結論
萩原工業は、ブルーシートで国内首位の樹脂加工会社だ。ポリエチレンを細い帯にして織る「フラットヤーン」の技術を、1964 年から磨いてきた。売上の 8 割強が合成樹脂の製品で、残りがスリッター(切断巻取機)などの機械だ。
筆者の結論は「割高」である。10 年後の価値は、今の時価総額を 3 割台半ば下回る。会社が悪いのではない。稼ぐ力に比べて、工場や設備に寝かせたお金が多すぎる。自己資本は約 310 億円あるのに、営業利益は 15 億円と、売上の 5% に届かない。
中立の姿は地味だ。数量はほぼ横ばいで、物価の分だけ売上が伸びる。営業利益率は 7.5% まで戻るが、自己資本利益率は 6% 台にとどまる。資本コストを下回る会社は、ためた利益が、額面どおりの価値にならない。
気になるのは計画の外れ方だ。前の中期経営計画は、利益も自己資本利益率も大きく未達だった。新しい計画は営業利益を 2 倍にする。実現すれば上振れるが、確率は高くない。日本政策投資銀行を割当先とする自己株の処分で、財務の守りは堅い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべき点は 3 つある。第 1 に、10 年後も事業が残るか。ブルーシートや産業資材は災害や物流が続く限り必要で、事業は残る。第 2 に、堀が広がるか。国内首位でも、値段を決める力は弱く、広がるとは言いにくい。第 3 に、稼いだお金の使い道だ。
株主のものになる利益は、純利益から維持更新の設備投資を引いたものだ。この会社は 3 年で約 100 億円を投じ、減価償却費も重い。純利益は小さく、残る利益はさらに小さい。
自己資本利益率が資本コストを下回る限り、ためた利益は価値を生まない。筆者は、新工場の稼働が上がり、営業利益率が 7.5% に戻っても、6% 台の自己資本利益率に届く程度と置いた。
安全域の面では、自己資本比率 72% と純現金で、深く壊れる確率は低い。それでも、今の値段は回復を先取りしている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は 2 つある。合成樹脂加工製品事業が売上の 82%、機械製品事業が 18% だ。前者はブルーシート、フレキシブルコンテナ、コンクリート補強繊維「バルチップ」、粘着テープの基材、野菜袋の「メルタック」を作る。2025/10 期の売上は 263 億円、営業利益は 12 億円だった。
合成樹脂の内訳は、生活資材 93 億円、シートなどの建築資材 58 億円、フレコンなどの産業資材 54 億円、バルチップ 49 億円だ。生活資材は粘着テープの原糸、人工芝用、メルタックで、2025/10 期に 6% 増えた。バルチップは鉱山向けが落ち、8.5% 減った。
機械製品事業は、フィルム・紙・金属箔のスリッターと、ペットボトル再生用のスクリーンチェンジャーを作る。2025/10 期の売上は 56 億円、営業利益は 3 億円。大口案件の有無で年ごとの振れが大きい。
海外はインドネシア、米国、パラグアイ、タイに拠点がある。バルチップは中南米の道路舗装に使われ、メルタックは米国工場が立ち上がった。ただ新工場は稼働が上がらず、利益の足を引いている。
優良さと弱いところ
この会社の良さは、一つの技術を 60 年かけて広げてきたことだ。フラットヤーンから、ブルーシート、フレコン、土のう、人工芝用糸、粘着テープ基材に枝分かれした。原料から織ってシートにするまでを一貫で作れる国内唯一の会社とされる。災害の備蓄でも指名されやすく、国内首位の看板は強い。
弱いのは値段を決める力だ。ブルーシートやフレコンは韓国・中国製の安い品が入り、中間価格帯のシェアを奪われてきた。バルチップも、鉱山向けでは品質より値段が決め手で、2025/10 期は粗利が 6 ポイント下がった。強い堀、つまり他社がまねできない強みと呼べるのは、ごく一部の高機能品だけだ。
資本効率は低い。自己資本利益率は 10 年の中央値で 8.5%、直近は 4% から 6% だ。笠岡工場など約 100 億円を 3 年で投じたが、売上と利益はまだ追いついていない。減価償却費は前期比で 2 割以上増えた。
財務は堅い。自己資本比率は 72% で、純有利子負債はほぼゼロだ。経営は保守的で、株主還元にも前向きになってきた。筆者が気にするのは、設備を増やしたあとの稼ぎ方だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の樹脂シート市場は、ゆっくり縮む。人口が減り、新築住宅の着工が減るからだ。2025 年 4 月からは戸建住宅の環境性能の規制が始まり、3 月までの駆け込みのあと、需要が落ちた。公共向けのブルーシートは、災害が減った年は伸びない。
フレキシブルコンテナは穀物など乾いた貨物の荷動きに連動する。世界の景気が鈍ると真っ先に減る。輸入品との価格競争も強い。
海外は伸びる余地がある。バルチップは道路や舗装に使われ、中南米や東南アジアのインフラ整備が追い風になる。ただ鉱山向けは、安い競合の流入で値崩れが起きた。2025/10 期の下方修正の一因は、世界最大級の鉱山の事故による需要の落ち込みだった。
