結論
タカノは長野県宮田村の機械・家具メーカーだ。オフィスの椅子と臨床検査薬、液晶・半導体向けの検査装置、電磁アクチュエータなどを手がける。
筆者の結論は割高だ。資産は厚い。純現金は 82 億円で時価総額の半分に当たる。だが資産が稼ぐ力は低い。ROE は過去 10 年の中央値で 2.3% にとどまる。
今の時価総額は自己資本の 5 割弱で、割安に見えやすい。ただ資本コストを下回る稼ぎしかなければ、帳簿の価値は満額にならない。利益の水準を物価と数量で積み直しても、10 年後の価値は今の値段に届かない。
中期計画は 2029 年 3 月期に営業利益率 10% を目指す。だが過去 12 年の最高は 5.1% で、筆者は届かないと見る。実現すれば強気の筋書きになるが、確率は 1 割にとどめた。
変化の芽は 2 つある。検査装置の半導体・フィルム向けの回復と、アレルギーの臨床検査薬だ。ここが伸びれば利益の質は上がる。
株主の戻りも課題だ。配当は利益の 4〜5 割だが、自社株買いは 2022 年 3 月期以降ない。現金の価値は半分に割り引いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず見るのは「その資産が稼ぐか」だ。現金は厚くても、事業が資本コストを稼げなければ、帳簿の価値は満額にならない。この会社は後者だ。
10 年で利益を積み上げても、事業の ROE は 4% 台にとどまる。現金を差し引いた事業は、資本コストの半分ほどの稼ぎだ。株主に利益が戻る比率は 45% 程度で、残りは低い利回りで蓄積される。
安全域の面では、財務は確かに強い。純現金は時価総額の半分に当たり、潰れる心配は小さい。ただ現金を株主のために使う力は、少数株主にはない。
中期計画の 10% は、実現すれば価値が大きく変わる。しかし過去の実績は 5% が限度で、数字の裏づけは今のところ無い。
結論として、堅い会社だが、今の値段に安全域はない。割安に変わるのは、検査装置と検査薬で利益率が数字で出た時、または現金が株主に戻る道筋が見えた時だ。
何で稼ぐ会社か
タカノは 5 つのセグメントを持つ。2026 年 3 月期の売上は 248 億円で、最大は住生活関連機器の 134 億円だ。
住生活関連機器は、オフィスの椅子と、福祉・医療施設用の椅子が中心になる。ここに新規のアレルギー臨床検査薬が加わった。検査薬は診断器を置き、その消耗品で稼ぐ形だ。数億円規模の事業と会社は想定する。
検査計測機器は、液晶(FPD)、半導体、フィルム向けの画像検査装置だ。売上 63 億円で、顧客の設備投資に左右される。2025 年度の上期は前年比で 5 割増となり、黒字に戻った。
産業機器は、電磁アクチュエータやバルブなどだ。売上は 22 億円で、赤字が続く。半導体市況の悪化に加え、固定資産の減損も出した。
機械・工具が 17 億円、エクステリア(オーニング・パラソル)が 12 億円だ。どちらも利益は薄い。
研究開発は前の中期計画の最終年度の 1.5 倍に増やす方針で、宇宙機器向けのバルブも受託した。ただ、収益への貢献は先の話だ。
顧客は電子部品・液晶・半導体のメーカー、オフィスの運営会社、病院や検査機関と幅広い。国内の売上が中心で、ドル円の影響は小さい。
優良さと弱いところ
事業の質は「堅いが薄い」と見る。
強みは財務だ。純現金は 82 億円、自己資本比率は 85%。赤字の年はあるが、不況でも倒れる心配は小さい。椅子は国内のオフィス需要が好調で、検査薬も立ち上がりつつある。
弱みは稼ぐ力だ。営業利益率は過去 12 年で最高でも 5.1%。2021 年 3 月期は赤字、2025 年 3 月期は 1.9% まで落ちた。ROE の中央値は 2.3%で、資本コストの 4 分の 1 にも届かない。
事業が広く散らばっているのも気になる。椅子、検査装置、アクチュエータ、オーニングと、共通の強みが見えにくい。小さな事業ごとに競合がいて、値段を決める力は強くない。
一方で、検査計測は技術力があり、半導体・フィルム向けの需要が戻れば利益率は大きく動く。ここは筆者が見ておきたい部分だ。
経営は研究開発を厚くする姿勢だが、成果はまだ数字に出ていない。株主構成には日本発条とコクヨが並ぶと株式情報サイトにあり、事業会社が大株主の形だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
まずオフィス椅子だ。国内のオフィス家具は改装・移転の需要で好調だが、働く人の数は減っていく。数量は実質で横ばいから微増が妥当だ。コクヨ、オカムラ、イトーキなど大手が競合で、値段は主導できない。
検査計測は、液晶・半導体・フィルムの工場向けの設備だ。顧客の設備投資の波に合わせ、2〜3 年周期で好不況が来る。AI 向け半導体の投資が続けば、半導体向けの検査は伸びる。ただ装置は技術が進むほど単価が下がる傾向がある。
臨床検査薬は、アレルギー検査の分野だ。診断器を置き、消耗品の検査薬を継続して売る形で、成功すれば利益率の高い収益になる。ただ競合は大手の検査会社で、規模はまだ小さい。
産業機器は、半導体の設備投資に左右され、今は不調だ。減損を出した後、赤字が続くか黒字に戻るかが分かれ目になる。
筆者は、全体で数量は実質で小幅に伸び、価格は物価並みに上がる程度と見る。成長の源はあるが、規模が小さく全体を押し上げるには時間がかかる。
人手不足で工場の自動化投資が増えれば、画像検査の需要の裾野は広がる。ただし顧客は少数の大手に偏り、受注の波は避けにくい。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向 40% 程度を目安とし、実績は総額で 3 億円ほど・性向 49% だ。自社株買いは 2022 年 3 月期以降ない。
純現金は 82 億円、投資有価証券は 38 億円ある。ただ純現金は過去 10 年ほぼ横ばいで、積み上がってはいない。設備と研究開発に回している形だ。PBR は 0.5 倍前後と低い。
