結論
前田工繊は、繊維の技術を土木に持ち込んだ福井の会社だ。盛土を補強するジオグリッドでは、国内シェアが三井化学産資を加えて約 85% に達する。売上の 6 割台半ばは公共工事を中心とするソーシャルインフラで、残りは鍛造ホイールの BBS と、精密機器向けのワイピングクロスだ。
筆者の結論は「やや割高」である。10 年後の価値は、今の時価総額を 1 割ほど下回る。会社が弱いのではない。稼ぐ力は本物だが、成長の多くを毎年の買収に頼る形で、その分の期待がすでに値段に入っていると見る。
中立の姿は地味だ。国土強靱化の追い風で土木資材は伸びるが、建設の人手不足が実質の伸びを年 2% に抑える。物価を足した売上の伸びは年 5% 弱。営業利益は 10 年で 5 割強ふえ、自己資本利益率は 12% 台で今とほぼ同じだ。
気になるのは現金の使い道だ。自己資本比率は 80%、純現金は 258 億円ある。配当性向は 2 割で、自社株買いの実績はない。余った現金は、戻ってくる分を半分と見て足した。買収が当たり続ければ上振れ、失敗や公共予算の削減が重なれば下振れる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は 3 つある。第 1 に、10 年後も事業が残るか。公共インフラの更新は続くので、事業は残る。第 2 に、堀が広がるか。ジオグリッドの使用実績は積み上がるが、工法全体の中では小さい市場で、広がる余地は限られる。第 3 に、稼いだ現金の使い道だ。
株主のものになる利益は、営業利益の 7 割弱に当たる純利益から、工場や設備の更新に要る分を引いたものだ。この会社は設備投資が軽く、残りの多くは現金で積み上がる。この現金を、配当や自社株買いで返すのか、買収に使うのかが、価値を決める。
買収が資本コストを上回る稼ぎを生み続ければ、積み上がる現金は価値になる。そうでなければ、半分の価値でしか見られない。筆者は、半分と置いた。年 1 件ペースの買収は、これまで大きく外してはいない。ただ全部が当たる前提は置けない。
安全域の面では、純現金と公共工事の守りがあるので、深く壊れる確率は低い。それでも、今の値段は中立の姿を上回る期待を含んでいる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 2 つある。ソーシャルインフラ事業が売上の 65%、インダストリーインフラ事業が 35% だ。前者は盛土や軟弱な地盤を補強するジオグリッド、河川・海岸の資材、防災資材を、国や自治体の工事に納める。国土強靱化の予算がそのまま追い風になる。2026/06 期は売上が 29% 増えたが、前期に子会社にした前田工繊産資の通期分が大きい。
前田工繊産資は、三井化学から約 55 億円で買った会社だ。売上は約 90 億円で、点字タイルと配管資材を持つ。ジオグリッドでは前田工繊が約 75%、この会社が約 15% を占めていた(公正取引委員会の審査資料)。統合で国内の約 85% を握るが、公取委は競争を制限しないと判断した。
後者は、高級鍛造ホイールの BBS と、ワイピングクロスなどの産業資材だ。BBS は 2013 年の買収後に売上を 2 倍半まで育て、2022 年から F1 と NASCAR の統一ホイールを独占供給している。2026/06 期は、欧州子会社が前期の大口取引の反動で減った。
利益は公共工事側が 6 割台半ば、車・電子部品側が 3 割台半ばだ。公共工事の安定と、車・電子部品の景気との組み合わせが、この会社の形だ。
優良さと弱いところ
この会社の良さは、狭い市場で圧倒的な位置を取っていることだ。補強土のジオグリッドは国内の約 85% を押さえる。地盤や土は現場ごとに性質が違うので、発注側は使用実績のない製品を採りたがらない。この実績が新規参入を止める堀、つまり他社がまねしにくい強みだ。
堀には限りもある。擁壁や急勾配の盛土の全工法のうち、ジオグリッドを使う割合は 1〜2 割弱にすぎない。背の低い壁ならコンクリートのほうが安い。韓国製のジオグリッドも、品質は国産と差がないとされ、売る代理店もある。値上げの力は、思うほど強くない。
資本効率は高くない。自己資本利益率は 12% 前後で、10 年の中央値もほぼ同じだ。自己資本比率が 80% と厚いので、中身は悪くない。ただ稼いだ現金を配当と買収に回すだけで、自己資本が積み上がる。
経営は、買収を年 1 件のペースで重ねる「混ぜる経営」だ。三井化学産資の例のように、条件が合えば大きな買収もする。筆者はここを、この会社を持つうえでの最大の見どころで、最大の不確かさだと考えている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