機械は、ペットボトルや軟包装のリサイクル、電池部材の加工という成長分野に向く。電池の金属箔スリッターは 2025/10 期に 1 号機を売ったばかりで、規模はまだ小さい。市場の大きさとシェアは公表がなく、筆者は台数と単価の推定で置いた。
業界全体で見ると、樹脂加工は原料のナフサ価格に利益が左右される。会社は 2026/10 期の前提をナフサ 1 キロリットルあたり 6.4 万円としており、原料が上がれば、値上げで転嫁できるまで利益が削られる。ここも、値段を決める力の弱さが表に出る場面だ。
資本政策と M&A
資本政策は転換期にある。前の計画では総還元性向の目標 70% に対して実績は 51%、自己資本利益率は目標 8% に対して 4.2% だった。新計画(2026〜2028 年 10 月期)は、営業キャッシュフロー 120 億円を戦略投資 40 億円、通常投資 30 億円、還元 35 億円、借入返済 15 億円に使う。配当は株主資本配当率(DOE)3.5% を目安にする。
2026 年 9 月には日本政策投資銀行と資本業務提携を結び、自己株 48.7 万株を処分した。調達は約 9 億円で、海外の生産体制の強化に充てる。議決権比率は 3.3% で、経営への影響は大きくないが、M&A や財務戦略の助言を受ける。
株主優待は 2026/10 期を最後に廃止する。創業家系の萩原株式会社が約 10% を持つ(2023 年の大量保有報告書)。TOB の可能性は、kabufu の試算で 10 年以内に約 21% とある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新しい計画は、投資のピークが過ぎたことを前提にしている。笠岡工場への投資は済み、減価償却の増加も峠を越える。稼働率が上がれば、固定費が薄まり、利益は急に伸びる。2026/10 期の会社予想は営業利益 21 億円で、前期の 1.4 倍だ。
バルチップの鉱山向けは、数量重視に方針を変えて底を打つ。海外の道路案件は、中南米の整備計画で受注が戻る。メルタックの米国工場は、輸入品との差を価格で埋められる。電池部材向けの金属箔スリッターは、1 号機が売れたばかりで、これから伸びる。
ブルーシートの水平リサイクルは、使用済みを新品に戻す世界でも珍しい取り組みだ。自治体の備蓄の更新に合わせて売れ、売上目標は 0.4 億円から 10 億円と 25 倍になる。
財務は堅く、日本政策投資銀行の助言も得られる。株主資本配当率 3.5% の目安は、利益が伸びなくても配当を支える。営業利益 30 億円に届けば、自己資本利益率は 8% 台に戻る。
慎重な見方
前の計画は、売上も利益も大きく外れた。営業利益の目標 33 億円に対し、実績は 15 億円だった。新計画も、営業利益を 3 年で 2 倍にする。同じ失敗を繰り返さない根拠は、まだ示されていない。
国内の主力は縮む市場だ。ブルーシートとフレコンは、安い輸入品と競う汎用品で、値上げが物価に追いつかない。バルチップの鉱山向けは、品質の差が値段に反映されず、競合の流入が続く。海外の道路案件も、現地の予算と為替に左右される。
機械は大口案件への依存が強く、1 年で売上が 1 割動く。リサイクル機器の売上は、前年の反動で 4 割減った。新工場の償却は重く、稼働が上がらなければ利益を圧迫する。
最後に、自己資本が約 310 億円と厚いのに、利益は薄い。余ったお金を成長に使っても、資本コストを上回れていない。株主資本配当率で配当を支えても、内部の資本効率は変わらない。
創業家系の株主が 1 割ほどを持つことも、経営の変化を遅らせうる。設備の増強が先行し、稼働率が上がるまで償却が重い局面では、この会社の自己資本利益率が 4% から 5% に張り付く年が、まだ数年続く可能性がある。
どちらに重みを置いたか
事業の堅さでは強気の言い分が勝つ。ただ値段の面では慎重な言い分が当たる。計画が外れ続けた実績が重く、資本効率が戻りきらない前提を置いた。
確率は中立に 38% を置いた。回復が進む側に 27%、計画が外れ続ける側に 35% を配り、悲観をやや厚くした。結果は、中立でも 10 年後の時価総額と還元の合計が今の 1.35 倍にとどまり、資本コストの稼ぎを下回る。総合では今の値段が高い。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/10 期)
確率で加重した株価時価総額 2,127 円310 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 764 円111 億円)。 今の値に割り戻すと 1,594 円233 億円、今との差 −21.4%、 期待の年率 +3.6%(資本コスト 7.2%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,168 円608 億円 | 1,062 円155 億円 | +157.9% | +9.9% | 366 円53 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,155 円461 億円 | 918 円134 億円 | +100.8% | +7.2% | 815 円119 億円 |
