結論
ホクシンは、木材のチップを繊維にほぐして固めた板、MDFを大阪府岸和田市の工場で作る専業のメーカーだ。筆者の結論は割高である。PBRは0.5倍台で安く見えるが、稼ぐ力が資本コストの3分の1ほどしかなく、その差が10年で埋まる道筋が見えないからだ。
2026年3月期は新しい住宅の着工が減り、床の下地や建材に使う板が売れず、チップと人件費の上昇も重なって営業赤字だった。今期は値上げが通り、上期の予想を黒字へ引き上げた。底は抜けたと言える。
ただ、過去12年の営業利益率は良い年で7%、普通は2〜4%だ。板は汎用の品で、輸入品とも競う。値上げは費用の上昇を追いかけるだけで、利幅を広げる力は弱い。
純負債は29億円と時価総額に近く、金利が上がれば利払いが増える。株主の4割強は兼松とDAIKENなどの取引先で、還元は自己資本の1%の配当にとどまる。帳簿の自己資本は厚いが、それが株主の手に戻る道も細い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ホクシンは「工場は持っているが、工場が株主のために稼いでいない」会社に見える。自己資本59億円に対し、時価総額は32億円だ。帳簿の上では安い。
だが、オーナー利益、つまり工場の更新に要るお金を引いて株主の手元に残る利益は、ほとんど無い。償却は工場を建てた時の値段で止まっているが、次に設備を入れ替える時は建設費の上がった値段で払うことになる。会計の利益より、手元の現金の方が細い。
筆者がいちばん気にしているのは、値決めの力の無さだ。原料の値段が上がれば赤字になり、値上げで取り戻すまで1〜2年かかる。その繰り返しで、10年の平均の利益率は3%前後にとどまる。
安全域は、取引先の大株主が買い取る時にしか現れない。それを当てにして払う値段を決めることはしない。持ち続けたいと思える事業ではない。
何で稼ぐ会社か
事業はMDFの製造と販売、ほぼ1本だ。MDFは木材のチップを蒸して繊維にほぐし、接着剤と混ぜて熱と圧力で板にしたものである。表面が平らで加工しやすく、床の下地、家具、建具、住宅の内装の部材に使われる。
売上は約100億円で、9割が自社の板、残り1割が仕入れて売る商品だ。販売の量は年に約18万立方メートルと筆者は推定する。主な客は床材や建具を作る建材メーカーで、大株主のDAIKENもその1社だ。総合商社の兼松が筆頭株主で、原料の輸入と製品の販売の両方に関わる。
原料のチップは約3分の2を東南アジアなどからの輸入に頼る。円安やチップの値上がりは、すぐに原価を押し上げる。会社は国内の間伐材や植林木、廃材のチップへの切り替えを検討している。
伸びている用途は、構造用の床の板だ。木造の住宅や中層の建物で、合板の代わりにMDFを床の下地に使う動きが広がっている。一方、合板の代わりの建材や、フロアーの基材は、新しい住宅の着工の減少でそのまま量が減る。
工場は大きな装置の塊で、毎年の償却と更新の投資が欠かせない。売上の割に設備が重く、量が落ちると固定費がそのまま利益を削る。
優良さと弱いところ
優良さは低いと筆者は見る。国内でMDFを作る会社は数えるほどしかなく、新しく参入するには大きな工場が要る。この意味で参入の壁はある。構造用の床の板のように、品質の認定が要る用途では客を替えにくい。
しかし、それ以上の堀、つまり他社がまねできない強みは見当たらない。MDFは汎用の品で、東南アジアやニュージーランドからの輸入品とも競う。値段は需給とチップの相場で決まり、ホクシンが主導して上げられるものではない。2026年の値上げも、費用の上昇を取り戻すためのものだ。
資本の効率は低い。過去10年のROE、つまり自己資本に対する純利益の割合の中央値は4%で、資本コストの半分に届かない。利払いの倍率は2026年3月期にマイナスになった。大株主の取引先は安定した販路をくれるが、利幅を広げる圧力はかけない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
MDFの需要は、日本の住宅の着工と強く結びついている。新しい住宅の着工は2025年に約74万戸と62年ぶりの低さに落ちた。人口と世帯の減少で、10年後も今より少ないと見るのが自然だ。床の下地や建具に使う板の量は、そのまま細っていく。
明るい面もある。1つは構造用の床の用途だ。木造の中層の建物や、合板の代わりに床の下地として使う動きが広がっている。もう1つは、熱帯の木を使う合板の供給が細る中で、チップから作るMDFが代わりの板として選ばれやすいことだ。
もう1つの大きな変数は原料だ。チップの3分の2を輸入に頼るので、海上の運賃や産地の規制、為替で原価が動く。ここ数年はチップと接着剤、電気代がまとめて上がり、値上げが追いつかずに赤字に落ちた。
競争の相手は、国内の数社と輸入品だ。国内の同業は少なく、大株主のDAIKENともMDFを互いに融通し合う関係にある。業界の再編が進めば、ホクシンは大手の建材メーカーや商社に組み込まれる側になりうる。
