結論
アンダー・アーマーは、スポーツ向けの機能性衣料、運動靴、アクセサリーを世界で販売する米国ブランドである。筆者の結論は、現在の時価総額約19.5億ドルに対して割高というものだ。名前を知る消費者は多いが、ブランドの知名度が継続的な高収益につながる段階にはない。
主力の衣料は一定の支持を保つ一方、靴ではナイキ、アディダス、HOKA、オンなどに選ばれる理由を十分に作れていない。2026年6月期の四半期でも北米売上は9%減少し、靴は8%減少した。会社は2027年3月期の売上見通しを小幅減収から一桁台半ばの減収へ引き下げた。再建は費用削減で進んでいるが、顧客が戻ったとはまだ言えない。
長期の焦点は、値引きしなくても売れる商品を作り直せるかにある。市場そのものはスポーツ参加と日常の運動着需要によって拡大する。しかし、消費者には乗り換え費用がほとんどない。業界が伸びても、同社の販売数量が減ることは十分にありうる。創業者による議決権支配も、議決権を持たないクラスC株主には無視できない。
中立では、10年後の売上を約63.5億ドル、純利益を2.55億ドルとみる。これは再建が一定程度成功する姿であり、かつての高収益期への全面復帰ではない。強い回復も考えられるが、足元の需要減少、過去の資本配分、ブランド競争の激しさを踏まえて慎重側を厚くした。
5つの筋書きから求めた現在価値は約11.4億ドルで、基準時価総額との差は約マイナス41%となる。株価が大きく下がった事実だけでは安全域にならない。長期保有の判断で必要なのは、認知されたブランドが再び利益と現金を生む証拠である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず10年後にも顧客が必要とする商品かを考える。運動時に快適な衣料と履き心地のよい靴はなくならない。だから事業そのものの寿命は長い。しかし、その商品にアンダー・アーマーの名前が付く必要があるかという問いには、十分な確信を持てない。
優れたブランドなら、価格を上げても顧客が残り、売上の増加に大きな追加資本を必要としない。現在の同社は逆である。販売促進を減らすと売上も落ち、靴では新しい競合が消費者の関心を奪う。ブランドを作り直すには商品開発と宣伝への投資が必要だが、その追加資本の利回りはまだ証明されていない。
オーナー利益についても慎重に見る。利益が出ても、店舗改装、物流、広告、商品開発、在庫のために現金が要る。過去のキャッシュフローは年によって大きく振れ、2024/12期と2025/12期はフリーキャッシュフローがマイナスだった。純利益をそのまま全額配当できる会社ではない。株式報酬を除いた正味の還元はさらに小さい。
評価できるのは、長年の知名度、衣料の顧客基盤、世界に広がる販路である。ゼロから作るには費用のかかる資産だ。ただし、会計上の自己資本14億ドルがそのまま現金で回収できる価値ではない。のれん、店舗設備、在庫、賃貸契約の負担を見れば、清算価値に強い保護はない。
筆者は、再建成功の可能性は認めつつも、今後の買い戻しや利益率改善を先取りして高い価格を払うことは避けたい。事業の仕組みは理解できるが、10年後の競争上の地位は読みにくい。長く持つ株主に必要な安全域は、現在の値付けでは不足している。
何で稼ぐ会社か
事業の中心は、汗を逃がすシャツ、コンプレッション衣料、トレーニング用品などの機能性商品である。販売先はスポーツ用品専門店などへの卸と、自社店舗・電子商取引による直販に分かれる。2026年3月期の会社開示では卸が売上の約58%、直販が約42%だった。卸は販売規模を作りやすいが、小売店の棚を確保するには商品の回転率と販売価格の両方で競争力が要る。
衣料は商品売上の約7割を占める。ヒートギアやコールドギアに代表される機能性衣料が出発点で、学校スポーツ、チーム競技、トレーニングなどに顧客基盤がある。スポーツ時の快適さという用途は10年後も消えない。ただし、同じ機能を備えた衣料は多く、機能だけで高い価格を維持することは難しくなった。
靴は商品売上の約2割である。ランニング、トレーニング、バスケットボールなどを扱うが、ここが最も厳しい競争領域だ。2025年11月にはステフィン・カリーとのブランド分離を発表した。2026年の最終商品を経て、独立するカリーブランドに頼らずバスケットボール事業を育て直すことになる。会社は連結業績への影響を重大ではないと説明しているが、象徴的な商品資産を失う意味は小さくない。
アクセサリーにはバッグ、帽子、手袋などがある。衣料や靴と一緒に購入されるため、単独の商品力よりもブランド全体の来店動機に左右される。ライセンス事業は他社に商標使用を認めて使用料を受け取るもので、設備や在庫を多く必要としない。
地域別の会社開示では北米が約29億ドル、欧州・中東・アフリカが約12億ドル、アジア太平洋が約7億ドル、南米が約2億ドルである。北米が最大の収益源だが縮小しており、欧州は相対的に健闘している。2026年3月期の公式10-KではGAAP営業損失が約1.63億ドルだったのに対し、添付factsの営業利益は1.3億ドルである。この差は再編費用などの計上範囲と集計基準の違いが含まれると考えられるが、完全な一致は確認できない。現在値には指定されたfactsを使い、将来純利益には再編費用と株式報酬を含めたGAAP基準を用いる。
優良さと弱いところ