| 中立 | 38% | 2,456 円359 億円 | 822 円120 億円 | +61.7% | +4.9% | 1,246 円182 億円 |
| やや悲観 | 23% | 976 円143 億円 | 665 円97 億円 | −19.1% | −2.1% | 377 円55 億円 |
| 悲観 | 12% | 384 円56 億円 | 336 円49 億円 | −64.5% | −9.8% | 86 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,127 円310 億円 | 764 円111 億円 | +42.5% | +3.6% | 2,890 円422 億円 |
今の株価時価総額 2,028 円296 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 7% ブルーシート水平リサイクルとバルチップの増産が当たる 利益 39 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 4,168 円608 億円
海外の道路・舗装向けのバルチップが伸び、鉱山向けの値引き競争も一巡する。メルタックは米国工場の稼働が上がり、粘着テープ基材のシェアも高まる。ブルーシートは自治体の備蓄更新と水平リサイクルが回り、利益率の高い高機能シートへの置き換えが進む。機械は電池部材の金属箔スリッターが立ち上がり、営業利益率は 11% 近くに乗る。中期経営計画の 7.5% は早めに超え、会社全体では 10% 近い。自己資本利益率は 9% 台まで上がり、新しく投じるお金にも資本コストを超える稼ぎが生まれる。10 年続けて全部が当たる姿で、実現は難しい。
- シート・建築資材:数量 1.3(出荷量(万トン換算))× 価格 68(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 87 億円・営業利益 8 億円。数量 1.10 倍・値段 1.36 倍、営業利益率 9.0%
- フレキシブルコンテナ等:数量 286(出荷枚数(万枚))× 価格 2,680(平均単価(円/枚)。rev_factor は 0.0001(万枚 × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 77 億円・営業利益 5 億円。数量 1.05 倍・値段 1.34 倍、営業利益率 6.5%
- バルチップ(コンクリート補強繊維):数量 1.3(出荷量(万トン換算))× 価格 94(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 124 億円・営業利益 15 億円。数量 1.90 倍・値段 1.34 倍、営業利益率 12.0%
- 生活資材・その他:数量 2.8(出荷量(万トン換算))× 価格 61(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 173 億円・営業利益 16 億円。数量 1.25 倍・値段 1.36 倍、営業利益率 9.0%
- 機械製品(スリッター・リサイクル機器):数量 183(出荷台数(台))× 価格 5,440(平均単価(万円/台)。rev_factor は 0.0001(台 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 100 億円・営業利益 11 億円。数量 1.30 倍・値段 1.36 倍、営業利益率 11.0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.6 倍、時価総額 608 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:バルチップ・メルタック・金属箔スリッターの三つがそろって当たり、しかもブルーシートも悪くない。この重なりは 10 年を通じて起きにくいので、1 割に届かない 7% にとどめた。
やや楽観 20% 中期経営計画に近い形で、遅れながら回復する 利益 32 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 3,155 円461 億円
バルチップは海外のインフラ案件で数量が戻り、鉱山向けは値段を下げて数量を取る方針が実を結ぶ。メルタックの米国工場は稼働が上がる。ブルーシートは災害の備蓄更新と水平リサイクルで底堅い。機械は金属箔スリッターとリサイクル機器が積み上がる。会社全体の営業利益率は 8% 台で、中期経営計画の 7.5% を数年遅れで超える。減価償却の重い笠岡工場の稼働率が上がり、固定費が薄まる効果が出る。自己資本利益率は 8% 近く、資本コストと同じ水準まで戻る。会社の言う回復がほぼ実現するが、V 字回復の宣言は過去に外れており、確率は中立より低くした。