追い風は公共投資だ。国土強靱化の実施中期計画は 2026〜2030 年度に事業規模で 20 兆円強を見込む。道路・河川・港の老朽化を考えれば、その先も更新の仕事は残る。2027/06 期の会社計画は、前期の大型案件の反動で踊り場になるが、防衛関連の資材に広がると見ている。
向かい風は人手だ。建設の現場は人が足りず、予算があっても工事件数が伸びない。数量は物価のように自然には増えない。国交省の見通しでも政府土木投資は実質でほぼ横ばいだ。筆者は、実質の投資は中立で 10 年に 3% ほどしか増えないと置き、当社の数量が 2 割弱伸びるのは、補強土の採用が広がり取り分が増える分と見る。国内の人口は減り、地方の工事は選別される。
競合は 2 方向から来る。ひとつは工法の競合で、コンクリート擁壁が強い。もうひとつは輸入品だ。使用実績が付けば、韓国製のジオグリッドは値段で入ってくる。今は供給余力もあり、牽制として働いている。
もう一つの柱の車と電子部品は、景気で振れる。BBS は完成車向けの増産で売上が増えるが、完成車の仕事は利益率が低い。ワイピングクロスは、半導体や電子部品の工場が増える流れに乗る。ただ売上の 3 割台半ばが、公共工事とは別の景気に左右される。
資本政策と M&A
還元は控えめだ。配当は上場以来の累進配当で、増配を重ねてきた。2026/06 期の配当性向は 21% で、2027/06 期の計画も 22% にとどまる。自社株買いの実績は確認できなかった。内部留保は設備・研究・買収に回すという方針だ。
買収は年 1 件ペースで続く。2024 年に犀工房、2025 年 4 月に前田工繊産資、2026 年 9 月に自動車用吸音材の名古屋油化を子会社にした。名古屋油化は売上 11 億円の小さな会社で、樹脂の配合技術を取り込む狙いだ。
株主は、社長の前田尚宏氏と共同保有者で約 27%、信託銀行が約 11% だ(2026 年 9 月の大量保有報告)。TOB の可能性は、kabufu の試算で 10 年以内に約 19% とある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国土強靱化の予算が 2030 年度まで続き、その先も老朽インフラの更新が待っている。ジオグリッドは国内で約 85% を押さえ、公共工事の仕様に入りやすい。人手が足りない現場ほど、工期の短い補強土が選ばれる。コンクリート擁壁から採用を少しずつ奪えば、市場そのものが広がる。
買収の実績も強い。三井化学産資は売上約 90 億円を約 55 億円で買い、点字タイルや配管という新しい商品を足した。年 1 件ペースで会社を重ね、小さな会社の技術を自社の営業網に乗せる。自己資本比率が 80% と厚く、次の買収の弾も十分にある。
BBS は F1 と NASCAR の統一ホイールという世界的な看板を持つ。完成車向けの増産投資も済んでいる。精密クロスは電子部品の工場が増えるほど出番が増える。営業利益率は 2023 年から 17〜19% に上がり、構造が変わった証拠だ。
2026/06 期の売上は過去最高の 714 億円で、会社は 2027/06 期も増収増益を計画している。純現金が 258 億円あるので、景気が悪い年でも買収と設備投資の手を止めずに済む。10 年の長さで見れば、この会社は小さな会社を重ねて大きくなる複利の機械だ。
慎重な見方
公共工事の予算は、財政が苦しくなると削られてきた。人口が減る地方では、インフラの選別も始まる。人手不足で工事件数が伸びないので、予算が増えても数量は増えない。2027/06 期の計画が前期の大型案件の反動で踊り場とされたことも、この需要の波を示す。
補強土は工法全体の 1〜2 割弱にすぎない。背の低い壁ならコンクリートのほうが安い。使用実績のある輸入ジオグリッドは国産と品質に差がなく、供給余力もある。公共工事は入札なので、値段で押されれば約 85% という数字は守れない。
成長の多くは買収だ。買収は毎回うまくいくとは限らない。自己資本利益率は 12% 台で、80% の自己資本比率を考えれば高くない。余った現金も配当性向 2 割でためたままだ。ホイールや精密クロスは、車と電子部品の景気で振れる。
最後に、10 年の複利で見ると伸びの多くが買収で買った売上だ。買った分の利益に、買収額に見合う稼ぎが続くかは外から確かめにくい。上場以来のこの会社の評価は、買収の成功の積み重ねに支えられてきた。連続して外さない前提は、10 年では置きにくい。
