結論
光村印刷は、美術書やカタログの刷りで名を上げた東京の中堅の印刷会社だ。筆者の結論は割高である。手元の現金と持っている株は時価総額を上回るが、本業の印刷は赤字で、その資産が株主に戻る道筋が見えないからだ。
売上は10年で2割細り、営業損益はこの6期のうち5期で赤字だった。紙の需要が減る中、工場を狭山に集め、新聞の印刷を読売新聞との合弁の子会社に移した。打てる手は打っているが、会社は来期も3億円台の営業赤字を見込む。
資産は厚い。純現金は48億円、取引先の株は57億円ある。だが、三菱製紙・DIC・読売が株の4割を持ち合う。現金は配当にしか回らず、自社株買いもない。
筆者は、印刷の赤字が縮みながら続き、賃貸の利益で全体が小さな黒字を保つ姿を真ん中に置く。その姿では、眠る資産の多くは株主の値打ちにならない。
資産の厚さは下値の支えにはなる。だが、値上がりの理由にはならない。上がるには、資産を株主に戻す決断が要る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、光村印刷は「値札より中身は多いが、その中身に手が届かない会社」だ。
純現金48億円と取引先の株57億円を足せば、時価総額の倍近い。だが、少数の株主はその資産の使い道を決められない。会社は資産を持ち続け、本業の赤字の穴埋めに少しずつ使う。10年たっても現金が株主に戻らなければ、その価値は年に2%の利息でしか増えない。
事業そのものは、オーナーとして持ちたい形ではない。縮む市場で値段を決められず、利益は賃料頼みだ。
安い値段に見える会社が、本当に安いとは限らない。資産を株主に戻す仕組みが無い限り、筆者はこの値段に安全域を見ない。
持ち合いがほどけ、資産が開く日が来れば話は変わる。ただ、それは筆者が予想して値段を払うものではない。筆者が待つのは、値段ではなく経営の変化だ。それまでは、外から眺める会社だ。
何で稼ぐ会社か
光村印刷は1901年創業の印刷会社で、本社は東京の品川区にある。売上は141億円、従業員は連結で600人余りだ。
稼ぎの柱は印刷で、売上の9割を占める。自治体の刊行物、企業のカタログ、美術書、ヤマト運輸の専用封筒、医薬品の包装の資材などを刷る。新聞は読売新聞の印刷を受け、2026年1月からは読売と共同で持つ光村高速オフセットの新工場で刷る。読売とヤマト運輸の2社で売上の4割を占める。
残りは2つの小さな事業だ。1つはスクリーン印刷やエッチングの技術を生かした産業資材で、水晶振動子の治具や半導体の加工テープを作る。もう1つは不動産の賃貸で、旧北品川棟の底地などを貸す。売上は5億円に満たないが、営業利益は3.6億円と、全社でいちばん稼ぐ。
言い換えれば、今の光村印刷は、赤字の印刷を、品川の土地の賃料が支える形になっている。
印刷の工場は、埼玉の狭山に集めた。川越の工場は新聞の移管で役目を終え、敷地の一部を読売に譲った。残りの2万4千㎡余りは使われないまま帳簿に残る。品川の本社のまわりでは大崎の再開発の計画があり、会社は不動産の使い方を見直すと言う。
優良さと弱いところ
光村印刷の強みは、色の再現と仕上げの美しさだ。美術書や高級なカタログで長く信用を得てきた。読売新聞やヤマト運輸と何十年も取引が続くのも、品質と納期を守ってきた証拠だ。
だが、それは値段を決める力にはなっていない。印刷は設備さえあれば誰でも刷れ、仕事の多くは入札や相見積もりで決まる。紙やインクの値上がりを売値に移すのも遅れがちだ。営業利益率は過去12年の最高でも3%台で、この6期は5期が赤字だった。
資本の効率は低い。自己資本は182億円あるが、ROEは10年の中央値で1%を切る。資産の多くは、利息しか生まない現金と、配当しか生まない取引先の株、使っていない川越の土地だ。経営は資産を持ち続けることを選んできた。
それでも、経営は手を打ち始めた。工場の集約、新聞の合弁、値上げの交渉、不採算の取引の整理だ。筆者はこれを正しい向きの手と見るが、遅かった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の印刷の市場は、1991年の約9兆円から縮み続け、いまは6兆円台だ。紙のカタログ、チラシ、自治体の刊行物は、ネットに置き換わった。新聞の部数は、この10年でほぼ4割減った。
縮む市場で、紙やインク、電気の代金は上がる。大手のTOPPANや大日本印刷は、印刷の外の半導体の部材や包装、ITの仕事に稼ぎを移した。中堅の印刷会社には、その逃げ道が細い。
残る道は2つだ。1つは工場を集めて固定費を削ること、もう1つは医薬品の包装のように、品質の要る分野へ寄ることだ。光村印刷は両方を進めている。紙で作る軟包装も実証の段階にある。
