結論
SHOEI は、バイク用の高級ヘルメットを国内工場でつくって世界へ売る会社だ。営業利益率は 27% を超え、自己資本比率は 85% で、実質無借金である。
筆者は、事業の質は一級だが、値段はそれを織り込み済みだと見る。会社は世界の高級ヘルメット市場で約 6 割のシェアを持つと自ら推定する。頭を守る道具は値段で選ばれにくく、利益率が 20% 台後半で何年も続いてきた。
成長の源は多くない。欧米と日本のライダーは高齢化し、若者は二輪から離れつつある。会社自身も「大きな成長は見込めない」と書く。数量の伸びを期待できるのは中国と ASEAN だけで、あとは値上げが利益を押し上げる。
そこで 10 年の中立は、販売数量が年 1% ほど増え、価格が物価並みに上がる姿とした。営業利益は今の 89 億円から 120 億円台へ伸びる。ただし会社は利益の 6 割を超える額を還元しつつ現金も積み上げており、自己資本の利益率は 20% 前後にとどまる。
悲観で怖いのは、二輪需要の縮小と、関税や中国の不買運動のような外からの衝撃が重なる場合だ。単一の製品に頼る会社なので、振れ幅は大きい。悲観側の振れ幅まで確率で重ねると、10 年後の本質価値は今の時価総額を 1 割台半ば下回る。やや割高、という結論だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、SHOEI は「持ち続けたい会社」に近い。世界の高級ヘルメットで先頭を走り、値上げをしても客が離れず、借金もない。必要な設備投資が小さく、稼いだ利益の多くが株主の手元に残る。
オーナー利益、つまり再投資を引いて株主のものになる利益は、純利益とほぼ同じ額だ。設備の更新に要る金は年 15 億円ほどで、減価償却とつり合う。成長に金がいらないぶん、還元と現金の積み上げに回る。
安心できる点は、単一の製品でも売り先が世界に散り、国内 2 工場が互いの代わりを務められることだ。気になる点は、売り先の二輪市場に成長がなく、数量の伸びは中国と ASEAN に頼ることだ。
経営の資本配分は堅実で、配当性向 50% を守る。一方で純現金を抱えすぎると、株主から見た資本の利回りは薄まる。筆者がいちばん注目するのは、現金の使い道が今後どう変わるかだ。
値段の安全域は厚くない。10 年中立なら今の値段を上回るが、悲観側の厚みで平均は今の値段を下回る。堀は本物だが、買い手は成長の物語ではなく、安定した高収益そのものに払うことになる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、ライダーがかぶるフルフェイスやジェットなどの高級ヘルメットだ。売上のほぼ全部がこの 1 つの製品で、年に約 64 万個を売る。1 個あたりの売値は約 5 万円と、量販品の数倍になる。
売り先は世界に広がる。2025 年 9 月期は欧州が売上の約 45%、日本が約 17% で、北米・中国・その他で残りを分け合う。海外は現地の子会社や代理店を通じ、二輪専門店へ卸す。
つくり方にも特徴がある。設計から成形・塗装・検査までを国内の 2 工場で一貫して行い、「日本製」を守る。JIT と呼ぶ在庫を絞る改善を続け、安全規格の厳しい欧米向けも同じ工場でつくれる。
店頭で一人ひとりの頭の形に合わせて調整する PFS という仕組みも、収益を支える。国内では販売の約半数がこの調整つきになった。調整を受けた客は他社へ移りにくい。
新しい芽は小さい。キャリーケース、国産の新ライン、茨城の隣地につくるショールームなどで、会社は 3 年で戦略投資に約 110 億円を見込む。大きな買収の話はなく、本業の磨き込みが方針だ。
優良さと弱いところ
SHOEI の堀、つまり他社がまねできない強みは、安全と意匠と国内生産の三つを両立できることだ。高級ヘルメットは、軽さ・静かさ・見た目と、厳しい衝撃試験への適合が互いに足を引っ張る。ここを妥協せずに量産できる会社は世界でも数えるほどだ。
競争相手は多い。同じ日本の Arai、中国の HJC、イタリアの AGV、ドイツの Schuberth などだ。調査により世界シェアは 1 割台から 6 割まで割れるが、価格帯を高級品に絞れば SHOEI が先頭に立つという点は共通している。HJC や LS2 は中価格帯から攻めるので、同じ土俵では争いにくい。
利益率が語る。営業利益率は 2014 年の約 21% から 2025 年の 27% へ上がり、赤字の期は過去にない。値上げをしても数量が崩れない会社だけが、この姿を保てる。
弱点も見ておく。製品が 1 種類で、売り先の二輪市場そのものが伸びない。2025 年は欧州と日本で在庫を積んだ流通が数量を 2 割前後押し下げ、工場の人員を減らさなかったことで製造コストが上がった。経営は在庫のぶれに弱い。
もう一つは資本の使い方だ。自己資本比率が 85% と高く、現金を抱えすぎる面がある。会社は連結配当性向 50% を守り、自社株買いも出している。ただ、現金の積み上がりが自己資本利益率の重しになる点は、長期の課題として残る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
