結論
永大産業は、床材・室内ドア・収納を作ってハウスメーカーに卸す、住宅内装建材の老舗だ。売上の 84% が住宅資材で、その利益は 43 億円と、この 5 年でいちばん高い。一方、合弁の木質ボード事業は 4 期連続の赤字で、2026 年 3 月期に 51 億円の減損を出し、純損益は 28 億円の赤字になった。筆者の結論は、本業は悪くないが、ボードの借入に当社の保証が付いている以上、安いとは言えず、中立でも今の時価総額をやや下回る、ということだ。
本業の強みは顧客の太さだ。住友林業が売上の 19%、建材商社の SMB建材が 13% を占め、新築の住宅需要に深く入っている。弱みは、その新築が長く細る方向にあることだ。野村総合研究所は、新設住宅着工が 2030 年度の 80 万戸から 2040 年度の 61 万戸へ減ると見る。
木質ボードを担う ENボードは、当社 65%、日本ノボパン工業 35% の合弁だ。借入は約 172 億円、債務超過は 135 億円で、財務制限条項に触れた。金融機関は期限の利益を奪わないと同意したが、保証の責任は当社に残る。
中立では、10 年後の営業利益は 28 億円、純利益は 15 億円。自己資本は厚いが稼ぐ力に対して大きすぎ、ROE は 3% にとどまる。確率で重みづけした総合は、今の時価総額を 2 割近く下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、永大産業は「資産は厚いが、稼ぎが薄く、資本の使い方に傷がある」会社だ。時価総額は自己資本の 3 割に満たない。それだけを見れば安く見えるが、帳簿の自己資本には、利益を生まない土地や工場が含まれる。ROE が資本コストを下回る会社の資産は、帳簿どおりの値打ちを持たない。
見るべきは稼ぐ力だ。本業の住宅資材は 43 億円の利益を出す。全社費用 21 億円を引くと約 22 億円。ここからボードの赤字と利払いを引き、税を払うと、手元に残るのは 10 億円前後にすぎない。
もう 1 つは保証だ。ENボードが行き詰まれば、当社が債務保証の責任を負う。これは帳簿の外に近いリスクで、安全域を削る。
筆者は、ボードが月 1.5 万トンで安定し、黒字になったと確認できるまで、帳簿の厚さを理由に買う気にはなれない。確認できれば、利益は 2 倍以上に動き得る。事業の質というより、1 つの工場の稼働率に株主の運命がかかっている会社だ。
何で稼ぐ会社か
売上の 84% を占める住宅資材は、床材、室内ドア、収納、階段などの内装を作る。住宅の内側を一式そろえて納める「内装システム」が売りで、ハウスメーカーの仕様に合わせて作り込む。売上は 621 億円、セグメント利益は 43 億円、利益率は 7%。
主な売り先は住友林業(売上の 19%)と建材商社の SMB建材(13%)だ。製品には、床材の「コンカーボ」や「銘樹」ブランドがある。収納にはペット対応品を加え、単価を上げてきた。
木質ボードは、木のチップを接着剤で固めたパーティクルボードを作る。床の下地や家具の芯に使う、目立たないが量の出る素材だ。2022 年 11 月に ENボードが操業を始めた。売上は 116 億円と前年から 14% 伸びたが、セグメント損失は 16 億円。工場は月 1.5 万トンでの安定生産を目指していて、実績は 1.37 万トン前後まで来た。
ほかに遊休地の賃貸が小さくある。全社費用(本社費や研究費)が年 21 億円ほどかかり、連結の営業利益を 7 億円まで押し下げている。
優良さと弱いところ
堀は弱いと見る。床材やドアは、ハウスメーカーの仕様に合わせた受注生産が中心で、値段は顧客が強く握る。住友林業と SMB建材の 2 社で売上の約 3 割を占め、発注が減ればすぐ稼働率に響く。
それでも、本業の利益は着実に戻った。住宅資材のセグメント利益率は、2023 年 3 月期の 2.3% から 2026 年 3 月期の 7.0% まで上がった。原材料高を値上げで通し、物流や生産を見直した成果だ。
弱点は 2 つある。1 つは資本効率だ。自己資本は 418 億円と厚いのに、過去 10 年の ROE の中央値は 0.4% にすぎない。土地や工場に資金が眠り、稼ぐ力が小さい。もう 1 つは木質ボードへの投資判断だ。合弁で作った大型工場は、立ち上げから 4 年たっても黒字にならず、51 億円の減損を出した。資本配分の失敗として数える。