競合は、共同印刷や図書印刷、地方の中堅の印刷会社だ。業界では統合や廃業が続き、生き残った会社の稼ぎは少しずつ戻る、という見方もある。ただ、その戻りは物価の上げに追いつく程度だと筆者は見る。
新聞の印刷には別の力も働く。部数が減れば、新聞社は自前の工場と外の印刷会社のどちらかを閉じる。光村印刷は読売と合弁を作り、選ばれる側に回った。これは守りとして上手い手だ。
価格の面では、業界全体の値上げが少しずつ通り始めている。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。同じ額の配当を続け、総額は年1.5億円ほどだ。利益が出ない年も配当は守ってきた。自社株買いは無い。
政策保有の株は14銘柄で52億円ある。SCREENホールディングスとヤマトホールディングスが大きい。2026年3月期は三菱HCキャピタルなど3銘柄を12億円で売ったが、売る量の目標は示していない。
株主の顔ぶれは、取引先の持ち合いそのものだ。三菱製紙、DIC、読売新聞グループが合わせて4割を持つ。会社を買われにくい形で、TOBや大きな還元の圧力は届きにくい。
資本の使い方の点数は低い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
光村印刷の株は、持っている資産だけで説明がつかないほど安い。純現金48億円に、取引先の株の税後の値打ち約48億円を足すと、時価総額57億円の倍近い。品川の土地と、遊休の川越の土地の含み益もある。
本業も底を打ちつつある。工場を狭山に集め、新聞を読売との合弁に移した。不採算の取引を見直し、値上げの交渉も一定の成果を上げた。医薬品の包装は伸びる分野で、経営資源をここに集める。
大崎の再開発も追い風だ。北品川の底地はすでに賃料を生み、再開発が進めば土地の値打ちはさらに上がる。
株主の構成も変わりうる。資本効率を問う声は持ち合いの相手にも及び、三菱製紙やDICが持ち株を手放せば、TOBや大きな還元の芽が出る。
資産の割に安い会社は、いつか誰かが目を付ける。その日を待てる株主には、下値の小さい賭けになる、と強気の側は言う。
工場の集約の効果が出るのはこれからだ。狭山に仕事を集めたことで、外に出していた加工を内で回せるようになり、外注の費用が減る。
慎重な見方
資産が厚いことと、株主が得をすることは別だ。現金は本業の赤字の穴埋めと配当に回り、自社株買いは無い。株の4割を取引先が持ち合い、会社に還元を迫る株主がいない。
本業は構造的に縮む。売上は10年で2割減り、来期も3億円台の営業赤字を見込む。工場を集めても、紙の需要の減りの方が速い。読売とヤマト運輸の2社で売上の4割で、新聞の部数は年5%前後で減る。
利益の頼りは品川の賃料だが、それは印刷の会社としての稼ぎではない。再開発で土地を売れば一度きりの利益で、その現金もまた眠る。
持ち合いの株は、取引の関係を守るために持つ。売っても数億円ずつで、残りは配当しか生まない。資産の値打ちを数えるなら、それが株主に戻る確率で割り引くべきだ。
安い値段は、眠った資産への市場の正しい割引だ、と慎重な側は言う。
川越の土地も同じだ。帳簿の値は小さく、含み益はあるが、売る相手と時期は決まっていない。眠る資産がもう1つ増えただけだ。工場の集約の効果も、需要の減りに数年で食われる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。資産が時価総額を上回るのは事実だが、持ち合いの株主構成と還元の弱さから、その資産が10年のうちに株主へ戻る見込みは低い。中立は印刷の赤字が縮みながら続く姿とし、確率はやや悲観に寄せた。TOBや再開発で資産が開く筋は楽観に入れた。資産の値打ちは、戻り方0.5で半分だけ数えた。資産の解放は待つしかない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,561 円78 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 547 円17 億円)。 今の値に割り戻すと 1,438 円44 億円、今との差 −21.4%、 期待の年率 +5.4%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,252 円130 億円 | 816 円25 億円 | +177.1% | +10.7% | 355 円11 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,617 円111 億円 | 653 円20 億円 | +133.5% | +8.8% | 769 円24 億円 |
