結論
浅香工業は 1893 年に国産初のショベルを企業化した老舗で、土工用ショベルでは国内で最大手とされる。物流機器も手がける。筆者は、今の値段をやや割高と見る。
決め手は 2 つある。1 つは財務の厚さだ。自己資本比率は 65% で、純現金を持つ。もう 1 つは利益率の低さだ。営業利益率は 3% 台半ばで、売上は 84 億円で 10 年間ほとんど動かない。自己資本の利益率は資本コストを下回り、ためた利益が価値を生みにくい。
転機は株主還元の変化かもしれない。直近では普通配当に特別配当を上乗せし、2025 年の株主総会には株主提案も出た。還元が厚くなれば、ためた自己資本の使い道が変わる。ただ、会社の予想は営業利益が 3 割減で、稼ぐ力の改善とは言えない。
稼ぐ力は低いが、資産は厚い。この組み合わせが、値段を「適正」の近くに押し戻している。
数字の見立ては、10 年後に積み上がる価値が今の時価総額の 7 割台に収まる、というものだ。割高だが、極端ではない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、浅香工業は「安全だが育たない会社」だ。事業は 120 年続き、財務は厚く、倒産の心配は小さい。
しかし、稼ぐ力に比べて自己資本が重い。自己資本利益率は 5% 前後で、資本コストを下回る。利益をためるだけでは、株主の価値は増えない。会社が自己資本を事業に使わず、配当にも回さないなら、帳簿の価値はそのまま株価の下値にはならない。
評価を左右するのは資本の使い道だ。特別配当の実施と株主提案は、変化の兆しとして注目に値する。配当性向を 3 割に高め、さらに自社株買いにも動くなら、価値は中立の見立てより上がる。
今の値段には、安全域は小さい。自己資本の 5 割弱という数字は割安に見えるが、稼ぐ力から見れば、やや割高だ。
経営が資本をどう配分するかが、この会社の評価の分かれ目になる。
何で稼ぐ会社か
浅香工業の売上は 2 本柱で、約 64% が生活関連用品、約 36% が物流機器だ。生活関連用品は、ショベル、スコップ、園芸用具、工事・農業用の機器を扱う。土工用ショベルは国内トップシェアとされ、公共工事と防災備蓄、農業向けに販売する。国内の大手ホームセンターや建設資材の卸を通じて売る形が中心とみられる。
物流機器は、1963 年の型枠の製造から始まり、台車、コンテナ、ロールボックスなど工場や倉庫で使う運搬機器を手がける。1972 年に物流課を設けて本格化した。荷動きと人手不足の影響を受ける。
本社は大阪府堺市にあり、子会社は国富産業 1 社。従業員は多くなく、製造は国内が中心とみられる。売上総利益率は開示で確認できていないが、営業利益率は 3% 台半ばにとどまる。
販売の中心は国内で、海外売上は小さいとみられる。為替は筋書きでは動かさない。円安で輸入品が高くなれば、国産品に追い風になる。
ショベルは、土木・建設の現場と、ホームセンターで売る家庭向けの製品に分かれる。現場向けは耐久性が求められ、国内メーカーの信頼が値段を支える。家庭向けは価格で選ばれるため、輸入品との競争が厳しい。
優良さと弱いところ
優良さは中程度で、事業の堀は 120 年のブランドと販路にとどまる。ショベルは製品の差が出にくく、価格競争に弱い。国内トップシェアの強みは、海外製の廉価品との差が縮めば薄れる。物流機器は競合が多く、値決めの力は限られる。
過去 10 年の営業利益率は 0% 台から 3% 台後半へ緩やかに上がった。直近 4 年は 3% 台半ばで、改善は実績だ。売上はほぼ動かず、利益率が上がっただけなので、構造の強さとまでは言えない。
財務は健全で、自己資本比率は 65%、純現金を持つ。固定資産のうち大部分は土地・建物とみられ、投資有価証券は 5 億円ほど。含み益の額は開示で確かめられない。経営は直近で特別配当に踏み切り、還元の姿勢に変化の兆しがある。
筆者は、堀の弱さを割り引き、資本コストの上乗せは付けなかった。財務の厚さと寿命の長さが、値決めの弱さを相殺すると見たからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ショベル・スコップは成熟した市場だ。土工は公共事業と災害復旧で一定の需要が続くが、人口と農業人口は減る。園芸用具は住宅の減少と高齢化で伸びない。海外の廉価な製品との競争が長く続いている。国内で最大手とされる浅香工業の立場は、価格のブランドで保っている。
物流機器は、荷物の量が堅調で、人手不足の対応として省力機器の需要がある。ただし台車やコンテナは参入しやすく、競合が多い。鋼材と樹脂の値上がりを価格に転嫁できるかが利益率を決める。
