結論
KYORITSU は、通販のカタログやダイレクトメール、チラシを大量に刷る共立印刷を中心とする持株会社だ。広告の制作、発送の代行、リサイクルや産業廃棄物の処理の会社を次々に買い、16 社のグループになった。筆者の結論は割高寄りだ。紙の販促物という本業が縮む中で、買収で売上を積んでも、資本の稼ぎが資本コストに届かないからだ。
強みは規模だ。大型の輪転機を 20 台そろえ、大ロットのカタログを安く速く刷れる。紙の販促物を手放せない通販や小売の会社にとって、頼れる刷り手であり続ける。
ただ営業利益率は 3% 台で、会社自身も目標を 5% から 4% に下げた。用紙とインキの値上がりを価格に通すのに時間がかかる。M&A で伸ばす環境の事業は利益率が高いが、まだ売上の 5% ほどだ。
借入で買収を重ね、純負債は 50 億円を超えた。ROE は保有株の売却益を除けば 4% 前後だ。筆者がいちばん気にしているのは、買収で積んだ売上が株主の価値を増やすのか、ただ会社を大きくするだけなのか、という点だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「規模のある刷り手だが、市場が縮む中で資本を増やしている会社」だ。10 年後も大型のカタログを刷る会社は要り、KYORITSU は残る側にいるだろう。だが今より強い会社になっているとは考えにくい。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いたあとに株主に残る現金は、会計の利益より少ない。輪転機は高く、建設費と機械の値上がりで、更新の投資は償却を上回る。
経営は M&A で成長を買おうとしている。投資の利回りの条件を示しているのは良い点だ。ただ借入で買った会社の利益が、利息とのれんの償却を引いて資本コストを超えるかが問われる。
安全域は帳簿の土地と保有株にあるが、事業の稼ぐ力にはない。筆者は、買収で積んだ利益が ROE を押し上げる証拠が出るまで、この会社に高い値段は払わない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの 9 割は「販促ソリューション」だ。中核の共立印刷が、通販のカタログ、顧客の購買履歴に合わせて中身を変える DM、新聞の折込チラシを刷る。大型の A 判輪転機を 20 台持ち、大量の印刷を短い納期でこなせる。
同じ事業の中に、買収した広告の会社がある。新聞や TV、ラジオの広告の代理、WEB 広告の運用、通販番組の映像の制作だ。さらに、小売の会社の消耗品を倉庫で保管し発送する代行(BPO)も持つ。刷る、届ける、広告を打つまでを一括で請けることで、顧客の取引を深める狙いだ。
2 つ目は「コンテンツ」で、雑誌や書籍の印刷、電子書籍、自社で作品や IP を生み出す事業だ。出版の市場は縮んでおり、規模は売上の 6% ほどにとどまる。
3 つ目が「環境」だ。廃プラスチックなどを燃料や原料に戻すリサイクル、産業廃棄物の処理を、買収した会社で営む。2025 年に北海道、2026 年に環境リサイクルの会社を加えた。利益率は 1 割を超え、会社は 2028 年 3 月期に売上を 2.5 倍にする目標を掲げる。
工場と土地を多く持ち、土地は簿価で 78 億円ある。設備の償却は年 14〜15 億円だ。
優良さと弱いところ
優良さは「並」の下と筆者は見る。大量のカタログを安く刷る規模の力はあるが、印刷そのものは差がつきにくい。用紙は製紙会社が値上げを重ね、それを顧客に通すまでに利益が削られる。
堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるのは、輪転機の台数と、通販の大口の顧客との長い関係だ。カタログを刷れる大型の設備を持つ会社は限られ、印刷の業界では中小の廃業が続く。残る大手に注文が寄る面はある。
弱いのは市場の向きと資本の効率だ。紙のカタログと DM は、ネットの広告に予算を奪われて細る。営業利益率は 3〜4% で、ROE は売却益を除けば 4% 前後と、資本コストの半分ほどにとどまる。
経営は M&A に積極的で、投資の利回り 10% 以上を条件に掲げる。ただ買った会社の利益が、のれんの償却と借入の利息を引いても株主の価値を増やすかは、まだ見えない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
紙の販促物の市場は長く縮んでいる。企業の広告の予算はネットに移り、カタログやチラシ、DM の部数は年々減る。2024 年秋の郵便料金の値上げは、DM の数をさらに絞らせた。
それでも紙は消えない。通販の会社にとって、カタログは高い年代の客に届く数少ない手段だ。購買履歴に合わせて中身を変える DM は、ネットの広告より反応が高いという声もある。数量は減っても、刷る価値のある紙は残る。
印刷の業界では、中小の廃業と大手への集約が続く。用紙とインキ、電力の値上がりで、設備の小さい会社ほど苦しい。規模のある会社に注文が寄るが、残った会社どうしの価格の競争も厳しい。
広告の制作と運用は、AI エージェントが人の作業を置き換えやすい分野だ。WEB 広告の運用や原稿の制作は、手数料の値下げの圧力を受けると筆者は見る。KYORITSU では売上の一部にとどまるが、販促を一括で請ける戦略の重みは下がる。
