結論
日本アイ・エス・ケイは、KING ブランドの耐火金庫、歯科医院の診療台、コインロッカーという地味な 3 つの製品を作る茨城の会社だ。筆者の結論は「割安」で、一番の理由は、無借金で毎年 4 億円台の純利益を稼ぐのに、今の時価総額が手元の現金の 2 倍ほどしかないことにある。
3 つの事業はどれも国内の成熟した市場で、大きくは伸びない。それでも、それぞれが 1 割前後の利益率を保ち、2026 年の中間期は値上げが効いて営業利益が 26% 伸びた。物価が年 3% 上がる世界では、値上げを通せる会社の利益は名目で増える。
弱みは資本の使い方だ。現金は 10 年で 3 億円から 14 億円に増えたが、配当性向は 1 割にとどまる。創業家が 4 割弱を持ち、余った現金が株主に戻る保証は無い。筆者はこの点を価値から差し引いたうえで、なお今の値段は低いと見る。
見立ての分かれ目は、創業家が現金をどう使うかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、日本アイ・エス・ケイは「地味だが崩れにくい事業を、安く買える会社」だ。
金庫も歯科の診療台もロッカーも、10 年後に無くなる製品ではない。どれも鋼を加工する技術と販売の網が要り、新しい会社が一気に入ってくる市場ではない。値上げを通せることは、2026 年の中間期の利益率がはっきり示した。
オーナーとして気になるのは、稼いだ現金の行き先だ。純利益の 4 分の 3 が会社に残り、その多くは預金のまま眠る。創業家が支配する会社で、少数株主にはこの現金の使い方を決める力が無い。筆者は現金の価値を半分に割り引いて考える。
それでも、払う値段には安全域がある。事業が今の利益を保つだけで、10 年後の価値は今の時価総額の 2 倍に届く。悲観の筋でも、手元の現金と土地が損失の底を支える。
何で稼ぐ会社か
売上 61 億円は、ほぼ 3 等分された 3 つの製品から来る。どれも鋼を曲げて組み立てる技術を根に持つ。
1 つ目は鋼製品、つまり耐火金庫だ。売上 17 億円で、利益率は 16% と 3 つの中で一番高い。家庭用の小型から業務用の大型まで揃え、最近は指紋・静脈・虹彩・顔で開く生体認証の機種に力を入れる。操作の履歴が残るキーボックスも伸びている。
2 つ目はデンタル、つまり歯科医院の診療台(歯科用ユニット)だ。売上 21 億円、利益率 13.5%。患者が座る椅子と、医師が使う器具を一体にした機械で、10〜15 年ごとに買い替えられる。部品の一部は子会社のビアンエアージャパンから仕入れる。
3 つ目は書庫ロッカーで、駅のコインロッカー、宅配ロッカー、事務所の書庫を札幌と川島の工場で作る。売上 20 億円だが、利益率は 8% と低い。ほかに自社の土地と建物の賃貸が 1.8 億円の売上で 1.5 億円を稼ぎ、工具の販売が少しある。本社の費用は年 3 億円ほどかかる。
どの事業も、売上の中心は国内の法人や医院だ。
優良さと弱いところ
優良さは「小さな市場で居場所を守る会社」と見る。3 つの事業のどれも、業界の盟主ではない。だが、それぞれの市場で長く名前が通り、値上げを通せるだけの居場所を持つ。
耐火金庫は、火事の熱から中身を守る試験に通る設計と、全国の販売店の網が要る。新しく入るのは難しく、市場は少数の会社で分け合う。歯科のユニットは、モリタやヨシダ、タカラベルモントといった大手が強い。この会社は中価格帯で地方の開業医に選ばれる立場だ。
資本の効率は平凡だ。ROE は 9% 前後で、現金と年金の積立超過を抱える分、低く出る。事業だけで見れば ROE は 1 割を超える。
弱いのは経営の資本の使い方だ。配当は何年も据え置かれ、配当性向は 1 割しかない。自社株買いは毎年少しずつ行うが、それは創業家の持株比率を押し上げる方向にも働く。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
3 つの市場は、どれも国内の人口と書類の量に結びついた成熟市場だ。大きく伸びることはないが、急に消えることもない。
耐火金庫は、紙の書類の電子化が最大の逆風だ。会社の契約書や台帳は電子に移り、業務用の大型金庫の需要は細る。一方で、家庭の防犯と災害への備えは高齢の世帯で厚い。現金や貴金属、記録媒体を守る小型の金庫は底堅い。生体認証のように、単価を上げる工夫が利益を左右する。
歯科は、全国に 6 万 7 千ほどある歯科医院がゆっくり減る。院長の高齢化で閉院が増える一方、残る医院は設備を新しくする。ユニットの台数は細るが、買い替えのたびに機能が増え、1 台の値段は上がる。
ロッカーは用途が入れ替わる途中だ。駅のコインロッカーは訪日客の荷物で使われるが、キャッシュレスと荷物の預かりサービスで数は減る。代わりに、ネット通販の荷物を受け取る宅配ロッカーがマンションや職場に広がる。この分野には電機の大手も入り、価格の競争は厳しい。
筆者は、3 つの事業の台数は 10 年で 5〜10% 減り、単価は物価並みに上がると見る。
資本政策と M&A
還元は薄い。配当は何年も据え置かれ、2025 年の配当総額は 0.46 億円、配当性向は 11% だった。自社株買いは年 0.6 億円ほどで、合わせても純利益の 4 分の 1 しか株主に戻していない。
残りは現金として溜まる。現金は 2014 年の 3 億円から 2025 年末の 14 億円に増え、借入は無い。投資有価証券 2.7 億円と、年金の積立超過 14 億円も別に持つ。