二輪ヘルメットの需要は、バイクの保有台数と買い替えで決まる。先進国は人口が減り、ライダーも高齢化している。会社も欧米・日本の大きな成長を見込まないと言い切る。
数量の伸びしろは新興国にある。中国は日米と同じ規模にまで育ったが、新型コロナ後の無理な押し込み販売でブランドが傷み、立て直しの途中だ。ASEAN は二輪の普及が続き、高級品を買える層が増えている。
足もとは持ち直しの局面だ。前期に欧州と日本で流通在庫が積み上がり、数量が 2 桁減った。会社は在庫がほぼ適正になったとし、2026 年 9 月期は数量 4% 増を予想する。ただし欧州の販売は上期もなお弱かった。
競争の形は変わらない。高級品では SHOEI と Arai が突出し、HJC や AGV、Shark などがその下で価格と意匠を競う。MotoGP などのレースで選手が使うことが、高級ブランドの看板になっている。
外からの逆風は 3 つある。米国の相互関税 15% は、会社の試算で年約 3 億円の重荷になる。中国では日本製品の不買運動が起きうる。為替は円高に振れると海外売上が目減りし、円高が 1% 進むごとに営業利益は 1.5 億円ほど減る。
電動バイクが増えても、ヘルメットの需要は消えない。安全規格が年々厳しくなる流れも、基準を満たせない小さな製造業者を締め出す方向に働く。
資本政策と M&A
資本政策の軸は、連結配当性向 50% と ROE 20% 台の維持だ。この 10 年、配当性向は 49〜50% に収まり続けている。2025 年 9 月期は配当を会社予想より引き上げ、翌期も同額を予想する。
加えて、2025 年 11 月に 170 万株・25 億円を上限とする自社株買いを出した。2023 年 11 月から翌年 1 月にも 20 億円を買っており、還元を機動的に足す姿勢は確かだ。
ただし現金はたまる。2025 年 9 月末の純現金は 199 億円で、会社は今後 3 年で 235 億円まで増えるとの図を示す。有事に備える内部留保として 150〜160 億円を置き、そこを超える分を成長投資と還元に回す考えだ。
買収の話は目立たない。戦略投資 110 億円にはキャリーケースと M&A の枠が含まれるが、中身は決まっていない。筆者は、無理な買収で価値を壊さない規律はこの会社の長所だと見る。
乗っ取りの面では、時価総額が 1,200 億円弱と小ぶりで、現金が厚く、業績の安定した会社なので、買収側の関心を引く条件はそろう。kabufu の推定では 10 年以内の買収確率は 17% である。
2025 年 11 月決議の自社株買い 25 億円は実行済みとして株数と自己資本の起点に反映したため、10 年の還元からは除いた(余った現金も同額減らした)。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
SHOEI の高級ヘルメットは、安全・意匠・国産の三つを同時に満たせる希少な存在で、世界の高級市場で約 6 割を占める。値上げをしても数量が崩れず、営業利益率は 27% 台に達した。この利益の質は他の二輪用品にはない。
2025 年は在庫調整で数量が落ちたが、会社は流通在庫がほぼ適正になったと言う。2026 年は欧州・日本・中国で数量が戻る予想で、新モデルやカーボン素材の投入も控える。数量が戻れば、固定費の重い工場の利益率はさらに上がる。
成長の余地は中国と ASEAN にある。中国は新型コロナ後の無秩序な販売でブランドが傷んだが、販売店への教育で立て直しが進む。東南アジアの二輪市場は大きく、高級品を求める層が増える。
国内の PFS 施工率は約半数まで来た。調整を受けた客は他社に移りにくく、買い替えも指名で決まる。ここまで利益と現金が積み上がった会社が、10 年続けて物価を超える値上げを通せば、中立を超える筋書きは十分ありうる。
慎重な見方
SHOEI の売上はほぼすべてが二輪ヘルメットで、二輪市場が縮めば逃げ場がない。欧米・日本のライダーは高齢化し、若者は二輪を買わない。会社自身も大きな成長は見込めないと書いている。
足もとの営業利益は 2 期連続で減り、2026 年 9 月期も予想は減益だ。主因は米国関税の約 3 億円、欧州子会社の在庫が減ったことによる利益の剥落、人件費の増加である。値上げで補っても、数量が戻らなければ利益率は下がる。
中国では日本製品の不買運動というリスクがあり、売上の 1 割を超える市場が突然冷える可能性がある。為替が円高に振れれば、欧州と北米の売上が目減りする。HJC や LS2 のような中価格帯メーカーが、品質を上げて高級品に迫る動きも続く。
現金の使い方にも不安が残る。自己資本比率は 85% で、会社は純現金をさらに積み上げる計画だ。買収に使えば失敗の恐れがあり、使わなければ自己資本の利益率は 20% を割る。高い値段を払う根拠としては、今の水準は余裕がない。
どちらに重みを置いたか
