結論
ギャレット・モーションは、自動車や産業機械のエンジンに使うターボチャージャーの世界的な大手である。筆者の結論は、技術と稼ぐ力には魅力があるものの、今の時価総額には十分な安全域がなく、やや割高というものだ。最大の論点は、内燃機関から得る利益を、電動化と産業用途の新たな利益へ置き換えられるかにある。
2025年の売上は35.8億ドル、営業利益は4.9億ドル、純利益は3.1億ドルだった。2026年4〜6月期は売上9.76億ドル、純利益1.01億ドルと改善し、会社は通期見通しを引き上げた。ターボの需要は想定以上に粘り強く、ハイブリッド車への採用やデータセンター向け発電設備が新しい需要を生んでいる。自動車部品会社としては利益率が高く、設備投資も売上の数%で済む。
ただし、世界のターボ生産は2025年の約5,000万基から長期的には減少する可能性が高い。純粋な電気自動車には従来型ターボが不要であり、完成車メーカーによる値下げ要求も続く。会社は2030年に売上約50億ドル、2035年に60億ドル超を目指すが、その達成には電動コンプレッサーや新しい駆動装置の量産が必要だ。受注獲得と量産収益を同じものとして評価してはいけない。
10年後の中立は売上約54.5億ドル、純利益5.1億ドルと見る。ターボの既存事業が利益を保ち、電動化製品が一定の規模へ育つ筋書きである。一方、電動化が加速し、新製品の採用で競合に負けると、現在の利益の大部分を失いかねない。さらに自己資本はマイナスであり、資産価値による下支えが弱い。
5つの筋書きと株主還元を資本コスト10%で評価すると、現在の適正な時価総額は約35.0億ドルとなる。基準時点の40.4億ドルを約13%下回る。利益を生む工場と技術は評価するが、まだ実現していない電動化事業の成功まで高く買う理由はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、最初にこの会社が10年後も何を売っているかを考える。ターボという製品そのものはすぐには消えない。世界の商用車、船舶、発電設備、既存の自動車には長い寿命がある。高い耐久性を求められる部品を世界各地へ安定供給する能力も、一朝一夕には作れない。したがって、今の利益をすべて消えゆくものとして評価するのは行き過ぎである。
しかし、永続する事業と永続する製品は違う。純電気自動車の普及が進めば、従来型ターボの必要数量は減る。現在の顧客が新しい電動部品でも同じ会社を選ぶ保証はない。これまでの成功は内燃機関の性能改善によるもので、電動化の利益率や新規投資の利回りを証明する材料としては不十分だ。
オーナー利益の質は良い。2025年のフリーキャッシュフローは3.4億ドルで、維持投資が比較的少ない。既存の事業が大きな追加資金を必要としないなら、現金を株主へ戻すことは合理的である。だが、2020年の破綻経験とマイナスの自己資本を忘れてはいけない。借金返済と技術開発を犠牲にして買い戻しを急げば、短期の利益率は立派でも長期の株主価値を損なう。
増分の投資収益率は、既存ターボと新製品を分けて考える。既存製品の改良投資は顧客との共同開発や設備の流用が効くため、資本コストを超える見込みがある。一方、新しい電動駆動装置は研究開発から量産品質の確立まで時間がかかり、競争で利益が薄くなる恐れがある。全社の過去の高い利益率を、そのまま新事業の収益性に使うべきではない。
筆者は、既存事業から生む現金を高く評価する一方、2035年の売上目標には割り引いた期待しか払わない。工場、技術、顧客関係を買うなら理解できるが、電動化の成功を既定の事実として買うなら安全域が足りない。利益の質は悪くない。それでも、値段と事業の寿命を切り離してはいけない会社である。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はターボチャージャーである。エンジンの排気エネルギーを利用して空気を圧縮し、小さなエンジンから大きな出力を取り出す。燃費と排出ガスの改善にも役立つため、完成車メーカーは新型エンジンの設計段階から部品メーカーと共同開発する。2025年の製品別売上ではガソリン用が45%、ディーゼル用が23%、商用車用が18%、補修用が12%だった。
ガソリン用の売上は15.92億ドルで、最大の柱である。乗用車やハイブリッド車に搭載され、通常のターボから高温に耐える可変ノズル式へ製品が高度化している。ディーゼル用は8.37億ドルで、欧州の乗用車需要は弱いものの、配送車、ピックアップ、大型SUVでは燃費と牽引力が評価される。商用車用にはトラック、建機、農機、船舶や発電設備向けが含まれる。
補修部品は完成車向けと違った経済性を持つ。世界165か国の370社超の販売業者を通じて供給し、推定約1億5,000万台の既存搭載車両が需要の源泉となる。ターボが故障すれば交換が必要であり、純正品質と整備業者の信頼は、新車向けの価格交渉よりも強い利益の支えになる。ただし、車齢の伸びが必ず交換需要の増加につながるわけではない。
次の柱は、電動コンプレッサー、電動駆動装置、燃料電池用の空気圧縮機である。高回転モーター、軸受、熱管理、制御技術を既存のターボから転用する。純電気自動車で失う従来型ターボの需要を、電池冷却や駆動系の新製品で取り戻す構想だ。会社は2027年までに複数製品の量産を始め、2035年にはゼロ排出技術の売上を約25億ドルにする目標を示している。
もう一つの成長先は産業用途である。大型ターボのMEGは、船舶やデータセンター向け発電機で使われる。2026年には北米のデータセンター用発電設備で採用案件を獲得した。2025年の産業用途売上は1億ドルを超え、会社は2030年に5億ドル超を目指している。産業用途と電動化は成長余地が大きいが、現在の利益の多くは依然として内燃機関から生まれている。
優良さと弱いところ
最大の堀、つまり競争相手が簡単には奪えない強みは、エンジンとの一体設計と量産実績である。完成車メーカーが一度ターボを採用すると、排ガス認証、耐久試験、熱管理、エンジン制御を含めて再設計する負担が大きい。約1,350件の特許・出願、約1,330人の技術者、世界13の生産拠点を持つ。会社によれば、2018年以降の新規ターボ案件の平均獲得率は50%超であり、既存顧客との結び付きは強い。
