結論
SRSホールディングスは、和食ファミレスの「和食さと」とグルメ回転寿司の「にぎり長次郎」を二本柱にする、関西発の外食会社だ。筆者は、今の値段を割高と見る。外食は利益率が低く、10 年かけて稼げる利益に比べて、値段が先に走りすぎているからだ。
中身は堅実である。和食さとは国内で店数が最も多い和食ファミレスで、値上げが客単価に乗っている。ただ商売は薄利だ。2026 年 3 月期は売上 764 億円に対して、営業利益は 30 億円、利益率は 4% にとどまる。
勝負どころは M&A である。2025 年に鳥取のすし弁慶を、2026 年 9 月には売上約 235 億円の京樽を買った。店数は 958 に増え、売上は 1,000 億円規模に近づく。ただ京樽は利益率が 3% 台で、売上は減っている。再建できれば寿司が第三の柱になる。できなければ重荷になる。
10 年後の中立は、売上 1,400 億円、営業利益 60 億円強、純利益 40 億円だ。人件費が上がり続けるので、利益率はほとんど伸びない。時価総額は約 480 億円で、今の 641 億円を下回る。中計どおりに進む強気の筋書きでも、配当を足して資本コストで割り引けば、今の値段には届かない。すべての筋書きを確率で束ねた本質価値は、今の 3 分の 1 ほどだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ち続けたい会社の条件に届いていない。外食は、店を出すたびに資金が要り、人手と家賃が毎年かかる。稼いだ利益の多くを、新しい店に再投資しないと成長できない。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益で見ると、2026 年 3 月期は営業キャッシュフロー約 49 億円から、投資(すし弁慶の買収を含む)の約 28 億円を引いて、20 億円ほどだ。配当と次の買収の代金で、ほぼ使い切る。
堀は薄い。10 年後も、和食さとが日本一の店数を持ち、値上げが通り続けるという条件は置けるが、それ以上の保証はない。資本の使い方は評価できる。小さく、安く買い、傷んだ会社は前の持ち主が整理してから受け取る。
安全域はどうか。今の時価総額は、直近の純利益の 38 倍だ。10 年後に利益が 2 倍強になる筋書きでも、払う値段に見合わない。値段が下がらない限り、本質価値との間に余裕は生まれない。最大の分かれ目は、京樽の再建が数字に出るかどうかだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は 4 つの塊に分けるとわかりやすい。
第一は和食さとだ。しゃぶしゃぶ、すき焼き、寿司、天ぷらを一軒で出す郊外ロードサイドの和食ファミレスで、約 200 店ある。家族づれが中心で、客層が広い。売上は年約 300 億円と筆者は推定する。グループの 4 割ほどだ。2030 年 3 月期までに、中四国や北関東など新しい地域へ 35 店を足す計画である。
第二はグルメ寿司だ。にぎり長次郎が主力で、2025 年 3 月期の売上は約 140 億円、72 店だった。ここにうまい鮨勘と、鳥取のすし弁慶が加わる。中計は 2030 年に 150 店を掲げる。客単価が高く、自動配膳で人手を減らした新型店を育てている。
第三は京樽だ。持ち帰りの「京樽」と回転寿司の「みさき」で 172 店、売上は年約 220 億円ある。首都圏の拠点と、寿司の製造工場が手に入った。吉野家、スシローを運営する FOOD & LIFE COMPANIES と、持ち主が替わってきた会社でもある。
残りは焼肉、ビフテキ重、和食の専門店などの多業態と、海外である。低価格帯のブランドを買い足す受け皿にもなる。どの業態も、店の賃借と人手が主な費用だ。そのため、売上が伸びても利益は伸びにくい。利益を決めるのは、店数よりも、1 店ごとの採算である。
優良さと弱いところ
優良さは並である。堀、つまり他社がまねできない強みは、規模と地域の認知に限られる。
強みは 2 つある。まず和食さとの店数だ。日本一の店数があるので、食材の共同購買と新店の開発で効率が出る。次に値上げの通りやすさだ。2026 年 9 月の既存店は、客数が前年並みの 99% で、客単価が 107% だった。客を大きく減らさずに値段を上げている。
弱みは利益の薄さだ。営業利益率は 4% で、過去 10 年で営業赤字の年が 3 回ある。コロナ禍の 2021 年 3 月期と 2022 年 3 月期は、営業赤字が 40 億円前後に膨らんだ。2026 年 4〜6 月期も、天候不順の客数減とコスト増で営業利益が半分以下になった。景気や天候に弱い体質は変わっていない。
