結論
アビックスは、スポーツ施設や商業施設の壁面に付く大型の LED ビジョンを売り、貸し、運営する会社だ。自前の工場は持たず、中国のメーカーに作らせる。筆者は、売上の急成長に目を奪われず、稼ぐ力の薄さを見るべきだと考える。10 年先の価値は、今の値段を大きく下回ると見ている。
売上は 2022 年 3 月期の 18 億円から 2026 年 3 月期の 54 億円へ、4 年で 3 倍になった。主力は長くパチンコホールだったが、いまは大型の商業施設やスポーツ施設へ軸足を移し、2021 年に事業を引き継いだ会社の顧客に直接売る力も付いた。
一方で、営業利益率は 4% ほどにとどまる。売上が増えても人員の増強で利益は前の期より減った。市場が広がるにつれ競合が参入し、価格競争が始まったと会社自身が書いている。
財務は悪くない。借入を引いても 6 億円の純現金があり、2026 年 3 月期に初めて利益剰余金がプラスになった。ただし無配で、親会社格のテラスホールディングスが 35% を持つ。10 年後の営業利益は 4 億円弱で、資本コスト 8.75% を稼ぐには足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「成長の途中にある小さな機器会社」で、持ち続けたい事業とは言いにくい。理由は、本体が他社も買える部品で、利益率が低いからだ。
オーナー利益で見ると、売上が増えるほど仕入れと運転資金が先に出ていく。営業利益は 2 億円台だが、これが現金として手元に残るかは、在庫と売掛金の動き次第だ。利益の質は高いと言いにくい。
資本配分は、いまのところ配当も自社株買いもなく、成長の投資に回している。合弁や持分法の会社への出資は、実績が見えるまで評価を保留する。のれんの減損も気になる。
安全域は、純現金が 6 億円あるため、悲観でも半値より下には落ちにくい。ただし、楽観の筋書きでも利益率は 7% 近くまでしか上がらず、勝ちの幅は限られる。見合いとしては、守りは堅めだが値段が高い。経営が運営の継続収入を厚くし、利益率が 6% を超えて定着したときだけ、見方を改めたい。
何で稼ぐ会社か
アビックスは LED 表示機を開発して売る、工場を持たないメーカーだ。製造は外部に任せ、設置・映像の配信・保守まで一貫して引き受ける。事業は 3 つの形で稼ぐ。ひとつは機器の販売とリース(貸し出し)で、ひとつは映像の配信と保守の運営、もうひとつは他社向けの情報機器の販売だ。
売上の 95% はデジタルサイネージ関連で、残りの 5% は地域のイベントや販促を手がける Value creating 事業だ。2026 年 3 月期の売上は前の期より 24% 増えたが、営業利益は 15% 減った。売上が増える局面で、人員を増やして先行投資したためだ。
顧客の中心は、長くパチンコホールだった。ここへ、スポーツ施設や大型商業施設が加わる。2021 年にデジタルサイネージ事業を引き継いだプロテラスの顧客が大きい。大口を直接口説ける力が付き、案件の規模が大きくなった。
もうひとつ、2026 年 4 月に LED メーカーの州明(香港)と合弁会社を作り、アビックスが 7 割を持つ。調達と品質管理を一元化し、中国製 LED の仕入れの弱点を補う狙いがある。従業員は 65 人の小さな会社である。
優良さと弱いところ
優良さは「成長はあるが、堀は浅い」と見る。LED ビジョンの本体は中国製で、他社も同じ部品を買える。差がつくのは、設置の工事、映像の配信の運営、顧客との関係だけだ。
強みは 2 つある。第 1 に、大口顧客への直販ができる点だ。第 2 に、運営と保守が付くので、一度入れた顧客から繰り返し収入が入る。ただし運営の売上の内訳は開示されておらず、どれほど積み上がっているかは見えない。
弱みは多い。仕入れは中国のメーカーに集中し、為替と調達の影響を受ける。のれんが 2.8 億円あり、総資産の 7% を占める。競合の参入で価格競争が起きていると会社が認めている。利益率は 2017 年 3 月期の 8% が最高で、その後は 2〜6% を行き来している。
資本効率は、2026 年 3 月期の ROE が 12% だが、税金の調整益で膨らんだ数字だ。税の効果を除くと 8% 前後になる。経営は小さな会社なりに機敏で、合弁や持分法の会社を使って事業を広げている。ただし、利益で示した実績はまだ短い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内のデジタルサイネージ(電子看板)の市場は、広告の面では 2025 年に 1,100 億円ほどで、2030 年に 1,650 億円まで伸びるという推計がある。機器も含む市場は 2,000 億円前後で、年 5〜7% の伸びと言われる。名目の伸びだが、その中の数量は年 2〜4% ほどの実質の成長と見てよい。