経営は中期計画で、ボードの安定生産と、新築依存を減らす非住宅・リフォーム・海外を掲げる。方向は正しい。ただ、ボードが黒字に転じるかどうかで、すべてが決まる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の住宅内装建材は、新築の数で需要が決まる成熟市場だ。新設住宅着工は 2025 年度の約 71 万戸から、野村総合研究所の予測で 2030 年度に 80 万戸へ戻り、その後 2040 年度に 61 万戸へ下がる。持家に限ると 20 万戸から 14 万戸に減る。永大産業の主力は持家と分譲の内装なので、数量の向かい風は強い。
補う先はリフォームだ。広義のリフォーム市場は 2024 年の約 8.3 兆円から 2040 年に 9.2 兆円へ、ゆっくり伸びる。ただ、窓口は工務店や小売りで、ハウスメーカーとの直接取引とは売り方が違う。永大産業は住宅流通と組んで広げようとしているが、結果が出るまで時間がかかる。
競合は、大手の内装建材メーカーと、ハウスメーカー専用品を作る会社が入り乱れる。値段は原材料と物流費の転嫁がテーマで、木材高は数か月遅れで値上げに乗る。
パーティクルボードは、国内の販売額が 2024 年で 442 億円ほどの小さな市場だ。輸入品が多く、東南アジア産が値段を決める面がある。ENボードの 116 億円は、概算で国内の約 4 分の 1 にあたる。告示の改正による他の面材からの置き換えを狙った工場だが、チップや接着剤、電力の費用が採算を左右する。
資本政策と M&A
配当は「安定配当」が方針で、2026 年 3 月期は総額 4.4 億円を、赤字でも変えなかった。自社株買いは行っていない。
政策保有株は上場 13 銘柄で 58 億円。最大は住友林業の 16 億円で、取引先との関係を持つ。2025 年の検証では全銘柄の継続を決めた。売る方針は数字では示されていない。
問題は借入の構造だ。連結の借入金 208 億円の大半は ENボードのもので、返済期限は 2037 年 11 月、土地や建物が担保に入る。ENボードは債務超過 135 億円で、財務制限条項に触れたが、金融機関は期限の利益を奪う権利を使わないと同意した。2026 年 4 月には MUFG の借入 38.5 億円の条項を、日本ノボパンからの借入を維持する形に改めた。当社は債務を保証し、個別決算で債務保証損失引当金を積み始めた。
大株主は取引先持株会 9.4%、住友林業 5.2%、大日本印刷 5.1%。買収の対象としては、ENボードの保証債務がついて回るため、買い手を選ぶ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
本業の利益は戻っている。住宅資材のセグメント利益は 43 億円で、利益率は 7%。値上げが通り、物流の見直しも効いた。
足を引っ張るのは ENボードだが、その赤字は縮んでいる。損失は 23 億円から 16 億円へ減り、生産は月 1.37 万トン前後まで来た。月 1.5 万トンの安定生産に乗れば、固定費の負担が軽くなる。しかも 51 億円の減損で設備の簿価が下がり、償却は軽くなった。値段が物価で上がっても、償却は増えない。この差は利益に残る。
会社は 2027 年 3 月期に営業利益 16 億円、純利益 20 億円を見込む。金融機関は財務制限条項の件で期限の利益を奪わないと同意しており、返済期限は 2037 年だ。時間は買えている。
自己資本は 418 億円あり、時価総額は 108 億円。上場株 58 億円と土地を持つので、事業が悪くなっても帳簿の底は深い。リフォームと非住宅、海外に広げれば、新築の減少も補える。
慎重な見方
営業利益 7 億円のうち、本業の利益はほぼ全社費用とボードの赤字に消えている。ボードは 4 期連続の赤字で、4 年かけても黒字にならなかった。減損 51 億円は、立ち上げを読み違えた証拠だ。
問題は保証だ。ENボードの債務超過は 135 億円。借入 172 億円のうち返せない分は、合弁相手と当社が分け合うが、日本ノボパンに十分な余力があるとは限らず、当社に負担が偏る恐れがある。個別決算では債務保証損失引当金の計上が始まった。
本業は新築に張り付く。着工は 2030 年度から 2040 年度で 80 万戸から 61 万戸に減る。利益率 7% は 5 年で最高の水準で、さらに伸ばす余地は小さい。住友林業と SMB建材の 2 社で 3 割を占め、値引き要求に弱い。
自己資本の厚さも当てにならない。10 年間、ROE の中央値は 0.4% だった。利益を生まない資産は、帳簿どおりに売れない。借入 208 億円が 3.5% に借り換わるなら、利払いは年 7 億円を超える。
どちらに重みを置いたか
