結論
研創は広島の金属サイン専業メーカーだ。ステンレスなどの金属で、ビルの案内板・銘板・社名サインをつくる。起源は 1908 年の造船用ネームプレートにさかのぼる。
筆者の結論は「やや割高」だ。理由は利益率の低さにある。営業利益率は 4% 前後で、資本コストを超える稼ぎを生んでいない。10 年後の中立でも、利益は物価の分しか伸びない。
強みは、一品ごとに仕上げる技能と、約 3,000 社の得意先だ。弱みは、機械化が難しく、人手とステンレス価格に利益が左右されることだ。建築投資の波も受ける。
救いは財務にある。自己資本比率は 6 割で、土地も厚い。悲観でも会社が傾く筋書きは描きにくい。ただし、守りが厚いことと価値が高いことは別の話だ。バリュー投資家が欲しいのは、資本を預けて増やしてくれる会社である。研創は資本を守る会社であって、増やす会社ではない。今の値段が安く見えても、確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額を 1〜2 割下回る、というのが筆者の見立てだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オーナー利益は小さい。純利益は 2 億円ほどで、そのうち設備の更新に回る分を引くと、自由に使える額はさらに減る。新しい設備を買わずに償却が先行しており、将来の更新投資が利益を食う余地がある。
堀は薄い。技能と得意先の関係は強みだが、10 年後に今より広がるとは言いがたい。10 年先の利益が自信を持って予測できる事業ではなく、確信度を下げて見る。
資本の使い方は堅実だ。政策保有株を売り、配当を続ける。ただし、事業の稼ぐ力が資本コストに届かない会社が内部にお金を留めても、価値は増えない。
安全域はある。土地と現金が厚く、悲観でも大きく崩れない。しかし、払う値段は稼ぐ力に見合う水準で、安さを理由に買う会社ではない。経営者が資本を増やす手段を見つけない限り、時間は味方にならない。「安全だが、割安ではない」というのが筆者の整理だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、金属製サイン製品の製造と販売だ。開示は単一の事業で、ビルの案内サイン、銘板、店舗や企業の社名看板などを、ステンレスを中心に加工してつくる。
仕事のほとんどは一品ごとの受注生産だ。図面に合わせて切り、曲げ、溶接し、磨く。機械化が難しく、工程の多くを技能者の手に頼る。得意先は約 3,000 社と多く、1 社への依存は小さい。2026 年 3 月期の受注高は約 65 億円、売上高は約 64 億円だった。需要は下半期に偏り、利益も下半期に集まる。
拠点は広島市の本社工場と中深川工場の 2 つで、生産の場所が広島周辺に集中している。従業員は 257 人、臨時雇用者は年平均 94 人。年間の設備投資は 0.7 億円、減価償却は 1.4 億円で、新しい設備にはあまり投じていない。
主原料はステンレスで、ニッケルやクロムの相場、為替で値段が動く。材料高は利益率を押し下げる最大の要因として、会社自身が課題に挙げている。売上の多くは国内の建築関連で、海外は目立たない。関係会社は無く、単体の経営である。
優良さと弱いところ
堀は薄い。研創の強みは、一品ごとに仕上げる技能、納期、品質、そして 3,000 社に及ぶ得意先との取引の長さだ。しかし、サイン製品は同業が全国に多く、設計や素材の独自性で守られた製品ではない。値段を自分で決める力は強くなく、材料高を価格に移すのにも時間がかかる。
資本効率も低い。営業利益率は直近 12 年で 4〜9% の範囲にあり、ここ数年は 4% 台に張りついている。ROE は 6% 前後で、資本コストに届かない。
経営には評価できる点もある。政策保有株は全株を売却し、資本を事業に集めた。配当は純資産配当率 2.5% を目安とし、安定して払う。借入はあるが利払いの負担は軽い。
弱みは、人手に頼る生産だ。職人の確保が難しくなるほど、受注を取れても生産が追いつかない。中期計画は機械化・自動化を柱にするが、成果は決算にまだ大きく表れていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
サイン業界の需要は建築投資と一体で動く。新築ビルや再開発、商業施設の改装、ホテルや病院の新設のたびに、案内サインと銘板が要る。景気が冷えると、工事の後ろの工程であるサインは先送りや値引きを受けやすい。
