結論
総合商研は、札幌を拠点に商業印刷と年賀状印刷を営む会社だ。売上は 160 億円で、うち年賀状が 3 割、商業印刷が 7 割を占める。東証スタンダードに上場している。
筆者の結論は、本質価値は今の時価総額を下回る、というものだ。年賀はがきの発行量は 16 年続けて減っており、2027 年用は前年より 25% 少ない。この会社の売上の 3 割は、毎年縮む市場の上にある。
経営は粘り強い。経常利益は 5 期続けて増え、今期も 4.5 億円を見込む。ただ営業利益は 3 億円台で、売上の 2% に満たない。配当は前期に減らし、財務の余裕も大きくない。
10 年後の中立では、売上は 140 億円ほどに減り、営業利益は 2 億円台に落ちる。資本の稼ぐ力は資本コストを下回る。
悪くない会社が、縮む市場の中で、値段に安全域のないまま売られている。
年賀状がどこで底を打つかを、見極めたい。そこまで待つ余裕が会社にあるかが、分かれ目だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は、縮む氷の上で、慎重に走る会社だ。経営は堅実で、赤字を出さない。ただ事業の売上の 3 割を占める年賀状は、毎年 2〜3 割縮んでいる。
利益は営業段階で 2% にも満たない。資本の稼ぎも、資本コストを下回る。保有株の配当が利益を支えているが、その株は資本の有効な使い方とは言いにくい。
10 年後も会社は存在するだろう。ただ今より強くなっているとは思えない。堀は地元の関係にとどまり、広がらない。
純有利子負債が時価総額の半分近くある。安全域を取れる値段ではない。同じ資金を、ほかの場所に置くほうがよい。
年賀状が下げ止まったという証拠が出れば、見方を改める。それまでは、値段を払う理由がない。
この会社の経営は誠実だが、誠実さは利益の増加を保証しない。安全域を取るなら、もっと安い値段を待つ。
何で稼ぐ会社か
事業は大きく 2 つに分かれる。1 つは商業印刷で、売上の 7 割。折込チラシ、カタログ、販促物、サイン製品を、小売チェーンや自治体から請け負う。北海道が地盤で、道内の流通大手が顧客の中心だ。最近はデザイン、Web 制作、イベント運営、BPO(業務の請負)まで広げ、販促をまとめて受ける形を狙っている。
利益率は印刷より請負のほうが高いが、規模はまだ小さい。
もう 1 つが年賀状印刷で、売上の 3 割。日本郵便と、ネットで年賀状を受ける会社が大口の取引先で、2 社で売上の 3 割近くを占める。年賀状は毎年 11 月から 12 月に集中するため、売上と利益が上半期に偏る。
年賀状は、受注から印刷、発送まで短い期間に集中する。繁忙期のために設備と人員を抱え、閑散期には稼働が落ちる。この固定費の重さが、利益率の低さの主因だ。
子会社には、オンデマンド印刷のプリントハウスと、食べ物の味を分析する味香り戦略研究所がある。
従業員は連結で約 390 人。上場株式を 89 銘柄、9 億円持つ。最大の銘柄は道内のスーパーのイオン北海道だ。
優良さと弱いところ
優良さは高くない。堀、つまり他社がまねできない強みは、地元の顧客との長い取引と、一貫して請け負う体制にある。ただ印刷は価格で比べられやすく、値決めの力は弱い。
資本の効率も低い。過去 10 年の ROE の中央値は 8% 台だが、営業利益率は 1% 台で、利益の一部は保有株の配当や補助金などの営業外の収益に支えられている。直近の営業利益は 3.2 億円、経常利益は 4.5 億円で、その差が大きい。
強みは、経営が慎重で、赤字を出す年が少ないことだ。粗利益率の改善と経費の抑制で、営業利益は 3 億円台を維持している。
借入は返済を進めてきたが、設備投資が償却を上回り、財務は大きく改善していない。弱みは、2 社の大口顧客への依存と、年賀状という構造的に縮む商品を持つことだ。
経営は、年賀状の縮小を前提に、収益性の改善と新しい請負の拡大を計画に書いている。これは正しい方向だが、縮む速度に追いつけるかは、これからの実績が決める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の印刷市場は長く縮んでいる。紙のチラシと年賀状が、真っ先に減る分野だ。年賀はがきの発行量は、2026 年用が 7.5 億枚で前年比 3 割減、2027 年用は 5.6 億枚でさらに 25.7% 減った。2025 年の郵便料金の値上げと、年賀状じまいが重なっている。
折込チラシも、小売が LINE やアプリの販促に移すにつれて、部数が減る。ただ北海道では、食品スーパーの紙のチラシがまだ根強いと筆者はみる。
生成 AI は、チラシのデザインや文章の制作を安くする。印刷そのものは置き換わらないが、制作と事務の請負は価格が下がる。
原価は用紙、インク、電力で、物価を上回って上がる年がある。売価に移せるかが利益率を決める。同業の凸版印刷や大日本印刷は、半導体材料などに軸足を移した。地方の小さな会社には、その選択肢が乏しい。
