結論
セブン工業は、住宅の内装建材と木構造建材をつくる会社だ。2026 年 3 月期の売上は約 156 億円。内装建材が 83 億円、木構造が 73 億円で、どちらも営業赤字だった。
筆者の結論は「やや割高」だ。自己資本は約 61 億円と厚く、自己資本比率は 55% と安全だ。しかし営業利益率は 1〜3% で、純利益は自己資本の 4% ほどしか生まない。株価は自己資本の 4 割弱で、資産の厚みで割安に見える。
問題は、資産が稼ぎに結び付いていないことだ。設備投資が減価償却を上回り、営業の稼ぎがマイナスのため、借入が増えている。住宅着工は 2030 年度に 80 万戸まで戻っても、2040 年度には 61 万戸へ減ると見られる。
都築木材が議決権の 4 割を持つ。TOB の可能性は残るが、一部取得だった 2024 年の TOB でも上場は続いた。確率で重みを付けた価値は、今の時価総額を 3 割弱下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、安く見えるが稼げない会社だ。株価は自己資本の 4 割ほどで、土地と設備、運転資本で支えられる。借入も軽く、潰れにくい。
問題は、その資産が稼ぎに変わらないことだ。10 年の ROE の中央値は 3.8% で、資本のコストを下回り続けている。資産の厚みは、株主にとって安全域になる一方、利益率の低さは、資産が眠っていることの裏返しでもある。
堀はほとんど無い。住宅の材料は差が付きにくく、大口の取引先に頼る。10 年後に今より強くなる姿を描きにくい。
事業の利益が資本のコストを上回らない限り、割安に見える株価は割安ではない。ただし筆頭株主が 4 割を持ち、完全子会社化の可能性はある。その場合の価格は帳簿を意識したものになり、下値は支えられる。それでも確率で重みを付けた価値は、今の時価総額を下回った。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は 2 つある。内装建材は、住宅の床材や壁材などの内装の部材で、売上の約 5 割を占める。木構造は、住宅の骨組みに使う構造用の木材の加工と販売で、売上の約 5 割。どちらも住宅の着工戸数で数量が決まる。主な取引先は、賃貸住宅の大手の大東建託だ。
2026 年 3 月期の売上は 155.9 億円。営業利益は 0.56 億円の赤字で、内装が 0.22 億円、木構造が 0.37 億円の赤字だった。純損失は 1.27 億円。2027 年 3 月期は売上 167.7 億円、営業利益 1.35 億円を見込むが、第 1 四半期は 0.62 億円の営業赤字で始まった。
海外調達はベトナムが中心で、円安と物流費の影響を受ける。従業員は 376 人(臨時を除く)。
2026 年 4 月に、集成材を手がける山口工業を完全子会社にした。取得額は開示されていない。美濃加茂には、帳簿で約 15.6 億円の土地を持つ。取引先の住宅会社は、全国の賃貸住宅と戸建てを手がける。内装建材と木構造は、どちらも住宅の着工に連動し、景気や金利の動きがそのまま数量に響く。
優良さと弱いところ
堀は薄い。内装建材と木構造は、同じ住宅向けの材料で、差を付けにくい。大東建託という大口の取引先がある一方、その取引先の発注に左右される。
収益の質は低い。10 年の ROE の中央値は 3.8% で、純利益と営業利益の比は、過去 9 年の中央値で 0.77。赤字の年は 2008 年、2009 年、2011 年、2024 年、2026 年と、10 年のうち 3 年に近い頻度で出ている。
財務の安全度は高い。自己資本比率は 55.7%、純資産は約 61 億円、現預金は約 7 億円。ただし借入は約 21 億円あり、純借入は 16 億円まで増えた。設備投資が 8.2 億円と、減価償却の約 5 億円を上回り、営業のキャッシュフローは約 3 億円の流出、フリーキャッシュフローは約 9 億円の流出だった。
経営目標は、営業利益率 3% 以上、ROE 5% 以上。数値の中期計画はなく、目標は 2 年続けて未達である。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅着工が需要を決める。野村総合研究所の 2026 年 6 月の予測では、2025 年度の 71.1 万戸が 2030 年度に 80 万戸へ戻り、2040 年度には 61 万戸へ減る。貸家は 32 万戸から 29 万戸へ、持家は 20 万戸から 14 万戸へ減る。
セブン工業の取引先は貸家が多い。貸家は相続対策の需要に支えられるが、金利の上昇に弱い。
供給の側では、職人と運転手の不足、物流費、円安の 3 つが費用を押し上げる。内装建材は海外調達に頼るため、為替で利益が動く。木構造は、木材の相場と加工の稼働率で利益が決まる。