資本の効率も、まだ水準に届かない。直近の ROE は 9.5% だが、過去 10 年の中央値は 1.4% にすぎない。赤字と減損で目減りした自己資本を、利益に変える力は、戻りつつある段階だ。
経営は M&A に慎重だ。買う値段が安い。京樽は、前の持ち主が債務超過を先に解消してから、37.9 億円で譲り受けた。だが小型の買収を続けるうちに、管理の範囲は急に広がっている。筆者が気にするのは、この拡大に本社の管理が追いつくかどうかだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
外食の市場は、数量が増えにくく、値段で伸びる。日本フードサービス協会によれば、2023 年の外食産業は約 24 兆円まで戻した。人口が減る国内では、客の数は 10 年でわずかに細ると見るのが自然だ。伸びるのは客単価で、物価に合わせて上がる。
費用の側は重い。最低賃金は上がり続け、パート・アルバイトは足りない。米や魚、肉の値段も上がっている。値上げを客が受け入れる店だけが利益率を保つ。和食さとは受け入れられている側だ。
競争は業態ごとに違う。和食ファミレスは、しゃぶしゃぶの木曽路、味処のサガミ、ファミレス大手のすかいらーくやロイヤルとぶつかる。回転寿司は、スシロー、くら寿司、はま寿司の大手が低価格帯を押さえている。にぎり長次郎のようなグルメ寿司は、その上の価格帯で、市場は小さいが客単価は高い。持ち帰りの寿司は、スーパーやコンビニの惣菜と競う分、京樽のような店は縮んできた。
外食全体の利益率は、自動化で人手を減らせた会社だけが上げられる。配膳ロボットや調理の機械化への投資力が、10 年後の差になる。SRS は規模が小さく、投資を回せる額に限りがある。京樽の製造工場を、和食の事業にも使う構想はあるが、実際の効果が出るのは先になる。
資本政策と M&A
資本政策は成長優先だ。配当は 2026 年 3 月期で、純利益の約 24% である。コロナ禍の数年は、無配の期もあった。中計に株主還元の数値目標はなく、自社株買いの方針も、筆者の確認した範囲では公表されていない。
買収の足取りは速い。2024 年 10 月にビフテキ重のシンガ、2025 年 9 月にすし弁慶(約 12 億円)、2026 年 9 月に京樽(約 38 億円)を取り込んだ。2026 年 3 月末の現金は約 133 億円だが、京樽の代金で純有利子負債は 70 億円ほどへ増える。自己資本比率は 38% で、まだ余裕はある。
株主は、H2O リテイリングが約 6%、会長の重里欣孝氏が 3〜4% で、支配株主はいない。オーナーが強く握る会社ではないので、買収の対象になる可能性は残る。ただし、その期待を、本質価値には入れていない。一方、増資で株数が増えた年も過去にあり、赤字の年に資本を足してきた履歴は気になる。
株主優待(現物の還元):年およそ4億円を会社の費用ベースで見込む(優待券(100株で年数千円)×優待株主約3万人×原価率。会社の開示額は確認できず推計)。費用は販管費として利益から引き済みなので、10年の還元には「年額×10×続く見込み」(中立1.0・やや悲観0.75・悲観0.5)を受け取り分として足した。自己資本の流れには入れない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
和食さとは、日本一の店数を持つ和食ファミレスだ。既存の商圏で培った客層の厚みを持って、中四国や北関東へ出店を重ねる。中計の 35 店は、実績のある店のつくり方を持ち込むだけで届く。新店は直近の平均を上回る滑り出しで、岡山の 3 店がそれを示した。
寿司は第二の成長エンジンになる。にぎり長次郎の客単価は高く、自動配膳の新型店で人手も減らせる。グルメ寿司はスシローなどの大手が手を出さない価格帯で、2030 年に 150 店という計画は現実的だ。
京樽は、買った値段が安い。年換算の営業利益の約 5 倍で、製造工場と首都圏の 170 店あまりが手に入った。SRS の購買と職人育成が効けば、利益率 3% 台を 5〜6% へ引き上げる余地がある。それだけで営業利益は 10 億円以上積み上がる。製造工場を和食の事業にも使えば、さらに原価が下がる。
外食は物価が上がる局面で強い。値上げが客数を落とさない会社は、売上も利益も名目で伸びる。中計の最終年度、売上 1,150 億円・経常利益 60 億円という数字は、M&A を除いた計画であり、京樽が加われば上振れる。10 年後には売上 1,650 億円、営業利益 95 億円もありうる。
慎重な見方
外食の利益率は上がらない。人件費は毎年 3〜5% 上がり、米や魚も高い。値上げで補えるのは客が離れない間だけで、2026 年 9 月の客数は、和食さとも長次郎もそれぞれ前年の 99% で、すでに前年を割っている。単価で稼ぐ形は、いつか天井に当たる。
