結論
MTG は、美容ローラー「ReFa」で名を上げ、いまはヘアドライヤーやヘアアイロン、シャンプーまで広げた美容ブランドの会社だ。売上の 7 割超を ReFa が占める。筆者の結論は、稼ぐ力は本物だが、今の株価は ReFa の勢いが 10 年続くことまで織り込んでおり、割高だというものだ。
直近の伸びは目を見張る。2025 年 9 月期の売上は 988 億円と 37.5% 増え、営業利益は 3 倍超の約 107 億円になった。ドラッグストアや量販店に売場を広げ、ヘアケア商品が日用品の買い物に入り込んだことが効いた。2026 年 9 月期の計画も 3 度引き上げられ、売上 1,420 億円、営業利益 160 億円になっている。
気になるのは持続性だ。この会社は 2019 年 9 月期に、販売の急減と不適切会計が重なって 262 億円の赤字を出した。いまの ReFa は当時より日用品に近く強いが、1 つのブランドへの依存は変わらない。国内の美肌・美髪ケア家電の市場は年 1,700 億円規模で、ここから先の伸びは、新しい品目と海外に頼ることになる。
中立の筋書きでは、10 年後の売上は今の 2 倍、営業利益率は 12〜13% にとどまる。楽観の筋書きで、ようやく今の時価総額に届く。今の値段が正しくなるのは、ReFa が世界の美容ブランドになる場合だけだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資家が最初に問うのは、10 年後もこの事業が今より強いかどうかだ。MTG ではその答えが割れる。ReFa が毎日使う習慣に入れば強い。だが、年 300 点の新商品を出し続けなければ売上を保てない事業は、堀が広いとは言いにくい。
株主が自由に使える利益は、見た目の純利益より小さい。売上の約半分が販管費で、大半は宣伝と人件費だ。売上が伸びる間は利益が増えるが、横ばいになれば宣伝費だけが残る。再投資を止めれば勢いを失う、手のかかる事業だ。
経営者の評価には、プラスとマイナスがある。創業者が 30 年近く率い、ReFa を一代で日用品の領域まで育てた腕は本物だ。一方で、2019 年には不適切会計と大赤字を出した経営でもある。いまの高収益が、その反省で作った仕組みの成果か、追い風の産物か、筆者はまだ決めきれない。
安全域は無い。今の時価総額は、2026 年 9 月期の会社予想の純利益の約 30 倍だ。この値段に見合うには、10 年先の利益が今期予想の 4 倍半を超える必要があり、楽観の筋書きでようやく届く。持ち続けたい会社ではあるが、払う値段が高すぎる。
何で稼ぐ会社か
MTG の稼ぎは、3 つのブランドと 3 つの売り場でできている。
ブランドの中心は ReFa だ。美容ローラーで知られ、ヘアドライヤー、ヘアアイロン、ブラシ、シャンプー・トリートメントまで広げた。2025 年 9 月期の売上は 728 億円で、全体の 7 割超を占める。2 番手は筋肉トレーニング機器の SIXPAD で 142 億円。2025 年 7 月に始めたリカバリーウェアの RED が追う。
売り場は、自社の通販・EC で売るダイレクトマーケティング、美容室・エステ・ホテルに卸すプロフェッショナル、百貨店・免税店・ドラッグストアなど店頭で売るリテールストアの 3 つに分かれる。2026 年 9 月期の 4〜6 月までの 9 か月で、いちばん伸びたのはリテールで、前年同期比 8 割増だった。ヘアケア商品がドラッグストアに入ったことが大きい。利益の稼ぎ頭は通販で、売上の 4 割弱から 100 億円超のセグメント利益を出している。
もうひとつの特徴は、宣伝と新商品に大きく投じる点だ。報じられた粗利率は 65% 前後と高いが、広告・販促・人件費で販管費が売上の約半分に達する。新商品は年 300 点近くを出し、新商品の売上比率を 6 割に保つ計画だ。売上が伸びる間は利益が急に増えるが、勢いが止まれば固定費が重くのしかかる。
海外の売上は 5% に届かない(統合報告書の要約)。かつて中国・韓国で失敗した経緯があり、いまは地域と手法を慎重に選ぶ方針だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、技術よりも、ブランドと売り場の組み合わせにある。ReFa は美容ローラーの人気を足がかりに、日用品の領域へ出た。ヘアアイロンでは、国内メーカー別シェアの首位だと会社が発表している。契約サロンは数万店あり、プロが使う道具という信用が、店頭での価格を支える。
弱みは 3 つある。1 つ目は依存だ。ReFa が 7 割超で、ブランドが傷めば会社全体が傾く。2 つ目は、流行に左右される商品の性格だ。2019 年 9 月期の赤字は、中国・韓国の販売急減、在庫の評価損、中国子会社の不適切会計が重なって起きた。3 つ目は競合の幅だ。パナソニックなどの家電大手、サロン専売のブランド、低価格の模倣品が並ぶ。