地域の小さな印刷会社は廃業も増え、生き残った会社に仕事が集まる面はある。ただ、売上の減少を取り戻すほどの追い風にはならない。
印刷機は 1 度入れると十数年使うため、需要が縮んでも設備の償却は続く。
資本政策と M&A
配当は業績に応じた安定配当が方針で、前期は年間配当を、その前の期の 3 分の 2 に減らした(配当性向は 2 割ほど)。設備投資は年 4.5 億円と、減価償却の 3.5 億円を上回る。借入で賄っており、純有利子負債は 13 億円と、時価総額の半分に近い。
上場株式を 89 銘柄、9 億円持つ。政策保有株の配当が営業外の利益を支えている。自社株買いは見当たらない。
M&A は、プリントハウスなど小さな買収が中心だ。TOB の可能性は、時価総額が小さく、保有株と土地があるため残るが、買う側の動機は見えない。
政策保有株を持つ会社は、株主還元を求める声が強まる環境にある。持ち合いの解消が進めば、売却益で借入を返せる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
経常利益は 5 期連続で増え、今期の計画も 4.5 億円と過去最高に並ぶ。粗利益率の改善と経費の抑制という、自分でできる手を打ち続けている。年賀状の縮小は織り込み済みで、会社は今期の計画を年賀の減少込みで出している。
北海道は、紙のチラシの需要がまだ残る。食品スーパーでは、折込の効果が下がりにくいという見方がある。会社は印刷にデザインと配送をつけた請負で、得意先に深く入り込んでいる。
年賀状は縮むが、写真入りやデジタル連動の商品で単価を上げられる。自治体の BPO や地域振興の請負は、人手不足の地方で需要が増える。
北海道の食品、観光、地域産品の販促の仕事も、印刷と一体で受けられる。
保有株 9 億円は、含み益を持つ資産でもある。時価総額の 4 割に当たる。
経営の堅実さも、数字に表れている。赤字の期は 2020 年 7 月期のコロナ期が最後だ。
年賀状の縮小に先回りして、固定費を落としてきた実績が、数字に出ている。
慎重な見方
年賀はがきの発行量は 16 年続けて減り、2027 年用は 25.7% 減った。会社の年賀状の売上は 5 割以上の落ち込みが続く可能性が高い。計画が横ばいなのは、前期に年賀以外で稼いだ分を前提にしているからで、構造は変わらない。
営業利益は売上の 2% に満たない。経常利益が増えているのは、保有株の配当などの営業外の収益のおかげで、本業ではない。第 4 四半期(5〜7 月)は毎年 3 億円の経常赤字で、利益は上半期に偏る。
閑散期の固定費が重いことの表れだ。
大口 2 社で売上の 3 割近くを占める。純有利子負債は 13 億円で、借り換えの金利は上がる。生成 AI は制作と事務の請負を置き換え、BPO の請負もやがて削られる。
印刷の設備は、需要の縮小に合わせた売却が難しく、固定費が利益を圧迫する。
資本の稼ぎが資本コストを下回る会社に、高い倍率を払う理由はない。
保有株は、営業外の収益を支えるが、事業の強さの証拠ではない。株価が下がれば、その分だけ利益も削られる。
どちらに重みを置いたか
年賀状の縮小は構造で、計画の横ばいはその先送りだ。慎重な側の言い分が強い。やや悲観と悲観の確率を合わせて 4 割弱に厚く置いた。強気の言い分のうち、経営の堅実さと保有株の価値は認めたが、利益が縮む流れを止める材料はまだない。結果として、本質価値は今の時価総額を下回る。
楽観側の確率は合わせて 25% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 1,144 円34 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 196 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 611 円18 億円、今との差 −23.9%、 期待の年率 +5.3%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,465 円74 億円 | 390 円12 億円 | +255.6% | +13.5% | 200 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,748 円52 億円 | 270 円8 億円 | +151.3% | +9.7% | 363 円11 億円 |
| 中立 | 38% | 1,323 円40 億円 | 202 円6 億円 | +90.0% | +6.6% | 580 円17 億円 |
| やや悲観 | 27% | 561 円17 億円 | 141 円4 億円 | −12.6% | −1.3% | 190 円6 億円 |