大株主は創業家の資産管理会社の廣澤興産(23%)と廣澤清氏(14%)だ。自社株買いで株数が減るたびに、創業家の比率は上がる。TOB や MBO の発表は無いが、時価総額が 30 億円と小さく、現金の比率が高い会社は、創業家による非公開化の候補になりやすい。そうなれば、株主は今の値段に上乗せを受け取る。逆に何も起きなければ、現金は会社の中に残り続ける。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の値段は、事業の稼ぐ力をほとんど見ていない。時価総額 30 億円のうち、14 億円は預金だ。残りの 16 億円で、年 4 億円を超える純利益を生む事業が買える。事業だけで見れば、利益の 4 年分ほどの値段だ。
利益の質も上がっている。2026 年の中間期は売上が横ばいのまま営業利益が 26% 伸びた。生体認証の金庫や履歴の残るキーボックスなど、値段の高い機種の比率が上がり、値上げが通っている。物価が年 3% 上がる世界では、値上げを通せる会社の利益は名目で伸びる。
歯科のユニットは 10〜15 年ごとに必ず買い替えられる。歯科医院の数は減っても、残る医院は設備を新しくする。ロッカーは宅配ロッカーという新しい用途を得た。
時価総額が小さく現金の厚い会社は、創業家による非公開化の候補になりやすい。そうなれば株主は上乗せを受け取る。何も起きなくても、積み上がる現金と年金の積立超過が、価値の下支えになる。
慎重な見方
現金が株主のものだと考えるのは早い。創業家が 4 割弱を持ち、配当性向は 1 割しかない。現金は 10 年で 4 倍に増えたが、配当は据え置かれたままだ。少数株主にとって、使われない現金の価値は帳簿よりずっと低い。
3 つの事業は、どれも国内の縮む市場にいる。耐火金庫は書類の電子化で業務用が細る。歯科はモリタ・ヨシダ・タカラベルモントといった大手が強く、中価格帯には安い輸入品も入る。ロッカーは駅のコインロッカーがキャッシュレスで減り、宅配ロッカーには電機の大手がいる。
利益率の改善も一時的かもしれない。2018 年と 2022 年には、鋼材の値上がりに値上げが追いつかず、営業利益が半分以下に落ちた。工場は複数に分かれ、固定費は重い。
本社の費用も物価で増える。台数が細る中で、全社の利益を物価以上に伸ばすのは難しい。時価総額が小さく株の売買も少ないので、割安が埋まらないまま年月が過ぎることもある。
どちらに重みを置いたか
筆者は強気の見方がやや勝ると見る。事業が縮むという指摘は正しいが、値上げを通す力は 2026 年の数字で確かめられた。現金が戻らないという指摘も正しい。だから現金は半分に割り引き、確率も中立を中心に置いた。それでも事業の稼ぐ力だけで今の値段を上回るので、確率はやや楽観の側に少し寄せた。
現金の使い道が変わるかが、見直しの鍵になる。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 4,994 円77 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 805 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 2,984 円46 億円、今との差 +48.4%、 期待の年率 +11.2%(資本コスト 7.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 9,579 円147 億円 | 1,304 円20 億円 | +441.4% | +18.4% | 1,088 円17 億円 |
| やや楽観 | 22% | 7,179 円110 億円 | 978 円15 億円 | +305.8% | +15.0% | 1,795 円28 億円 |
| 中立 | 38% | 5,282 円81 億円 | 848 円13 億円 | +204.9% | +11.8% | 2,329 円36 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,871 円29 億円 | 587 円9 億円 | +22.3% | +2.0% | 492 円8 億円 |
| 悲観 | 10% | 754 円12 億円 | 196 円3 億円 | −52.7% | −7.2% | 95 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,994 円77 億円 | 805 円12 億円 | +188.5% | +11.2% | 5,799 円89 億円 |
今の株価時価総額 2,010 円31 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 生体認証の金庫と歯科で単価を上げる 利益 9 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 9,579 円147 億円
虹彩や顔で開く耐火金庫が、家庭と小さな事業所に広がる。空き巣と災害への備えは高齢の世帯ほど厚く、金庫は「1 台を長く使う」買い物から「認証の付いた物に買い替える」買い物に変わる。台数は 1 割近く増え、単価は物価を上回る。