どちらに重みを置いたか
事業の強さでは強気の言い分が勝つ。堀は本物で、公共工事の守りも固い。ただ値段の面では、慎重な言い分が当たる。成長のかなりの部分が買収で、現金の戻り方が低いからだ。
確率は中立に 36% を置き、残りを両側にほぼ同じ厚みで分けた。わずかに強気の側を厚くしたのは、買収の実績があるためだ。結果は、中立でも今の時価総額の 1.7 倍ほどにしかならず、資本コストを下回る。総合では今の値段がやや高い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 3,753 円2,502 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 476 円318 億円)。 今の値に割り戻すと 2,247 円1,499 億円、今との差 +9.9%、 期待の年率 +7.5%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,451 円4,302 億円 | 622 円415 億円 | +246.0% | +13.2% | 707 円472 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,286 円3,525 億円 | 552 円368 億円 | +185.6% | +11.1% | 1,284 円856 億円 |
| 中立 | 36% | 4,112 円2,742 億円 | 486 円324 億円 | +124.9% | +8.4% | 1,655 円1,104 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,793 円1,196 億円 | 408 円272 億円 | +7.7% | +0.7% | 484 円323 億円 |
| 悲観 | 10% | 699 円466 億円 | 282 円188 億円 | −52.0% | −7.1% | 98 円65 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,753 円2,502 億円 | 476 円318 億円 | +106.9% | +7.5% | 4,229 円2,820 億円 |
今の株価時価総額 2,044 円1,363 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 買収と補強土の置き換えがともに進む 利益 203 億円 · PER 19.8 倍 · 株価時価総額 6,451 円4,302 億円
10 年後、土木・建築資材は実質で 4 割以上伸びている。国土強靱化の次の計画が組まれ、老朽化した道路・河川・港の更新が続く。人手が足りない現場では、軽くて工期が短いジオグリッドの補強土が、コンクリート擁壁から採用を奪っていく。前田工繊産資の点字タイルと配管資材には、同じ営業網で売り込める。海外ではアジアの盛土需要を拾う。ホイールは BBS の増産と F1・NASCAR の統一供給が看板になり、北米と欧州の完成車向けが伸びる。精密クロスも半導体や電子部品の工場の増加で広がる。毎年の買収も当たり続ける。営業利益率は 19% を超え、自己資本利益率も 15% 台に乗る。最も理想的な 10 年だ。
- 土木・建築・防災資材:数量 57.3(実質の取り分(10 億円・今期の値段)= 公共土木投資の実質額(兆円)× 当社の取り分(‰))× 価格 138.0%(値段の指数(今期 = 1.00。物価 3% なら 10 年 1.34 倍)。rev_factor は 10 億円から億円への換算)→ 売上 790 億円・営業利益 170 億円。公共土木投資の実質 約 1.08 倍 × 取り分 約 1.34 倍 = 数量 1.45 倍・値段 1.38 倍、営業利益率 21.5%
- 不織布・農水その他:数量 1.9(出荷量(万トン換算))× 価格 54(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1(万トン × 万円 = 億円))→ 売上 103 億円・営業利益 13 億円。出荷量 1.05 倍・単価 1.34 倍(54 万円/トン)、営業利益率 13.0%
- 自動車用鍛造ホイール(BBS):数量 44.5(出荷本数(万本))× 価格 9.10(平均出荷単価(万円/本)。OEM 向けとアフター向けの混合。rev_factor は 1(万本 × 万円 = 億円))→ 売上 404 億円・営業利益 77 億円。本数 1.75 倍(44 万本)・単価 1.40 倍(9.1 万円)、営業利益率 19.0%
