結論
ウイルコホールディングスは、石川県の白山市を拠点に、チラシなどの商業印刷、特殊ラベル・シールを手がける印刷会社だ。知育教材の出版も持つ。筆者の結論は、紙の印刷が縮む構造のなかで利益が出ておらず、今の時価総額に見合う稼ぐ力は描きにくい、というものだ。
売上は2019年10月期の157億円から、2025年10月期に85億円まで細った。営業損失は6億円に膨らみ、減損と工場再編の損失を足した純損失は9億円だった。2026年10月期も、通期の経常損益は赤字の見通しに引き下げられている。
会社は2025年に、創業家の影響力を排除するため自己株式の公開買付けを実施し、純資産は36億円から14億円へ細った。創業家の資産管理会社が関わる雇用調整助成金の不適切受給が背景にあり、東証の特別注意銘柄の指定は続いている。
借入は純額で14億円ある。自己資本比率は18%で、紙・電力・物流のコスト上昇を売値に移す力は弱い。工場の再編と、2025年7月に取得したウエーブの統合が黒字化の道筋だ。
筆者は、事業の価値は小さいと見る。黒字化しても利益は1億円程度にとどまり、資本コストに届かない。上場を維持できるかも含め、株主の取り分には不確実性が大きい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は買いたい種類の事業ではない。紙の印刷は縮み、堀もなく、10年後に今より強いとは言えない。オーナー利益(株主が自由にできる利益)は、いま赤字で、黒字になっても借入の利払いと工場の更新投資に消える。
時価総額は純資産とほぼ同じ水準で、安全域があるとは言えない。純資産の中身は工場と設備で、稼ぐ力に結びついていない。工場の更新投資は、建築費と機械の値上がりで膨らむ。償却は取得価格のままでも、会計の利益は見かけよりも現金に残らない。
経営の資本の使い方も、評価しにくい。創業家の影響力を排除するために、純資産の4割近くに当たる約10億円を自己株の買い付けに使った。企業統治を正す意味はあるが、本業の稼ぐ力を高める支出ではない。
筆者は、稼ぐ力に基づく値打ちを小さく置く。特別注意銘柄の指定と上場維持の不安は、確率の置き方に反映する。わからない事業に、高い値は払わない。
何で稼ぐ会社か
事業は三つある。情報・印刷、知育、通信販売だ。2025年10月期の売上は、情報・印刷が78億円、知育が7億円、通信販売が0.4億円だ。ほとんどが情報・印刷で、利益の行方もそこで決まる。
情報・印刷は、チラシなどの商業印刷、特殊ラベル・シール、デジタルコンテンツの制作、FA機器を扱う。本社工場と北國工場が石川県白山市にあり、ほかに埼玉県の加須工場、京都府の京都工場がある。ネットの印刷通販経由の受注は堅調だが、それ以外の印刷の受注の減少を補いきれていない。
知育は、図書の出版、教材、幼稚園・保育園向けの商品を扱う。売上は7億円弱で、赤字が続く。通信販売は美容食品・健康補助食品で、規模は小さい。
2025年7月に、株式会社ウエーブの全株式を取得して子会社にし、情報・印刷に加えた。従業員は95名増え、連結で389名になった。ただし、取得の効果はまだ利益に表れていない。
経営は工場の再編を進める。遊休の関東工場の輪転機を売却し、工場再編の損失を計上した。紙、電力、物流の費用が上がる中で、価格転嫁に時間がかかるのが悩みだ。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社に堀はないと見る。商業印刷は他社との差が小さく、価格と納期で競う入札に近い商売だ。顧客の切り替えも簡単で、値段を自分で決める力はない。
良い点は、ネットの印刷通販に早くから取り組み、オンライン経由の受注が堅調なことだ。特殊ラベル・シールは、チラシよりも需要が安定する。取引先は広く、特定の得意先への依存は有価証券報告書が挙げる課題の一つにとどまる。
悪い点は多い。過去10年のうち営業利益率が3%を超えた年はなく、赤字の期が続く。2025年10月期は、営業損失が6億円で、そのうち本社費などの全社費用が3億円を超えた。減損が4.6億円、工場再編の費用が約2億円と、事業の後始末が続いている。
ガバナンスにも傷がある。創業家の資産管理会社に関わる雇用調整助成金の不適切受給で、東証から特別注意銘柄に指定され、上場契約違約金を徴求された。2026年1月時点で指定は継続している。
経営の資本の使い方は、自己株式の公開買付けで創業家の影響力を排除する選択をした。それは、問題の根を断つ一手でもあるが、純資産を3分の1近くへ細らせ、財務の余裕をなくした。筆者は、この点を確率の置き方に反映させる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の印刷市場は、1991年の約9兆円から縮み、2024年に6兆円台まで減った。チラシや雑誌などの紙媒体は、ネット広告と電子化に需要を奪われ、長期の縮小が続く。ウイルコが得意とする商業印刷は、この縮小の中心にある。
競合は、TOPPANと大日本印刷の二強、地域の中堅印刷会社、ネット印刷通販のラクスルなどだ。大手は半導体材料や包装に事業を広げて利益を守る。中小の印刷会社は、設備の過剰と価格競争で、工場の再編を迫られている。