本業の回復は本物だが、ボードの再建はまだ見えず、保証の重さも残る。慎重な見方を少し強いと判断し、中立に 4 割、やや悲観と悲観で 37% を置いた。楽観は、ボードが月 1.5 万トンで黒字になる姿で、1 割に満たない。
ボードの月産と損益が 2 期続けて改善すれば、悲観の確率を下げる。逆に、債務保証の追加損失や財務制限条項の再抵触が出れば、悲観を上げる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 388 円171 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 112 円50 億円)。 今の値に割り戻すと 246 円109 億円、今との差 +2.1%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 8.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 958 円423 億円 | 181 円80 億円 | +372.6% | +16.8% | 68 円30 億円 |
| やや楽観 | 17% | 692 円306 億円 | 147 円65 億円 | +248.1% | +13.3% | 143 円63 億円 |
| 中立 | 40% | 412 円182 億円 | 118 円52 億円 | +120.0% | +8.2% | 212 円94 億円 |
| やや悲観 | 24% | 136 円60 億円 | 91 円40 億円 | −6.1% | −0.6% | 54 円24 億円 |
| 悲観 | 13% | 115 円51 億円 | 57 円25 億円 | −28.6% | −3.3% | 22 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 388 円171 億円 | 112 円50 億円 | +107.3% | +7.6% | 500 円221 億円 |
今の株価時価総額 241 円107 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:木質ボードが月 1.5 万トンで安定し、住宅資材は高付加価値品で利益率を保つ 利益 36 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 958 円423 億円
木質ボードの生産が月 1.5 万トンで安定し、東南アジアからの輸入品に対しても、国内の下地材の需要を取れる。ENボードの設備は減損で簿価が軽くなり、償却は物価で膨らまない。値段だけが 1.4 倍に上がるので、ボードの利益率は 8% を超える。
住宅資材は、銘樹やコンカーボのような高付加価値の床材とペット対応の収納で単価を上げる。新築は減るが、リフォームと非住宅が穴を埋め、数量は今の 0.97 倍にとどまる。
営業利益は約 60 億円、利益率は 5.7%。過去 12 年で最も高かった 2014 年 3 月期の 5.9% に迫る水準で、これ以上は置けない。借入は返済が進み、配当は増える。
ただしこの姿でも、自己資本は大きいままで ROE は 6% 台にとどまる。
- 住宅資材(床材・ドア・収納・階段):数量 150(住戸の内装セット数(万セット))× 価格 56(1 セットの平均金額(万円))→ 売上 842 億円・営業利益 67 億円。数量 0.97 倍、高付加価値品で単価 1.40 倍
- 木質ボード(ENボード):数量 197(年間生産量(千トン))× 価格 9.90(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 195 億円・営業利益 17 億円。月 1.5 万トンの安定生産と輸入代替で 1.2 倍
- 不動産の有効活用:数量 1.0(件数)× 価格 1.66(1 件あたり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸
倍率:事業の純利益 36 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 423 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が掲げる月 1.5 万トンの安定生産が定着し、ENボードの赤字が早く止まる筋書き。住友林業向けの床材・収納の高単価化も同時に要る。両方がそろうのは難しく、1 割に満たない。
