結論
グラファイトデザインは、炭素繊維のゴルフシャフトを作る専門会社だ。看板の「Tour AD」はプロが使うシャフトとして知られ、高い値段でも売れる。筆者の結論は、今の値段はやや割高である。
理由は、利益の振れの大きさにある。過去10年の営業利益率は2%から22%まで動いた。ゴルフの流行と景気、米国の代理店の在庫の出し入れで、売上が2割、3割と上下する。売上の36%を米国の代理店1社に頼る形も、安心できる材料ではない。
足元は回復の途中だ。2026年2月期は新工場の立ち上げと米国の在庫調整で利益が落ちたが、次の期の第1四半期は売上が5割増えた。新工場で生産の制約も外れる。
それでも10年で見れば、日本のゴルフ人口は高齢化で細り、本数を大きく伸ばすのは米国頼みになる。筆者は、利益率が過去の中央に戻る所を中心に置いた。そこで測ると、今の値段は本質価値をやや上回る。看板の力を高く買うほど、強気の筋書きの重みは増す。ただ、それを確かめるには、回復が一時の反動でないことを数字で見たい。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、良い看板を持つが、利益を読みにくい会社だ。
看板の力は本物だと筆者は見る。プロが選ぶシャフトという評判は、広告では買えない。だから高い値段で売れ、良い年には利益率が2割を超える。しかも借金は少なく、配当で株主に報いる。
ただ、10年先の利益を読めるかと問われると、自信は持てない。売上はゴルフの流行と景気で大きく振れ、米国の代理店1社の判断で3割が動く。単一の製品しかないので、逃げ場もない。読みにくい事業には、厚い安全域が要る。
今の値段は、利益が過去の中央に戻る筋書きでも、その価値をやや上回る。現金の厚さが下値を支えるが、安全域と呼べるほどではない。筆者なら、利益が谷にある時に、もっと低い値段で持ちたい会社だ。看板の力は、時間をかけて確かめられる。焦って買う理由はない。配当の厚さは魅力だが、それだけで値段を正当化はできない。
何で稼ぐ会社か
売っているのは、クラブの心臓部であるシャフトだ。2026年2月期の売上27億円のうち、シャフトが24.5億円と9割を占める。残りはクラブの組立加工と、その他の炭素繊維製品だ。
主な売り先は二つある。一つは国内のゴルフ工房とクラブメーカーだ。上級者は買ったクラブのシャフトを好みの品に替える。その「替えシャフト」の市場で、Tour AD は定番の一つになっている。もう一つは米国だ。代理店の PRO'S CHOICE を通じて、米国のゴルファーとクラブメーカーに売る。この1社で売上の36%を占める。
材料は東レの炭素繊維で、東レは株主にも名を連ねる。最新の高弾性の繊維を使い、しなりと戻りの速さを設計する。シャフトの性能は数字だけでは伝わらず、プロが試合で使うことが最大の宣伝になる。だから会社は、ツアーでの支援に力を入れる。
生産は群馬の自社工場が中心で、米国向けの一部は中国に委託する。2026年2月期には約12億円を投じて新工場を建て、能力を増やした。従業員は128人と小さな所帯で、設計から製造、プロへの支援までを一つの会社でこなす。小回りが利く半面、一つの失敗が全体に響く。
優良さと弱いところ
強みは、ブランドと設計の腕だ。高価格帯の替えシャフトは、藤倉コンポジットの「Ventus」、三菱ケミカル、USTマミヤなどと争う狭い市場で、ツアーの評判が売れ行きを決める。Tour AD は長くその上位にいて、値引きに頼らずに売れる。2014年2月期には営業利益率27%を出した。
弱みは三つある。一つは利益の振れだ。景気が冷えれば高級品から先に売れなくなる。二つ目は、米国の代理店1社への依存だ。三つ目は、単一の製品しか持たないことだ。
財務は堅い。新工場の借入が11億円あるが、現金は32億円ある。配当は安定した普通配当を基本に払い、2026年2月期は利益を大きく超えて配った。株主に報いる姿勢はある。ただ、利益を超える配当は長くは続かない。稼ぐ力を戻すことが、還元を守る前提になる。筆者が見ているのは、看板の強さが利益率の底をどこまで支えるかだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ゴルフ用品の需要は、コロナの後に大きく膨らみ、その後に冷えた。屋外で人と離れて楽しめる競技として、日本でも米国でも若い層が増えた。2022年2月期と2023年2月期に、この会社の利益が過去の山に近づいたのは、その追い風だ。
その後は、クラブの買い替えが一巡し、米国の小売や代理店が在庫を減らした。2026年2月期の売上が1割強落ちたのは、その調整を受けたからだ。
10年で見れば、日本と米国で事情が違う。日本はゴルフ人口の中心が60代以上で、人数は少しずつ減る。米国は練習場型の施設が若い層を引き込み、プレー人口は緩やかに伸びる。高価格のシャフトは、腕を上げたい上級者が買うので、人数の増減より景気の影響が大きい。
