結論
日本創発グループは、印刷や販促、包装資材の会社を次々に買い集めて束ねる持株会社だ。連結子会社は39社。売上は870億円、営業利益は30億円で、利益率は3%台にとどまる。
筆者の結論は「割高」だ。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を6割ほど下回る。理由は三つある。本業の印刷が縮むこと。借金が営業利益の10倍を超えること。そして、2025年12月期の純利益65億円が、不動産の売却益という一度きりの利益だったことだ。
足元の利益は、その売却益を除くと20億円ほどだ。2026年12月期の会社予想も、営業利益は24億円と、前期から2割減る。工場の入れ替えで償却が増えるためだ。売上は買収で伸びても、利益は伸びていない。
強みもある。後継者に困る中小の印刷会社を、安い値段で引き継ぐ買収の流れは続く。統合で拠点を集約し、固定費を削る余地がある。プロダクツの新工場は2026年5月に動き始めた。
ただ、買収で売上を足す戦略は、買う値段が高ければ価値を生まない。10年の間に統合で利益率を上げ切れるかが本質だと、筆者は見ている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の本質価値をどう見るか。
まず、利益の質に疑問がある。2025年12月期の純利益は、不動産売却益が大半だ。本業の営業利益は30億円で、前期から3割減った。株主が自由に使える利益は、これよりさらに小さい。工場の更新に毎年40億円台を使っているからだ。物価が上がると、更新費用はそのぶん膨らむ。
堀は浅い。印刷は値段で選ばれる産業で、同社の強みは買って束ねる運営にある。10年先を自信を持って予想できる事業ではなく、確信度は下げる。
資本の使い方が最大の論点だ。買収は、買う値段が価値を決める。安く買い、統合で利益率を上げれば価値が生まれる。高く買えば、のれんが減損される。借金の重さを考えれば、一度の失敗が致命傷になりうる。
安全域は、今の値段にない。時価総額は純利益の十数倍に相当し、自己資本利益率が資本コストに届かない会社としては高い。この会社を持ち続けたいと思うには、本業の利益が10年で倍になる証拠か、はるかに安い値段が必要だ。
何で稼ぐ会社か
事業は三つに分かれる。
いちばん大きいのは印刷製造で、出版、商業印刷、パッケージ印刷、製本を手がける。東京リスマチック、日経印刷、美松堂といった名前の会社が傘下にある。二つ目はITメディア・セールスプロモーションで、販促ツール、映像、Web、メディアの制作運用だ。三つ目のプロダクツは、包装資材、ラベル、樹脂成形、ノベルティなど、モノを作って売る事業である。各事業の売上の割合は、決算の開示で確かめられず、推定で印刷5割強、販促2.5割、プロダクツ2割とみている。
この会社の特徴は、買収を事業の中心に据えていることだ。2025年だけで、フジプラス、シルキー・アクト、DNTI、サンメック、鈴木松風堂、日本サンプルなどを加えた。2026年も脇田コウキ製本、エクセルパック・カバヤ、メタルクリエイションなどが続く。買収後は、共同製本と美松堂のように、同じ事業の子会社を合併して整理していく。
売上は2019年の556億円から2025年の870億円へ、6年で約1.6倍になった。伸びの大半は買収による。営業利益は同じ期間に27億円から30億円と、ほとんど増えていない。つまり、売上は買えても、利益はまだ買えていない。
優良さと弱いところ
堀は浅く、強みは経営の仕組みにある。
印刷は、顧客が価格で選ぶ産業だ。同社に独自の技術や顧客の囲い込みがあるわけではない。得意なのは、後継者難の会社を引き継ぎ、地域ごとに束ねて拠点を集約することだ。この「買って束ねる」力が、競争力の源になっている。大手のTOPPANや大日本印刷とは戦わず、中小の隙間を取る。
資本効率は、見かけと実力が違う。2025年12月期の自己資本利益率は31%に見えるが、これは不動産売却益のためだ。通常の利益で測れば、10%を切る。過去10年の中央値は11%だが、自己資本が小さい時期の数字で、実態より高い。
財務は弱い。純有利子負債は373億円、自己資本比率は21%。子会社が種類株式を発行して資金を集めており、これも優先して支払う義務に近い。利払いは金利が上がるほど重くなる。経営は資本を借りて買収に使う仕組みだが、借りた金が利益を生まなければ、すぐに苦しくなる。
弱点は、制作運用のAI代替だ。ITメディア・販促の人手の部分は、数年で置き換わる可能性がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の印刷市場は、30年規模で縮み続けている。1991年に8.9兆円あった市場は、2024年に6.3兆円まで減った。新聞、雑誌、チラシなど紙のメディアが落ちたためだ。名目で毎年2〜4%の縮小が続く、というのが業界の見方である。
一方で、パッケージ印刷や特殊印刷は拡大基調だ。軟包材、紙器、シール、ラベル、建装材は、食品や日用品の需要に支えられる。同社の買収は、この伸びる領域と、出版・商業印刷の縮む領域の両方に向いている。
