結論
トランザクションは、企業の販促品やオリジナルグッズを企画して売る雑貨メーカーだ。工場は持たず、海外の提携工場に作らせるファブレスで、近年は EC とエンタメグッズに軸足を移している。ベビー・ホームケア用品の会社ではない。筆者の結論は、稼ぐ力は本物だが、今の値段は成長がほぼ計画どおり進む前提を織り込んでおり、やや割高というものだ。
実績は文句がない。2026 年 8 月期の売上は 315 億円と 15% 近く増え、営業利益は 64 億円、利益率は 20% を超えた。配当は 15 年続けて増えている。推し活のグッズ需要と EC が伸びを引っぱった。財務も堅く、自己資本比率は 8 割を超える。
気になるのは先行きの利益率だ。会社は 2027 年 8 月期の営業利益率を 19% 台と見て、先行投資で下がる前提を置いた。新しく買ったフィギュア会社は赤字で、EC では専業の競合が値段で迫る。市場は数千億円規模の成熟した分野で、伸びの多くは新規の売場とシェア取りに頼る。
中立の筋書きでは、10 年後の売上は今の 2 倍強、営業利益率は 17% 台にとどまる。会社の 2030 年計画(売上 450 億円、営業利益 95 億円)に届く筋書きは、やや楽観のあたりから上だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が最初に問うのは、10 年後もこの事業が今より強いかどうかだ。この会社は、強いブランドを持たない。それでも稼げたのは、納期と小ロットを実現する仕組みがあるからだ。仕組みは、ブランドより模倣されやすい。競合が同じ在庫と納期を揃えれば、利益率は下がる。
株主が自由に使える利益は、見た目の純利益に近い。工場がなく、設備投資は小さい。純利益の 4 割台を配当と自社株買いで返しても、現金が増えてきた。ここは、バリュー投資家が好む資本の使い方だ。
経営の評価は高い。過去 10 年で利益を 10 倍にして、15 年連続で増配し、借金は持たない。M&A も小さく始めている。一方で、買収した会社の赤字や、新サイトの立ち上げ費用で、利益率は下がりはじめた。成長を取るのか、利益率を守るのか、会社は成長を選んだ。
安全域は薄い。今の時価総額は、2026 年 8 月期の純利益の約 17 倍で、中立の筋書きを大きくは下回らない。持ち続けたい会社だが、払ってよい値段には余裕がない。利益率が 20% を保つ道筋が見えるなら、評価は上がる。
何で稼ぐ会社か
トランザクションの稼ぎは、「企画力」と「調達力」を売ることにある。
中心は、企業や IP(ゲーム・アニメなどのキャラクター)の権利者からの注文で、オリジナルの雑貨を作って納める受注型だ。トート、タオル、文具、防災用品まで品目は広い。顧客の要望に合わせて、国内外の提携工場を使い分ける。工場を持たないので、設備の重荷がなく、品目も増減させやすい。印刷・加工・検品・物流は、グループの会社が受け持つ。
もうひとつの柱が EC だ。無地の製品を海外で作って国内に置いておく MARKLESS STYLE がその基盤で、顧客がロゴや絵柄を入れて小ロットで発注できる。企業向けの販促 STYLE や、同人・ライブグッズ向けのサイトなど、用途別に 10 前後のサイトを運営する。2026 年 8 月期は EC の売上が 2 割増え、とくに一般消費者向けが伸びた。
3 つ目は、エンタメ IP のグッズだ。2026 年 3 月にフィギュアの原型制作と OEM をするサウザンドなど 2 社を買収し、推し活の需要を取りにいく。自社ブランド(MOTTERU、Calulu、gowell など)も持つが、売上は小さい。
会社は単一セグメントで、事業別の売上は開示されていない。この分析では、法人の受注型、EC、エンタメ IP の 3 つに推定で分けた。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、ブランドでも技術でもない。小ロット・短納期を実現する、調達と在庫の仕組みにある。
無地の製品を先に海外で作り、国内の在庫から小ロットで印刷して出す。これは、受注してから作る競合には出しにくい納期だ。長年のメーカー・工場との取引で、素材と工程の選択肢も広い。この強みが、10 年以上にわたる売上の伸びと、20% 前後の営業利益率の土台になった。過去 10 年の売上は約 2.7 倍、純利益は約 10 倍になっている。
弱みは 3 つある。1 つ目は、値段を自分で決めにくいことだ。製品に強いブランドは付かず、競争入札や見積もり比較で売ることが多い。2 つ目は、競合が多いことだ。オンデマンド印刷のイメージ・マジックや、個人向けの SUZURI は、同じ小ロット需要を別の方法で取りにきている。3 つ目は、海外委託の生産に頼ることだ。為替や関税、運賃の変動が利益率を動かす。