この堀は絶対的な価格決定力ではない。完成車メーカーは毎年の原価低減を求め、競合にも同じ部品の見積もりを取る。2025年には値決めと原価転嫁の差が調整後営業利益を約0.3億ドル押し下げた。2026年4〜6月期には価格改善が利益に寄与したが、恒常的に物価以上の値上げができる証拠とまでは言えない。
資本効率は優れている。2025年のフリーキャッシュフローは3.4億ドルで、純利益を上回った。開発費が売上の4%台、設備投資が2%前後という構造は、巨大な組立工場を必要とする完成車メーカーより身軽である。ただし、その開発費は毎年必要な支出であり、オーナー利益から無視できない。
見かけの高いROEは評価に使えない。過去の破綻処理、優先株の整理、自社株買いによって2025年末の自己資本はマイナス8.0億ドルになった。帳簿の自己資本が小さいため利益を割ると異常に高い数字になるが、新製品に投資した資金がそれほど高利回りで増えるとは限らない。
既存ターボの技術的な堀は強いが、製品の用途そのものは縮む可能性がある。電動コンプレッサーでは競争相手も技術を持ち、実績ある価格決定力はまだ証明されていない。AIエージェント代替の直接対象ではない物理製品の事業だが、設計の自動化は競合にも恩恵を与える。全社としては、広く深い堀ではなく、技術と顧客関係に支えられた普通以上の堀と判断する。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界のターボチャージャー生産は2025年に約5,000万基だった。純電気自動車には従来型ターボが必要ないため、電動車の比率が上がれば市場の数量には下押しがかかる。一方、内燃機関を残すハイブリッド車では小型エンジンの効率改善が重要であり、ターボの採用率と高機能品の比率が上がる。会社は2030年でも世界で4,500万基超のターボ搭載エンジンが作られると予想している。
競争相手はボルグワーナー、カミンズ傘下のホルセット、IHI、三菱重工業などである。2025年の北米ターボ市場について、外部調査にはギャレット15.8%、カミンズ14.9%、ボルグワーナー14.0%という金額シェアの推計がある。ただし地域や製品範囲で大きく変わり、世界の販売基数シェアは各社から統一基準で開示されていない。ギャレットは会社推計で世界首位だが、首位であることと独占的に価格を決められることは違う。
最大の市場は乗用車だが、成長の重心は移っている。会社の2026年投資家説明会では、2030年の世界BEV比率を約28%とする予測を使い、従来の想定よりターボ需要が長く残ると見込む。商用車ではディーゼルや天然ガスが長距離輸送と重量物の運搬に残り、産業用途では発電と船舶の需要がある。ただしBEV比率の上昇が想定より速ければ、2030年以降の既存事業の数量は大きく減る。
電動駆動や冷却用コンプレッサーでは、従来のターボ競合に加え、ボッシュ、マーレ、デンソー、中国の電動部品メーカー、完成車メーカーの内製部門が競争相手になる。会社は2035年の関連する市場機会を大きく見込んでいるが、これは完成車メーカーが自社生産する部分を除く、特定の製品群に限定した推計である。市場が大きいことだけでは、ギャレットがその利益を取れる根拠にはならない。
同じ自動車領域でも、完成車メーカーのフォードやゼネラル・モーターズとは利益構造が違う。ギャレットは工場投資が比較的軽く営業利益率が高いが、エンジン技術の世代交代にはより直接的にさらされる。アプティブのような電装部品メーカーより、内燃機関の需要が残ることへの依存が大きい。長期の市場数量は自動車総販売台数ではなく、エンジン搭載台数、ターボ採用率、競合シェアの掛け合わせで判断する必要がある。
資本政策と M&A
資本政策は、破綻後の整理から積極的な株主還元へ移った。2020年に米連邦破産法11条の適用を申請し、2021年に再建手続きを終えた。2023年には優先株を普通株へ転換し、約5.7億ドルを使って一部優先株を買い戻した。複雑な資本構造は整理されたが、その過程の現金流出と希薄化は既存株主にとって無視できない。
その後は還元が進んだ。2025年には自社株買い2.08億ドルと配当0.52億ドルを実施した。2026年には2.5億ドルの買い戻し枠を設定し、6月末までに1.15億ドルを実行した。四半期配当も継続している。会社は長期的に調整後フリーキャッシュフローの約75%を株主へ戻す方針を示す。ただし調整後の現金収支と実際の使える現金は同一ではない。
成長投資の中心は買収よりも社内開発である。2026年5月の投資家説明会では、2030年の売上約50億ドル、うちゼロ排出技術約10億ドルを目指す計画を示した。次の5年間に調整後フリーキャッシュフローを累計20億ドル超生む構想も掲げる。これらは目標であり、達成済みの受注残高ではない。
少数株主にとっては、センターブリッジとオークツリーなど旧再建スポンサーの影響も確認すべきだ。2025年にはオークツリー関連ファンドから1.03億ドル相当の株式を買い戻した。2026年上期にも関連ファンドからの買い戻しがあった。取引条件の公正さと、買い戻しが借金返済より本当に有利かを監視したい。確認できた資料では、成立済みの買収・非公開化の合意や上場廃止予定はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
世界のターボ需要は想定以上に長く残る。2023年時点の予測より2030年の需要見通しは900万基以上上方修正された。ハイブリッド車には引き続き内燃機関があり、高度な可変ノズル式ターボは通常品より多くの部品価値を持つ。ギャレットはガソリン用可変ノズルで技術的に先行し、2018年以降の新規案件獲得率も50%を超える。市場が縮小しても、競争相手から案件を取れば売上を維持できる。
商用車と産業用途には、乗用車とは異なる長寿命の需要がある。長距離輸送、大型建機、船舶、非常用発電では、エネルギー密度と稼働時間が重視される。データセンターのバックアップ電源は電力網の拡充が進んでも必要であり、大型ターボのMEGは新しい販売先を増やす。2026年には具体的な発電設備向けの採用を獲得した。産業用途の売上が2030年に5億ドルを超えるという会社計画には、既に動き始めた事業の裏付けがある。
電動化の技術もゼロから始めるわけではない。高回転モーター、軸受、圧縮機、熱管理は長年磨いてきた技術の延長線上にある。燃料電池用空気圧縮機では量産経験があり、電動冷却装置と駆動系でも複数の採用案件を持つ。2027年から本格量産が始まれば、既存顧客との関係を使って他の車種へ横展開できる。