政策保有株の縮減や自社株買いの方針は、確かめられた開示がなかった。売却益や買い戻しは見込まない。
大株主は日本発条とコクヨが各 14% ほどとされる(株式情報サイトの表示。最新か未確認)。買収や再編の可能性はゼロではないが、価格や条件を見込む材料はない。
筆者は、現金 60 億円ほどを余剰と見て、戻り方を半分に割り引いた。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
中期計画の 10% は絵空事ではない。検査計測は 2025 年度の上期に半導体・フィルム・FPD の全てが改善し、赤字から黒字へ戻した。AI 向けの半導体投資が続けば、この回復は続く。
臨床検査薬も芽が出ている。診断器を置いて消耗品を売る型は、一度入れば長く稼ぐ。数億円規模の事業が育てば、全体の利益率を押し上げる。
オフィス椅子も追い風だ。出社回帰とオフィス改装で需要が強く、値上げも通っている。産業機器の赤字は減損を出して整理が済み、黒字に戻せば全体の利益は一段上がる。
財務は強く、PBR は 0.5 倍前後と低い。政策保有株の縮減や自社株買いが出れば、資本効率の改善と還元の拡大が同時に進む。研究開発を 1.5 倍に増やす投資は、先の成長の種だ。
10 年後に売上 480 億円、営業利益率 8% 台という筋書きは十分ありうる。
過去に赤字だった年も、いずれも半導体や液晶の谷と重なる。谷が過ぎれば利益は戻る形で、現在の水準は谷の底に近い可能性がある。
慎重な見方
営業利益率 10% は、過去 12 年で一度も届いていない水準だ。最高は 5.1%、赤字の年もある。2026 年 3 月期の回復は、前の期が悪かった反動の面が強い。
事業が散らばっていることが、収益性の低さの原因だ。椅子は大手の競合が多く、検査装置は顧客の投資の波に翻弄される。産業機器は赤字で、減損も出した。どの事業も一線の強さがない。
臨床検査薬は有望に聞こえるが、規模は数億円で、全社の利益を動かすには遠い。宇宙機器の受託も、会社自身が収益貢献の姿は描けないと述べている。
財務の堅さは認めるが、現金は戻ってこない。自社株買いは 2022 年 3 月期以降なく、配当は性向 4〜5 割にとどまる。ROE は過去 10 年の中央値で 2.3%、資本コストを大きく下回り続けている。
この会社は、堅い代わりに稼がない。10 年後の利益は今の値段の裏づけにならない。
大株主の日本発条とコクヨが動くという話も、確かな材料はない。期待で値段を支えるのは危うい。
どちらに重みを置いたか
強気の材料は検査装置の回復と検査薬だが、規模が小さく、中期計画は実績を大きく超える。慎重な見方のほうが根拠が厚いと判断した。確率は中立を 4 割弱に置き、現金の戻り方も 0.5 と控えめに見た。やや悲観は、検査装置の波と産業機器の赤字が続く形で 2 割強とし、楽観は 10% の計画に近づく形で 1 割とした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,415 円215 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 313 円48 億円)。 今の値に割り戻すと 869 円132 億円、今との差 −14.9%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,757 円420 億円 | 545 円83 億円 | +223.5% | +12.5% | 330 円50 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,065 円314 億円 | 420 円64 億円 | +143.5% | +9.3% | 497 円76 億円 |
| 中立 | 38% | 1,447 円220 億円 | 309 円47 億円 | +71.9% | +5.6% | 667 円102 億円 |
| やや悲観 | 22% | 589 円90 億円 | 197 円30 億円 | −23.0% | −2.6% | 173 円26 億円 |
| 悲観 | 10% | 470 円72 億円 | 138 円21 億円 | −40.5% | −5.1% | 61 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,415 円215 億円 | 313 円48 億円 | +69.3% | +5.4% | 1,728 円263 億円 |
今の株価時価総額 1,021 円155 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 検査装置と検査薬が育ち、利益率が 8% 台へ 利益 31 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 2,757 円420 億円
中期計画がおおむね実現する。AI 向けの半導体投資が続き、検査計測機器の数量は 10 年で 8 割増える。半導体向けの高性能品の比率が上がり、利益率は 11% に届く。
アレルギー検査薬は診断器の設置が広がり、消耗品の売上が積み上がる。椅子もオフィス改装の需要で数量が 3 割増え、値段は物価を少し上回る。産業機器も黒字に戻る。
売上は 480 億円を超え、営業利益は 39 億円ほどになる。全社の利益率は 8% 台と、過去の最高を大きく超える。
配当性向は 45% を保ち、純現金は事業の成長に使われつつ、一部は還元に回る。
宇宙機器のバルブなど新しい分野も、少しずつ売上に乗り始める。
- 住生活関連機器:数量 181(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.40(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 253 億円・営業利益 19 億円。オフィス改装で数量増、値上げも通る