10 年の構造的な負け筋は、着工の減少で数量が縮み、固定費の重い工場の稼働率が下がる姿である。これは需要の縮みに、設備の償却と賃金の上昇が重なる形で現れる。住宅の材料は規格化が進み、価格の差を付けにくい。大手の商社や同業は、調達の規模で優位に立つ。小さな会社は、地域と取引先の関係に頼る面が強い。内装建材は国内のメーカーに加えて海外の調達品とも競合し、価格の主導権を握りにくい。
資本政策と M&A
還元は配当が中心。配当の総額は年 0.9 億円ほどで、純損失の年も続けている。自社株買いの実績は確認できなかった。
借入は約 21 億円で、短期が約 4 億円、長期が約 15 億円、リースが約 2.5 億円。山口工業の設備資金は借入でまかなう。
10 年の還元は、中立で約 10 億円とし、今の配当水準を続ける前提にした。純利益の 4 割を超える年もあるが、自己資本が厚く、無理なく続けられる。ただし赤字が続けば、減配に追い込まれる。
大株主は都築木材(議決権の約 40%)と西垣林業(約 10%)。都築木材は 2024 年末から 2025 年 1 月にかけて、TOB で議決権を 27% から 40% に高めた。完全子会社化ではなく、上場は続いた。今後の追加取得や完全子会社化は、可能性として残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
株価は自己資本の 4 割にすぎず、資産の厚みが下値を支える。美濃加茂の土地だけで時価総額の 7 割に当たる約 15.6 億円の帳簿価額がある。自己資本比率は 55% で、借入も軽い。
利益は戻る方向にある。2027 年 3 月期は営業利益 1.35 億円と黒字に戻る見込みで、山口工業の取り込みで木構造の加工から素材の調達までつながる。設備投資が一巡すれば、営業の稼ぎは借入の返済に回る。
住宅着工は 2030 年度に 80 万戸へ戻る見通しだ。筆頭株主の都築木材は 2025 年に議決権を 4 割まで高めた。完全子会社化に進めば、帳簿に近い値段が出る余地がある。経営目標は営業利益率 3% 以上で、実現すれば今の値段は利益の 10 倍を下回る水準になる。木材の相場や為替に追い風が吹けば、利益率は一気に戻る。山口工業との連携で、木構造の赤字が早く止まる可能性もある。資産と目標の両方を見れば、売られ過ぎの面もある。
慎重な見方
株価が資産の 4 割という安さには理由がある。稼げないからだ。10 年の ROE の中央値は 3.8% で、赤字の年も多い。2026 年 3 月期は内装建材も木構造も営業赤字で、2027 年 3 月期の第 1 四半期も赤字で始まった。
設備投資が減価償却を大きく上回り、営業のキャッシュフローが流出に転じて、純借入は 16 億円まで増えた。山口工業の取得で、借入はさらに増える。
住宅着工は 2030 年度の 80 万戸をピークに、2040 年度には 61 万戸へ減る見通しだ。取引先は貸家が多く、金利の上昇にも弱い。
都築木材の TOB は、割安な価格で、上場を保った。完全子会社化の保証はなく、4 割の大株主がいるため、他の株主が値段を決める力は弱い。資産が厚くても、株主に還る保証はない。土地は含み益が見込めるとしても、売却には時間と税がかかる。配当も、赤字が続く間は減らされ得る。会社の目標は 2 年続けて未達で、計画の信頼度は高くない。
どちらに重みを置いたか
資産の厚みと財務の安全度では、強気の見方が正しい。しかし稼ぐ力の弱さと、着工の長期的な減少は、慎重な見方が突いている。中立は営業利益率を 2% 前後に置いた。確率は中立を 38% と厚くし、やや悲観を 27%、悲観を 10% とした。確率で重みを付けた価値は、今の時価総額を 3 割弱下回った。完全子会社化の可能性は、下値を支える要素として悲観の PBR に織り込んだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 613 円27 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 188 円8 億円)。 今の値に割り戻すと 389 円17 億円、今との差 −22.1%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,367 円61 億円 | 314 円14 億円 | +236.7% | +12.9% | 118 円5 億円 |
| やや楽観 | 18% | 968 円43 億円 | 269 円12 億円 | +147.8% | +9.5% | 223 円10 億円 |
| 中立 | 38% | 632 円28 億円 | 224 円10 億円 | +71.5% | +5.5% | 325 円15 億円 |