やや楽観 17% やや楽観:ボードが小さな黒字に届き、住宅資材の利益率 7% が保たれる 利益 26 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 692 円306 億円
住宅資材は新築の減少を、リフォームと非住宅の拡大で一部取り返す。数量は 0.93 倍、単価は物価並みの 1.37 倍。セグメント利益率は今の 7% を保つ。
ボードは月産が 1.5 万トン近くで安定し、売価の改善で 6% の利益を出す。償却は減損で軽く、立ち上げ期の歩留まりの悪さも消える。
営業利益は約 44 億円、利益率は 4.7%。全社費用は物価で増えるが、効率化で一部を抑える。
借入は返済が進むが、借り換えで金利が 3.5% に上がり、利払いは今より重い。配当は少しずつ増やし、10 年で 65 億円を払う。
- 住宅資材(床材・ドア・収納・階段):数量 144(住戸の内装セット数(万セット))× 価格 55(1 セットの平均金額(万円))→ 売上 790 億円・営業利益 58 億円。数量 0.93 倍、単価 1.37 倍
- 木質ボード(ENボード):数量 189(年間生産量(千トン))× 価格 9.69(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 183 億円・営業利益 11 億円。数量 1.15 倍
- 不動産の有効活用:数量 1.0(件数)× 価格 1.66(1 件あたり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 306 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の流れの延長。値上げが通った実績があり、ボードの生産は前年比 6.5% 増と改善している。会社の 2027 年 3 月期予想(営業利益 16 億円)をその後も伸ばせる姿で、2 割弱に置いた。
中立 40% 中立:本業は 7% 弱の利益率を保ち、ボードは損益ゼロ近辺。営業利益 28 億円 利益 16 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 412 円182 億円
住宅資材の数量は新築の減少で 0.90 倍に細る。リフォームと非住宅が一部を補うが、全部は戻らない。単価は物価並みの 1.34 倍。セグメント利益率は 6.6% で、今の 7.0% を少し下回る。
ボードは月 1.5 万トンに近づき、数量は 1.10 倍。値段は 1.34 倍で、償却が減損後で軽いぶん、利益率は 3% に届く。損益はおおむね収支均衡で、利払いを入れれば赤字が残る。
全社費用は 21 億円が物価の 1.3 倍の 27 億円に増える。営業利益は 28 億円、利益率は 3.1%。
この姿でも、借入の金利は 3.5% に上がり、利払いが利益を食う。純利益は 15 億円、自己資本は 460 億円台で ROE は 3% にとどまる。配当は年 5 億円前後。
- 住宅資材(床材・ドア・収納・階段):数量 140(住戸の内装セット数(万セット))× 価格 54(1 セットの平均金額(万円))→ 売上 748 億円・営業利益 49 億円。数量 0.90 倍、単価 1.34 倍
- 木質ボード(ENボード):数量 181(年間生産量(千トン))× 価格 9.47(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 171 億円・営業利益 5 億円。月産 1.5 万トン近く、利益率 3%
- 不動産の有効活用:数量 1.0(件数)× 価格 1.66(1 件あたり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 182 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:本業の回復は実績だが、ボードは 4 期赤字で、黒字化は計画止まり。中立は「ボードがようやく収支均衡に近づく」姿に置き、一番厚くした。
やや悲観 24% やや悲観:新築の減少が早く、ボードの赤字が残る。営業利益は 17 億円 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 136 円60 億円
新築着工が予測を下回り、住宅資材の数量は 0.86 倍。ハウスメーカーの値下げ要求も強く、単価は物価に届かない 1.32 倍にとどまる。セグメント利益率は 6.0% に下がる。
