結論
セーラー万年筆は、広島県呉市の工場で万年筆とインクを作る筆記具の老舗だ。青梅の工場では、射出成形機の部品を取り出すロボットも作る。筆者の結論は「割高」で、いちばんの理由は、会社全体ではまだ稼げていないことにある。
2025年12月期の営業損失は2億円。文具は0.6億円の黒字に戻ったが、ロボット機器が2.6億円の赤字で打ち消した。売上は43億円で、10年前から3割縮んでいる。2026年12月期の営業利益の予想は、ほぼゼロだ。
借入は19億円で、手元の現金は5億円。自己資本は10億円しか残っていない。国内の営業は親会社のプラスに任せており、資金の面でも親会社の支援の確約に支えられている。
筆者は、万年筆の高級化で文具を伸ばし、ロボットの赤字を止める姿を中心に置く。それでも10年の価値は、今の時価総額の半分にも届かない。
ブランドの値打ちが、利益として積み上がる日が来るかが、この会社を見る上での焦点だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「ブランドは本物だが、利益が追いついていない」型だ。万年筆の書き味という本物の強みはある。だが、その強みが毎年の利益として積み上がっていない。
オーナーとして持ちたい会社の条件は、少ない元手で毎年安定して稼ぐことだ。セーラーは売上が縮み、会社全体では赤字が続き、借入がある。ロボット機器の赤字を止められるかが、評価の分かれ目になる。
筆者が見たいのは、文具の利益率が3%を超えて定着し、ロボットの赤字が止まる姿だ。それが見えるまでは、払う値段に余裕のある会社とは言えない。親会社が支える安心感はあるが、少数株主の取り分を守る保証ではない。
経営が資本をどう配分するかも評価に入れる。広島の新棟への投資は、万年筆の高級化に向けた前向きな一手だ。ただ、ロボットへの追加投資は、赤字の中では慎重に見たい。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。一つは文具で、売上の約8割を占める。万年筆とインクが中心で、広島の工場が主力だ。1911年創業の老舗で、国内だけでなく欧州や中国にもファンがいる。2026年2月からは一部の万年筆を値上げした。
もう一つはロボット機器で、売上の約2割。射出成形機の部品を取り出すロボットと、特注の自動化装置を作る。工場の設備投資が先送りになると、受注が落ちる。赤字が続き、2025年は営業損失が2.6億円に膨らんだ。
国内の文具の営業は、親会社のプラスに任せ、売上に応じた手数料を払う。2022年にプラスが支配株主になり、経営管理の契約を結んだ。借入の一部も親会社から借りている。
売上は10年で3割縮んだ。万年筆の高級化とロボットの立て直しの両方が、会社の次の課題だ。
海外では、欧州の子会社を通じて筆記具を売る。万年筆の愛好家向けの店や代理店が主な売り先だ。ロボット機器の主な客は、プラスチック成形機を使う自動車や電機の部品工場で、受注は工場の設備投資の波に左右される。子会社の欧州法人の持分は70%で、少数株主がいる。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、万年筆のブランドにある。セーラーは「長刀研ぎ」などの書き味と、ブランドの歴史で、愛好家に支持される。ただ、国内の大きな競合はパイロットやプラチナ万年筆で、規模はそれぞれ大きい。
値段を決める力は、高級品では一定ある。2026年の値上げも、売上は落ちなかった。ただ、全体の売上に占める高級品の割合は大きくなく、通常の筆記具では競争が厳しい。
資本の効率は低い。過去10年のROEの中央値は5%台のマイナスで、黒字の年も小さかった。ロボット機器は、規模が小さく、技術の差も大きくないため、稼ぐ力に疑問がある。
強みを探すなら、万年筆の書き味と、ものづくりの技術だ。ただ、その価値が利益に結びつくまでには、まだ時間がかかる。
人の面でも強みと弱みがある。広島の工場には長年の職人がいて、書き味を支える。一方で、技術を受け継ぐ人の確保は、小さな会社にとって重い課題だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
筆記具の市場は、国内では縮んでいる。文具全体で年に1%ほど減り、学校のデジタル化と少子化が重しになる。万年筆は例外で、高級品の需要が根強く、欧州や中国で愛好家が増えた。
大手では、コクヨ、パイロット、三菱鉛筆が市場を分け合う。万年筆ではパイロットとプラチナが強く、セーラーは小さな3番手だ。海外でも、ドイツや中国のメーカーとの競争がある。
ロボット機器の市場は、プラスチック成形機の需要に左右される。国内の工場の設備投資が止まると、受注が一気に減る。米国の営業は始まったばかりで、成果はまだ見えない。