物価が 3% で続く世界では、両部門とも値上げは通りやすい。ただし賃金と材料費も同じだけ上がるので、利益率が自然に上がるわけではない。会社は 2027/03 期に営業利益が 3 割減る予想を出しており、コスト高の転嫁が簡単でないことを示している。
物流機器は、EC の拡大で荷物が増え、倉庫の自動化が進む流れの中にある。ただし、自動化の主役は大型設備で、台車のような小型の運搬機器は価格競争になりやすい。ショベルは防災備蓄の需要が、災害のたびに見直される。
成熟市場の会社の成否は、数量ではなく、値上げを通す力と固定費の管理で決まる。浅香工業は、その両方を過去数年で少しずつ改善してきたが、改善の余地はもう大きくない。
資本政策と M&A
配当は、2026/03 期に普通配当へ特別配当を上乗せし、年間では前の期の 2 倍近くに増やした。過去の配当性向は 2 割前後と低く、自己資本比率は年々上がってきた。直近の特別配当は、還元に動いた最初の例になる。2027/03 期の期末配当は普通配当の水準に戻る予想だ。
2025 年の定時株主総会では買収防衛策の更新が議案になり、株主提案も出された。外部の株主が経営に意見を言い始めている。
M&A は子会社 1 社のみで、実績は乏しい。時価総額が 20 億円ほどで、自己資本を下回る値段にあるため、買収の対象になる余地はあるが、公開買付けの報道は確認できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
自己資本が 46 億円あり、時価総額は 21 億円。会社の価値を土地と投資有価証券だけで測っても、今の値段は低い。特別配当に踏み切り、株主提案も出た。外部の目が入った経営は、還元を厚くする方向に動く。配当性向が 3 割から 5 割に上がれば、自己資本の積み上がりは止まり、1 株の価値が増える。
物流機器は人手不足と省力化の需要が追い風で、台数が伸びる余地がある。ショベルは国内最大手の地位が崩れておらず、値上げも通る。営業利益率は直近 4 年で 3% 台半ばを保ち、改善が定着している。
老舗の財務の厚さは、買収の対象としても魅力がある。非公開化や公開買付けが出れば、今の値段は大きく上に動く。
値上げは、物価が 3% で続く世界で通りやすい。国内トップシェアの製品は、ホームセンターの棚で替えがきかない存在だ。
還元の強化、財務の厚さ、買収の可能性という 3 つの材料が同時に効けば、今の値段は大きく見直される。10 年で数倍になる筋は、小型株にはよくある。
慎重な見方
利益の質が低い。営業利益率は 3% 台半ばで、自己資本利益率は 5% 前後と、資本コストを大きく下回る。自己資本が厚いのは、稼いだ利益を配らずにためてきた結果で、価値ではなく非効率の表れだ。ためた利益は、額面どおりの価値にならない。
会社自身が 2027/03 期に営業利益の 3 割減を予想している。コスト高を値上げで埋められていない。ショベルは海外製の廉価品に、物流機器は国内の競合に挟まれ、値決めの力が弱い。数量は人口減で細る。
特別配当は 1 回限りの可能性が高い。株主提案が出ても、経営が方針を変える保証はない。土地の含み益も、事業を続ける限り取り出せない。
人手不足で製造現場の賃金が上がれば、利益率は 3% 台半ばを維持するのも難しくなる。
自己資本の厚さが株価を支えるという考えは、ためた利益が株主に戻る前提に立つ。その前提が崩れれば、厚い自己資本は重荷に変わる。小型で流動性の低い株は、上がりにくく下がりやすい。
どちらに重みを置いたか
稼ぐ力の議論では慎重な見方が優る。ただし、特別配当と株主提案という、資本の使い方が変わる具体的な材料があるため、強気の見方を完全には退けられない。やや悲観に 27%、悲観に 10%、中立に 38% と置き、楽観とやや楽観に合計 25% を残した。結果として、価値は今の値段の 7 割台に出た。
還元の強化が定着するかどうかが、確率の分かれ目になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,975 円29 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 691 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 1,925 円18 億円、今との差 −12.1%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,007 円58 億円 | 1,249 円12 億円 | +231.3% | +12.7% | 508 円5 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,590 円44 億円 | 937 円9 億円 | +152.4% | +9.7% | 995 円10 億円 |