資本効率は高く、ROE は 20% 前後が続いてきた。ただし、2027 年 8 月期は利益率が下がる計画だ。人員、広告、システムに投資しているため、売上を伸ばしても利益率を保つのは難しい。筆者は、この利益率がどこで落ち着くかを、評価の最大の分かれ目とみる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の市場は、成熟した法人需要と、伸びるファン需要が重なった形をしている。
法人向けの販促品・記念品は、国内で数千億円規模の市場といわれる。数量は企業の広告予算と景気で決まり、人口とともに伸びる分野ではない。デジタル広告に予算が移れば、紙やノベルティは細る。ここで伸ばすには、顧客を増やすか、ほかの販売店からシェアを取るしかない。
伸びているのは、推し活と EC だ。EC の利用者の 45% に推しがいて、その 8 割が支出するという調べもある。国内のライブ・エンタメ市場は 2025 年に 8,500 億円を超え、3 年続けて最高を更新した。グッズは、その周りで売れる。オンデマンド印刷の技術が広がり、1 個から作れる環境が整ったことで、参入する個人や小さな会社も増えた。
競争は二重だ。法人の受注では、卸や代理店との値段の競争になる。EC では、イメージ・マジック(国内 67 拠点で 1 日 30 万点を作れる)や SUZURI のような専業が、短納期と手軽さで張り合う。IP のグッズは、権利者との信頼が勝負で、不祥事や納期の遅れが 1 度でもあれば仕事が減る。
なお、同じ分類の MTG やピジョンとは、市場も顧客もまったく別だ。ここでは、法人販促、EC、エンタメ IP の 3 つの市場を、この会社の実態に合わせて見積もった。
資本政策と M&A
資本の使い方は、堅実で株主に優しい。
配当性向は 40% 以上、純資産に対する配当の比率(DOE)は 7% 以上を下限とし、15 年続けて増配してきた。2025 年 7 月には自社株買いも行った。中期経営計画では、5 年で約 100 億円を株主に返す計画で、成長投資の 80 億円の枠より大きい。
M&A は、中期経営計画で 5 年に 40 億円の枠を置く。すでに 2015 年にゴーウェル(旅行用品)、2026 年 3 月にサウザンド(フィギュアの OEM)を買った。サウザンドは売上 18 億円の小さな会社で、直近は営業赤字だ。額が小さいので失敗しても傷は浅いが、IP グッズへの足がかりとしてどれだけ働くかは、まだ見えない。
筆頭株主は、会長を務める石川氏で、約 21% を持つ。創業家が過半数を握る会社ではないので、買収の対象になりうる。ただし、時価総額が 700 億円台で現金も厚いため、実際に買う側は限られる。筆者は、利益の 4 割台を返し続けて、なお現金が増える今の姿勢を評価している。それが先で崩れないかを、毎年見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、売るものを変えながら伸びてきた。10 年で売上は 2.7 倍、純利益は 10 倍になり、毎期増収増益を続けた。2026 年 8 月期も売上は 15% 近く増えた。推し活のグッズ需要は、ファンが自分でお金を出す分野で、景気に左右されにくい。
EC の勢いは続く。小ロット・短納期の MARKLESS STYLE を、今は出品形式に開いて、他社の販売業者にも使わせる。EC の売上を 5 年で 2.5 倍の 200 億円にする計画で、2026 年はすでに 2 割増えた。エンタメ IP でも、サウザンドの買収でフィギュアの原型から製造までを持った。IP の権利者から、グッズ全体を任される会社になれる。
利益の使い方も良い。配当性向 40% 以上を守りながら、5 年で 100 億円を返し、現金は増え続ける。借金がなく、自己資本比率は 8 割を超える。計画どおり 2030 年に売上 450 億円、営業利益 95 億円を達成すれば、利益は今の 1.7 倍になる。その後も EC と IP が伸びれば、今の値段は安い。
慎重な見方
利益率は、すでに下がりはじめている。2026 年 8 月期の営業利益率は 20.3% と前期より下がり、第 4 四半期は 17.9% まで落ちた。会社は 2027 年 8 月期も 19.4% に下がると予想している。人員、広告、システム、M&A の費用が先行する。売上の伸びが利益に変わらない局面に入った。
強いブランドがないことも、見ておく必要がある。法人の受注は見積もりの比較で決まり、EC では専業が値段と納期で迫る。小ロットの印刷は、技術が広がるほど差が付かなくなる。IP のグッズは、権利者との関係と流行に左右される。推し活の需要は、ブームの一巡で縮みうる。
新しい事業も、軽くない。買ったサウザンドは赤字で、フィギュアは原型師の人材と在庫の管理が難しい。海外委託の生産は、関税や為替、運賃で利益率が動く。市場は数千億円規模の成熟した分野で、伸びる余地は、シェアを取る力にかかっている。
