結論
野崎印刷紙業は、京都に本社を置く印刷の会社だ。化粧品や食品の紙箱、包装紙と紙袋、物流の伝票、商品に貼るタグとラベル、それを刷る小型のプリンターまでを手がける。筆者の結論は「割高」。事業は堅いが、資本コストに届く稼ぎが見えない。
売上は 140 億円で、10 年前より 2 割小さい。伝票はペーパーレスで細り、カタログやカレンダーの商業印刷も縮んだ。その分を紙箱とラベルが埋めてきた。2023 年からは値上げと効率化で利益率が 4% 台まで戻ったが、前期は同業との価格競争で 3.7% に下がった。
筆者がいちばん気にしているのは、値段を自分で決める力の弱さだ。包装と印刷は同業が多く、顧客の食品や化粧品の会社は毎年の値下げを求める。原料の紙とインキ、人件費が物価で上がる中、値上げが通るかどうかで利益は大きく振れる。
借入は現金を 17 億円上回る。設備投資は年 6 億円を超え、株主に残る現金は多くない。自社株買いは続けているが、ROE は 8% 前後にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「なくならないが、強くもない」事業だ。食品や化粧品の箱、通販のラベルは 10 年後も要る。だが、その仕事は多くの同業と分け合うもので、値段を決める力は弱い。
事業の価値は、株主のものになる利益で決まる。純利益は 3.6 億円で、設備の更新に毎年 6 億円を超える投資が要る。機械の値段は物価で上がり、償却を上回る更新が続く。株主に残る現金は、会計の利益より少ない。
評価できるのは、資本の使い方を変え始めたことだ。配当の下限を決め、自社株を買い、今の値段は自己資本の 0.8 倍ほどだ。ただ PBR が 1 倍を割ることは割安の根拠にならない。ROE が資本コストに届かない限り、帳簿の価値は満額の値にならない。
筆者なら、利益率 4% 台が値上げで定着するのを見るまで、この値段は払わない。
何で稼ぐ会社か
事業は印刷の 1 本だが、売上は 4 つの部門に分かれる。いちばん大きいのは包装資材と紙器・紙工品で、売上 79 億円と全体の 6 割近い。物流の伝票、化粧品や食品の紙箱、食品の袋などの軟包装、百貨店や土産物の包装紙と紙袋を作る。
2 番目は情報機器とサプライ品で、売上 44 億円ある。商品に付けるタグとラベル、通販の荷物に貼る宛名のデータ印刷、そしてラベルを刷る小型と中型のプリンターだ。プリンターを顧客の工場や店に置き、ラベルを継続して買ってもらう。顧客ごとに作り込むカスタマイズ機の受注も伸びた。
残りは、カタログやパンフレット、カレンダーの商業印刷が 11 億円、化成品などのその他が 5 億円だ。商業印刷はデジタル化で長く縮んでいる。
工場は京都と関東などにあり、紙の加工からデータの印刷までを自前で持つ。顧客は食品、化粧品、物流、小売と幅広い。1 社への依存は小さいが、どの顧客も値下げを求める力が強い。
部門ごとの利益は開示されない。紙箱とラベルが利益の柱で、商業印刷はほぼ利益が出ていないと筆者は見る。
優良さと弱いところ
優良さは低い、と筆者は見る。営業利益率は過去 12 年のほとんどで 1〜3% にとどまり、最高でも 4.7% だ。包装も印刷も同業が多く、値段は市場が決める。前期も価格競争で販売の値段が下がった。
堀、つまり他社がまねできない強みは小さい。ラベルとプリンターを組み合わせて顧客の現場に入り込む形は、乗り換えの手間を生む。ただ顧客は大手の印刷会社や専門のラベル会社にも声をかけられる。
財務は普通だ。自己資本比率は 44% あるが、借入は 31 億円で現金を 17 億円上回る。設備投資は償却並みで、機械の更新は物価で高くなる。
経営は資本の効率を意識し始めた。中期経営計画で配当の下限を決め、自社株買いも続けている。ここは評価できる。
ただ借入で自社株を買う形は、利益が落ちた年に財務の余裕を削る。資本の使い方の改善が、稼ぐ力の改善を伴うかが問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
印刷の市場は、全体では長い下り坂にある。チラシ、カタログ、伝票はデジタル化で減り続ける。日本の印刷の出荷額は 20 年で 4 割近く減った。この流れは 10 年先も止まらないと筆者は見る。
その中で、包装とラベルは底堅い。食品と化粧品は箱や袋なしには売れず、通販の荷物にはラベルが要る。人口の減りで量は伸びにくいが、急に消えることもない。高級な化粧品の箱や、紙に替わる環境にやさしい包装には値段が付く。
伝票は違う。物流のデジタル化で紙の伝票は減り、残る分は大手の印刷会社との値下げの競争になる。野崎印刷紙業の前期の減収も、伝票の価格競争とペーパーレスが大きい。
費用の側は厳しい。紙とインキは円安と原料高で上がり、賃上げも続く。印刷は設備の産業で、機械の更新の値段も物価で上がる。値上げを通せる会社と通せない会社で、利益の差が開く。
競合は、TOPPAN や大日本印刷の包装部門、地域の中堅の紙器の会社、サトーなどのラベルとプリンターの会社だ。
筆者は、包装とラベルの底堅さが、伝票と商業印刷の縮みをおおむね埋めると見る。ただ埋める以上の伸びは見込みにくい。
資本政策と M&A
還元は少しずつ厚くなっている。中期経営計画で、株主資本に対する配当の割合 1.5% を下限に、配当性向 20% 以上を目安にした。前期の配当は年 1.2 億円ほどで、配当性向は 3 割台だ。自社株買いも続け、自己株は発行済の 4 分の 1 に達する。
株主優待は、1,000 株以上の株主への QUO カードだ。会社の費用は年 0.1 億円に届かないと見る。
大株主は陽光会の 12%、創業家の野﨑隆男氏の 11% で、創業家に近い株主が 3 割ほどを持つ。親会社はなく、経営は独立している。
借入は 31 億円あり、設備投資と自社株買いを借入で賄う形になっている。大きな買収の歴史はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