| 中立 | 38% | 3,352 円32 億円 | 729 円7 億円 | +86.4% | +6.4% | 1,551 円15 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,374 円13 億円 | 468 円5 億円 | −15.9% | −1.7% | 497 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 833 円8 億円 | 312 円3 億円 | −47.7% | −6.3% | 115 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,975 円29 億円 | 691 円7 億円 | +67.4% | +5.3% | 3,666 円35 億円 |
今の株価時価総額 2,190 円21 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 還元が厚くなり、物流機器が省力化需要で伸びる 利益 4 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 6,007 円58 億円
人手不足で物流現場の省力化が進み、台車やロールボックスの更新需要が続く。物流機器の販売台数は 1 割以上増え、値上げも通る。ショベルは土工と防災で底堅く、園芸用品は伸び悩むが利益率は守る。営業利益率は 4% 台後半に上がり、会社は余った資金を配当に回す。株主提案を受けた経営は還元を厚くし、配当性向が 35% 台に定着する。それでも自己資本が積み上がり、利益率は資本コストを超えない。物価と建築費の上昇で工場の更新投資は重くなるが、減価償却は取得時の値段のままで見かけの利益は厚くなる。会社は自社株買いにも動き、自己資本の積み上がりが止まる。
- 生活関連用品:数量 280(出荷点数(万点))× 価格 0.27(1 点あたりの売上(億円 ÷ 万点))→ 売上 74 億円・営業利益 3 億円
- 物流機器:数量 25.0(出荷台数(万台))× 価格 2.14(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 53 億円・営業利益 3 億円
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 58 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物流機器の拡大と株主還元の強化が同時に起きる筋。条件が重なるので 7%。
やや楽観 18% やや楽観:物流機器が伸び、利益率は 3% 台後半 利益 3 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 4,590 円44 億円
生活関連用品の数量は人口減で 1 割弱減るが、土工と防災で下げ止まる。物流機器は台数を 1 割ほど増やす。単価は物価に近く上がり、鋼材高も価格に転嫁できる。営業利益率は直近の 3% 台半ばを上回り、3% 台後半で安定する。還元は株主提案以降の流れを保ち、普通配当を物価に合わせて増やす。更新投資は償却を上回って現金が出ていくが、財務に余裕があるため借入を増やさずに賄える。物流機器の台数増が、生活関連用品の数量減を補う。人口減の中でも、防災用品としてのショベルの需要は底堅く、公共工事の予算が数量を支える。値上げで売上が伸び、利益率が改善する。
- 生活関連用品:数量 269(出荷点数(万点))× 価格 0.26(1 点あたりの売上(億円 ÷ 万点))→ 売上 70 億円・営業利益 3 億円
- 物流機器:数量 22.4(出荷台数(万台))× 価格 2.09(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 47 億円・営業利益 2 億円
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 44 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:近年の営業利益率は 3% 台半ばで、これを少し上回る程度なら十分に起こる。