京樽は、買った理由が見えにくい。売上は 7% 減り、利益率は 3% 台だ。前の持ち主の FOOD & LIFE COMPANIES は、債務超過を解消するために 65 億円近い増資をしたうえで、手放した。吉野家、スシローと 3 度目の持ち主替わりである。稼げない事業が回ってきたと見るのが自然だ。
2026 年 4〜6 月期は、売上が 6.5% 伸びたのに、営業利益は 54% 減った。拡大してもコストを吸収できていない。その直後に、売上の 3 割に近い京樽を取り込んだ。統合の負荷は、これから出てくる。
家賃は売上が落ちても下がらない固定の約束だ。景気が崩れれば、利益は一気に消える。2028 年 3 月期からは新リース会計基準で、借りている店の約束が貸借対照表に載り、見かけの自己資本比率も下がる。今の値段は、中計が全部うまくいく前提を織り込んでいる。その前提が崩れたとき、値段の下がり方は大きい。
どちらに重みを置いたか
店数を伸ばす力と、買収の値段の規律は強気の見方が優勢だ。一方、利益の薄さと、京樽の再建という最大の不確実性は、慎重な見方の指摘が的を射る。売上の伸びが利益に変わらない決算が、すでに出ている。
このため、強気側の確率を 3 割弱に抑え、慎重側に 4 割近くを置いた。中立は、利益率が今と変わらないまま、京樽が少し改善する姿とした。今の値段が、強気の筋書きでも届かない水準にあることは、確率の置き方を変えても動かなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,211 円501 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 234 円97 億円)。 今の値に割り戻すと 732 円303 億円、今との差 −56.5%、 期待の年率 −1.5%(資本コスト 7.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,602 円1,076 億円 | 351 円145 億円 | +75.7% | +5.8% | 236 円98 億円 |
| やや楽観 | 21% | 1,920 円794 億円 | 314 円130 億円 | +32.9% | +2.9% | 469 円194 億円 |
| 中立 | 33% | 1,501 円621 億円 | 266 円110 億円 | +5.1% | +0.5% | 583 円241 億円 |
| やや悲観 | 26% | 349 円145 億円 | 169 円70 億円 | −69.1% | −11.1% | 135 円56 億円 |
| 悲観 | 12% | 108 円45 億円 | 68 円28 億円 | −89.6% | −20.2% | 21 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,211 円501 億円 | 234 円97 億円 | −14.1% | −1.5% | 1,444 円597 億円 |
今の株価時価総額 1,681 円695 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 強気:和食さとの全国化と寿司の第二の柱が両立 利益 62 億円 · PER 16.8 倍 · 株価時価総額 2,602 円1,076 億円
和食さとは全国ブランドになる。中四国と北関東で店数が 250 を超え、新しい地域の店も既存店並みの売上を出す。にぎり長次郎と鮨勘は自動配膳の新型店に切り替わり、グルメ寿司は 190 店に達する。
京樽は SRS の購買と製造工場の共同利用で原価が下がり、利益率が 6% まで上がる。みさきの回転寿司は立地を絞って店数が 165 に落ち着く。
その他は、低価格帯の外食ブランドの買収が当たり、店数が 560 に増え、海外にも足場ができる。営業利益率は 5.8% と、過去最高の 5.3% を超える。人件費の上昇は、自動化と値上げでこなす。
株主への還元も厚くなり、配当は純利益の 4 分の 1 を超える。10 年後は売上 1,650 億円、営業利益 95 億円。中計の ROE 12% をおおむね達成する。外食でこれだけの利益率を出せる会社は少なく、市場も別の目で見るはずだ。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食さと(和食ファミレス):数量 255(和食さとの期末店舗数(店))× 価格 1.98(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 506 億円・営業利益 41 億円。営業利益率 8.0%