完成車メーカーと違って設備投資の負担が比較的軽いことも強みだ。高い営業利益率と現金創出力を維持できれば、新しい製品の開発費を内部で賄いながら自社株買いと配当を続けられる。2035年のゼロ排出技術売上25億ドルという会社目標に近づき、既存ターボも予想以上に残るなら、現在よりはるかに高い利益と株主還元を生む会社になる。
慎重な見方
最大の問題は、現在の利益を稼いでいる製品が技術転換の対象そのものだという点である。ガソリン、ディーゼル、商用車のターボと補修部品で売上の大半を占める。電動車の普及が速まれば、ターボの性能がどれほど優れていても新車1台当たりの搭載機会はなくなる。ハイブリッドが当面の需要を延命しても、それが2030年代後半以降の永続的な需要を保証するわけではない。
電動化の新事業は競争の条件が違う。ボッシュ、マーレ、デンソー、中国の電動部品メーカーなどが競い、完成車メーカーの内製化も起きる。ターボで世界首位という地位は、電動駆動装置のシェアを保証しない。会社は2030年のゼロ排出技術売上10億ドルを目指すが、2025年の開示では該当製品の売上規模や利益を独立して検証できない。量産案件の獲得から実際の利益創出までには大きな隔たりがある。
既存事業にも完成車メーカーの値下げ要求がある。顧客上位10社で売上の約62%を占め、ステランティス、BMW、フォードの3社だけで約34%になる。特定のエンジン計画が中止されれば、工場の操業度が落ち、利益率が急速に悪化する。2020年には営業利益率が1桁に落ち、フリーキャッシュフローも赤字になった。
さらに、2025年末には自己資本がマイナス8億ドル、純有利子負債は約13億ドルある。資産を売れば株主の投資を守れる会社ではない。2020年に破綻手続きを経験したことも、借金を軽く考えられない理由だ。好業績時の大きな自社株買いは魅力的だが、業績が崩れる直前まで続ければ、残る株主の損失を拡大する。産業用途と電動化が想定ほど育たないだけでも、10年後の利益は大きく縮む。
どちらに重みを置いたか
既存ターボの技術、受注実績、現金創出力は高く評価する。2026年上期の業績改善と産業用発電設備の採用獲得も、事業が予想より粘り強い証拠である。したがって成長側の2つの筋書きに29%を配分した。
それでも、2035年の電動化製品の利益はまだ十分に証明されていない。会社の2030年、2035年の売上目標には、量産開始、市場拡大、競合への勝利が同時に必要である。自己資本がマイナスという弱点もあるため、慎重側の2つの筋書きに39%を配分した。中立は32%とした。技術の堀を認めながらも、その寿命と新事業の再現性に対して慎重な見方を優先する。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 26.70 ドル50 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 13.54 ドル25 億ドル)。 今の値に割り戻すと 18.70 ドル35 億ドル、今との差 −10.6%、 期待の年率 +8.4%(資本コスト 10.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 65.80 ドル123 億ドル | 22.43 ドル42 億ドル | +322.0% | +19.0% | 10.59 ドル20 億ドル |
| やや楽観 | 17% | 43.23 ドル81 億ドル | 19.23 ドル36 億ドル | +198.7% | +14.5% | 10.62 ドル20 億ドル |
| 中立 | 32% | 28.60 ドル54 億ドル | 16.02 ドル30 億ドル | +113.4% | +10.0% | 14.28 ドル27 億ドル |
| やや悲観 | 24% | 8.30 ドル16 億ドル | 8.54 ドル16 億ドル | −19.4% | −2.8% | 4.04 ドル8 億ドル |
| 悲観 | 15% | 2.08 ドル4 億ドル | 2.67 ドル5 億ドル | −77.3% | −17.3% | 0.71 ドル1 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 26.70 ドル50 億ドル | 13.54 ドル25 億ドル | +92.4% | +8.4% | 40.24 ドル75 億ドル |
今の株価時価総額 20.91 ドル39 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 12% ターボ首位を保ち、電動化と産業用途も大きな柱になる 利益 10 億ドル · PER 12.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 65.80 ドル123 億ドル
ターボの市場数量は電動車に奪われるが、ギャレットはガソリン用可変ノズル式、ハイブリッド車向け、高性能商用車用でシェアを伸ばす。2035年のガソリン用販売は1,100万基、平均単価220ドルに達する。ディーゼルは縮小するが、商用車や建機では耐久性と効率が評価され、ボルグワーナーやホルセットから案件を獲得する。
産業用途はデータセンター向け発電、船舶、大型エンジンへの採用が広がり、売上は8.32億ドルになる。これは会社が示した長期目標に近い。補修用では世界の搭載車両と再生品の販売網が強みとなり、販売数量も増える。電動冷却・駆動装置は2027年以降の量産が順調に進み、売上24.7億ドルまで育つ。営業利益率19%に達し、従来のターボに匹敵する利益の柱となる。
全社売上は85.18億ドル、営業利益14.20億ドル、純利益10.10億ドルになる。新製品への設備投資と開発費を負担しても、10年間の累計純利益は60億ドルを生む。自社株買いと配当から株式報酬を差し引いた正味の還元は42億ドルとし、自己資本は10億ドル程度へ回復する。大型買収には頼らず、会社の既存技術から新しい利益を作る筋書きである。
- ガソリンエンジン用ターボ:数量 11.0(新車向け販売数量(百万基))× 価格 2.20(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 24 億ドル・営業利益 4 億ドル。可変ノズルとハイブリッド向けの高機能化で数量・単価とも伸びる。
