結論
フジコピアンは、バーコードの印字に使う熱転写リボンを主力にする大阪の消耗品メーカーだ。筆者の結論は「割高」で、一番の理由は、厚い自己資本に見合うだけの利益を稼げていないことにある。
2025 年 12 月期は設備の減損 25 億円で大きな赤字を出した。2026 年は政策保有株の売却益と、減損で軽くなった償却のおかげで黒字に戻る。だが、売却益は一度きりで、償却は設備を更新するたびに戻ってくる。本業の営業利益率は良い年でも 6% 台にとどまり、過去 12 年で営業赤字の年が 4 回ある。
主力の熱転写リボンは、物流と食品の表示の広がりで世界の需要がじわりと伸びる。一方で、インパクトリボンとテープ類は細り、中国勢との値段の競争も厳しい。10 年の中立でも ROE は 3% 台にとどまると筆者は見る。
PBR は 0.4 倍と低く、一見すると割安に映る。だが、稼がない自己資本は帳簿どおりの価値を持たない。純現金と新株予約権の希薄化まで入れると、本質価値は今の時価総額を 4 割近く下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、フジコピアンは「安く見えるが、安くない会社」だ。
オーナーとして見ると、良い点はある。リボンは使えばなくなる消耗品で、プリンタが動く限り注文が続く。純現金があり、潰れる心配は小さい。PBR は 0.4 倍で、帳簿の上では大きな安全域があるように見える。
だが、帳簿の自己資本は、それが稼ぐ利益の分しか価値を持たない。過去 10 年の ROE は 3% 前後で、資本コストに遠く届かない。ためた利益は、株主の手元で同じ額を運用した方が報われてきた。2025 年の減損は、その差を帳簿が後から認めたものだ。
堀も細い。値段を決めるのは顧客と競合で、会社ではない。現金は厚いが、使い道を決めるのは経営で、少数株主ではない。新株予約権の希薄化も残る。長く持つほど報われる事業かと問われれば、答えはまだ「いいえ」に近い。払う値段に対して、事業の稼ぐ力が安全域を生んでいないと筆者は見る。
何で稼ぐ会社か
事業は「印字記録媒体および事務用消耗品」と「プラスチック成形」の 2 つに分かれる。売上 85 億円(2025 年 12 月期)のうち 95% が前者だ。
柱はサーマルトランスファーメディア、つまり熱転写リボンで、売上の 6 割を占める。プリンタの熱でリボンのインクを溶かし、ラベルにバーコードや賞味期限を写す。物流の荷札、工場の部品の管理、スーパーの値札など、使われる場面は幅広い。リボンは使えばなくなるので、プリンタが動く限り注文が続く。国内に加え、欧米とアジアのプリンタメーカーや代理店にも売る。
2 つ目の柱は、ドットプリンタ用のインパクトリボンと、文具メーカー向けの修正テープ・のりテープの OEM だ。インパクトリボンは役目を終えつつある品目で、テープ類は中国の景気と文具メーカーの在庫に振られる。2025 年はテープ類が 3 割落ちた。
残りは、塗工の技術を応用した機能性フィルムと、子会社のプラスチック成形品だ。どちらも年 4 億円ほどの小さな事業で、新製品の立ち上げの途中にある。工場は国内と海外に持ち、薄い膜を均一に塗る技術が会社の土台になっている。つまり、リボンもテープもフィルムも、同じ塗工の機械と人の腕から生まれる品だ。
優良さと弱いところ
優良さは「技術はあるが、値決めの力が弱い」と見る。熱転写リボンは、インクの配合と塗工の精度で印字の濃さや擦れへの強さが決まる。フジコピアンは 70 年近くこの技術を磨いてきた。
ただ、リボンは規格の決まった消耗品で、顧客は値段で仕入れ先を替えやすい。市場には化学・印刷の大手や海外の専業がひしめき、中国勢も安値で広がる。2026 年に原料高を価格へ乗せたが、会社自身が「一時的な転嫁」と書いている。値段を自分で決められる会社の書き方ではない。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 2.8% で、資本コストの 3 分の 1 にすぎない。2025 年の減損は、投じた設備が稼げていなかったことを帳簿が認めたものだ。前の中期経営計画も目標に届かなかった。新しい計画は期間を 5 年に延ばし、毎年見直す形に変えた。経営の反省は見えるが、稼ぐ力が変わった証拠はまだ無い。筆者は、技術の蓄積が利益の厚さに結びつく日を、まだ数字で確かめられないと見ている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
熱転写リボンの需要は、バーコードラベルの印字の量で決まる。ネット通販の荷物、工場の部品の追跡、食品の表示の義務の広がりで、世界の印字の量はゆるやかに増え続けている。国内は人口とともに頭打ちだが、アジアと欧米には伸びる余地がある。