人件費と原材料は物価で上がる。値上げを通せるのは高級品だけで、通常品には限度がある。業界の再編は進んでおり、小さな会社は大手や親会社の傘の下に入る流れが続く。
海外では、万年筆が趣味の道具として見直されている。インクの色やペン先の違いを楽しむ愛好家が、欧州や中国で増えた。国内の小さな工房に近い作りのセーラーには、この流れが追い風になる。ただ、数量の伸びは小さな市場の中の話にとどまる。ロボット機器の市場でも、同じ形の小さな競合が多い。
資本政策と M&A
還元はない。無配で、早期の復配を目指すとしているが、赤字の今は難しい。借入は19億円で、親会社から5億円を借りた。資金繰りに困った時は、親会社が支援する確約を得ている。
広島工場の土地は、簿価で7億円を超える。含み益があるかは確かめられていない。売れば現金は増えるが、主力の工場を手放す選択は考えにくい。
親会社のプラスは議決権の約58%を持つ。親子上場の整理として、完全子会社化の話が出る可能性はある。ただ、現時点で発表はない。
ロボット機器は、売却や提携の対象にもなりうる。赤字を止められないなら、文具に集中する判断が親会社から出ても不思議ではない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
文具は黒字に戻した。高価格帯の強化と値上げが利益を押し上げ、2025年は営業利益が0.6億円になった。万年筆の高級品は、欧州と中国で愛好家が増えており、数量も伸びる余地がある。
ロボット機器は受注が10億円まで戻り、受注残も積み上がった。国内の設備投資が戻れば、赤字は止まる。親会社のプラスが営業を支え、資金の面でも安心感がある。
文具の利益率が5%まで戻れば、売上が50億円でも利益は2億円を超える。借入の利払いを払っても、利益が残る。ブランドの価値を考えれば、そこまでの道は遠くない。
親子上場の整理で、完全子会社化の話が出る可能性もある。
広島工場の新棟は2022年に竣工し、万年筆の増産と品質の向上に備えた。設備はすでに整っており、売上が伸びれば固定費の負担が軽くなって利益率が上がる。
ブランドの値打ちが数字に出始めた今は、再評価の入り口にある。
ロボットは赤字でも、受注残が積み上がった。売上が計上される来期以降、赤字幅は縮む可能性が高い。
慎重な見方
売上は10年で3割縮み、営業赤字が続いている。2026年12月期の営業利益の予想も、ほぼゼロにとどまる。文具の黒字は小さく、ロボットの赤字2.6億円が全部を打ち消した。
借入は19億円で、自己資本は10億円しかない。重要事象等の記載があり、親会社の確約に頼る形だ。借り換えの金利が上がれば、利払いがさらに重くなる。
万年筆の高級化は、パイロットやプラチナと競う世界で、小さな3番手には限りがある。ロボットは規模が小さく、技術の差も大きくない。親会社に営業を任せ、手数料も払うため、利益が会社に残りにくい。
親子上場は、少数株主にとって、売り時を決められない状況でもある。
新棟への投資で減価償却と利払いが増え、売上が伸びなければ負担が重くなる。ロボット機器への期待は、受注残が積み上がっても赤字が減らなかった過去の実績で、すでに裏切られている。
文具の黒字は1年だけの実績で、続くかはまだ分からない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。ブランドの価値と文具の黒字化は評価できるが、会社全体の赤字と借入の重さは変わらない。確率は中立から悲観寄りに置き、楽観とやや楽観を合わせて2割強にとどめた。ロボット機器の赤字が止まるかを、最も重く見た。 親会社が支える安心感は評価したが、少数株主の取り分を守る約束ではないため、確率には反映しなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 57 円17 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 23 円7 億円、今との差 −76.5%、 期待の年率 −5.3%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 201 円60 億円 | 10 円3 億円 | +111.2% | +7.8% | 13 円4 億円 |
| やや楽観 | 18% | 116 円35 億円 | 0 円0 億円 | +16.4% | +1.5% | 21 円6 億円 |
| 中立 | 38% | 53 円16 億円 | 0 円0 億円 | −46.7% | −6.1% | 20 円6 億円 |
| やや悲観 | 25% | 14 円4 億円 | 0 円0 億円 | −85.8% | −17.8% | 4 円1 億円 |
| 悲観 | 13% | 4 円1 億円 | 0 円0 億円 | −96.5% | −28.4% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 57 円17 億円 | 1 円0 億円 | −42.1% | −5.3% | 58 円17 億円 |