- ディーゼルエンジン用ターボ:数量 2.8(新車向け販売数量(百万基))× 価格 3.40(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。乗用車は縮むが、軽商用車と高付加価値品が支える。
- 商用車・建設機械向けターボ:数量 1.8(販売数量(百万基))× 価格 5.60(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 2 億ドル。トラック・建機向けでシェアを高める。
- 産業・発電・船舶向けターボ:数量 0.6(販売数量(百万基))× 価格 13(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 2 億ドル。MEGと産業用圧縮技術が発電・船舶市場へ広がる。
- 補修・交換・高性能ターボ:数量 2.7(販売数量(百万基換算))× 価格 3.20(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 2 億ドル。既存搭載車両と再生品の販売網が拡大する。
- 電動化・燃料電池・その他新技術:数量 2.6(製品の換算販売数量(百万ユニット))× 価格 9.50(1換算ユニット当たり平均売上(百ドル))→ 売上 25 億ドル・営業利益 5 億ドル。量産成功で2035年の会社目標にほぼ届く。
倍率:資本コストk10.0%。2035年以降のgは3.5%で、産業・電動化分野の実質数量成長約1.0%と、成熟後の製品単価成長約2.5%から求める。マイナス自己資本と自社株買いで異常に高くなる帳簿ROEは使わず、増分の設備・運転資本・研究開発に必要な元手を基に事業ROE30%を正常化推定。堀は普通で残存割合1/2、RONIC20.0%。正当化PERは翌期利益に対し12.69倍、10年目利益に対する上限13.14倍。量産成功が必要なことを踏まえ上限の約93%となる12.2倍。GAAP純利益には開発費と株式報酬を含め、償却の二重加算はしない。
確率:2026年の投資家説明会にある2035年のゼロ排出技術売上約25億ドルに近い成果を実現し、既存ターボも高機能化で想定以上に伸びる場合。電動化製品の量産、顧客採用、利益率の確立がそろう必要があり、現在の実績だけでは確信できないため12%に限定する。
やや楽観 17% ハイブリッドと産業用が伸び、電動化製品も利益を生む 利益 7 億ドル · PER 11.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 43.23 ドル81 億ドル
ハイブリッド車が予想より長く普及し、従来型エンジンの効率改善が続く。ギャレットは高温対応の可変ノズル式で案件を増やし、ガソリン用売上は22.15億ドルとなる。ディーゼルは数量が減るが、商用車では高耐久製品の比率が上がる。完成車メーカーの値下げ要求は残るものの、技術改良で単価と利益率を維持できる。
大型発電設備の需要が伸び、産業用途は売上6億ドルまで拡大する。補修部品も稼働車両の裾野と再生品の採用に支えられ、安定した利益を生む。電動化製品は量産開始後の歩留まりと生産能力の改善が進み、売上16.2億ドル、営業利益率16%になる。競争が激しいため会社の2035年目標には届かないが、十分な事業規模を確立する。
全社売上67.75億ドル、営業利益9.98億ドル、純利益7.1億ドルを生む。会社は大きな買収をせず、既存事業の現金を研究開発と株主還元に振り向ける。10年間の累計純利益48億ドルに対し、正味の還元36億ドルとする。株式報酬を差し引いても還元は大きく、少数株主に利益が残る。利益の成長と株主還元が両立するが、電動化の量産実績を確認する必要がある筋書きだ。
- ガソリンエンジン用ターボ:数量 10.4(新車向け販売数量(百万基))× 価格 2.13(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 22 億ドル・営業利益 4 億ドル。ハイブリッドと高機能VNTが数量減少を打ち消す。
- ディーゼルエンジン用ターボ:数量 2.6(新車向け販売数量(百万基))× 価格 3.15(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。高耐久品への移行で単価を保つ。
- 商用車・建設機械向けターボ:数量 1.6(販売数量(百万基))× 価格 5.20(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 8 億ドル・営業利益 1 億ドル。大型車・建機の更新需要とシェア拡大が寄与する。
- 産業・発電・船舶向けターボ:数量 0.5(販売数量(百万基))× 価格 12(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。発電と船舶向けの量産拡大が続く。
- 補修・交換・高性能ターボ:数量 2.4(販売数量(百万基換算))× 価格 2.98(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 2 億ドル。純正交換品と再生品の販売網が支える。
- 電動化・燃料電池・その他新技術:数量 1.8(製品の換算販売数量(百万ユニット))× 価格 9.00(1換算ユニット当たり平均売上(百ドル))→ 売上 16 億ドル・営業利益 3 億ドル。新製品の量産が進むが会社の長期目標には届かない。
倍率:k10.0%、長期g3.2%。産業と電動化の実質数量がわずかに増える効果約0.2%と、製品単価の名目上昇約3.0%から求める。自社株買いで縮んだ帳簿自己資本による見かけの高ROEは採用せず、事業に必要な投下資本から正常化ROE26%を推定。堀は普通でRONIC18.0%、正当化PERの10年目利益に対する上限は12.48倍。利益の循環と新製品の競争を考慮し、約91%の11.4倍とした。
確率:既存ターボの新規案件獲得率と2026年の産業用受注には実績がある。電動化の量産は進むが、会社の2035年目標には届かない筋書きであり、楽観より現実的と判断する。ただし完成車メーカーの内製化と競合の存在から17%とした。