事業の質では強気の見方が上回る。高級ヘルメットの堀は厚く、値上げの力も証明されている。一方で、数量の伸びが乏しい単一製品の会社である点は、慎重な見方の指摘が正しい。
確率は中立を 34% と最も重くし、楽観とやや楽観の合計は 34% とした。悲観とやや悲観を合わせて 32% を置いたのは、二輪市場が構造的に縮む場合の振れ幅が大きいためだ。確率を加重した価値は今の値段を 1 割台半ば下回り、値段は先回りしすぎていると見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 3,609 円1,848 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 812 円416 億円)。 今の値に割り戻すと 2,414 円1,236 億円、今との差 +5.7%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 7.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 6,307 円3,229 億円 | 1,045 円535 億円 | +221.9% | +12.4% | 882 円452 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,176 円2,650 億円 | 967 円495 億円 | +168.9% | +10.4% | 1,351 円692 億円 |
| 中立 | 34% | 4,242 円2,172 億円 | 889 円455 億円 | +124.6% | +8.4% | 1,745 円893 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,109 円568 億円 | 693 円355 億円 | −21.1% | −2.3% | 396 円203 億円 |
| 悲観 | 10% | 273 円140 億円 | 195 円100 億円 | −79.5% | −14.6% | 47 円24 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,609 円1,848 億円 | 812 円416 億円 | +93.6% | +6.8% | 4,421 円2,264 億円 |
今の株価時価総額 2,284 円1,169 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 中国と ASEAN が育ち、値上げも通る最良の 10 年 利益 137 億円 · PER 23.0 倍 · 株価時価総額 6,307 円3,229 億円
中国のブランド立て直しが成功し、ASEAN の二輪市場の成長が高級品の需要を押し上げる。アジア全体の数量は今の約 1.6 倍になる。欧州と日本の流通在庫は正常に戻り、新素材のカーボンヘルメットや限定グラフィックが高い価格帯を支える。
値上げは物価を上回り、1 個あたり売上は 10 年で 1.45 倍になる。工場の稼働が上がり、営業利益率は 30% 前後まで届く。配当性向 50% を保ちながら、現金は事業の拡大にも回る。
北米も二輪の趣味層が厚く、高級品の指名買いが続く。国内は PFS の施工率が 100% に近づき、買い替えの流出が減る。国産の新ラインやキャリーケースも小さな上乗せになる。10 年を通して悪い年がほとんどなく、会社が掲げる自己資本の利益率 20% 台を保つ。
- 日本:数量 150(販売数量(千個))× 価格 6.95(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 104 億円・営業利益 34 億円。日本 数量 1.27 倍・価格 1.45 倍・営業利益率 33%
- 欧州:数量 300(販売数量(千個))× 価格 8.65(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 260 億円・営業利益 91 億円。欧州 数量 1.24 倍・価格 1.45 倍・営業利益率 35%
- 北米:数量 125(販売数量(千個))× 価格 6.96(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 87 億円・営業利益 30 億円。北米 数量 1.19 倍・価格 1.45 倍・営業利益率 34%
- アジア(中国・ASEAN ほか):数量 270(販売数量(千個))× 価格 6.16(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 166 億円・営業利益 55 億円。アジア 数量 1.59 倍・価格 1.45 倍・営業利益率 33%