- グルメ寿司(にぎり長次郎・うまい鮨勘・すし弁慶):数量 190(グルメ寿司の期末店舗数(店))× 価格 2.17(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 412 億円・営業利益 33 億円。営業利益率 8.0%
- 京樽・回転寿司みさき(2026 年 9 月に取得):数量 165(京樽・みさきの期末店舗数(店))× 価格 1.73(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 285 億円・営業利益 17 億円。営業利益率 6.0%
- その他(焼肉・ビフテキ重・和食専門店・海外など):数量 560(その他ブランドの期末店舗数(店))× 価格 0.81(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 452 億円・営業利益 25 億円。営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 62 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.4% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.8 倍。全体の PER 16.84 倍、時価総額 1,044 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の達成と買収の統合がともにうまく運ぶ筋書き。外食の薄利と人手不足の構造は変わらないので、楽観の確率は 1 割に届かない 8% に抑えた。
やや楽観 21% やや強気:出店は計画どおり、利益率は少し改善 利益 49 億円 · PER 15.9 倍 · 株価時価総額 1,920 円794 億円
和食さとは中計の 35 店をほぼ出し切り、店数は 238 になる。値上げは客数を落とさず通り、1 店あたりの売上は物価並みに伸びる。
グルメ寿司は 175 店まで増えるが、新型店の立ち上がりに時間がかかり、利益率は 7% にとどまる。京樽は不採算の持ち帰り店を閉め、158 店に絞って利益率 5.5% まで戻す。
その他は、小型の買収を重ねて 525 店になる。全社の営業利益率は 5.0% で、中計の目標(経常利益率 5% 台)に近い。
海外や低価格帯の新しいブランドは、まだ小さな試みにとどまる。10 年後は売上 1,525 億円、営業利益 76 億円。ROE は 12% 近くで、資本コストを 3 ポイント以上上回る。強気に偏らず、堅実な伸びを続ける姿である。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食さと(和食ファミレス):数量 238(和食さとの期末店舗数(店))× 価格 1.95(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 465 億円・営業利益 33 億円。営業利益率 7.0%
- グルメ寿司(にぎり長次郎・うまい鮨勘・すし弁慶):数量 175(グルメ寿司の期末店舗数(店))× 価格 2.15(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 376 億円・営業利益 26 億円。営業利益率 7.0%
- 京樽・回転寿司みさき(2026 年 9 月に取得):数量 158(京樽・みさきの期末店舗数(店))× 価格 1.69(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 266 億円・営業利益 15 億円。営業利益率 5.5%
- その他(焼肉・ビフテキ重・和食専門店・海外など):数量 525(その他ブランドの期末店舗数(店))× 価格 0.80(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 417 億円・営業利益 21 億円。営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.85 倍、時価総額 777 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の店数目標はほぼ達成するが、人件費の吸収が計画より少し遅れる筋書き。実績のある出店と値上げが続く点を重く見て、強気側で最も厚い確率を置いた。
中立 33% 中立:店は増えるが、利益率は今とほぼ同じ 利益 40 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 1,501 円621 億円