| やや悲観 | 27% | 300 円13 億円 | 112 円5 億円 | −17.4% | −1.9% | 111 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 220 円10 億円 | 22 円1 億円 | −51.5% | −7.0% | 24 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 613 円27 億円 | 188 円8 億円 | +60.5% | +4.8% | 801 円36 億円 |
今の株価時価総額 499 円22 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 住宅着工が持ち直し、木構造が黒字で定着する 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,367 円61 億円
住宅着工は 80 万戸近くまで戻り、賃貸住宅の主要取引先からの注文も厚くなる。木構造の売上は今の 1.8 倍の約 130 億円に伸び、山口工業の集成材が加わって調達と加工の費用が下がる。内装建材は海外調達の品揃えを広げ、値上げも通る。賃金と物流費の上昇は価格に転嫁でき、稼働率も上がって固定費が薄まる。営業利益率は内装 3.5%、木構造 3.0% まで戻る。営業利益は約 8 億円で、経営目標の 3% を上回る。設備投資の山が過ぎて営業の稼ぎが借入の返済に回り、利払いは軽くなる。配当は純利益の 3 割弱を保ち、無理なく続く。自己資本も 76 億円まで積み上がり、財務の余裕はさらに増す。住宅の需要が戻り、会社の目標が実現する筋書きである。
- 内装建材:数量 28.2(住宅戸数換算(千戸・実質))× 価格 4.15(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 4 億円。内装建材 28.2 × 4.1451 億円、利益率 3.5%
- 木構造:数量 15,788(住宅棟数換算(棟・実質))× 価格 0.01(1 棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 4 億円。木構造 15788.0 × 0.0082 億円、利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 61 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:着工の持ち直しと木構造の黒字化が揃う筋書き。木構造は 2026 年 3 月期も営業赤字で、実現は難しい。
やや楽観 18% 投資が実り、利益率が 2〜3% に戻る 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 968 円43 億円
着工は横ばいから微増で、内装建材は今の水準を保つ。木構造は山口工業の取り込みと新工場の稼働で売上が 1.5 割増え、稼働率が上がって赤字を抜ける。海外調達の割合が増え、仕入れ費用の上昇も価格にほぼ転嫁できる。営業利益は約 6 億円、営業利益率は 2〜3% で、経営目標の 3% には届かない。純利益は約 4 億円。配当は今と同じ水準を続ける。設備投資の一巡で借入が減り、財務の余裕が戻る。堅実だが、目標には少し足りない姿だ。自己資本は 70 億円まで積み上がるものの、資本のコストは上回れない。利益は伸びるが、資産の大きさに比べれば小さい。
- 内装建材:数量 27.3(住宅戸数換算(千戸・実質))× 価格 4.06(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 111 億円・営業利益 3 億円。内装建材 27.3 × 4.0646 億円、利益率 2.8%
- 木構造:数量 13,967(住宅棟数換算(棟・実質))× 価格 0.01(1 棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 3 億円。木構造 13967.0 × 0.0080 億円、利益率 2.4%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 43 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2027 年 3 月期予想は営業利益 1.4 億円で、翌年以降に 3% 近くへ戻る筋書き。山口工業の取り込みに期待できるが、経営目標は 2 年連続で未達だ。
中立 38% 中立:利益率は 2% 前後で、薄く稼ぐ 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 632 円28 億円