歯科では、ユニットの買い替えの波を確実に取る。大手の高価な機種と、安い輸入品の間の値段で、地方の開業医に選ばれ続ける。ロッカーは駅のコインロッカーから、マンションと職場の宅配ロッカーへと用途が移り、台数はむしろ増える。
全社の営業利益は 10 億円を超え、創業家は配当を厚くする。現金は積み上がるが、その一部は株主に戻り始める。地味な 3 つの事業が、そろって値上げを通せる会社になった姿だ。
- 鋼製品(耐火金庫):数量 18,600(耐火金庫などの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.00(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 5 億円。台数 1.08 倍 × 単価 1.42 倍、利益率 17.5%
- デンタル(歯科用ユニット):数量 950(歯科用ユニットなどの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.04(1 台あたりの売上(億円・名目、周辺機器を含む))→ 売上 33 億円・営業利益 5 億円。台数 1.15 倍 × 単価 1.40 倍、利益率 15%
- 書庫ロッカー:数量 5,300(ロッカー・書庫の出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.01(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。台数 1.08 倍 × 単価 1.36 倍、利益率 10%
- 不動産賃貸:数量 8,000(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 2 億円。面積 1.0 倍 × 賃料 1.25 倍
- その他(工具の販売):数量 15,000(取扱い点数(点/年・推定))× 価格 0.00(1 点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。点数 1.1 倍 × 1.36 倍
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 15.95 倍、時価総額 147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:家庭の防犯意識の高まりと、生体認証の金庫の値付けが受け入れられる筋だ。台数がわずかに増え、単価が物価を上回る、と置けるだけの条件が重なる確率は 1 割にとどまる。
やや楽観 22% 3 つの事業が物価に合わせて値上げを通す 利益 7 億円 · PER 14.6 倍 · 株価時価総額 7,179 円110 億円
金庫も歯科もロッカーも、台数は今とほぼ同じで推移する。その代わり、毎年の値上げが物価に届く。2026 年の中間期に見えた利益率の改善が、一時の追い風でなかったと分かる筋だ。
金庫は生体認証の機種が売上の柱になり、利益率は 16% 台を保つ。歯科は買い替えの需要を取り、ユニット 1 台の値段は大手の値上げに沿って上がる。ロッカーは札幌と川島の工場の効率化が効き、利益率は 9% に戻る。
営業利益は 9 億円に届く。配当性向は今の 1 割から少しずつ上がるが、現金はなお溜まる。事業は堅く、株主の取り分も増えるが、余った現金の使い道は創業家の判断に残る 10 年だ。
- 鋼製品(耐火金庫):数量 17,220(耐火金庫などの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.00(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 4 億円。台数 1.0 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 16.5%
- デンタル(歯科用ユニット):数量 870(歯科用ユニットなどの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.03(1 台あたりの売上(億円・名目、周辺機器を含む))→ 売上 30 億円・営業利益 4 億円。台数 1.05 倍 × 単価 1.38 倍、利益率 14%
- 書庫ロッカー:数量 4,900(ロッカー・書庫の出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.01(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。台数 1.0 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 9%
- 不動産賃貸:数量 8,000(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 2 億円。面積 1.0 倍 × 賃料 1.2 倍
- その他(工具の販売):数量 14,300(取扱い点数(点/年・推定))× 価格 0.00(1 点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。点数 1.05 倍 × 1.34 倍