- 検査計測機器:数量 113(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.30(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 147 億円・営業利益 16 億円。半導体の高性能品で数量・利益率が上振れ
- 産業機器:数量 30.8(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 41 億円・営業利益 2 億円。黒字に戻る
- 機械・工具:数量 17.0(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。横ばい
- エクステリア:数量 12.0(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.6 倍、時価総額 420 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画に近づく筋書き。過去の最高 5.1% を大きく超えるので 1 割にとどめた。
やや楽観 20% 検査計測の回復と椅子の好調で、利益率が 6〜7% に上がる 利益 22 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,065 円314 億円
検査計測は半導体とフィルム向けの回復が定着し、数量は 6 割増える。利益率は 9% になる。椅子は国内のオフィス需要が堅調で、利益率は 6.5% に上がる。
検査薬は数億円の規模から立ち上がり、消耗品の売上が少しずつ積み上がる。産業機器は赤字を脱し、小さな黒字になる。
売上は 430 億円、営業利益は 29 億円ほど。全社の利益率は 6.7% で、過去の最高を超えるが、中期計画の 10% には届かない。
配当は性向 45% を保ち、純現金は横ばいで推移する。
産業機器は整理が進んで赤字幅が縮み、新規の臨床検査薬と宇宙機器は小さな黒字を足す。経営の研究開発投資は、数字に表れ始める。
- 住生活関連機器:数量 168(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.36(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 228 億円・営業利益 15 億円。検査薬が立ち上がり利益率が上がる
- 検査計測機器:数量 101(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.28(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 129 億円・営業利益 12 億円。半導体・フィルム向けの回復が定着
- 産業機器:数量 26.4(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 35 億円・営業利益 1 億円。小さな黒字
- 機械・工具:数量 16.2(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。小幅
- エクステリア:数量 12.0(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。小幅
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 314 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:検査計測の回復が定着し、検査薬が収益に乗る筋書き。2026 年 3 月期の改善が続く形で、2 割に置いた。
中立 38% 数量は小幅に伸び、物価並みの値上げで利益率は過去の山にとどまる 利益 15 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,447 円220 億円
椅子は国内のオフィス需要で、数量が 15% 増える。値段は物価並みの 1.34 倍だ。利益率は 5.5% と、過去の山と同じ水準を保つ。検査計測は半導体向けで数量が 35% 増えるが、単価は技術の進歩で物価に届かず 1.25 倍。利益率は 6% になる。
産業機器は損益がとんとんに戻る。機械・工具、エクステリアは小幅な利益のまま。
売上は 380 億円、営業利益は 19 億円で、全社の利益率は 5.0% になる。本社費など販売管理の費用は物価で 1.34 倍に増えるが、償却は今の設備分が増えない。一方、更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。
配当は性向 45% で、現金はあまり使われず、ROE は 4% 台にとどまる。
- 住生活関連機器:数量 154(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 206 億円・営業利益 11 億円。数量は小幅増、物価並みの値上げ
- 検査計測機器:数量 85.1(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 106 億円・営業利益 6 億円。数量は伸びるが単価は物価に届かず
- 産業機器:数量 23.1(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。損益とんとん
- 機械・工具:数量 15.3(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。数量は減る
- エクステリア:数量 11.4(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.34(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。数量は微減
