結論
ミロクは高知の銃の会社だ。米国の名門ブランド、ブローニングが売る上下二連の散弾銃を、半世紀にわたって作り続けてきた。筆者の結論は「割高寄り」。帳簿の 3 割という値段は一見安いが、新工場の重荷と一社への依存で、稼ぐ力が資本コストに遠く届かないからだ。
2025 年 10 月期は新工場の減損 25 億円で、最終損益は 25 億円の赤字だった。2026 年 10 月期は持ち合いの株を売った益と補助金で、純利益 28 億円と過去最高を見込む。だが本業の営業損益は赤字の見通しで、最高益の中身は一度きりの益だ。
強みは本物だ。上下二連銃のような手間のかかる銃を、量を揃えて作れる工場は世界でも少ない。ブローニングにとってミロクは代わりの利かない作り手で、取引は 50 年以上続く。
弱みも同じ所にある。売上の 8 割強がブローニングの 2 社向けで、値段も量も相手が決める。米国の狩猟人口は細り、関税もかかる。新工場で作れる量は 2 割増えるが、その量を買ってくれるかは相手しだいだ。筆者は、利益が過去の山まで戻っても、今の値段に十分な安全域は無いと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ミロクは「腕の確かな職人だが、商売の主導権を持たない」会社に見える。上下二連銃を作る技能は他にまねできない。だが、その価値の大半を受け取るのはブランドを持つブローニングで、ミロクに残るのは作り賃だ。
オーナーとしての利益は細い。工場の更新に多額の投資が要り、利益が出ても配当や自社株買いに回る分はわずかだ。過去 10 年で ROE が 8% を超えた年は一度もない。帳簿の 3 割という値段は、こうした稼ぐ力の弱さを映している。
筆者が評価を変える条件は二つだ。新工場の増えた量をブローニングが買い取り、猟銃の利幅が 1 割近くまで戻ること。持ち合いの株を売った現金を、配当か借金の返済にきちんと回すこと。どちらも見えるまでは、安く見える値段にも安全域は乏しい。筆者はそう見る。
何で稼ぐ会社か
売上の 85% は猟銃だ。ブローニングの上下二連の散弾銃「シトリ」や、ボルトアクションのライフルを OEM、つまり相手のブランドで作って納める。販売先はブローニング・アームズ(米国)が 64%、ブローニング・インターナショナル(ベルギー)を合わせて 8 割強にのぼる。ブローニングの親会社はベルギーの FN ハースタルで、欧米の銃の名門だ。
銃は手作業の多い品だ。銃身の深い穴を正確にあけ、木の銃床を削り、彫刻を施す。ミロクは高知に 500 人近い職人を抱え、この工程を量産の水準でこなす。2025 年 2 月には南国市に新工場が完成し、2026 年 2 月から本格的に動き出した。投資は 59 億円で、作れる量は 2 割増える。
1 割強は工作機械だ。銃身の穴あけで磨いた深穴加工の技術を生かし、ガンドリルマシンと呼ぶ専用機を作る。国内で唯一の総合メーカーで、半導体や液晶の製造装置の部品、金型、医療機器の加工に使われる。
ほかに、トヨタ向けの木製のハンドル、竹の繊維を混ぜた素材、設備保全のクラウドがあるが、どれも小さい。かつての柱だった自動車のハンドルは、今や売上の 1% にも満たない。
優良さと弱いところ
ミロクの堀、つまり他社がまねしにくい強みは、手間のかかる銃を一定の品質で大量に作る技能だ。上下二連銃は部品の精度と手仕上げがものを言い、新しい作り手が一朝一夕で追いつける世界ではない。ブローニングがシトリを 50 年以上ミロクに任せてきたこと自体が、その証だ。
ただ、この堀はブローニングとの関係の中にしか無い。ミロク自身のブランドで銃を売る力は乏しく、値段は買い手との交渉で決まる。円安の時は値上げを求められず、円高の時は値上げを通しにくい。値決めの主導権は相手にある。
資本効率は低い。過去 10 年の自己資本利益率(ROE)の中央値は 3.3% で、資本コストの半分にも届かない。新工場の 59 億円は会社の規模に比べて重く、完成した年に 25 億円を減損した。投資の見積もりが甘かったと言わざるを得ない。
工作機械は小さいが、深穴加工の専門性で利幅を保つ。銃に偏った会社の数少ない分散だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
米国の銃の需要は、政治と事件で大きく揺れる。規制強化が取り沙汰されると駆け込みの買いが起き、2020〜2021 年は空前の売れ行きになった。その後は在庫の調整が続き、2024 年にミロクの猟銃は赤字に沈んだ。ただ、ミロクが作るのは身を守る拳銃ではなく、狩猟とクレー射撃の散弾銃で、揺れは小さめだ。
長い目で見ると、米国の狩猟人口はゆっくり減っている。狩猟免許の数は横ばいからやや減りで、担い手は高齢化している。一方で、クレー射撃のような競技と、高価な銃を長く使う愛好家の層は底堅い。シトリのような高級銃は、量は増えないが値段は物価並みに上がると筆者は見る。