堀、つまり競合が簡単には奪えない強みは、機能性衣料の認知度とスポーツ現場への浸透である。学校、クラブ、チーム競技の場で見慣れたブランドであり、新規参入者が同じ認知を得るには広告費と時間がかかる。だが、それは値上げしても買い続けてもらえる力とは違う。商品の選択肢が増えた現在、アンダー・アーマーの堀は強いとは評価しない。
値決め力には厳しい証拠がある。2026年3月期の靴売上は前年比約11%減少した。翌四半期も減少が続き、電子商取引も二桁減だった。経営陣は販売促進を抑え、より高い価格で売れるブランドに変える方針だが、需要減少と値引き削減が同時に起きている。定価販売の改善が数量の回復を伴うまでは、顧客がブランドに戻ったとは判断できない。
資本効率も不安定である。2014年前後には営業利益率が11%台だったが、2017年以降は低迷する期間が長く、2021年の回復も定着しなかった。2025/12期のfactsでは純損失5億ドル、ROEはマイナス35%である。過去10年のROE中央値も約1%にすぎない。新しい商品や宣伝に投じるお金が資本コストを上回る収益を生む実績は、まだ十分ではない。
再建で販促費と商品数を減らせば、一時的に利益は改善する。しかし、本物の改善には、浮いた費用を使わなくても客が戻り、売上が伸びる必要がある。創業者のケビン・プランクには長年のブランド理解がある半面、強い議決権支配がある。クラスC株主は経済的権利を持っても経営方針を変える投票権をほぼ持たない。
AIエージェント代替の人月型サービスや席課金ソフトには該当しない。衣料と靴という物理的な商品は残る。AIによるデザイン、需要予測、広告制作の効率化は可能だが、その技術は競合にも使えるため、独占的な堀とはみなさない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
スポーツ衣料と靴は、長期では需要が残る市場である。健康への関心が高まり、運動着を日常にも着る習慣が広がった。調査会社グランドビューリサーチは、2025年の世界スポーツウエア市場を約3994億ドルと推計している。ユーロモニターは2025年から2030年に年率約5%の名目成長を予想する。両者は市場の定義が異なり、数字をそのまま組み合わせることはできない。
同社の売上約50億ドルは世界市場の約1%強に相当するが、これは厳密な市場シェアではない。会社の卸売上と市場の小売販売額では値段の段階が違うためだ。それでも、世界市場が巨大で、同社の規模が相対的に小さいことは分かる。成長余地そのものより、競合から選ばれる理由を作れるかが問題となる。
靴の競争は特に厳しい。米国の靴市場ではナイキ、アディダス、スケッチャーズが大手で、2025年の小売金額シェアはそれぞれ約16%、6%、5%と報告されている。これはスポーツ靴だけに限らない市場の数字である。ランニングではHOKA、オン、アシックスが存在感を高め、消費者はクッション、軽さ、履き心地を比較して買う。アンダー・アーマーには、同じ競争の中で顧客を取り戻す必要がある。
衣料でもナイキ、アディダス、ルルレモンに加え、アロ、ヴィウォリ、ファストファッション、小売店の自主企画商品が競う。ナイキの2026年5月期売上は約464億ドルで、営業利益率は8%台だった。アディダスは2025年に営業利益率8.3%まで回復した。デッカーズやルルレモンにはさらに高い収益性がある。アンダー・アーマーの中立営業利益率6%台は、こうした競合に十分勝てない場合を含む。
市場数量については、世界の運動着需要が10年で緩やかに増えるとみる。一方、同社の中立では、衣料の販売枚数を現在より8%減、靴の販売足数を15%減とする。世界市場の成長に対してシェアを失い続けるが、物価上昇によって名目売上は増える姿である。楽観では商品刷新と海外展開で数量を取り戻し、悲観では競争によって値上げも難しくなる。
関税、輸入国の集中、物流費の上昇も重要である。衣料・靴はアジアでの委託生産への依存が大きい。2026年の関税還付は過去費用の一時的な回収であり、恒常的な利益には入れない。競争条件は現在の関税水準が続くことを基本に考える。
資本政策と M&A
資本配分の実績は高く評価できない。2010年代には北米での急成長を前提に設備、販路、デジタル関連事業へ投資したが、売上の伸びが止まると固定費の重さが表面化した。過去にはフィットネスアプリ関連事業を買収したものの、後年に売却や整理を進めた。2025年のMapMyFitness売却も、かつての成長領域から撤退する動きの一つである。
2024年には最大5億ドルのクラスC株式買い戻し枠を設けた。2026年3月末までの実行額は約1.15億ドルで、残枠は約3.85億ドル、期限は2027年5月である。しかし、2026年3月期は赤字で、買い戻し額も約0.25億ドルにとどまった。株式報酬は続くため、額面の買い戻しだけでは株主への正味還元を過大評価する。
経営の優先順位は現在、還元より事業再建と流動性の確保にある。2026年6月末には現金約3.96億ドル、11億ドルの信用枠のうち借入約2億ドルがあり、期限を迎えた社債は償還された。現金が減ったように見える部分には、償還に充てるため拘束されていた資金の解放と支払いが含まれる。会社は少なくとも今後12か月の資金需要に対応できるとの見方を示している。