- シート・建築資材:数量 1.2(出荷量(万トン換算))× 価格 68(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 83 億円・営業利益 7 億円。数量 1.05 倍・値段 1.35 倍、営業利益率 8.0%
- フレキシブルコンテナ等:数量 277(出荷枚数(万枚))× 価格 2,680(平均単価(円/枚)。rev_factor は 0.0001(万枚 × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。数量 1.02 倍・値段 1.34 倍、営業利益率 5.7%
- バルチップ(コンクリート補強繊維):数量 1.1(出荷量(万トン換算))× 価格 92(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 106 億円・営業利益 11 億円。数量 1.65 倍・値段 1.32 倍、営業利益率 10.5%
- 生活資材・その他:数量 2.7(出荷量(万トン換算))× 価格 61(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 162 億円・営業利益 13 億円。数量 1.18 倍・値段 1.35 倍、営業利益率 8.3%
- 機械製品(スリッター・リサイクル機器):数量 169(出荷台数(台))× 価格 5,400(平均単価(万円/台)。rev_factor は 0.0001(台 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 91 億円・営業利益 9 億円。数量 1.20 倍・値段 1.35 倍、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.39 倍、時価総額 460 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画に近い回復が進む姿。前中期経営計画は目標の売上・利益ともに未達だったので、計画どおりに行く確率は中立より薄く置いた。
中立 38% 地味な回復。物価の分は稼ぐが、資本効率は戻りきらない 利益 26 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,456 円359 億円
数量はほぼ横ばいで、物価の分だけ売上が伸びる。バルチップは海外の道路向けで数量が増えるが、鉱山向けは安い競合に押されて値段が上がりにくい。生活資材は粘着テープ基材とメルタックで緩やかに伸びる。ブルーシートとフレコンは国内の人口減と建設の人手不足で数量が増えず、値上げで補う。機械は電池部材向けの新機種が足し、利益率は 8% 台。会社全体の営業利益率は 7.5% で、中期経営計画の目標に数年遅れで着く姿だ。ただ新工場の償却が重く、自己資本利益率は 6% 台にとどまる。資本コストを下回り、ためた利益は額面を下回る価値になる。
- シート・建築資材:数量 1.2(出荷量(万トン換算))× 価格 67(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 78 億円・営業利益 6 億円。数量 1.00 倍・値段 1.34 倍、営業利益率 7.0%
- フレキシブルコンテナ等:数量 272(出荷枚数(万枚))× 価格 2,680(平均単価(円/枚)。rev_factor は 0.0001(万枚 × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 73 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・値段 1.34 倍、営業利益率 5.0%
- バルチップ(コンクリート補強繊維):数量 1.0(出荷量(万トン換算))× 価格 91(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 92 億円・営業利益 8 億円。数量 1.45 倍・値段 1.30 倍、営業利益率 9.0%
- 生活資材・その他:数量 2.5(出荷量(万トン換算))× 価格 60(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 150 億円・営業利益 11 億円。数量 1.10 倍・値段 1.34 倍、営業利益率 7.5%