和食さとは 225 店まで増えるが、新しい地域の店は既存店ほど稼げず、1 店あたりの売上の伸びは物価をわずかに下回る。値上げが通る間は利益率 6.5% を保つ。
グルメ寿司は 160 店で、利益率は 6.5%。人手は自動配膳で減らすが、賃上げの分と相殺される。京樽は店数が 150 に減り、利益率が 3% 台から 4.5% に改善するところで止まる。
その他は 490 店で、利益率は 4.5%。買収は散発的で、大きな当たりも失敗もない。本社の費用は事業の拡大に合わせて重くなる。
売上は 10 年で倍近くになるが、半分は物価と買収の分である。10 年後は売上 1,400 億円、営業利益 62 億円で、利益率は今と同じ 4.4%。ROE は 10% 台で、資本コストをわずかに上回る程度にとどまる。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み1で10年に40億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食さと(和食ファミレス):数量 225(和食さとの期末店舗数(店))× 価格 1.92(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 433 億円・営業利益 28 億円。営業利益率 6.5%
- グルメ寿司(にぎり長次郎・うまい鮨勘・すし弁慶):数量 160(グルメ寿司の期末店舗数(店))× 価格 2.13(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 340 億円・営業利益 22 億円。営業利益率 6.5%
- 京樽・回転寿司みさき(2026 年 9 月に取得):数量 150(京樽・みさきの期末店舗数(店))× 価格 1.64(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 246 億円・営業利益 11 億円。営業利益率 4.5%
- その他(焼肉・ビフテキ重・和食専門店・海外など):数量 490(その他ブランドの期末店舗数(店))× 価格 0.78(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 384 億円・営業利益 17 億円。営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.8% が k 7.80% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 15.01 倍、時価総額 600 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:外食の利益率が人件費で伸びにくいという業界の見通しと、京樽の再建が半分だけ進む姿を組み合わせた落としどころ。
やや悲観 26% やや弱気:京樽の再建が遅れ、人件費に利益を削られる 利益 17 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 349 円145 億円
人件費と食材費の上昇が、値上げでは吸収しきれない。和食さとは客数が年 1% ずつ減り、店数は 205 で止まる。利益率は 4.5% に下がる。
グルメ寿司は新型店の立ち上がりが遅れ、店数 135、利益率 4.5% にとどまる。京樽は売上の減少が止まらず、130 店まで絞り込んでも利益率は 2% に届く程度。工場の稼働率も上がらない。
その他は、買収した小さなブランドの統合に手間取り、利益率が 3% に落ちる。本社の費用だけが残る。
買収で売上は膨らんで見えるが、利益は積み上がらない。10 年後は売上 1,200 億円、営業利益 29 億円で、今の水準(30 億円)にも届かない。ROE は資本コストを下回り、配当は増えない。外食の薄利が、そのまま結果に出る筋書きだ。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.75で10年に30億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食さと(和食ファミレス):数量 205(和食さとの期末店舗数(店))× 価格 1.86(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 382 億円・営業利益 17 億円。営業利益率 4.5%
- グルメ寿司(にぎり長次郎・うまい鮨勘・すし弁慶):数量 135(グルメ寿司の期末店舗数(店))× 価格 2.08(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 281 億円・営業利益 13 億円。営業利益率 4.5%