成長の主役は屋外と大型の LED ビジョンだ。スタジアム、駅前、商業施設、イベント会場で設置が増える。パチンコホールは店舗が減り続けており、これまでの主力顧客の市場は縮んでいる。
価格は、機器の部分と運営の部分で動きが違う。LED の本体は中国メーカーの供給過剰で下がり続ける。一方、設置工事の人件費と映像運営の費用は物価で上がる。会社が機器の売り切りから運営の継続収入に移れるかどうかが、利益率の分かれ目になる。
競合は、大手の電機メーカーから、中国の LED メーカーの日本法人、設置を請け負う中堅まで幅広い。会社自身が、競合の参入で価格競争が起きていると書いている。技術では、薄型・高精細・省エネの競争が続き、機器の更新が速くなる。
資本政策と M&A
資本政策は、いまは成長の資金づくりが優先で、株主還元はない。2026 年 3 月期は無配で、会社は自己資本の充実を優先するとしている。長く欠損があった会社で、利益剰余金がプラスに転じたのは今期が初めてだ。
テラスホールディングスが議決権の 35% を持つその他の関係会社で、事業の支援があるとみられるが、取引の内容は開示されていない。2023 年 11 月にはスポーツ関連のエクスポルトの株式 35% を取得して持分法の会社にし、2026 年 4 月には LED メーカーの州明と合弁を作った。小さな M&A で事業を広げる姿勢だ。
筆者は、この会社が現金を株主に返す日は当分遠いと見る。仕入れの先払いと在庫が増える成長の会社だからだ。大株主が 3 分の 1 を持つ点も、少数株主にとって配当が出にくい要因である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
LED ビジョンの市場は、スポーツ施設や商業施設の大型化で、これから 10 年も伸び続ける。会社は 4 年で売上を 3 倍にし、大口顧客への直販という武器を手に入れた。2026 年 4 月には州明との合弁で、調達の弱点を補う手も打った。
運営と保守の継続収入が積み上がれば、機器の売り切りより利益率が上がる。人員の増強は先行投資で、売上の成長に利益が追いつけば、営業利益率は 6〜7% まで戻る。2026 年 3 月期に利益剰余金がプラスに転じ、配当を始める条件も整いつつある。
純現金が 6 億円あり、大きく崩れない。大株主のテラスホールディングスとの関係も、成長の後押しになる。スポーツ施設への展開を狙うエクスポルトとの連携で、案件の取りこぼしも減る。屋内外の大型案件が増えるほど、運営と保守で稼ぐ会社の比重が増す。屋外広告の規制が整い、屋外の大型案件も取りやすくなる。市場の成長に乗って顧客数が増え、営業の効率が上がる。
慎重な見方
売上は伸びたが、営業利益は前の期より 15% 減り、営業利益率は 4% 台に沈んだ。市場の拡大とともに競合が参入し、価格競争が始まったと会社自身が認めている。LED の本体は中国メーカーの供給過剰で値下がりが続く。
仕入れは中国に集中し、為替と調達の影響をもろに受ける。2027 年 3 月期の第 1 四半期は売上が 18% 減り、営業赤字になった。売上が下期に偏る季節性が大きく、期の途中で読みにくい。
2026 年 3 月期の純利益は税金の調整益で膨らんだもので、実力の利益は 1.5 億円前後だ。のれんが 2.8 億円あり、減損の種になる。大株主が 3 分の 1 を持ち、無配が続く可能性も高い。成長の資金を借入で賄う限り、金利が上がる 10 年で利払いの負担も増える。仕入れが中国に偏る点も、為替と関税で一度に利益を削りかねない。人員を増やした先行投資が回収できるかも、まだ見えていない。営業利益が前の期に減ったことは、この先行投資の重さを物語っている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が優勢だ。利益率の低さと価格競争は、事業の構造の問題で、売上の伸びでは解消しない。ただし市場の成長と大口顧客への直販は本物で、悲観でも純現金が床になる。そのため、中立を 38%、やや悲観を 25% に置き、悲観は構造的な価格崩壊の筋書きで 11% とした。楽観は、運営の継続収入で利益率が上がる筋書きで 6% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 84 円29 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 7 円2 億円)。 今の値に割り戻すと 41 円14 億円、今との差 −43.7%、 期待の年率 +2.3%(資本コスト 8.8%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 194 円68 億円 | 19 円7 億円 | +195.7% | +11.5% | 13 円4 億円 |
| やや楽観 | 20% | 129 円45 億円 | 11 円4 億円 | +94.6% | +6.9% | 28 円10 億円 |
