結論
福島印刷は、金沢に本社を置く印刷会社で、請求書や通知書の印字・発送と、ダイレクトメールの処理を主力にしている。売上は 73 億円、営業利益は 2.5 億円で、利益率は 3% 台。筆者の結論は「やや割高」。事業は紙の縮小で細り、純現金 10 億円と土地・工場が下を支えても、利益の質に見合う値段は今よりやや低い。
稼ぎの源は、データを紙に刷って封入し、郵送するまでを請け負う仕事だ。DM の処理が売上の 56%、請求書などの発行処理が 35%。帳票そのものの印刷は 8% まで縮んだ。最大の顧客は TOPPAN で 12%。
弱みは、紙の需要が構造的に減ること。請求書の電子化が進み、帳票は年々細る。営業利益率は過去 12 年で 0.2% から 6.9% の間を行き来し、前期は 3.4% だった。
強みは財務だ。自己資本比率は 76% で、現預金は 16 億円。配当と自社株買いを続け、総資産の 2% を上限に政策保有株も絞っている。株主への姿勢は誠実だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「縮む事業の利益に、厚い現金と土地がどこまで安全域を足すか」を問う。答えは、思ったほど割安ではない、である。
事業の稼ぎは薄い。営業利益は 2.5 億円で、時価総額の 8 分の 1。縮む市場の利益に高い倍率は付けられない。
安全域は、純現金 10 億円と、金沢の工場の土地・建物にある。ただ、土地を売れば事業を畳むことになる。事業が続く前提で、現金の半分は運転資金と更新投資に要る。
筆者が評価するのは、無理な借金も大型の買収もしない点と、現金を配当と自社株買いで返す姿勢だ。ただ、収益率が低い会社が現金を溜め込む状態は、長くは続かない。
長く持ちたい事業というより、資産の裏づけが効く守りの株だ。
経営は慎重で、財務の強さを維持している。だが利益の伸びが小さい以上、株価の上昇は還元と資産の評価に頼ることになる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、顧客の代わりにデータを印字し、封入して発送する仕事だ。個人情報を扱うため、情報管理の認証を持ち、安全性と正確さが選ばれる理由になる。
製品は 4 つある。DMDP サービスは、ダイレクトメールとその発送処理で売上の 56%、41 億円。IPDP サービスは、請求書や行政の通知を印字して発送する仕事で 35%、25 億円。BF サービスは、コンピュータ用の帳票とラベルで 8%、6 億円。企画商印は広告・マニュアルの印刷で 1%。
最大の顧客は TOPPAN で、売上の 12.45%。最終の依頼主は、通販を営む会社である。個々の顧客の内訳は他に開示されない。
従業員は 428 人、うち本社・工場(金沢)に 385 人。さいたま市にもサテライトの拠点を持つ。設備は金沢に集中し、土地は約 10 億円、建物・構築物は約 16 億円の帳簿価額だ。
品目別の利益は開示されない。ここでは、帳票より処理の仕事の方が利益率が高いと見て、売上から推定して置いた。
受注は人手より設備の稼働で決まり、封入・発送の機械の稼働率が利益率を左右する。繁閑の差も大きい。
優良さと弱いところ
優良さは「並」と見る。堀と呼べるのは、情報の安全管理への信頼と、地元の長い実績にとどまる。
データプリントは、個人情報を扱う分だけ新規参入の壁がある。認証と設備、封入・発送の流れを持つことが、大手の下請けとしても選ばれる理由だ。ただ、顧客は大手の印刷会社を通す形が多く、価格を決める力は弱い。
利益率は 12 年で 0.2% から 6.9%。前期は 3.4% だった。会社は経常利益率の目標を、最低 3%、当面 5% 以上に置くが、5% を超えたのは 2021 年 8 月期だけだ。
財務は強い。自己資本比率は 76% で目標の 65% を上回る。借入は小さく、現預金は 16 億円ある。
ROE は過去 10 年の中央値で 4%。資本が厚い分、収益率は低い。資本の使い方は無難で、配当と自社株買いで返している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
紙の印刷市場は、ペーパーレスと電子化で長く縮んでいる。帳票は特に速い。請求書の電子化が進み、郵送の請求書は年々減る。
一方、DM と通知の処理は、広告費の中のプロモーション領域として横ばいから微増にとどまる。通販や健康食品の会社が、紙の DM と会員への案内に頼る場面は残る。2025 年の総広告費は 8 兆円を超え、5 年連続で伸びた。
競合は、大手の印刷会社(TOPPAN など)や、データプリント専業の中堅だ。大手が大量の案件をとり、地方の印刷会社が処理を請け負う分業の面がある。
郵便料金の引き上げと用紙価格の上昇は、顧客の紙の使用量を減らす。同時に、郵送を絞って電子へ移す動きが強まる。
筆者は、この領域は縮む帳票と、横ばいの DM・通知処理の組み合わせで、10 年で数量は 2〜3 割細ると見る。残る事業者は、情報管理の信頼と処理の効率で選ばれる。
一方で、新聞折込や街頭の配布物が減る分、郵送の DM に回る広告費もある。地方の印刷会社は、大手の下請けになるか、地元の官公庁や企業の通知処理を抱えるかで分かれる。福島印刷は後者の色が濃い。
資本政策と M&A
資本政策は誠実だ。配当は年に中間と期末の 2 回。ほかに自社株買いを続け、前期の財務キャッシュ・フローは 3.3 億円の流出だった。
純現金は 10 億円で、時価総額の約半分。借入は小さく、事業に必要な資金を除いて、余った現金を株主へ返す余地が大きい。
政策保有株は、総取得額を総資産の 2% までと決めており、前期も一部を売却した。保有は北國フィナンシャルホールディングスなどで、金額は小さい。
設備投資は年 1 億円ほどで、償却を下回る水準だ。更新を絞って利益を出している面があり、設備の老朽化が先送りされている可能性がある。
TOB や再編の可能性は小さくないが、価値の評価には使わない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
DM と通知の処理は、紙が減る中でも残る仕事だ。個人情報を扱う安全性を持つ会社は少なく、大手の印刷会社が処理を外に出す流れもある。前期は DM が 22% 伸びた。