| 悲観 | 10% | 30 円1 億円 | 54 円2 億円 | −89.6% | −20.2% | 8 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,144 円34 億円 | 196 円6 億円 | +67.0% | +5.3% | 1,341 円40 億円 |
今の株価時価総額 803 円24 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 年賀状が底を打ち、販促の請負が広がる 利益 5 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 2,465 円74 億円
年賀状の市場は縮小が一巡し、国内の発行量は 3 億枚台で下げ止まる。若い世代が「出す人は出す」商品として年賀状を残し、会社は写真入りやデジタル連動の商品で単価を上げる。
商業印刷では、北海道の小売チェーンと自治体の販促を、印刷だけでなくデザインと配送までまとめて請け負う。得意先との関係が深まり、受注件数は今の 9 割台を保つ。
BPO や地域振興の請負も、赤字を出さずに積み上がる。営業利益は今の 1.7 倍の 5 億円台に乗る。それでも ROE は資本コストに届かない。
小さな印刷会社がここまで条件に恵まれるのは例外だ。
- 商業印刷・販促:数量 16,200(年間の受注件数(推定))× 価格 0.01(1 件あたりの売上(億円。用紙・人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 132 億円・営業利益 5 億円。年間の受注件数(推定) 16200、単価は今の 1.36 倍、営業利益率 3.5%
- 年賀状印刷:数量 3.5(国内の年賀はがき発行量(億枚。市場の数量))× 価格 8.75(市場 1 億枚あたりの会社売上(億円)=会社のシェア × 1 枚あたり売上。物価で上がる。)→ 売上 31 億円・営業利益 1 億円。国内の年賀はがき発行量(億枚) 3.5、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 4.0%
- BPO・Web・分析ほか:数量 66.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円。人件費に連動して上がる))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。年間の案件数(推定) 66、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.57 倍、時価総額 59 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:年賀状の減少が止まり、かつ自治体・企業の業務請負が広がる、という 2 つの好条件が同時にそろう筋書き。実績が乏しく、少数に置く。
やや楽観 18% 請負の拡大で、縮小を小幅にとどめる 利益 3 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 1,748 円52 億円
年賀状の発行量は 3 億枚で下げ止まる。商業印刷は、折込チラシの減少をデザインや Web の販促で埋め合わせ、受注件数は今の 8 割台に落ちるが、単価の引き上げで売上は微増する。
粗利益率の改善が続き、営業利益率は 2% 台後半に上がる。営業利益は 3 億円台の半ばになる。
年賀状の売上は 3 分の 2 に減るが、固定費の削減が追いつき、利益はなんとか保たれる。
配当は利益の 2 割台で続くが、設備の更新と新しい投資に使う現金が先に出ていく。
年賀状の縮小は続くが、速度は鈍る。
折込チラシの部数も、北海道の流通大手との取引で下げ止まる年が出る。会社は、単価の引き上げと請負の拡大を両立させる。
- 商業印刷・販促:数量 15,000(年間の受注件数(推定))× 価格 0.01(1 件あたりの売上(億円。用紙・人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 120 億円・営業利益 3 億円。年間の受注件数(推定) 15000、単価は今の 1.33 倍、営業利益率 2.8%
- 年賀状印刷:数量 3.0(国内の年賀はがき発行量(億枚。市場の数量))× 価格 8.62(市場 1 億枚あたりの会社売上(億円)=会社のシェア × 1 枚あたり売上。物価で上がる。)→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。国内の年賀はがき発行量(億枚) 3.0、単価は今の 1.32 倍、営業利益率 3.2%