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 14.61 倍、時価総額 110 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026 年は中間期で営業利益が 26% 伸び、値上げが通り始めている。台数は今のまま、単価が物価並みに上がる筋に 2 割強を置いた。
中立 38% 台数は細るが、値上げで利益を保つ 利益 5 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,282 円81 億円
耐火金庫の台数は、書類の電子化で 10 年に 5% ほど減る。紙の契約書や通帳を守る需要は細るが、現金や貴金属、データを入れた記録媒体を守る家庭の需要が下支えする。単価は物価並みに上がり、利益率は 15% 台を保つ。
歯科は、全国 6 万 7 千ほどの歯科医院の数がゆっくり減る中で、買い替えの需要を取る。台数は少し減るが、1 台の値段は物価に沿って上がる。ロッカーは駅のコインロッカーが減り、宅配ロッカーがそれを半ば埋める。
全社の営業利益は 6.8 億円ほどと、今より少し増えるだけだ。本社の費用も物価で増えるからだ。純利益は 5.5 億円前後で、現金は溜まり続ける。株主への還元は今の水準から大きくは変わらない。
- 鋼製品(耐火金庫):数量 16,360(耐火金庫などの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.00(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 3 億円。台数 0.95 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 15.5%
- デンタル(歯科用ユニット):数量 800(歯科用ユニットなどの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.03(1 台あたりの売上(億円・名目、周辺機器を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 3 億円。台数 0.97 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 13%
- 書庫ロッカー:数量 4,510(ロッカー・書庫の出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.01(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。台数 0.92 倍 × 単価 1.30 倍、利益率 8%
- 不動産賃貸:数量 8,000(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 2 億円。面積 1.0 倍 × 賃料 1.15 倍(契約の改定は物価に遅れる)
- その他(工具の販売):数量 13,600(取扱い点数(点/年・推定))× 価格 0.00(1 点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。点数 1.0 倍 × 1.30 倍
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 13.33 倍、時価総額 81 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の成熟した需要で台数は少しずつ細り、単価は物価並みに上がる、という今の延長を中心に 4 割弱を置いた。
やや悲観 20% 値上げが追いつかず、利益が半分になる 利益 2 億円 · PER 9.4 倍 · 株価時価総額 1,871 円29 億円
鋼材と人件費が上がり続け、値上げは物価に届かない。金庫の台数は書類の電子化で 2 割近く減り、安い輸入品が家庭用を取る。利益率は 12% に下がる。
歯科は、大手が中価格帯の機種を出し、地方の開業医の取り合いで値引きが増える。台数は 15% 減り、利益率は 10% に下がる。ロッカーは駅のコインロッカーの撤去が進み、宅配ロッカーは大手の電機メーカーに押される。利益率は 5% まで落ちる。
全社の営業利益は 3 億円を割る。2018 年や 2022 年に一度だけ起きた利益の落ち込みが、毎年のことになる筋だ。会社は黒字を保ち現金も残るが、株主に戻る分は細る。
- 鋼製品(耐火金庫):数量 14,120(耐火金庫などの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.00(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。台数 0.82 倍 × 単価 1.22 倍、利益率 12%
- デンタル(歯科用ユニット):数量 700(歯科用ユニットなどの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.03(1 台あたりの売上(億円・名目、周辺機器を含む))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。台数 0.85 倍 × 単価 1.22 倍、利益率 10%