資本効率は今が山だ。2025 年 9 月期の ROE は 16% 近いが、過去 10 年の中央値は 7% 弱にとどまる。営業利益率も 2022 年から 2024 年は 5〜7% だった。利益率が 10% を超えたのは、売上が急増して広告費の効きが良くなった期だ。筆者は、この高い利益率が定着するかどうかを、評価の最大の分かれ目とみている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本は人口が減る国だが、この分野は伸びている。富士経済によると、美肌・美髪ケア家電の国内市場は 2025 年に 1,736 億円。2026 年は 8% 増の 1,882 億円の見込みで、ヘアアイロンは 2 割近く伸びる。伸びの中身は、台数の増加よりも、高価格帯への買い替えだ。物価が上がる中でも、高機能の機器にお金を払う人が増えている。
ただし、この伸びには限りがある。美容家電は買い替えの間隔が長く、行き渡れば数量は人口と買い替えの周期で決まる。ヘアケア用品は競争の質も違う。大手の日用品メーカーが次々に新商品を出す分野で、機器のブランド力が効く範囲は限られる。
足元の追い風は売場の拡大だ。ReFa のドラッグストア展開は 2024 年 4 月の 221 店から始まり、数千店を視野に入れる。2026 年は、4 月にトリートメントアイロン、8 月にオーラルケア 5 品と、機器の周辺へ品目を増やした。車の中(レクサス)や住宅の水回りへの展開も打ち出している。
海外は別の世界だ。同業のヤーマンも海外を柱に据え、2028 年 12 月期に売上 500 億円を目指す。中国は訪日客が 2026 年 1 月に前年比 6 割減るなど政治の影響を受けやすく、ブランドの根を張りにくい。欧米は認知がこれからだ。国内の成熟と海外の遅れの間で、品目の広がりがどこまで続くかが、この業界での MTG の勝負になる。
資本政策と M&A
資本の使い方は、守りから攻めへ移ったところだ。2019 年の赤字で一度は財務が傷んだが、いまは純現金があり、自己資本比率は 68% と堅い。配当性向は 2025 年 9 月期で 12% 弱と低く、2026 年 9 月期は増配の計画だが、それでも 1 割台にとどまる。自社株買いは 2024 年 11 月に市場外で行った例があるが、規模は小さい。利益の多くは宣伝・新商品・売場づくりに回っている。
支配株主は創業者の松下剛社長で、本人が約 28%、関係する法人を合わせた共同保有で約 6 割を持つ。社長は 1996 年から経営を率いる。取締役 7 人のうち社外は 3 人で、市場区分は東証グロースだ。オーナー企業の利点は、短期の株価に左右されず投資を続けられること。欠点は、1 人の判断への依存と、少数株主への還元が後回しになりやすいことだ。
M&A は前面に出ていない。支配株主が約 6 割を持つので、第三者による買収は起きにくい。起きるなら、創業者による非上場化のような形が現実的だ。筆者は、それよりも、積み上がる利益を何に使うかを見る。宣伝に回し続けるのか、株主に返すのか。その選択が、10 年後の ROE を決める。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ReFa は、美容ローラーの時代とは別のブランドになった。ヘアドライヤー、ヘアアイロン、ブラシ、シャンプーと毎日触れる商品が並び、ヘアアイロンでは国内シェア首位に立った。プロの美容室 5 万店前後の取引基盤が、使う人の信用を支える。売場はドラッグストアから量販店へ広げる余地が大きく、新商品の売上比率 6 割という仕組みで商品が入れ替わる。
収益力も一段上がった。2025 年 9 月期は営業利益が 3 倍に増え、2026 年 9 月期は 3 度の上方修正で営業利益 160 億円に届く。粗利率は 65% 前後で、宣伝に回す余裕がある。同じ構造で、SIXPAD とリカバリーウェアの RED が 2 本目・3 本目の柱になれば、ReFa への依存は下がっていく。
世界は、日本発の美容技術を求めている。いまは 5% に満たない海外売上が、欧米とアジアの高価格帯で根づけば、桁が 1 つ上がる余地がある。レクサスの車内、オーラルケア、住宅の水回りと、ファインバブル技術を軸にした新分野も控える。社長は 2046 年に 10 兆円という目標を掲げ、年 24% の成長を前提にしている。その半分でも続けば、今の株価は妥当どころか安い。
慎重な見方
今の収益は、追い風が重なった結果だ。国内の美肌・美髪ケア家電は年 1,700 億円規模で、ReFa 1 ブランドの売上はその市場に比べてすでに大きい。機器の買い替えは数年に 1 度で、伸びを支えているのは売場の拡大とギフト需要だ。ドラッグストアの棚を取り終えたあとは、棚を守るための値引きと販促が要る。