- 京樽・回転寿司みさき(2026 年 9 月に取得):数量 130(京樽・みさきの期末店舗数(店))× 価格 1.59(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 207 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 2.0%
- その他(焼肉・ビフテキ重・和食専門店・海外など):数量 430(その他ブランドの期末店舗数(店))× 価格 0.76(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 326 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 3.0%
倍率:ROE 5.5%(純利益 17 億円 ÷ 自己資本 308 億円)は資本コスト 7.8% に届かない。ためた利益は額面より低い価値でしか評価できず、PER は 1÷k の 12.0 倍が上限になる。京樽の再建が遅れ、利益が薄いまま続く筋書きなので、その上限の 7 割にも届かない 8.5 倍に置いた。
確率:2026 年 4〜6 月期に営業利益が半減した事実と、京樽の売上減を重く見て、弱気側にも強気側とほぼ同じ厚みを置いた。
悲観 12% 構造的に負ける:薄利の店が固定費に押しつぶされる 利益 −10 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 108 円45 億円
賃上げが 10 年続き、値上げで吸収できない。客は離れ、和食さとは店数を 180 まで減らし、利益率は 1.5% に落ちる。グルメ寿司も同様に、高い客単価が景気に耐えられず、110 店で利益はほぼ消える。
京樽は 100 店まで縮み、赤字が続く。買収で取り込んだ工場や店の設備に、減損が出る。のれんも消える。その他の中小ブランドも、利益をほとんど生まない。
家賃は売上が落ちても下がらず、営業利益は赤字になる。配当はほぼ止まり、自己資本は減損で 120 億円まで減る。
それでも店と人が残るので、ブランドごとの売却や、他社による事業の引き取りで、価値が一部は回収される。ただし回収できる額は、帳簿の自己資本よりずっと小さい。
株主優待は現物の還元で、年およそ4億円(会社の費用ベース・推計)。続く見込み0.5で10年に20億円を還元へ足した(費用は利益から引き済み)。
- 和食さと(和食ファミレス):数量 180(和食さとの期末店舗数(店))× 価格 1.75(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 314 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 1.5%
- グルメ寿司(にぎり長次郎・うまい鮨勘・すし弁慶):数量 110(グルメ寿司の期末店舗数(店))× 価格 1.95(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 215 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 1.0%
- 京樽・回転寿司みさき(2026 年 9 月に取得):数量 100(京樽・みさきの期末店舗数(店))× 価格 1.47(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 147 億円・営業利益 −3 億円。営業利益率 -2.0%
- その他(焼肉・ビフテキ重・和食専門店・海外など):数量 380(その他ブランドの期末店舗数(店))× 価格 0.71(1 店舗当たり年間売上(億円))→ 売上 270 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:赤字で稼ぐ力はゼロ。価値は、店の設備・京樽の工場・敷金のうち売れる分の税後(床の資産 45 億円)と同じ水準で測り、今の自己資本 178 億円に PBR 0.25 倍を掛けた。店舗は賃借が多く、設備は売っても簿価を大きく割る。借金は減らせるが、純現金ではない。
確率:外食の薄利と固定費の重さを考えれば、構造的に負ける筋書きを 1 割は置く。京樽を含む連続買収の失敗と、人手不足の長期化が重なる姿である。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
和食さと(和食ファミレス)
しゃぶしゃぶ・すき焼き・寿司・天ぷらを出す郊外ロードサイドの和食ファミレス。国内で最も店舗数が多く、SRS の最大の事業。
