結論
光・彩は、山梨県の貴金属装身具メーカーだ。イヤリング金具で国内の約 7 割のシェアを持つ。筆者の結論は割高。2027 年 1 月期の純利益予想 3 億円は、今の時価総額の 5 分の 1 に当たる。しかし、この増益は本物の稼ぎではない。
上期の営業利益は 4.4 億円と 4 倍になった。中身は、金の値上がりによる在庫の評価益だ。下期の予想は 0.6 億円前後にとどまる。会社の本来の水準は、売上の 4% 前後、営業利益で年 2 億円ほどだ。
事業の質は悪くない。パーツは国内で半分を握る寡占に近い。ただ、売上は金の値段で動き、利益率は低い。大口の取引先に頼る度合いも高い。親会社が 5 割超を持ち、東京証券取引所は上場廃止の方針で、名古屋の単独上場になる。売買は薄くなる。小さな会社だけに、金の値段と大口の取引先の動き一つで、業績は大きくぶれる。
払う値段に安全域があるかと言えば、足元の利益で見れば安い。だが、10 年の本来の稼ぎで測れば、安さは消える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「安く見えるが、稼ぎがぶれる小さな会社」だ。
今の時価総額は純資産とほぼ同じで、会社予想の純利益には 5 倍の値段にも見える。ただ、予想の利益の大半は金の値上がりが作った。値上がりは、先の本当の稼ぎにならない。営業利益で年 2 億円、純利益で 1 億円台半ばが、10 年を通した姿に近い。
資本の使い方は堅実だ。設備投資は年 0.7 億円と小さく、配当は 2 割前後。ただ、借入が多いまま金利が上がる。借りて在庫を持つ商売は、金利が上がると利益を削る。
堀はある。国内でパーツの半分を握る事業は、簡単には崩れない。ただ、堀の内側の利益率が薄い。持ち続けたい会社かと問われれば、事業は守られているが、株主に残る額が少ない。ROE は資本コストに届かず、倍率は上限の手前に置いた。
安全域は、足元の利益ではなく、10 年の稼ぎと流動資産で測る。その物差しで、今の値段は割高だ。
何で稼ぐ会社か
売上の約 7 割はジュエリーパーツだ。イヤリング金具、ピアスパーツ、クラスプなど、ファッションジュエリーの部品を作り、アクセサリー各社に卸す。見込み生産で、国内シェアは約 5 割、イヤリング金具は約 7 割と会社は開示している。残りの約 3 割はジュエリー製品で、鍛造の技術を生かしたブライダルリングが中心だ。大手宝飾ブランドの TASAKI など、全方位の得意先に供給する。
原材料は金・プラチナ・宝石で、売上には金属の値段が入る。そのため、金が上がると売上が膨らみ、利益率は薄まる。製品在庫は金の評価額まで切り下げる会計方針で、金の上昇は在庫の評価益につながる。
開示は単一セグメントで、品目別の売上のみが分かる。2025 年 1 月期の売上はパーツが 28 億円、ジュエリーが 11 億円。点数や単価は開示が無く、ここでは売上からの推定だ。従業員は正社員 89 名と臨時 54 名の小さな工場で、山梨県甲斐市に本社と製造拠点を置き、国内の宝飾産地である山梨の職人の技術を土台にしている。親会社のエスティオは健康食品の販売会社で、事業のつながりは薄い。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の優良さを「小さな寡占の工場。ただ、稼ぎの質は低い」と見る。
強みは、パーツの国内シェアと特許だ。ピアスパーツには特許商品があり、全てのファッションジュエリーの標準部品を目指している。伸線・圧延まで内製化し、鍛造の技術も持つ。工場の職人技と機械加工の組み合わせは、すぐにはまねできない。
弱みは三つある。第一に、利益率が低い。営業利益率は過去 12 年の最高でも 4% 台で、2022 年 1 月期までは 0% 前後の年が続いた。第二に、金の値段に左右される。上がれば評価益、下がれば評価損が出る。第三に、特定の取引先への依存だ。TASAKI だけで 3.6 億円の売上がある。
財務は借入に頼る。短期借入が 10 億円を超え、財務制限条項もつく。自己資本比率は 45% で、無借金ではない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の宝飾品の小売市場は 2025 年で約 1.17 兆円、前年比 3.8% 増と矢野経済研究所はみる。伸びの中身は数量でなく単価だ。金とプラチナの高騰で値上げが続き、ブライダルリングも本数はほぼ横ばいのまま金額が伸びた。市場のピークだった 1991 年の 3 割台にとどまる。
数量を決めるのは、婚姻数と若い世代の装飾品の消費だ。婚姻数は人口とともに細る。リングの本数は減る方向にある。一方で、イヤリングからピアスへの移行、ファッションジュエリーのアクセサリー各社の外注化は、部品メーカーに追い風になりうる。
競合は、貴金属加工の中小メーカーが国内に多い。石福金属興業のような上場の同業は地金の加工が中心で、ファッション向けの小さな金具は中小が分け合う。海外はタイ・中国の量産品が安く、国内メーカーは品質と納期で戦う。
金の値段は、この会社の売上と利益の両方を動かす。2026 年は 1 グラム 2 万円台で、1 年で大きく上がった。上がれば売上と評価益が増えるが、需要の冷え込みと、反落時の評価損のリスクも抱える。