- BPO・Web・分析ほか:数量 56.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円。人件費に連動して上がる))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。年間の案件数(推定) 56、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.2 倍。全体の PER 11.2 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:経営は商業印刷の収益性の改善と、請負型の新しい仕事の拡大を掲げている。5 期続けて経常利益が増えた実績があり、一定の確率を置く。
中立 38% 年賀状とチラシの縮小を、値上げで埋める 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,323 円40 億円
年賀はがきの発行量は、今の 5.6 億枚から 10 年後に 2.5 億枚まで減る。会社の年賀状の売上は半分以下になり、利益も薄くなる。印刷の設備と人員は急には減らせず、固定費が重い。
商業印刷は、チラシの部数が減る一方で、販促の企画や配送を足して売上を保つ。件数は今の 8 割に減り、単価が物価並みに上がって、名目の売上は横ばいに近い。
BPO や Web 制作は、生成 AI に置き換わる部分があり、件数は 7 割に縮む。営業利益は 2 億円台前半まで下がる。配当は 2 割台の性向で続く。
設備の更新費用が償却を上回り、借入の返済は進みにくい。
- 商業印刷・販促:数量 14,000(年間の受注件数(推定))× 価格 0.01(1 件あたりの売上(億円。用紙・人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 110 億円・営業利益 2 億円。年間の受注件数(推定) 14000、単価は今の 1.31 倍、営業利益率 2.2%
- 年賀状印刷:数量 2.5(国内の年賀はがき発行量(億枚。市場の数量))× 価格 8.49(市場 1 億枚あたりの会社売上(億円)=会社のシェア × 1 枚あたり売上。物価で上がる。)→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。国内の年賀はがき発行量(億枚) 2.5、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 2.5%
- BPO・Web・分析ほか:数量 46.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円。人件費に連動して上がる))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。年間の案件数(推定) 46、単価は今の 1.34 倍、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 27 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:年賀はがきは 16 年連続で減り、2027 年用はさらに 25% 減る。会社計画は今期ほぼ横ばいだが、年賀の落ち込みは続くとみて、利益はゆるやかに縮む筋書きを最も厚く置く。
やや悲観 27% 年賀状の急減とチラシの縮小が重なる 利益 1 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 561 円17 億円
年賀はがきの発行量が 1.8 億枚まで減り、年賀状の売上は 3 分の 1 になる。商業印刷では折込チラシの部数が減り、受注件数は今の 6 割台まで下がる。
用紙とインクの値上がりを売価に移すのが難しくなり、印刷の営業利益率は 1% 台前半に下がる。利益は営業段階でほぼ消え、保有する株式の配当と受取利息に頼る形になる。
配当は 1 割台に縮み、設備の更新も絞られる。
借り換えの金利が 3.5% 前後に上がると、純有利子負債 13 億円の利払いが利益を削る。年賀状の設備は稼働が落ち、固定費が利益を直撃する。
- 商業印刷・販促:数量 12,200(年間の受注件数(推定))× 価格 0.01(1 件あたりの売上(億円。用紙・人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 93 億円・営業利益 1 億円。年間の受注件数(推定) 12200、単価は今の 1.27 倍、営業利益率 1.3%
- 年賀状印刷:数量 1.8(国内の年賀はがき発行量(億枚。市場の数量))× 価格 8.17(市場 1 億枚あたりの会社売上(億円)=会社のシェア × 1 枚あたり売上。物価で上がる。)→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。国内の年賀はがき発行量(億枚) 1.8、単価は今の 1.25 倍、営業利益率 1.5%