値段の側は厳しい。リボンはフィルムに樹脂やワックスのインクを塗った品で、つくり方そのものは広く知られている。中国のメーカーが設備を増やし、安い値段で海外の代理店に売り込んでいる。原料の樹脂と基材のフィルムは原油の値段に振られ、転嫁が遅れると利益がすぐ消える。
置き換わりのおそれもある。感熱紙に直接印字する方式は、リボンを使わない。賞味期限の短いラベルでは感熱紙の方が安く、熱転写は長く残る表示や耐熱の用途に寄っていく。インパクトリボンはドットプリンタの退場とともに縮み続ける。
筆者は、主力の数量は 10 年で 1 割強伸びるが、値段は物価をやや下回ると見る。業界全体が伸びても、小さな専業がその分を取れるとは限らない。顧客のプリンタメーカーや代理店は複数の仕入れ先を持ち、品質が並べば安い方を選ぶからだ。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。2025 年 12 月期は総額 0.6 億円の配当を資本剰余金から払った。2026 年は政策保有株の売却益を原資に 4 倍強へ増やす予定で、総額は 2.6 億円ほどになる。会社は上場株の保有を年内にゼロにする方針を掲げている。
手元の現金は 2026 年 6 月末で 39 億円、借入は 22 億円で、純現金は 16 億円ほどある。退職給付の 5.5 億円を引いても、時価総額の 3 割は現金だ。
資金調達の手当てもある。2025 年に行使価額が株価に連れて動く新株予約権を出し、35 万株分が残る。すべて行使されれば株数は 2 割強増える。親会社は無く、TOB の動きも見当たらない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
数字はもう底を打った。2026 年 12 月期の中間で売上は 14% 伸び、営業利益は 2 億円の黒字に戻った。主力の熱転写リボンは国内と海外の両方で注文が増えている。ネット通販と食品の表示の広がりで、バーコードの印字の量は世界で増え続ける。
減損で重い設備を落としたので、これからは少ない償却で利益が出る。政策保有株を売って現金を厚くし、配当も 4 倍に増やした。資本を眠らせない姿勢がはっきりしてきた。
株価は自己資本の 4 割しかない。純現金だけで時価総額の 3 割を占め、残りは 70 年続くリボンの技術と工場をほとんど無料で買える計算になる。新しい中期経営計画で事業を選び直せば、営業利益率は過去の良い年の 6% 台に戻る。そうなれば今の値段は安すぎる。リボンの印字は景気が多少揺れても止まらない仕事で、注文は毎月積み上がる。小さな会社だからこそ、海外の大口を一つ取るだけで利益の形が変わる。
慎重な見方
黒字は本物の稼ぐ力ではない。2026 年の利益の 7 割は政策保有株の売却益で、二度と出ない。営業の黒字も、減損で償却が減った分に助けられている。設備を更新すれば償却は戻り、建築と機械の値段の上昇でむしろ重くなる。
熱転写リボンは値段で選ばれる消耗品だ。中国のメーカーが安値で広がり、感熱紙の方式もリボンの出番を削る。原料高の転嫁は会社自身が「一時的」と書いている。インパクトリボンとテープ類は縮む一方で、工場の固定費だけが残る。
過去 10 年の ROE の中央値は 2.8% だ。ためた利益は資本コストを稼がず、2025 年に 25 億円の減損として消えた。帳簿の自己資本は、稼ぐ力の裏づけを失った数字だ。さらに新株予約権が 2 割強の希薄化を待っている。現金が厚くても、使い道を決めるのは経営だ。設備の更新と赤字の穴埋めに消えれば、株主の手には戻らない。10 年たっても、小さな専業が規模で勝る相手と値段で戦う構図は変わらない。
どちらに重みを置いたか
足元の回復は事実だが、その中身の多くは売却益と軽くなった償却だ。慎重な見方の方が、10 年の稼ぐ力について説得力がある。主力の伸びは中立に入れ、利益率は過去の平均をわずかに超える所にとどめた。確率は中立を 4 割とし、悲観側に 35% を置いた。強気の見方が言う現金の厚さは、戻り方を割り引いて価値に足している。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 2,072 円32 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 774 円12 億円)。 今の値に割り戻すと 1,328 円21 億円、今との差 −40.3%、 期待の年率 +2.5%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,172 円65 億円 | 1,196 円19 億円 | +141.3% | +9.2% | 376 円6 億円 |