再編計画の費用総額は約3.05億ドルに拡大し、2026年末までの大部分完了を予定する。2027年3月期のGAAP営業利益見通しは0.96億から1.16億ドルだが、その中に関税還付約0.7億ドルが含まれる。還付を除いた収益力はまだ弱い。長期の売上・ROE・還元について確約された数値目標はない。
クラスB株は創業者側が保有し、普通株の10倍の議決権を持つ。クラスC株には原則として議決権がないが、配当や会社売却時の経済的権利はおおむね同等である。現時点で合意済みの非公開化や上場廃止予定は確認されていない。買収による救済は投資価値の前提にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
このブランドには、見た目の業績以上に回復余地がある。機能性衣料で築いた知名度は消えておらず、学校スポーツ、ジム、競技チームなどで商品に接する機会も多い。新規ブランドが同じ認知を獲得するには長い時間と大きな宣伝費が必要だ。販売促進による値引きを減らし、品質の高い商品へ集中すれば、ブランドの印象を変える余地がある。
経営陣が商品数を減らし、卸売先を整理していることも重要だ。売上が一時的に落ちても、不採算商品を減らせば在庫処分費と流通費用を削れる。靴で競争力のある商品を再び生み出せれば、アパレルの顧客に靴を販売する機会も増える。欧州の相対的な好調は、北米の弱さが全世界で同じではないことを示している。
市場全体も追い風である。スポーツ用品は健康志向と日常着需要に支えられ、名目では着実な拡大が見込める。競合のナイキでさえ売上の伸びが鈍る時期があり、アディダスも一時の低迷から利益率を回復した。ブランドの勢いは固定されたものではない。現在の敗者が再び顧客を取ることは十分に考えられる。
再建によって売上が80億ドル台へ伸び、営業利益率が過去の高収益期並みに戻れば、純利益は6億ドル台へ達する。市場に先行して値上げする力が戻り、靴でも定価販売が増えれば、資本コストを大きく上回る利益が残る。大規模な買収をせずに自社商品の強化を続けられるなら、利益のかなりの部分を借金の圧縮と株主還元に振り向けられる。
慎重な見方
アンダー・アーマーの問題は一時的な不況だけではない。売上が伸びなくなってから相当な年月が過ぎても、収益性の回復が定着していない。2021年には利益が大きく戻ったが、その後は再び縮小した。経営陣の交代や構造改革を重ねても、競争上の位置が改善した証拠は乏しい。費用を削れば短期利益は増えるが、ブランドが復活したことにはならない。
衣料の機能は他社が模倣できる。靴ではナイキ、アディダスに加え、HOKA、オン、アシックスなどが新しい商品で顧客を獲得している。女性向け衣料ではルルレモン、アロ、ヴィウォリのようなブランドにも勢いがある。運動用品を買う消費者には、銀行口座や企業システムのような乗り換え費用がない。商品の魅力が薄れれば、次の購入から別のブランドに変わる。
直近の決算はこの懸念を強める。北米の売上減少が続き、靴はさらに大きく落ちている。2026年6月期の粗利益率改善にも関税還付が含まれていた。還付を取り除けば、価格転嫁の成功を示す証拠は弱い。将来の値上げが物価を下回り、実質の販売数量も減り続ける可能性がある。
さらに、在庫と販路には資金が必要だ。売上が減っても広告、物流、店舗の賃料はすぐには減らない。自己資本のかなりの部分は清算時に額面で回収できず、純負債とリースの約束が残る。創業者が議決権を支配するため、少数株主は失敗した戦略を止めにくい。10年後にブランドが存続しても、株主に残る利益が非常に小さくなる危険がある。
どちらに重みを置いたか
事業の存続については強気の根拠があるが、高収益ブランドへの復帰では慎重な根拠の方が強い。特に靴の減収と北米の弱さが長引き、利益率の改善が費用削減に依存している事実を重く見る。
確率は楽観10%、やや楽観18%、中立32%、やや悲観25%、悲観15%とした。慎重側を合計40%にしたのは、ブランドの再建が完成するまでに複数年を要し、競合の攻勢が止まる保証もないためである。中立も販売数量の減少を含み、過去の繁栄を取り戻す筋書きではない。
資本コスト10%で割り引いた総合価値は約11.4億ドルとなり、現在の時価総額を約41%下回る。長期の期待年率は約3.5%で、要求する利回りに届かない。結論は割高である。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した現株数換算の終価現在株主分の終価 5.67 ドル24 億ドル(+ 還元の換算額還元の合計 0.79 ドル3 億ドル)。 今の値に割り戻すと 2.68 ドル11 億ドル、今との差 −44.8%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の現株数換算の終価現在株主分の終価 | 還元の換算額還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・還元込み | 年率 | 確率 × (終価+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 16.15 ドル69 億ドル | 3.52 ドル15 億ドル | +305.5% | +17.3% | 1.97 ドル8 億ドル |
| やや楽観 | 18% | 10.26 ドル44 億ドル | 1.99 ドル9 億ドル | +152.7% | +10.9% | 2.21 ドル9 億ドル |