10 年で見ると、販促の印刷の数量は 2 割ほど減り、価格は用紙の値上がりに沿って物価をわずかに下回って上がるとみる。環境の事業は、プラスチックの再資源化の規制が追い風だ。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買いの両方だ。配当性向は 30% 以上を目標とし、1 株の配当は据え置きの水準で年の総額は 3 億円台だ。自社株買いは 2024 年から毎年、立会外の取引で行っている。
一方で M&A に借入を使う。2026 年の 4〜6 月にも借入を増やし、純負債は 58 億円ほどになった。自己資本比率は 40% 以上を目標とするが、足元で 39% まで下がった。
株主は分散している。創業者に近い個人、取引先の持株会、インキの東京インキ、印刷機の小森コーポレーションなどが上位に並び、支配する株主はいない。取引先との持ち合いの色は残る。
保有株を公開買付けに応じて売り、2026 年 3 月期に売却益を出した。政策保有の株を減らす動きはあるが、まだ残っている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
印刷の業界の集約は KYORITSU に有利に働く。中小の印刷会社が廃業し、大型の輪転機を 20 台持つ会社にカタログの注文が寄る。紙のカタログを手放せない通販の会社は多く、残った刷り手は値上げを通しやすくなる。
販促を一括で請ける戦略も効く。刷る、届ける、広告を打つまでを 1 社に頼めれば、顧客は取引先を替えにくい。購買履歴に合わせた DM は、ネットの広告より反応が良く、単価も高い。
環境の事業は高い利益率のまま伸びる。プラスチックの再資源化の規制は強まり、廃棄物の処理の会社は許可が要るので新しい会社は入りにくい。2028 年 3 月期に売上 50 億円の目標が達成されれば、会社全体の営業利益の 3 割を担う。
持株会社になってから 3 期続けて事業計画の目標を達成しており、経営の実行力は確かだ。自社株買いを毎年続け、配当性向も 30% 以上を約束する。政策保有の株を売った現金を還元に回せば、ROE は上がる。土地と保有株を合わせれば、帳簿の厚みは時価総額の 2 倍を超える。
慎重な見方
紙の販促物は縮み続ける。広告の予算はネットに移り、郵便料金の値上げで DM も減った。印刷の数量が 10 年で 2 割以上減れば、大型の輪転機は重荷になる。
利益率は低いままだ。用紙とインキの値上がりを価格に通すのは遅れ、会社自身が営業利益率の目標を 5% から 4% に下げた。輪転機の更新は値上がりした値段で行うしかなく、償却を上回る投資で現金は細る。
M&A は借入で積み上げている。純負債は 50 億円を超え、金利の上昇で利払いが増える。買った会社ののれんの償却と取得の費用が利益を削り、ROE は資本コストの半分にとどまる。広告の制作と運用は、AI エージェントで手数料が下がる分野でもある。
株主は分散しているが、取引先の持ち合いが残り、資本を絞る圧力は弱い。印刷の会社が多角化で環境や広告に出ていく例は多いが、本業の縮みを埋めきった例は少ない。M&A で会社が大きくなっても、1 株あたりの価値が増えるとは限らない。
どちらに重みを置いたか
市場の向きと資本の効率では、慎重な見方が強い。集約の恩恵と環境の事業の伸びは本物だが、縮む本業を埋めて ROE を資本コストに近づけるほどではない。中立に 40%、悲観側の合計に 33%、楽観側に 27% を置いた。会社が 3 期続けて目標を達成した実行力は評価し、やや楽観に 20% を残した。ただ借入で買った会社の成果はまだ数字に出ておらず、悲観の深さは浅くしない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 238 円100 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 89 円38 億円)。 今の値に割り戻すと 165 円69 億円、今との差 −20.8%、 期待の年率 +4.6%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 456 円192 億円 | 136 円57 億円 | +184.7% | +11.0% | 41 円17 億円 |
| やや楽観 | 20% | 346 円145 億円 | 112 円47 億円 | +119.9% | +8.2% | 91 円38 億円 |
| 中立 | 40% | 274 円115 億円 | 102 円43 億円 | +80.5% | +6.1% | 150 円63 億円 |
| やや悲観 | 23% | 99 円41 億円 | 59 円25 億円 | −24.1% | −2.7% | 36 円15 億円 |
| 悲観 | 10% | 51 円21 億円 | 32 円13 億円 | −60.3% | −8.8% | 8 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 238 円100 億円 | 89 円38 億円 | +57.5% | +4.6% | 328 円138 億円 |