| 数量和食さとの期末店舗数(店) | 価格1 店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 199 | 1.48 | 295 | 18 |
| 10 年後 中立 | 225 | 1.92 | 433 | 28 |
取り方:2025 年 3 月期の和食さとは 198 店・売上約 279 億円で、1 店あたり 1.4 億円。2026 年 3 月期は既存店の伸びを足して約 295 億円(約 199 店)と推定し、1 店あたり 1.48 億円とした。営業利益は利益率 6% と推定(セグメント利益の開示は未確認)。10 年後の 1 店あたり売上は、物価の 1.34 倍に、人口減による客数の目減りを 3% 引いた 0.97 を掛けた。
グルメ寿司(にぎり長次郎・うまい鮨勘・すし弁慶)
客単価の高いグルメ回転寿司。にぎり長次郎が主力で、うまい鮨勘と 2025 年 9 月に取り込んだすし弁慶が加わる。
| 数量グルメ寿司の期末店舗数(店) | 価格1 店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 117 | 1.62 | 190 | 11 |
| 10 年後 中立 | 160 | 2.13 | 340 | 22 |
取り方:2025 年 3 月期のにぎり長次郎は 72 店・売上約 140 億円。そこへ鮨勘、半年分のすし弁慶、アミノ寿司などを足して、2026 年 3 月期は約 117 店・売上約 190 億円と推定し、1 店あたり 1.62 億円とした(弁慶が半年分の連結なので 1 店あたりは低めに出る)。営業利益率は 6% と推定。10 年後の 1 店あたり売上は物価の 1.34 倍に、客数の目減り 2% を引いた。
京樽・回転寿司みさき(2026 年 9 月に取得)
持ち帰り寿司の「京樽」と回転寿司の「みさき」を首都圏中心に 172 店展開する。FOOD & LIFE COMPANIES から約 38 億円で取得し、2026 年 9 月に連結に入った。
| 数量京樽・みさきの期末店舗数(店) | 価格1 店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.0 | 1.29 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 150 | 1.64 | 246 | 11 |
取り方:2026 年 3 月期にはまだ連結に入っていないので、今の欄は店数 0・売上 0 とした。実力は、取得前の売上が年約 220〜235 億円、店数 172、セグメント利益が年 7〜8 億円(利益率 3% 前後)。この値から 1 店あたり 1.29 億円を価格の基準にした。10 年後の筋書きでは、店数と 1 店あたり売上を、この基準に物価 1.34 倍と客数の増減を掛けて置いた。
その他(焼肉・ビフテキ重・和食専門店・海外など)
和食さと以外の和食・焼肉・洋食の中小ブランドと海外。低価格帯のブランドを買い足す受け皿にもなる。
| 数量その他ブランドの期末店舗数(店) | 価格1 店舗当たり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 464 | 0.60 | 280 | 11 |
| 10 年後 中立 | 490 | 0.78 | 384 | 17 |
取り方:全社の 2026 年 3 月期の売上 764 億円から、和食さと・グルメ寿司の推定を引いた残り約 280 億円を、その他と推定。全社の店数 780 から、さとと寿司を引いた約 464 店で割り、1 店あたり 0.60 億円とした。営業利益率は 4% と推定。10 年後の 1 店あたり売上は物価の 1.34 倍に、客数の目減り 3% を引いた。
リスクと懸念
京樽の再建と統合の失敗
売上は 7% 減り、利益率は 3% 台と薄い。持ち主が 3 度替わった事業で、前の持ち主は 65 億円近い増資で債務超過を整理してから手放した。持ち帰り寿司の店は、スーパーやコンビニの惣菜と競う。再建に時間がかかれば、買収の効果が出る前に、本社の費用と減損が先に来る。製造工場の稼働が上がらなければ、固定費だけが残る。
人件費と採用難
最低賃金は上がり続け、パート・アルバイトは足りない。和食さとのような大型の店は、ホールと厨房の人員が多く、賃上げの影響が大きい。値上げで補えるのは客数が落ちない間だけで、2026 年 9 月の客数はすでに前年を割っている。自動配膳やセントラルキッチンで減らせる人手には限りがある。人が集まらず、営業時間を短くせざるをえない店が出ると、売上そのものが減る。
客数の減少と値上げの限界