倍率:事業の純利益 135 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 23.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 18.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 23.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 23.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)120 億円。全体の PER 23.01 倍、時価総額 3,229 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量の回復、新興国の伸び、値上げの定着が 10 年続けて重なる必要があり、実現すれば大きいが確度は高くない。
やや楽観 22% 欧州が戻り、アジアが緩やかに伸びる 利益 112 億円 · PER 22.8 倍 · 株価時価総額 5,176 円2,650 億円
2026 年 9 月期の会社予想どおり欧州・日本・中国の数量が回復し、その後は新モデルで高い水準を保つ。アジアは中国と ASEAN で 1.4 倍まで伸びるが、北米は横ばいにとどまる。
値上げは物価をやや超え、グラフィックモデルとカーボン素材が高価格帯を厚くする。営業利益率は 28% 台となり、今の水準近くを保つ。還元は配当性向 50% に自社株買いを加える形で続く。
国内は少子化で数量が緩やかに減るが、PFS による囲い込みと新素材の高価格帯が下支えになる。会社が戦略投資に置くキャリーケースなどの新事業は、利益への寄与が小さいままだ。大きな買収はなく、自己資本の利益率は 20% 台前半を保つ。
- 日本:数量 140(販売数量(千個))× 価格 6.66(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 29 億円。日本 数量 1.19 倍・価格 1.39 倍・営業利益率 31%
- 欧州:数量 280(販売数量(千個))× 価格 8.30(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 232 億円・営業利益 77 億円。欧州 数量 1.16 倍・価格 1.39 倍・営業利益率 33%
- 北米:数量 116(販売数量(千個))× 価格 6.67(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 24 億円。北米 数量 1.10 倍・価格 1.39 倍・営業利益率 31%
- アジア(中国・ASEAN ほか):数量 240(販売数量(千個))× 価格 5.91(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 142 億円・営業利益 43 億円。アジア 数量 1.41 倍・価格 1.39 倍・営業利益率 30%
倍率:事業の純利益 110 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 17.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)140 億円。全体の PER 22.75 倍、時価総額 2,650 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想どおり在庫の調整が終わり、アジアの数量が伸びる組み合わせ。ただし先進国の需要は伸びないので、確率は中立より低く置く。
中立 34% 中立:数量は緩やかに増え、値上げは物価並み 利益 93 億円 · PER 22.3 倍 · 株価時価総額 4,242 円2,172 億円
欧州と日本の数量は在庫調整の谷から戻るが、二輪の需要そのものは伸びない。日本は少子化で 130 千個程度に落ち着き、欧州は 260 千個台、北米は 100 千個台前半で推移する。アジアは中国の回復と ASEAN の拡大で 1.25 倍まで増える。
価格は物価並みに上がり、1 個あたり売上は 10 年で 1.34 倍になる。賃上げと関税の重みで営業利益率は 25% 台へやや下がる。会社は 50% の配当性向を守りながら現金も積み、自己資本の利益率は 20% 前後に落ち着く。
10 年のなかには、欧州の天候不順や在庫の積み上がりで数量が 1〜2 割落ちる年も 1 回は入る。それでも平均では、数量が緩やかに増え、高級品の値上げが続く姿に落ち着く。新リース会計や関税の変化は、10 年の利益水準を大きく変えない。
- 日本:数量 130(販売数量(千個))× 価格 6.42(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 24 億円。日本 数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 29%
