡大中。
| 数量販売点数(万点:靴・衣料・小物の合計)= 履物市場 × UGG のシェア | 価格1 点あたりの平均販売単価(卸と直営の混合) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,900 | 70 | 27 | 9 |
| 10 年後 中立 | 3,783 | 99 | 37 | 12 |
取り方:点数と単価は推定。売上は開示の 27.4 億ドル(+8.2%)。営業利益はブランド段階の概算(約 33%)。2026 年 4〜6 月期は +4.9%。
その他
Teva などの小ブランド。コーラブラは段階的に終了、サヌークは売却済み。
| 数量販売点数(万点) | 価格1 点あたりの平均販売単価 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200 | 70 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 97 | 1 | 0 |
取り方:売上は開示の 1.46 億ドル(-33.9%)を丸めた。営業損益はほぼゼロ。
リスクと懸念
ナイキとオンがクッション性ランニングに本格参入
ナイキの 2027 年春のラインとオンの新クッション材(Surreal)は、HOKA が作った市場への直接の挑戦。製品の差が縮めば価格競争になり、HOKA の営業利益率(概算で約 26%)と卸の棚が圧迫される。悲観の筋書きの中心。
UGG は流行の影響を受け、2 ブランド依存に近い
UGG は売上の約 5 割・営業利益(ブランド段階)の約 6 割を占める。冬の気温や流行で数量が 3〜4 割動く可能性があり、2013 年 12 月期には営業利益がほぼゼロまで落ちた。サンダル・スリッポンへの拡大が定番化するかが分かれ目。
関税が利益率の天井を下げる
靴は輸入比率が約 75% で、会社の想定税率は 10% から 12.5% へ上がった。粗利益率は 57.7% から 56.5% 前後へ下がる見通し。還付の回収は見込んでいない。さらに関税が上がり転嫁できなければ、営業利益率は 20% を割りうる。
米国の成長が止まっている
2026 年 3 月期の米国は +0.2%(31.9 億ドル)、海外は +26.8%(22.8 億ドル)。2026 年 4〜6 月期の米国は +3.2% に戻ったが、成長の半分以上が海外の販売会社と直営に頼る。海外の出荷時期のずれが戻らなければ、後半の加速の想定が崩れる。
卸の棚の確保と値引き
卸は売上の約 6 割。ナイキが卸へ戻り、棚を取り返す局面で、デッカーズは在庫を絞って値引きを避ける方針。競争が強まれば売れ残りが出て、粗利益率の下がりを招く。2026 年 4〜6 月期の卸は +2.2% に鈍った。
ブランドの集中と経営への信頼
HOKA と UGG で売上の約 97%。どちらか 1 つの不振が全体の利益を直撃する。2025 年 5 月の通期見通しの撤回で信頼を傷めた後、2026 年 7 月まで上方修正を続けているが、10 月 22 日の決算で崩れれば評価が再び下がる。
今後の分かれ目
- 2026 年後半の HOKA の伸びが 2 桁に戻り、海外の卸が正常化する
- HOKA の減速が一時的と分かり、楽観・やや楽観の確率を上げる。中立の売上の道筋が上振れる。
- ナイキ・オンの新クッション製品が 2027 年春の棚で売れ、HOKA の卸が前年割れになる
- HOKA の価格を決める力が崩れ、やや悲観・悲観の確率を上げる。HOKA の営業利益率 24% 前提が 20% 前後へ下がる。
- UGG の既存店売上が 2 四半期続けて前年割れになる
- 流行の反転とみて、UGG の数量を 3〜4 割落とす悲観の筋書きの確率を上げる。
- 関税が想定の 12.5% を超えて上がる、または還付が出る
- 上がれば営業利益率が 1〜2 ポイント下がる。還付は一回限りの利益として除いて考える(正常利益に入れない)。
- 自社株買いが純利益を大きく上回る水準(年 15 億ドル超)へ増える
- 純現金が減り、株価が低いほど 1 株あたりの価値は増える。純現金が 5 億ドルを割るなら資本配分の見直しが要る。
見ておくもの
- HOKA の四半期売上の伸びと、卸・直営・海外の内訳(卸の出荷時期のずれが戻るか)
- ナイキ・オン・アシックスの新クッション製品の売れ行き(ランニング専門店の棚の面積・Circana のシェア)
- UGG の既存店売上と、サンダル・スリッポン・メンズの比率(年間商品になるか)
- 粗利益率(56.5% 前後)と関税の想定税率(12.5%)の変化
- 米国の売上の伸び(+3% 台を保つか)と海外の伸び
- 自社株買いの額と純現金(15 億ドル前後)、2026 年 10 月 22 日の決算と通期見通しの修正
倍率と資本コストの決め方
今の PER(11.6 倍、GAAP の実績)を見る前に、HOKA・UGG・その他の 3 つに分け、点数 × 平均単価で売上を、ブランドごとの営業利益率と本社費で利益を積み上げた。倍率は今の PER に寄せず、利益ベースの正当化 PER(RONIC = k + 1/3 ×(事業の ROE − k)。流行の靴で堀が薄いので 1/3)に k 9.25%(基本 8.0% + quality 1.25%)・g 2〜4%(上限 4%)・ROE(帳簿 ROE が高く自己資本が薄いので ROIC から直した値)を入れ、10 年目の利益に掛けるので ×(1+g) とした上限の 75% を使った。純現金 15 億ドルは帳簿の値で足し、過去の還元の実績から額面どおり数えた。式の外の割り引き・業界ノートの倍率・過去の期末の PER への寄せはしていない。悲観は構造(HOKA の値引き競争・UGG の流行の終わり)から積み上げ、悲観側の確率は 37% と厚く置いた。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。k = 基本 8.0% + quality 1.25%。靴は景気と流行で売上が振れる(cycle +0.5%)うえ、HOKA の競合が多く UGG は流行の波がある(pricing +0.25%)。純現金で借金は小さく debt は 0。UGG の流行と HOKA の若さで寿命を確かめきれない(life +0.5%)。個別のリスク(ナイキ・オンの参入・関税・2 ブランドへの集中)は k に足さず、悲観の確率と悲観の営業利益率・g・ROE で表した。