- BPO・Web・分析ほか:数量 36.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円。人件費に連動して上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。年間の案件数(推定) 36、単価は今の 1.30 倍、営業利益率 5.0%
倍率:ROE 2.3% が k 9% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=10.8 倍。純有利子負債 13 億円を足した EV ÷ 営業利益は 33 倍と高く、利益の倍率だけで割安とは言えない。利益が薄く、上限の 7.0 割の 7.6 倍に置いた。
確率:年賀の縮小が予想より速く、折込チラシも小売の電子化で減る。固定費が重く、売上の落ち込みが利益に増幅される。確率を厚めに置く。
悲観 10% 需要の消失で、構造的に採算が崩れる 利益 0 億円 · PER 7.6 倍 · 株価時価総額 30 円1 億円
年賀はがきが 1 億枚まで減り、年賀状事業が成り立たなくなる。折込チラシも小売の電子化で細り、受注件数は今の 5 割台に落ちる。
工場と人員の整理が間に合わず、営業利益は赤字に沈む。
年賀状事業の稼働率が 3 割を割り、工場の維持費だけが残る。折込チラシの値下げ競争も激しくなる。生成 AI が制作と事務を置き換え、BPO の請負も縮む。
自治体の事務請負も、AI が安く引き受ける会社に移る。
手元の株式を売って損失を埋めるが、借入の返済が先に立ち、株主への配当は出ない年が続く。
工場は統合され、年賀状は撤退に近い縮小になる。残るのは地元の販促の請負と、保有株の配当だけになる。
- 商業印刷・販促:数量 9,500(年間の受注件数(推定))× 価格 0.01(1 件あたりの売上(億円。用紙・人件費の上昇で物価並みに上がる))→ 売上 68 億円・営業利益 0 億円。年間の受注件数(推定) 9500、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 0.0%
- 年賀状印刷:数量 1.0(国内の年賀はがき発行量(億枚。市場の数量))× 価格 7.51(市場 1 億枚あたりの会社売上(億円)=会社のシェア × 1 枚あたり売上。物価で上がる。)→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。国内の年賀はがき発行量(億枚) 1.0、単価は今の 1.15 倍、営業利益率 -2.0%
- BPO・Web・分析ほか:数量 26.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.06(1 案件あたりの売上(億円。人件費に連動して上がる))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。年間の案件数(推定) 26、単価は今の 1.20 倍、営業利益率 2.0%
倍率:ROE 0.3% が k 9% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER は 1÷k=10.8 倍。優位を失った後は、市場の稼ぎでなく稼ぐ力(純利益÷k)で測り、上限の 7.0 割の 7.6 倍に置いた。
確率:年賀状とチラシが同時に細り、AI が制作と業務の請負も置き換える複合の筋書き。固定費の重い小さな印刷会社には現実に起こりうる形で、確率を 1 割に置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
商業印刷・販促
折込チラシ、カタログ、販促物、サイン製品の印刷と、デザイン・Web・イベントなどの販促の請負。
| 数量年間の受注件数(推定) | 価格1 件あたりの売上(億円。用紙・人件費の上昇で物価並みに上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 18,000 | 0.01 | 108 | 2 |
| 10 年後 中立 | 14,000 | 0.01 | 110 | 2 |
取り方:2025/07 期の事業別売上(商業印刷 10,853 百万円、年賀状 5,035 百万円、その他 348 百万円)をもとに、2026/07 期の売上 160.3 億円を、商業印刷 108 億円・年賀状 49 億円・その他 3.3 億円と推定した(事業別の開示は 2025/07 期まで)。受注件数は開示されないので、1 件あたり約 60 万円と推定して 1.8 万件とした。営業利益は単一セグメントのため非開示で、3.15 億円を事業ごとに推定して割り振った(推定)。
年賀状印刷
年賀状の印刷と、ネット注文の受託。日本郵便とネット印刷会社が大口取引先。
| 数量国内の年賀はがき発行量(億枚。市場の数量) | 価格市場 1 億枚あたりの会社売上(億円)=会社のシェア × 1 枚あたり売上。物価で上がる。 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 7.5 | 6.53 | 49 | 2 |