- 欧州:数量 262(販売数量(千個))× 価格 8.00(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 210 億円・営業利益 65 億円。欧州 数量 1.08 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 31%
- 北米:数量 108(販売数量(千個))× 価格 6.43(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 69 億円・営業利益 20 億円。北米 数量 1.03 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 29%
- アジア(中国・ASEAN ほか):数量 215(販売数量(千個))× 価格 5.69(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 122 億円・営業利益 34 億円。アジア 数量 1.26 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 28%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.67(moat=strong)で RONIC 16.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 22.32 倍、時価総額 2,172 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の予想と業界の前提(先進国は横ばい、新興国が伸びる)を合わせた最も重みを置く筋書き。事業の質は高いが、売り先の二輪市場に成長がないので、強気より慎重に寄せる。
やや悲観 22% 二輪が細り、値上げが止まる 利益 53 億円 · PER 10.4 倍 · 株価時価総額 1,109 円568 億円
欧米・日本の二輪市場が年 1〜2% ずつ縮み、会社全体の数量は今の約 9 割に落ちる。中国は不買運動で伸び悩み、アジア全体は今の水準を保つのがやっとだ。
中価格帯メーカーの追い上げと関税の定着で、値上げは物価に届かず、1 個あたり売上は 10 年で 1.22 倍にとどまる。賃金は 4% ずつ上がるので、営業利益率は 18〜19% まで下がる。配当性向は維持されても、利益が細るため金額は減る。
国内は少子化と二輪離れで数量が 1 割落ち、欧州も 1 割落ちる。北米は関税で代理店が慎重になり、数量が緩やかに減る。単価の上がり方が鈍るなか、国内 2 工場の固定費が重くのしかかる。会社は現金があるため配当と自社株買いを続けるが、利益に対する割合は高まる。
- 日本:数量 112(販売数量(千個))× 価格 5.85(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 66 億円・営業利益 16 億円。日本 数量 0.95 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 24%
- 欧州:数量 215(販売数量(千個))× 価格 7.28(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 157 億円・営業利益 39 億円。欧州 数量 0.89 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 25%
- 北米:数量 92.0(販売数量(千個))× 価格 5.85(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 12 億円。北米 数量 0.88 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 23%
- アジア(中国・ASEAN ほか):数量 170(販売数量(千個))× 価格 5.18(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 88 億円・営業利益 19 億円。アジア 数量 1.00 倍・価格 1.22 倍・営業利益率 22%
倍率:事業の ROE 11.2%、k 7%、強い堀から RONIC 10.0%。正当化 PER は g 4.0% で上限 16.0 倍。数量が減り堀の厚みも薄れるので、上限の 65% の 10.43 倍に置いた(やや悲観は 7 割へ引き上げない)。余った現金 34 億円は別に足す。
確率:二輪需要の縮小に、関税や中国の逆風、中価格帯メーカーの追い上げが重なる想定。単一製品の会社なので、重みは中立に近く置く。
悲観 10% 二輪離れと外からの衝撃で、高級ブランドの値段が崩れる 利益 9 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 273 円140 億円