今の時価総額は、純利益の 17 倍に達している。この値段が正しくなるには、利益率を 20% 近くに保ったまま、売上が 10 年で 2.5 倍以上にならなければならない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。強気の見方が語る実績は事実で、中計の達成は十分ありうる。ただ、利益率が下がる方向にあることと、強いブランドがなく競争が厳しいことは、強気の見方で補いきれない。そのため、確率は中立に最も厚く、慎重側(やや悲観・悲観)に 3 割、強気側(楽観・やや楽観)に 28% を置いた。ReFa のようなブーム依存の会社ではないため、悲観は 1 割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 2,206 円1,252 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 495 円281 億円)。 今の値に割り戻すと 1,415 円803 億円、今との差 +10.4%、 期待の年率 +7.7%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 4,817 円2,734 億円 | 722 円410 億円 | +332.1% | +15.8% | 443 円251 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,159 円1,793 億円 | 599 円340 億円 | +193.1% | +11.4% | 752 円427 億円 |
| 中立 | 42% | 2,509 円1,424 億円 | 552 円313 億円 | +138.7% | +9.1% | 1,285 円729 億円 |
| やや悲観 | 20% | 553 円314 億円 | 388 円220 億円 | −26.6% | −3.0% | 188 円107 億円 |
| 悲観 | 10% | 243 円138 億円 | 79 円45 億円 | −74.8% | −12.9% | 32 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,206 円1,252 億円 | 495 円281 億円 | +110.7% | +7.7% | 2,701 円1,533 億円 |
今の株価時価総額 1,282 円728 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% EC と IP が計画を超えて伸び、利益率も 20% を保つ 利益 132 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 4,817 円2,734 億円
EC と IP が計画を超えて伸びる 10 年になる。MARKLESS STYLE を出品形式に開いた効果で、他社の販売業者が集まり、EC は国内の小ロット需要の主役になる。サウザンドの買収で、IP の権利者からグッズの企画から製造までを任される会社になり、フィギュアの利益も乗る。
粗利の高い自社印刷の比率が上がり、営業利益率は 20% 前後を保つ。値段も、短納期の価値が認められ、物価を少し上回る。10 年後の売上は 935 億円、営業利益は 186 億円。会社が掲げる 2030 年の 450 億円・95 億円を、5 年遅れでなく 4〜5 年で達成して、その先も伸びる、最良の姿だ。株主への還元は純利益の半分を保つ。
- 法人受注(販促・オーダーメイド・自社ブランド):数量 193(国内の法人向け販促品・オーダー雑貨の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 138.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 266 億円・営業利益 72 億円。対象市場 4,200 億円(実質)× シェア 4.6%、値段は 1.38 倍(短納期で物価を少し上回る)、営業利益率 27%
- EC(MARKLESS STYLE・消費者向け・販促 STYLE):数量 226(小ロット・オリジナルグッズ EC の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 303 億円・営業利益 70 億円。対象市場 3,900 億円 × シェア 5.8%、営業利益率 23%
- エンタメ IP(推し活グッズ・フィギュア):数量 272(国内のエンタメ IP 物販(グッズ・フィギュア OEM)の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 365 億円・営業利益 58 億円。対象市場 8,000 億円 × シェア 3.4%、営業利益率 16%