| 中立 | 37% | 3,005 円92 億円 | 555 円17 億円 | +94.6% | +6.9% | 1,317 円40 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,427 円44 億円 | 499 円15 億円 | +5.3% | +0.5% | 482 円15 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,107 円34 億円 | 326 円10 億円 | −21.6% | −2.4% | 186 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,561 円78 億円 | 547 円17 億円 | +69.9% | +5.4% | 3,108 円95 億円 |
今の株価時価総額 1,829 円56 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 再開発と資産の解放で値打ちが開く 利益 8 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 4,252 円130 億円
大崎の再開発が進み、北品川の土地の賃料が上がる筋書きだ。印刷は工場の集約と値上げが効き、医薬品の包装と紙の軟包装が育って、営業利益率は2%に戻る。新聞は読売との合弁で安定して黒字を出す。
持ち合いの相手も資本効率を問われ、三菱製紙やDICが株を手放す。会社は政策保有株を売って配当を増やし、自社株買いも始める。
営業利益は10億円近くになり、純利益は8億円台に乗る。資産を抱えた会社から、資産を回す会社へ変わる姿だ。
株主の顔ぶれが変わることが、この筋書きの引き金になる。川越の遊休の土地も売れ、その代金は還元に回る。
- 商業印刷・パッケージ:数量 900(得意先の数(推定))× 価格 1,340(1 得意先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 121 億円・営業利益 2 億円。900 社×1,340 万円(1.41 倍)、2%
- 新聞印刷:数量 40.0(刷る新聞の部数(日量・万部・推定))× 価格 8,500(1 万部あたりの年間の受託額(万円))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。日量 40 万部×8,500 万円(1.35 倍)、3%
- 産業資材・電子部品:数量 40.0(取引先の数(推定))× 価格 1,700(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。40 社×1,700 万円(1.37 倍)、6%
- 不動産賃貸:数量 25.0(貸している面積(千㎡・推定))× 価格 33,000(1㎡あたりの年間の賃料(円))→ 売上 8 億円・営業利益 6 億円。2.5 万㎡×3.3 万円(1.37 倍)、70%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.3% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 11.27 倍、時価総額 127 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:持ち合いの解消や大崎の再開発で資産が動く筋。株主構成が変わる必要があり7%とした。
やや楽観 18% V字回復が半分だけ実る 利益 6 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 3,617 円111 億円
工場の集約と不採算の取引の見直しが効き、印刷の赤字が消える筋書きだ。得意先は減るが、残った仕事の単価は物価をやや上回る。医薬品の包装は少しずつ伸びる。
新聞は部数が減るが、読売との合弁で費用を分け合い、小さな黒字を保つ。賃貸は今の利益を物価並みに伸ばす。
全体の営業利益は6億円台で、純利益は6億円ほどだ。配当は少し増えるが、現金と株は持ったままで、資本の効率は低いままにとどまる。
経営の打った手が正しかったことは示せるが、株主の取り分は大きく増えない。川越の土地は売れずに残り、経営の関心は本業の立て直しに向いたままだ。
- 商業印刷・パッケージ:数量 850(得意先の数(推定))× 価格 1,300(1 得意先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 111 億円・営業利益 1 億円。850 社×1,300 万円(1.37 倍)、0.5%