今の株価時価総額 100 円30 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 高級万年筆が海外で伸び、ロボットの赤字が消える 利益 5 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 201 円60 億円
万年筆の高級品が海外で愛好家を広げ、出荷の数は3割増える。値上げも通り、1点あたりの売上は物価を上回って伸びる。文具の営業利益率は9%まで上がる。ロボット機器は自動化の需要が戻り、小さな黒字になる。借入は返済が進み、普通株への配当も再開する。ただ、万年筆の市場は小さく、成長には限りがある。広島の新棟を生かし、高級品の生産量と品質を上げる。親会社の営業力と海外の代理店を使い、欧州と中国で売上を広げる。この姿は、ここ数年の文具の実績の延長線上にある。海外の愛好家向けに限定品を出し、利益率の高い高級品の割合をさらに上げる。
- 文具(万年筆・インク・筆記具):数量 130(出荷点数(万点、推定))× 価格 0.52(1 点あたりの売上(億円/万点・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 6 億円。数量 1.30 倍、単価 1.55 倍、営業利益率 9.0%
- ロボット機器(取出機・特注自動化装置):数量 312(出荷台数(台、推定))× 価格 0.05(1 台あたりの売上(億円/台・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量 1.30 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.7% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍。全体の PER 12.42 倍、時価総額 60 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:万年筆の高級品が欧州と中国で伸び、ロボット機器が黒字になる筋書き。ブランドは本物なので捨てないが、市場が小さく確率は低くした。
やや楽観 18% 文具の黒字が定着し、ロボットは小さな黒字 利益 3 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 116 円35 億円
文具は出荷の数が2割増え、1点あたりの売上は高級品の割合が上がって物価を上回る。営業利益率は6.5%まで戻る。ロボット機器は小さな黒字にとどまる。借入の利払いを払っても利益が残り、自己資本は積み上がる。復配はするが、配当の性向は低い。ロボット機器は受注が戻るが、利益率は低い。万年筆の高級化が主な利益の源になる。親会社との取引条件は安定したままだ。この姿は、ここ数年の文具の実績の延長線上にある。親会社の営業網と、海外の代理店の双方が働き、売上が安定して伸びる。借入の返済は進まず、設備投資を優先するため、普通株への配当は小さいままだ。金利の上昇で利払いは増える。
- 文具(万年筆・インク・筆記具):数量 120(出荷点数(万点、推定))× 価格 0.48(1 点あたりの売上(億円/万点・名目))→ 売上 58 億円・営業利益 4 億円。数量 1.20 倍、単価 1.45 倍、営業利益率 6.5%
- ロボット機器(取出機・特注自動化装置):数量 264(出荷台数(台、推定))× 価格 0.05(1 台あたりの売上(億円/台・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。数量 1.10 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.2% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.5 倍。全体の PER 11.49 倍、時価総額 34 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:文具の高級化が続き、ロボットの赤字が止まる筋書き。文具の黒字化が1年目の実績にとどまるため、確率は2割弱にした。
中立 38% 文具の小さな黒字で、会社は続く 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 53 円16 億円