競争の構図は、TOPPANと大日本印刷の二強が半導体関連や情報に軸足を移し、その外側で、数千社の中小印刷会社が価格競争をしている。後継者がいない会社は多く、同社のような買い手は売り手に困らない。ただし、買われる会社の質はばらつく。
販促・制作の領域では、AIが画像、映像、文章を作れるようになり、人手の工数で稼ぐ仕事は縮む。単価も下がりやすい。逆に、AIを使いこなして制作の速度を上げた会社は、少人数で同じ量を作れる。数量と価格の両方に影響する、10年の最大の変化だと筆者は見ている。
エネルギーと人件費の上昇は、印刷全体の利益率を押し下げる。紙とインクの値上げを、顧客に転嫁しきれない会社が多い。
資本政策と M&A
資本政策は、買収と設備更新に偏っている。
2025年12月期は、不動産を売って約54億円の益を得た。会社はその資金を、工場の廃棄と新設に充てる方針だ。関西の小西印刷所を廃止してフジプラスに移すなど、拠点の集約も進む。設備投資は年に40億円台で、償却費の約23億円を大きく上回る。
有利子負債は、2026年6月末で504億円に増えた。会社は金利上昇に備えて、長期借入の固定化を進める方針だが、直近は短期借入が増えている。子会社の種類株式の発行で、非支配株主の持分も約50億円増えた。借金とは別の、優先して払う資金調達である。
還元は、2025年12月期に特別配当を含めて配当性向43%だった。通常の配当の水準は確かめられておらず、筆者は純利益の35%ほどで見る。自社株買いの実績は確認できていない。
大株主は、株式会社TKOが約36%、従業員持株会が約7%。TKOの保有目的は政策投資で、重要な提案はしていない。経営者の持株は少ない。支配株主に近い安定株主がいるため、TOBの確率は市場の推計で10年に約28%とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
買収の相手は、後継者難に悩む中小の印刷会社だ。売り手は多く、値段は安い。同社は年に数社のペースで買い、地域ごとに束ねて拠点を集約している。共同製本と美松堂の合併のように、統合の実績も出始めた。固定費が下がれば、利益率は3%台から5%台に上がる余地がある。
不動産の売却で54億円の益を得て、その資金で老朽設備を入れ替えた。プロダクツの主力工場は2026年5月に動き始め、包装資材やラベルの需要を取り込む。パッケージ印刷は食品や日用品に支えられ、拡大基調だ。EBITDAは前期の53億円から増える見込みで、償却が先行する今は利益が低く見えるだけだ。
筆頭株主のTKOは政策投資として36%を持ち続け、経営は安定している。借金で資金を借りて高い配当を出す今の形は、資本効率を引き上げる。TOBの確率も市場は約28%と見ており、買収される側に回れば値段が付く。大株主に支配者がいないぶん、経営は買収の意思決定を素早く進められる。印刷という成熟産業でも、拠点の集約と購買の一本化を進めれば、数年で利益率は動く。
慎重な見方
売上は買収で積み上がったが、営業利益は2019年の27億円から2025年の30億円とほとんど増えていない。買収の効果が利益に出ていない。2026年12月期の予想も、営業利益は24億円と2割減だ。
純利益の65億円は不動産売却益で、本業の稼ぎではない。借金は503億円に増え、営業利益の10倍を超える。金利が3.5%前後に上がれば、利払いが利益を食う。自己資本比率は21%まで下がり、子会社の種類株式の発行で非支配持分も増えた。資金繰りに余裕はない。
事業の中身も厳しい。印刷市場は30年縮み続け、これからも名目で年2〜4%縮む。ITメディア・販促はAIの制作代替で数量も単価も落ちる。のれんは、買った会社の利益が出なければ減損される。
配当の利回りが高く見えるのは、特別配当を含むためだ。買収のたびに借入が増え、返す力が追いつかない。今の値段は、買収がうまくいく前提をほぼ織り込んでいる。
加えて、制作運用のAI代替は始まったばかりで、人手で稼ぐ販促・映像の単価は数年で下がる。印刷とAIの二つの逆風が同時に吹く構造は、買収で積んだ売上の質を弱くする。
どちらに重みを置いたか
強気の見方が言う買収の仕組みは、条件が整えば価値を生む。ただ、売上は買えても利益が伸びていない実績と、営業利益の10倍を超える借金が重い。本業の印刷とAIで置き換わる制作の縮小も、構造的だ。中立の筋書きでも、利益は物価並みにしか伸びず、自己資本利益率は資本コストに届かない。確率は、やや悲観に0.30、悲観に0.15を置き、楽観側は小さくした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 560 円262 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 148 円69 億円)。 今の値に割り戻すと 326 円153 億円、今との差 −47.1%、 期待の年率 +1.4%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 1,346 円630 億円 | 295 円138 億円 | +165.9% | +10.3% | 82 円38 億円 |