資本政策と M&A
東京証券取引所スタンダード市場は、10 月 30 日に上場廃止を申請し、12 月 1 日に廃止される見込みだ。名古屋証券取引所メイン市場の単独上場になる。コスト削減が理由とみられ、売買は薄くなる。公開買付けや非公開化の発表は確かめられなかった。
親会社のエスティオ(健康食品の販売)が議決権の 54.45% を持つ。次は個人株主で、深沢栄二氏が約 7%。親会社が支配するため、少数株主の発言力は弱い。
配当は 2027 年 1 月期の期末予想で、配当性向は 2 割前後。株数は約 150 万株で、自社株買いの方針は確かめられなかった。
設備投資は年 0.7 億円ほど、減価償却は 0.5 億円ほど。2025 年 1 月期は、運転資金のため短期借入が 1.9 億円増えた。借入の増加は金利の上昇で重くなる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
パーツの国内シェアは約 5 割、イヤリング金具は約 7 割。ほぼ寡占で、特許のピアスパーツは標準部品になりうる。売上は 2024 年 1 月期から 3 期続けて増え、2027 年 1 月期の予想は 55 億円と、2 年前の 1.6 倍になる。
金の高値は、悪いことばかりではない。評価益が出ただけでなく、価格改定が通った証拠でもある。取引先は、安定して品質を出せる国内の工場を手放しにくい。上期の営業利益が 4.4 億円と 4 倍になったのは、その地力を映す。
時価総額は純資産とほぼ同じで、予想の純利益 3 億円の 5 倍の値段にすぎない。親会社が 5 割超を持ち、非公開化の話が出れば買付価格に上乗せが付く可能性もある。上場は名古屋に絞られるが、会社が固定費を減らし、配当を増やす余地は大きい。国内の寡占的な地位を守り、パーツの受託を広げられるなら、利益率は 5% 近くまで上がる。小さな会社が寡占の地位を守って稼ぐなら、10 年後の価値は今の値段を上回る。
慎重な見方
利益のほとんどは、金の値上がりが作った評価益だ。上期の営業利益 4.4 億円に対し、通期の予想は 5.0 億円で、下期は 0.6 億円しかない。中身は一過性だ。2022 年 1 月期まで営業利益率は 0% 前後で、利益が出ない年が長く続いた。
金が反落すれば、評価損が先に出る。製品在庫は金の評価額まで切り下げる会計方針で、値下がりの局面では利益が吹き飛ぶ。需要も、高値で買い控えが起きれば冷える。
財務は借入が頼りだ。短期借入が 10 億円を超え、純資産と利益に関する財務制限条項がつく。金利が 2% から 3.5% 前後へ上がれば、利払いは重くなる。最大の取引先の TASAKI は 3.6 億円の売上を持つ大口で、内製化や取引先の移行は、小さな会社に致命傷になる。
上場は名古屋に絞られ、売買は薄くなる。親会社が 5 割超を持つため、少数株主の利益は後回しにされやすい。寡占のパーツも市場は小さく、稼ぎの上限は低い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。パーツの寡占は本物で、強気の言い分にも理があるが、足元の増益の大半が金の評価益である点は動かせない。本来の稼ぎは営業利益で年 2 億円前後で、ROE は資本コストに届かない。確率は、楽観側に 3 割強、悲観側に 3 割強を置いた。悲観を 12% にとどめたのは、流動資産が厚く、極端な赤字が続きにくいためだ。非公開化の可能性は、噂の段階で数字に入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 1,174 円18 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 200 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 652 円10 億円、今との差 −36.2%、 期待の年率 +3.0%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,312 円35 億円 | 368 円6 億円 | +162.5% | +10.1% | 268 円4 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,651 円25 億円 | 281 円4 億円 | +89.2% | +6.6% | 425 円6 億円 |
| 中立 | 36% | 1,143 円17 億円 | 200 円3 億円 | +31.6% | +2.8% | 484 円7 億円 |
| やや悲観 | 20% | 604 円9 億円 | 120 円2 億円 | −29.1% | −3.4% | 145 円2 億円 |
| 悲観 | 12% | 394 円6 億円 | 40 円1 億円 | −57.5% | −8.2% | 52 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,174 円18 億円 | 200 円3 億円 | +34.5% | +3.0% | 1,373 円21 億円 |