| やや楽観 | 18% | 3,050 円47 億円 | 985 円15 億円 | +81.4% | +6.1% | 726 円11 億円 |
| 中立 | 40% | 2,265 円35 億円 | 838 円13 億円 | +39.5% | +3.4% | 1,241 円19 億円 |
| やや悲観 | 23% | 1,198 円19 億円 | 633 円10 億円 | −17.7% | −1.9% | 421 円7 億円 |
| 悲観 | 12% | 410 円6 億円 | 265 円4 億円 | −69.6% | −11.2% | 81 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,072 円32 億円 | 774 円12 億円 | +27.9% | +2.5% | 2,846 円44 億円 |
今の株価時価総額 2,225 円34 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% バーコードの需要を海外で取り、利益率が 7% 台に戻る 利益 7 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 4,172 円65 億円
物流と食品の表示の厳格化で、バーコードラベルの印字は世界で増え続ける。フジコピアンは欧米とアジアの販売を伸ばし、熱転写リボンの出荷は 4 割増える。原料高の転嫁が定着し、1 m² の値段は物価をわずかに上回る。
減損で軽くなった設備を回し切り、更新の投資は絞った分だけで済む。機能性フィルムは新製品が顧客に採用され、売上は倍に近づく。テープ類は文具メーカーの在庫調整が終わって下げ止まる。全社の営業利益率は 9% 近くまで上がる。新株予約権はすべて行使され、払い込みは塗工ラインの更新に回る。それでも ROE は資本コストに届かず、評価は稼ぐ力の範囲にとどまる 10 年になる。
- サーマルトランスファーメディア(熱転写リボン):数量 70.0(リボンの出荷面積(百万 m²・推定))× 価格 1.38(1 百万 m² あたりの売上(億円・名目))→ 売上 97 億円・営業利益 7 億円。出荷 1.4 倍 × 単価 1.35 倍、利益率 7.5%
- インパクトリボン・テープ類・その他の事務用消耗品:数量 65.0(出荷個数(百万個・推定))× 価格 0.41(1 百万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。出荷 0.76 倍 × 単価 1.37 倍、利益率 3%
- 機能性フィルム・プラスチック成形:数量 1,600(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。出荷 1.6 倍 × 単価 1.37 倍、利益率 8%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.2% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 10.53 倍、時価総額 79 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:主力の熱転写リボンで海外の受注は増えているが、利益率 7% 台は過去の最高(6.9%)を超える。中計の数値目標も示されておらず、1 割に届かない 7% にとどめた。
やや楽観 18% 熱転写リボンが着実に伸び、黒字が定着する 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 3,050 円47 億円
熱転写リボンの出荷は海外を中心に 2 割強増え、値上げも物価並みに通る。インパクトリボンは細るが、選んで残した顧客で採算は保つ。機能性フィルムは新製品が少しずつ積み上がる。
全社の営業利益率は 6% 弱と、過去の良い年の水準に戻る。償却は、減損で消えた分が更新の投資で少しずつ戻り、10 年後は今より 1 億円強増える。配当は利益の 4 割前後を続ける。それでも ROE は 4% 台で、資本コストには届かない。ためた利益の価値は帳簿の額を下回り、株価は自己資本の半分ほどの評価にとどまる 10 年になる。会社としては健全に戻るが、株主の取り分が大きく増える筋ではない。