文具は国内の縮みを海外の高級品が補い、出荷の数は1割増える。値上げは通るが、1点あたりの売上は物価を上回る程度にとどまる。営業利益率は4%と、過去12年の山の2%を上回る。直近の1年で文具が赤字から黒字に変わったこと、2026年の値上げ、コスト削減が裏づけだ。ロボット機器は赤字が止まり、小さな黒字になる。利払いを引くと、利益は1億円台にとどまる。借入は少しずつ返済され、利払いは金利の上昇で増える。広島の新棟の償却は、取得した値段のまま続き、物価で増えない。普通株には小さな利益が残る。この姿は、ここ数年の文具の実績の延長線上にある。
- 文具(万年筆・インク・筆記具):数量 110(出荷点数(万点、推定))× 価格 0.47(1 点あたりの売上(億円/万点・名目))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。数量 1.10 倍、単価 1.40 倍、営業利益率 4.0%
- ロボット機器(取出機・特注自動化装置):数量 240(出荷台数(台、推定))× 価格 0.05(1 台あたりの売上(億円/台・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 1.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 16 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:文具が小さな黒字を保ち、ロボット機器の赤字が止まる筋書き。直近の文具の黒字転換を10年の出発点に置く。
やや悲観 25% 文具の黒字が崩れ、ロボットの赤字が残る 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 14 円4 億円
文具は出荷の数が5%減り、値上げが通りにくくなる。営業利益率は1.5%まで下がる。ロボット機器は受注が減り、赤字が続く。借入の金利が上がり、利払いが利益を食う。親会社の支援を前提に事業を続けるが、少数株主の取り分は薄い。ロボット機器は規模が小さいまま、受注が減って固定費を支えきれない。万年筆の値上げは客の反発を招き、数量が減る。この姿は、ここ数年の文具の実績の延長線上にある。文具とロボットの両方が小さいまま固定費を支えきれず、利益は赤字に近づく。営業利益は小さく、金利が上がった分の利払いを吸収できない。EV ÷ 営業利益は40倍を超え、利益の倍率で測れる状態にない。
- 文具(万年筆・インク・筆記具):数量 95.0(出荷点数(万点、推定))× 価格 0.43(1 点あたりの売上(億円/万点・名目))→ 売上 41 億円・営業利益 1 億円。数量 0.95 倍、単価 1.30 倍、営業利益率 1.5%
- ロボット機器(取出機・特注自動化装置):数量 168(出荷台数(台、推定))× 価格 0.05(1 台あたりの売上(億円/台・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70 倍、単価 1.20 倍、営業利益率 -4.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロでPERは使えない。今の自己資本10.5億円の約4割にとどめる。借入が先に払われ、普通株の取り分は小さい。 EV ÷ 営業利益は約40倍で、営業利益が小さく利益の倍率では測れない。
確率:国内の需要が縮み、文具の利益率が元に戻る筋書き。10年の赤字の実績の延長にあたり、確率を厚くした。
悲観 13% ロボットの赤字が止まらず、親会社の傘に入る 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 4 円1 億円
文具は出荷の数が2割減り、高級品が伸びない。営業赤字が続く。ロボット機器は受注が半分以下に減り、赤字が膨らむ。親会社が追加の資金を出し、完全子会社化が普通株主に不利な条件で行われる可能性もある。広島の工場の稼働率が下がり、償却と固定費が重くなる。親会社への依存が一段と深まる。この姿は、ここ数年の文具の実績の延長線上にある。取引銀行は親会社の保証を求め、貸出の条件を厳しくする。新しい借り換えの条件は厳しく、金利は親会社基準より高くなる。事業の整理や売却の議論が現実になる。最終的には、ロボット機器の売却や、文具だけを残す再編が選ばれやすい。
- 文具(万年筆・インク・筆記具):数量 80.0(出荷点数(万点、推定))× 価格 0.40(1 点あたりの売上(億円/万点・名目))→ 売上 32 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.80 倍、単価 1.20 倍、営業利益率 -2.0%