ボードは月産が 1.4 万トン台にとどまり、輸入品との競争で売価が伸びず、わずかな赤字が続く。
営業利益は約 17 億円、利益率は 2.0%。全社費用は物価で増え、効率化でも吸収しきれない。借り換えで利払いが膨らみ、純利益は 8 億円にとどまる。
配当は半分に減らし、10 年で 40 億円。債務保証の追加損失は出さずに済むが、金融機関との再交渉が毎年のテーマになる。
- 住宅資材(床材・ドア・収納・階段):数量 133(住戸の内装セット数(万セット))× 価格 53(1 セットの平均金額(万円))→ 売上 704 億円・営業利益 42 億円。数量 0.86 倍、単価 1.32 倍
- 木質ボード(ENボード):数量 172(年間生産量(千トン))× 価格 9.05(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 156 億円・営業利益 2 億円。赤字が止まらず
- 不動産の有効活用:数量 1.0(件数)× 価格 1.66(1 件あたり売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃貸
倍率:PER 7.5 倍。ROE は 2% 弱で k を大きく下回り、上限 11.1 倍の約 68%。利益が薄く、借入の重さで質が低い。
確率:新築の落ち込みが NRI の予測より早い場合と、ボードが損益ゼロに届かない場合の合わせ技。会社は 4 期連続で赤字を出しており、実績は慎重な見方に近い。
悲観 13% 悲観:ENボードが行き詰まり、保証の損失が当社に回る 利益 −12 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 115 円51 億円
ボードの赤字が止まらず、金融機関が条項の同意を更新しなくなる。ENボードは再建か整理に入り、当社は債務保証の履行と追加の出資で、約 90 億円の損失を負う。日本ノボパンも余力が限られ、負担は当社に偏る。
住宅資材は新築の落ち込みと価格競争で数量は 0.75 倍、単価は 1.20 倍にとどまる。セグメント利益率は 3% に落ちる。
営業利益は赤字になり、全社費用は削れない。自己資本は損失で約 300 億円まで減る。配当は 5 億円ほどで止まる。
株主に残る価値は、上場株式と土地・工場の処分価格が中心になり、帳簿の自己資本の 2 割弱にすぎない。
- 住宅資材(床材・ドア・収納・階段):数量 116(住戸の内装セット数(万セット))× 価格 48(1 セットの平均金額(万円))→ 売上 558 億円・営業利益 17 億円。数量 0.75 倍、単価 1.20 倍
- 木質ボード(ENボード):数量 115(年間生産量(千トン))× 価格 8.13(1 トンあたり販売価格(万円))→ 売上 93 億円・営業利益 −7 億円。整理・縮小で赤字
- 不動産の有効活用:数量 1.0(件数)× 価格 1.49(1 件あたり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 1 億円。賃貸
倍率:PBR 0.17 倍を減損後の自己資本 300 億円に掛けた。稼ぐ力は赤字で、価値は上場株式と事業用資産の処分価格が中心。今の自己資本 418 億円には掛けていない。
確率:合弁のボード事業が資金繰りで行き詰まり、保証の履行や追加の支援が要る筋書き。債務超過 135 億円、4 期連続の赤字、財務制限条項の抵触という実績に沿う。1 割強の確率を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
住宅資材(床材・ドア・収納・階段)
住宅の内装に使う床材・室内ドア・収納・階段などを作り、ハウスメーカーと建材商社に卸す。売上の 84%。
| 数量住戸の内装セット数(万セット) | 価格1 セットの平均金額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 155 | 40 | 621 | 43 |
| 10 年後 中立 | 140 | 54 | 748 | 49 |
取り方:売上 620.6 億円・セグメント利益 43.4 億円は有価証券報告書。セット数と単価は開示がなく、売上から「1 住戸分の床・ドア・収納で約 40 万円」と置いた推定。新築と改装の出荷を戸数に換算した。
木質ボード(ENボード)
合弁会社 ENボード(当社 65%)が作るパーティクルボード。木のチップを固めた板で、床の下地や家具の芯に使う。