中立 38% 中立:数量は細るが値上げで売上を保ち、利益率は 3% 前後 利益 2 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 3,352 円32 億円
ショベルとスコップは、120 年を超える老舗の主力だ。土工用では国内で最大手とされ、公共工事と防災備蓄に支えられる。数量は人口減と農業人口の減少で 10 年で 1 割弱減る。物流機器は荷動きの底堅さと人手不足を背景に横ばいで推移する。単価は物価に沿って上がり、売上は 100 億円を超える。営業利益率は会社予想と過去の中間の 3% 前後。配当は純利益の 3 割に高まり、自己資本は積み上がる。設備は古く、更新は物価と建築費の上昇で重い。減価償却は取得時の値段のままで、会計の利益が見かけ上厚くなる一方、現金は更新投資で細る。配当は純利益の 3 割に高まり、自己資本は少しずつ積み上がる。
- 生活関連用品:数量 258(出荷点数(万点))× 価格 0.25(1 点あたりの売上(億円 ÷ 万点))→ 売上 66 億円・営業利益 2 億円
- 物流機器:数量 20.0(出荷台数(万台))× 価格 2.04(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社予想は営業利益率 2.6% と直近より低い。直近 4 年の 3% 台半ばとの中間を取り、最も厚い 38%。
やや悲観 27% やや悲観:廉価輸入品と物流機器の競争で利益率が 2% 前後に 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 1,374 円13 億円
海外製の廉価なショベルと園芸用品が国内で広がり、ブランドの価格優位が薄れる。物流機器は競合が多く、値上げが原価の上昇に届かない。数量は生活関連で 15% 減、物流機器でも 1 割減る。営業利益率は 2% 前後まで下がる。配当は維持できるが、増配の余地は小さい。自己資本は積み上がっても、稼ぐ力は細る。設備の更新を先送りして維持するが、競争力は落ちる。配当は 2 割台に戻り、積み上がる自己資本が増える。物流機器は大手に価格で押され、台数も減る。ショベルは輸入品との価格差が開く。鋼材の値上がりを価格に転嫁できず、原価率が上がる。製造現場の賃金も上がり、利益が圧迫される。
- 生活関連用品:数量 238(出荷点数(万点))× 価格 0.25(1 点あたりの売上(億円 ÷ 万点))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円
- 物流機器:数量 18.0(出荷台数(万台))× 価格 1.98(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 36 億円・営業利益 1 億円
倍率:稼ぐ力が資本コストをさらに下回る筋。PER は上限の 6 割で置いた。
確率:2027/03 の会社予想が既に営業利益 29% 減で、コスト高の転嫁に苦戦している兆しがある。27% とした。
悲観 10% 悲観:構造的に負け、赤字と資産の床だけが残る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 833 円8 億円
土工用ショベルと園芸用品は海外製に押され、数量が 3 割減る。物流機器は大手の台車・容器メーカーに敗れて 25% 減る。固定費が重く、営業赤字が数年続く。配当は普通配当を維持できず、減らす。会社は工場の統合や土地の売却で縮む。値段は事業の稼ぐ力ではなく、換金できる資産で測るしかなくなる。赤字の間は配当を減らし、固定資産の売却で資金をつなぐ。自己資本は損失で細る。大株主との関係が悪化し、経営の混乱が資産の売却を遅らせる可能性もある。工場の統合で固定費を削るが、縮小の速度は需要の減少に追いつかない。
- 生活関連用品:数量 196(出荷点数(万点))× 価格 0.24(1 点あたりの売上(億円 ÷ 万点))→ 売上 47 億円・営業利益 0 億円
- 物流機器:数量 15.0(出荷台数(万台))× 価格 1.91(1 台あたりの売上(万円))→ 売上 29 億円・営業利益 0 億円