中立 32% ターボの衰退を新製品と産業向けの成長が補う 利益 5 億ドル · PER 10.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 28.60 ドル54 億ドル
世界のターボ需要はBEVの普及により緩やかに縮小する。ガソリン用ターボは2025年の1,000万基から960万基に減るが、高機能VNTやハイブリッド向けの構成比が上がり、平均単価は196ドルになる。ディーゼルは乗用車で減少し、軽商用車とピックアップが残る。ボルグワーナーやIHIとの競争で新規案件を奪い合うが、技術的な地位は大きく崩れない。
商用車用は更新需要に支えられ、産業用はデータセンター向け発電設備と船舶で規模を拡大する。補修用は既存の約1億5,000万台という搭載基盤が支えとなり、売上6.64億ドルへ増える。電動化製品は量産を確立するものの、デンソーやボッシュなどの競争が強く、売上は10億ドル、営業利益率は13%にとどまる。会社の2035年目標には届かないが、新たな利益源になる。
全社売上は54.53億ドル、営業利益7.44億ドル、純利益5.1億ドルに達する。2026年以降の累計純利益は41億ドル、正味の還元は30億ドルとする。自己資本はマイナス8億ドルから約3億ドルへ改善するが、帳簿上のROEは依然として評価の物差しにならない。大型M&Aはなく、既存技術の延長で事業を組み替える。利益は現在より増えるが、永久に高成長する会社ではない。
- ガソリンエンジン用ターボ:数量 9.6(新車向け販売数量(百万基))× 価格 1.96(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 19 億ドル・営業利益 3 億ドル。新車向け数量は4%減。単価は約23%上がるが物価上昇率を下回る。
- ディーゼルエンジン用ターボ:数量 2.3(新車向け販売数量(百万基))× 価格 3.00(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。欧州乗用車の縮小を軽商用車が一部補う。
- 商用車・建設機械向けターボ:数量 1.5(販売数量(百万基))× 価格 4.92(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。世界の商用車生産は緩やかに伸び、シェアはおおむね維持する。
- 産業・発電・船舶向けターボ:数量 0.4(販売数量(百万基))× 価格 12(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。産業向けは高成長だが会社の2035年目標には届かない。
- 補修・交換・高性能ターボ:数量 2.3(販売数量(百万基換算))× 価格 2.95(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。既存搭載車両と再生品が交換需要を支える。
- 電動化・燃料電池・その他新技術:数量 1.3(製品の換算販売数量(百万ユニット))× 価格 8.00(1換算ユニット当たり平均売上(百ドル))→ 売上 10 億ドル・営業利益 1 億ドル。量産は実現するが受注拡大は会社目標より遅い。
倍率:k10.0%、長期g2.7%。成熟後の世界ターボ数量の減少と産業・補修・電動化製品の成長を合わせ、実質数量寄与を約-0.3%、調達価格への転嫁を含む名目単価成長を約3.0%とする。物価3.5%より価格上昇が弱いのは完成車メーカーの継続的な原価低減要求による。帳簿自己資本3億ドルに対するROEは約170%となり、増分投資の収益力を過大評価するため採用しない。営業資産・設備・開発に必要な正常化資本を約30億ドルと考え、税後営業利益と適度な負債利用から事業ROE21%を推定。堀は普通でRONIC15.5%、正当化PER上限は10年目利益に対し11.62倍。利益の景気感応度と新事業の競争を考慮した約90%の10.5倍とした。
確率:ターボの技術と顧客基盤は残るが、BEV普及で数量は減少する。2026年の好調な受注実績を評価しつつ、2035年の電動化製品売上は会社目標の半分未満とする。現在確認できる事実と長期の競争環境の中間として32%を配分した。
やや悲観 24% 電動化への転換が遅れ、ターボの数量減が利益を削る 利益 2 億ドル · PER 8.4 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 8.30 ドル16 億ドル
世界の電気自動車の普及が会社の予測を上回り、ターボの新規需要が減少する。ギャレットはガソリン用の販売基数を820万基まで落とし、競争によって平均単価も物価ほどには上がらない。ディーゼルでは欧州乗用車の需要が一段と縮み、ボルグワーナーや低価格の地域メーカーに案件を奪われる。既存設備の操業度が落ち、営業利益率が低下する。
商用車と産業用途には需要が残るが、成長は限定的になる。データセンター向け発電設備への投資が一巡し、産業用途の売上は3.19億ドルにとどまる。補修部品は稼働車両の減少と長寿命化のため販売数量が伸びない。電動化製品は技術的に完成しても、完成車メーカーの内製化と競合製品の値下げで規模が拡大せず、営業利益率は4%にとどまる。
全社売上は38.05億ドル、営業利益3.54億ドル、純利益1.85億ドルとなる。配当と買い戻しは段階的に縮小し、10年間の正味還元は16億ドルにとどめる。利益の累計は25億ドルで、自己資本は約1億ドルまで改善するが、過去の大型還元で生じた薄い財務基盤は残る。会社は存続するものの、技術的な優位性が株主の高い利益成長へ結び付かない筋書きである。
- ガソリンエンジン用ターボ:数量 8.2(新車向け販売数量(百万基))× 価格 1.78(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 15 億ドル・営業利益 2 億ドル。BEV普及とOEMの値下げ要求で数量・実質単価が低下する。
- ディーゼルエンジン用ターボ:数量 1.6(新車向け販売数量(百万基))× 価格 2.75(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。乗用車用の縮小が大きく軽商用車だけでは補えない。