- ロボット機器(取出機・特注自動化装置):数量 96.0(出荷台数(台、推定))× 価格 0.04(1 台あたりの売上(億円/台・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 0.40 倍、単価 1.10 倍、営業利益率 -10.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、今の自己資本10.5億円の1割。借入と親会社の資金が先に払われ、普通株の取り分は小さい。
確率:文具もロボットも赤字になり、親会社の追加支援が必要になる筋書き。赤字の実績の長い会社として、確率を薄くしすぎなかった。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
文具(万年筆・インク・筆記具)
広島の工場で万年筆とインクなどを作り、国内と海外で売る。
| 数量出荷点数(万点、推定) | 価格1 点あたりの売上(億円/万点・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 100 | 0.33 | 33 | 1 |
| 10 年後 中立 | 110 | 0.47 | 51 | 2 |
取り方:売上33.4億円は開示のセグメント売上。数量は開示がなく、1点あたりの売上を0.334億円/万点(万年筆・インク・替え芯の混在の平均)と置いた出荷点数の推定。営業利益は開示のセグメント利益。
ロボット機器(取出機・特注自動化装置)
射出成形品の取出機と特注の自動化装置を設計・製造・販売する。
| 数量出荷台数(台、推定) | 価格1 台あたりの売上(億円/台・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 240 | 0.04 | 10 | −3 |
| 10 年後 中立 | 240 | 0.05 | 13 | 0 |
取り方:売上9.65億円は開示のセグメント売上。1台あたりを約400万円(取出機と特注装置の混在)と置いた出荷台数の推定。営業損失は開示のセグメント損失。
リスクと懸念
ロボット機器の赤字
2025年の営業損失は2.6億円で、全社の営業損失を上回る。受注は工場の設備投資に左右され、米国の営業はまだ成果が見えない。赤字が止まるかが、この会社の分かれ目だ。
借入と利払い
借入は19億円で、手元の現金は5億円。自己資本は10億円しかない。借り換えの金利が上がれば、営業利益が小さいため、利払いが利益を食う。
万年筆の市場の小ささ
万年筆の高級品は伸びているが、市場は小さく、パイロットやプラチナなどの競合が強い。値上げが通る範囲にも限りがある。
親子上場の利益相反
親会社のプラスが議決権の約58%を持ち、国内の営業も任せている。手数料や取引の条件は親会社に有利になりうる。完全子会社化が起きる場合、少数株主の条件は交渉力に左右される。
継続企業の前提
有報に重要事象等の記載がある。疑義注記は付いていないが、親会社の資金支援の確約が前提になっている。支援の条件が変われば、評価は大きく変わる。
ブランドの継承
万年筆の書き味を支える職人の技術は、広島の工場の少人数に依存する。人手不足と後継者の確保は、品質とブランドの価値に直結する。
今後の分かれ目
- 文具の営業利益率が3期続けて3%を超える
- ブランドが利益に結びついたとみて、中立の利益率を上げ、楽観側の確率を厚くする。
- ロボット機器の営業損失が1億円を下回る
- 全社の赤字が止まる。やや楽観の確率を上げる。
- 親会社が完全子会社化を発表する
- 普通株の価値は買付価格で決まる。条件は少数株主に不利になりやすい。
- 借入の返済や借り換えで金利が大きく上がる
- 利払いが営業利益を超え、やや悲観の確率を上げる。
- 高級万年筆の海外の売上が2桁で伸びる
- 楽観側の筋書きに近づく。ブランドの価値が数字に出る。
見ておくもの
- 文具事業の営業利益率
- ロボット機器の受注残と営業損益
- 借入の残高と金利
- 親会社プラスとの取引条件
- 海外の万年筆の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEと資本コスト9.5%から決めた。中立と悲観寄りの筋書きではROEがkを下回り、PERの上限は1÷k=10.5倍。縮む国内市場なので上限の8割弱に置き、今の株価や過去の評価からは置いていない。10年の価値が今の時価総額を大きく下回るが、会社全体が赤字で借入がある会社に対する自然な結果で、今の株価に寄せて倍率を上げる理由はない。新リース会計の影響は小さい(工場は自社で保有)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.42 倍・やや楽観 PER 9→11.49 倍・中立 PER 8→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 0.5%。k = 基本 7.5% + quality 1.5% + 上乗せ 0.5% = 9.5%。