筆者は、10年で国内のMDFの量は1割ほど減り、値段は費用の上昇に少し遅れて付いていくと見る。
資本政策と M&A
還元は細い。配当は年に約0.6億円で、自己資本に対する配当の割合(DOE)は約1%だ。自社株買いはしていない。利益が薄い年が続き、工場の更新と借金の返済が先に来る。
株主は兼松が26.5%、DAIKENが14.9%、永大産業が3.5%で、取引先が4割強を握る。兼松は10年以上同じ比率を持ち続けている。取引先にとってホクシンは板の調達先で、配当を厚くするより安定して作り続けることを望む。少数株主の声は届きにくい。
この株主の形から、兼松かDAIKENが残りの株を買い取る可能性はある。ただ、その動きは今のところ無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
底は抜けた。2026年の値上げが通り、上期の予想は赤字から黒字に変わった。原料と電気代の上昇は一巡しつつあり、値上げの効果はこれから通年で効く。営業利益は過去の良い年の7%に戻りうる。
構造用の床の板は伸びる市場だ。木造の中層の建物が増え、国も木材の利用を後押ししている。合板の代わりにMDFを床の下地に使う動きは、着工の減少を補って余りある。熱帯の木の合板の供給が細れば、チップから作るMDFの出番はさらに増える。
国内でMDFを作る会社は少なく、新しい工場はまず建たない。建設費が上がるほど、今ある工場の価値は上がる。大株主のDAIKENとは板を融通し合い、兼松は原料と販路を支える。いざとなれば、どちらかが残りの株を買い取るだろう。
自己資本は時価総額の2倍近い。利益が平年に戻るだけで、今の値段は安すぎる。
建設費が上がる世界では、新しい競争相手は現れにくい。今ある工場を持つ会社が、値段の主導権を少しずつ取り戻す。
慎重な見方
住宅の着工は62年ぶりの低さで、10年後はさらに少ない。床の下地や建具に使う板の量は、人口とともに細る。構造用の床の伸びは、全体の減少を埋めるほど大きくない。
値上げは利幅を広げない。原料のチップは3分の2が輸入で、運賃や為替でまた上がる。値上げが追いつくまでの1〜2年は赤字になり、その繰り返しで10年の平均の利益率は3%前後にとどまる。輸入のMDFも値段の天井を押さえる。
工場の更新は重い。償却は昔の値段のままだが、次の設備は建設費の上がった値段で買う。借金は29億円あり、金利が3.5%に上がれば利払いは今の倍以上になる。
株主の4割強は取引先で、配当は自己資本の1%しか出ない。自己資本が厚くても、その価値が少数株主に戻る道は細い。買い取りの提案が来ても、帳簿の値段より安い値段になるだろう。
筆者はこちらに分がある。帳簿の厚さは、稼ぐ力の無さを埋めない。工場は売れば安く、持てば更新の投資を食う。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方の方が強いと筆者は判断した。値上げで底を抜けたことは認めるが、それは費用の上昇を取り戻しただけで、利幅を広げる力の証ではない。構造用の床の伸びは本物だが、着工の減少を埋めるには小さい。確率は中立を4割とし、悲観側を3割強、楽観側を2割強に置いた。値上げの定着と、構造用の床の比率が、見直しの分かれ目だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 103 円29 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 21 円6 億円)。 今の値に割り戻すと 59 円17 億円、今との差 −47.8%、 期待の年率 +1.0%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 263 円75 億円 | 43 円12 億円 | +173.0% | +10.6% | 21 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 161 円46 億円 | 30 円8 億円 | +70.4% | +5.5% | 34 円10 億円 |
| 中立 | 40% | 96 円27 億円 | 23 円7 億円 | +6.8% | +0.7% | 48 円14 億円 |
| やや悲観 | 22% | 52 円15 億円 | 14 円4 億円 | −41.1% | −5.2% | 15 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 42 円12 億円 | 5 円2 億円 | −58.1% | −8.3% | 6 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 103 円29 億円 | 21 円6 億円 | +10.9% | +1.0% | 124 円35 億円 |