利益率の高さも、売上が急増した期の効果が大きい。2026 年 4〜6 月の営業利益率は前年の 8.4% から 7.4% へ下がり、成長投資と販促で利益の質は落ち始めた。下期の粗利率は 64% に下がる想定だと伝えられている。
2019 年を忘れてはいけない。ReFa の失速、中国・韓国の不振、在庫の評価損、不適切会計が重なり、売上は 4 割近く減り、赤字は 262 億円に達した。いまの ReFa は国内中心で当時より堅いが、7 割超が 1 ブランドという構造は同じだ。
競争も強まる。パナソニックなど家電大手、低価格の模倣品、サロン専売のブランドが三方から迫る。中国の訪日客が 6 割減るなど、需要は政治にも左右される。創業者が約 6 割を持つオーナー経営は、判断が速い反面、失敗したときの歯止めが弱い。
どちらに重みを置いたか
勝つのは慎重な見方だ。強気の見方が語る内容は事実だが、今の株価は、その事実が 10 年続き、さらに海外でも成功することまで織り込んでいる。成長の源は、売場の拡大という一度きりの要因が大きく、ブームが崩れた前例もある。そのため確率は、中立とやや悲観・悲観に厚く置いた。ただし、楽観とやや楽観を合わせて 35% は残した。ブランドが日用品の領域に根を張る可能性は、無視していない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 9,084 円3,575 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,055 円415 億円)。 今の値に割り戻すと 4,925 円1,938 億円、今との差 −37.8%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 21,438 円8,437 億円 | 2,081 円819 億円 | +197.0% | +11.5% | 2,822 円1,111 億円 |
| やや楽観 | 23% | 12,337 円4,856 億円 | 1,339 円527 億円 | +72.7% | +5.6% | 3,146 円1,238 億円 |
| 中立 | 38% | 8,633 円3,398 億円 | 1,019 円401 億円 | +21.9% | +2.0% | 3,668 円1,443 億円 |
| やや悲観 | 17% | 2,010 円791 億円 | 503 円198 億円 | −68.3% | −10.8% | 427 円168 億円 |
| 悲観 | 10% | 518 円204 億円 | 241 円95 億円 | −90.4% | −20.9% | 76 円30 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,084 円3,575 億円 | 1,055 円415 億円 | +28.0% | +2.5% | 10,139 円3,990 億円 |
今の株価時価総額 7,920 円3,117 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% ReFa が世界の美容ブランドになる 利益 467 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 21,438 円8,437 億円
ReFa が日本発の美容ブランドとして、海外でも日用品の位置を取る 10 年になる。ヘアケア機器が欧米とアジアのサロンと家庭に入り、海外の売上は今の 30 倍を超える。国内でもドラッグストアと量販店に根づき、オーラルケアや住宅の水回りなど周辺の品目が柱に育つ。SIXPAD と RED は、回復と健康維持の需要を取り込んで第 2 の柱になる。
新商品の入れ替えと宣伝が効き続け、営業利益率は 15% 近くまで上がる。中国・韓国で失敗した経験を生かし、現地の販売会社と組んで広げるので、2019 年のような急な反動は起きない。10 年後の売上は 4,300 億円、営業利益は 630 億円。社長が掲げる年 24% 成長には届かないが、年 15% 近い成長を 10 年続ける、会社にとって最良の姿だ。
- ReFa(国内):数量 1,320(国内の美髪・美肌ケアの対象市場(億円・今の値段の実質)× ReFa のシェア)× 価格 140.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立。高付加価値化で上がる分を含む))→ 売上 1,848 億円・営業利益 370 億円。国内の対象市場 5,500 億円(実質)× シェア 24%、値段は 1.40 倍(高付加価値化で物価を上回る)、営業利益率 20%