今の株価時価総額 208 円87 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 集約で印刷の数量を守り、環境が 3 倍に育つ 利益 16 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 456 円192 億円
中小の印刷会社の廃業が進み、大口のカタログと DM の注文が KYORITSU に寄る筋書きだ。紙の販促物の市場は縮むが、会社の印刷の数量は 10 年で 5% 減にとどまる。値上げも物価並みに通る。
環境の事業は、買収と規制の追い風で処理量が 3 倍になる。利益率は 1 割強を保ち、会社全体の営業利益の 3 分の 1 を担う。
販促を一括で請ける戦略が根づき、広告と発送の代行が印刷の取引を支える。営業利益率は 5% 近くまで上がる。ROE は 7% 近くに上がるが、資本コストにはまだ届かない。
政策保有の株を売った現金で自社株買いを続け、株数も少しずつ減る。土地と設備の厚みが重く、資本の効率を大きく上げるには、この規模の会社でも時間がかかる。
- 販促ソリューション(商業印刷・DM・広告・BPO):数量 166(印刷の用紙使用量に換算した取扱量(千トン・推定))× 価格 30(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 490 億円・営業利益 22 億円。数量 5% 減。価格は物価並み
- コンテンツ(出版印刷・電子書籍・IP):数量 69.0(印刷部数(百万冊・推定))× 価格 40(1 冊あたりの印刷単価(円・推定))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。部数 15% 減
- 環境(リサイクル・産業廃棄物処理):数量 300(処理量(千トン・推定))× 価格 2.68(1 トンあたりの処理・販売単価(万円・推定))→ 売上 80 億円・営業利益 10 億円。買収と規制で処理量 3 倍
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 192 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 4.8% は持株会社になってからの最良 4.1% を上回る。印刷の数量を守り、環境の M&A も成功する必要があり 7%。
やや楽観 20% 印刷の減りを環境と一括の受注で一部埋める 利益 12 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 346 円145 億円
紙の販促物の数量が 10 年で 1 割強減る一方、集約で取引が寄り、会社の印刷の数量は 12% 減にとどまる筋書きだ。価格は物価をわずかに下回る。
環境の事業は処理量が 2.4 倍になり、利益率 11% 台を保つ。広告と発送の代行も印刷の取引を支え、営業利益率は 4% 台に乗る。会社の目標の水準だ。
借入で買った会社の利益が利息を上回り、ROE は 5% 台半ばになる。配当と自社株買いは利益の半分ほどを株主に戻す。
会社の事業計画の 2028/03 期の目標は達成され、その後は伸びが緩む。資本の稼ぎは資本コストに届かないままだ。
- 販促ソリューション(商業印刷・DM・広告・BPO):数量 154(印刷の用紙使用量に換算した取扱量(千トン・推定))× 価格 29(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 450 億円・営業利益 18 億円。数量 12% 減。価格は物価をわずかに下回る
- コンテンツ(出版印刷・電子書籍・IP):数量 65.0(印刷部数(百万冊・推定))× 価格 40(1 冊あたりの印刷単価(円・推定))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。部数 2 割減
- 環境(リサイクル・産業廃棄物処理):数量 239(処理量(千トン・推定))× 価格 2.68(1 トンあたりの処理・販売単価(万円・推定))→ 売上 64 億円・営業利益 7 億円。処理量 2.4 倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 144 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:事業計画は 2028/03 期に営業利益 20 億円を掲げ、3 期続けて目標を達成している。起こりうる上振れとして 20%。
中立 40% 印刷は 2 割減、環境は 2 倍、利益率は 3.4% 利益 9 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 274 円115 億円
紙のカタログと DM が 10 年で 2 割減る筋書きだ。集約の恩恵はあるが、市場の縮みを打ち消すほどではない。価格は用紙の値上がりに沿って上がるが、物価をわずかに下回る。
環境の事業は買収で処理量が 2 倍になり、利益率は 11% と高い。のれんの償却と本社の費用は年 5 億円ほどかかる。営業利益率は 3.4% と今の水準にとどまる。
輪転機の更新は値上がりした値段で行い、償却は今の年 14〜15 億円から少しずつ増える。借入は 3.5% で借り換わり、利払いが増える。配当と自社株買いは利益の半分ほどで、ROE は 4% 台にとどまる。