倍率:赤字で PER は使えない。床の資産(約 8.0 億円)を今の自己資本 46 億円に掛ける形で、PBR は約 0.17 倍。事業の稼ぐ力より、換金できる資産のほうが大きい構造の負けとして置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.174 倍・時価総額 8 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:主力製品の価格競争と需要減が重なる構造的な負けの筋。10% は、小型の製造業に置く下限として十分。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
生活関連用品
ショベル・スコップ・園芸用具・工事・農業用機器。土工用ショベルは国内最大手とされる。
| 数量出荷点数(万点) | 価格1 点あたりの売上(億円 ÷ 万点) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 280 | 0.19 | 53 | 2 |
| 10 年後 中立 | 258 | 0.25 | 66 | 2 |
取り方:売上 53.1 億円(構成比 63.5%)を、1 点あたり平均 0.19 億円÷万点(1 点約 0.19 万円の混合価格)と置いて出荷 280 万点と推定した。点数は開示がなく売上からの推定。セグメント利益は非開示なので全社営業利益 3.1 億円を 2.0 と 1.1 に分けた推定。
物流機器
台車・コンテナ・ロールボックスなど、工場・倉庫で使う運搬機器。
| 数量出荷台数(万台) | 価格1 台あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 1.53 | 31 | 1 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 2.04 | 41 | 1 |
取り方:売上 30.5 億円(構成比 36.5%)を、1 台あたり平均 1.525 万円と置いて出荷 20 万台と推定した。台数は開示がなく売上からの推定。セグメント利益は非開示の推定。
リスクと懸念
コスト高の価格転嫁
2027/03 期の会社予想は営業利益が 3 割減。鋼材・樹脂・物流費の上昇を価格に転嫁できなければ、利益率は 2% 台に下がる。
廉価な輸入品との競争
ショベルと園芸用具は海外製の廉価品に押される。国内トップシェアでも、価格差が開けばブランドの値打ちは落ちる。
人口減と農業人口の減少
生活関連用品の数量は人口と農業人口で決まる。10 年で 1 割ほど減る前提でも、下振れる可能性がある。
物流機器の競合
台車やコンテナは参入障壁が低い。大手や中堅の競合と価格で争い、利益率が上がりにくい。
資本の使い道
自己資本の厚さが積み上がるだけなら、価値を生まない。還元の方針が一貫せず、特別配当が 1 回限りに終わるおそれがある。
小型株の流動性と株主構成
時価総額が 20 億円ほどで、売買は薄い。株主提案が出た経緯があり、経営と株主の関係が不安定になる局面もありうる。
今後の分かれ目
- 配当性向が 4 割を超えて 2 期続く、または自社株買いが始まる
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。自己資本の使い道が変わった証拠になる。
- 営業利益率が 4% を超える
- 価格転嫁と製品の入れ替えが効いたと見て、中立の利益率を上げる。
- 2027/03 期の営業利益が予想の 2.2 億円を下回る
- コスト高の転嫁が進んでいないと見て、やや悲観の確率を上げる。
- 土地や投資有価証券の売却方針が数字で開示される
- 売却益と還元の額を別に足して、中立の価値を見直す。
- 公開買付けや非公開化の発表がある
- 筋書きの前提が変わるので、分析を作り直す。
見ておくもの
- 営業利益率と会社予想の達成度
- 配当性向と自社株買い
- 物流機器の売上
- 投資有価証券と土地の売却
- 株主総会の議案と株主提案
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k を下回る事業の上限 1÷k から、利益の質に応じて置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。セグメント利益は非開示で、全社の営業利益を割った推定。土地の含み益は開示で確かめられないため、中立には足さず、悲観の床に簿価の 1 割だけ見込んだ。新リース会計基準の影響は小さい(賃借は少ない)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→13.33 倍・やや楽観 PER 10→13.33 倍・中立 PER 9.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。