国内の建築投資は、人口の減少で新築は細る方向にある。一方、都市の再開発、老朽ビルの改装、訪日客向けの多言語表示などは、サインの更新需要を生む。数量は微減から横ばい、価格は物価並みに上がるというのが筆者の見方だ。
同業は全国に多く、広島県内にも看板・サインを一括で手がける会社がある。銘板やエッチング加工の専業も多数あり、規模の差はあっても技術の差は小さい。屋外広告物の規制の強化は、品質の低い業者を減らす方向に働くが、研創だけが得をする話ではない。
人手不足が最大の構造問題だ。溶接や研磨の職人は高齢化しており、確保できる会社だけが受注を取れる。機械化に早く成果を出した会社が優位に立つ。研創は中期計画で機械化を掲げており、その成否が 10 年の利益率を決める。価格は物価並みに上がるので、数量の見方と生産性の改善が、利益の伸びを左右する。
資本政策と M&A
還元は純資産配当率 2.5% を目安とする。2026 年 3 月期の配当総額は約 0.8 億円で、純利益の約 4 割だ。自社株買いは目立たない。
政策保有株は全株を売却済みで、持ち合いによる資本のむだは解消した。筆頭株主は約 2 割を持つ。TOB(株式公開買い付け)の話は確認できなかった。
設備投資は減価償却を下回る水準で、守りの資本配分だ。中期計画(2027 年 3 月期に営業利益 3.3 億円)は機械化への投資を前提にするが、設備投資の額は小さい。
10 年の還元は、中立では純資産配当率の目安どおり、純利益の約 3.5 割にあたる 10 億円とした。利益が落ちる筋書きでは、配当も減らす。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
研創は、機械化と値上げが進めば利益率を倍にできる会社だ。会社は中期計画で生産の機械化・自動化を柱にしており、人手に頼る生産を変えようとしている。成果が出れば、人手不足の同業を尻目に受注を取り込める。
サインは、再開発や店舗改装のたびに需要が生まれ、訪日客向けの多言語表示でも更新が続く。得意先は約 3,000 社と多く、特定の顧客に左右されない。長期ビジョンの売上 100 億円は、今の 1.5 倍ほどで、物価の上昇だけでも射程に入る。
財務は強い。自己資本比率は 6 割で、土地も厚い。政策保有株を全て売り、資本を事業に集めた。配当は純資産配当率 2.5% を目安に続く。営業利益率が過去の山である 8% 台に近づけば、利益は今の 2 倍になる。時価総額が自己資本の 7 割にも満たない会社が、利益率を戻せば、評価は見直される。人手不足で同業が受注を絞る局面は、技能者を抱える会社にとって追い風になる可能性がある。
慎重な見方
利益率は 12 年かけて 8% 台から 4% 台に下がった。材料のステンレスは相場が動き、人件費も上がるのに、一品受注の価格には転嫁しにくい。機械化は中期計画の柱とされてきたが、利益率はまだ戻っていない。
サインは同業が多く、技術の差が小さい。値段を決める力は弱い。しかも需要は建築投資に連動し、受注を在庫で調整できない。景気が冷えれば、固定費である人件費と償却が利益を飲み込む。
人手の問題も重い。溶接や研磨の職人は高齢化し、確保できなければ受注を取れても生産が追いつかない。設備投資は減価償却を下回り、更新が先送りされている兆しもある。
資本効率も低い。ROE は資本コストに届かず、自己資本が積み上がっても価値は増えない。配当も純資産配当率 2.5% 止まりで、株主への還元は乏しい。土地や現金の厚さは安心材料だが、稼ぐ力の弱さを補うものではない。10 年たっても同じ議論が続いている可能性が高い。
どちらに重みを置いたか
財務の堅さでは強気の見方が正しく、悲観でも会社が傾く確率は低い。一方、稼ぐ力では慎重な見方が当たっており、利益率が過去の山に戻る根拠は決算にまだ表れていない。中立は利益率 4% 台半ばに置き、確率は中立に最も厚く、悲観側をやや厚めにした。確率で重みを付けた価値は今の時価総額を 1 割台半ば下回り、やや割高と出た。資産に守られた下値の硬さは評価するが、上値を買う理由は見つからなかった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 919 円35 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 250 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 608 円23 億円、今との差 +3.4%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,793 円68 億円 | 328 円13 億円 | +260.8% | +13.7% | 170 円6 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,264 円48 億円 | 297 円11 億円 | +165.4% | +10.3% | 312 円12 億円 |