包装とラベルは、なくならない仕事だ。食品も化粧品も箱と袋なしには売れず、通販が広がるほどラベルは要る。野崎印刷紙業は伝票の縮みを紙箱とラベルで埋め、2023 年から利益率を 4% 台まで戻した。値上げを通す力はついてきた。
プリンターとラベルを組み合わせる形も強い。顧客の工場や店にプリンターを置けば、ラベルは継続して売れる。カスタマイズ機の受注は前期大きく伸びた。通販向けのデータ印刷も堅調だ。
資本の使い方も変わった。配当の下限を決め、自社株を買い続け、自己株は発行済の 4 分の 1 に達する。今の値段は自己資本を下回り、土地 16 億円も持つ。利益率が 4% 台に戻れば、ROE は 10% 近くまで上がり、値段は見直される。
紙への置き換えも追い風だ。プラスチックの包装を紙に替える動きは、食品と化粧品で広がっている。紙箱と紙の軟包装を自前で作れる会社には、新しい注文が来る。京都の地盤で、化粧品と和菓子の高級な箱の顧客も厚い。
慎重な見方
価格競争は終わらない。前期も同業との競争で販売の値段が下がり、営業利益は 25% 減った。印刷と包装は同業が多く、顧客の食品や化粧品の会社は毎年の値下げを求める。過去 12 年の利益率の中央値は 2% に満たない。直近の 4% 台は、物流の特需と値上げが重なった一時の山かもしれない。
伝票と商業印刷の縮みは止まらない。ペーパーレスは物流でも進み、カタログもカレンダーも減る。包装紙と紙袋も、百貨店の贈答の縮みで伸びない。
費用は上がる。紙、インキ、人件費は物価で上がり、機械の更新の値段も上がる。借入は 31 億円あり、金利が上がれば利払いが増える。自社株買いを借入で賄う形は、利益が落ちた時に重くなる。
資本の使い方の改善も、稼ぐ力が伴わなければ空回りする。ROE が資本コストに届かない会社が借入で自社株を買えば、利益が落ちた時に財務が先に傷む。今の値段が帳簿の価値を下回るのは、市場がこの弱さを見ているからだ。紙への置き換えも、大手の印刷会社が先に取る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方がやや強い。包装とラベルの底堅さは本物だが、値段を決める力の弱さは前期の減益が示した。資本の使い方の改善は評価し、確率を楽観側に少し残した。中立は、利益率が 3% 台前半で落ち着く姿にした。値上げが定着する証拠が 2 年続けば、楽観側に動かす。
それでも資本コストに届く姿は、楽観の筋書きの中にも無い。ここが値段を抑える一番の理由だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 214 円35 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 66 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 133 円21 億円、今との差 −37.8%、 期待の年率 +2.7%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 413 円67 億円 | 112 円18 億円 | +145.3% | +9.4% | 37 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 329 円53 億円 | 93 円15 億円 | +96.9% | +7.0% | 76 円12 億円 |
| 中立 | 40% | 256 円41 億円 | 77 円13 億円 | +55.9% | +4.5% | 133 円22 億円 |
| やや悲観 | 23% | 81 円13 億円 | 37 円6 億円 | −44.8% | −5.8% | 27 円4 億円 |
| 悲観 | 12% | 43 円7 億円 | 12 円2 億円 | −74.2% | −12.7% | 7 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 214 円35 億円 | 66 円11 億円 | +30.8% | +2.7% | 280 円45 億円 |
今の株価時価総額 214 円35 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 紙箱とラベルで値上げが定着し、利益率 4.7% へ 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 413 円67 億円
紙箱と軟包装は、化粧品と食品の高級化、紙への置き換えで値段が付く。伝票は減るが、包装全体の出荷は 5% 減にとどまり、値段は物価並みに上がる。包装の利益率は 4.2% になる。
ラベルとプリンターは通販と食品の表示で伸び、出荷は 25% 増える。カスタマイズ機が顧客の現場に入り込み、利益率は 6% に上がる。
全社の営業利益は 9 億円近く、利益率は 4.7% と過去の山に並ぶ。配当と自社株買いは利益に合わせて増え、ROE は 7% 台になる。
それでも資本コストには届かず、値段の上限は稼ぐ力で決まる。
- 包装資材・紙器・紙工品:数量 95.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 1.06(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 101 億円・営業利益 4 億円。出荷 0.95 倍・単価 1.34 倍・利益率 4.2%
- 情報機器・サプライ品:数量 125(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.59(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 73 億円・営業利益 4 億円。出荷 1.25 倍・単価 1.32 倍・利益率 6%