欧米・日本で二輪の若い客が増えず、市場は 3 割縮む。中国は不買運動で数量が大きく落ち、関税と円高で北米と欧州の売上も目減りする。HJC や LS2 が品質を上げ、高級品でも値引きを迫られる。
1 個あたり売上は 10 年で 1.05 倍と物価に大きく届かず、賃金は上がるので営業利益率は 1 桁台の前半まで落ちる。工場の固定費が重く、数量が 4 割減ると利益はほぼ消える。会社は現金で配当を保つが、稼ぐ力は弱く、評価は現金と事業の稼ぐ力の下の方に近づく。
配当と自社株買いは 10 年の純利益の合計を上回る可能性があり、その分は積み上げた現金から出る。会社が事業を縮め、現金を株主へ戻して幕引きに近い形をとる選択肢もありうる。ブランドの名前は残るが、高級品としての値段の力は大きく損なわれる。
- 日本:数量 90.0(販売数量(千個))× 価格 5.03(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 5 億円。日本 数量 0.76 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 12%
- 欧州:数量 160(販売数量(千個))× 価格 6.27(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 12 億円。欧州 数量 0.66 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 12%
- 北米:数量 70.0(販売数量(千個))× 価格 5.04(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 4 億円。北米 数量 0.67 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 10%
- アジア(中国・ASEAN ほか):数量 120(販売数量(千個))× 価格 4.46(1 個あたり売上(万円・名目))→ 売上 54 億円・営業利益 4 億円。アジア 数量 0.71 倍・価格 1.05 倍・営業利益率 8%
倍率:優良さを失い利益が細る筋書きなので PBR。事業の稼ぐ力(純利益 約 8 億円 ÷ k 7% + 余った現金 22 億円)は約 125 億円、純現金は今の約 199 億円のうち約 159 億円を売れる資産とみる。今の自己資本 322 億円に 0.49 倍を掛け、約 158 億円に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.4345 倍・時価総額 140 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:二輪市場の構造縮小、関税や不買運動、中価格帯メーカーの台頭が同時に起きる複合の筋書き。単一製品の会社なので、無視できない確率として 10% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本
国内の二輪店向け。2025 年は流通在庫の調整で数量が 25% 落ち込んだが、PFS 施工率は約 49% まで上がった。
| 数量販売数量(千個) | 価格1 個あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 118 | 4.79 | 57 | 17 |
| 10 年後 中立 | 130 | 6.42 | 84 | 24 |
取り方:2025 年 9 月期の日本向け数量 118 千個・売上 56.6 億円は説明会資料の地域別の図から。1 個あたり売上を価格として置く。営業利益は地域別に開示がないので、国内生産の収益を含む形で営業利益率 30% と推定し、共通費は調整欄に出した。
欧州
最大の市場。SHOEI の製品が高級品として根付く。2025 年は主力モデルの切り替えがなく数量が 12% 減った。
| 数量販売数量(千個) | 価格1 個あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 242 | 5.97 | 144 | 48 |
| 10 年後 中立 | 262 | 8.00 | 210 | 65 |
取り方:欧州向け 242 千個・売上 144.4 億円は資料の地域別の図による。1 個あたり約 6 万円と全地域で最も高い。営業利益率は 33% と推定した。
北米
関税の影響を受ける市場。数量は高水準を保ち、代理店が現地で販売する。
| 数量販売数量(千個) | 価格1 個あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 105 | 4.80 | 50 | 16 |
| 10 年後 中立 | 108 | 6.43 | 69 | 20 |
取り方:北米 105 千個・売上 50.4 億円。資料の図の増減率の組み合わせから割り付けた推定で、実際の割り付けと入れ替わる可能性がある。営業利益率は 31% と推定。