費用の面でも逆風が強い。紙の値上がり、電力料金、物流費の上昇に加え、人件費も最低賃金の上昇で年3〜5%増える。価格に転嫁できる力が弱い会社は、値上げ分を自分で抱える。
この領域に属する同業は、近い「印刷・パッケージング材料」の領域を物差しにした。そこでは、印刷本体は名目で年に2〜4%縮むとされる。物価の上昇を引いた実質の数量は、10年で6割前後まで縮む計算になる。筆者はこれに揃え、情報・印刷の数量を10年で0.65倍とした。
価格は物価並みの1.34倍を中立とした。ただ、紙と電力の上昇を売値に移しきれず、利益率は上がらない。知育教材は少子化で数量が緩やかに縮み、ネットの無料教材との競争もある。
資本政策と M&A
配当は、2025年10月期の期末に小さな額を出した。原資はその他資本剰余金で、利益からではない。株主優待は確認できていない。
最大の資本政策は、2025年8月から9月に行った自己株式の公開買付けだ。会社が10.5百万株を買い付ける計画で、創業家の資産管理会社の影響力を排除し、改善計画の確実な実行と、特別注意銘柄の早期解除、上場維持を図った。創業家の持株比率は約4割から約2割に下がった。買い付けた株は消却され、支出は約10億円で、純資産は大きく細った。
2025年7月にウエーブを買収したが、効果はこれからだ。TOBの発表は確認できていない。時価総額が小さく、上場維持基準の流通株式時価総額でも、2025年10月に監理銘柄(確認中)に指定され、11月に解除された経緯がある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ネットの印刷通販の受注が伸び、ウエーブの取得で規模が増える。特殊ラベル・シールの比率が高まれば、チラシの縮小を補える。工場の再編が終われば、固定費は大きく下がる。
営業損失の中身は、全社費用と一過性の費用が大きい。上場契約違約金や調査の費用が消えれば、営業利益は一気に改善する。2027年10月期に営業損益が均衡するという会社の見通しは、現実的な目標だ。
特別注意銘柄の指定が解除されれば、市場の信頼が戻り、資金調達もしやすくなる。創業家の影響力が小さくなったことで、ガバナンスの改善が進んだ証拠になる。
さらに、時価総額が純資産に近い水準で、事業の再建が成功すれば、評価の余地は大きい。ウエーブの従業員95名の力で、受注の取りこぼしを減らせる。
石川県白山市の本社工場と北國工場は、地方の印刷会社として人件費と地代が相対的に低い。ネット印刷通販の物量が増えれば、工場の稼働率が上がり、固定費の負担が薄まる。創業家の影響力が下がった今は、不採算の事業を整理しやすい。
慎重な見方
売上は6年で157億円から85億円へ、半分近くに縮んだ。営業損失は6億円で、減損と工場再編の費用がさらに積み上がった。2026年10月期の通期経常損益は、黒字予想から赤字予想に引き下げられた。
紙の商業印刷は、ネット広告と電子化に需要を奪われ続ける。紙・電力・物流の費用は上がり、価格に転嫁できる力は弱い。ウエーブの取得も、利益の改善にはまだつながっていない。
財務は薄くなった。自己株式の公開買付けで純資産は36億円から14億円に細り、自己資本比率は18%だ。短期借入が増え、利払いは借り換えで上がる。
最後に、特別注意銘柄の指定が続いている。上場維持基準の流通株式時価総額でも、監理銘柄の指定を一度受けた。上場を維持できなければ、株主の取り分は大きく損なわれる。
知育も赤字が続き、7億円弱の売上で人件費をまかなえない。通信販売は売上が4千万円まで縮み、続ける意味が薄れた。事業の整理が進めば売上はさらに減り、全社費用の負担が重くなる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。赤字の継続、紙の印刷の構造的な縮小、自己株式の公開買付けによる財務の細りが重なる。強気の見方が頼る工場の再編と全社費用の縮小は、実績がまだ乏しい。
そこで確率は、小さな黒字にとどまる中立を最も厚く置き、やや悲観と悲観を合わせて4割とした。特別注意銘柄の指定と上場維持の不安は、悲観の確率に反映した。楽観は、再編の成功と指定の解除が重なる場合で、1割に満たない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 27 円4 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1 円0 億円)。 今の値に割り戻すと 10 円2 億円、今との差 −84.7%、 期待の年率 −8.3%(資本コスト 11.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 111 円17 億円 | 13 円2 億円 | +84.6% | +6.3% | 10 円2 億円 |
| やや楽観 | 18% | 35 円6 億円 | 2 円0 億円 | −44.2% | −5.7% | 7 円1 億円 |
| 中立 | 34% | 23 円4 億円 | 0 円0 億円 | −66.3% | −10.3% | 8 円1 億円 |