- 販促ソリューション(商業印刷・DM・広告・BPO):数量 140(印刷の用紙使用量に換算した取扱量(千トン・推定))× 価格 29(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 400 億円・営業利益 14 億円。数量 2 割減。価格は物価をわずかに下回る
- コンテンツ(出版印刷・電子書籍・IP):数量 58.0(印刷部数(百万冊・推定))× 価格 39(1 冊あたりの印刷単価(円・推定))→ 売上 23 億円・営業利益 1 億円。部数 28% 減
- 環境(リサイクル・産業廃棄物処理):数量 199(処理量(千トン・推定))× 価格 2.68(1 トンあたりの処理・販売単価(万円・推定))→ 売上 53 億円・営業利益 6 億円。買収で処理量 2 倍。価格は物価並み
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 106 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:持株会社になってからの営業利益率は 3.1〜4.1% で中央は 3.3% 前後。環境の伸びを加えて 3.4% に置き、最も起こりやすい形として 40%。
やや悲観 23% 紙の販促が 3 割減り、M&A の利益が利息に消える 利益 3 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 99 円41 億円
ネットの広告への移行と郵便料金の値上げで、紙の販促物が 10 年で 3 割減る筋書きだ。用紙の値上げを価格に通しきれず、価格は物価を下回る。
環境の事業は伸びるが、高値で買った会社の利益は思うように伸びない。のれんの償却と借入の利息が利益を削り、営業利益率は 2% 弱に落ちる。広告の制作と運用は AI エージェントで手数料が下がる。
配当は利益に沿って減り、自社株買いは止まる。ROE は 2% 弱に沈む。
会社は残り、土地と保有株という帳簿の厚みもある。だが稼ぎが細るので、値打ちは帳簿の半分にも届かない。借入の返済が優先され、株主に戻る現金は少ない。
- 販促ソリューション(商業印刷・DM・広告・BPO):数量 123(印刷の用紙使用量に換算した取扱量(千トン・推定))× 価格 28(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 337 億円・営業利益 8 億円。数量 3 割減。価格は物価を下回る
- コンテンツ(出版印刷・電子書籍・IP):数量 48.6(印刷部数(百万冊・推定))× 価格 37(1 冊あたりの印刷単価(円・推定))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。部数 4 割減
- 環境(リサイクル・産業廃棄物処理):数量 159(処理量(千トン・推定))× 価格 2.50(1 トンあたりの処理・販売単価(万円・推定))→ 売上 40 億円・営業利益 3 億円。処理量 1.6 倍。価格は物価を下回る
倍率:ROE 2% 弱で稼ぐ力は資本コストの 5 分の 1 ほど。利益が細る筋書きなので上限 11.1 倍の 8 割弱の 8.5 倍。利益が小さいので PBR は中立より大きく低い。
確率:2025/03 期は営業利益率 3.1%、会社は中東情勢の材料高で目標を下げた。紙の減少が速まれば十分ありうるので 23%。
悲観 10% 紙の販促が 4 割減り、印刷で赤字に 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 51 円21 億円
紙のカタログと DM が 10 年で 4 割減り、大型の輪転機の稼働率が落ちる筋書きだ。印刷の価格競争が激しくなり、価格は物価を大きく下回る。
環境の事業は小さく伸びるだけで、買収の多くが失敗に終わる。のれんの減損が出て、営業利益は赤字に近づく。
借入の返済のために土地や保有株を売り、配当は大きく減らされる。値打ちは事業の稼ぎではなく、売れる資産から借金を引いた残りで決まる。
工場の土地は事業に使うので、すべては売れない。のれんの減損で自己資本も削られる。取引先の持ち合いの株は、売る時に相手との関係も考えねばならない。
- 販促ソリューション(商業印刷・DM・広告・BPO):数量 102(印刷の用紙使用量に換算した取扱量(千トン・推定))× 価格 26(1 トンあたりの売上(万円・推定))→ 売上 264 億円・営業利益 3 億円。数量 4 割減。価格は物価を大きく下回る
- コンテンツ(出版印刷・電子書籍・IP):数量 40.5(印刷部数(百万冊・推定))× 価格 35(1 冊あたりの印刷単価(円・推定))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。部数半減
- 環境(リサイクル・産業廃棄物処理):数量 119(処理量(千トン・推定))× 価格 2.30(1 トンあたりの処理・販売単価(万円・推定))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。小さく伸びるだけ
倍率:本業はほぼ赤字で稼ぐ力は無い。床は売れる資産で見て、今の自己資本 177.7 億円に 0.12 倍を掛けた約 21 億円。やや悲観と中立の PBR より低い。