- 商業印刷:数量 80.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.15(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.80 倍・単価 1.30 倍
- その他(化成品):数量 100(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.07(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。出荷 1.00 倍・単価 1.30 倍
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 61 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが定着し、ラベルとプリンターが伸びて、利益率が過去 12 年の山(4.7%)に並ぶ筋書き。前期に価格競争で減益した事実から低く置いた。
やや楽観 18% ラベルが伸び、利益率 4% 前後を保つ 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 329 円53 億円
包装の出荷は 10 年で 1 割減る。伝票と包装紙は細るが、紙箱と軟包装が支える。値段は 1.32 倍で、利益率は 3.6% を保つ。
ラベルとプリンターは出荷が 15% 増え、利益率は 5.2% になる。通販のデータ印刷と食品の表示のラベルが柱だ。
商業印刷はさらに縮むが、全体への影響は小さい。全社の営業利益は 7 億円近く、利益率は 3.9% になる。
配当の下限と自社株買いの方針は続き、ROE は 6% 台に上がる。借入は少しずつ減る。
紙への置き換えの注文も少しずつ取れる。それでも資本コストとの差は埋まらない。
- 包装資材・紙器・紙工品:数量 90.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 1.04(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 94 億円・営業利益 3 億円。出荷 0.90 倍・単価 1.32 倍・利益率 3.6%
- 情報機器・サプライ品:数量 115(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.58(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。出荷 1.15 倍・単価 1.30 倍・利益率 5.2%
- 商業印刷:数量 72.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.14(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.72 倍・単価 1.28 倍
- その他(化成品):数量 90.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.07(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.90 倍・単価 1.28 倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 47 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ラベルとプリンターの伸びが伝票の縮みを埋め、2023〜2025 年の利益率 4% 台に近い水準を保つ筋書き。直近 3 年の実績を根拠に置いた。
中立 40% 伝票が細り、利益率は 3% 台前半 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 256 円41 億円
包装の出荷は 10 年で 15% 減る。伝票はペーパーレスで半分近くに細り、紙箱と軟包装がそれを一部埋める。値段は同業との競争で 1.30 倍にとどまり、利益率は 3% に下がる。
ラベルとプリンターは出荷が 5% 増え、利益率は 4.5% を保つ。商業印刷は 3 分の 1 減り、小さな赤字になる。
全社の営業利益は 5.2 億円で、今とほぼ同じだ。10 年の償却は今の 6.3 億円前後で物価では増えないが、機械の更新は新しい値段で入り、設備投資は償却を上回る。借入の金利が上がり、利払いも増える。
純利益は 3 億円前後で、配当の下限と自社株買いの方針は続く。ROE は 5% 前後にとどまる。
- 包装資材・紙器・紙工品:数量 85.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 1.03(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 87 億円・営業利益 3 億円。出荷 0.85 倍・単価 1.30 倍・利益率 3%
- 情報機器・サプライ品:数量 105(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.57(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 3 億円。出荷 1.05 倍・単価 1.28 倍・利益率 4.5%
- 商業印刷:数量 65.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.14(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.65 倍・単価 1.25 倍