| 中立 | 38% | 99 円35 億円 | 7 円3 億円 | +46.9% | +3.9% | 40 円14 億円 |
| やや悲観 | 25% | 33 円12 億円 | 2 円1 億円 | −52.0% | −7.1% | 9 円3 億円 |
| 悲観 | 11% | 8 円3 億円 | 0 円0 億円 | −89.3% | −20.0% | 1 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 84 円29 億円 | 7 円2 億円 | +25.6% | +2.3% | 90 円32 億円 |
今の株価時価総額 72 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:運営の継続収入で利益率が 7% に迫る 利益 5 億円 · PER 13.0 倍 · 株価時価総額 194 円68 億円
スポーツ施設や商業施設の大型 LED の需要が実質で年 4% 伸び、アビックスは大口直販でシェアを守る。映像の運営と保守の継続収入が売上の 4 割を超え、機器の値下がりを運営の値上げで打ち消す。州明との合弁で調達費が下がり、営業利益率は 6〜7% まで上がる。配当を始め、利益の 3 割を株主に戻す。売上は 100 億円を超え、地域販促も大きく育つ。大手の電機メーカーが手を出しにくい中堅規模の案件で、アビックスは「設置から運営まで任せられる会社」という地位を固める。会社はのれんの減損もなく、財務は純現金を保つ。
- デジタルサイネージ関連(機器・リース・運営):数量 772(年間の案件数(納入・リース・運営契約の合計、推定))× 価格 0.13(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 103 億円・営業利益 7 億円。案件 772 件・1 件 1.34 倍
- Value creating(地域イベント・販促):数量 90.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。案件 90 件
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.0 倍。全体の PER 13.04 倍、時価総額 65 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:運営の継続収入が厚くなり、市場の成長を取り込む筋書きは現状の利益率から遠く、6% にとどめた。
やや楽観 20% やや楽観:市場の成長を取り込み利益率 5.5% 利益 3 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 129 円45 億円
国内の大型 LED 需要が実質で年 3% ほど伸び、アビックスは今のシェアを少し上げる。機器の値下がりと運営費の上昇が相殺し、料金は物価に少し届かない程度で上がる。運営と保守の収入が少しずつ積み上がり、営業利益率は 5% 台半ばで定着する。配当は小さく始まり、利益の 20% 程度が株主に戻る。パチンコホール向けは縮み続けるが、スポーツ施設と大型商業施設の案件が穴を埋める。中国メーカーとの合弁は、調達の安定には効くが、利益率を押し上げるほどの効果は限られる。大口顧客の更新需要が積み上がり、売上は 85 億円ほどまで伸びる。
- デジタルサイネージ関連(機器・リース・運営):数量 695(年間の案件数(納入・リース・運営契約の合計、推定))× 価格 0.12(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 85 億円・営業利益 5 億円。案件 695 件
- Value creating(地域イベント・販促):数量 70.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。案件 70 件
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.0% が k 8.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.08 倍、時価総額 41 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場の成長と大口直販の効果で利益率が少し上がる筋書きで、実績の短さを考えて 2 割とした。
中立 38% 中立:案件は市場並みに増え、利益率は 5% 弱で止まる 利益 3 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 99 円35 億円