- 書庫ロッカー:数量 3,920(ロッカー・書庫の出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.00(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。台数 0.80 倍 × 単価 1.20 倍、利益率 5%
- 不動産賃貸:数量 7,600(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。面積 0.95 倍 × 賃料 1.10 倍
- その他(工具の販売):数量 12,200(取扱い点数(点/年・推定))× 価格 0.00(1 点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。点数 0.9 倍 × 1.2 倍
倍率:事業の ROE 3.6% が k 7.5% 以下なので、ためた利益は額面の 1 倍未満の価値。PER の上限は 1÷k=12.5 倍。上限の 8 割の 9.38 倍に置いた。余った現金 7.5 億円は戻り方 0.50 を掛けて足した。ROE が k の半分以下に落ち、ためた利益の目減りが大きいので 7.5 割に下げた。
確率:鋼材と人件費の上昇に値上げが追いつかない年は、2018 年と 2022 年に実際にあった。それが 10 年続く筋に 2 割を置いた。
悲観 10% 3 つの事業がそろって細り、赤字に落ちる 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 754 円12 億円
紙の書類と現金がほぼ消え、耐火金庫の需要は 4 割減る。歯科は、大手と輸入品に挟まれて中価格帯の居場所を失う。ロッカーは駅のコインロッカーの撤去が進み、宅配ロッカーの入札でも負ける。
3 つの工場の固定費が重くのしかかり、全社は営業赤字に落ちる。リーマン後の 2008 年と 2009 年に起きた赤字が、今度は景気でなく構造から来る。会社は工場の集約と人員の削減に追われ、配当も細る。
現金と土地は残るが、創業家が持つ会社では、それが少数株主に戻る保証は無い。株主の価値は、手元の現金と売れる資産の一部にとどまる。
- 鋼製品(耐火金庫):数量 10,330(耐火金庫などの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.00(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。台数 0.60 倍 × 単価 1.10 倍、利益率 6%
- デンタル(歯科用ユニット):数量 540(歯科用ユニットなどの出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.03(1 台あたりの売上(億円・名目、周辺機器を含む))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。台数 0.65 倍 × 単価 1.10 倍、利益率 4%
- 書庫ロッカー:数量 2,940(ロッカー・書庫の出荷台数(台/年・推定))× 価格 0.00(1 台あたりの売上(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。台数 0.60 倍 × 単価 1.10 倍、利益率 1%
- 不動産賃貸:数量 7,200(賃貸面積(㎡・推定))× 価格 0.00(1 ㎡あたりの年の賃料(億円・名目))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。面積 0.9 倍 × 賃料 1.05 倍
- その他(工具の販売):数量 10,900(取扱い点数(点/年・推定))× 価格 0.00(1 点あたりの売上(億円・名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。点数 0.8 倍 × 1.1 倍
倍率:営業赤字で PER は使えない。今の自己資本 46.3 億円に PBR 0.25 倍を掛けた 11.6 億円とし、床の資産(現金・投資有価証券・賃貸の土地建物の税後 23 億円に戻り方 0.5)と合わせた。床は稼ぐ力でなく売れる資産から置いた。
確率:金庫・歯科・ロッカーが同時に構造的に負けるには、電子化・大手の攻勢・キャッシュレスが重なる必要がある。過去 20 年で赤字は 3 期あり、1 割を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋼製品(耐火金庫)
KING ブランドの業務用・家庭用の耐火金庫と、生体認証のキーボックス・手提げ金庫。
| 数量耐火金庫などの出荷台数(台/年・推定) | 価格1 台あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 17,220 | 0.00 | 17 | 3 |
| 10 年後 中立 | 16,360 | 0.00 | 22 | 3 |
取り方:台数は開示が無いので、平均単価を 10 万円前後(家庭用の数万円から業務用の数十万円まで)と見て売上 17.22 億円から逆算した推定。営業利益は開示のセグメント利益。
デンタル(歯科用ユニット)
歯科医院の診療台(歯科用ユニット)と周辺機器の製造・販売。