- 衣料・産業資材(ワイピングクロス等):数量 4,725(出荷量(万平方メートル換算))× 価格 420(平均単価(円/平方メートル)。rev_factor は 0.0001(万㎡ × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 199 億円・営業利益 48 億円。出荷量 1.75 倍・単価 1.40 倍、営業利益率 24.0%
倍率:事業の純利益 195 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)448 億円。全体の PER 19.8 倍、時価総額 4,302 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ジオグリッドの置き換えが進み、買収も当たり続け、さらにホイールと精密クロスも伸びるという条件が重なる姿。どれか一つなら十分ありうるが、10 年続けて全部は難しい。
やや楽観 22% 国土強靱化の追い風で、ホイールとクロスも伸びる 利益 166 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 5,286 円3,525 億円
土木・建築資材は実質で 3 割強伸びる。国土強靱化の計画が 2030 年度まで続き、その後も更新の需要が残る。ジオグリッドの国内シェアが約 85% と高いので、新しい現場でも仕様に入りやすい。前田工繊産資との営業の統合が進み、配管や点字の販路が広がる。BBS は完成車向けの増産分を売り切り、精密クロスも電子部品の需要に乗る。買収は毎年のように続くが、大型の失敗はない。営業利益率は 17〜18% を保ち、自己資本利益率は 15% 近い。公共工事の守りと、車・電子部品の伸びがうまく噛み合う姿だ。余った現金は買収に回り、積み上がる速さも中立より緩やかになる。
- 土木・建築・防災資材:数量 52.1(実質の取り分(10 億円・今期の値段)= 公共土木投資の実質額(兆円)× 当社の取り分(‰))× 価格 136.0%(値段の指数(今期 = 1.00。物価 3% なら 10 年 1.34 倍)。rev_factor は 10 億円から億円への換算)→ 売上 709 億円・営業利益 145 億円。公共土木投資の実質 約 1.05 倍 × 取り分 約 1.26 倍 = 数量 1.32 倍・値段 1.36 倍、営業利益率 20.5%
- 不織布・農水その他:数量 1.8(出荷量(万トン換算))× 価格 54(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1(万トン × 万円 = 億円))→ 売上 98 億円・営業利益 12 億円。出荷量 1.00 倍・単価 1.34 倍(54 万円/トン)、営業利益率 12.0%
- 自動車用鍛造ホイール(BBS):数量 36.8(出荷本数(万本))× 価格 8.91(平均出荷単価(万円/本)。OEM 向けとアフター向けの混合。rev_factor は 1(万本 × 万円 = 億円))→ 売上 328 億円・営業利益 57 億円。本数 1.45 倍(37 万本)・単価 1.37 倍(8.9 万円)、営業利益率 17.5%
- 衣料・産業資材(ワイピングクロス等):数量 4,050(出荷量(万平方メートル換算))× 価格 411(平均単価(円/平方メートル)。rev_factor は 0.0001(万㎡ × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 167 億円・営業利益 38 億円。出荷量 1.50 倍・単価 1.37 倍、営業利益率 22.5%
倍率:事業の純利益 157 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)482 億円。全体の PER 19.38 倍、時価総額 3,525 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国土強靱化の 20 兆円規模の計画が 2030 年度まで続き、その後も老朽インフラの更新が下支えする。会社が毎年 1 件ずつ買収を重ねてきた実績があるので、強気の側にやや厚く置いた。
中立 36% 中立:堅い公共需要に、買収が少し上乗せされる 利益 134 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 4,112 円2,742 億円