- SIXPAD・RED ほか:数量 720(国内の健康・回復用品の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 965 億円・営業利益 145 億円。対象市場 9,000 億円 × シェア 8%、営業利益率 15%
- 海外:数量 1,100(海外の対象市場(美容家電・ヘアケアの中高価格帯、億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 1,474 億円・営業利益 206 億円。対象市場 2 兆円 × シェア 5.5%、営業利益率 14%
倍率:事業の純利益 467 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍。全体の PER 17.93 倍、時価総額 8,373 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界の美容ブランドになる道は、海外で一度つまずいた会社にとって細い。ただ、国内での実績と、オーラルケアや住宅の水回りなど新分野の広がりを考え、1 割台は残した。
やや楽観 23% 国内で日用品として定着し、海外は一部で根づく 利益 272 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 12,337 円4,856 億円
ReFa は国内で日用品として定着し、海外は一部の地域で根づく。ヘアアイロンとドライヤーの首位は保ち、ドラッグストアと量販店の棚は広がる。シャンプーやオーラルケアは、機器ほどの高い利益は出ないが、売上の厚みを足す。SIXPAD と RED は着実に伸びて、売上の 4 分の 1 を占める。
海外は、韓国・台湾・東南アジアなど、日本のブランドが受け入れられやすい地域で黒字になる。営業利益率は 13% 前後で、会社が掲げる 15% には届かない。10 年後の売上は 2,800 億円、営業利益は 370 億円。強いブランドを持つ消費財メーカーとして、順当に成長する筋書きだ。
- ReFa(国内):数量 1,130(国内の美髪・美肌ケアの対象市場(億円・今の値段の実質)× ReFa のシェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立。高付加価値化で上がる分を含む))→ 売上 1,514 億円・営業利益 288 億円。国内の対象市場 5,200 億円 × シェア 21.7%、値段は物価並みの 1.34 倍、営業利益率 19%
- SIXPAD・RED ほか:数量 520(国内の健康・回復用品の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 697 億円・営業利益 94 億円。対象市場 8,500 億円 × シェア 6.1%、営業利益率 13.5%
- 海外:数量 420(海外の対象市場(美容家電・ヘアケアの中高価格帯、億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 563 億円・営業利益 51 億円。対象市場 2 兆円 × シェア 2.1%、営業利益率 9%
倍率:事業の純利益 272 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.36 倍、時価総額 4,722 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内での定着と、一部の海外での黒字化は、今の勢いからの順当な延長で、強気の見方の中心にある姿。
中立 38% 売場拡大が一巡し、ふつうに強い消費財メーカーに落ち着く 利益 188 億円 · PER 17.0 倍 · 株価時価総額 8,633 円3,398 億円
ReFa は国内で日用品として根を張るが、売場がほぼ埋まったあと、成長は鈍る。2028 年ごろまでは、新商品とドラッグストアの拡大で売上が伸びる。そのあとは、国内市場の実質の伸び(年 2% 弱)と物価の分に近づく。10 年後の ReFa の国内売上は、名目で今の 1.9 倍。海外は小さな黒字にとどまり、SIXPAD と RED は市場並みに伸びる。
営業利益率は 12〜13%。粗利は 6 割台を保つが、売場を守る販促と、年 300 点の新商品の費用で販管費が重く、会社が目指す 15% には届かない。2019 年のような崩れ方はしないが、2025〜2026 年のような急成長も続かない。10 年後の売上は 2,000 億円、営業利益は 250 億円。