- 商用車・建設機械向けターボ:数量 1.3(販売数量(百万基))× 価格 4.55(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。商用車の需要は残るが競合へのシェア流出が起こる。
- 産業・発電・船舶向けターボ:数量 0.3(販売数量(百万基))× 価格 11(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。データセンターの設備投資が一巡する。
- 補修・交換・高性能ターボ:数量 2.0(販売数量(百万基換算))× 価格 2.65(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 1 億ドル。交換数量は横ばいだが価格競争で利益率が落ちる。
- 電動化・燃料電池・その他新技術:数量 0.7(製品の換算販売数量(百万ユニット))× 価格 7.50(1換算ユニット当たり平均売上(百ドル))→ 売上 5 億ドル・営業利益 0 億ドル。製品は出荷されるが量産規模と利益率が不足する。
倍率:k10.0%、構造的な数量減少を反映した長期g1.0%。実質数量約-2.0%に単価の名目上昇約3.0%を加える。事業に要る資本から正常化ROE12%と推定し、通常の堀のRONIC11%。正当化PERの10年目利益に対する上限は10.20倍。既存設備の操業度低下、新製品の競争、借金負担を反映し、約82%の8.4倍とする。ROEが資本コストに近いため、再投資による超過価値は小さい。中立より低い倍率である。
確率:世界のBEV普及とOEMの価格引き下げ要求が想定より強く、電動化製品の売上が十分に立ち上がらない場合。会社の技術と産業用途は残るため完全な破綻までは想定しない。2020年の業績悪化と現在の負債・自己資本の薄さを踏まえて24%を配分する。
悲観 15% 内燃機関の需要が大きく縮み、電動化でも主導権を失う 利益 1 億ドル · PER 6.5 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 2.08 ドル4 億ドル
2030年代に純電気自動車が世界の乗用車市場で急速に普及し、内燃機関向けターボの市場が大きく縮む。ギャレットは新規エンジン案件を失い、ガソリン用の販売基数は600万基まで落ちる。ディーゼルは軽商用車に一部残るものの、主要地域で販売数量が現在の3分の1以下になる。ボルグワーナー、IHI、中国の地域メーカーとの競争が強まり、値上げによる原価回収も難しくなる。
商用車や産業用には需要が残るが、顧客の投資抑制と低価格の代替品によって販売数量が減る。補修用も車両の入れ替わりで搭載基盤が縮小し、売上は3.81億ドルまで落ちる。電動化製品ではデンソー、ボッシュ、マーレや完成車メーカーの内製品に敗れ、研究開発費を回収できない。開発組織の縮小と工場再編を経ても、既存技術の競争優位性は戻らない。
全社売上は22.24億ドル、営業利益は1.73億ドル、純利益は0.6億ドルにとどまる。途中には減損と再編費用による赤字の年があり、10年間の累計純利益は14億ドルまで落ちる。株主還元は初期の数年間に限られ、正味5億ドルとする。負債返済と資金繰りを優先し、増資や買収による救済価値は計上しない。会社が小規模なターボ・補修部品メーカーとして存続する場合の価値を測り、倒産による普通株価値ゼロとは区別する。
- ガソリンエンジン用ターボ:数量 6.0(新車向け販売数量(百万基))× 価格 1.58(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 9 億ドル・営業利益 1 億ドル。新規エンジン案件の消失とシェア流出で大幅縮小。
- ディーゼルエンジン用ターボ:数量 0.9(新車向け販売数量(百万基))× 価格 2.40(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。軽商用車用の一部だけが残る。
- 商用車・建設機械向けターボ:数量 0.9(販売数量(百万基))× 価格 4.20(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。建機・商用車で競合に案件を奪われる。
- 産業・発電・船舶向けターボ:数量 0.2(販売数量(百万基))× 価格 10(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。発電設備向けの拡大に失敗する。
- 補修・交換・高性能ターボ:数量 1.6(販売数量(百万基換算))× 価格 2.38(1基当たり平均売上(百ドル))→ 売上 4 億ドル・営業利益 1 億ドル。既存搭載車両の減少と低価格再生品の競争が重なる。
- 電動化・燃料電池・その他新技術:数量 0.3(製品の換算販売数量(百万ユニット))× 価格 6.50(1換算ユニット当たり平均売上(百ドル))→ 売上 2 億ドル・営業利益 0 億ドル。量産規模に届かず、開発費を回収できない。
倍率:k10.0%。2035年以降は内燃機関向けの実質数量が年約2.5%減り、名目単価の上昇約2.5%で相殺されるため長期gは0%。事業の正常化ROEは7%でkを下回り、PER上限は1÷kの10倍。競争力の喪失と借金の優先性により、その65%の6.5倍にとどめる。現在の自己資本はマイナスなのでPBRは使わない。10年後もGAAP純利益0.6億ドルを稼ぐ存続会社として、時価総額3.9億ドルを評価する。残余資産価値を重ねて加算しない。
確率:BEV普及の加速と競合へのシェア流出が重なり、会社の既存事業の堀が大幅に弱くなる場合。過去に破綻手続きを経験した事実、マイナスの自己資本、固定的な借金負担から、株主価値の下落が非常に深くなる可能性を15%と評価する。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
ガソリンエンジン用ターボ
ガソリン車、ハイブリッド車向けのターボチャージャー。高温対応の可変ノズル式や電動補助式を含む。
| 数量新車向け販売数量(百万基) | 価格1基当たり平均売上(百ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 10.0 | 1.59 | 16 | 2 |
| 10 年後 中立 | 9.6 | 1.96 | 19 | 3 |