土木・建築資材は実質で 2 割弱伸びる。国土強靱化の 20 兆円規模の計画で当面の仕事は埋まるが、建設業の人手不足が工事件数の伸びを抑える。補強土が全体の工法の 1〜2 割弱という位置は大きく変わらず、シェアを少しずつ上げる程度だ。値段は官公庁の積算に沿って物価並みに上がる。ホイールは増産分が売れ、精密クロスも伸びるが、完成車向けの比率が上がって利益率は下がる。小さな買収が年 1 件ほど加わる。営業利益率は 16% 台にやや下がり、自己資本利益率は 12% 台。いまの優良さがそのまま続く、地味だが堅い 10 年である。
- 土木・建築・防災資材:数量 47.0(実質の取り分(10 億円・今期の値段)= 公共土木投資の実質額(兆円)× 当社の取り分(‰))× 価格 134.0%(値段の指数(今期 = 1.00。物価 3% なら 10 年 1.34 倍)。rev_factor は 10 億円から億円への換算)→ 売上 630 億円・営業利益 123 億円。公共土木投資の実質 約 1.03 倍 × 取り分 約 1.16 倍 = 数量 1.19 倍・値段 1.34 倍、営業利益率 19.5%
- 不織布・農水その他:数量 1.7(出荷量(万トン換算))× 価格 54(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1(万トン × 万円 = 億円))→ 売上 93 億円・営業利益 10 億円。出荷量 0.95 倍・単価 1.34 倍(54 万円/トン)、営業利益率 11.0%
- 自動車用鍛造ホイール(BBS):数量 31.8(出荷本数(万本))× 価格 8.71(平均出荷単価(万円/本)。OEM 向けとアフター向けの混合。rev_factor は 1(万本 × 万円 = 億円))→ 売上 276 億円・営業利益 44 億円。本数 1.25 倍(32 万本)・単価 1.34 倍(8.7 万円)、営業利益率 16.0%
- 衣料・産業資材(ワイピングクロス等):数量 3,510(出荷量(万平方メートル換算))× 価格 402(平均単価(円/平方メートル)。rev_factor は 0.0001(万㎡ × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 141 億円・営業利益 30 億円。出荷量 1.30 倍・単価 1.34 倍、営業利益率 21.0%
倍率:事業の純利益 126 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)440 億円。全体の PER 18.3 倍、時価総額 2,742 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:公共需要は堅く、ジオグリッドの国内シェアは約 85% と高い。ただ工法の全体ではコンクリート擁壁が主役で、補強土が採用される割合は 1〜2 割弱。伸びはゆっくりで、買収の上乗せが加わる姿を中心に置いた。
やや悲観 22% 公共予算が頭打ちになり、成長が止まる 利益 86 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,793 円1,196 億円
公共事業費が物価に追いつかず、土木・建築資材の数量は横ばいにとどまる。工事の人手不足で現場が回らず、予算を積んでも消化できない年が出る。値段も入札で押され、物価並みには上がらない。ホイールは欧州の需要が弱く、OEM の大口注文も途切れがちになる。不織布は医療・衛生向けが戻らず縮む。買収は続けるが、期待した相乗効果は小さい。営業利益率は 13% まで下がり、自己資本利益率は 9% 台。会社は傾かないが、成長株としての評価は消える 10 年だ。それでも純現金と公共工事の最低限の需要が残るので、配当は続き、減配までは起きない。
- 土木・建築・防災資材:数量 39.5(実質の取り分(10 億円・今期の値段)= 公共土木投資の実質額(兆円)× 当社の取り分(‰))× 価格 130.0%(値段の指数(今期 = 1.00。物価 3% なら 10 年 1.34 倍)。rev_factor は 10 億円から億円への換算)→ 売上 514 億円・営業利益 87 億円。公共土木投資の実質 約 0.97 倍 × 取り分 約 1.03 倍 = 数量 1.00 倍・値段 1.30 倍、営業利益率 17.0%