- サーマルトランスファーメディア(熱転写リボン):数量 62.0(リボンの出荷面積(百万 m²・推定))× 価格 1.34(1 百万 m² あたりの売上(億円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 5 億円。出荷 1.24 倍 × 単価 1.31 倍、利益率 6.5%
- インパクトリボン・テープ類・その他の事務用消耗品:数量 60.0(出荷個数(百万個・推定))× 価格 0.40(1 百万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.71 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 2%
- 機能性フィルム・プラスチック成形:数量 1,300(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。出荷 1.3 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 6%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 10.53 倍、時価総額 58 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026/12 期の中間で売上が 1 割強伸び、営業黒字に戻った。減損で償却が軽くなった分も効いている。この流れが続く形として 2 割弱を置いた。
中立 40% 主力は小さく伸びるが、細る品目が足を引っ張る 利益 4 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,265 円35 億円
熱転写リボンの出荷は 1 割強増える。海外のバーコード需要は伸びるが、国内は伸び悩み、価格の競争もあって値段は物価をやや下回る。インパクトリボンはドットプリンタの退場とともに細り、テープ類も横ばいにとどまる。
全社の営業利益率は 4% 強で、過去の平均をわずかに上回る程度だ。減損で軽くなった償却は、塗工ラインの更新で 10 年後に約 6 億円まで戻り、2026 年の利益の戻りの一部は消える。配当は利益の 4 割前後で続き、新株予約権の払い込みは設備に回る。ROE は 3% 台で、自己資本は厚いが稼がない会社のままの 10 年になる。
- サーマルトランスファーメディア(熱転写リボン):数量 57.0(リボンの出荷面積(百万 m²・推定))× 価格 1.30(1 百万 m² あたりの売上(億円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。出荷 1.14 倍 × 単価 1.28 倍、利益率 5.5%
- インパクトリボン・テープ類・その他の事務用消耗品:数量 55.0(出荷個数(百万個・推定))× 価格 0.40(1 百万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.65 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 1%
- 機能性フィルム・プラスチック成形:数量 1,150(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 1 億円。出荷 1.15 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 4%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.4% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 10.53 倍、時価総額 43 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:熱転写リボンの伸びと、インパクトリボン・テープ類の縮みが打ち消し合う今の延長を中心に 4 割を置いた。
やや悲観 23% 中国勢に値段で押され、利益が細る 利益 1 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,198 円19 億円
熱転写リボンは中国のメーカーが安い値段で海外の市場を取り、出荷は今より 1 割減る。値上げは物価に届かず、利益率は 3% に下がる。テープ類は文具メーカーの内製と中国の仕入れ先に押されて細り、赤字が続く。