| やや楽観 | 15% | 984 円461 億円 | 222 円104 億円 | +95.5% | +6.9% | 181 円85 億円 |
| 中立 | 35% | 695 円325 億円 | 164 円77 億円 | +39.3% | +3.4% | 301 円141 億円 |
| やや悲観 | 30% | 285 円134 億円 | 124 円58 億円 | −33.7% | −4.0% | 123 円57 億円 |
| 悲観 | 15% | 111 円52 億円 | 32 円15 億円 | −76.9% | −13.6% | 21 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 560 円262 億円 | 148 円69 億円 | +14.7% | +1.4% | 708 円331 億円 |
今の株価時価総額 617 円289 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 5% 買収が価値を生み、資本が回り始める 利益 49 億円 · PER 11.9 倍 · 株価時価総額 1,346 円630 億円
買収した印刷会社を地域ごとに束ね、工場を集約して固定費を削る。買収の相手は後継者難のオーナー会社で、安く手に入る。統合で営業利益率は印刷で4.5%、プロダクツで7%まで上がる。プロダクツは新工場が軌道に乗り、包装資材とラベルで数量が1.7倍になる。
ITメディア・販促は、AIを制作の道具に使って人手の工数を減らし、単価を維持する。取扱高は今と同じ水準を保つ。
買収は借入と内部資金で賄い、株は増やさない。10年で売上は1,400億円近く、営業利益は70億円台まで伸びる。利益率は5%台と、これまでの山(5.4%)にほぼ並ぶ。借金は膨らむが、利益が伸びるため返済は回る。筆頭株主のTKOは持ち続け、買収を後押しする。
- 印刷製造(出版・商業・パッケージ印刷、製本):数量 35.7(印刷物の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 20(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 724 億円・営業利益 33 億円。印刷製造:数量35.65、単価20.3161、営業利益率4.5%
- ITメディア・セールスプロモーション:数量 28,750(制作運用の工数(人月・年、推定))× 価格 0.01(1人月あたり売上(億円・名目))→ 売上 264 億円・営業利益 15 億円。ITメディア・販促:数量28750.0、単価0.0092、営業利益率5.5%
- プロダクツ:数量 72.3(包装資材・成形品の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.52(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 399 億円・営業利益 28 億円。プロダクツ:数量72.25、単価5.52、営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 49 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.9 倍。全体の PER 11.92 倍、時価総額 584 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:買収の相手を安く選び、統合で利益率を上げ続ける必要がある。過去の営業利益率の山は5.4%で、それを超える筋書きは実現しにくいため5%にとどめた。
やや楽観 15% 買収後の統合が進み、利益率が戻る 利益 35 億円 · PER 11.5 倍 · 株価時価総額 984 円461 億円
2025年に済ませた設備更新と、2026年5月に動く主力工場が、利益を押し上げる。印刷の数量は今の水準を保ち、買収で加わった会社の分が市場の縮小を打ち消す。営業利益率は4.6%まで戻る。
ITメディア・販促は取扱高が0.85倍に減るが、単価の下落は小さく、利益率4%を保つ。プロダクツは数量1.4倍、利益率6.8%。
売上は1,160億円、営業利益は50億円台前半。配当性向は4割近くで、自己資本利益率は9%ほどになる。ただ資本コストには届かず、倍率は高くならない。返済と買収の資金は、毎年の利益と借入で賄う。
- 印刷製造(出版・商業・パッケージ印刷、製本):数量 31.0(印刷物の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 20(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 620 億円・営業利益 25 億円。印刷製造:数量31.0、単価20.0129、営業利益率4.0%