住宅着工は 2030 年度に 80 万戸へ戻るが、2040 年度には 61 万戸へ細ると見られる。10 年後の数量は今より内装建材で 4% ほど減り、木構造は山口工業の分を含めて 5% 増にとどまる。値段は物価並みに上がるが、賃金も同じ速さで上がるため、営業利益率は内装 2.0%、木構造 1.8% で、今の赤字から 2% 弱の黒字に戻る程度だ。売上は今の約 1.3 倍の約 209 億円、営業利益は約 4 億円。借入の利払いが営業利益の 1 割ほど食う。配当は今の水準を続けるが、純利益では賄いきれない年もあり、自己資本はほぼ横ばいに近い。利益は薄く、配当と設備更新を何とか賄う程度である。
- 内装建材:数量 26.5(住宅戸数換算(千戸・実質))× 価格 4.02(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 2 億円。内装建材 26.5 × 4.0244 億円、利益率 2.0%
- 木構造:数量 12,752(住宅棟数換算(棟・実質))× 価格 0.01(1 棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 2 億円。木構造 12752.0 × 0.0080 億円、利益率 1.8%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.8% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 28 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:着工が緩やかに減る中で、利益率が 2% 前後に戻る中心の筋書き。10 年の ROE の中央値 3.8% に近い。
やや悲観 27% やや悲観:着工が減り、価格競争で利益が消える 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 300 円13 億円
住宅着工は 2030 年を待たず細り、10 年後の内装建材の数量は今より 1 割減る。主要取引先の賃貸住宅向けは特に弱い。木構造も受注が伸びず、新しい設備の稼働が上がらない。価格は物価に追いつかず、営業利益率は内装 0.8%、木構造 0.5% まで下がる。営業利益は約 1 億円、利払いを引くと純利益はほぼゼロになる。配当は半分に絞るが、設備更新のたびに借入が増える。自己資本はほとんど増えない。資産は厚いが稼ぎは消え、株主に残る取り分は帳簿を大きく下回る。投資した設備が、利益でなく償却の負担として残る姿である。
- 内装建材:数量 24.8(住宅戸数換算(千戸・実質))× 価格 3.90(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 1 億円。内装建材 24.8 × 3.9036 億円、利益率 0.8%
- 木構造:数量 11,538(住宅棟数換算(棟・実質))× 価格 0.01(1 棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 90 億円・営業利益 0 億円。木構造 11538.0 × 0.0078 億円、利益率 0.5%
倍率:純利益がほぼゼロで PER は使えない。今の自己資本 61 億円に PBR 0.22 を掛けた。ROE が 1% に届かず、自己資本の多くが稼ぎに結び付かない。中立(約 0.4 倍)より低い。EV でも見た。純借入 16 億円を足した EV ÷ 営業利益は約 24 倍で、PER だけでは割安とは言えない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.22 倍・時価総額 13 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:2026 年 3 月期は営業赤字で、直近の 1 四半期も赤字だった。リーマン期や 2024 年にも赤字を出しており、利益が出ない年を厚く見た。
悲観 10% 悲観:着工が大きく減り、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 220 円10 億円
住宅着工が 2040 年度の見通しを前倒しで割り込み、内装建材は 2 割弱、木構造も 15% 減る。値下げ圧力が強く、価格は物価に追いつかない。工場の稼働が落ちて固定費が重く、営業利益は赤字で、純損失は年 3 億円ほどになる。配当は事実上止まり、自己資本は 10 年で約 12 億円削られる。土地や設備の売却で借入を返す局面に入り、工場の統廃合や人員の見直しも避けられない。少数株主の取り分は帳簿よりかなり小さくなる。大株主の判断に委ねる局面が長引き、完全子会社化の価格も帳簿より低く決まりかねない。