| やや悲観 | 26% | 13 円2 億円 | 0 円0 億円 | −80.8% | −15.2% | 3 円1 億円 |
| 悲観 | 14% | 3 円1 億円 | 0 円0 億円 | −95.2% | −26.2% | 0 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 27 円4 億円 | 1 円0 億円 | −58.1% | −8.3% | 28 円4 億円 |
今の株価時価総額 67 円10 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 11.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 再編と通販印刷が実り黒字が定着 利益 2 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 111 円17 億円
ネット印刷通販の受注が伸び、特殊ラベル・シールの比率が上がる。ウエーブの統合で営業の取りこぼしが減り、情報・印刷の数量は10年で8割まで減るにとどまる。価格は物価を少し上回る。
工場の再編が終わり、固定費は大きく下がる。上場契約違約金や調査の費用といった一過性の全社費用は消え、営業利益率は3%台に乗る。
特別注意銘柄の指定が解除され、市場の信頼が戻る。借入は返済が進み、配当を再開できる水準に達する。複数の条件が揃う必要があり、確率は1割に満たない。
人件費と紙のコストは物価で上がるが、再編で生産性が上がり、値上げと相殺できる。更新投資は物価で膨らむものの、借入を増やさずに賄える。
- 情報・印刷:数量 49.6(年間受注件数(万件、推定))× 価格 1.73(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 86 億円・営業利益 4 億円。49.6×1単位1.725万円、営業利益率 4.5%
- 知育・通販:数量 26.4(年間販売点数(万点、推定))× 価格 0.42(1点あたり売上(万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。26.4×1単位0.417万円、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 11.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.1 倍。全体の PER 9.09 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の再編・通販印刷の伸び・特別注意銘柄の解除が重なる必要があり、実績の乏しい現状では1割に満たない確率とした。
やや楽観 18% 再編が進み小さな黒字へ 利益 1 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 35 円6 億円
工場の再編が計画どおりに進み、情報・印刷の数量は7割強まで減るにとどまる。ネット印刷通販が縮小を一部補い、価格は物価並みに上がる。
全社費用は一過性の費用が消えて下がり、営業利益率は2%台まで戻る。純利益は小さな黒字で、借入の利払いが利益を半分近く食う。
特別注意銘柄の指定は解除されるが、財務の余裕は薄いままだ。小さな黒字が出る会社に戻るが、資本コストを上回る稼ぎにはならない。
知育は少子化で緩やかに縮み、赤字は止まる。ウエーブの統合の効果は、受注の取りこぼしが減る形で少しずつ表れる。借入は返済が進まず、借り換えで利払いが上がる。
- 情報・印刷:数量 44.6(年間受注件数(万件、推定))× 価格 1.70(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 76 億円・営業利益 3 億円。44.6×1単位1.700万円、営業利益率 3.3%
- 知育・通販:数量 24.0(年間販売点数(万点、推定))× 価格 0.41(1点あたり売上(万円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。24.0×1単位0.411万円、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 11.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.1 倍。全体の PER 9.09 倍、時価総額 6 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:工場の再編が計画どおり進み小さな黒字に戻る筋書き。2027年10月期の損益均衡の見通しを踏まえ、2割弱とした。
中立 34% 縮小が続き損益ゼロ近辺 利益 0 億円 · PER 9.1 倍 · 株価時価総額 23 円4 億円
情報・印刷の数量は、チラシや商業印刷の縮小で10年で65%まで減る。価格は物価並みの1.34倍で、売上は75億円ほどまで細る。知育は少子化とネット教材で数量が緩やかに減る。