純現金が 10 億円あり、時価総額の半分に迫る。ここに工場の土地と建物の価値を足せば、今の株価は資産で支えられる。会社が余った現金を返すなら、事業の価値は小さくても株主の取り分は大きい。
物価が上がる世界では、紙の処理の値段も上がる。用紙と郵送の費用を転嫁できれば、売上は名目で増える。利益率が 5% に戻れば、営業利益は 4 億円に届く。
政策保有株の売却と自社株買いも続いている。財務が強いので、設備の更新や自動化の投資をして、利益率を上げる余地もある。
配当と自社株買いを合わせた還元は、利益の 7 割から全額に近い。現金を溜め込まず、返す姿勢は明確だ。
最近の第 3 四半期は、売上が減っても経常利益は前年並みだった。コストの管理が効いている点も、下振れの小ささを裏づける。
慎重な見方
帳票は 8% まで縮み、請求書の電子化は止まらない。IPDP も同じ流れで、10 年で数量が 3 割以上細る。DM は広告費の中で最も紙に頼る領域で、郵便料金の上昇で顧客が電子に移る。
利益率は 3% 台で、5% を超えたのは 12 年で 1 回だ。固定費の重い設備産業なので、数量が減ると利益が先に削られる。前期の第 3 四半期累計は売上が 10% 減り、営業利益も 19% 減った。
顧客の 12% が TOPPAN で、価格を決める力は弱い。大手の都合で数量と単価が動く下請けの構造だ。
純現金は事業の運転資金と更新投資を差し引くと、見かけほど余らない。設備投資が償却を下回る状態は、老朽化のつけを後で払うことになる。
資産の価値も、事業が縮めば工場の稼働が下がり、土地・建物は売っても売却の損が出る。収益率が低いまま資本が厚い会社は、割安に見えて割安ではない。
郵送費の上昇で顧客が紙を減らす流れも加わる。会社の目標だった経常利益率 5% は、12 年で 1 度しか達成していない。
どちらに重みを置いたか
財務の厚さと情報管理の信頼を評価しつつ、紙の縮小と薄い利益率を重く見た。確率は中立に厚く、やや悲観と悲観で 34% を置いた。
楽観は、DM の伸びが続き利益率が 5% 台に戻る筋書きで 8% にとどめた。
財務の強さと還元の姿勢は、下振れに強い点として評価した。ただし利益率が低く縮む領域の事業なので、割安とまでは言えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/08 期)
確率で加重した株価時価総額 491 円26 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 190 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 350 円19 億円、今との差 −6.1%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 979 円53 億円 | 372 円20 億円 | +262.2% | +13.7% | 108 円6 億円 |
| やや楽観 | 20% | 642 円35 億円 | 261 円14 億円 | +141.9% | +9.2% | 180 円10 億円 |
| 中立 | 38% | 538 円29 億円 | 205 円11 億円 | +99.0% | +7.1% | 282 円15 億円 |
| やや悲観 | 24% | 274 円15 億円 | 112 円6 億円 | +3.3% | +0.3% | 92 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 148 円8 億円 | 37 円2 億円 | −50.5% | −6.8% | 18 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 491 円26 億円 | 190 円10 億円 | +82.7% | +6.2% | 682 円37 億円 |
今の株価時価総額 373 円20 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% DM の伸びが続き、利益率が 5% 台に戻る 利益 4 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 979 円53 億円
DM の処理が通販や健康食品の顧客で伸び、取扱量は 1.2 倍になる。大手が処理を外に出す流れも追い風だ。請求書の電子化は IPDP を削るが、行政や金融の通知は紙で残る。
価格は物価並みの 1.34 倍(帳票だけは競争で 1.25 倍)で、売上は 104 億円ほどになる。自動化の投資が効き、営業利益率は 5.5% に上がる。
配当と自社株買いは利益の 7 割で続き、自己資本は 61 億円ほどになる。純現金は引き続き厚い。
大手の印刷会社から処理を請け負う案件が増え、TOPPAN 以外の大口も育つ。金沢の工場の稼働率が上がり、固定費の負担が軽くなる。
- BF サービス(コンピュータ用帳票・ラベル):数量 0.6(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 7.56(今の売上(億円、名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。規模 0.60 倍・価格 1.25 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 1%
- 企画商印サービス(広告・マニュアル印刷):数量 0.9(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 1.13(今の売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模 0.90 倍・価格 1.34 倍、利益率 5%
- IPDP サービス(請求書等の印字・発送処理):数量 1.0(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 34(今の売上(億円、名目))→ 売上 32 億円・営業利益 2 億円。規模 0.95 倍・価格 1.34 倍、利益率 6%