- ITメディア・セールスプロモーション:数量 24,438(制作運用の工数(人月・年、推定))× 価格 0.01(1人月あたり売上(億円・名目))→ 売上 215 億円・営業利益 9 億円。ITメディア・販促:数量24437.5、単価0.0088、営業利益率4.0%
- プロダクツ:数量 59.5(包装資材・成形品の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.44(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 324 億円・営業利益 22 億円。プロダクツ:数量59.5、単価5.44、営業利益率6.8%
倍率:事業の純利益 35 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.1% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.5 倍。全体の PER 11.49 倍、時価総額 402 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年に設備更新が済み、2026年にプロダクツの主力工場が動けば、利益率が戻る想定。会社の計画は営業利益が増えない予想でもあり、15%にとどめた。
中立 35% 印刷は細り、プロダクツが穴を埋める 利益 24 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 695 円325 億円
印刷は国内市場の縮小に押され、数量は10年で0.89倍にとどまる。すでに決まった買収の通年の寄与が、縮小の一部を打ち消す。価格は物価に届かず、1.30倍。営業利益率は3.4%。
ITメディア・販促は、制作の一部をAIに置き換えられ、取扱高が0.76倍に減る。単価も物価に届かず1.08倍。プロダクツは新工場で数量が1.2倍に伸び、価格は物価並みの1.34倍、利益率は6%。
売上は約1,000億円、営業利益は約38億円(利益率3.8%)。設備の償却は今の約23億円から、新しい機械の分だけ3割ほど増える。取得時の値段のままの古い償却は増えない。一方、更新の費用は物価で膨らみ、借入が増える。借入の金利は3.5%前後に上がり、利益の取り分は営業利益の約6割に細る。配当は純利益の35%ほどで、自己資本利益率は6%台と資本コストを下回る。
- 印刷製造(出版・商業・パッケージ印刷、製本):数量 27.6(印刷物の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 20(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 544 億円・営業利益 18 億円。印刷製造:数量27.59、単価19.7097、営業利益率3.4%
- ITメディア・セールスプロモーション:数量 21,850(制作運用の工数(人月・年、推定))× 価格 0.01(1人月あたり売上(億円・名目))→ 売上 188 億円・営業利益 6 億円。ITメディア・販促:数量21850.0、単価0.0086、営業利益率3.0%
- プロダクツ:数量 51.0(包装資材・成形品の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.36(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 273 億円・営業利益 16 億円。プロダクツ:数量51.0、単価5.36、営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.83 倍、時価総額 260 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:印刷は縮み、プロダクツとすでに決まった買収が穴を埋める中心の筋書き。国内印刷市場の縮小(名目で年2〜4%)と、決算の予想を合わせた。
やや悲観 30% 金利と人件費が利益を削る 利益 13 億円 · PER 6.2 倍 · 株価時価総額 285 円134 億円
金利が3.5%前後に上がり、借入504億円の利払いが利益を削る。印刷は数量0.78倍、値上げは物価に届かず1.25倍。営業利益率は2.5%に落ちる。
ITメディア・販促はAI代替が進み、取扱高が0.62倍に減る。単価は据え置きに近く、利益率は1.5%。プロダクツは新工場の稼働率が上がらず、数量は今と同じ水準、利益率4.5%。
売上は820億円で、営業利益は約21億円。買収に使う借金の返済に追われ、新しい買収は止まる。配当は純利益の35%を保つが、金額は小さい。自己資本利益率は4%前後で、倍率は低い。のれんの一部を減損するが、全部は削らない。