- その他(化成品):数量 80.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.07(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.80 倍・単価 1.25 倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:伝票と商業印刷の縮みを紙箱とラベルがおおむね埋め、価格競争で利益率が 3% 台前半に落ち着く標準の姿。直近 3 年の山(4.7%)と過去 12 年の低い中央値の間に置いた。
やや悲観 23% 価格競争が続き、利益率 1% 台へ 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 81 円13 億円
包装の出荷は 10 年で 4 分の 1 減る。伝票はほぼ消え、包装紙と紙袋も贈答の縮みで減る。値段は 1.22 倍にとどまり、包装の利益率は 1.5% に落ちる。
ラベルとプリンターも大手との競争で出荷が減り、利益率は 3% になる。商業印刷とその他は赤字が広がる。
全社の営業利益は 2.3 億円に落ち、借入の利払いを引くと純利益は 1 億円ほどだ。自社株買いは止まり、配当は下限の水準まで減る。
工場の統合を迫られ、その費用も重い。
借入で買った自社株の分、財務の余裕は細っている。稼ぐ力では値が付きにくく、手元の資産が値の支えになる。
- 包装資材・紙器・紙工品:数量 75.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.96(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 72 億円・営業利益 1 億円。出荷 0.75 倍・単価 1.22 倍・利益率 1.5%
- 情報機器・サプライ品:数量 95.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.53(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。出荷 0.95 倍・単価 1.20 倍・利益率 3%
- 商業印刷:数量 50.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.13(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.50 倍・赤字
- その他(化成品):数量 70.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.06(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.70 倍・赤字
倍率:ROE 2.1% で k を大きく下回る。PER の上限 1÷k = 11.8 倍に対し、利益の質が落ちる姿なので約 75% の 9 倍。PBR は 0.19 倍で中立より低い。EV(時価総額+純負債 17 億円)÷ 営業利益は 12 倍。
確率:価格競争と原料高で、利益率が 2015〜2022 年の 1% 前後に戻る筋書き。過去 12 年の大半がこの水準だった実績から厚めに置いた。
悲観 12% 包装でも値段が崩れ、赤字に沈む 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 43 円7 億円
構造的に負ける。伝票と商業印刷はほぼ消え、包装紙と紙袋も細る。紙箱は大手と地域の同業に値段で負け、包装の出荷は 4 割減る。値段は 1.12 倍しか上がらず、赤字になる。
ラベルとプリンターも、専門の大手に押されて出荷が 2 割減る。全社の営業損益は赤字に転じる。
工場の統合と減損で、自己資本は 3 分の 1 ほど減る。配当は止まり、借入の返済が重くなる。
残るのは工場の土地と、ラベルの顧客の一部くらいだ。同業に事業を渡す形もありうるが、値段は買い手が決める。
少数株主に残るのは、土地と顧客の売却から借入を返した残りだけだ。
- 包装資材・紙器・紙工品:数量 60.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.89(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 53 億円・営業利益 −1 億円。出荷 0.60 倍・単価 1.12 倍・赤字
- 情報機器・サプライ品:数量 80.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.50(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 40 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.80 倍・単価 1.12 倍・利益率 1%
- 商業印刷:数量 40.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.12(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.40 倍・赤字
- その他(化成品):数量 50.0(出荷量の指数(2026/03 = 100・推定))× 価格 0.06(出荷量 1 単位あたりの売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.50 倍・赤字
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。今の自己資本 46.2 億円に 0.15 倍で、下の売れる資産の床に合わせた。