- 機械製品(スリッター・リサイクル機器):数量 155(出荷台数(台))× 価格 5,360(平均単価(万円/台)。rev_factor は 0.0001(台 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 83 億円・営業利益 7 億円。数量 1.10 倍・値段 1.34 倍、営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.6% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 358 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:筆者が最も確からしいと考える姿。業績が計画を下回り続けた 12 年と、設備投資が済んだ事実の両方を踏まえ、最大の確率を置いた。
やや悲観 23% 鉱山向けと輸入品の安値に押され、利益率が戻らない 利益 15 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 976 円143 億円
バルチップは鉱山向けの値下げが続き、海外の道路案件も競合に取られる。ブルーシートとフレコンは安い輸入品との競争で値上げが物価に追いつかず、数量も減る。メルタックの米国工場は低稼働が長引く。機械は大口の受注が途切れ、年ごとの振れが大きい。会社全体の営業利益率は 5% 前後と、直近の底に近い水準で動かない。新工場の償却は重く、自己資本利益率は 4% 台まで下がる。配当は DOE の目標を保てず、一部が減る。事業は黒字を保つが、設備に投じた資金は稼ぎを生まない。国内の需要は人口とともに細り、値上げも物価に届かない。10 年を通じて、会社は数量を守るために値段を下げ続ける。
- シート・建築資材:数量 1.1(出荷量(万トン換算))× 価格 65(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 70 億円・営業利益 4 億円。数量 0.92 倍・値段 1.30 倍、営業利益率 5.0%
- フレキシブルコンテナ等:数量 258(出荷枚数(万枚))× 価格 2,600(平均単価(円/枚)。rev_factor は 0.0001(万枚 × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 67 億円・営業利益 3 億円。数量 0.95 倍・値段 1.30 倍、営業利益率 3.8%
- バルチップ(コンクリート補強繊維):数量 0.8(出荷量(万トン換算))× 価格 85(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 68 億円・営業利益 4 億円。数量 1.15 倍・値段 1.22 倍、営業利益率 5.5%
- 生活資材・その他:数量 2.3(出荷量(万トン換算))× 価格 59(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 132 億円・営業利益 7 億円。数量 1.00 倍・値段 1.30 倍、営業利益率 5.5%
- 機械製品(スリッター・リサイクル機器):数量 134(出荷台数(台))× 価格 5,200(平均単価(万円/台)。rev_factor は 0.0001(台 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 70 億円・営業利益 4 億円。数量 0.95 倍・値段 1.30 倍、営業利益率 6.0%
倍率:事業の自己資本利益率 4.2% は資本コストを大きく下回る。伸びても価値が増えない。正当化 PER の上限 12.9 倍より低く、稼ぐ力の弱い姿として 9.5 倍に置いた。
確率:前中期経営計画で外れた要因(鉱山向け、設備投資意欲、猛暑や人手不足による工事遅れ)が今後も続く姿。会社の説明のとおり戻るかは確かめにくく、中立の次に厚く置いた。
悲観 12% 安値の輸入品に押され、国内の稼ぎが細る 利益 7 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 384 円56 億円
バルチップは鉱山向けで中国などの安い品に完全に置き換えられ、数量も減る。海外の道路案件も競争が激しくなり、利益が出なくなる。ブルーシートは公共の備蓄更新が減り、住宅向けは省エネ規制で縮む。メルタックは米国の需要が伸びず、新設した工場の稼働が上がらない。機械は大口顧客を失い、台数が 4 分の 1 減る。営業利益率は 3% 前後まで下がる。減損を出す可能性もあり、配当は半分に減る。それでも会社が存続する程度の稼ぎは残る。国内首位という看板も、輸入品との価格差を埋めるには足りない。投資家にとっては、設備を抱えたまま利益が出ない、苦しい 10 年になる。
- シート・建築資材:数量 1.0(出荷量(万トン換算))× 価格 61(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85 倍・値段 1.22 倍、営業利益率 3.5%