| 中立 | 42% | 985 円38 億円 | 263 円10 億円 | +112.2% | +7.8% | 524 円20 億円 |
| やや悲観 | 20% | 414 円16 億円 | 210 円8 億円 | +6.1% | +0.6% | 125 円5 億円 |
| 悲観 | 10% | 265 円10 億円 | 118 円5 億円 | −34.8% | −4.2% | 38 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 919 円35 億円 | 250 円10 億円 | +98.8% | +7.1% | 1,169 円45 億円 |
今の株価時価総額 588 円22 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 機械化と値上げが両方うまくいく筋書き 利益 5 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,793 円68 億円
生産の機械化が実り、少ない人手で同じ量をさばけるようになる。加工の自動化は中期計画の柱で、会社はこれを収益基盤の立て直しの中心に置いている。人手不足で同業が受注を絞る中、研創は納期と品質で選ばれ、値上げも通りやすくなる。再開発や商業施設の改装が続き、銘板・サインの需要は途切れない。売上は 98 億円と長期ビジョンの 100 億円にほぼ届き、営業利益率は 7% に乗る。過去の最良期の 8.8% には届かないが、近い水準だ。ステンレスの値上がりも価格に転嫁できる。還元は配当を軸に厚くなり、自己資本は 56 億円まで積み上がる。ただし利益の中身は職人仕事の延長で、堀が厚くなるわけではない。
- 金属サイン製品(単一セグメント):数量 325(常勤換算の生産人員(人)。手作業中心の受注生産なので人員が生産量の天井)× 価格 0.30(1 人あたり売上(億円・名目)。物価と生産性の改善を含む)→ 売上 98 億円・営業利益 7 億円。人員 325 人 × 1 人あたり売上、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.78 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:機械化と値上げの両方が成功し、過去最良期に近づく筋書き。中期計画の機械化はこれまで決算に表れておらず、実現の確度は高くない。
やや楽観 20% 機械化が進み、利益率が 5%台に乗る 利益 4 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,264 円48 億円
中期計画の機械化が一定の成果を上げ、利益率は 5% 台半ばまで戻る。受注は都市の再開発と店舗改装に支えられ、人員は今より少し増える。ステンレスなどの材料高は、値上げでおおむね吸収できる。売上は 92 億円で、物価の上昇分に近い伸びを保つ。2027 年 3 月期の計画(営業利益 3.3 億円)は達成され、その後も 5% 前後を守る。一方で、設備投資は減価償却を下回る水準が続き、生産能力の天井が見えてくる。これ以上の拡大には、新しい工場か大きな設備投資が要る。会社は DOE(純資産配当率)2.5% を目安に配当を続け、自己資本はゆっくり増える。堅実だが派手さのない 10 年だ。
- 金属サイン製品(単一セグメント):数量 315(常勤換算の生産人員(人)。手作業中心の受注生産なので人員が生産量の天井)× 価格 0.29(1 人あたり売上(億円・名目)。物価と生産性の改善を含む)→ 売上 93 億円・営業利益 5 億円。人員 315 人、営業利益率 5.6%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画(営業利益 3.3 億円)が達成され、5% 台に乗る筋書き。直近は計画を少し下回るが、方向は合っている。
中立 42% 中立:物価並みに伸び、利益率は 4%台半ば 利益 3 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 985 円38 億円