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 220 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:椅子の需要が底堅く、検査装置が波を伴いながら伸び、利益率が過去の最高に並ぶ筋書き。最も筋が通るので最大に置く。
やや悲観 22% 検査装置の波と産業機器の赤字が続き、利益率が 3% 台に戻る 利益 7 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 589 円90 億円
検査計測は半導体投資の谷が重なり、数量が伸びず、単価も下がる。利益率は 3.5% に落ちる。椅子は競合に押され、物価ほど値上げできない。利益率は 4% だ。
産業機器の赤字は続く。機械・工具とエクステリアも利益がほとんど出ない。
売上は 300 億円弱、営業利益は 9 億円で、今とほぼ同じになる。物価の分だけ費用が増える中で、売上が 2 割増えても利益は増えない。
配当は今の水準(総額で年 3 億円ほど)を保つ。現金は谷で食われ、余剰の現金は 4 分の 3 に減って見る。
臨床検査薬と宇宙機器は小さなままで、全社の利益を支えるには足りない。経営は研究開発を続けるが、成果が数字に出るのは先になる。
- 住生活関連機器:数量 134(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 168 億円・営業利益 7 億円。競合に押され値上げが物価に届かず
- 検査計測機器:数量 63.0(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.15(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 72 億円・営業利益 3 億円。投資の谷で数量が伸びず単価も下落
- 産業機器:数量 19.8(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.20(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。赤字が続く
- 機械・工具:数量 14.5(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。利益が薄い
- エクステリア:数量 10.8(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.25(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。利益がほとんど出ない
倍率:ROE は 3% 以下で、資本コストを大きく下回る。上限の 12.1 倍より低く、稼ぎの水準に見合う 8.5 倍に置いた。
確率:半導体投資の波で検査装置が弱く、産業機器の赤字が続く筋書き。過去にも 2025 年 3 月期に起きた形で、2 割強に置いた。
悲観 10% 事業の競争力が落ち、赤字すれすれの水準に細る 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 470 円72 億円
半導体・FPD の検査装置で中国勢の安価な品に押され、数量が 3 割減る。価格も下がり、利益率はゼロに落ちる。椅子は大手の競合に押され、利益率は 2% まで落ちる。
産業機器の赤字は拡大し、減損が続く。検査薬は規模が育たない。
売上は 210 億円まで縮み、営業利益はほぼゼロだ。それでも配当は一部残るが、減配になる。
現金は赤字を埋める形で取り崩され、余剰分は半分に減る。事業の価値は低く、売れる資産が下支えになる。
経営は事業の整理に踏み込むが、遅すぎる。大株主が提携を試みても、収益の低い事業は買い手がつきにくい。
- 住生活関連機器:数量 114(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 125 億円・営業利益 3 億円。大手に押され数量減
- 検査計測機器:数量 44.1(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.00(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。中国勢の安価な品に押され数量・価格とも減
- 産業機器:数量 15.4(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.00(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 15 億円・営業利益 −1 億円。赤字が拡大
- 機械・工具:数量 12.8(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。縮小
- エクステリア:数量 9.6(対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア)× 価格 1.10(値段の指数(今を 1.0))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。縮小
倍率:稼ぐ力は低く、PER で測ると価値が小さすぎる。純現金と投資有価証券の売れる分を床とし、今の自己資本 325 億円に PBR 0.22 倍を掛けた。
確率:事業の競争力が落ち、利益がほぼ消える構造的な負け。多角で小型の事業が多く、1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住生活関連機器
オフィス椅子、福祉・医療施設用椅子、アレルギー臨床検査薬。
| 数量対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 134 | 1.00 | 134 | 8 |