今の株価時価総額 1,021 円15 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 楽観:国内のパーツを握ったまま、ブランド向けの受託が広がる 利益 3 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 2,312 円35 億円
国内で押さえたパーツの地位が、受託の拡大につながる筋書きだ。ピアスパーツの特許商品は、アクセサリー各社の標準部品になる。パーツの数量は 4 割強増え、金の値段の水準は物価と一緒に上がる。
工場の稼働が上がり、固定費が薄まって営業利益率は 5% に届く。ブライダルは数が細るが、鍛造の品質で単価の高い注文を拾い、数量は横ばいを保つ。パーツの寡占は国内の同業の廃業が進むほど固まり、仕入れ先としての信頼も厚くなる。
配当も厚くなる。それでも自己資本が積み上がるため、ROE は資本コストに届かない。事業は伸びても、株主に残る利益の倍率は上限の手前にとどまる。
- ジュエリーパーツ(イヤリング金具・ピアスパーツ):数量 1,450(出荷点数(万点・推定))× 価格 491(1 点あたり販売単価(円・金の値段込み・推定))→ 売上 71 億円・営業利益 4 億円。出荷点数 1.45 倍・単価 1.62 倍(物価+金の値上がり)・営業利益率 5.0%
- ジュエリー製品・商品(ブライダルリングなど):数量 4.1(販売点数(万点・推定))× 価格 48,050(1 点あたり販売単価(円・金・プラチナ込み・推定))→ 売上 20 億円・営業利益 1 億円。点数 1.05 倍・単価 1.55 倍・営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.94 倍、時価総額 35 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:パーツの国内シェアは 5 割、イヤリング金具は 7 割と開示にある。この寡占が海外ブランドの受託にも広がる筋書きだが、売上 40 億円規模の会社が 10 年で倍近くになる話で、確率は低く置く。
やや楽観 22% やや楽観:パーツが伸び、利益率が 4% 台前半に定着する 利益 2 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,651 円25 億円
パーツの数量は 25% 増え、受託の新規顧客が少しずつ加わる。単価は物価と金の値段の水準に沿って上がる。営業利益率は 4.4% で、直近の最高水準を保つ。
ブライダルは婚姻数の減少で点数がわずかに減る。ただ、金とプラチナの高値で 1 点の値段は物価を上回る。
短期借入は設備投資と在庫の増加で膨らみ、利払いが今より増える。2027 年 1 月期の利益は、金の値上がりで在庫の評価益が出て一時的に膨らむが、その後は 2 億円前後の本来の水準に戻る。純利益は 2 億円強で、これが会社の力と見るのが妥当だ。
- ジュエリーパーツ(イヤリング金具・ピアスパーツ):数量 1,250(出荷点数(万点・推定))× 価格 485(1 点あたり販売単価(円・金の値段込み・推定))→ 売上 61 億円・営業利益 3 億円。出荷点数 1.25 倍・単価 1.60 倍・営業利益率 4.4%
- ジュエリー製品・商品(ブライダルリングなど):数量 3.8(販売点数(万点・推定))× 価格 47,120(1 点あたり販売単価(円・金・プラチナ込み・推定))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。点数 0.98 倍・単価 1.52 倍・営業利益率 3.8%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 25 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:パーツの数量が国内の消費の回復と受託の拡大で 2 割台の伸びになる筋書き。2026 年 1 月期まで 3 期連続で売上が増えた実績があり、無理のない伸びだ。
中立 36% 中立:パーツは国内で守り、ブライダルが細って利益は 2 億円台 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,143 円17 億円
パーツは国内の需要を守り、数量は 12% 増える。イヤリングからピアスへの移行で金具の形は変わるが、特許商品を持つため点数は保てる。価格は物価に、足元の金の値上がり(会社予想の売上 55 億円に表れる分)が重なって 1.58 倍になる。
ブライダルは婚姻数の減少で点数が 1 割減る。単価は金とプラチナの高値で物価以上に上がる。
人件費と本社費も物価で増える。減価償却は今の約 0.5 億円が設備更新で 0.7 億円ほどに増え、更新の投資は機械の値上がりで償却を上回る。短期借入の金利は 1% 台から 3.5% 前後に上がり、利払いは年 0.3 億円強。営業利益は 2.6 億円、純利益は 1.5 億円弱になる。
- ジュエリーパーツ(イヤリング金具・ピアスパーツ):数量 1,120(出荷点数(万点・推定))× 価格 479(1 点あたり販売単価(円・金の値段込み・推定))→ 売上 54 億円・営業利益 2 億円。出荷点数 1.12 倍・単価 1.58 倍・営業利益率 3.9%