既存店の売上は、客数の減少を客単価の上昇が補う形が続く。2026 年 4〜6 月期は、天候不順の客数減で営業利益が半分以下になった。天候や景気に左右される体質は変わらず、客が値上げに慣れきれば、客数だけが減る局面がくる。そのとき固定費は変わらないので、利益率の悪化は売上の減り方より速い。
食材と為替
米、魚、肉の値段は上がっている。寿司は魚介の輸入と市況に左右され、為替が円安に傾けば仕入れが上がる。仕入れ値の上昇は値上げが遅れる分だけ利益を削る。共同購買の力は大手のゼンショー、F&LC に及ばない。調達の規模で負ける分は、値上げで補うしかない。
固定の家賃とリース
店の多くは賃借で、家賃は売上が落ちても減らない固定の約束だ。売上の 6% 前後と置けば年 40 億円台になる。景気が崩れると、利益はすぐ消える。2028 年 3 月期から新リース会計基準で、借りている店の約束が貸借対照表に載り、自己資本比率の見かけは下がる。
買収の連続と資本の薄さ
2 年あまりで 3 社を買い、店数は 780 から 958 に増えた。純有利子負債は京樽の代金で 70 億円ほどへ増える。自己資本は 178 億円で、大型の買収を続ける余力は限られる。過去には赤字の年に株数が増えた期もあり、再び増資で資本を足す可能性は残る。1 社ずつは小さくても、積み重なれば管理の負担になる。
食の安全とブランドの傷
外食は、食中毒や異物混入、店内での迷惑行為の拡散で、一夜にして客が離れる。店数が増えるほど管理の目は行き届きにくく、M&A で加わった新しいブランドの衛生管理は、取り込んだ後に確かめるまで見えない。ブランドの傷は、売上だけでなく採用にも響く。
今後の分かれ目
- 京樽が連結後 1〜2 年で営業利益率 5% を超えたら
- 寿司が第三の柱になる。強気・やや強気の確率を上げてよい。購買と工場の共同利用が効いたことの証拠になる。
- 京樽の既存店売上が前年を割り続け、不採算店の閉鎖が続いたら
- 買収の判断が裏目に出たと見る。やや弱気・弱気の確率を上げ、減損が資本を削る筋書きを重く置く。
- 和食さとの客数が 3 か月連続で前年を割り、単価の上昇でしか売上が伸びなかったら
- 値上げの余力が尽きつつある。中立の利益率を下げ、やや弱気の確率を上げる。
- 中四国・北関東の新店が、既存店並みの売上を出し続けたら
- 全国ブランド化の裏付けになる。和食さとの店数 250 の筋書き(強気)の確率を上げてよい。
- 大型の買収(売上 300 億円超)を借入で実行したら
- 純有利子負債が自己資本に近づく。資本の薄さが表に出るので、悲観側の確率を上げる。
- 最低賃金の上昇が年 5% を超える年が続いたら
- 利益率が構造的に低下する。値上げで吸収できなければ、中立でも営業利益率 4% を割る。
見ておくもの
- 月次の既存店売上高・客数・客単価(和食さと、にぎり長次郎。京樽は連結後の月次)
- 京樽・みさきの店数と利益率(四半期のセグメント開示)
- 中計(2030 年 3 月期に売上 1,150 億円・経常利益 60 億円・店数 1,180)の進捗と、M&A を含む計画の修正
- 四半期の営業利益率(2026 年 4〜6 月期の 1.4% からの回復)
- 人件費率・食材費率の推移と、賃上げの動き
- 純有利子負債と自己資本比率(京樽の代金、新リース会計の適用)
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価からでなく、10 年後の利益・ROE・資本コストから置いた。式で出た上限の 7〜9 割台に収め、床に合わせにいかなかった。悲観は今の自己資本ではなく、稼ぐ力(赤字ならゼロ)と、売れる資産の税後の推定で置いた。店の賃借が多いため、家賃を営業費用に入れた今と同じ形で 10 年後も置いた。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で見かけの営業利益や純有利子負債の形は変わるが、利益の本質は変わらない。今の時価総額は 2026 年 3 月期の純利益の約 38 倍だが、この倍率は筋書きにも倍率の決め方にも使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→16.84 倍・やや楽観 PER 13→15.85 倍・中立 PER 12.1→15.01 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +0.8% を足した 8.3%。個別のリスク(京樽の再建、買収の連続)は k に足さず、筋書きと確率で表した。事業は黒字で傾いておらず extra は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.30% → 7.80%。