外の風は関税だ。米国は日本からの輸入品に 15% の関税をかけている。ブローニングがその分を値段に乗せられなければ、ミロクへの値下げの圧力になる。銃の規制が米国で強まる筋書きも、10 年のうちに一度は考えておくべきだ。
工作機械の深穴加工機は、半導体と液晶の製造装置の投資に連れて動く。量は小さいが、専門の機械なので値段は保ちやすい。競合は海外の専業が中心だ。
資本政策と M&A
還元は細い。配当の総額は年 0.3 億円ほどにすぎず、純利益が平年の年でも 1 割に満たない。自社株買いもほとんど無い。創業家の弥勒氏が社長を務め、利益は工場への投資と借金の返済に回してきた。
資本の使い方で目立つのは新工場の 59 億円だ。作れる量を 2 割増やす投資だが、ブローニングが買い増す約束があるわけではない。完成した年に 25 億円を減損し、投資の半分近くが帳簿から消えた。
明るい動きもある。2026 年に持ち合いの株を 2 銘柄売り、20 億円の益を出した。資産の効率化と財務の強化が理由だ。この現金で借金を減らし、配当を厚くするなら、資本の使い方は一歩前に進む。借入には財務の条件が付いており、赤字が 2 年続くと返済を求められうる点には注意が要る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ミロクの技能は世界でも珍しい。上下二連銃を量産の水準で作れる工場は限られ、ブローニングは 50 年以上ミロクに頼ってきた。代わりの作り手を探すのは容易ではない。
新工場の重荷は既に減損で落とした。これから先の償却は軽くなり、作れる量は 2 割増える。2026 年は立ち上げの費用がかさむが、2027 年からは量の増加と償却の軽さが同時に効いてくる。猟銃の利幅は過去の 8% 前後に戻れる。
持ち合いの株を売った 20 億円で借金は大きく減り、財務の不安は薄れた。工作機械は半導体と液晶の投資に乗る。帳簿の 3 割という値段は、利益が平年に戻るだけで見直される余地がある。円安が続けば、ドルで稼ぐ銃の利益はさらに厚くなる。
買われる筋もある。ブローニングの親会社にとって、ミロクは自らの品揃えを支える工場だ。時価総額 35 億円は、新工場の投資額の 6 割にすぎない。供給を確かにするために、取り込みを考えてもおかしくない。
慎重な見方
売上の 8 割強がブローニングの 2 社向けで、値段も量も相手が決める。新工場で作れる量が増えても、相手が買わなければ遊ぶ設備になるだけだ。完成した年に 25 億円を減損したのは、その危うさを会社自身が認めたことに等しい。
米国の狩猟人口は細り、高級な散弾銃の量は伸びない。日本からの輸入には 15% の関税がかかり、値下げの圧力が強まる。米国で銃の規制が強まれば、需要そのものが縮む。
過去 10 年の ROE の中央値は 3.3% で、資本コストの半分にも届かない。2026 年の最高益は株の売却益と補助金で、本業は赤字の見通しだ。創業家の経営で配当は細く、溜まった現金が株主に戻る見込みも薄い。帳簿の 3 割でも、稼がない資本の値段としては高い。
新工場の投資の見積もりを誤った経営が、次の投資を正しく見積もれる保証もない。銃の手仕事を担う職人も、地方の人口減で集めにくくなっていく。量も質も、人が決める事業だ。
どちらに重みを置いたか
技能の希少さは確かだが、その価値の多くはブローニングが受け取る。数字の裏づけは慎重な見方の方が強く、ROE は長く資本コストの半分以下だ。確率は中立を 4 割に置き、やや悲観をやや楽観より少し重くした。新工場の効果は 2027 年以降の数字で確かめるまで、楽観は 1 割未満にとどめた。悲観は、50 年の取引の重みを踏まえて 1 割強に抑えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 2,019 円59 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 173 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 986 円29 億円、今との差 −12.2%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,815 円112 億円 | 272 円8 億円 | +263.6% | +13.8% | 327 円10 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,803 円82 億円 | 238 円7 億円 | +170.6% | +10.5% | 608 円18 億円 |