- DMDP サービス(DM と処理受託):数量 1.2(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 55(今の売上(億円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 4 億円。規模 1.20 倍・価格 1.34 倍、利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 53 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:DM と通知処理が残り、利益率が 2021 年の水準近くに戻る筋書き。12 年で 5% を超えたのは 1 回だけなので 8% にとどめた。
やや楽観 20% DM は横ばい、帳票の減りを処理で補う 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 642 円35 億円
DM の取扱量は 1.05 倍と横ばい。通販の会員向けの案内が残り、紙の需要を支える。IPDP は 15% 減り、BF は半分近くに縮む。価格は物価並みに近く、1.30 倍。
売上は 89 億円ほどに伸び、利益率は 4% に上がる。純現金の受取利息も効く。
自己資本は 60 億円ほど。配当と自社株買いは利益の 6 割で続く。
TOPPAN への依存は少し薄まり、地元の通販系の顧客が増える。純現金の受取利息が利益を支え、会社は余った現金を還元に回し続ける。新しい封入設備の投資も、更新の範囲で回収できる。
- BF サービス(コンピュータ用帳票・ラベル):数量 0.6(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 7.26(今の売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。規模 0.55 倍・価格 1.20 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 0%
- 企画商印サービス(広告・マニュアル印刷):数量 0.8(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 1.09(今の売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模 0.80 倍・価格 1.30 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 4%
- IPDP サービス(請求書等の印字・発送処理):数量 0.9(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 33(今の売上(億円、名目))→ 売上 28 億円・営業利益 1 億円。規模 0.85 倍・価格 1.30 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 4.5%
- DMDP サービス(DM と処理受託):数量 1.1(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 53(今の売上(億円、名目))→ 売上 56 億円・営業利益 2 億円。規模 1.05 倍・価格 1.30 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 4%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:DM が横ばいを保ち、利益率が 4% に上がる筋書き。20%。
中立 38% 数量は 2〜3 割細り、利益率は 3% 台で粘る 利益 2 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 538 円29 億円
帳票は半分に縮み、IPDP は 25% 減り、DM は 1 割減る。帳票の価格は用紙高を転嫁しきれず、競争もあって 1.20 倍にとどまる。ほかの品目は 1.30 倍で、売上は 77 億円ほどに伸びる。
利益率は 3% 台を保つ。用紙・郵送・人件費は物価で上がり、値上げで吸収する。既存の設備の償却は物価で増えず、更新投資が増えた分だけ新しい償却が足される。
純現金の受取利息が利益を押し上げる。純利益は 1.8 億円ほどで、10 年の合計は 17 億円ほど。
配当と自社株買いを合わせて 11 億円を返し、自己資本は 59 億円ほどになる。大きな投資は無く、現金は還元後も 10 億円近くを保つ。
- BF サービス(コンピュータ用帳票・ラベル):数量 0.5(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 7.26(今の売上(億円、名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。規模 0.50 倍・価格 1.20 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 0%
- 企画商印サービス(広告・マニュアル印刷):数量 0.7(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 1.09(今の売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模 0.70 倍・価格 1.30 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 3.5%
- IPDP サービス(請求書等の印字・発送処理):数量 0.8(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 33(今の売上(億円、名目))→ 売上 25 億円・営業利益 1 億円。規模 0.75 倍・価格 1.30 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 4%