売上は物価の上昇に生産性の改善を少し加えた形で伸び、10 年後に 88 億円になる。人手不足で人員は微減だが、機械化で 1 人あたりの売上は上がる。営業利益率は 4.6% と、直近の 4% から小幅に戻る。過去 12 年の山である 8.8% には遠い。理由は材料費の高止まりと、人件費の上昇を全額は価格に乗せにくいことだ。減価償却は今ある設備の分が増えない一方、更新投資は新しい値段で膨らむ。利益の見かけは良く見えても、現金は設備に回る。還元は DOE 2.5% の目安のままで、10 年の合計は約 10 億円になる。自己資本は 49 億円に増えるが、稼ぐ力は資本コストにわずかに届かない。優良とも不振とも言えない、普通の小さな製造業のままだ。
- 金属サイン製品(単一セグメント):数量 305(常勤換算の生産人員(人)。手作業中心の受注生産なので人員が生産量の天井)× 価格 0.29(1 人あたり売上(億円・名目)。物価と生産性の改善を含む)→ 売上 88 億円・営業利益 4 億円。人員 305 人、営業利益率 4.6%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 38 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率 4% 台と物価並みの成長が、過去 10 年の実績(4〜5%)に最も近い。中心に置いた。
やや悲観 20% やや悲観:値上げが遅れ、利益率は 3%割れへ 利益 2 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 414 円16 億円
ステンレスの値上がりと人件費の上昇を、価格に乗せきれない。得意先は約 3,000 社と分散しているが、一社あたりの発注は小さく、値上げ交渉の力は強くない。建築投資が細り、人手不足で職人も確保しにくくなり、受注と生産の両方が 1 割ほど縮む。売上は 78 億円で物価並みの伸びにとどまり、営業利益率は 2.8% に下がる。機械化は進むが、効果はコスト増に食われる。配当は DOE の目安を守れず、減らさざるをえない。自己資本は 44 億円まで増えるものの、稼ぐ力が弱まったため、帳簿の厚みは価値に結びつかない。それでも工場と土地は残り、会社が傾くことはない。
- 金属サイン製品(単一セグメント):数量 285(常勤換算の生産人員(人)。手作業中心の受注生産なので人員が生産量の天井)× 価格 0.27(1 人あたり売上(億円・名目)。物価と生産性の改善を含む)→ 売上 78 億円・営業利益 2 億円。人員 285 人、営業利益率 2.8%
倍率:ROE 3.6% が k 7.75% 以下。稼ぐ力が資本コストに届かないので、上限(1÷k=12.1 倍)の 8 割の 9.7 倍に置いた。
確率:材料高と人件費を価格に乗せきれない筋書き。過去 10 年も利益率は 4% 台から下がる傾向があり、軽く見ない。
悲観 10% 悲観:価格競争で赤字が続き、資産で測る 利益 −1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 265 円10 億円
建築投資の縮小と同業との値引き競争で、受注が 2 割落ちる。サイン製品は一品ごとの受注で、在庫で調整できない。固定費である工場の人件費と償却は減らせず、赤字に転じる。売上は 63 億円と今と同じ水準で、物価の上昇分は値引きに消える。営業利益率はわずかな赤字になる。会社は工場の集約や人員の整理に踏み込むが、効果が出る前に自己資本は削られる。配当は大きく絞られる。それでも、広島の本社工場と中深川工場の土地があり、現金と売掛金も厚い。債権者に対しては十分で、清算に近い値で測っても帳簿の一部は残る。少数株主にとっては、稼ぐ力ではなく資産の切り売りで測る局面になる。
- 金属サイン製品(単一セグメント):数量 250(常勤換算の生産人員(人)。手作業中心の受注生産なので人員が生産量の天井)× 価格 0.25(1 人あたり売上(億円・名目)。物価と生産性の改善を含む)→ 売上 63 億円・営業利益 −1 億円。人員 250 人、営業利益率 −0.8%
倍率:赤字なので PER は使わず、今の自己資本 33.8 億円に PBR 0.30 を掛けた。稼ぐ力はなく、床は資産(floor_assets_oku)。PBR は中立(約 0.6 倍)より低い。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.3 倍・時価総額 10 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:建築投資の縮小と値引き競争が重なる。リーマン後の赤字(2009 年 3 月期)の前例があり、悲観が 5% 未満にはならない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金属サイン製品(単一セグメント)