| 中立 | 40% | 2,142 円63 億円 | 170 円5 億円 | +105.7% | +7.5% | 925 円27 億円 |
| やや悲観 | 20% | 995 円29 億円 | 136 円4 億円 | +0.6% | +0.1% | 226 円7 億円 |
| 悲観 | 12% | 811 円24 億円 | 68 円2 億円 | −21.8% | −2.4% | 105 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,019 円59 億円 | 173 円5 億円 | +95.0% | +6.9% | 2,192 円64 億円 |
今の株価時価総額 1,124 円33 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 新工場が満ち、猟銃の利幅が山に戻る 利益 10 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,815 円112 億円
ブローニングがシトリの品揃えを広げ、新工場で増えた 2 割の量をそのまま買い取る。クレー射撃と高級銃の愛好家の層が厚くなり、丁数は 10 年で 2 割増える。納入価格は物価に加え、上位の品の比重が上がって 1 割速く上がる。
減損で償却が軽くなった工場がフルに動き、猟銃の利幅は 2017 年ごろの山の 9% に戻る。工作機械は半導体の投資の波に乗り、台数が 1.4 倍になる。持ち合いの株を売った現金で借金を返し、利払いも軽くなる。ROE は 6% 台まで上がるが、資本コストにはまだ届かない。ブローニングとの関係はかえって深まり、新しい銃の開発も任されるようになる。
- 猟銃(ブローニング向け OEM):数量 8.5(出荷丁数(万丁・推定))× 価格 22(1 丁あたりの納入価格(万円))→ 売上 188 億円・営業利益 17 億円。8.5 万丁 × 22.1 万円(物価 1.34 倍 × 上位の比重 1.10)、利益率 9%
- 工作機械(深穴加工機):数量 50.0(販売台数(台・推定))× 価格 0.67(1 台あたりの売上(億円・ツールと請負を含む))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。50 台 × 0.67 億円、利益率 10%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ブローニングが増えた量を買い取り、関税の負担も相手が持つ必要がある。両方が揃う確かさは低い。
やや楽観 20% 工場の立ち上げが実り、平年の利益に戻る 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,803 円82 億円
新工場の立ち上げの費用が 2027 年に一巡し、猟銃の利益は過去の平年並みに戻る。ブローニングは増えた量の一部を買い、丁数は 1 割増える。納入価格は物価に少し上乗せされ、関税の負担は両社で分け合う。
猟銃の利幅は 7.5% まで戻る。工作機械は半導体と液晶の投資に連れて台数を 2 割増やす。株の売却で借金は減り、配当は少しずつ増える。ROE は 4% 台で、帳簿の値打ちを満たすには遠いが、赤字の不安は消える。財務の条件を気にせずに済むようになり、配当を増やす余地も生まれる。会社の言う「工場の効率化」が数字で示される姿だ。
- 猟銃(ブローニング向け OEM):数量 7.8(出荷丁数(万丁・推定))× 価格 21(1 丁あたりの納入価格(万円))→ 売上 163 億円・営業利益 12 億円。7.8 万丁 × 20.9 万円、利益率 7.5%
- 工作機械(深穴加工機):数量 42.0(販売台数(台・推定))× 価格 0.67(1 台あたりの売上(億円・ツールと請負を含む))→ 売上 28 億円・営業利益 3 億円。42 台 × 0.67 億円、利益率 9%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 82 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:減損で償却は軽くなり、2026 年 2 月に新工場は動き出した。過去の平年並みの利益に戻る姿は無理がない。
中立 40% 量は少し増えるが、作り賃の利幅は薄い 利益 6 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 2,142 円63 億円
米国の狩猟人口はゆっくり細るが、高級な散弾銃の愛好家は残る。ブローニングは新工場の量の一部を使い、丁数は 10 年で 4% 増える。納入価格は物価並みに上がり、関税の分はミロクも一部をかぶる。