競争は、ブランドと素材の勝負だ。替えシャフトの世界では、藤倉コンポジットが最大手で、三菱ケミカル、USTマミヤ、日本シャフトが続く。中国のメーカーが安いシャフトを出すが、プロや上級者の市場では信頼が先に立つ。一方で、大手のクラブメーカーが純正のシャフトの質を上げれば、替える人は減る。素材の進歩も速く、繊維の新しい世代が出るたびに、設計をやり直す力が問われる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は、安定した普通配当を基本とし、業績に応じて特別配当を足す。配当性向の目安は40%だ。2026年2月期は利益が落ちても普通配当を守り、配当性向は134%になった。年間の配当の総額は約2億円だ。
自社株買いの実行は見当たらない。筆頭株主は個人で約15%を持ち、東レも約6%を持つ。親会社はない。新工場の投資を終えた今、厚い現金をどう使うかが次の課題になる。普通配当を守れば現金は年に1億円前後減るので、配当と自社株買いの釣り合いをどう取るかが問われる。小さな会社で株式の流動性が低いことも、買い手を限る。東レとの資本関係は、素材の安定した調達を支える意味を持つ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年2月期の落ち込みは一時のものだ。米国の在庫調整と新工場の立ち上げが重なっただけで、次の期の第1四半期は売上が前年の1.5倍に戻った。会社予想の営業利益3.1億円は、2026年2月期のほぼ2倍になる。
Tour AD はプロの使用実績で選ばれるブランドで、値引きに頼らずに売れる。2026年モデルも東レの最新の繊維を使い、評判は高い。米国では代理店を通じて販路が広がっており、ツアーでの勝利が続けば本数はさらに伸びる。
新工場で生産の制約が外れた。工場の償却は建てた時の値段のまま据え置かれ、売上が物価とともに伸びるほど利益率は上がる。2014年2月期には営業利益率27%、2023年2月期にも22%を出した。過去の中央の11%にとどまる理由はない。純現金も20億円あり、配当を守りながら成長に投じる余力は十分だ。今の値段は、谷の利益で測った見かけの割高にすぎない。利益が戻れば、PER はすぐに常識的な水準に下がる。
慎重な見方
利益は流行の波に乗っていただけだ。コロナ後のゴルフの流行は一巡し、クラブの買い替えは鈍っている。2026年2月期の売上は1割強落ち、営業利益率は5.8%と計画の11.1%の半分にとどまった。
売上の36%を米国の代理店1社に頼る形は危うい。代理店が他社のシャフトに乗り換えれば、利益はほぼ消える。中国の生産委託先の人件費や為替も、利益を揺らす。炭素繊維の値上がりも、価格に転嫁しきれるとは限らない。
日本のゴルフ人口は60代以上が中心で、10年で細っていく。大手のクラブメーカーが純正のシャフトの質を上げれば、替えシャフトの市場そのものが縮む。そこに12億円の新工場を建てた。需要が戻らなければ、償却と借入の返済が重荷になる。利益を超える配当も、いずれ削らざるを得ない。看板が強いことと、利益が安定することは別の話だ。過去10年で利益が半分になった年は4回もある。谷の利益で見ても、山の利益で見ても、この会社の平均はその間にある。今の値段は、その平均をすでに織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
回復の足取りとブランドの力は確かだが、利益の振れと1社への依存も同じくらい確かだ。確率は中立を中心に、強気側を32%、悲観側を30%と、ほぼ釣り合わせた。看板の力で強気側をわずかに厚くしたが、読みにくさを考えて大きくは寄せていない。分かれ目は、米国の代理店向けの売上が戻るかどうかだ。そこが戻れば、強気側に寄せる余地がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/02 期)
確率で加重した株価時価総額 796 円52 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 294 円19 億円)。 今の値に割り戻すと 580 円38 億円、今との差 −14.3%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,765 円115 億円 | 432 円28 億円 | +225.0% | +12.5% | 220 円14 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,079 円70 億円 | 370 円24 億円 | +114.4% | +7.9% | 319 円21 億円 |
| 中立 | 38% | 711 円46 億円 | 324 円21 億円 | +53.1% | +4.3% | 393 円25 億円 |