- 不織布・農水その他:数量 1.6(出荷量(万トン換算))× 価格 52(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1(万トン × 万円 = 億円))→ 売上 81 億円・営業利益 7 億円。出荷量 0.85 倍・単価 1.30 倍(52 万円/トン)、営業利益率 8.0%
- 自動車用鍛造ホイール(BBS):数量 25.4(出荷本数(万本))× 価格 8.32(平均出荷単価(万円/本)。OEM 向けとアフター向けの混合。rev_factor は 1(万本 × 万円 = 億円))→ 売上 211 億円・営業利益 25 億円。本数 1.00 倍(25 万本)・単価 1.28 倍(8.3 万円)、営業利益率 12.0%
- 衣料・産業資材(ワイピングクロス等):数量 2,970(出荷量(万平方メートル換算))× 価格 384(平均単価(円/平方メートル)。rev_factor は 0.0001(万㎡ × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 114 億円・営業利益 21 億円。出荷量 1.10 倍・単価 1.28 倍、営業利益率 18.0%
倍率:事業の自己資本利益率 9.3% は k をわずかに上回るだけで、成長が物価に届かない。ためた利益の価値も薄い。正当化 PER の上限 14.9 倍よりずっと低く、稼ぐ力から 10.0 倍に置いた。余った現金は戻り方 0.5 で足した。
確率:建設の人手不足で工事件数が伸びず、財政の制約で公共事業費が物価に追いつかない姿。公共工事は過去にも予算が削られた例があり、ホイールの欧州事業にも波がある。慎重な側にも同じ厚みを置いた。
悲観 10% 補強土が安い工法と輸入品に押され、優良さを失う 利益 30 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 699 円466 億円
補強土が構造的に負ける。使用実績を積んだ輸入ジオグリッドが値下げで入り込み、国内シェアは大きく崩れる。擁壁では、背の低い壁を中心にコンクリートが選ばれ続ける。公共事業費も人口減の中で選別され、数量は 2 割減る。ホイールでは大口の完成車顧客か F1 などの独占供給を失い、ブランドの稼ぐ力が落ちる。買収した会社の一部は減損になる。営業利益率は 6% まで下がる。2000 年代に戻る水準だ。ただ純現金と公共工事の最低限の需要が残るので、会社は存続する。配当は減らすが、止めるところまでは行かない。株主にとっては、今の値段の半分にも届かない失望の 10 年になる。
- 土木・建築・防災資材:数量 31.6(実質の取り分(10 億円・今期の値段)= 公共土木投資の実質額(兆円)× 当社の取り分(‰))× 価格 115.0%(値段の指数(今期 = 1.00。物価 3% なら 10 年 1.34 倍)。rev_factor は 10 億円から億円への換算)→ 売上 363 億円・営業利益 40 億円。公共土木投資の実質 約 0.92 倍 × 取り分 約 0.87 倍 = 数量 0.80 倍・値段 1.15 倍、営業利益率 11.0%
- 不織布・農水その他:数量 1.3(出荷量(万トン換算))× 価格 48(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1(万トン × 万円 = 億円))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。出荷量 0.70 倍・単価 1.20 倍(48 万円/トン)、営業利益率 3.0%
- 自動車用鍛造ホイール(BBS):数量 20.3(出荷本数(万本))× 価格 7.80(平均出荷単価(万円/本)。OEM 向けとアフター向けの混合。rev_factor は 1(万本 × 万円 = 億円))→ 売上 158 億円・営業利益 10 億円。本数 0.80 倍(20 万本)・単価 1.20 倍(7.8 万円)、営業利益率 6.0%
- 衣料・産業資材(ワイピングクロス等):数量 2,430(出荷量(万平方メートル換算))× 価格 360(平均単価(円/平方メートル)。rev_factor は 0.0001(万㎡ × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 88 億円・営業利益 9 億円。出荷量 0.90 倍・単価 1.20 倍、営業利益率 10.0%