確率:持株会社になる前の共立印刷は 2009 年ごろに利益が大きく落ちた。紙の減少と材料高が重なれば起こりうるので 10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
販促ソリューション(商業印刷・DM・広告・BPO)
通販カタログ・DM・チラシの印刷、広告の代理と制作、WEB 広告の運用、倉庫での保管と発送の代行。
| 数量印刷の用紙使用量に換算した取扱量(千トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 175 | 22 | 385 | 14 |
| 10 年後 中立 | 140 | 29 | 400 | 14 |
取り方:数量は開示が無いので推定。印刷・加工・発送を含めた 1 トンあたりの売上を 22 万(円)とみて、外部売上 385 億円から 17.5 万トン相当と割り戻した。広告と BPO も用紙量に換算して含む。営業利益はセグメント利益 14.40 億円。
コンテンツ(出版印刷・電子書籍・IP)
雑誌・書籍の印刷、電子書籍、自社の IP の創出。
| 数量印刷部数(百万冊・推定) | 価格1 冊あたりの印刷単価(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 81.0 | 30 | 24 | 1 |
| 10 年後 中立 | 58.0 | 39 | 23 | 1 |
取り方:部数は開示が無いので推定。雑誌・書籍の印刷単価を 1 冊 30(円)前後とみて、売上 24.25 億円から 8,100 万冊相当とした。営業利益はセグメント利益 1.25 億円。
環境(リサイクル・産業廃棄物処理)
廃プラスチックなどのマテリアル・サーマルリサイクル、産業廃棄物の収集と処理。
| 数量処理量(千トン・推定) | 価格1 トンあたりの処理・販売単価(万円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 99.5 | 2.00 | 20 | 2 |
| 10 年後 中立 | 199 | 2.68 | 53 | 6 |
取り方:処理量は開示が無いので推定。産業廃棄物の処理料と再生品の販売を合わせて 1 トン 2 万(円)とみて、売上 19.92 億円から 9.95 万トンとした。営業利益はセグメント利益 2.40 億円。
リスクと懸念
紙の販促物の縮小
企業の広告の予算はネットに移り、郵便料金の値上げで DM も減った。紙のカタログと DM の数量が 10 年で 3 割を超えて減れば、大型の輪転機が重荷になる。
用紙とインキの値上がり
製紙会社は値上げを重ねる。受注の印刷は価格の改定に時間がかかり、その間は利益が削られる。会社は材料高を理由に営業利益率の目標を 5% から 4% に下げた。
借入による M&A
買収を借入で積み、純負債は 50 億円を超えた。金利の上昇で利払いが増え、買った会社の利益が伸びなければ、のれんの減損で自己資本が削られる。
AI エージェントによる広告の置き換え
WEB 広告の運用や原稿の制作は、AI エージェントが人の作業を置き換えやすい。手数料が下がれば、販促を一括で請ける戦略の利益は細る。
輪転機の更新の投資
大型の輪転機は高く、機械と建設費の値上がりで更新の投資は償却を上回る。現金が細り、還元の余力が削られる。
今後の分かれ目
- 営業利益率 4% 以上が 2 期続く
- 集約の恩恵と一括の受注が効いたとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 環境の事業が売上 50 億円・利益率 1 割を達成する
- M&A が価値を生んだとみて、環境の伸びを上方に置き直す。
- 純負債が EBITDA の 3 倍を超える
- 借金の重さを k と悲観の確率に反映する。
- のれんの減損が出る
- M&A の目利きを疑い、悲観側の確率を上げる。
- 政策保有株の売却で得た現金を自社株買いに回す
- 資本の効率が上がるとみて、倍率の見方を上げる。
見ておくもの
- 販促ソリューションのセグメント利益率
- 環境の事業の売上と利益率
- 純有利子負債と EBITDA
- のれんの残高と M&A の実績
- 自社株買いと配当性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が全筋書きで k 8.5% を下回るので、上限 1÷k の 11.1 倍を基準に利益の質で 8.3〜10 倍に置いた。今と過去の PER・PBR は見ていない。本社費とのれんの償却は物価で増やし、輪転機の償却は取得した時の値段のまま、更新の分だけ増える形にした。2026/03 期の売却益は起点から除いた。土地と保有株は悲観の床にだけ数え、配当の稼ぎと二重にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.76 倍・やや楽観 PER 9.2→11.76 倍・中立 PER 8.3→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% = 9.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。