| 中立 | 32% | 5.50 ドル23 億ドル | 0.82 ドル4 億ドル | +30.3% | +2.9% | 2.02 ドル9 億ドル |
| やや悲観 | 25% | 1.31 ドル6 億ドル | −0.47 ドル−2 億ドル | −82.6% | −13.9% | 0.21 ドル1 億ドル |
| 悲観 | 15% | 0.82 ドル4 億ドル | −0.47 ドル−2 億ドル | −92.7% | −18.2% | 0.05 ドル0 億ドル |
| 加重平均 | 100% | 5.67 ドル24 億ドル | 0.79 ドル3 億ドル | +33.2% | +3.1% | 6.46 ドル28 億ドル |
今の株価時価総額 4.85 ドル21 億ドル(2026-10-30)から見たトータルリターン。各行の年率は還元・追加負担を期間の中間時点に置く仮定のIRRです。最下段は期待CFから計算したIRRで、各行のIRRの加重平均ではありません。実際の配当時期を観測した値ではありません。
楽観 10% 楽観:商品力が復活し、靴も成長エンジンになる 利益 7 億ドル · PER 10.6 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 16.15 ドル69 億ドル
ブランド再建が成功し、消費者が値引きなしでも新しい衣料を選ぶようになる。北米では学校スポーツやトレーニングの顧客を取り戻し、女性向け衣料でも新しい支持を得る。衣料販売枚数は1億4500万枚へ伸びる。実現単価も品質改善によって物価をやや上回る。世界市場の拡大に加え、失ったシェアを回復する姿である。
靴ではランニングとトレーニングの新商品が定着し、HOKAやオンが伸びた市場でも存在感を取り戻す。カリーブランド分離後のバスケットボール商品も独自に育つ。靴販売は2700万足へ増え、競合と同程度の定価販売を実現する。欧州の勢いが続き、アジアでも販売網を立て直す。営業利益率は過去の好調期並みとなる。
大型買収はせず、商品開発と広告へ集中する。再編後は在庫回転が改善し、純利益の累計は最初の3年で約2.4億ドル、残り7年で約33.7億ドルとなる。10年間で株式報酬約4億ドルを差し引いた正味15億ドルを還元し、自己資本は35.2億ドルとなる。売上87.6億ドル、純利益6.5億ドルまで回復する。
- 機能性衣料:数量 145(会社が販売する衣料の推定数量(百万枚))× 価格 40(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/枚))→ 売上 58 億ドル・営業利益 8 億ドル。枚数1.16倍、単価1.47倍。北米の定価販売復活と海外でのシェア回復を含む。
- 運動靴:数量 27.0(会社が販売する靴の推定数量(百万足))× 価格 78(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/足))→ 売上 21 億ドル・営業利益 2 億ドル。足数1.35倍、単価1.44倍。ランニングとトレーニングの競争力を回復。
- アクセサリー:数量 28.0(会社が販売するアクセサリーの推定数量(百万個))× 価格 25(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/個))→ 売上 7 億ドル・営業利益 1 億ドル。衣料と靴の販売増に連動し、まとめ買いが増える。
- ライセンス・為替調整:数量 25.0(ライセンス対象商品の推定販売数量(百万個))× 価格 6.00(対象商品1個当たりの純使用料相当額(ドル/個))→ 売上 2 億ドル・営業利益 1 億ドル。ブランド回復でライセンス商品も増え、使用料の実現単価が上がる。
倍率:k10.0%、g3.8%(世界市場の数量増約1%、シェア横ばい、価格約2.8%)、ROE18.47%、moat weakで残存割合1/3。RONIC12.82%。正当化PERは10年目利益基準で約11.78倍となる。商品力と現金創出が安定する成功例だが、競争市場であるため上限の約90%に相当する10.60倍とした。GAAP純利益を使い、株式報酬や償却の二重加算はしない。
確率:北米の定価販売回復、靴の新商品成功、海外シェア拡大、費用構造の改善が同時に進む必要がある。可能性はあるが、近年の実績からはまだ少数派と判断して10%。
やや楽観 18% やや楽観:衣料が持ち直し、靴の落ち込みが止まる 利益 4 億ドル · PER 10.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 10.26 ドル44 億ドル
北米での商品整理と値引き抑制が徐々に成果を出す。衣料は一度縮小した販売枚数を回復し、10年後には1億2800万枚となる。実現単価は物価に近い伸びを確保する。スポーツ専門店での売り場が安定し、自社店舗と電子商取引も採算を重視する運営へ変わる。
靴はナイキやHOKAを脅かすほどの存在には戻らないが、得意なトレーニング分野で顧客を維持する。販売足数は2300万足まで回復する。女性向け衣料では一部の商品に人気が出るが、ルルレモンなどの高いブランド収益性には届かない。売上は74.5億ドル、営業利益率は約9%となり、近年より健全な事業へ変わる。