確率:構造的に負ける筋書き。伝票と商業印刷が消え、包装も大手と地域の同業に値段で負けて赤字になる。借入が現金を上回る財務も踏まえて置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
包装資材・紙器・紙工品
物流の伝票、化粧品や食品の紙箱、軟包装、包装紙と紙袋。
| 数量出荷量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格出荷量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.79 | 79 | 3 |
| 10 年後 中立 | 85.0 | 1.03 | 87 | 3 |
取り方:部門売上 79.09 億円(2026/03 短信)。単一セグメントで部門の利益は開示がないため、全社の営業利益 5.16 億円を包装 4%・情報 5%・商業 0%・その他 −4% で配分した推定。数量は今を 100 とする指数で、伝票の縮みと紙箱の底堅さを合わせて置く。
情報機器・サプライ品
タグとラベル、通販向けのデータ印刷、小型・中型のラベルプリンターとカスタマイズ機。
| 数量出荷量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格出荷量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.44 | 44 | 2 |
| 10 年後 中立 | 105 | 0.57 | 60 | 3 |
取り方:部門売上 44.40 億円(2026/03 短信)。利益は上の配分で 5% の推定。数量は今を 100 とする指数。
商業印刷
カタログ・パンフレット・カレンダーなどの一般商業印刷。
| 数量出荷量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格出荷量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.11 | 11 | 0 |
| 10 年後 中立 | 65.0 | 0.14 | 9 | 0 |
取り方:部門売上 11.26 億円(2026/03 短信)。利益はほぼゼロと見た推定。数量は今を 100 とする指数。
その他(化成品)
物流向けのチケットパック、衛生関連の化成品など。
| 数量出荷量の指数(2026/03 = 100・推定) | 価格出荷量 1 単位あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.05 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 0.07 | 5 | 0 |
取り方:部門売上 5.39 億円(2026/03 短信、前期比 12.9% 減)。利益は小さな赤字と見た推定。
リスクと懸念
価格競争
包装と印刷は同業が多く、顧客の食品・化粧品・物流の会社は毎年の値下げを求める。前期も同業との価格競争で販売の値段が下がり、営業利益は 25% 減った。
ペーパーレス
物流の伝票はデジタル化で細り、カタログやカレンダーの商業印刷も縮む。売上の約 4 割が、構造的に減る仕事の影響を受ける。
原料と人件費の上昇
紙とインキは円安と原料高で上がり、賃上げも続く。値上げが追いつかない年は、利益が大きく削られる。前期は修繕と IT 機器の更新の費用も重なった。
借入と設備投資
借入は 31 億円で現金を 17 億円上回る。設備投資は年 6 億円を超え、機械の更新の値段は物価で上がる。金利が上がれば利払いも増える。
利益率の山
2023〜2025 年の利益率 4% 台は、物流の特需と値上げが重なった山かもしれない。過去 12 年の大半は 1〜3% だった。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 4% 台に戻り、2 年続いたら
- 値上げが定着したとみて、やや楽観の確率を上げ、中立の利益率を見直す。
- ラベルとプリンターの部門の売上が 3 年続けて 3% 以上伸びたら
- 伝票の縮みを埋める柱が育ったとみて、中立の数量を引き上げる。
- 営業利益率が 2% を割ったら
- 価格競争に負ける姿が来たとみて、やや悲観の確率を上げる。
- 自社株買いを借入で続け、純負債が 25 億円を超えたら
- 財務の余裕が細るとみて、借金の目安で資本コストを上げるかを検討する。
- 同業との統合や買収を発表したら
- 払う値段と、統合後の価格の主導権を見て、中立を見直す。
見ておくもの
- 営業利益率(4% 台を保てるか)
- 包装資材・紙器と情報機器・サプライ品の部門売上
- 伝票の売上の縮み
- 紙とインキの値段と値上げの浸透
- 自社株買いと純負債
- 設備投資と償却の差
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k を下回るので PER の上限 1÷k = 11.8 倍の 75〜90% に置いた。今の PBR 0.8 倍・PER 10 倍前後は根拠にしていない。部門の利益は開示がないので配分の推定で、中立の全社の利益率 3.2% は過去 12 年の山 4.7% を下回る。純利益÷営業利益は借入の利払いの増えを入れて過去の中央値の近くに置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.11 倍・やや楽観 PER 10→11.11 倍・中立 PER 9→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k は基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。同じ領域に済んだ会社はない。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 9.00%。