取り方:2025年10-Kのガソリン製品売上15.92億ドルが確定値。製品別販売基数は非開示。世界のターボ総生産約5,000万基のうち、ガソリン乗用車用を約3,300万〜3,500万基と推定し、ギャレットの数量シェアを約29〜30%と仮定して約1,000万基に分解した。1,000万基×約159ドル=15.92億ドル。これは開示された販売基数ではなく売上を市場数量と想定シェアに照合した推定。営業利益も非開示で、製品の技術的付加価値と全社費用を考慮した配賦推定である。
ディーゼルエンジン用ターボ
乗用車、ピックアップ、大型SUV、軽商用車のディーゼルエンジンに搭載される高効率ターボ。
| 数量新車向け販売数量(百万基) | 価格1基当たり平均売上(百ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.3 | 2.54 | 8 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 3.00 | 7 | 1 |
取り方:2025年10-Kのディーゼル製品売上8.37億ドルが確定値。世界の乗用車・軽商用車向けディーゼルターボを年700万〜900万基程度と推定し、同社の数量を約330万基、平均単価を約254ドルとした。大型車・軽商用車との境界には開示上の重複があるため、同社の製品区分に合わせた概算である。ディーゼルは高機能品の構成比が高いと見て、ガソリン用より高い平均単価を仮定した。
商用車・建設機械向けターボ
トラック、バス、建設機械、農業機械などに使われる中・大型のターボ。産業用発電設備向けは別に分ける。
| 数量販売数量(百万基) | 価格1基当たり平均売上(百ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1.3 | 3.93 | 5 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.5 | 4.92 | 7 | 1 |
取り方:10-KのCommercial Vehicle売上6.54億ドルから、2026年投資家説明会の産業用途の売上構成約4%に相当する1.43億ドルを分け、残り5.11億ドルを推定した。KGPを引用した会社資料によれば商用車向けターボ搭載エンジンは2025年約600万基で、ギャレットを約130万基、数量シェア約22%と仮定。平均約393ドルで売上を分解した。産業用途との内訳と販売基数は推定であり、法定開示セグメントではない。
産業・発電・船舶向けターボ
大型ターボのMEGなど、発電設備、船舶、産業用エンジンに使われる圧縮技術。
| 数量販売数量(百万基) | 価格1基当たり平均売上(百ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.1 | 10 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.4 | 12 | 5 | 1 |
取り方:2025年の産業用ターボ売上が1億ドルを超えたという年次資料と、2026年投資家説明会の産業用途の売上構成約4%から1.43億ドルを推定した。販売数量と単価は未開示。大型品と比較的小型の産業用ターボが混在するため、14.3万基×平均1,000ドルという換算数量にした。実際の大型MEGの単価や数量を示すものではない。2035年の市場規模は会社推計の産業ターボ約20億ドルと、対象を拡張した産業圧縮機等の約90億ドルを区別する。
補修・交換・高性能ターボ
既存車両の交換用ターボ、再生品、レースや高性能車向けの製品。独立した販売業者を通じて供給する。
| 数量販売数量(百万基換算) | 価格1基当たり平均売上(百ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 2.0 | 2.19 | 4 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2.3 | 2.95 | 7 | 1 |
取り方:10-Kの補修製品売上4.38億ドルが確定値。世界で約1億5,000万台の搭載車両が稼働し、165か国の370社超の販売業者を通じて供給する。年間約200万基換算の販売、1基当たり平均219ドルと推定した。単価は再生品、純正交換品、高性能ターボの混合平均であり開示実績ではない。数量は既存搭載車両の大きさと交換率から考え、価格は補修ブランドの信頼と販売製品の構成に依存する。
電動化・燃料電池・その他新技術
電動冷却コンプレッサー、電動駆動装置、燃料電池用圧縮機、高回転モーターなどの新製品。
| 数量製品の換算販売数量(百万ユニット) | 価格1換算ユニット当たり平均売上(百ドル) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 0.1 | 7.00 | 1 | −1 |
| 10 年後 中立 | 1.3 | 8.00 | 10 | 1 |
取り方:10-Kの製品別Other売上0.63億ドルを暫定的な起点とした。ただしOtherは純粋なゼロ排出技術売上と一致するとは限らず、実際のZET売上は独立開示されていない。数量9万換算ユニット、平均700ドルも分析上の仮定である。営業損失0.87億ドルは、2025年の研究開発費1.51億ドルの約半分が電動化関連に向けられたという開示を基に、開発負担をこの領域へ配賦した推定である。製品別営業利益は会社非開示であり、6領域の合計が全社営業利益4.9億ドルと一致するよう費用の帰属を整理している。
リスクと懸念
BEV普及による既存製品の構造的な縮小
従来型ターボは内燃機関に必要な部品であり、純電気自動車には搭載されない。会社はハイブリッド車の普及が需要を支えると予想するが、2030年代のBEV普及が速まれば、現在の主力製品の市場そのものが縮む。市場数量の減少を高機能化やシェア拡大で補えなくなると、利益は売上以上の速さで減少する。
電動化新製品の量産と収益化
会社は2035年にゼロ排出技術で約25億ドルの売上を目指す。しかし2025年の法定製品別開示では、その事業の独立した売上や利益率を検証できない。2027年以降の立ち上げが遅れたり、競合のデンソー、ボッシュ、マーレ、完成車メーカーの内製部門に採用を奪われたりすると、研究開発費の回収が難しくなる。