倍率:事業の純利益 132 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍。全体の PER 20.71 倍、時価総額 2,734 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率を保ったまま売上が 3.4 倍になる筋書きは、競合の多い市場では細い。ただ、実績と中計の勢いを考え、1 割弱は残した。
やや楽観 20% 中計に近い成長が続き、利益率は 18% 前後に下がる 利益 92 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 3,159 円1,793 億円
EC とエンタメ IP が順調に伸びる。EC は消費者向けと出品形式のサイトが育ち、国内のシェアを 4.6% まで上げる。IP は、サウザンドの赤字を数年で解消し、フィギュアと雑貨を組み合わせた提案で、権利者の取引を増やす。
営業利益率は 18% で、今より下がる。広告、人員、システムへの投資が続き、競合との値段の競争も増えるからだ。売上は 10 年後に 720 億円、営業利益は 130 億円。2030 年の 95 億円は、1〜2 年遅れで届く。株主への還元は純利益の半分強を保つ、堅実な成長の筋書きだ。
- 法人受注(販促・オーダーメイド・自社ブランド):数量 180(国内の法人向け販促品・オーダー雑貨の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 241 億円・営業利益 60 億円。対象市場 4,100 億円 × シェア 4.4%、値段は物価並みの 1.34 倍、営業利益率 25%
- EC(MARKLESS STYLE・消費者向け・販促 STYLE):数量 170(小ロット・オリジナルグッズ EC の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 228 億円・営業利益 47 億円。対象市場 3,700 億円 × シェア 4.6%、営業利益率 20.5%
- エンタメ IP(推し活グッズ・フィギュア):数量 187(国内のエンタメ IP 物販(グッズ・フィギュア OEM)の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 251 億円・営業利益 34 億円。対象市場 7,500 億円 × シェア 2.5%、営業利益率 13.5%
倍率:事業の純利益 92 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍。全体の PER 19.59 倍、時価総額 1,792 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:EC の伸びと IP の取り込みが、計画に近く進む姿。過去 10 年の実績の延長線上にあり、強気の見方の中心。
中立 42% 成長は鈍り、利益率は 17% 台のふつうに強い会社になる 利益 73 億円 · PER 19.3 倍 · 株価時価総額 2,509 円1,424 億円
売上は、国内の販促品市場が横ばいの中で、EC と IP のシェア取りで年 8% 伸びる。法人受注は人口と景気で数量が決まるので、伸びはシェアの分だけだ。EC は消費者向けと小ロットの需要で、シェアを 4% まで上げる。IP は、ブームの波がありながらも、サウザンドの統合が進み、2% のシェアに届く。
営業利益率は 17〜18% で、今より下がる。広告と人員、新サイトの費用が続き、競合との値段の競争もあるからだ。会社の 2030 年計画(売上 450 億円、営業利益 95 億円)には届かない。10 年後の売上は 590 億円、営業利益は 103 億円。強いブランドを持たないが、仕組みで稼ぎ続けるふつうに強い会社に落ち着く。還元は純利益の 55% 前後だ。
- 法人受注(販促・オーダーメイド・自社ブランド):数量 160(国内の法人向け販促品・オーダー雑貨の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 214 億円・営業利益 52 億円。対象市場 4,000 億円(実質・横ばい)× シェア 4.0%、値段は物価並みの 1.34 倍、営業利益率 24%
- EC(MARKLESS STYLE・消費者向け・販促 STYLE):数量 140(小ロット・オリジナルグッズ EC の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 188 億円・営業利益 38 億円。対象市場 3,500 億円(年 3.4% 増)× シェア 4.0%、営業利益率 20%