猟銃の利幅は 7% で、過去の平年並みだ。工作機械は台数を 1 割強増やし、利幅 8% を保つ。純利益は 5 億円台で、ROE は 4% 弱にとどまる。配当は細いまま、利益は借金の返済と工場の更新に回る。会社は堅く続くが、株主の取り分はあまり増えない。ブローニングとの取引は続き、ミロクは腕の確かな下請けとして静かに残る。
- 猟銃(ブローニング向け OEM):数量 7.4(出荷丁数(万丁・推定))× 価格 20(1 丁あたりの納入価格(万円))→ 売上 149 億円・営業利益 10 億円。7.4 万丁 × 20.1 万円(物価 1.34 倍)、利益率 7%
- 工作機械(深穴加工機):数量 40.0(販売台数(台・推定))× 価格 0.67(1 台あたりの売上(億円・ツールと請負を含む))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。40 台 × 0.67 億円、利益率 8%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 63 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新工場の量の一部は使われるが、狩猟人口の細りと関税で値段は物価並みにとどまる。過去 10 年の延長で、いちばん起こりやすい。
やや悲観 20% 新工場が余り、関税で値段が削られる 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 995 円29 億円
ブローニングは在庫の調整を繰り返し、新工場の量は余る。丁数は 1 割減り、関税の負担を求められて納入価格は物価に 5% 届かない。猟銃の利幅は 3% に沈み、遊んだ設備の費用が重くのしかかる。
工作機械も半導体の投資の谷で台数を減らす。純利益はほぼ 0 で、借入の財務の条件に近づく年も出る。配当は据え置くのが精一杯で、帳簿の価値は残るが、稼ぐ力はほとんど無い。新工場の投資をさらに減損する年も出て、帳簿の価値も少しずつ削られる。職人の確保も難しくなり、量を戻そうにも人が足りない。ブローニングとの取引は続くが、条件は年ごとに厳しくなる。
- 猟銃(ブローニング向け OEM):数量 6.4(出荷丁数(万丁・推定))× 価格 19(1 丁あたりの納入価格(万円))→ 売上 122 億円・営業利益 4 億円。6.4 万丁 × 19.1 万円、利益率 3%
- 工作機械(深穴加工機):数量 32.0(販売台数(台・推定))× 価格 0.67(1 台あたりの売上(億円・ツールと請負を含む))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。32 台 × 0.67 億円、利益率 5%
倍率:稼ぐ力(純利益÷k)は 6 億円ほどしかない。床は売れる資産で、今の自己資本 108 億円の 0.27 倍の 29 億円。中立の PBR 0.33 倍より低い。借金を足した EV でも見たが、営業利益がほぼ 0 の筋書きなので EV÷営業利益は意味を持たず、売れる資産の床で置いた。
確率:2024 年に猟銃が赤字に沈んだ実績があり、新工場の量が余る危うさは減損が示している。確からしさは低くない。
悲観 12% ブローニングが他へ移り、工場が空く 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 811 円24 億円
関税と米国の銃の規制の強化が重なり、ブローニングは生産の一部を他国の作り手や自社の工場に移す。ミロクの丁数は 10 年で 3 割減り、納入価格も物価に届かない。新工場は半分しか動かず、猟銃は赤字に沈む。
借入の財務の条件に触れ、銀行と返済の条件を見直す。配当は止まり、工作機械の事業だけが細々と利益を出す。価値は工場の土地と工作機械の事業を売った値段にとどまり、今の自己資本の 2 割ほどになる。半世紀続いた取引が終わる時、職人の技能を値段に換える術はほとんど無い。高知の工場は、銃のほかに使い道の少ない設備として残る。
- 猟銃(ブローニング向け OEM):数量 5.0(出荷丁数(万丁・推定))× 価格 18(1 丁あたりの納入価格(万円))→ 売上 93 億円・営業利益 −3 億円。5.0 万丁 × 18.5 万円、利益率 −3%
- 工作機械(深穴加工機):数量 30.0(販売台数(台・推定))× 価格 0.64(1 台あたりの売上(億円・ツールと請負を含む))→ 売上 19 億円・営業利益 1 億円。30 台 × 0.64 億円、利益率 3%
倍率:赤字で稼ぐ力は無い。床は売れる資産で、今の自己資本 108 億円の 0.22 倍の 24 億円。工作機械の事業と工場の土地を売った値段の税後から借金を引いた額。