営業利益率は1%台で、営業利益は1億円ほどだ。全社費用は物価で増えるが、一過性の費用が消えて1億円台まで下がる。借入の利払いが利益を半分食い、純利益は小さな黒字にとどまる。
最初の数年は赤字が続き、自己資本はさらに細る。配当は出せず、設備の更新投資が現金を食う。10年後の姿は、小さな黒字の印刷会社が生き残る形だ。
特別注意銘柄の指定はいずれ解除されるが、市場の信頼の回復には時間がかかる。上場維持基準の流通株式時価総額は、ぎりぎりの水準で推移する。
- 情報・印刷:数量 40.3(年間受注件数(万件、推定))× 価格 1.68(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 2 億円。40.3×1単位1.675万円、営業利益率 3.0%
- 知育・通販:数量 22.8(年間販売点数(万点、推定))× 価格 0.40(1点あたり売上(万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。22.8×1単位0.405万円、営業利益率 2.0%
倍率:事業の純利益 0 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.9% が k 11.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 9.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 9.1 倍。全体の PER 9.09 倍、時価総額 4 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:縮小が続き、損益ゼロ近辺にとどまる落としどころ。強気・慎重の中間として最も厚く置いた。
やや悲観 26% 赤字が続き資産を売って縮む 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 13 円2 億円
紙の商業印刷の縮小は止まらず、数量は5割台まで減る。価格は物価に届かず、1.3倍にとどまる。ウエーブの統合は効果を出せず、知育も赤字が続く。
営業損益は赤字で、借入の利払いが加わり、純損失が毎年出る。自己資本は4億円ほどまで細り、遊休の工場や投資有価証券を売って資金を作る。
売れる資産の値打ちを見るしかない局面で、株主の取り分は小さい。工場の更新投資は先送りされ、設備の老朽化が受注の取りこぼしにつながる。特別注意銘柄の指定も解除に時間がかかり、資金調達の足かせになる。配当はなく、借入の条件の見直しを迫られる。
知育と通信販売は赤字が続いて整理に向かい、売上はさらに減る。全社費用の縮小は、売上の減少に追いつかない。
- 情報・印刷:数量 34.1(年間受注件数(万件、推定))× 価格 1.63(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 0 億円。34.1×1単位1.625万円、営業利益率 0.5%
- 知育・通販:数量 20.4(年間販売点数(万点、推定))× 価格 0.39(1点あたり売上(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。20.4×1単位0.393万円、営業利益率 -3.0%
倍率:赤字のため PER は使えず、遊休の工場・投資有価証券などの売れる資産の税後を、今の自己資本(14億円)に対する比(約1.4割)で表した。
確率:赤字が続き資産を売って縮む筋書き。直近の赤字の深さと純資産の細りを踏まえ、4分の1強とした。
悲観 14% 上場を維持できず整理に向かう 利益 −3 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 3 円1 億円
数量は半分以下に縮み、営業赤字が毎年続く。特別注意銘柄の指定が解除されず、流通株式時価総額も上場維持基準を下回る。
借入の借り換えが難しくなり、資産の売却と整理が進む。上場を維持できなければ、株式の流動性が失われ、株主の取り分は大きく損なわれる。
この筋書きでは、事業の価値はほぼなくなり、残る株主価値は売れる資産から借入を引いた残りだけになる。清算されない限り、その使い方は少数株主には決められない。
創業家の持株は残るため、整理の主導権をめぐる対立も起きうる。従業員の雇用と工場の閉鎖の費用も、手元の資金を削る。
- 情報・印刷:数量 27.9(年間受注件数(万件、推定))× 価格 1.50(1件あたり売上(万円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 −1 億円。27.9×1単位1.500万円、営業利益率 -3.0%
- 知育・通販:数量 16.8(年間販売点数(万点、推定))× 価格 0.36(1点あたり売上(万円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。16.8×1単位0.362万円、営業利益率 -6.0%
倍率:上場を維持できず整理に向かう。売れる資産から借入を引いた残りを、今の自己資本に対する比(約4%)で表した。