- 印刷製造(出版・商業・パッケージ印刷、製本):数量 24.2(印刷物の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 19(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 458 億円・営業利益 11 億円。印刷製造:数量24.18、単価18.9516、営業利益率2.5%
- ITメディア・セールスプロモーション:数量 17,825(制作運用の工数(人月・年、推定))× 価格 0.01(1人月あたり売上(億円・名目))→ 売上 146 億円・営業利益 2 億円。ITメディア・販促:数量17825.0、単価0.0082、営業利益率1.5%
- プロダクツ:数量 42.5(包装資材・成形品の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 5.12(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 218 億円・営業利益 10 億円。プロダクツ:数量42.5、単価5.12、営業利益率4.5%
倍率:ROE約4%、k9.25%。RONICは約6.8%、g2.5%から正当化PERは約9倍だが、やや悲観は構造的な負けを織り込み、上限の6割台の6.2倍に置いた。純有利子負債373億円を足したEV÷営業利益は約22倍と高く、借金の重さがあるため倍率を上げない。
確率:営業利益が予想で2割減る年があり、借金は営業利益の10倍を超える。金利が3.5%前後に上がると、買収と設備更新の資金繰りが重くなるため、重く30%を置いた。
悲観 15% 制作はAIに置き換わり、のれんが崩れる 利益 0 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 111 円52 億円
制作運用がAIに置き換わり、ITメディア・販促の取扱高は0.45倍に減る。単価も下がる。印刷は数量が0.62倍に縮み、買い集めた会社の多くで稼働率が落ちる。
営業利益はほぼゼロまで落ち、借金の利払いが利益を食う。買収で積んだのれんと、更新したばかりの設備の一部が減損される。子会社の種類株式の配当も重い。
配当は大きく減る。自己資本は減損で細り、貸し手との約束(財務制限)を守るため、資産の売却や増資を迫られる。優良な会社ではなくなる。
10年後の営業利益は1億円に届かず、売上は600億円まで縮む。印刷の稼働率が下がるたびに固定費が重くなり、買収で束ねた効果は逆回りになる。子会社の種類株式の配当や、金利3.5%前後の利払いが、残った利益を食う。株主に回るのは、資産を売って返済した後の残りだけになる。
- 印刷製造(出版・商業・パッケージ印刷、製本):数量 19.2(印刷物の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 17(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 335 億円・営業利益 2 億円。印刷製造:数量19.22、単価17.4355、営業利益率0.5%
- ITメディア・セールスプロモーション:数量 12,938(制作運用の工数(人月・年、推定))× 価格 0.01(1人月あたり売上(億円・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 −2 億円。ITメディア・販促:数量12937.5、単価0.0076、営業利益率-2.0%
- プロダクツ:数量 36.1(包装資材・成形品の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 4.80(1千トンあたり売上(億円・名目))→ 売上 173 億円・営業利益 3 億円。プロダクツ:数量36.12、単価4.8、営業利益率2.0%
倍率:ROE が約0%でk9.25%を大きく下回るので、ためた利益は額面未満。稼ぐ力はほぼ無く、PERでは測れない。のれんと設備の減損を経て、今の自己資本207億円(減損前)の4分の1に置いた。伸びは織り込まない。営業利益がほぼゼロなのでEV÷営業利益は意味を持たず、借金の返済と資産の売却で値が決まる。
確率:制作運用のAI代替と印刷の縮小が同時に進み、買い集めた会社ののれんと設備が減損される。借金の重さで逃げ道が少なく、15%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
印刷製造(出版・商業・パッケージ印刷、製本)
出版・商業印刷、パッケージ印刷、製本。M&Aで買い集めた印刷会社群が中心。
| 数量印刷物の出荷量(千トン・年、推定) | 価格1千トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 31.0 | 15 | 470 | 14 |
| 10 年後 中立 | 27.6 | 20 | 544 | 18 |