- 新聞印刷:数量 38.0(刷る新聞の部数(日量・万部・推定))× 価格 8,442(1 万部あたりの年間の受託額(万円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。日量 38 万部×8,442 万円(1.34 倍)、2.5%
- 産業資材・電子部品:数量 35.0(取引先の数(推定))× 価格 1,660(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。35 社×1,660 万円(1.34 倍)、3%
- 不動産賃貸:数量 22.0(貸している面積(千㎡・推定))× 価格 32,300(1㎡あたりの年間の賃料(円))→ 売上 7 億円・営業利益 5 億円。2.2 万㎡×3.23 万円(1.34 倍)、70%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 11.33 倍、時価総額 103 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の掲げるV字回復が半分ほど実る筋。工場の集約は済んでおり18%とした。
中立 37% 印刷の赤字を賃料が埋める 利益 5 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 3,005 円92 億円
紙の需要が年2%ほど減り続け、得意先は10年で2割減る筋書きだ。値上げは物価並みにとどまり、印刷の営業利益率はマイナス1%前後の赤字が続く。新聞は部数が4割減るが、合弁で小さな黒字を保つ。
全社を支えるのは品川の賃料だ。営業利益は4億円ほどで、取引先の株の配当と現金の利息が純利益を押し上げる。
配当は今の額を守るが、現金と株は手元に残る。株主から見れば、資産の値打ちのうち手に届くのは配当の分だけだ。
筆者は、これがいちばんありそうな10年だと見る。経営は本業の立て直しを続けるが、資産の使い方は変わらない。
- 商業印刷・パッケージ:数量 800(得意先の数(推定))× 価格 1,273(1 得意先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 102 億円・営業利益 −1 億円。800 社×1,273 万円(1.34 倍)、−1%
- 新聞印刷:数量 36.0(刷る新聞の部数(日量・万部・推定))× 価格 8,442(1 万部あたりの年間の受託額(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。日量 36 万部×8,442 万円(1.34 倍)、2%
- 産業資材・電子部品:数量 35.0(取引先の数(推定))× 価格 1,660(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。35 社×1,660 万円(1.34 倍)、0%
- 不動産賃貸:数量 20.0(貸している面積(千㎡・推定))× 価格 32,300(1㎡あたりの年間の賃料(円))→ 売上 6 億円・営業利益 5 億円。2 万㎡×3.23 万円(1.34 倍)、70%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.6% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 11.42 倍、時価総額 84 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:印刷の縮みが続き、赤字が小さく残る筋。会社の来期の予想とも合い37%とした。
やや悲観 25% 印刷の縮みが速まる 利益 3 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 1,427 円44 億円
紙の需要の減りが速まり、得意先が3割減る筋書きだ。紙やインクの値上がりを売値に移せず、印刷の赤字は今より広がる。新聞の部数も減り、合弁の黒字は消える。
賃貸の利益は残るが、印刷の赤字を埋めきれない。営業利益はほぼゼロで、利益は株の配当と現金の利息だけになる。
会社は配当を守るために現金を削る。余った現金は4分の3に減り、持ち合いの株も取引の関係のために手放せない。
資産は少しずつ減り、会社の値打ちは帳簿の自己資本から離れていく。株主構成も変わらず、資産を開く圧力はかからない。値上げも業界の値下げの競争に負け、続かない。
- 商業印刷・パッケージ:数量 700(得意先の数(推定))× 価格 1,250(1 得意先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 88 億円・営業利益 −2 億円。700 社×1,250 万円(1.32 倍)、−2.5%