倍率:事業の自己資本利益率 3.6% が k 7% を下回る。伸びても価値が増えないので、PER は 1÷k=13.3 倍が上限。優位を失った後の稼ぐ力(純利益÷k)から、ROE が k に届く やや悲観(10.0 倍)より低い 8.0 倍に置いた。余った現金は戻り方 0.5 で足し、床の資産(純現金)を下回らない。
確率:韓国製など使用実績のある輸入ジオグリッドが入り、値段で押されて補強土の採用が減る。さらにホイールの大口顧客を失う。公共工事の守りがあるので深い崩れは低めに見て、1 割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
土木・建築・防災資材
盛土を補強するジオグリッド、ジオテキスタイル、海洋・防災資材、点字タイル、配管資材。公共工事向けが中心で、前田工繊産資の分を含む。
| 数量実質の取り分(10 億円・今期の値段)= 公共土木投資の実質額(兆円)× 当社の取り分(‰) | 価格値段の指数(今期 = 1.00。物価 3% なら 10 年 1.34 倍)。rev_factor は 10 億円から億円への換算 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 39.5 | 100.0% | 395 | 80 |
| 10 年後 中立 | 47.0 | 134.0% | 630 | 123 |
取り方:開示はソーシャルインフラ全体(売上 468 億円・営業利益 89 億円)だけなので、内訳は推定。数量は「公共土木投資の実質額 × 当社の取り分」で置いた。国交省の 2026 年度建設投資見通しで政府の土木投資は約 18.6 兆円(名目)、同見通しの解説は実質をほぼ横ばいとする。当社の売上 395 億円はこの約 2.1‰(18.6 兆円 × 2.12‰ = 39.5=10 億円単位)。取り分は、補強土の採用率、ジオグリッド国内約 85% のシェア、前田工繊産資の点字タイル・配管資材などの広がりの結果で、数量の側に入れる。値段は資材の単価指数で、物価で 10 年 1.34 倍が基本。営業利益 80 億円は、残りの 2 区分との合計がソーシャルインフラの 89 億円に合うように置いた。
不織布・農水その他
自動車の内装向けや医療・衛生向けの不織布、獣害対策などの農業資材、水産加工。ソーシャルインフラのうち公共工事に関わらない部分。
| 数量出荷量(万トン換算) | 価格平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1(万トン × 万円 = 億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1.8 | 40 | 73 | 9 |
| 10 年後 中立 | 1.7 | 54 | 93 | 10 |
取り方:ソーシャルインフラ 468 億円のうち、土木・建築資材を除いた残りを約 73 億円と推定した。出荷量は、医療・衛生向け不織布、農業資材、水産加工(魚粉など)の混合を、平均単価を約 40 万円/トンと仮定して約 1.8 万トンに換算した推定で、開示はない。決算では医療・衛生向けが伸び悩み、水産加工は販売単価が下がっている。国内の人口と自動車の生産に結びつく成熟した需要で、数量は伸ばさない。
自動車用鍛造ホイール(BBS)
BBSジャパンと独 BBS Motorsport が作る軽合金鍛造ホイール。完成車メーカー向け(OEM)とアフター市場向け。F1・NASCAR の統一ホイールも供給する。
| 数量出荷本数(万本) | 価格平均出荷単価(万円/本)。OEM 向けとアフター向けの混合。rev_factor は 1(万本 × 万円 = 億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 25.4 | 6.50 | 165 | 29 |
| 10 年後 中立 | 31.8 | 8.71 | 276 | 44 |
取り方:インダストリーインフラ 246 億円のうち、ホイールを約 165 億円と推定した(BBSジャパン単体は 2025/06 期で約 160 億円の報道。欧州子会社は前期の大口取引の反動で減った)。本数は開示がなく、平均出荷単価を約 6.5 万円/本(OEM 向けと高級アフター向けの混合)と仮定して約 25 万本とした推定。数量は OEM の拡大と富山の増産(生産能力は金額で約 80 億円から約 150 億円への計画)で伸ばす前提で、価格は物価並みとした。
衣料・産業資材(ワイピングクロス等)
精密機器・電子部品の製造工程で使うワイピングクロス、衣料、各種の産業資材。