| やや悲観 | 20% | 410 円27 億円 | 185 円12 億円 | −12.0% | −1.3% | 119 円8 億円 |
| 悲観 | 10% | 295 円19 億円 | 93 円6 億円 | −42.7% | −5.4% | 39 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 796 円52 億円 | 294 円19 億円 | +61.2% | +4.9% | 1,089 円71 億円 |
今の株価時価総額 676 円44 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 米国で看板の名が広がり、新工場が満杯になる 利益 7 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 1,765 円115 億円
Tour AD の名が米国のツアーで広がり、PRO'S CHOICE を通じた販売が伸びる。新工場で増やした生産能力が埋まり、出荷本数は1.4倍になる。新しい素材を使った高価格の品が売れ、1本あたりの卸値は名目1.45倍に上がる。
工場の償却は建てた時の値段のまま据え置かれ、売上の伸びがそのまま利益率を押し上げる。営業利益率は18%と、2022年2月期や2023年2月期の水準に戻る。
売上は約52億円、営業利益は約9億円になる。配当は普通配当に特別配当が乗り、現金も積み上がる。ツアーでの勝利が続き、看板の力が米国でも定着する筋書きだ。
- ゴルフシャフト:数量 630(出荷本数(千本・推定))× 価格 0.79(1本あたり卸値(万円))→ 売上 50 億円・営業利益 9 億円。数量 1.40倍・単価 1.45倍・営業利益率 18.0%
- 組立加工・その他:数量 103(組立本数(千本・推定))× 価格 0.41(1本あたり代金(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 1.20倍・単価 1.38倍・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 16.08 倍、時価総額 114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2014年2月期に営業利益率27.6%を出した実績があり、足元の第1四半期も売上が5割増えた。プロの使用実績と米国の販路が噛み合えば、利益は大きく伸びる。ただ一つの顧客に36%を頼る形は変わらず、同じ業種の強気と同じ程度に置いた。
やや楽観 22% 回復が続き、利益率が過去の中央に戻る 利益 4 億円 · PER 14.2 倍 · 株価時価総額 1,079 円70 億円
2026年2月期の落ち込みは、米国の在庫調整と新工場の立ち上げが重なった一時のものだった。回復は続き、出荷本数は10年で2割増える。米国の比率が上がり、日本の減りを埋める。
卸値は新モデルの投入で名目1.40倍に上がる。営業利益率は14%と、過去10年の中央よりやや上で落ち着く。
売上は約45億円、営業利益は約6億円で、2025年2月期の水準を上回る。配当は普通配当を保ち、特別配当も時々出る。ROE は資本コストをわずかに上回る。米国の代理店との関係も保たれ、1社への依存は少しずつ薄まる。新工場の償却は据え置かれ、売上の伸びが利益率を少しずつ押し上げる。
- ゴルフシャフト:数量 540(出荷本数(千本・推定))× 価格 0.76(1本あたり卸値(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 6 億円。数量 1.20倍・単価 1.40倍・営業利益率 14.0%
- 組立加工・その他:数量 94.6(組立本数(千本・推定))× 価格 0.41(1本あたり代金(万円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 1.10倍・単価 1.36倍・営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 14.21 倍、時価総額 70 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年2月期の会社予想は営業利益3.1億円で、第1四半期の売上は前年同期の1.5倍だった。新工場の稼働で供給の制約も外れる。足元の回復が続く形を、強気側の中心に置いた。
中立 38% 本数は横ばい、値上げで売上は物価並み、利益率は過去の中央 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 711 円46 億円
日本のゴルフ人口は高齢化で少しずつ減り、米国は緩やかに伸びる。差し引きで出荷本数は10年で5%増える。卸値は物価並みに名目1.34倍に上がる。