経営は大型買収より商品開発と物流改善に投資する。初期の再建期間は利益が小さいが、後半には年間4億ドル台の純利益が見込める。10年間の純利益累計は24.65億ドル、正味還元は8.5億ドルである。自己資本は30.25億ドルとなり、ROEは資本コストを超える水準まで回復する。
- 機能性衣料:数量 128(会社が販売する衣料の推定数量(百万枚))× 価格 39(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/枚))→ 売上 50 億ドル・営業利益 6 億ドル。枚数1.02倍、単価1.43倍。既存の機能性衣料の支持が戻る。
- 運動靴:数量 23.0(会社が販売する靴の推定数量(百万足))× 価格 74(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/足))→ 売上 17 億ドル・営業利益 1 億ドル。足数1.15倍。靴で新しい定番商品が生まれ、採算が改善する。
- アクセサリー:数量 26.0(会社が販売するアクセサリーの推定数量(百万個))× 価格 25(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/個))→ 売上 6 億ドル・営業利益 1 億ドル。衣料との組み合わせ販売が安定する。
- ライセンス・為替調整:数量 22.0(ライセンス対象商品の推定販売数量(百万個))× 価格 5.30(対象商品1個当たりの純使用料相当額(ドル/個))→ 売上 1 億ドル・営業利益 1 億ドル。既存ライセンスの更新と物価に沿う使用料増。
倍率:k10.0%、g3.5%(市場数量約1%、シェア微減、価格約3%)、ROE14.55%、弱い堀の残存割合1/3。RONIC11.52%。正当化PERの10年目利益基準上限は約11.08倍。衣料の回復は評価するが、靴の持続力には不確実性があるため約90%の9.95倍とした。
確率:ブランド認知と欧州の基盤を活用できる現実的な回復例である。ただし北米の競争と靴の新商品リスクが残るため18%。
中立 32% 中立:会社は存続するが、世界市場でシェアを失い続ける 利益 3 億ドル · PER 9.2 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 5.50 ドル23 億ドル
事業再建によって赤字は解消するが、商品力は競合を明確に上回らない。衣料は学校スポーツやトレーニングの顧客を維持する一方、若い消費者の一部を新しいブランドに奪われる。販売枚数は1億1500万枚へ減少する。価格は10年間の物価上昇にほぼ沿うが、販売数量の減少を補う程度である。
靴ではナイキ、アディダス、HOKA、オンが引き続き優位に立ち、販売足数は1700万足へ減る。大幅な値引きは避けられるようになるものの、高い利益率は得られない。衣料の採算改善と商品数の削減で全社営業利益率は6%台へ回復する。これは過去の好調期より低く、近年の苦境よりは改善した状態である。
売上は63.5億ドル、純利益は2.55億ドルとなる。再建初期の利益は小さく、最初の3年間の純利益累計は約1.2億ドルにとどまる。その後の改善で10年間の累計は15.05億ドルとなる。買い戻し8億ドル程度から株式報酬による希薄化4.5億ドル相当を差し引き、正味還元を3.5億ドルとみる。自己資本は25.65億ドルまで積み上がるが、ROEは資本コストにわずかに届かない。
- 機能性衣料:数量 115(会社が販売する衣料の推定数量(百万枚))× 価格 39(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/枚))→ 売上 44 億ドル・営業利益 4 億ドル。枚数0.92倍、単価1.41倍。市場数量の緩やかな成長を下回り、シェアが縮む。
- 運動靴:数量 17.0(会社が販売する靴の推定数量(百万足))× 価格 75(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/足))→ 売上 13 億ドル・営業利益 1 億ドル。足数0.85倍、単価1.39倍。ランニングとバスケットボールの競争でシェアを失う。
- アクセサリー:数量 22.0(会社が販売するアクセサリーの推定数量(百万個))× 価格 25(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/個))→ 売上 6 億ドル・営業利益 0 億ドル。個数0.96倍、単価1.37倍。衣料との連動でほぼ横ばいの数量。
- ライセンス・為替調整:数量 18.0(ライセンス対象商品の推定販売数量(百万個))× 価格 5.50(対象商品1個当たりの純使用料相当額(ドル/個))→ 売上 1 億ドル・営業利益 1 億ドル。ライセンス商品の数量は縮むが、使用料単価は物価に沿って増える。
倍率:k10.0%、g3.0%(スポーツ市場の実質数量約1%、会社のシェア減約1.5%、価格約3.5%)、ROE9.94%、moat weakで残存割合1/3。RONIC9.98%。式による10年目利益基準の正当化PERは約10.3倍だが、ROEがk以下のため上限は1÷kの10倍とする。利益の質と資本効率が資本コストに届かない点を考慮し、上限の92%に当たる9.2倍を採用した。株式報酬はGAAP費用に含める。
確率:再建による費用削減はある程度進む一方、数量回復は限定的とみる。スポーツ市場の成長を完全には取り込めない姿として32%。