- 新聞印刷:数量 30.0(刷る新聞の部数(日量・万部・推定))× 価格 8,000(1 万部あたりの年間の受託額(万円))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。日量 30 万部×8,000 万円(1.27 倍)、0%
- 産業資材・電子部品:数量 25.0(取引先の数(推定))× 価格 1,500(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。25 社×1,500 万円(1.21 倍)、−3%
- 不動産賃貸:数量 20.0(貸している面積(千㎡・推定))× 価格 30,000(1㎡あたりの年間の賃料(円))→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。2 万㎡×3 万円(1.24 倍)、70%
倍率:ROE 1.5%は資本コストに遠く届かない。PERは6.5倍で、余った現金は今の0.75倍の28.5億円に戻り方0.5を掛ける。PBRは0.16倍で中立の0.28倍より低い。
確率:紙の需要の減りが速く、工場の集約が追いつかない筋。業界の縮みの実例から25%とした。
悲観 13% 赤字が続き、資産が食われる 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,107 円34 億円
印刷の需要が4割減り、工場の閉鎖と人の削減の費用が重なる筋書きだ。減損も出て、自己資本は20億円減る。新聞は読売が自前の印刷に寄せ、受託の量が減る。
賃貸だけが黒字だが、全体の営業損益は赤字になる。会社は配当を減らし、現金は構造改革の費用に回る。
持ち合いの株は残るが、売る理由も買い手も無い。資産は帳簿に残っても、株主が受け取る値打ちは半分以下になる。
縮む業界で資産を抱えた会社の、典型的な負け方だ。資産の厚さは倒産を防ぐが、株主の値打ちは守らない。印刷の会社の再編で買い手を探しても、赤字の工場には値が付かない。
- 商業印刷・パッケージ:数量 550(得意先の数(推定))× 価格 1,200(1 得意先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 66 億円・営業利益 −3 億円。550 社×1,200 万円(1.26 倍)、−5%
- 新聞印刷:数量 20.0(刷る新聞の部数(日量・万部・推定))× 価格 7,500(1 万部あたりの年間の受託額(万円))→ 売上 15 億円・営業利益 0 億円。日量 20 万部×7,500 万円(1.19 倍)、−3%
- 産業資材・電子部品:数量 15.0(取引先の数(推定))× 価格 1,400(1 取引先あたりの年間の売上(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。15 社×1,400 万円(1.13 倍)、−10%
- 不動産賃貸:数量 18.0(貸している面積(千㎡・推定))× 価格 30,000(1㎡あたりの年間の賃料(円))→ 売上 5 億円・営業利益 4 億円。1.8 万㎡×3 万円(1.24 倍)、65%
倍率:営業赤字で稼ぐ力は無いのでPBRで置く。床の資産(純現金と政策保有株の税後の計81億円×戻り方0.5の40億円)を上限に、構造改革で減る分を映して今の自己資本182億円×0.186倍の34億円とした。
確率:印刷の赤字が広がり、構造改革の費用と減損が重なる筋。13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
商業印刷・パッケージ
自治体や企業の刊行物、カタログ、美術書、ヤマト運輸向けの専用封筒、医薬品の包装資材などを刷る。
| 数量得意先の数(推定) | 価格1 得意先あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 950 | 95 | −4 |
| 10 年後 中立 | 800 | 1,273 | 102 | −1 |
取り方:印刷事業 132.78 億円から読売新聞向け 37.8 億円(有報の主要な客)を引いた約 95 億円を、得意先 1,000 社・1 社 950 万円と置いた推定。利益は印刷事業の営業損失 3.71 億円から新聞の分を除いた推定。
新聞印刷
読売新聞を、読売と共同で持つ子会社の光村高速オフセットの工場で刷る。