営業利益率は11%と、過去10年の中央に戻る。新工場の償却は建てた時の値段で据え置かれるが、人件費と炭素繊維の値上がりが、その分を食う。
売上は約46億円、営業利益は約4億円、純利益は約3億円になる。普通配当を守ると、配当の合計は利益とほぼ同じになり、現金はあまり増えない。ROE は6%台で、資本コストに届かない。看板は保たれるが、利益は過去と同じように波を打つ。
- ゴルフシャフト:数量 473(出荷本数(千本・推定))× 価格 0.73(1本あたり卸値(万円))→ 売上 35 億円・営業利益 4 億円。数量 1.05倍・単価 1.34倍・営業利益率 11.0%
- 組立加工・その他:数量 86.0(組立本数(千本・推定))× 価格 0.40(1本あたり代金(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.34倍・営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)10 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 46 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高価格帯のシャフトは景気とゴルフの流行に振られ、過去10年の営業利益率は2〜22%を行き来した。中央はおよそ11%だ。回復の勢いと、日本のゴルフ人口の高齢化が釣り合う所を中心にした。
やや悲観 20% ゴルフの熱が冷め、米国の代理店も細る 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 410 円27 億円
コロナ後のゴルフの流行が冷め、日本と米国でクラブの買い替えが鈍る。米国の代理店は在庫を絞り、出荷本数は10年で15%減る。卸値は値引きが増え、名目1.25倍にとどまる。
営業利益率は6%で、2026年2月期とほぼ同じ水準が続く。新工場は空きが目立ち、借入の返済が利益を圧迫する。
売上は約27億円、営業利益は約1.6億円になる。普通配当は利益を超えるので、配当は減らされる。現金は少しずつ細る。看板は残るが、稼ぐ力は戻らない。売れる資産が値段を支える。中国製の安いシャフトが中級者の市場を削り、高価格帯だけが残る。
- ゴルフシャフト:数量 383(出荷本数(千本・推定))× 価格 0.68(1本あたり卸値(万円))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。数量 0.85倍・単価 1.25倍・営業利益率 6.0%
- 組立加工・その他:数量 77.4(組立本数(千本・推定))× 価格 0.37(1本あたり代金(万円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90倍・単価 1.25倍・営業利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力(純利益約1.3億円÷k)より、純現金と売れる資産の床の方が大きい。床の約26億円を時価総額に置き、今の自己資本50億円に対する PBR は約0.53倍。
確率:2016年2月期と2020年2月期には営業利益率が2%台まで落ちた。コロナ後のゴルフの流行は一巡し、米国の大口顧客への依存も重い。利益が今の水準にとどまる形を、悲観側の中心に置いた。
悲観 10% 大口の顧客を失い、安いシャフトに押されて赤字になる 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 295 円19 億円
米国の代理店 PRO'S CHOICE が他社のシャフトに乗り換え、売上の3割強が消える。国内でも、中国製の安いシャフトと大手の純正品に押され、高価格の替えシャフトが売れなくなる。出荷本数は今の6割に落ち、卸値は名目1.1倍にとどまる。
新工場は重荷になり、営業利益はわずかな赤字になる。配当は大きく削られる。
倒産はしないが、利益のない会社の帳簿の資産は価値の床にならない。値段は、現金と売れる資産の所まで下がる。赤字と配当で、現金も少しずつ削られる。会社が身売りを選ばない限り、株主に残るのは細った現金と工場だ。
- ゴルフシャフト:数量 270(出荷本数(千本・推定))× 価格 0.60(1本あたり卸値(万円))→ 売上 16 億円・営業利益 0 億円。数量 0.60倍・単価 1.10倍・営業利益率 -1.0%
- 組立加工・その他:数量 60.2(組立本数(千本・推定))× 価格 0.33(1本あたり代金(万円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量 0.70倍・単価 1.10倍・営業利益率 -2.0%