国内の大型 LED の市場は実質で年 2.5% 伸び、アビックスは今のシェアを保つ。案件数は今の 1.25 倍になる。LED 本体の値下がりと運営費・工事費の上昇が混ざり、1 案件あたりの売上は今の 1.15 倍にとどまる。競合の参入で、利益率は 5% 弱で頭打ちとなり、2017 年 3 月期の 8% には戻らない。配当は 3 年目から始まり、利益の 2 割が戻る。売上は 74 億円ほどになる。パチンコホール向けは縮み続けるが、スポーツ施設や商業施設の案件が穴を埋める。州明との合弁は調達の安定には効くものの、価格競争を押し返す力にはならず、のれんも今の水準のまま残る。
- デジタルサイネージ関連(機器・リース・運営):数量 644(年間の案件数(納入・リース・運営契約の合計、推定))× 価格 0.12(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。案件 644 件(1.25 倍)・1 件 1.15 倍
- Value creating(地域イベント・販促):数量 70.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.07(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。案件 70 件
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍。全体の PER 11.43 倍、時価総額 29 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の売上の勢いと利益率の低さがともに実績で、両方を織り込んだ中心の筋書きを 4 割弱に置いた。
やや悲観 25% やや悲観:価格競争で案件の単価が伸びない 利益 1 億円 · PER 7.8 倍 · 株価時価総額 33 円12 億円
競合が増え、LED ビジョンの値下げ競争が激しくなる。案件数は今の 95% で、1 案件あたりの売上は今と同じ水準にとどまる。工事費と人件費は物価で上がるため、営業利益率は 2〜3% に沈む。のれんの減損も一部に出る。配当は出ても小さい。大口直販の顧客が競合に流れるケースも目立つ。パチンコホール向けの縮小を、スポーツ施設や商業施設の案件で埋めきれず、人員の増強が重荷になる。売上は 50 億円前後で足踏みし、金利の上昇で借入の負担も少し増える。売上の季節性は残り、四半期ごとの業績は読みにくいままだ。粗利は仕入れ値の下落に連れて細る。州明との合弁も、利益を押し上げる前に費用が先行する。
- デジタルサイネージ関連(機器・リース・運営):数量 489(年間の案件数(納入・リース・運営契約の合計、推定))× 価格 0.10(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 49 億円・営業利益 1 億円。案件 489 件・1 件は今と同じ
- Value creating(地域イベント・販促):数量 40.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.06(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。案件 40 件
倍率:事業の ROE 2.6%(事業の純利益÷事業の自己資本)、k 8.75%。ROE が k 以下なので PER の上限は 1÷k=11.1 倍。上限の 7.0 割に置いて 7.8 倍。利益の質が落ちる筋書きで、上限の 7 割に置いた。
確率:競合の参入と価格競争を会社が認めていること、売上が期の途中で振れることから、25% と重めに置いた。
悲観 11% 悲観:LED ビジョンが汎用品になり価格が崩れる 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 8 円3 億円
中国のメーカーが日本に直接売り込み、アビックスのような仲介の会社の価値が下がる。LED の価格が崩れて 1 案件の売上が 1 割減り、案件数も今の 7 割に縮む。営業利益は赤字になり、のれんも減損される。会社は固定の人件費を抱えたまま縮み、時価総額は事業の稼ぐ力でなく、純現金のうち運転資金を除いた分で値が付く。顧客は大手の直接調達に流れ、アビックスには小口の保守と運営の契約だけが残る。大株主が現金の使い道を決め、少数株主には戻らない。10 年のあいだに事業の中身が入れ替わり、今の強みは残らない。
- デジタルサイネージ関連(機器・リース・運営):数量 360(年間の案件数(納入・リース・運営契約の合計、推定))× 価格 0.09(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 0 億円。案件 360 件(7 割)・1 件 0.9 倍