- DMDP サービス(DM と処理受託):数量 0.9(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 53(今の売上(億円、名目))→ 売上 48 億円・営業利益 2 億円。規模 0.90 倍・価格 1.30 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)5 億円。全体の PER 12.12 倍、時価総額 26 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:紙の縮小を、物価並みの値上げと処理の効率で一部補う標準の姿。確率の中心。
やや悲観 24% 電子化が加速し、利益はゼロ近くに縮む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 274 円15 億円
帳票は 6 割減り、IPDP は 4 割、DM は 3 割減る。価格は物価に届かず 1.20 倍。顧客が郵送を絞り、電子の通知へ移る。
設備の稼働が下がり、固定費の負担が重い。利益率は 1% 台に落ち、営業利益は 0.5 億円ほど。
配当と自社株買いは利益に合わせて縮み、10 年で 6 億円ほど。受取利息で赤字は避ける。
株主の取り分は稼ぐ力ではなく、純現金と工場の資産の価値で測る局面に入る。電子化が顧客の通知の標準になり、大手からの委託も減る。人員は自然減で調整し、早期退職の費用も出る。受託の単価も大手の値下げ要求に押され、物価に追いつかない。
- BF サービス(コンピュータ用帳票・ラベル):数量 0.4(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 6.66(今の売上(億円、名目))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。規模 0.40 倍・価格 1.10 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 -3%
- 企画商印サービス(広告・マニュアル印刷):数量 0.6(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 1.01(今の売上(億円、名目))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。規模 0.55 倍・価格 1.20 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 0%
- IPDP サービス(請求書等の印字・発送処理):数量 0.6(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 30(今の売上(億円、名目))→ 売上 18 億円・営業利益 0 億円。規模 0.60 倍・価格 1.20 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 1.5%
- DMDP サービス(DM と処理受託):数量 0.7(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 49(今の売上(億円、名目))→ 売上 35 億円・営業利益 0 億円。規模 0.70 倍・価格 1.20 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 1%
倍率:純利益は 0.5 億円ほどで稼ぐ力に値が付かない。今の自己資本 53 億円に PBR 0.22 倍を掛け、純現金と売れる資産の税後を床とした。
確率:請求書と DM の電子化が加速する筋書き。実績に近い下振れとして 24%。
悲観 10% 受注を失い、赤字のまま工場を畳む 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 148 円8 億円
TOPPAN など大口の取引が減り、DM と通知の取扱量は半分になる。価格は 1.10 倍にとどまる。電子化と郵便料金の上昇で、顧客が紙の DM をやめる。
固定費が重く、営業赤字が続く。10 年の純損失は合計で 3 億円ほど。配当は止まる。
設備の更新を止め、拠点の整理が始まる。純現金は損失で目減りする。
株主の取り分は、現金と土地の価値で測る。顧客の離脱は戻らず、情報管理の信用も新規の受注には効かない。金沢の工場は稼働が落ち、償却と人件費が重くのしかかる。設備の更新を止めても、拠点の整理と人員の削減で一時的な損失が出る。TOB や再編の可能性はあるが、事業の価値を戻す材料にはならない。
- BF サービス(コンピュータ用帳票・ラベル):数量 0.3(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 6.05(今の売上(億円、名目))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。規模 0.30 倍・価格 1.00 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 -8%
- 企画商印サービス(広告・マニュアル印刷):数量 0.4(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 0.92(今の売上(億円、名目))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。規模 0.40 倍・価格 1.10 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 -5%