- フレキシブルコンテナ等:数量 239(出荷枚数(万枚))× 価格 2,440(平均単価(円/枚)。rev_factor は 0.0001(万枚 × 円 = 万円 → 億円))→ 売上 58 億円・営業利益 2 億円。数量 0.88 倍・値段 1.22 倍、営業利益率 3.0%
- バルチップ(コンクリート補強繊維):数量 0.6(出荷量(万トン換算))× 価格 77(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。数量 0.90 倍・値段 1.10 倍、営業利益率 2.0%
- 生活資材・その他:数量 2.0(出荷量(万トン換算))× 価格 55(平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1)→ 売上 109 億円・営業利益 4 億円。数量 0.88 倍・値段 1.22 倍、営業利益率 4.0%
- 機械製品(スリッター・リサイクル機器):数量 106(出荷台数(台))× 価格 4,800(平均単価(万円/台)。rev_factor は 0.0001(台 × 万円 = 万円 → 億円))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。数量 0.75 倍・値段 1.20 倍、営業利益率 3.5%
倍率:事業の自己資本利益率 1.9% は資本コストを大きく下回り、PER の上限 12.9 倍より低い。ためた利益は価値を生まず、稼ぐ力(純利益÷k)に近い 8.0 倍に置いた。設備の多くは専用機で、売れる資産に数えにくい。床は純現金程度で、稼ぐ力の方が高い。
確率:構造的な負け:安値の輸入品と鉱山向けの競争が定着し、新工場の償却が利益を食い続ける。事業の基盤は汎用品が多く、置き換えが起きやすいので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
シート・建築資材
ブルーシート、防音シート、ラミクロス、大型土のうなど。公共の災害備蓄と建設・住宅の現場で使われる。
| 数量出荷量(万トン換算) | 価格平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 1.2 | 50 | 58 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.2 | 67 | 78 | 6 |
取り方:開示は「産業資材/シート・建築資材」58.3 億円(2025/10 期)。数量は開示がないため、平均単価を 1 トンあたり約 50 万円と置いた推定で約 1.17 万トン。2025/10 期は戸建住宅の環境性能規制の駆け込みの反動と、自然災害の減少による公共向けブルーシートの落ち込みで 4.7% 減った。営業利益は開示がなく、全社の合成樹脂事業 11.6 億円を 4 区分に配った推定(約 4%)。
フレキシブルコンテナ等
穀物や粉体を運ぶフレキシブルコンテナバッグなどの産業資材。荷動きに連動する。
| 数量出荷枚数(万枚) | 価格平均単価(円/枚)。rev_factor は 0.0001(万枚 × 円 = 万円 → 億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 272 | 2,000 | 54 | 2 |
| 10 年後 中立 | 272 | 2,680 | 73 | 4 |
取り方:開示は「産業資材/その他(フレコン等)」54.4 億円。数量は 1 枚あたり平均 0.2 万円と置いた推定で約 272 万枚。穀物など乾物の荷動きに連動し、2025/10 期はマクロの減速で 5.5% 減った。営業利益は推定(約 3%)。輸入品との値段競争が強い汎用の領域。
バルチップ(コンクリート補強繊維)
コンクリートのひび割れを抑える合成樹脂の短繊維。海外の道路・舗装、トンネルや鉱山の坑道に使う。
| 数量出荷量(万トン換算) | 価格平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 0.7 | 70 | 49 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 91 | 92 | 8 |
取り方:開示は「バルチップ」48.7 億円。数量は 1 トンあたり約 70 万円と置いた推定で約 0.70 万トン。2025/10 期は鉱山向けで安価な競合が入り、フリーポートの鉱山事故も重なって 8.5% 減、売上総利益率は約 6 ポイント下がった。営業利益は推定(約 5%)。
生活資材・その他
粘着テープの基材(原糸)、人工芝用の糸、野菜袋のメルタックなど。仕入れ商品も含む。
| 数量出荷量(万トン換算) | 価格平均単価(万円/トン)。rev_factor は 1 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 2.3 | 45 | 102 | 5 |
| 10 年後 中立 | 2.5 | 60 | 150 | 11 |