| 10 年後 中立 | 2.5 | 8.49 | 21 | 1 |
取り方:2026 年用の年賀はがきの発行量 7.5 億枚(日本郵便。前年比 30.1% 減)を数量とし、会社の年賀状売上 49 億円を割った 1 億枚あたり約 6.5 億円を価格とした。これは会社のシェアと 1 枚あたりの売上の積で、シェアは数量の側(市場)に入らない前提で、売上の規模から逆算した推定。2027 年用は 5.56 億枚(25.7% 減)。営業利益は推定。
BPO・Web・分析ほか
自治体・企業の業務請負(BPO)、Web 制作、味香り戦略研究所の食味分析など。
| 数量年間の案件数(推定) | 価格1 案件あたりの売上(億円。人件費に連動して上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 66.0 | 0.05 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 0.07 | 3 | 0 |
取り方:その他の売上 3.3 億円を、1 案件約 500 万円と推定して 66 件とした(推定)。人月で売る請負の型で、生成 AI(AI エージェント)による代替を数量に入れた(PROMPT_AI_RISK の人月型:中立で 10 年 0.55〜0.75 倍の範囲の 0.70 倍)。
リスクと懸念
年賀状の構造的な縮小
年賀はがきの発行量は 16 年連続で減り、2027 年用は前年比 25.7% 減の 5.6 億枚。年賀状の売上は会社の 3 割を占め、毎年 2〜3 割の縮小が続けば、利益の大半が失われる。設備と人員を同じ速さで縮められるかが問われる。
折込チラシの電子化
小売が LINE やアプリの販促に移るにつれ、紙のチラシの部数は減る。北海道では減り方が緩やかかもしれないが、方向は変わらない。流通大手の方針変更で受注が大きく動く。
大口顧客への依存
日本郵便とネット年賀の会社の 2 社で売上の 3 割近くを占める。どちらかが発注を減らすと、年賀状事業の稼働率と利益が直撃を受ける。
AI エージェントによる代替
デザイン、Web 制作、事務の請負は、生成 AI と AI エージェントが置き換えやすい。BPO の人月型の売上は、数量と価格の両面で圧力を受ける。印刷そのものは残るが、制作の付加価値は薄れる。
営業外の利益への依存
営業利益は 3 億円台で、経常利益 4.5 億円との差を保有株の配当などの営業外収益が埋める。保有株の配当が減ると、利益の質は下がる。株価が下がれば含み損も出る。
原価と季節変動
用紙、インク、電力が物価を上回って上がる年がある。売上と利益は年賀・年末商戦のある上半期に偏り、第 4 四半期は毎年赤字になる。純有利子負債は 13 億円で、借り換え金利の上昇も利益を削る。
今後の分かれ目
- 年賀はがきの発行量の減り方が 1 割台に収まったら
- 縮小が一巡する合図で、やや楽観の確率を厚くしてよい。ただし年賀状の売上はすでに減った水準で見る。
- 営業利益率が 2 期続けて 3% を超えたら
- 収益性の改善が構造に近づいた合図になる。中立の営業利益率を上げる材料だ。
- 日本郵便か年賀の大口顧客が発注を減らしたら
- 年賀状事業の稼働率が落ち、利益が大きく削られる。悲観の筋書きに近づく。
- 保有株の配当が減ったり、売却を進めたりしたら
- 営業外の利益が減り、利益の質が下がる。売却で借入を返済するなら、財務は改善する。
- 第三者が TOB を発表したら
- 保有株と土地、小さな時価総額が動機になりうる。買付価格を本質価値の前後で比べるだけで、筋書きの前提は変わらない。
見ておくもの
- 日本郵便が発表する年賀はがきの発行枚数
- 商業印刷の受注件数と粗利益率
- 営業利益と経常利益の差(営業外の利益の大きさ)
- 純有利子負債と、借り換えの金利
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や同業の倍率を見ず、ROE が資本コストに届かない会社の上限(1÷k)の何割かで置いた。中立の営業利益は今期より縮める筋書きで、年賀はがきの発行量の減りと、制作・請負の AI 代替を数量に入れた。純利益÷営業利益は過去の中央値 1.0 に近い。減価償却は年 3.5 億円で取得時の値段のまま、更新の投資は建築費・機械の上昇で膨らむので償却を超える分は借入か還元の減少で賄う。リースは今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.73→12.57 倍・やや楽観 PER 9.19→11.2 倍・中立 PER 8.65→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。