今の株価時価総額 112 円32 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 7% 構造用の床が主力に育ち、利幅が過去の山に戻る 利益 7 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 263 円75 億円
木造の中層の建物が増え、構造用の床の板は合板に代わって標準になる。熱帯の木の合板の供給も細り、MDFの出番が増える。ホクシンの販売量は今の1.19倍の22万立方メートルに伸びる。
原料は国内の間伐材や廃材のチップへの切り替えが進み、輸入の値段の振れに強くなる。値上げは費用の上昇より少し速く通り、売値は10年で1.38倍になる。償却は昔の値段のまま増えにくいので、営業利益率は6.5%と過去の山に近づく。
営業利益は約10億円になり、利払いを引いても純利益は6.5億円に届く。それでも自己資本の稼ぐ力は7%台で、資本コストにはわずかに届かない。
- MDF(自社製造):数量 22.0(MDFの販売量(万立方メートル・推定))× 価格 6.91(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 152 億円・営業利益 10 億円。22万立方メートル(今の1.19倍)×売値1.38倍、利益率6.5%
- 仕入商品:数量 2.8(仕入れて売る板・建材の量(万立方メートル・推定))× 価格 5.24(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。仕入商品は少し増える、利益率2.5%
倍率:ROE 7.5%(純利益6.52億円÷自己資本87.3億円)が k 8.75% に届かないので、ためた利益は額面未満で、PER の上限は 1÷k=11.43 倍。楽観でも上限の10割までとした。
確率:構造用の床の普及、合板からの置き換え、値上げの定着の3つがそろう筋書き。過去12年で営業利益率が7%に届いたのは1期だけなので7%とした。
やや楽観 18% 構造用の床が着工の減少を補い、値上げも定着する 利益 4 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 161 円46 億円
新しい住宅の着工は減り続けるが、構造用の床の板がその穴を埋め、販売量は今の1.05倍の19.5万立方メートルになる。
2026年の値上げは定着し、その後も売値は物価並みに上がる。チップは輸入が中心のままだが、値上げの遅れは1年ほどに縮む。償却は昔の値段のまま増えにくく、利益率は4.8%と過去の平均より少し上に出る。
営業利益は約6.6億円、借り換えで増えた利払いを引いて純利益は4億円になる。配当は少し増えるが、利益の3割ほどだ。自己資本の稼ぐ力は5%前後で、資本コストには遠い。
大株主の取引先との販路は保たれ、量の振れは小さくなる。
- MDF(自社製造):数量 19.5(MDFの販売量(万立方メートル・推定))× 価格 6.71(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 131 億円・営業利益 6 億円。19.5万立方メートル(今の1.05倍)×売値1.34倍、利益率4.8%
- 仕入商品:数量 2.7(仕入れて売る板・建材の量(万立方メートル・推定))× 価格 5.24(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。仕入商品はほぼ横ばい、利益率2.2%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 46 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:構造用の床の拡販が続き、2026年の値上げが定着する筋書き。今期の上方修正と同じ方向なので2割弱とした。
中立 40% 量は1割弱減り、利幅は過去の平均に戻るだけ 利益 2 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 96 円27 億円
新しい住宅の着工は10年で1割強減り、床の下地や建具の板の量も細る。構造用の床の板は伸びるが、全体の販売量は今の0.95倍の17.5万立方メートルになる。
値段は費用の上昇を追いかけて上がり、10年で1.30倍と物価に少し届かない。チップの値上がりのたびに1〜2年は利幅が削られ、その後に値上げで取り戻す。この繰り返しで、平均の営業利益率は3.5%だ。工場の償却は昔の値段のままで、その分だけ利幅は少し助かる。一方で、更新の設備は建設費の上がった値段で買うので、手元の現金は会計の利益より細い。
営業利益は約4.3億円、借り換えで増えた利払いを引くと純利益は2.4億円だ。自己資本の稼ぐ力は3%強で、資本コストの3分の1ほどにとどまる。