- Value creating(地域イベント・販促):数量 20.0(年間の案件数(推定))× 価格 0.05(1 案件あたりの売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。案件 20 件
倍率:床の資産(純現金から運転資金を引いた分)で値が付く筋書き。今の自己資本に床の PBR を掛けた。
確率:中国メーカーの直販が日本に広がり、仲介の価値が消える構造的な負けを 1 割強に置いた。仕入れ先への集中と競合の参入が、この方向を指している。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
デジタルサイネージ関連(機器・リース・運営)
LED ビジョンの販売・リース、映像の配信と保守、他社向けの情報機器の販売。
| 数量年間の案件数(納入・リース・運営契約の合計、推定) | 価格1 案件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 515 | 0.10 | 52 | 2 |
| 10 年後 中立 | 644 | 0.12 | 74 | 4 |
取り方:有報の売上 51.48 億円・セグメント利益 2.10 億円。案件数と 1 件の売上は開示がなく、国内のサイネージ市場(機器含め約 2,000 億円超)に対する約 2.5% の取り分とみて、1 件 1,000 万円の推定で案件数を置いた。
Value creating(地域イベント・販促)
デジタルプロモーションによる地域密着型のエリアファンマーケティング。
| 数量年間の案件数(推定) | 価格1 案件あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52.0 | 0.05 | 3 | 0 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.07 | 5 | 0 |
取り方:有報の売上 2.58 億円・セグメント利益 0.18 億円。案件数は開示がなく、1 件 500 万円の推定。
リスクと懸念
価格競争
市場の拡大に伴って競合が増え、会社自身が価格競争の影響を認めている。LED 本体の値下がりが続けば、機器の売上単価も利益率も上がらない。
中国の仕入れ先への集中
LED 表示機の製造は中国のメーカーに依存する。為替・関税・供給の停止が起きれば、納期と利益に直撃する。合弁の州明が弱点を補うかは、これからだ。
売上の季節性と案件の波
売上は下期に偏り、期の途中では利益が読みにくい。大口の案件が 1 件ずれるだけで、四半期の損益が赤字に振れる。
のれんの減損
のれんは総資産の 7% にあたる。買収した事業が計画に届かなければ、減損で一度に利益が消える。
大株主と配当
テラスホールディングスが 3 分の 1 強を持つ。経営の安定には効くが、少数株主の取り分である配当や自社株買いが出にくい。
今後の分かれ目
- 運営・保守の継続収入が売上の 3 割を超え、営業利益率が 6% に乗ったら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。
- LED 本体の値下がりに合わせて機器の売上単価が下がり、営業利益率が 3% を割ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 州明との合弁で調達費が下がり、粗利率が改善したら
- 中立の営業利益率を 5% 台に上げる。
- 配当が始まり、配当性向の方針が示されたら
- 中立の還元を上げる。
- のれんの減損が出たら
- 買収の実行力を割り引き、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益率と粗利率(四半期)
- 運営・保守の継続収入の売上比
- 州明との合弁 aua の損益
- のれんと仕入れ先の集中度
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k から式で出した。事業の ROE が資本コストに届かない会社なので PER の上限は 1÷k で、中立は上限の 8 割に置いた。今の株価や同業の倍率は使っていない。数量は案件数(推定)で、市場の実質成長を年 2.5% と置いた。価格は LED 本体の値下がりと運営費の上昇を混ぜて物価より低く置いた。純利益の起点は税の調整益を除いた。新リース会計基準は家賃を営業費用に入れた今の形でそろえて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.3→13.04 倍・やや楽観 PER 10→12.08 倍・中立 PER 8.9→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。