やや悲観 25% やや悲観:衣料が値引き競争に戻り、靴は採算を回復できない 利益 1 億ドル · PER 7.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 1.31 ドル6 億ドル
会社は再編で費用を削減するが、商品の魅力は十分には回復しない。衣料はスポーツ用品店の棚を守るために販促を増やし、販売枚数は9500万枚まで減少する。単価は上がるものの10年間の物価上昇に届かない。ナイキやアディダスに加え、低価格商品との競争で値上げの余地が狭まる。
靴は販売足数が1200万足に減少する。新商品が定着せず、定価で売れない商品を在庫処分するため営業赤字が続く。アクセサリーとライセンスは黒字を維持するが、全社を支えるほどの規模はない。売上は46.4億ドルとなり、営業利益率は3%台にとどまる。
費用削減を続けても店舗や物流の固定費を完全には消せない。再建初期の3年間で約1.3億ドルの純損失を出し、後半に小幅黒字へ転じる。10年間の純利益累計は1.55億ドルとなる。買い戻しはほぼ停止し、株式報酬の希薄化を差し引いた正味還元はマイナス2億ドルである。会社は存続するが、株主へ現金を戻す能力が弱く、純利益は0.8億ドルにとどまる。
- 機能性衣料:数量 95.0(会社が販売する衣料の推定数量(百万枚))× 価格 35(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/枚))→ 売上 33 億ドル・営業利益 2 億ドル。枚数0.76倍、単価1.28倍。値引きが物価転嫁を妨げる。
- 運動靴:数量 12.0(会社が販売する靴の推定数量(百万足))× 価格 67(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/足))→ 売上 8 億ドル・営業利益 0 億ドル。足数0.60倍。競争による値引きと商品開発費で赤字が残る。
- アクセサリー:数量 19.0(会社が販売するアクセサリーの推定数量(百万個))× 価格 23(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/個))→ 売上 4 億ドル・営業利益 0 億ドル。衣料の客数減少に連動し、数量と実質単価が下がる。
- ライセンス・為替調整:数量 15.0(ライセンス対象商品の推定販売数量(百万個))× 価格 5.00(対象商品1個当たりの純使用料相当額(ドル/個))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。ライセンス先の販売が減少し、料率も上げにくくなる。
倍率:k10.0%、g1.5%(市場の実質数量増約1%、会社のシェア減約2%、価格増約2.5%)、ROE4.53%。弱い堀の残存割合1/3でRONIC8.18%。正当化PERの式の上限は約9.75倍で、ROEがk以下のため稼ぐ力の上限は純利益÷kの8億ドル。靴の赤字とブランド衰退を踏まえPER7倍、時価総額5.6億ドルとした。これは稼ぐ力の上限8億ドル以下であり、資産の床も超えている。
確率:北米の需要減少、靴の競争力不足、関税と固定費の圧力は現在すでに観察される。ブランドの大きな衰退に至らない場合でも利益が薄い状態は十分ありうるため25%。
悲観 15% 悲観:ブランドが構造的に負け、縮小した事業として残る 利益 1 億ドル · PER 7.0 倍 · 現株数換算の終価現在株主分の終価 0.82 ドル4 億ドル
アンダー・アーマーは競技現場で一定の認知を保つものの、若い消費者から選ばれにくくなる。機能性衣料の性能は低価格商品でも十分に得られるようになり、価格を上げれば顧客が離れる。衣料販売枚数は8000万枚へ減少し、実現単価も物価上昇に大きく負ける。北米の主要な小売店では売り場が縮小し、海外でも競争力を失う。
靴ではランニングとバスケットボールの独自性を作れず、販売足数は900万足まで落ちる。新商品は継続的な成功を得られず、在庫処分が常態化する。アクセサリーも衣料の衰退とともに縮小する。会社は不採算店舗を閉じ、広告と商品開発を絞ることで営業黒字を維持するが、もはや高成長ブランドではない。
最初の5年間は累計で大きな損失となる。後半は縮小均衡によって小幅な黒字へ転じるが、10年間の純利益累計はマイナス3億ドルである。自社株買いは停止し、株式報酬の増発分約2億ドルを正味還元から差し引く。自己資本は13.1億ドルとなるが、売れる資産の税後価値にはリースと債務が重くのしかかる。売上は35.2億ドル、純利益は0.5億ドルである。
- 機能性衣料:数量 80.0(会社が販売する衣料の推定数量(百万枚))× 価格 32(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/枚))→ 売上 26 億ドル・営業利益 2 億ドル。枚数0.64倍、単価1.17倍。スポーツ衣料の市場拡大から取り残される。
- 運動靴:数量 9.0(会社が販売する靴の推定数量(百万足))× 価格 63(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/足))→ 売上 6 億ドル・営業利益 −1 億ドル。足数0.45倍。商品の差別化に失敗し、構造的な営業赤字となる。