- エンタメ IP(推し活グッズ・フィギュア):数量 140(国内のエンタメ IP 物販(グッズ・フィギュア OEM)の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 188 億円・営業利益 24 億円。対象市場 7,000 億円(年 1.6% 増)× シェア 2.0%、営業利益率 13%
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.2% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.3 倍。全体の PER 19.3 倍、時価総額 1,409 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。EC と IP は伸びるが、会社の計画ほどには届かず、利益率が落ち着く姿。
やや悲観 20% 競合に値段で押され、利益率が 1 割に落ちる 利益 28 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 553 円314 億円
EC と法人受注で、競合との値段の競争が強まる。オンデマンド印刷の専業や中国の直販サイトが、小ロットと短納期の差を縮め、EC の値段が物価に追いつかなくなる。法人の受注は、見積もりの比較でシェアが 3% 台に下がる。IP は、サウザンドの統合がうまくいかず、ブームの一巡で売上が伸びない。
粗利が下がり、広告費と人員は急に減らせず、営業利益率は 10% 台前半に落ちる。10 年後の売上は 390 億円、営業利益は 41 億円。今の 7 割だ。配当は減らさず維持するので、還元は純利益の 6 割近くに上がり、現金の増えが止まる。優良な会社とは見なされなくなる。
- 法人受注(販促・オーダーメイド・自社ブランド):数量 125(国内の法人向け販促品・オーダー雑貨の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 130.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 163 億円・営業利益 28 億円。対象市場 3,800 億円 × シェア 3.3%、値段は 1.30 倍(物価に追いつかない)、営業利益率 17%
- EC(MARKLESS STYLE・消費者向け・販促 STYLE):数量 102(小ロット・オリジナルグッズ EC の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 125.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 128 億円・営業利益 18 億円。対象市場 3,200 億円 × シェア 3.2%、値段は 1.25 倍、営業利益率 14%
- エンタメ IP(推し活グッズ・フィギュア):数量 72.0(国内のエンタメ IP 物販(グッズ・フィギュア OEM)の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 97 億円・営業利益 6 億円。対象市場 6,000 億円 × シェア 1.2%、営業利益率 6%
倍率:事業の ROE 7.4% が k 7.5% 以下なので、PER は 1÷k=12.5 倍まで(ためた利益は額面未満の価値)。利益が先細りの姿なので、上限を少し下回る 10.5 倍に置いた。
確率:強いブランドがない会社が、専業の競合と値段で競うと、利益率が下がる。会社が 2027 年の利益率低下を認めていることも根拠。
悲観 10% 小ロットの優位が消え、IP の投資も裏目に出る 利益 −5 億円 · PBR 0.7 倍 · 株価時価総額 243 円138 億円
小ロット・短納期の優位が、技術の広がりで消える。専業のオンデマンド印刷と海外の直販サイトが同じ納期と値段を出し、EC の値段は物価を下回る。法人の販促品はデジタル広告への移行で数量が減る。IP では、サウザンドの買収が裏目に出て、フィギュアの在庫の評価損と原型師の離職が起きる。海外委託の生産は、関税と運賃で利益が削られる。
10 年後の売上は 205 億円と今の 7 割、営業利益は赤字に沈む。広告・人員・システムの固定費が重く残るからだ。還元は、前半の黒字と、在庫・資産の売却で得た現金から払う程度にとどまる。構造的に負けて、もう優良ではなくなった姿だ。