全社の営業利益は 1 億円台にとどまる。償却が更新で戻るたびに利益はさらに削られる。新株予約権は株価が下限を割って行使されず、配当も細る。手元の現金の一部は赤字の穴埋めと設備の更新に消え、少数株主はその使い道を決められない 10 年になる。会社は残るが、資本コストを稼がない時間が長く続き、ためた利益は帳簿の額を大きく下回る価値しか持たない。
- サーマルトランスファーメディア(熱転写リボン):数量 48.0(リボンの出荷面積(百万 m²・推定))× 価格 1.22(1 百万 m² あたりの売上(億円・名目))→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。出荷 0.96 倍 × 単価 1.20 倍、利益率 3%
- インパクトリボン・テープ類・その他の事務用消耗品:数量 42.0(出荷個数(百万個・推定))× 価格 0.37(1 百万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.49 倍 × 単価 1.24 倍、利益率 −3%
- 機能性フィルム・プラスチック成形:数量 900(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.9 倍 × 単価 1.29 倍、利益率 1%
倍率:事業の ROE 1.1% が k 9.5% を大きく下回る。稼ぐ力(事業の純利益 ÷ k)を上限に、やや悲観は伸びと現金の戻りを低く見て 9.0 倍に置いた。余った現金はやや悲観で 0.75 倍の 6 億円に減らし、戻り方 0.75 で足した。
確率:熱転写リボンは中国のメーカーが安値で広がっており、テープ類も中国の景気に振られた。過去 12 年で営業赤字が 4 回あり、薄い黒字に戻る筋は十分ありうるので 2 割強を置いた。
悲観 12% 主力のリボンで負け、赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 410 円6 億円
熱転写リボンの値段の競争が激しくなり、フジコピアンは海外の大口を失う。出荷は今より 2 割減り、営業赤字が続く。テープ類とインパクトリボンはさらに細り、工場の稼働が落ちて固定費が重くなる。
設備は再び減損され、自己資本は 70 億円台に縮む。配当は止まり、手元の現金は赤字の穴埋めと退職金の支払いに回る。価値は事業の稼ぎでなく、残った純現金で測るしかない。その現金も少数株主には使い道を決められず、半分しか株主に戻らないとみる 10 年になる。70 年の技術は残っても、それを利益に変える規模と値決めの力を失った姿だ。
- サーマルトランスファーメディア(熱転写リボン):数量 40.0(リボンの出荷面積(百万 m²・推定))× 価格 1.15(1 百万 m² あたりの売上(億円・名目))→ 売上 46 億円・営業利益 −1 億円。出荷 0.8 倍 × 単価 1.13 倍、利益率 −2%
- インパクトリボン・テープ類・その他の事務用消耗品:数量 30.0(出荷個数(百万個・推定))× 価格 0.35(1 百万個あたりの売上(億円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 −1 億円。出荷 0.35 倍 × 単価 1.17 倍、利益率 −6%
- 機能性フィルム・プラスチック成形:数量 700(出荷量(トン・推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。出荷 0.7 倍 × 単価 1.25 倍、利益率 −3%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は使えない。純現金と投資有価証券の税後に戻り方 0.5 を掛けた床 6.35 億円を、今の自己資本 86 億円に対する PBR 0.074 倍で書いた。
確率:熱転写リボンは大手の化学・印刷会社と中国勢がひしめく市場で、規模の小さい会社が負ける筋は現実にある。自己資本と現金が厚く、すぐに存続が危うくなるわけではないので 1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
サーマルトランスファーメディア(熱転写リボン)
バーコードラベルや値札・食品の賞味期限の印字に使う熱転写リボン。国内と欧米・アジアのプリンタ用。売上の 6 割を占める主力。
| 数量リボンの出荷面積(百万 m²・推定) | 価格1 百万 m² あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 50.0 | 1.02 | 51 | 2 |
| 10 年後 中立 | 57.0 | 1.30 | 74 | 4 |