| 10 年後 中立 | 154 | 1.34 | 206 | 11 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 134 億円・利益 8 億円前後(edinetdb。利益は百万円の端数を丸めた推定)。数量・単価の開示がないため、売上相当額を実質の数量、値段の指数を 1.0 とした推定。
検査計測機器
液晶・半導体・フィルム向けの画像検査装置と計測装置。
| 数量対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 63.0 | 1.00 | 63 | 2 |
| 10 年後 中立 | 85.1 | 1.25 | 106 | 6 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 63 億円・利益 2 億円前後(edinetdb)。数量・単価の開示がないため、売上相当額を数量、値段の指数を 1.0 とした推定。
産業機器
電磁アクチュエータとユニット製品、バルブなど。
| 数量対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 22.0 | 1.00 | 22 | −2 |
| 10 年後 中立 | 23.1 | 1.34 | 31 | 0 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 22 億円・損失 2 億円前後(edinetdb。減損を含む)。数量・単価は開示がなく、売上相当額を数量とした推定。
機械・工具
機械・工具の販売。
| 数量対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 17.0 | 1.00 | 17 | 1 |
| 10 年後 中立 | 15.3 | 1.34 | 21 | 1 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 17 億円・利益 1 億円前後(edinetdb)。売上相当額を数量とした推定。
エクステリア
オーニング・パラソルなど。
| 数量対象市場の実質規模(億円、今の値段)× 当社シェア | 価格値段の指数(今を 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.0 | 1.00 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 11.4 | 1.34 | 15 | 0 |
取り方:2026/03 期のセグメント売上 12 億円・利益 0.15 億円(edinetdb)。売上相当額を数量とした推定。
リスクと懸念
検査装置の需要の波
液晶・半導体・フィルムの設備投資は 2〜3 年周期で振れる。2025 年 3 月期は営業利益が半分に落ちた。谷が重なると、検査計測の黒字は赤字に転じやすい。
産業機器の赤字と減損
電磁アクチュエータなどの産業機器は赤字が続き、固定資産の減損も出した。半導体市況が戻らないと、整理の損失が膨らみうる。
椅子の競争
国内のオフィス家具はコクヨ、オカムラ、イトーキなど大手が競合する。働く人の数が減る中、値上げが通らなくなれば利益率は落ちる。
新規事業の遅れ
臨床検査薬や宇宙機器は規模が小さく、収益への貢献は不確実だ。会社も宇宙事業の収益像は描けていないと述べている。研究開発を増やす投資が先行して利益を圧迫する可能性がある。
現金が戻らない
純現金は時価総額の半分あるが、自社株買いは 2022 年 3 月期以降ない。配当は性向 4〜5 割。現金は利息 2% 程度で眠り、ROE を押し下げ続ける。
設備投資の費用の膨らみ
今の設備の減価償却は物価で増えない。一方、更新や太陽光発電、基幹システムへの投資は費用が膨らみ、償却を超える分は現金から出ていく。会計の利益は増えて見えても、現金は細る。
今後の分かれ目
- 検査計測機器の営業利益率が 2 年続けて 8% を超える
- 回復が実力と確かめられる。中立の利益率を上げ、割安の側へ動く。
- 自社株買いや政策保有株の売却と大きな増配が出る
- 貯まった現金が戻る道が開く。戻り方を 1.0 に上げ、価値が上がる。
- アレルギー検査薬の設置数が伸び、売上が 10 億円を超える
- 収益の安定した消耗品型の事業が育つ。利益率の改善に寄与し、中立の見方が上がる。
- 産業機器の赤字が続く、または追加の減損が出る
- やや悲観の筋書きに寄る。事業の整理や売却が選択肢になる。
- 日本発条やコクヨなど大株主が動く(提携・買い増し・TOB)
- 現金と資産に見合う価格での買い取りになりうる。実現の確度は材料がなく織り込まない。
見ておくもの
- 検査計測機器の四半期の利益率
- 産業機器の損益と減損
- 臨床検査薬の売上と診断器の設置数
- 配当性向と自社株買いの有無
- 中期計画(2029 年 3 月期に売上 300 億円・営業利益率 10%)の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(g 4%、k 8.25%、ROE が k に届かない時の上限 1÷k)から置いた。今の PER・PBR や同業の倍率は見ていない。今の時価総額は自己資本の 5 割弱だが、PBR 1 倍割れは割安の根拠にしていない。事業の利益から価値を出し、現金は戻り方 0.5 を掛けて足した。結論は事業の利益で決めた。リース会計の変更は影響が小さいので、今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→12.6 倍・やや楽観 PER 10.5→12.5 倍・中立 PER 9.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。