- MDF(自社製造):数量 17.5(MDFの販売量(万立方メートル・推定))× 価格 6.51(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 4 億円。17.5万立方メートル(今の0.95倍)×売値1.30倍、利益率3.5%。償却は約4.5億円から更新の分だけ増えて約5億円
- 仕入商品:数量 2.6(仕入れて売る板・建材の量(万立方メートル・推定))× 価格 5.31(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。仕入商品は量が横ばい、値段は物価並み、利益率2%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 27 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:住宅の着工の減少と構造用の床の伸びを差し引き、値上げが費用に少し遅れて付いていく中心の筋書き。過去12年の平均の姿に近いので4割とした。
やや悲観 22% 着工の減少と輸入品に挟まれ、利益が消えかける 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 52 円15 億円
新しい住宅の着工は10年で2割減り、構造用の床の伸びも思ったほどではない。販売量は今の0.86倍の16万立方メートルに落ちる。
輸入のMDFが値段の天井を押さえ、チップの値上がりを値上げで取り戻しきれない。売値は10年で1.25倍にとどまる。量が落ちても工場の固定費は減らず、営業利益率は1.5%に沈む。
借金の利払いを引くと純利益はほぼ残らない。配当は1株の額をかろうじて保つが、利益の大半を出すことになる。工場の更新の投資は先送りが増え、設備は古びていく。稼ぐ力からは価値がほとんど出ず、支えは工場と在庫を売った時の価値だけになる。
配当は手元の現金から出すので、還元が利益の大半を占める。
- MDF(自社製造):数量 16.0(MDFの販売量(万立方メートル・推定))× 価格 6.26(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 100 億円・営業利益 2 億円。16万立方メートル(今の0.86倍)×売値1.25倍、利益率1.5%
- 仕入商品:数量 2.3(仕入れて売る板・建材の量(万立方メートル・推定))× 価格 4.89(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。仕入商品も減る、利益率1.2%
倍率:この筋書きの稼ぐ力は純利益0.5億円(k 8.75%で割って約5.5億円)しかない。支えは売れる資産(floor_assets_oku 約17億円)で、今の自己資本58.9億円に0.25倍を掛けてその範囲に収めた。EVで見ても営業利益1.6億円に対して約27倍で、利益の倍率では測れない。倍率は市場の値付けからでなく、売れる資産から置いた。
確率:着工の減少が速く、輸入のMDFが値段の天井を押さえる筋書き。2024〜2026年に利益がほぼ消えた実例があるので2割強とした。
悲観 13% 原料と輸入品に負け、工場が赤字を続ける 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 42 円12 億円
新しい住宅の着工は10年で3割減り、木造の中層の建物も思ったほど増えない。販売量は今の7割の13万立方メートルに落ちる。
輸入のチップは産地の規制と運賃で高止まりし、輸入のMDFは安い値段で入ってくる。売値は10年で1.15倍しか上がらず、工場は赤字を続ける。工場の更新は止まり、生産の一部を休める。
借金の利払いが重くなり、配当はやめる。大株主の取引先が工場ごと引き取る話が出ても、赤字の工場には帳簿の値段より大幅に安い値段しか付かない。少数株主に残る価値は、自己資本の2割に満たない。
初めの数年の配当は、手元の現金を取り崩して払う。その後はやめる。赤字の工場を抱えたまま、借金を返すことが最優先になる。
- MDF(自社製造):数量 13.0(MDFの販売量(万立方メートル・推定))× 価格 5.76(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 −2 億円。13万立方メートル(今の0.70倍)×売値1.15倍、赤字
- 仕入商品:数量 2.0(仕入れて売る板・建材の量(万立方メートル・推定))× 価格 4.60(1万立方メートルあたり売上(億円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。仕入商品も細る、損益ゼロ