取り方:2025/12 期の品目別売上 50.96 億円を、出荷面積 約 5,000 万 m²・1 百万 m² あたり約 1.0 億円と置いて割った推定(面積の開示は無い)。営業利益は開示の売上総利益から販管費を売上比で配った推定。
インパクトリボン・テープ類・その他の事務用消耗品
ドットプリンタ用のインパクトリボンと、修正テープ・のりテープなど文具メーカー向けの OEM のテープ類。
| 数量出荷個数(百万個・推定) | 価格1 百万個あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 85.0 | 0.30 | 25 | −3 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 0.40 | 22 | 0 |
取り方:インパクトリボン 8.40 億円・テープ類 14.42 億円・その他 2.56 億円の合計を、出荷 約 8,500 万個・1 百万個あたり約 0.3 億円と置いた推定。テープ類が中国の景気減速で 3 割落ち、固定費が残って赤字とみた。
機能性フィルム・プラスチック成形
塗工の技術を使った機能性フィルム(剥離・転写用など)と、子会社のプラスチック成形品。
| 数量出荷量(トン・推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 1,000 | 0.01 | 8 | −1 |
| 10 年後 中立 | 1,150 | 0.01 | 13 | 1 |
取り方:機能性フィルム 4.02 億円とプラスチック成形 4.36 億円の合計を、約 1,000 トン・1 トンあたり約 0.0084 億円と置いた推定。新製品の立ち上げ費用で赤字とみた。
リスクと懸念
中国勢との値段の競争
熱転写リボンは規格の決まった消耗品で、中国のメーカーが設備を増やして安値で売り込んでいる。海外の大口を一つ失えば、主力の利益はすぐに消える。
償却の戻りと更新の投資
2025 年の減損で償却は年 1.7 億円ほど軽くなったが、設備を更新するたびに新しい値段で償却が戻る。機械と建築の値段が上がる中、更新の投資は償却より多くの現金を食う。
原料高の転嫁の遅れ
インクの樹脂と基材のフィルムは原油の値段に振られる。転嫁は会社自身が一時的と書く程度にしか通っておらず、原料が上がるたびに利益が削られる。
細る品目の固定費
インパクトリボンはドットプリンタの退場とともに縮み、テープ類も文具メーカーの在庫と中国の景気に振られる。売上が減っても工場の固定費は残り、赤字の芽になる。
新株予約権の希薄化
行使価額が株価に連れて動く新株予約権が 35 万株分残る。すべて行使されれば株数は 2 割強増え、今の株主の取り分は 8 割強に薄まる。
今後の分かれ目
- 2026 年 12 月期の営業利益が会社予想の 3.5 億円を上回り、2027 年も同じ水準を保ったら
- 償却の軽さだけでなく本業の採算が戻った証拠とみて、やや楽観に重みを移す。
- 熱転写リボンの売上が海外で 2 年続けて 1 割以上伸びたら
- 主力の数量の前提を上げ、中立の利益率も見直す。
- 原料高の局面で価格の転嫁が遅れ、営業赤字に戻ったら
- 値決めの弱さが続いているとみて、やや悲観に寄せる。
- 政策保有株の売却で得た現金を、配当や自社株買いで株主に戻し続けたら
- 現金の戻り方を 1.0 に近づけ、価値を見直す。
- 大きな設備投資や買収で純現金が消えたら
- 更新の投資が現金を食う筋とみて、悲観側の床を下げる。
見ておくもの
- 熱転写リボンの品目別売上(国内と海外)
- 営業利益率と減価償却費の推移
- 政策保有株の売却で得た現金の使い道
- 新株予約権の行使の状況
- 中期経営計画のローリングでの目標の見直し
倍率と資本コストの決め方
倍率は k 9.5% と各筋書きの事業の ROE から決めた。どの筋書きも ROE が k を下回るので、PER は 1÷k の 11.4 倍を上限に、ROE の低さに応じて 8.5〜9.5 割に置いた。今の PBR 0.4 倍や過去の株価は使っていない。利益率は中立で過去 12 年の山(6.9%)を下回る 4.3% にした。償却は物価で増やさず、減損で軽くなった分が更新の投資で戻る形で入れた。新株予約権は行使される筋書きだけ取り分 0.815 を掛けた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→10.53 倍・やや楽観 PER 10.3→10.53 倍・中立 PER 9.7→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。