取り方:売上の約54%=470億円と推定(セグメント別の開示は未確認)。国内印刷市場は6.3兆円規模で同社の取り分は1%に届かない。印刷物1トンあたり約150万円の売上として約3.1万トン(推定)。数量は実質、物価は単価に入れる。営業利益14億円は全社30億円の配分の推定。
ITメディア・セールスプロモーション
販促ツール、映像、Web、メディアなどの制作と運用。人手で稼ぐ制作の部分はAIに置き換わる。
| 数量制作運用の工数(人月・年、推定) | 価格1人月あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 28,750 | 0.01 | 230 | 8 |
| 10 年後 中立 | 21,850 | 0.01 | 188 | 6 |
取り方:売上の約26%=230億円と推定。販促ツール・映像・Web・メディアの制作運用で、AIエージェント代替の型(広告の制作・運用)に当てる。1人月80万円の売上として約2.9万人月(推定)。営業利益8億円は推定。
プロダクツ
包装資材、ラベル、樹脂成形、ノベルティなど、モノをつくって売る事業。主力工場が2026年5月に稼働。
| 数量包装資材・成形品の出荷量(千トン・年、推定) | 価格1千トンあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 42.5 | 4.00 | 170 | 10 |
| 10 年後 中立 | 51.0 | 5.36 | 273 | 16 |
取り方:売上の約20%=170億円と推定。包装資材・ラベル・樹脂成形・ノベルティなど。1トンあたり約40万円の売上として約4.3万トン(推定)。営業利益10億円は推定で、本社費などの調整が約−2億円。
リスクと懸念
借金の重さと金利上昇
有利子負債は2026年6月末で504億円と、営業利益の10倍を超える。金利が3.5%前後に上がると利払いが利益を削り、短期借入が増えている点も資金繰りの弱さを映す。
買収の失敗とのれんの減損
売上は買収で増えたが営業利益は2019年からほぼ横ばい。買う値段が高く、統合で利益率が上がらなければ、のれんが減損され、自己資本比率21%の財務が揺らぐ。
印刷市場の縮小
国内印刷市場は1991年の8.9兆円から6.3兆円へ縮み、今後も名目で年2〜4%縮む。パッケージなど伸びる領域もあるが、出版・商業印刷の縮みが先行する。
AIエージェントによる制作代替
ITメディア・販促の人手の制作運用は、AIで工数が減る。取扱高も単価も下がる。人手で稼ぐ部分の割合が高いほど、影響は大きい。
設備更新の費用と償却
更新費用は物価で膨らみ、年に40億円台の投資が償却約23億円を上回る。古い設備の償却は増えないが、新しい機械の分は増える。現金は細る。
利益の質と特別配当
2025年12月期の純利益65億円は不動産売却益が主因。特別配当を含む配当は続かない。通常の配当の水準は確かめられておらず、還元の見込みに幅がある。
今後の分かれ目
- 営業利益が予想の24億円を上回り、売上の増加と同じ速さで増え始めたら
- 買収の統合が効いている合図。やや楽観の確率を上げる。
- 買収のたびにのれんの減損や特別損失が出たら
- 買う値段が高い証拠。悲観に重みを移す。
- 長期借入の固定化が進み、短期借入が減ったら
- 資金繰りの不安が和らぐ。やや悲観の確率を下げる。
- プロダクツの新工場の稼働率が上がり、利益率が6%を超えたら
- プロダクツ数量1.4倍以上の筋書きを検討する。
- ITメディア・販促の取扱高が前年比で2割以上落ちたら
- AI代替が想定より速い。悲観側に寄せる。
- TKOなどの大株主が株を動かす、またはTOBが出たら
- 市場は約28%と見るTOBが現実になる。ただし本質価値は変えず、動いた値段は別に見る。
見ておくもの
- 四半期の営業利益とEBITDA(償却の増加を除いた稼ぎ)
- 有利子負債の総額と短期借入の割合
- 買収のたびの特別損失・のれんの減損
- プロダクツ新工場の稼働率
- ITメディア・販促の取扱高
倍率と資本コストの決め方
倍率は資本コスト9.25%と、印刷が縮み価格は物価並みという成長(g 2.5〜3%)から、利益ベースの正当化PERで決めた。ROEが資本コスト以下なので上限は1÷k。今の株価の倍率や、配当利回りは見ていない。悲観は稼ぐ力がほぼ無いため、今の自己資本に掛けるPBRで置いた。2025年12月期の純利益65億円は売却益のため、流れの起点には使わず、会社予想の20億円を使った。リース会計の変更で、2028年12月期から営業利益が少し増え、純有利子負債が増えるが、10年後は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.92 倍・やや楽観 PER 9.2→11.49 倍・中立 PER 8.2→10.83 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質の合計2.0%を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.75%。