倍率:稼ぐ力はほぼ無い。売れる資産の床(floor_assets_oku)をそのまま時価総額に置き、今の自己資本50億円に対する PBR は約0.38倍。
確率:売上の36%を占める米国の代理店を失えば、利益はほぼ消える。過去にも2007年2月期と2010年2月期に赤字があった。財務は堅く倒産の筋は薄いため、同じ業種の悲観と同じ程度に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ゴルフシャフト
炭素繊維のシャフト「Tour AD」などを、国内の工房・クラブメーカーと米国の代理店に売る。高価格帯の替えシャフトが中心。
| 数量出荷本数(千本・推定) | 価格1本あたり卸値(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 450 | 0.55 | 25 | 2 |
| 10 年後 中立 | 473 | 0.73 | 35 | 4 |
取り方:売上24.55億円を、1本あたり卸値約0.55万円(高価格帯の替えシャフトと、メーカー向けの純正シャフトをならした推定)で割った約45万本。本数は開示されていない。
組立加工・その他
クラブの組立加工と、シャフト以外の炭素繊維製品。
| 数量組立本数(千本・推定) | 価格1本あたり代金(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/02 | 86.0 | 0.30 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 86.0 | 0.40 | 3 | 0 |
取り方:組立1.73億円とその他0.84億円の計2.57億円を、1本あたり約0.3万円で割った約8.6万本の推定。営業利益はわずかと置いた。
リスクと懸念
米国の代理店への依存
米国の代理店 PRO'S CHOICE が売上の36%を占める。代理店が在庫を絞るだけで売上が1割動き、他社のシャフトに乗り換えれば利益はほぼ消える。2026年2月期の落ち込みも、米国の在庫調整が大きかった。
ゴルフの流行と景気
高価格の替えシャフトは、景気が冷えると真っ先に買われなくなる。コロナ後の流行は一巡しており、過去10年の営業利益率は2〜22%を振れた。リーマン級の不況なら、売上は3割以上落ちうる。
炭素繊維の値上がりと供給
材料の炭素繊維は東レからの仕入れが中心だ。航空機や風力向けの需要が増えれば、値上がりや供給の不足が起きうる。値上げを卸値に乗せきれなければ、利益率が下がる。
新工場の重荷
2026年2月期に約12億円を投じて新工場を建て、6億円を借りた。需要が戻らなければ、償却と借入の返済が利益を圧迫する。工場の稼働率が、利益率を大きく左右する。
純正シャフトと安い競合
大手のクラブメーカーが純正シャフトの質を上げれば、替えシャフトを買う人は減る。中国製の安いシャフトも、中級者の市場を削る。看板の力が届くのは、上級者とプロの狭い市場だ。
今後の分かれ目
- 2027年2月期に会社予想の営業利益3.1億円を超える
- 回復が本物である合図で、やや強気の筋書きに寄る。営業利益率が10%を超えるかが分かれ目になる。
- 米国の代理店向けの売上が再び減る
- 在庫調整か、乗り換えの兆しだ。やや悲観の筋書きに寄る。
- 米国で直販や新しい販路を開く
- 1社への依存が薄まり、悲観の筋書きの確率が下がる。
- 炭素繊維の大幅な値上げが続く
- 利益率が削られる。値上げを卸値に乗せられるかが、ブランドの力の試金石になる。
- 自社株買いや配当方針の引き上げが発表される
- 厚い現金が株主に戻る合図で、価値の下支えが強まる。
見ておくもの
- 四半期の売上(米国向けの比率)
- 営業利益率(10%に戻るか)
- 新工場の稼働率
- 主要顧客 PRO'S CHOICE 向けの売上
- 炭素繊維の仕入れ値
- ツアーでの使用率と勝利数
倍率と資本コストの決め方
出荷本数と卸値の推定から利益を積み、倍率は式で置いた。中立は ROE が k を下回るので上限1÷kの8割、強気側は ROE が k を上回るので正当化 PER の85%にした。今の PBR 0.9倍・PER 30倍前後(落ち込んだ期の利益)には寄せていない。余った現金10億円は、純現金20億円から運転資金と新工場の立ち上げの分を残した額で、戻り方1.0で足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.3→16.08 倍・やや楽観 PER 10.9→14.21 倍・中立 PER 9.7→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本7.5% + quality 0.75% = 8.25%。大口顧客を失う危うさは k に足さず、悲観の筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。