取り方:開示は「生活資材」92.9 億円(粘着関連原糸・人工芝用・メルタックなど)と「その他」(仕入れ商品)8.6 億円の合計。数量は約 45 万円/トンと置いた推定で約 2.26 万トン。生活資材は 2025/10 期に 6.4% 増えた。営業利益は推定(約 5.3%)。
機械製品(スリッター・リサイクル機器)
フィルム・紙・金属箔のスリッター(切断巻取機)、ペットボトル再生用のスクリーンチェンジャー、ラミネーターなど。
| 数量出荷台数(台) | 価格平均単価(万円/台)。rev_factor は 0.0001(台 × 万円 = 万円 → 億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/10 | 141 | 4,000 | 56 | 3 |
| 10 年後 中立 | 155 | 5,360 | 83 | 7 |
取り方:開示は機械製品事業 56.4 億円・営業利益 3.0 億円(フィルムスリッター 36.9、スクリーンチェンジャー 9.0、紙スリッター 6.4、その他 4.1)。台数は平均 4,000 万円/台と置いた推定で約 141 台。大口案件の有無で年ごとに振れる。
リスクと懸念
計画の未達が続くリスク
前の計画は営業利益を 33 億円と置き、実績は 15 億円だった。新計画は 2028 年 10 月期に営業利益 30 億円と置く。ここでも未達が続けば、自己資本利益率の回復が遠のき、資本政策への信頼も傷つく。
バルチップの値崩れ
鉱山向けは品質より値段が決め手で、安い競合の流入が続いた。2025/10 期は粗利が 6 ポイント下がった。会社は数量重視へ転換したが、利益率の戻りは確かめにくい。
国内の需要減と災害の波
人口減と新築住宅の着工減で、建築・住宅向けのシートは縮む。公共のブルーシートは災害が減った年に落ちる。2025 年 4 月の環境性能規制の後、需要は一段落ちた。
輸入品との価格競争
ブルーシートとフレコンは、韓国・中国の安い品との競争が長い。国内首位でも値段を決める力は弱い。原油やナフサの上昇を価格に転嫁できるまで時間がかかる。
新工場の稼働と償却
笠岡工場と米国のメルタック工場に、約 100 億円を投じた。稼働率が上がらなければ、減価償却が利益を食う。2025/10 期の減価償却費は 21 億円で、前期比 2 割以上増えた。
機械の大口案件への依存
機械製品事業の売上は、紙スリッターが 44% 減、リサイクル機器が 41% 減など、年ごとの振れが大きい。設備投資の意欲が落ちると、受注が遅れる。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 7% を超える決算が 2 期続いたら
- 中期経営計画の達成が現実的になる。やや楽観・楽観の確率を上げる。
- バルチップの鉱山向けの値下げが続き、売上総利益率が戻らなかったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。数量と値段の両方を見直す。
- 米国のメルタック工場の稼働率が目に見えて上がったら
- 生活資材の利益率を引き上げ、自己資本利益率の見通しを上げる。
- 電池向けの金属箔スリッターの受注が続いたら
- 機械製品事業の利益率を 8% 台後半に引き上げて見る。
- 配当の目安(株主資本配当率 3.5%)を引き上げるか、自社株買いを始めたら
- 資本政策の転換とみて、還元の見通しを上げる。
- 創業家系の大株主や日本政策投資銀行を軸にした再編や、TOB の話が出たら
- 買収価格のプレミアムを含みうる。本質価値は事業の稼ぐ力で測り直す。
見ておくもの
- 営業利益率と笠岡工場・米国工場の稼働率
- バルチップの海外案件の受注と鉱山向けの粗利
- 公共向けブルーシートの受注と災害の発生件数
- 機械製品事業の受注残と金属箔スリッターの販売台数
- 株主資本配当率(DOE)3.5% の維持と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の自己資本利益率と資本コスト 7.25% から式で決めた。今の株価や同業の倍率は使っていない。中立の自己資本利益率は 6.6% で資本コストを下回るので、PER の上限は 1÷k の 12.9 倍。その約 85% の 11.0 倍を置いた。数量は実質、物価の 3% は値段の指数に入れた。10 年後の数字は、今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)で置いている。自己資本は、今の値に自己株の処分で入る約 9 億円を足した 318 億円から流した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→15.6 倍・やや楽観 PER 11.5→14.39 倍・中立 PER 11→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。