倍率:赤字で稼ぐ力からは価値が出ないので、売れる資産(floor_assets_oku 約17億円)を上限に、赤字で食う分を引いて今の自己資本58.9億円に0.2倍を掛けた(やや悲観の0.25倍より低く)。
確率:着工の急減、輸入チップの高止まり、輸入のMDFの攻勢が重なる構造的な負けの筋書き。過去20年に赤字の期が3つあり、2003年には大きな減損も出した会社なので13%とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
MDF(自社製造)
木材チップを繊維にほぐして固めた板。床の下地・建具・家具・構造用の床に使う。
| 数量MDFの販売量(万立方メートル・推定) | 価格1万立方メートルあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.5 | 5.01 | 93 | 0 |
| 10 年後 中立 | 17.5 | 6.51 | 114 | 4 |
取り方:数量の開示が無いので、MDFの売値を1立方メートル約5万円とみて、自社品の売上92.7億円(全社102.7億円の9割)から約18.5万立方メートルと推定した。単一セグメントなので全社の営業損失をここに置いた。償却は約4.5億円と推定。
仕入商品
他社の板や建材を仕入れて売る。売上の約1割。
| 数量仕入れて売る板・建材の量(万立方メートル・推定) | 価格1万立方メートルあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.6 | 3.96 | 10 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.6 | 5.31 | 14 | 0 |
取り方:有報の「仕入商品は総売上のおよそ10%」から10.3億円とし、1立方メートル約4万円とみて約2.6万立方メートルと推定した。利益の開示は無く、薄い口銭とみて今は0とした。
リスクと懸念
住宅の着工の減少
MDFの多くは床の下地や建具など住宅の部材に使われる。新しい住宅の着工は2025年に62年ぶりの低さに落ち、10年後も減っている見込みだ。構造用の床の伸びで補えなければ、販売量はそのまま細る。
輸入チップの値段
原料のチップの約3分の2は輸入で、産地の規制、海上の運賃、為替で値段が動く。2025〜2026年はチップと接着剤、電気代の上昇に値上げが追いつかず営業赤字になった。同じことは10年の間に何度も起きうる。
借金と金利
純負債は約29億円で時価総額に近い。借り換えの金利が3.5%前後に上がれば、利払いは今の倍以上になる。利益が薄い年には、利払いが営業利益を上回る。
工場の更新の投資
償却は工場を建てた時の値段のままだが、設備を入れ替える時は建設費の上がった値段で払う。会計の利益より手元の現金が細り、借金を増やすか配当を削るかの選択を迫られる。
取引先の大株主
兼松とDAIKENなど取引先が株の4割強を持つ。安定した販路の代わりに、配当は自己資本の1%と細く、少数株主の利益より取引の安定が優先されやすい。
今後の分かれ目
- 構造用の床の板の売上が全体の3割を超えたら
- 着工の減少を補う柱ができた。やや楽観の筋書きの確率を上げる。
- 営業利益率が2期続けて5%を超えたら
- 値上げが費用の上昇を上回って定着した。中立の利益率を見直す。
- チップの値段が再び大きく上がり、値上げが1年以上遅れたら
- やや悲観の筋書きに近づく。赤字の年が出ると見る。
- 兼松かDAIKENが残りの株の買い取りを提案したら
- 工場の価値に近い値段が付く可能性がある。少数株主にとっては唯一の出口になりうる。
- 大きな設備の更新を借金で行うと発表したら
- 利払いが増え、還元はさらに細る。悲観側に重みを移す。
見ておくもの
- 新設住宅着工戸数と木造の中層の建物の数
- 輸入チップの値段と為替
- 値上げの浸透と営業利益率
- 純負債と設備の更新の投資
- 兼松・DAIKENの持ち分の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価やPBRからでなく、ROEとkの関係だけで置いた。10年中立のROEは3.3%でk 8.75%を大きく下回るので、PER の上限は1÷k=10.8倍とし、汎用の板で原料の振れに弱いことから7.5割に置いた。今のPBRは0.5倍台だが、それを割安の根拠にしていない。悲観側は帳簿でなく、工場を売った時の価値から置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.81→11.43 倍・やや楽観 PER 9.73→11.43 倍・中立 PER 8.11→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 1.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。