確率:50 年の取引は堅いが、一社への依存は一度崩れると戻らない。関税と規制が重なる筋書きとして 1 割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
猟銃(ブローニング向け OEM)
上下二連の散弾銃・ボルトアクションのライフルをブローニングのブランドで作って納める。
| 数量出荷丁数(万丁・推定) | 価格1 丁あたりの納入価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 7.1 | 15 | 107 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.4 | 20 | 149 | 10 |
取り方:2025/10 期の猟銃の売上 106.8 億円(有報)。丁数の開示はなく、上下二連銃とライフルの納入価格を 1 丁平均 15 万円と推定して割った。セグメント利益 1.2 億円。
工作機械(深穴加工機)
ガンドリルマシンとツールの製造・販売、深穴加工の請負。
| 数量販売台数(台・推定) | 価格1 台あたりの売上(億円・ツールと請負を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 35.0 | 0.50 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.67 | 27 | 2 |
取り方:2025/10 期の工作機械の外部売上 17.7 億円(有報)。台数の開示はなく、ツールと請負を含めて 1 台あたり 0.5 億円と推定して割った。セグメント利益 1.3 億円。
リスクと懸念
ブローニングへの依存
売上の 8 割強がブローニングの 2 社向けだ。相手が生産を他の作り手に移す、在庫を絞る、値下げを求める、のどれが起きても、ミロクの利益は直ちに揺れる。新工場で増えた量も相手が買わなければ遊ぶ。
米国の関税と銃の規制
日本からの輸入品には 15% の関税がかかる。ブローニングが値段に乗せられなければ、その負担はミロクへの値下げの圧力になる。米国で銃の規制が強まれば、需要そのものが縮む。
新工場の重荷
南国市の新工場に 59 億円を投じ、完成した年に 25 億円を減損した。量が増えなければ、残った設備の償却と人の費用が利益を削り続ける。
借入の財務の条件
シンジケートローンには、純資産の維持と、経常損益に償却を足した額が 2 期続けて赤字にならないことが求められている。本業の赤字が続けば返済の条件を見直す事態になりうる。
職人の確保
銃づくりは手仕事が多く、高知で 500 人近い職人を抱える。地方の人口減で若い職人が集まらなければ、量も品質も保てない。
米国の狩猟人口の細り
米国の狩猟免許の数は横ばいからやや減りで、担い手は高齢化している。高級な散弾銃の愛好家は底堅いが、量が伸びる市場ではない。
今後の分かれ目
- 2027 年 10 月期に猟銃の利幅が 6% を超えたら
- 新工場の立ち上げが実り、平年の利益に戻ったとみて、やや楽観の確率を上げる。
- ブローニングが新しい銃の生産をミロクに任せると公表したら
- 新工場の量が埋まる道が見え、楽観側を厚くする。
- 持ち合いの株を売った現金で借金を大きく返し、配当を増やしたら
- 資本の使い方が株主に向き始めたとみて、戻り方を見直す。
- 米国の関税が上がる、または銃の規制が強まったら
- ブローニングの調達が他へ移る危うさが増し、悲観の確率を上げる。
- 本業の赤字が 2 年続き、借入の財務の条件に触れたら
- 悲観の筋書きの入口とみる。
見ておくもの
- 猟銃のセグメント利益と利幅
- ブローニング向けの売上の割合
- 新工場の稼働と生産量
- 借入金の残高と財務の条件
- 米国の関税と銃の規制の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 8.75%(基本 7.5% に循環・値決め・借金・寿命で +1.5%)と、各筋書きの ROE から式で出した。どの筋書きも ROE が k に届かないので PER の上限は 1÷k の 11.1 倍で、中立はその 8 割。悲観側は今の自己資本に掛けた PBR。今の PBR や過去の PER は見ていない。2026 年の最高益は株の売却益と補助金の一度きりの益なので、起点の純利益は本業の 1 億円にならした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.43 倍・やや楽観 PER 9.4→11.43 倍・中立 PER 8.9→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。