| 数量刷る新聞の部数(日量・万部・推定) | 価格1 万部あたりの年間の受託額(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 6,300 | 38 | 0 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 8,442 | 30 | 1 |
取り方:読売新聞東京本社向けの売上 37.8 億円(有報)を、日量 60 万部と置いて 1 万部あたり年 6,300 万円とした推定。利益は小さな黒字と推定。
産業資材・電子部品
スクリーン印刷やエッチングの技術で、水晶振動子の治具や半導体の加工テープを作る。
| 数量取引先の数(推定) | 価格1 取引先あたりの年間の売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 1,240 | 4 | −1 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 1,660 | 6 | 0 |
取り方:セグメントの売上 3.72 億円を、取引先 30 社・1 社 1,240 万円と置いた推定。
不動産賃貸
旧北品川棟の底地や、使わなくなった建物を貸す。
| 数量貸している面積(千㎡・推定) | 価格1㎡あたりの年間の賃料(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 24,100 | 5 | 4 |
| 10 年後 中立 | 20.0 | 32,300 | 6 | 5 |
取り方:外部の客への売上 4.82 億円(セグメントの売上 6.45 億円は内部の賃料を含む)を、面積 2 万㎡・年 2.4 万円/㎡と置いた推定。営業利益 3.59 億円は開示。
リスクと懸念
紙の需要の構造的な縮み
カタログ、チラシ、自治体の刊行物はネットに置き換わり続ける。売上は10年で2割減った。工場を集めても、需要の減りが速ければ固定費が残り、赤字が広がる。
2社への依存
読売新聞とヤマト運輸で売上の4割を占める。新聞の部数は年5%前後で減り、ヤマトの封筒も電子化の波を受ける。どちらかの取引が細れば、売上と工場の稼働が同時に落ちる。
資産が株主に戻らない
純現金と取引先の株は時価総額を上回るが、株の4割を取引先が持ち合い、還元は配当だけだ。資産が10年眠れば、その価値は利息の2%でしか増えない。
紙・インク・電気の値上がり
原材料と電気の値段は物価より速く上がりやすい。値上げを売値に移すのが遅れれば、薄い利益はすぐ赤字になる。中東の情勢は、会社の来期の予想にも入っていない。
持ち合いの株の値下がり
政策保有株はSCREENホールディングスとヤマトホールディングスで7割を占める。半導体の装置の市況や物流の業績で値が振れ、自己資本と悲観の床が揺れる。
今後の分かれ目
- 営業損益が2期続けて黒字になったら
- V字回復が実ったとして、やや楽観に重みを移す。
- 政策保有株の売却の目標を数字で示し、自社株買いを始めたら
- 資産が株主に戻る道が開いたとして、戻り方を0.75に上げる。
- 三菱製紙やDICが持ち株を売り出したら
- 株主構成が変わり、TOBや還元の圧力が強まるとして楽観の確率を上げる。
- 大崎の再開発で北品川の土地の売却か大きな賃料の改定が決まったら
- 賃料と土地の値打ちを見直し、中立の賃貸の利益を上げる。
- 読売新聞が印刷の委託を減らしたら
- 新聞の部数の減りに受託の減りが重なるとして、やや悲観に重みを移す。
見ておくもの
- 印刷事業の営業損益
- 読売新聞とヤマト運輸向けの売上
- 政策保有株の売却額と残高
- 配当と自社株買いの額
- 大崎地区の再開発の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBR 0.3倍を見ずに、ROEとk 9%から決めた。どの筋書きもROEがkを下回るので、PERは1÷kの11.8倍を上限とし、中立は本業の赤字を映して7.5割の8.8倍。政策保有株は配当が利益に入るので余った現金に足さず、悲観の床だけに税後で入れた。余った現金の戻り方は持ち合いの株主構成から0.5。資産が時価総額を上回ることを割安の根拠にしていない。やや悲観と悲観のPBRが0.2倍を切るのは、ROEがkを大きく下回り、資産が戻り方0.5でしか株主に届かないためで、悲観は床の資産(40億円)を上限に置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→11.27 倍・やや楽観 PER 10→11.33 倍・中立 PER 8.8→11.42 倍・悲観 PBR 0.137→0.186 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。