アジア(中国・ASEAN ほか)
中国が主体で、ASEAN などを含む。新型コロナ後に傷んだブランドの立て直しが進み、数量の伸びしろはここに集中する。
| 数量販売数量(千個) | 価格1 個あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 170 | 4.25 | 72 | 22 |
| 10 年後 中立 | 215 | 5.69 | 122 | 34 |
取り方:中国 110 千個(売上 45.1 億円)とその他 60 千個(同 27.1 億円)の合計。ともに資料の図から割り付けた推定。営業利益率は 30% と推定。
リスクと懸念
二輪需要の構造的な縮小
欧米と日本のライダーは高齢化し、若者の二輪離れが続く。会社自身も大きな成長は見込めないと述べる。数量が年 1〜2% 減る場合、値上げで補える限度があり、単一の製品に頼る SHOEI は逃げ場が少ない。
米国関税と為替
米国は 2025 年 9 月にヘルメットへ相互関税 15% を課した。会社は年約 3 億円の影響を見込む。円高に振れると海外売上が目減りし、円高が 1% 進むごとに営業利益が約 1.5 億円減る。両方が同時に効く年もありうる。
中国の不買運動
中国は日米と同じ規模の市場に育ったが、政治の摩擦で日本製品の不買運動が起こる恐れがある。会社自身もこれを主要なリスクに挙げている。数量の伸びを中国に頼る筋書きの最大の弱点である。
在庫の調整と製造コスト
2023 年に欧州子会社の在庫が膨らみ、その後 2 年かけて調整した。生産量が減っても工場の人員を減らさなかったため、2025 年は製造コストが上がった。需要が落ちる年に利益率が崩れやすい作りである。
中価格帯メーカーの追い上げ
HJC や LS2 などが品質を上げ、MotoGP の契約でブランドも広げている。高級品の価格が下がれば、SHOEI の値上げ余地が小さくなる。Arai との差別化が難しくなる局面も出てくる。
現金の使い道
自己資本比率は 85% で、純現金はさらに増える見通しだ。買収に使えば価値を壊す恐れがあり、使わなければ自己資本の利益率が 20% を割る。戦略投資 110 億円の中身は具体的に示されていない。
安全規格と事故の責任
ヘルメットは安全に関わる製品で、規格の改定のたびに設計や試験の費用が増える。大規模な欠陥や回収が起きれば、ブランドと利益の両方が傷む。規格の厳しさは参入障壁でもあるが、責任の重さと表裏一体だ。
今後の分かれ目
- 欧州と日本の数量が会社予想どおり回復し、在庫の調整が完全に終わったら
- 営業利益率は 28% 台へ戻り、中立の筋書きより上の確率を重くしてよい。
- 中国で不買運動が起き、数量が 2 割以上落ちたら
- アジアの伸びを前提にした中立の筋書きを下げ、やや悲観側へ確率を移す。
- 米国関税が 15% より引き上げられたら
- 北米の数量と利益率の前提を見直す。値上げで吸収できるかが分かれ目になる。
- 戦略投資で大型の買収が出たら
- 買収の中身と値段で評価が分かれる。本業に近く、現金の範囲で収まる買収なら中立のまま。遠い事業なら資本配分への見方を下げる。
- 中価格帯メーカーが高級品の価格帯で数量を伸ばしたら
- 価格の上げ幅を物価未満へ下げ、堀の見方を弱める。
- 配当性向 50% に加えて自社株買いを毎年続けたら
- 自己資本の利益率が 20% 台に戻り、現金の積み上がりへの懸念が和らぐ。
見ておくもの
- 欧州・日本・中国の販売数量(四半期)
- 営業利益率(27% を保てるか)
- 米国関税の影響額と為替(ユーロ・ドル)
- PFS 施工率と国内の販売数量
- 純現金の推移と自社株買いの追加
- 戦略投資(キャリーケース・M&A)の中身
倍率と資本コストの決め方
セグメントは地域別の販売数量(千個)×1 個あたり売上で積み、数量は実質、価格は物価 3% 込みの名目 1.34 倍を中立の基本にした。倍率は正当化 PER の式に事業の ROE を当て、堀が強いので残る割合 2/3、g は 4% で上限を出し、利益の質に応じて上限の 8 割に置いた。余った現金は会社の内部留保の目安を超える分だけ別に足した。今の株価・今の PER・過去の PBR は一度も根拠に使っていない。リースは自社工場が中心で重くないとみる(有報では未確認)。2028/03 期からの新リース会計で営業利益と純有利子負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ家賃を費用に入れる形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 18.73→23.01 倍・やや楽観 PER 17.46→22.75 倍・中立 PER 16.08→22.32 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。