- ReFa(国内):数量 984(国内の美髪・美肌ケアの対象市場(億円・今の値段の実質)× ReFa のシェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立。高付加価値化で上がる分を含む))→ 売上 1,319 億円・営業利益 237 億円。国内の対象市場 4,800 億円(実質、年 1.8% 増)× シェア 20.5%、値段は物価並みの 1.34 倍、営業利益率 18%
- SIXPAD・RED ほか:数量 390(国内の健康・回復用品の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 523 億円・営業利益 63 億円。対象市場 7,800 億円 × シェア 5.0%、営業利益率 12%
- 海外:数量 130(海外の対象市場(美容家電・ヘアケアの中高価格帯、億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 174 億円・営業利益 9 億円。対象市場 2 兆円 × シェア 0.65%、営業利益率 5%
倍率:事業の純利益 188 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 17.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.0 倍。全体の PER 17.04 倍、時価総額 3,204 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:強気と慎重の議論の落としどころ。売場の拡大が一巡したあと、ふつうに強い消費財メーカーになる姿。
やや悲観 17% ReFa の勢いが一巡し、優良さを失う 利益 53 億円 · PER 12.0 倍 · 株価時価総額 2,010 円791 億円
ReFa の勢いが一巡する。ヘアアイロンとドライヤーは買い替えが一巡し、国内の機器は台数が頭打ちになる。ドラッグストアの棚は取ったが、そこで売り続けるには値引きと販促が要り、価格は物価に追いつかない。シェアは今の 17% から 14% へ下がる。SIXPAD と RED も流行の波に合って、売上は横ばいに近い。
海外は黒字にならず、縮小の損を出す。宣伝費は売上に合わせて減らしにくく、営業利益率は 6% に落ちる。2022〜2024 年の水準に近い。10 年後の売上は 1,200 億円、営業利益は 70 億円。ブランドは残るが、稼ぐ力の優良さは失った会社として値付けされる。
- ReFa(国内):数量 620(国内の美髪・美肌ケアの対象市場(億円・今の値段の実質)× ReFa のシェア)× 価格 130.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立。高付加価値化で上がる分を含む))→ 売上 806 億円・営業利益 97 億円。国内の対象市場 4,300 億円 × シェア 14.4%、値段は 1.30 倍(物価に追いつかない)、営業利益率 12%
- SIXPAD・RED ほか:数量 230(国内の健康・回復用品の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 308 億円・営業利益 22 億円。対象市場 6,500 億円 × シェア 3.5%、営業利益率 7%
- 海外:数量 60.0(海外の対象市場(美容家電・ヘアケアの中高価格帯、億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 80 億円・営業利益 −2 億円。対象市場 2 兆円 × シェア 0.3%、営業利益率 −3%
倍率:事業の ROE 5.4% が k 8% 以下なので、PER は 1÷k=11.4 倍まで(ためた利益は額面未満の価値)。ブランドが傷んだあとの稼ぐ力に、上限に近い 12.03 倍を当てた。
確率:ブームの一巡は、2019 年の前例と、機器の買い替え間隔の長さが根拠。慎重な見方の中心にある姿。
悲観 10% 一過性のブームだったと確認される 利益 −16 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 518 円204 億円
ReFa が一過性のブームだったと確認される 10 年になる。2019 年のように、売れ行きの急減、在庫の評価損、海外の損失が重なる。国内ではドラッグストアの棚から外れ、低価格の模倣品とパナソニックなどの家電大手に挟まれて、シェアが半分近くまで下がる。値段も、販促と値引きで物価に追いつかず、今の 1.25 倍にとどまる。