- 内装建材:数量 22.6(住宅戸数換算(千戸・実質))× 価格 3.74(千戸あたり売上(億円・名目))→ 売上 85 億円・営業利益 −1 億円。内装建材 22.6 × 3.7427 億円、利益率 -1.0%
- 木構造:数量 10,323(住宅棟数換算(棟・実質))× 価格 0.01(1 棟あたり売上(億円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 −1 億円。木構造 10323.0 × 0.0075 億円、利益率 -1.5%
倍率:赤字なので PER は使わず、今の自己資本 61 億円に PBR 0.16 を掛けた。土地と運転資本に支えられるが、赤字の工場の価値は帳簿を下回る。
確率:着工の大幅な減少と設備投資の失敗が重なる筋書き。自己資本比率は 55% あり、5% 未満にはしない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
内装建材
住宅の床材・壁材などの内装の部材。売上の約 5 割。
| 数量住宅戸数換算(千戸・実質) | 価格千戸あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 27.6 | 3.00 | 83 | 0 |
| 10 年後 中立 | 26.5 | 4.02 | 107 | 2 |
取り方:売上 82.9 億円を、1 戸あたり約 30 万円の内装材として戸数に換算し、27.6 千戸とした(推定)。数量は実質、物価 3% は価格に入れる。
木構造
住宅の骨組みに使う構造用木材の加工と販売。売上の約 5 割。
| 数量住宅棟数換算(棟・実質) | 価格1 棟あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12,145 | 0.01 | 73 | 0 |
| 10 年後 中立 | 12,752 | 0.01 | 103 | 2 |
取り方:売上 72.9 億円を、1 棟あたり約 60 万円の構造材として棟数に換算し、12,145 棟とした(推定)。数量は実質、物価は価格に入れる。
リスクと懸念
住宅着工の長期的な減少
着工は 2030 年度に 80 万戸へ戻っても、2040 年度には 61 万戸へ減る見通し。固定費の重い工場の稼働率が下がる。
設備投資と借入の増加
設備投資が 8.2 億円で減価償却を上回り、純借入は 16 億円に増えた。山口工業の取得で、さらに借入が増える。
大口の取引先への依存
主な取引先は大東建託で、発注が減ると内装建材の売上に響く。
為替と物流費
海外調達は円安と物流費で費用が増える。価格に転嫁できなければ利益が削られる。
少数株主の取り分
都築木材が議決権の 4 割を持つ。他の株主は経営を動かす力が弱く、完全子会社化の価格も大株主の判断に左右される。
買収の成否
山口工業を 2026 年 4 月に完全子会社にした。取得額は開示されておらず、稼働率が上がらなければ負担になる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 3% を 2 年続けて超えたら
- 経営目標に届く。やや楽観に確率を寄せる。
- 2027 年 3 月期の営業利益が 1 億円を割ったら
- 利益が戻らないと見て、やや悲観の確率を上げる。
- 純借入が 25 億円を超えたら
- 投資が稼ぎに変わらない筋書きに近づく。悲観の確率を上げる。
- 都築木材が追加取得や完全子会社化を発表したら
- 値段が TOB 価格に近づく。ただし価格は帳簿ではなく大株主が決める。
- 住宅着工が 2027 年度に 75 万戸を超えたら
- 内装建材の数量が持ち直す。ただし物価の上昇分は価格に入れて見る。
見ておくもの
- 営業利益率(2% 前後の定着と 3% の達成)
- 純借入と設備投資の水準
- 木構造の営業損益(黒字化の時期)
- 住宅着工(特に貸家)
- 都築木材の持株比率
倍率と資本コストの決め方
内装建材は住宅戸数換算、木構造は棟数換算を数量とし、物価 3% は価格に入れた。営業利益率は直近の赤字ではなく、10 年の ROE の中央値と、会社の目標 3% の間に置いた。減価償却は今ある設備の分は増やさず、更新分だけ新しい値段で足す前提で、利益率に織り込んだ。倍率は ROE が k を下回るため 1÷k を上限にし、その 9 割を中立とした。今の PER や PBR は根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.56→11.43 倍・やや楽観 PER 10.33→11.43 倍・中立 PER 10→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。