- ジュエリー製品・商品(ブライダルリングなど):数量 3.5(販売点数(万点・推定))× 価格 46,500(1 点あたり販売単価(円・金・プラチナ込み・推定))→ 売上 16 億円・営業利益 1 億円。点数 0.90 倍・単価 1.50 倍・営業利益率 3.2%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 17 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上は 3 期連続で増えたが、足元の営業利益の急増は金の評価益で一過性だ。本来の稼ぎは売上の 4% 前後で、その水準が名目で緩やかに伸びる筋書きを最も確からしいと見る。
やや悲観 20% やや悲観:金の高値で需要が冷え、金価格の反落で在庫が傷む 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 604 円9 億円
金の値上がりが一服し、反落する。製品在庫は金の評価額まで切り下げる会計方針なので、反落の局面では評価損が先に出る。ファッションジュエリーの需要は、高値で買い控えが起き、パーツの数量は 5% 減る。会社が値上げで利益を守ろうとしても、取引先は在庫を絞って応じない。
ブライダルも点数が 2 割強減り、単価も金の値段が下がって伸びない。工場は固定費が重く、営業利益率は 2% 台まで下がる。
短期借入は在庫の分だけ膨らんだまま、金利が上がって負担が増す。純利益は 0.5 億円ほどで、この水準では稼ぐ力で測る価値が小さい。価値は流動資産の厚みが下支えになる。
- ジュエリーパーツ(イヤリング金具・ピアスパーツ):数量 950(出荷点数(万点・推定))× 価格 424(1 点あたり販売単価(円・金の値段込み・推定))→ 売上 40 億円・営業利益 1 億円。出荷点数 0.95 倍・単価 1.40 倍・営業利益率 2.8%
- ジュエリー製品・商品(ブライダルリングなど):数量 3.0(販売点数(万点・推定))× 価格 40,300(1 点あたり販売単価(円・金・プラチナ込み・推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。点数 0.78 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 1.5%
倍率:利益が薄く ROE が k に届かないため PBR で置く。今の自己資本 15.5 億円の 0.512 倍。稼ぐ力(純利益 0.55 億円÷k)は小さく、流動資産から全負債を引いた分の約 8 割の床の下に置いた。帳簿の自己資本は床にしない。
確率:金の値段は 1 年で大きく上がった。反落すれば在庫の評価損が出て、取引先の発注も冷える。足元の増益が一過性なだけに、起こりうる筋書きだ。
悲観 12% 悲観:金の急落と大口取引先の内製化で、パーツが縮む 利益 −1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 394 円6 億円
金の値段が急落し、製品在庫の評価損と、値下がりによる売上の減少が同時に来る。大口の取引先がパーツを内製化または海外に移し、数量は 3 割減る。
ブライダルも婚姻数の減少と値崩れで 4 割減る。営業利益は赤字になり、評価損と本社費で年間 0.7 億円ほどの損失を出す。
借入には純資産と利益に関する財務制限条項がついている。条項に抵触すれば、借り換えで金利が上がり、資産の売却を迫られる。少数株主に決められるのは売る時期だけだ。価値は流動資産の整理価値に近づき、親会社の判断次第では純資産を下回ることもありうる。
- ジュエリーパーツ(イヤリング金具・ピアスパーツ):数量 700(出荷点数(万点・推定))× 価格 339(1 点あたり販売単価(円・金の値段込み・推定))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。出荷点数 0.70 倍・単価 1.12 倍・営業利益率 −1.0%
- ジュエリー製品・商品(ブライダルリングなど):数量 2.3(販売点数(万点・推定))× 価格 34,100(1 点あたり販売単価(円・金・プラチナ込み・推定))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。点数 0.60 倍・単価 1.10 倍・営業利益率 −3.0%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置く。今の自己資本 15.5 億円の 0.38 倍。流動資産を整理して借入と買掛金を返した後に残る額に、整理の費用と親会社支配による戻り方 0.5 から 0.75 を掛けた水準。純資産を下回ってよい。
確率:売上の主力が金の値段の高い品で、最大顧客の存在感も大きい。金の急落と取引の縮小が重なる筋書きは、小さい会社では起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ジュエリーパーツ(イヤリング金具・ピアスパーツ)