確率:特別注意銘柄の指定継続と流通株式時価総額の不安から、上場を維持できない筋書き。監理銘柄の指定歴を踏まえ、1割強とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
情報・印刷
チラシなどの商業印刷、特殊ラベル・シール、デジタルコンテンツ、FA機器。ウエーブを含む。
| 数量年間受注件数(万件、推定) | 価格1件あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 62.0 | 1.25 | 78 | −2 |
| 10 年後 中立 | 40.3 | 1.68 | 68 | 2 |
取り方:売上とセグメント利益は開示(情報・印刷77.5億・損失1.58億、知育6.84億・損失1.18億、通販0.41億・損失0.19億)。件数・点数と単価は開示がなく、売上を平均単価で割る推定。全社費用(調整)は営業損失6.23億円との差の−3.28億円。
知育・通販
知育の図書出版・教材・幼保向け商品と、美容食品の通信販売。
| 数量年間販売点数(万点、推定) | 価格1点あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 24.0 | 0.30 | 7 | −1 |
| 10 年後 中立 | 22.8 | 0.40 | 9 | 0 |
取り方:売上とセグメント利益は開示(情報・印刷77.5億・損失1.58億、知育6.84億・損失1.18億、通販0.41億・損失0.19億)。件数・点数と単価は開示がなく、売上を平均単価で割る推定。全社費用(調整)は営業損失6.23億円との差の−3.28億円。
リスクと懸念
紙の商業印刷の構造的な縮小
チラシ・雑誌などの紙媒体はネット広告と電子化に需要を奪われ、10年で数量が大きく減る。売上の9割が情報・印刷で、他の事業で補う力は小さい。
特別注意銘柄の指定と上場維持
雇用調整助成金の不適切受給で2024年10月に指定され、2026年1月時点で継続している。流通株式時価総額でも2025年10月に監理銘柄(確認中)に指定された。上場を維持できなければ株主の取り分は大きく損なわれる。
紙・電力・物流の費用上昇と転嫁の遅れ
原材料費・電力料金・物流費の上昇を売値に移すのに時間がかかる。値上げが難しいと、利益率が削られる。
財務の細りと借入の借り換え
自己株の公開買付けで純資産は14億円に細り、自己資本比率は18%だ。短期借入が増えており、借り換えの金利は3%台後半へ上がる。
工場の再編と更新投資
工場の再編で減損と再編費用が続く。残す工場の更新投資は機械と建築費の上昇で膨らみ、償却を超える現金が出ていく。
ウエーブの統合と全社費用
2025年7月に取得したウエーブの統合が計画どおり進まなければ、人員の増加が固定費を押し上げる。全社費用は3億円を超え、縮小の実績が乏しい。
創業家の影響の残り
創業家の資産管理会社の持株比率は約2割で残る。自己株式の公開買付けで影響力は下がったが、ガバナンスの課題が完全に消えたとは言えない。
今後の分かれ目
- 2027年10月期に営業損益が均衡し、全社費用が2億円台に下がったら
- 楽観・やや楽観の確率を引き上げる。工場の再編と一過性の費用の消滅が確認できる。
- 特別注意銘柄の指定が解除されたら
- 上場維持への不安が和らぎ、悲観の確率を下げる。資金調達もしやすくなる。
- 通期の経常損益がさらに下方修正されたら
- やや悲観・悲観に重みを移す。借入の条件の見直しの有無を確かめる。
- 流通株式時価総額が再び上場維持基準を下回る状況になったら
- 上場廃止のリスクを再評価する。監理銘柄の指定があれば分析の対象から外す。
- ネット印刷通販の受注が前年比で2桁増を続けたら
- 情報・印刷の数量の置き方を上方に見直す。縮小を補えるかを確かめる。
見ておくもの
- 四半期の営業損益と全社費用
- 借入残高と自己資本比率
- 特別注意銘柄の指定の状況
- ネット印刷通販の受注
- ウエーブの統合効果
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置き、今の株価や同業の倍率は使っていない。時価総額が純資産とほぼ同じ水準という事実は結果であり、筋書きの出発点にしていない。近い印刷の領域の物差し(印刷本体は名目で縮小)に揃え、実質数量を10年で0.65倍とした。工場の償却は取得価格のまま、更新投資は物価で膨らむ前提で見た。新リース会計基準の影響は小さく、今と同じ形でそろえた。中立の PBR が0.19倍と低いのは、ROE 3%前後の稼ぐ力で測った結果で、工場は更新投資が要り売値が簿価に届かないため。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 7.5→9.09 倍・やや楽観 PER 7→9.09 倍・中立 PER 6.5→9.09 倍)。
資本コスト 11.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5% + 上乗せ 1.0%。