| 数量年間生産量(千トン) | 価格1 トンあたり販売価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 164 | 7.07 | 116 | −16 |
| 10 年後 中立 | 181 | 9.47 | 171 | 5 |
取り方:売上 116.0 億円・セグメント損失 16.2 億円は開示。生産実績 13,676 は月平均トンと読み、年 164 千トンと推定した。単価は売上÷数量の逆算。
不動産の有効活用
遊休地の賃貸など。小さく、利益は全社の調整の中に埋もれる。
| 数量件数 | 価格1 件あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.0 | 1.24 | 1 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 1.66 | 2 | 1 |
取り方:売上 1.2 億円・利益 0.7 億円は開示。
リスクと懸念
ENボードの債務と保証
ENボードは債務超過 135 億円で、借入 172 億円に当社の保証が付く。財務制限条項にも触れた。金融機関は同意しているが、再び抵触すれば追加の損失が当社に回る。
ボードの赤字が続く
ボードは 4 期連続の赤字で、セグメント損失は 16 億円。月 1.5 万トンの安定生産に乗らず、輸入品との競争で売価が伸びなければ、減損のあとも赤字が残る。
新築住宅の減少
新設住宅着工は、野村総合研究所の予測で 2030 年度の 80 万戸から 2040 年度の 61 万戸へ減る。主力は持家と分譲の内装で、数量の向かい風が長く続く。
顧客の集中
住友林業と SMB建材で売上の約 3 割を占める。発注の方針転換や値引き要求が、そのまま稼働率と利益率に響く。
木材・原料・電力の費用
輸入木材や接着剤、電力の費用が上がっても、値上げが数か月遅れて乗る。ボードは特に、輸入品の値段に縛られて転嫁しにくい。
低い資本効率
自己資本 418 億円に対し ROE の中央値は 0.4%。土地や工場が利益を生まず、帳簿の厚さが株主の取り分にならない。
金利の上昇
借入 208 億円が借り換えで 3.5% 前後になれば、利払いは年 4 億円ほど重くなる。利益が薄い会社には大きい。
今後の分かれ目
- ボードの月産が 1.5 万トンで 2 期続き、セグメント損益が黒字になる
- 中立のボードの利益率を 3% から 5% に上げ、やや楽観を中心に見直す。
- 債務保証損失の追加計上や、財務制限条項の再抵触が出る
- 悲観の確率を 13% から 25% 前後に上げる。
- 住友林業向けの売上が 1 割以上減る
- 住宅資材の数量を 0.90 倍から 0.82 倍に下げ、利益率も 1 ポイント下げて見直す。
- 新設住宅着工が 2030 年度に 70 万戸へ戻らない
- 中立の数量を 0.86 倍に下げる。
- 政策保有株を売って借入を返す方針が数字で示される
- 純負債は減るが、受取配当も減る。利益への効果は小さいとみる。
- ボードを日本ノボパンに譲る、または整理する決定が出る
- 保証の損失は確定するが、赤字は止まる。損失額次第で悲観と中立の間に置く。
見ておくもの
- ボードの月産(目標 1.5 万トン)とセグメント損益
- 住宅資材のセグメント利益率(今 7.0%)
- 債務保証損失引当金の残高と財務制限条項の条件
- 新設住宅着工と住友林業向けの売上比率
- ENボードの借入の借り換え条件
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE が資本コスト 8.5% に届かない前提で、式の上限 1÷k=11.1 倍の 7〜9 割に置いた。時価総額が自己資本の 3 割に満たないことは、倍率の根拠に使っていない。今の株価が倍でも半分でも、数字は利益と確率だけから出る。新リース会計基準は 2028 年 3 月期から数字の形を変えるが、10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.76 倍・やや楽観 PER 9.5→11.76 倍・中立 PER 8.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5% を加えて 9.0%。ボードの保証と新築の縮小を反映した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。