- アクセサリー:数量 16.0(会社が販売するアクセサリーの推定数量(百万個))× 価格 21(卸・直販混合の会社受取単価(ドル/個))→ 売上 3 億ドル・営業利益 0 億ドル。主要商品の売れ行き低下に伴い、購入数量が落ち込む。
- ライセンス・為替調整:数量 12.0(ライセンス対象商品の推定販売数量(百万個))× 価格 4.80(対象商品1個当たりの純使用料相当額(ドル/個))→ 売上 1 億ドル・営業利益 0 億ドル。ブランド使用料の契約が縮小し、使用料単価も実質で下がる。
倍率:k10.0%、g0.0%(市場数量増がシェア減で相殺され、価格の実質低下が続く)、ROE3.82%、弱い堀の残存割合1/3でRONIC約7.94%。式による上限は10倍だが、事業が構造的に縮むことと利益の不安定さから7倍とした。時価総額3.5億ドルは純利益0.5億ドル÷k10%の5億ドルを下回る。のれんを含む帳簿自己資本を床にしない。
確率:長年の認知が一度に消える可能性は低いが、販売数量減少と値引きが長期化し、会社の規模が縮む危険はある。北米の衰退と新ブランドの伸長を根拠に15%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億ドル。
機能性衣料
コンプレッション、トレーニング、ランニング、チーム競技向け衣料を卸と直販で販売する。全社最大の収益源である。
| 数量会社が販売する衣料の推定数量(百万枚) | 価格卸・直販混合の会社受取単価(ドル/枚) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 125 | 27 | 34 | 2 |
| 10 年後 中立 | 115 | 39 | 44 | 4 |
取り方:2026年3月期10-Kの衣料売上33.95億ドルを基礎とし、factsの全社売上49.9億ドルとの集計差を商品区分へ約0.2億ドル配賦して34.1億ドルとした。販売枚数と平均実現単価は非開示である。卸売約58%、直販約42%の構成と値引き後の会社受取額を考慮し、平均27.28ドルなら約1億2500万枚となる。これは推定数量であり実際の出荷枚数ではない。製品別営業利益も非開示で、衣料利益2.3億ドルは商品特性と全社利益からの推定配賦である。
運動靴
ランニング、トレーニング、バスケットボールなどの靴を販売する。市場は大きいが、競争力回復の難易度が高い。
| 数量会社が販売する靴の推定数量(百万足) | 価格卸・直販混合の会社受取単価(ドル/足) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.0 | 54 | 11 | −1 |
| 10 年後 中立 | 17.0 | 75 | 13 | 1 |
取り方:2026年3月期10-Kの靴売上10.76億ドルを約10.8億ドルへ丸めた。販売足数は非開示であり、店頭価格から卸売の取り分と値引きを差し引いた会社受取単価54ドルを仮定すると約2000万足となる。直近の売上減少はFY2026で10.8%、FY2027第1四半期で7.7%。製品別利益は非開示のため、商品開発費と値引き負担を踏まえた営業損失0.8億ドルは分析上の仮定である。
アクセサリー
バッグ、帽子、手袋、靴下など、衣料や靴と一緒に購入されるスポーツ用品を扱う。
| 数量会社が販売するアクセサリーの推定数量(百万個) | 価格卸・直販混合の会社受取単価(ドル/個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 23.0 | 18 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 25 | 6 | 0 |
取り方:2026年3月期10-Kの売上4.14億ドルをfacts全社売上との整合のため約4.2億ドルとした。個数は開示されていない。帽子、バッグ、手袋などの混合実現単価18.26ドルから約2300万個と推定する。個別営業利益は非開示であり、0.2億ドルは推定配賦である。
ライセンス・為替調整
商標使用料を中心とする資本負担の軽い収入。連結売上との整合のため、本社管理の為替ヘッジ調整を含める。
| 数量ライセンス対象商品の推定販売数量(百万個) | 価格対象商品1個当たりの純使用料相当額(ドル/個) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 20.0 | 4.00 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 18.0 | 5.50 | 1 | 1 |
取り方:2026年3月期10-Kのライセンス収入は1.07億ドルで、為替ヘッジ等の本社調整がマイナス0.27億ドルだった。純額0.80億ドルを採用。ライセンス対象商品の個数と契約別料率は非開示であり、対象商品2000万個、純使用料4ドルは便宜的な換算である。ライセンスの数量推定は特に不確実性が大きい。営業利益0.5億ドルも推定配賦である。
リスクと懸念
ブランドの値決め力が戻らない
販売促進を減らして定価販売を増やす方針は、顧客が戻らなければ売上減少につながる。衣料は競合品との差が小さく、価格を上げるほど数量を失う可能性がある。商品別の実現単価と販売数量は非開示であるため、売上改善が価格によるものか数量によるものか見分けにくい。