完成車メーカーへの顧客集中と価格交渉
2025年の売上の約86%はOEM向けであり、上位10顧客で約62%を占める。ステランティス、BMW、フォードの3社で約34%になる。車種の生産終了やエンジン計画の変更が一度に複数起きると売上が落ち、完成車メーカーからの原価低減要求も強まる。長期契約は販売数量を保証するものではない。
借金、マイナス自己資本と資金繰り
2025年末の純有利子負債は約12.9億ドル、自己資本はマイナス8.0億ドルである。2026年上期の業績は改善しているが、不況で営業利益と現金収支が悪化すれば借り換えの制約が強まる。2020年に破綻手続きを経験した会社であり、配当と自社株買いを優先しすぎると、次の景気後退時に普通株主の取り分を守れなくなる。
産業・発電設備向け成長の持続性
データセンター向け発電機や大型ターボは有望だが、設備投資の循環に左右される。AI関連の電力需要が強くても、発電設備の発注が一巡すれば成長率は鈍化する。会社は2030年の産業用途売上5億ドル超を目指すが、採用案件の発表だけでは継続的な量産数量と利益率を証明できない。
関税、原材料、地域別の生産調整
ギャレットは欧州とアジアの売上比率が高く、顧客の生産地域と自社工場の配置に影響を受ける。関税、ニッケル系合金、鋳鉄、アルミ、エネルギー費用の変化が利益率を動かす。2026年4〜6月期には関税負担の減少と生産性改善が利益に寄与したが、同じ効果が毎年続くとは限らない。為替変動は事業リスクとして見るが、評価上のドル円は固定する。
資本配分と旧再建スポンサーとの取引
2023年の優先株整理には多額の現金を使い、2025年と2026年にはオークツリー関連ファンドからの自社株買いを行った。資本構造を単純化した利点はあるが、少数株主は取引条件と借金返済の優先順位を確認する必要がある。将来の大きな買収や希薄化の可能性も、還元された現金の額だけでは捉えられない。
今後の分かれ目
- 2027年までに電動冷却・駆動製品の複数の量産案件が予定どおり立ち上がり、顧客売上として確認できる
- 電動化製品の数量の不確実性が下がり、やや楽観の確率を引き上げる。ただし開発費と量産初期費用を引いたGAAP利益が正になることを条件とする。
- 2030年のゼロ排出技術売上が会社目標の10億ドルに近づき、営業利益率も2桁に達する
- 2035年の電動化売上を中立の10億ドルから会社目標に近い水準へ引き上げる。新事業のRONICも再評価し、現在より大きな事業価値を認める。
- 世界のBEV比率が2030年までに35%を超え、ギャレットのガソリン用ターボ販売基数が継続的に減少する
- 会社の想定する2030年約28%のBEV比率を大きく上回る。ガソリン用の数量を下げ、やや悲観と悲観の確率を引き上げる。高機能ターボによる単価改善だけでは補いにくい。
- 2030年の産業用途売上が5億ドルを超え、発電設備以外の顧客にも広がる
- 産業用途の成長が特定の設備投資循環だけに依存しないと判断できる。中立の産業売上と利益率を引き上げ、事業の寿命の評価も改善する。
- 純有利子負債が調整後EBITDAの3倍を超え、フリーキャッシュフローが2年続けて赤字になる
- 借り換えと負債返済の制約が強まるため、配当と自社株買いの前提を引き下げる。自己資本がマイナスであることを重く見て、悲観側の確率を増やす。
- 調整後フリーキャッシュフローの約75%を長期にわたり還元しながら、純負債を2倍未満に管理できる
- 経営陣の資本配分への信頼を高める。還元の現金化が確認できるため、10年の正味還元額を増やし、再投資の利回りが低い事業へ資金を使う懸念を減らす。
- 主要OEMで予定されていたエンジン計画の中止や発注移管が相次ぎ、新規ターボ案件獲得率が大きく落ちる
- 技術と顧客関係による堀が弱くなったと判断する。既存ターボの数量シェアと価格の前提を下げ、電動化の成功を待つ間の利益と現金創出力を慎重に見直す。
見ておくもの
- 世界のターボチャージャー生産基数と、内燃機関に対するターボ搭載率
- 世界のBEV・ハイブリッド車の比率と、地域別のエンジン搭載車生産
- ギャレットの新規ターボ案件獲得率とガソリン用可変ノズル式の採用
- ガソリン・ディーゼル・商用車・補修用の売上構成と価格転嫁
- ゼロ排出技術の量産開始案件、実売上、GAAP営業利益
- 産業用途の売上とMEGの発電設備・船舶向け受注
- 調整後EBITとGAAP営業利益との差、研究開発費と設備投資
- フリーキャッシュフロー、純有利子負債、負債借り換え条件
- 配当・自社株買い・株式報酬を差し引いた正味の株主還元
- ステランティス、BMW、フォードなど主要顧客のエンジン計画
- 2026年10月29日公表予定の2026年第3四半期決算と通期見通しの変更
倍率と資本コストの決め方
今の時価総額や過去のPERを基準として利益・倍率を逆算していない。2025年の法定製品別売上を出発点に、世界のターボ数量、想定シェア、平均単価、新製品の市場機会から2035年の事業を積み上げた。設備投資と研究開発の負担はGAAP営業利益に含めている。資本コストは基本8.0%に事業の質2.0%を加えた10.0%。長期gは市場数量と価格から求め、中立2.7%とした。倍率は通常の堀のRONICを使う利益ベースの正当化PERで、10年目利益に合わせた上限の約90%である。自己資本がマイナスのためPBRや異常な帳簿ROEは使わず、事業の再投資に必要な資本からROEを正常化した。悲観では負債超過のため売却資産の正の床を主張せず、存続する事業の小さい正の利益価値で測る。基準時点の株数は2026年Q2のデータで、外部時価総額との差は小さい。AIエージェントによる人月・席課金代替の対象事業はない。結果として約13%の割高が生じるが、その差を埋めるために倍率や確率を変更していない。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%に事業の質による2.0%を加えて10.0%。同じ領域のアプティブの10.0%と同程度だが、ギャレットは既存の内燃機関製品への依存がより強い。一方、ターボの高い営業利益率と現金創出力が借金と競争の負担を一部相殺する。2026年上期の利益と資金繰りから継続企業の前提が直ちに危ういとは判断しないため、存続危機による追加の上乗せはしない。