- 法人受注(販促・オーダーメイド・自社ブランド):数量 87.5(国内の法人向け販促品・オーダー雑貨の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 120.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 105 億円・営業利益 6 億円。対象市場 3,500 億円 × シェア 2.5%、値段は 1.20 倍、営業利益率 6%
- EC(MARKLESS STYLE・消費者向け・販促 STYLE):数量 56.0(小ロット・オリジナルグッズ EC の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 115.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 64 億円・営業利益 0 億円。対象市場 2,800 億円 × シェア 2.0%、値段は 1.15 倍、営業利益率 0%
- エンタメ IP(推し活グッズ・フィギュア):数量 30.0(国内のエンタメ IP 物販(グッズ・フィギュア OEM)の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 120.0%(値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 36 億円・営業利益 −4 億円。対象市場 5,000 億円 × シェア 0.6%、営業利益率 −10%
倍率:この筋書きは稼ぐ力が消えて小さな赤字になる。床は稼ぐ力ではなく、純現金と売れる資産の税後。今の自己資本 197 億円に 0.7 倍を掛けた。売上債権・在庫・設備の換金価値を、簿価の 4〜5 割と見た。
確率:ブーム依存の会社ではなく、15 年の増配の実績もあるので、1 割にとどめた。ただし関税・為替と IP の失敗が重なる筋書きは排除できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
法人受注(販促・オーダーメイド・自社ブランド)
企業や団体のノベルティ、記念品、販売用のオリジナル雑貨。EC を通さない受注型の売上と、自社ブランド、防災・エコ製品を含む。
| 数量国内の法人向け販促品・オーダー雑貨の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア | 価格値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 140 | 100.0% | 140 | 36 |
| 10 年後 中立 | 160 | 134.0% | 214 | 52 |
取り方:会社は単一セグメントで事業別の開示がないため、全体 274.5 億円から EC(約 80 億円)とエンタメ IP(約 55 億円)の推定分を引いた約 140 億円。数量は対象市場約 4,000 億円(販促品・記念品の国内市場を数千億円とする見方の中心)× シェア約 3.5% の推定。営業利益は本社費の前で、率 25% と推定。
EC(MARKLESS STYLE・消費者向け・販促 STYLE)
無地製品を国内に置き、顧客が小ロットで印刷して発注する EC。卸・代理店向けの MARKLESS STYLE と、企業・消費者・同人向けのサイト群。
| 数量小ロット・オリジナルグッズ EC の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア | 価格値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 80.0 | 100.0% | 80 | 19 |
| 10 年後 中立 | 140 | 134.0% | 188 | 38 |
取り方:会社の「EC 売上比率 30% 以上」の目標と、中計の「EC 売上を 2.5 倍の 200 億円に」から、2025/08 期は約 80 億円と推定。数量は対象市場約 2,500 億円(オンデマンド印刷・小ロットの卸向けと消費者向け。公的な集計は確認できず推定)× シェア約 3.2%。営業利益率は 24% と推定(広告・システム費を含む前の値)。 先の数量の伸びは会社の中計(EC 売上を 2.5 倍)に沿った事業のシェア上昇で、名目の市場の伸びを置いたものではない。
エンタメ IP(推し活グッズ・フィギュア)
ゲーム、アニメ、VTuber、音楽などの権利者向けのグッズの企画・製造。2026 年にフィギュアの OEM(サウザンド)を加えた。
| 数量国内のエンタメ IP 物販(グッズ・フィギュア OEM)の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア | 価格値段の指数(2025/08 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 55.0 | 100.0% | 55 | 9 |