- IPDP サービス(請求書等の印字・発送処理):数量 0.4(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 28(今の売上(億円、名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。規模 0.40 倍・価格 1.10 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 -3%
- DMDP サービス(DM と処理受託):数量 0.5(取扱量の規模(実質、今を 1))× 価格 45(今の売上(億円、名目))→ 売上 23 億円・営業利益 −1 億円。規模 0.50 倍・価格 1.10 倍(競争と用紙高で物価に届かず)、利益率 -3%
倍率:構造的に負けた姿。純損失で稼ぐ力に値が付かず、売れる資産が床になる。今の自己資本 53 億円に PBR 0.15 倍。
確率:構造的に負ける筋書き。大口の離脱と電子化で縮む。10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
BF サービス(コンピュータ用帳票・ラベル)
コンピュータ用帳票・一般帳票・シール・ラベルの印刷。縮む領域。
| 数量取扱量の規模(実質、今を 1) | 価格今の売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1.0 | 6.05 | 6 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.5 | 7.26 | 4 | 0 |
取り方:売上 6.05 億円(有報)。品目別の利益は開示が無く、全社の営業利益 2.47 億円を売上と利益率の差から按分して推定した。数量は規模を今を 1 とする指数で置いた(推定)。
企画商印サービス(広告・マニュアル印刷)
広告宣伝用印刷とマニュアル印刷。売上の 1%。
| 数量取扱量の規模(実質、今を 1) | 価格今の売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1.0 | 0.84 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 0.7 | 1.09 | 1 | 0 |
取り方:売上 0.84 億円(有報)。品目別の利益は開示が無く、全社の営業利益 2.47 億円を売上と利益率の差から按分して推定した。数量は規模を今を 1 とする指数で置いた(推定)。
IPDP サービス(請求書等の印字・発送処理)
請求書・行政通知などを印字して発送する処理を受託する。売上の 35%。
| 数量取扱量の規模(実質、今を 1) | 価格今の売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1.0 | 25 | 25 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 33 | 25 | 1 |
取り方:売上 25.28 億円(有報)。品目別の利益は開示が無く、全社の営業利益 2.47 億円を売上と利益率の差から按分して推定した。数量は規模を今を 1 とする指数で置いた(推定)。
DMDP サービス(DM と処理受託)
ダイレクトメールの制作・印字・発送処理。売上の 56%。
| 数量取扱量の規模(実質、今を 1) | 価格今の売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 1.0 | 41 | 41 | 1 |
| 10 年後 中立 | 0.9 | 53 | 48 | 2 |
取り方:売上 41.12 億円(有報)。品目別の利益は開示が無く、全社の営業利益 2.47 億円を売上と利益率の差から按分して推定した。数量は規模を今を 1 とする指数で置いた(推定)。
リスクと懸念
紙の縮小と電子化
請求書の電子化とペーパーレスで、帳票は売上の 8% まで縮んだ。IPDP も同じ流れで細る。10 年で数量が 2〜3 割減る置き方に入れた。
大口顧客への依存
TOPPAN が売上の 12.45%。大手の都合で数量と単価が動く下請けの構造で、価格を決める力は弱い。
用紙・郵送費の上昇
用紙価格と郵便料金の上昇は、顧客の紙の使用量を減らす。転嫁できなければ利益率が先に削られる。
設備更新の先送り
設備投資は年 1 億円ほどで償却を下回る。老朽化が進み、更新で現金が出ていく局面が来る。
情報漏洩
個人情報を扱う事業で、漏洩の損害賠償と信用の失墜は直接の致命傷になる。
収益率の低い厚い資本
自己資本比率 76% で ROE は 4% 前後。余った現金を返さなければ、資本の効率はさらに下がる。
今後の分かれ目
- DM の売上が 2 期続けて伸びたら
- 処理の需要が紙の縮小を上回るとみて、楽観・やや楽観の確率を引き上げる。
- 営業利益率が 5% を超えて定着したら
- 効率化の成果とみて、中立の利益率を上げる。
- TOPPAN の売上比率が 2 割を超えたら
- 依存が強まったとみて、価格を決める力を低く見直す。
- 自社株買いや増配が大きくなったら
- 余った現金の戻りが進んだとみて、現金の評価を上げる。
- 設備投資が償却を大きく上回ったら
- 更新の先送りが終わったとみて、現金の評価を下げる。
見ておくもの
- DMDP サービスの売上
- 営業利益率(会社の目標は経常 5%)
- 純現金と還元の額
- TOPPAN の売上比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。ROE が k 8.25% を下回る筋書きは、PER の上限が 1÷k = 11.8 倍で、縮む領域のため中立は 7.6 割の 9.0 倍にとどめた。現金は事業に要る 4〜5 億円を除いた 5 億円を余った現金とし、戻り方 1.0 で足した。悲観側は純現金と売れる資産の税後を床にした。今の株価・過去の倍率は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→12.12 倍・やや楽観 PER 10→12.12 倍・中立 PER 9→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 9.00%。