ステンレスなど金属製の案内サイン・銘板・社名看板を一品ごとに受注生産する。開示は単一セグメント。
| 数量常勤換算の生産人員(人)。手作業中心の受注生産なので人員が生産量の天井 | 価格1 人あたり売上(億円・名目)。物価と生産性の改善を含む | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 313 | 0.20 | 64 | 3 |
| 10 年後 中立 | 305 | 0.29 | 88 | 4 |
取り方:従業員 257 人に、臨時雇用者の年平均 94 人を 6 割と仮定した 56 人を足した約 313 人を生産人員の推定とし、売上 64.1 億円を割って 1 人あたり約 0.205 億円とした(推定)。製品別・数量の開示はない。数量は実質の人員、物価 3% と生産性の改善は 1 人あたり売上に入れる。
リスクと懸念
ステンレス相場と材料高
主原料のステンレスは、ニッケルやクロムの相場と為替で動く。一品受注の価格にすぐ転嫁できず、材料高が続くと営業利益率は 4% を割る。会社自身が利益率低下の主因に挙げている。
職人の確保と高齢化
溶接・研磨・仕上げは技能者に頼る。人手が確保できなければ、受注があっても生産が追いつかない。賃金の上昇も重なり、機械化が間に合うかが分かれ目になる。
建築投資の波
サインは建築工事の後工程で、景気後退時は先送りや値引きを受けやすい。一品ごとの受注で在庫による調整ができず、工場の固定費が利益を直撃する。過去にも 2009 年 3 月期に赤字を出した。
生産が広島周辺に集中
本社工場と中深川工場の 2 拠点が広島周辺にまとまる。豪雨などの自然災害で稼働が止まれば、代替できる工場がない。
更新投資の先送り
設備投資は減価償却を下回る水準が続く。更新を遅らせると、あとで一度に出費が重なり、現金と利益を圧迫するおそれがある。新しい設備は新しい値段で買うため、費用は物価以上に膨らむ。
中期計画の未達
2027 年 3 月期に営業利益 3.3 億円を目標とするが、直近は約 2.6 億円。機械化の成果が出なければ、長期ビジョンの売上 100 億円も遠のく。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 6% を超えて 2 年続いたら
- 機械化と値上げが定着した証拠で、やや楽観に確率を寄せる。ただしROEはまだ資本コストをわずかに超える程度。
- 2027 年 3 月期の営業利益が 3 億円を割ったら
- 中期計画の機械化が遅れていると見て、やや悲観の確率を上げる。
- ステンレスの相場が高止まりして粗利率が下がったら
- 値上げ交渉の力が弱いことが確かになり、中立の利益率を 4% 割れに下げる。
- 設備投資が減価償却を大きく上回り始めたら
- 機械化への本格投資が始まった合図。短期は現金が減るが、中長期の利益率の改善を点検する。
- 大株主が持ち株を増やす、または公開買い付けの話が出たら
- 資産の厚さを背景に評価が見直される材料。ただし価格は少数株主に有利とは限らず、条件を見る。
見ておくもの
- 営業利益率(4% 台からの改善)
- 機械化・自動化への設備投資額
- 受注高と受注残の動き
- ステンレス相場と価格転嫁の進み具合
- 2027 年 3 月期の営業利益 3.3 億円の達成
倍率と資本コストの決め方
数量は人員、価格は 1 人あたり売上とし、物価 3% は価格に入れた。営業利益率は直近 4% と過去の山 8.8% の間の 4.6% で、山には寄せていない。ROE が k 以下の中立なので、PER は 1÷k の 8.5 割とし、今の PER や PBR は根拠にしていない。悲観は稼ぐ力でなく土地・現金・売掛金の税後の床で測った。新リース会計の影響は小さく、10 年後の数字は今と同じ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→13.78 倍・やや楽観 PER 10.3→12.9 倍・中立 PER 10.3→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。