靴の競争力が回復しない
2026年3月期の靴売上は約11%減少し、翌四半期も減収が続いた。ランニングではHOKA、オン、アシックス、バスケットボールではナイキやアディダスとの競争が厳しい。カリーブランドの分離後も独自の商品を育てられなければ、靴が全社の収益を圧迫し続ける。
関税と輸入原価
商品生産をアジアの委託先に依存するため、米国の関税や輸送費の変化が粗利益率を左右する。2026年の関税還付は過去に支払った費用の回収であり、毎年得られる利益ではない。還付によって良く見える決算を恒常的な値上げ力と誤認すると、利益の正常水準を高く見積もる危険がある。
在庫と卸売先の縮小
卸売先の小売店にとって、売れない商品は棚と運転資金を占める。売上が落ちると発注が減り、余剰在庫が生じ、さらに値引きが必要になる。自社店舗と電子商取引へ販売を移しても、広告費、賃料、返品費用が増えれば利益は改善しない。在庫回転と正価販売の両方を見る必要がある。
創業者支配とクラスCの議決権
創業者が保有するクラスB株には1株当たり10票があり、クラスC株は原則として無議決権である。創業者が戦略を長期で続けられる強みがある反面、再建が失敗しても少数株主が経営を変える力は弱い。買収、資本政策、役員報酬の判断が株主全体の価値を高めるか継続して確認する必要がある。
負債・賃貸契約と資金の使い道
factsでは純負債が約10億ドルあり、2026年6月には満期社債を償還したが、借入とリースの約束は残る。店舗を減らしても解約費用が発生し、在庫にも運転資金が必要だ。再建で利益が回復しなければ、買い戻し枠が残っていても還元に使える現金は乏しい。帳簿自己資本を安全な清算価値と考えてはならない。
税効果と会計上の一時項目
近年のGAAP純利益には再編費用、減損、訴訟関連費用、繰延税金資産の評価性引当などが大きく影響している。2026年3月期には税金費用が営業損失とは逆方向に純損失を拡大させた。調整後利益だけを使うと株式報酬や事業再建の費用を見落とす。利益の質は営業キャッシュフローと照らして判断する。
今後の分かれ目
- 北米の売上が前年同期比プラスに転じ、値引き率を下げたまま4四半期続く
- ブランド再建が実際の需要回復に結びついた証拠となる。やや楽観の可能性を引き上げ、衣料の数量見通しを見直す。
- 靴の売上が2年以上連続で増加し、営業採算も黒字になる
- 中立で想定した靴の数量減少を緩める。新商品の定着が確認できれば、楽観側の利益率も現実味を増す。
- 北米売上が年5%以上減る状態が続き、世界の靴売上も減り続ける
- 一時的な再編ではなく構造的なシェア喪失と判断する。やや悲観と悲観の確率を高める。
- 関税還付を除いた粗利益率が改善し、通常のGAAP営業利益率が6%を超える
- 費用削減に加えて商品の採算が改善したと判断できる。中立の営業利益率と純利益の達成確度が上がる。
- フリーキャッシュフローが複数年連続して黒字となり、借入とリースを含む負担が減る
- 株主へ戻せる現金が増え、正味還元の見通しを上げられる。資本コストのdebt部分も再評価できる。
- 大規模なブランド買収や株式交換が発表される
- 成立前は買収先の利益を加えず、対価と資金調達の負担を先に評価する。成立後は投下資本と増分利益を検証する。
- 創業者の議決権支配が弱まり、クラスCの権利が変わる
- ガバナンス上の少数株主リスクを再評価する。ただし議決権の改善だけでブランドの利益創出力が高まるわけではない。
見ておくもの
- 北米と海外の売上成長率。特に北米の前年同期比減収が止まる時期
- 衣料と靴のカテゴリー別売上成長率、および定価販売比率と販促率
- 靴の新商品が継続販売されるか。競合のナイキ、HOKA、オン、アディダスとの勢いの差
- 関税還付を除く粗利益率と、再編費用を含むGAAP営業利益率
- 在庫残高、在庫回転、卸売と直販の売上構成、電子商取引の成長率
- フリーキャッシュフローと有利子負債、リース債務、正味の自社株買い
- 2027年3月期のGAAP営業利益見通しと、2026年末を予定する再編完了状況
- 創業者の議決権支配、クラスCの権利、資本政策や大型投資の変更
倍率と資本コストの決め方
倍率は過去のPERや現在の株価を基準にしていない。資本コスト10%、事業の長期成長率、各筋書きのROE、弱い堀による超過利益の残存割合から正当化PERを計算した。中立ではROEがkにわずかに届かないため、PER上限は1÷kの10倍とし、利益の質を踏まえて9.2倍とした。悲観側は利益の稼ぐ力と換価可能資産を別々に確認し、帳簿の自己資本や過去のPBRを床の根拠にしていない。現金は負債と在庫・リースの資金需要に対応するもので、余剰現金として二重に加算していない。米国基準ではリースが既に貸借対照表に計上されているため、利益と負債の扱いを全期間で揃えた。株式報酬はGAAP費用に含め、正味還元では希薄化分を差し引いた。現在の時価総額との比較は最後に行った。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 5% + β — × 5%。米国株の基本8.0%にquality+2.0%を加えて10.0%。ナイキの8.5%、デッカーズとルルレモンの9.2%より高い。認知されたブランドでありながら、営業利益の変動が大きく、値決め力が弱く、負債とリースの負担も重い点が差である。βと市場のPERは使わない。