SIXPAD と RED も反動を受け、海外は全面的に縮小する。宣伝・店舗・人件費は急に減らせず、10 年後の営業利益は赤字に沈む。売上は 700 億円と今の 7 割。構造的に負けて、もう優良ではなくなった会社の姿だ。創業者が約 6 割を持つので立て直しは早いが、還元は、ブームが残る最初の数年の利益と、在庫・店舗の売却で得た資金から払う程度にとどまる。
- ReFa(国内):数量 380(国内の美髪・美肌ケアの対象市場(億円・今の値段の実質)× ReFa のシェア)× 価格 125.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立。高付加価値化で上がる分を含む))→ 売上 475 億円・営業利益 19 億円。国内の対象市場 4,000 億円 × シェア 9.5%、値段は 1.25 倍、営業利益率 4%
- SIXPAD・RED ほか:数量 150(国内の健康・回復用品の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 130.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 195 億円・営業利益 0 億円。対象市場 6,000 億円 × シェア 2.5%、営業利益率 0%
- 海外:数量 30.0(海外の対象市場(美容家電・ヘアケアの中高価格帯、億円・今の値段の実質)× シェア)× 価格 134.0%(値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立))→ 売上 40 億円・営業利益 −6 億円。対象市場 2 兆円 × シェア 0.15%、営業利益率 −15%
倍率:この筋書きは稼ぐ力が消えて純損失になる。床は稼ぐ力ではなく、純現金と売れる資産の税後。今の自己資本 510 億円に 0.4 倍を掛けた。在庫・店舗・ブランド投資の損が出たあとの換金価値を、簿価の 4 割ほどと見た。
確率:2019 年型の反動がもう一度起きる筋書き。今は当時より国内に軸足があるので、1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ReFa(国内)
美容ローラー、ヘアドライヤー・ヘアアイロン、ヘアケア用品など。通販・サロン・店頭の全チャネルと訪日客の買い分を含む国内の売上。
| 数量国内の美髪・美肌ケアの対象市場(億円・今の値段の実質)× ReFa のシェア | 価格値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立。高付加価値化で上がる分を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 683 | 100.0% | 683 | 116 |
| 10 年後 中立 | 984 | 134.0% | 1,319 | 237 |
取り方:ReFa の 2025/09 期売上 728 億円から、海外分(国内比率 95% 超から逆算した上限の約 45 億円)を引いて 683 億円。数量は対象市場約 4,000 億円 × シェア約 17%。対象市場は富士経済の美肌・美髪ケア家電(2025 年 1,736 億円)に、ヘアケア用品・ブラシ・訪日客の買い分を足した推定で、開示値ではない。営業利益は全社費用を配賦したあとの推定(会社のセグメント利益は本社費の前なので全体より大きい)。
SIXPAD・RED ほか
筋肉トレーニング機器 SIXPAD、リカバリーウェア RED、姿勢ケアなど ReFa 以外のブランド。
| 数量国内の健康・回復用品の対象市場(億円・今の値段の実質)× シェア | 価格値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 260 | 100.0% | 260 | 29 |
| 10 年後 中立 | 390 | 134.0% | 523 | 63 |
取り方:SIXPAD 142 億円と、その他ブランド約 118 億円(全体 988 億円からの引き算で、RED・Style などを含む)の合計。数量は対象市場約 6,500 億円 × シェア約 4%。対象市場は国内の EMS 機器・姿勢ケア・リカバリーウェア・フットケアなどの推定で、公的な集計は確認できなかった。営業利益率は 11% と推定。 先の数量は国内市場の実質の伸び(年2%弱)とシェアの上昇で、名目の市場の伸びではない。
海外
ReFa を中心とする海外の売上。中国・韓国が中心で、赤字が続く。
| 数量海外の対象市場(美容家電・ヘアケアの中高価格帯、億円・今の値段の実質)× シェア | 価格値段の指数(2025/09 期=1.00。物価 3% で 10 年 1.34 倍が中立) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 45.0 | 100.0% | 45 | −5 |