イヤリング金具・ピアスパーツ・クラスプなど、ファッションジュエリーの部品。見込み生産で、アクセサリー各社に卸す。売上の約 7 割。
| 数量出荷点数(万点・推定) | 価格1 点あたり販売単価(円・金の値段込み・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 1,000 | 303 | 30 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,120 | 479 | 54 | 2 |
取り方:有報(2025 年 1 月期)の品目別売上でパーツ 71%・ジュエリー 27%・商品 1% の比を、2026 年 1 月期の売上 42.4 億円に当てはめて 30.3 億円とした。点数と単価は開示が無く、1 点あたりごく小さな金具で数百円の推定。営業利益 1.38 億円は、単一セグメントの全社営業利益 1.78 億円を売上比とパーツの利益率が少し高いとみて配分した推定。
ジュエリー製品・商品(ブライダルリングなど)
鍛造(金属を叩いて締める)の技術に特化したブライダルリング・ペンダントの受注生産と、少額の仕入商品。売上の約 3 割。
| 数量販売点数(万点・推定) | 価格1 点あたり販売単価(円・金・プラチナ込み・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 3.9 | 31,000 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 3.5 | 46,500 | 16 | 1 |
取り方:同じ比で 12.1 億円(ジュエリー 11.6 億円+商品 0.5 億円)。点数と単価は推定で、1 点 3 万円前後(結婚指輪は 1 組 2 本で 5〜10 万円の価格帯)。営業利益 0.40 億円は全社営業利益の残りの推定。
リスクと懸念
金の値段の反落
売上と利益が金の値段に連動する。製品在庫は金の評価額まで切り下げるため、反落の局面では評価損が先に出る。足元の増益が評価益である以上、反落で利益は一気に消える。
大口の取引先への依存
TASAKI だけで 3.6 億円の売上がある(2024 年 1 月期)。上位の取引先がパーツを内製化する、または海外に移すと、小さな工場の稼働が大きく落ちる。
借入と金利の上昇
短期借入が 10 億円を超え、財務制限条項もつく。借り換えで金利が 1% 台から 3.5% 前後へ上がれば、利払いが年 0.3 億円ほど増え、純利益を削る。
需要の冷え込みと婚姻数の減少
金の高値で装身具の買い控えが起きれば、パーツの数量が落ちる。ブライダルは婚姻数の減少で、リングの本数が細る。市場の回復は数量でなく単価によるものだ。
親会社の支配と上場の縮小
親会社が議決権の 54% を持ち、少数株主の発言力は弱い。東京証券取引所の上場廃止で、名古屋の単独上場になり、売買は薄くなる。買い手が限られる。
規模の小ささ
従業員は 89 名で、株数は約 150 万株。主力の職人が離れる、設備が壊れるなど、小さな会社は一つの出来事で業績が大きく動く。
今後の分かれ目
- 金の値段が現水準から 3 割以上下がったら
- 在庫の評価損が出る。やや悲観・悲観の確率を上げ、純利益を赤字寄りに見直す。
- 2027 年 1 月期の通期決算で、営業利益の内訳(評価益)が明らかになったら
- 評価益を除く本来の利益が 3 億円を超えるなら、中立の営業利益率を上げて見直す。
- 親会社や第三者による非公開化・公開買付けの発表があったら
- 価格が本質価値を上回るなら応じる価値がある。発表の後は、この分析は意味を失う。
- 大口取引先との取引が縮小、または内製化が報じられたら
- パーツの数量を引き下げ、悲観の確率を上げる。
- 配当方針が総還元性向などの数値で示されたら
- 還元の見込みを増やし、楽観側の筋書きを見直す。
見ておくもの
- 金の国内小売価格と、決算の売上・在庫評価益
- パーツ・ジュエリー別の売上と大口取引先の動き
- 短期借入の残高・利払い・財務制限条項
- 婚姻数とブライダルリングの本数
- 名古屋証券取引所単独上場後の売買と配当方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROE が資本コスト 8.5% に届かないため、上限を 1÷k(11.1 倍)にし、利益の質に応じて 85〜95% に置いた。今の PER の低さ(予想利益の約 5 倍)や PBR 1 倍から価値を引き上げていない。足元の利益は金の評価益を含み、10 年の中立の利益は営業利益 2.6 億円、純利益 1.5 億円弱に置いた。悲観の床は流動資産から全負債を引いた分で、過去の PBR の底は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.94 倍・やや楽観 PER 10→11.76 倍・中立 PER 9.4→11.76 倍・やや悲観 PBR 0.484→0.512 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.50%。