| 数量歯科用ユニットなどの出荷台数(台/年・推定) | 価格1 台あたりの売上(億円・名目、周辺機器を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 826 | 0.03 | 21 | 3 |
| 10 年後 中立 | 800 | 0.03 | 27 | 3 |
取り方:台数は開示が無いので、ユニット 1 台を周辺機器込み 250 万円前後と見て売上 20.65 億円から逆算した推定。営業利益は開示のセグメント利益。
書庫ロッカー
コインロッカー・宅配ロッカー・書庫など金属製の収納庫。札幌と川島の工場で作る。
| 数量ロッカー・書庫の出荷台数(台/年・推定) | 価格1 台あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 4,903 | 0.00 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 4,510 | 0.01 | 23 | 2 |
取り方:台数は開示が無いので、1 台(1 連)を 40 万円前後と見て売上 19.61 億円から逆算した推定。営業利益は開示のセグメント利益。
不動産賃貸
自社の土地・建物の賃貸。
| 数量賃貸面積(㎡・推定) | 価格1 ㎡あたりの年の賃料(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8,000 | 0.00 | 2 | 2 |
| 10 年後 中立 | 8,000 | 0.00 | 2 | 2 |
取り方:面積は開示が無いので、年の賃料を 1 ㎡ 2.2 万円前後と見て賃貸収入 1.78 億円から逆算した推定。
その他(工具の販売)
工具などの仕入れ販売。
| 数量取扱い点数(点/年・推定) | 価格1 点あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 13,600 | 0.00 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 13,600 | 0.00 | 2 | 0 |
取り方:点数は開示が無いので、1 点 1 万円と見て売上から逆算した推定。
リスクと懸念
書類の電子化で業務用の金庫が細る
会社の契約書や台帳が電子に移り、業務用の大型の耐火金庫の需要は減り続ける。家庭用の小型と生体認証の機種で埋められなければ、利益率が一番高い事業の台数が落ちる。
歯科で大手と輸入品に挟まれる
歯科のユニットはモリタ・ヨシダ・タカラベルモントが強い。大手が中価格帯の機種を出すか、安い輸入品が広がれば、地方の開業医という居場所が削られ、値引きが増える。
鋼材と人件費の上昇
2018 年と 2022 年には、鋼材の値上がりに値上げが追いつかず、営業利益が半分以下に落ちた。工場の固定費が重く、売上が少し落ちるだけで利益は大きく減る。
現金が株主に戻らない
創業家が 4 割弱を持ち、配当性向は 1 割しかない。現金は預金のまま溜まり、少数株主には使い道を決める力が無い。割安が埋まらないまま年月が過ぎうる。
コインロッカーの減少
駅のコインロッカーはキャッシュレスと荷物の預かりサービスで数が減る。宅配ロッカーで埋めるには電機の大手との入札に勝つ必要があり、ロッカーの利益率は 8% と薄い。
今後の分かれ目
- 2026 年の通期で営業利益が 6.3 億円の予想を超え、利益率 1 割を保ったら
- 値上げの力が本物とみて、やや楽観に重みを移す。
- 配当を大きく増やすか、自社株買いの枠を広げたら
- 現金が株主に戻り始めたとみて、余った現金の割引を小さくする。
- 創業家や事業会社が TOB・MBO を発表したら
- 買付けの値段が本質価値を下回るかを確かめる。下回るなら少数株主の取り分は削られる。
- 鋼材が再び急に値上がりし、営業利益が 3 億円を割ったら
- 値上げが追いつかない筋とみて、やや悲観の確率を上げる。
- 歯科のセグメントの売上が 2 年続けて減ったら
- 大手と輸入品に居場所を削られているとみて、歯科の台数の見通しを下げる。
見ておくもの
- セグメントごとの営業利益率(特に金庫と歯科)
- 配当と自社株買いの額、創業家の持株比率
- 現金預金の残高
- 鋼材の値段と値上げの時期
- 宅配ロッカーの受注
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 7.5% と各筋書きの事業の ROE から式で出した。中立の事業の ROE は k を下回るので PER は 1÷k の 12.5 倍が上限で、その 9 割に置いた。今の PER 7 倍前後や PBR 0.6 倍は使っていない。余った現金 10 億円は、創業家の支配で戻りにくいとみて戻り方 0.5 を掛けた。純利益÷営業利益は過去の中央値 0.80 に近い 0.78 に、現金の利息を足した。年金の積立超過 14 億円は価値に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.54→15.95 倍・やや楽観 PER 11.83→14.61 倍・中立 PER 11.25→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。