| 数量出荷量(万平方メートル換算) | 価格平均単価(円/平方メートル)。rev_factor は 0.0001(万㎡ × 円 = 万円 → 億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 2,700 | 300 | 81 | 18 |
| 10 年後 中立 | 3,510 | 402 | 141 | 30 |
取り方:インダストリーインフラ 246 億円の残りを約 81 億円と推定した。精密機器用ワイピングクロスは決算で好調と説明されている。出荷量は、平均単価を 1 平方メートルあたり 0.03 万円(price 欄は円単位で 300)と仮定して約 2,700 万平方メートルに換算した推定で、開示はない。営業利益は、ホイールとの合計がインダストリーインフラの 47 億円に合うように置いた。
リスクと懸念
公共事業費の頭打ち
売上の 6 割台半ばが公共工事を中心とするソーシャルインフラだ。財政が苦しくなれば予算は削られる。人手不足で工事件数が伸びず、予算が増えても数量は増えにくい。国土強靱化の計画が終わる 2031 年度以降の姿は、まだ決まっていない。
輸入ジオグリッドと工法の置き換え
国内シェアは約 85% でも、擁壁や急勾配盛土の全工法でジオグリッドが使われる割合は 1〜2 割弱だ。コンクリート擁壁は背の低い壁なら安い。使用実績を積んだ韓国製が値下げで入れば、シェアは崩れうる。
買収の失敗と現金の使い道
成長の多くを年 1 件の買収に頼る。大型の失敗があれば減損になり、現金も減る。買収しないなら現金が積み上がるだけで、配当性向 2 割・自社株買いなしでは、株主に戻る分は小さい。
ホイール事業の景気と顧客の偏り
BBS は完成車向けが伸びる一方、利益率は下がりやすい。欧州子会社は 2026/06 期に大口取引の反動で減収だった。F1 と NASCAR の独占供給が外れれば、看板の価値も下がる。
原材料と為替
樹脂と繊維の価格が上がれば、公共工事の積算に乗せるまで時間がかかり、利益率が一時的に下がる。ホイールと不織布は為替の影響も受ける。2026/06 期の経常利益には為替差益も含まれている。
支配株主と持株の動き
社長の前田尚宏氏と共同保有者の持株は約 27% で、2026 年 9 月に増えた。創業家に近い大株主の売買や、TOB の可能性は、株価と経営判断の両方に影響する。
今後の分かれ目
- 国土強靱化の予算が 2031 年度以降も同じ規模で続くと決まったら
- 中立から強気の側へ確率を移す。公共工事の数量を実質で年 2% 近くに置ける。
- 韓国など輸入ジオグリッドが官公庁の仕様に新しく入り、値下げが広がったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。国内シェア約 85% の持続を疑う。
- 買収の相乗効果が営業利益に出ず、減損が出たら
- 現金の戻り方をさらに低く見る。買収の積み上げ型の成長は評価しない。
- 配当性向を 4 割以上に上げるか、自社株買いを始めたら
- 余った現金の戻り方を 1.0 に近づけて見直す。価値が大きく上がる。
- BBS が F1・NASCAR の独占供給を失うか、大口 OEM の取引を失ったら
- ホイールの数量と利益率を下げ、やや悲観の側に寄せる。
- 経営者の持株の売却や、TOB の話が出たら
- 価格はプレミアムを含みうる。ただし本質価値は事業の稼ぐ力で測り直す。
見ておくもの
- 国土強靱化の予算と公共工事の受注残高
- ジオグリッドの輸入品の採用実績
- 買収の件数と、買収先の営業利益の推移
- BBS の完成車向け受注と欧州子会社の売上
- 配当性向と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の稼ぐ力と資本コスト 7% から式で決め、今の株価や同業の倍率は使っていない。数量は実質、物価の 3% は値段の指数に入れた。中立の事業の自己資本利益率は 12% 台で、その上限の 8 割に置いた。公共工事は安定だが、車と電子部品の景気もあるので、上限すれすれにはしていない。余った現金は戻り方 0.5 で足した。10 年後の数字は家賃を含めた今と同じ形で置いている(新リース会計基準でも本質価値はほぼ変わらない)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16.9→19.8 倍・やや楽観 PER 15.5→19.38 倍・中立 PER 13.7→18.3 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。