| 10 年後 中立 | 140 | 134.0% | 188 | 24 |
取り方:EC 経由を除く、権利者向けの受注・直販の約 55 億円と推定(中計の「エンタメ IP 売上を 2 倍の 150 億円に」のうち、EC 分は上の EC に入れて二重に数えない)。数量は対象市場約 6,000 億円(国内のライブ・エンタメ市場 8,564 億円の周辺物販を含む推定で、公的な集計は確認できず)× シェア約 0.9%。営業利益率は 15% と推定。本社費は全社でマイナス約 6.5 億円。 先の数量の伸びは会社の中計(エンタメ IP 売上を 2 倍)に沿った事業のシェア上昇で、名目の市場の伸びを置いたものではない。
リスクと懸念
利益率の低下
2026 年 8 月期の営業利益率は 20.3%、2027 年 8 月期の会社予想は 19.4% だ。人員、広告、システム、M&A の費用が先行する。売上が伸びても、利益率の低下で利益の伸びは売上より小さくなる。
強いブランドがない
法人の受注は見積もりの比較で決まり、EC では専業の競合が値段と納期で迫る。小ロットの優位は、技術が広がるほど縮む。値段を自分で決めにくい構造は、利益率の下限を作りにくい。
海外委託の生産
製品の多くを海外の提携工場で作る。為替、関税、運賃が上がると、利益率が削られる。工場を持たない強みの裏返しで、価格に転嫁できるかは競争次第だ。
IP の流行と権利者への依存
推し活グッズは、特定のゲームやアニメの人気に左右される。権利者との信頼が 1 度でも傷つけば、仕事が減る。ブームが一巡すれば、在庫の評価損が出る。
買収した会社の統合
2026 年 3 月に買ったサウザンドは、直近の営業利益が赤字で、売上は 18 億円と小さい。フィギュアの原型師と在庫の管理は難しい。額は小さいが、統合に失敗すれば IP の戦略が遠のく。
創業家と株主構成
会長の石川氏が筆頭株主で約 21%。同じ姓の株主も上位に並ぶ。会社を支配できる比率ではないが、判断が速い反面、少数株主の意見が反映されにくい面がある。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 2 期続けて 19% を割り込んだら
- 投資の効果が出ていない。中立の利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- EC の売上が 2 割台の伸びを続け、利益率を保ったら
- 出品形式への転換が成功している。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。
- サウザンドが 2 年以内に黒字になり、IP 全体の利益率が 10% を超えたら
- IP の戦略が働いている。中立の IP のシェアを上げる余地が出る。
- 為替や関税で粗利率が 2 ポイント以上下がり、値上げで戻せなかったら
- 価格に転嫁できない構造だ。やや悲観の確率を上げる。
- 競合のオンデマンド印刷が、同じ納期・値段で EC の顧客を奪いはじめたら
- 小ロットの優位が崩れている。悲観の入口とみて、確率を移す。
- 配当性向を 4 割に保ちながら、現金が増え続けたら
- 使い道が見つかっていない。大型の自社株買いなら評価は上がり、無理な買収なら下がる。
見ておくもの
- 四半期ごとの営業利益率(先行投資の効果が出るか)
- EC の売上の伸びと、全体に占める比率
- サウザンドの損益と、IP 事業の売上
- 為替・関税・海上運賃による粗利率の変化
- 配当性向、自社株買い、M&A の額
倍率と資本コストの決め方
法人受注・EC・エンタメ IP の 3 つに、対象市場(実質)× シェアと、値段の指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍)で積んだ。会社は単一セグメントで開示がないため、分け方と市場の大きさは推定で、数量を市場×シェアで置いたため価格 1 の注意が出る。今の株価は見ていない。倍率は k 7.5% と g 4%、残る割合 1/2 の正当化 PER から出し、中立は上限の 8.4 割の 14.0 倍に置いた。結果は、10 年後の時価総額が今の約 1.3 倍で、確率で重みづけした価値は今よりやや低く、やや割高。いちばん効く置き方は、10 年後の営業利益率で、会社の計画 21% に対し、中立は 17〜18% に置いた。領域は同じ分類のピジョン・MTG と市場が別なので、k は個別に決めた。新リース会計は 2028/08 期から BS に載るが、家賃は今と同じ形(営業費用)にそろえて置いた。純現金が時価総額の 1 割に届かないため、余った現金は分けていない。利払いの変化は 1 億円ほどで、無視した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。