| 10 年後 中立 | 130 | 134.0% | 174 | 9 |
取り方:国内売上比率 95% 超(統合報告書の要約)から、海外を 5% 弱の約 45 億円とみた推定。数量は対象市場約 2 兆円 × シェア約 0.2%(市場の大きさは推定)。営業利益は、会社のその他・グローバル区分が赤字を続けていることから、売上比 −11% と推定した。 先の数量の伸びは、小さな土台からのシェア上昇(0.2%→0.65%)によるもので、名目の市場の伸びではない。
リスクと懸念
ReFa 1 ブランドへの依存
売上の 7 割超が ReFa で、利益はさらに偏る。ブランドの評判が傷つけば、ほかのブランドでは穴を埋められない。SIXPAD と RED はまだ育成の途中で、柱と呼ぶには小さい。
流行の反動
2019 年 9 月期は、販売の急減、在庫の評価損、不適切会計が重なり、売上が 4 割近く減って 262 億円の赤字になった。今は当時より日用品に近いが、新商品を出し続けなければ売れない性格は残る。
売場の拡大が止まる
ドラッグストアと量販店への展開が成長の主役だ。棚を取り終えれば、そのあとは棚を守る値引きと販促が要る。売場の数は 1 度しか増やせない。
競争と模倣品
パナソニックなどの家電大手、サロン専売ブランド、低価格の模倣品が並ぶ。ヘアアイロンでは首位だが、機器の機能は追いつかれやすい。値段を保つのは、ブランドと売場の力だけだ。
中国・訪日客と海外の不確かさ
中国からの訪日客は 2026 年 1 月に前年比 6 割減った。ReFa 全体のインバウンド比率は 5% 未満だが、旗艦店では 6 割を超える。海外の自前展開は過去に失敗しており、再挑戦の成否は読みにくい。
創業者への依存とガバナンス
創業者の社長と関係する法人が共同保有で約 6 割を持つ。判断は速いが、失敗したときの歯止めが弱く、少数株主への還元は後回しになりやすい。取締役 7 人のうち社外は 3 人。
今後の分かれ目
- 粗利率が 64% を割り込み、その状態が続いたら
- 売場を守る値引きが始まったサインだ。中立の営業利益率を下げ、やや悲観の確率を上げる。
- ドラッグストアの取扱店が計画どおり数千店へ広がり、売上の伸びが続いたら
- 中立の売上の前提は支えられる。ただし利益率と合わせて見る。売上だけが増えて利益率が下がるなら評価は変えない。
- 海外の売上が全体の 1 割を超え、黒字になったら
- 楽観・やや楽観の筋書きに確率を移してよい。国内の成熟を補う道が見えたことになる。
- SIXPAD と RED を合わせた売上が全体の 3 割に近づいたら
- ReFa 依存が下がる。資本コストの寿命の上乗せ(0.75%)を見直す余地が出る。
- ヘアケア機器の国内売上が前年を割り、新商品でも補えなくなったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。2019 年型の反動の入り口とみる。
- 利益が積み上がるのに配当性向が 1 割台のままなら
- 資本配分が宣伝・新商品に偏っている。ROE が上がりにくく、中立の倍率の前提に下振れの余地が出る。
見ておくもの
- 四半期ごとの粗利率と営業利益率(特に 4〜6 月の低下が続くか)
- ドラッグストア・量販店の取扱店数と、ヘアケア機器の売上の前年比
- SIXPAD・RED の売上と、ReFa の売上に占める比率
- 海外(グローバル区分)の売上と損益
- 配当性向と自社株買いの規模
倍率と資本コストの決め方
ReFa・SIXPAD ほか・海外の 3 つを、対象市場(実質)× シェアと、値段の指数(物価 3% で 10 年 1.34 倍)に分けて積んだ。今の株価は見ていない。倍率は k 8% と g 4%、残る割合 1/2 の正当化 PER から出し、中立は上限の 9 割の 12 倍に置いた。ROE が 13% 台のため、下限 1÷k(11.4 倍)の近くに収まる。結果は、中立の筋書きの 10 年後の時価総額が今の 7 割弱、確率で重みづけした価値は今の 4 割となり、割高。市場の大きさと一部の単位は推定で、数量を台数でなく市場×シェアで置いたため、価格 1 の注意が出る。いちばん効く置き方は、10 年後の営業利益率とシェアで、2019 年型の反動は悲観に、今の利益率の定着は楽観に入れた。新リース会計は 2028/09 期から BS に載るが、直営店の家賃は今と同じ形(営業費用)にそろえて置いた。利払いの変化は純現金が小さく 1 億円ほどで、無視した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。