結論
重松製作所は、工場や建設現場、消防で使う防じんマスク・防毒マスクと、その交換部品を作る会社だ。筆者の結論は、今の値段はやや割安だ。国の検定に通ったマスクは法令で使う義務があり、交換部品が繰り返し売れるので、稼ぎは景気に左右されにくい。
強みは、興研とならぶ国内 2 強の立場と、トラスコ中山などの工具の問屋を通じた全国の販路だ。2024 年に化学物質の管理の規則が変わり、自社で危険を見積もって保護具を選ぶ仕組みになった。防毒マスクと吸収缶の需要はこれで一段増え、2026 年 3 月期の売上は過去最高の 156 億円になった。
弱みは利幅の薄さと借金だ。売上の 3 分の 1 は、輸入の空気呼吸器などを仕入れて売る商品で、利幅は小さい。福島に新しい工場を建て、借入は 76 億円に増えた。
10 年の中立では、数量は 3% 増にとどまるが単価が物価並みに上がり、営業利益は 15 億円台になる。ROE は資本コストにわずかに届かないが、PER は 12 倍に置ける。価値は今の時価総額を 2 割ほど上回るとみる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、重松は「地味だが壊れにくい事業」だ。10 年後も工場では有毒ガスや粉じんが出続け、法令はマスクを求め続ける。検定と問屋の販路は短い時間では崩れず、交換部品は繰り返し売れる。この点は持ち主として安心できる。
一方で、オーナー利益は今は細い。新工場の投資で設備投資が減価償却の 3 倍に膨らみ、自由に使える現金はここ 2 年ほとんど残っていない。投資が一巡すれば、償却 9 億円前後に見合う更新の投資に戻り、純利益に近い現金が出るようになる。
利幅が薄いので、値上げの力は大きくない。それでも、2026 年 3 月期には原価の上昇を売値に乗せながら売上を 1 割伸ばした。
安全域は少しある。中立の価値は今の値段を 2 割ほど上回り、悲観でも投資有価証券と工場の価値がある。大きな割安ではないが、事業の質に対して値段は控えめだ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは二つに分かれる。一つは自社で作る製品で、売上は 104.5 億円あった。防じんマスク 40.0 億円、防毒マスク 36.5 億円、送気マスク 6.0 億円、その他の呼吸用保護具 17.5 億円、その他 4.4 億円だ。マスクの本体だけでなく、防毒マスクの吸収缶や防じんマスクのフィルターなど、使えば捨てる部品が大きな割合を占める。
もう一つは仕入れて売る商品で、売上は 51.4 億円あった。柱は消防や化学工場で使う自給式の空気呼吸器 36.6 億円だ。会社はエア・ウォーター防災の国内の総代理店で、商品の仕入れの 7 割がここから来る。利幅は製品より薄い。
売り先は工場、建設、造船、消防、病院と幅広い。工具や安全用品の問屋を通して売ることが多く、最大の販売先はトラスコ中山で、売上の 1 割強を占める。海外へも 22 億円を売り、その 4 分の 3 はアジア向けだ。
工場は福島県の白河と二本松、埼玉に持つ。2026 年 1 月に福島の第二船引工場に第三工場が完成し、4 月から吸収缶の生産を埼玉から移した。建設費の大半は 43 億円の協調融資で賄った。
優良さと弱いところ
優良さは「中の上」と筆者は見る。防じん・防毒マスクは国の型式検定に通らないと売れず、労働安全衛生の法令で使う義務がある。検定を通すには試験と設備が要り、新しい会社が入りにくい。国内のこの市場は、興研と重松が大半を分け合う。
交換部品が繰り返し売れることも強みだ。吸収缶は有毒ガスを吸うと寿命が来るので、使う現場では定期的に買い直す。景気が落ちても工場が動く限り需要は残り、過去 12 年に赤字の年は無い。
ただし利幅は薄い。全社の営業利益率は過去 12 年で 0.6〜7.6% だった。売上の 3 分の 1 を占める仕入れ商品は利幅が小さく、マスクも問屋を通すので値上げは段階的だ。資本の効率も高くなく、ROE の中央値は 7.2% で資本コストの前後にある。新工場で借金が増えたが、利払いは営業利益の 1 割未満にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の呼吸用保護具の市場は、成熟しているが細ってはいない。工場や建設で働く人は少しずつ減るが、法令が保護具の範囲を広げてきた。2024 年 4 月には化学物質の自律的な管理が始まり、危険を見積もる対象の物質が数百から 2,900 ほどに増える。防毒マスクの吸収缶の選び方も細かく決められ、この 2 年の需要を押し上げた。
粉じんの規則も厳しくなった。2023 年からは、溶接の煙を測って適したマスクを選ぶことが義務になった。マスクがきちんと顔に合っているかを確かめる試験も、決まった作業で毎年求められる。これらは単価の高い製品と、試験の機器の需要を生む。
競争は国内 2 強が中心だ。海外の大手の 3M なども入っているが、国の検定と問屋の販路がある国内勢の地位は崩れていない。安い輸入品は使い捨ての防じんマスクの一部で競う。
心配は人の数だ。製造業と建設業で働く人は 10 年で 1 割近く減る見込みがある。筆者は 10 年で数量 3% 増、単価は物価並みの 1.34 倍、営業利益率は今の 6.8% から 7.4% へ少し上がる形を中立に置いた。
資本政策と M&A
資本の使い方は、ここ数年は設備が最優先だった。第三工場に 43 億円をかけ、2025 年 7 月に 2040 年までの協調融資を組んだ。融資には純資産を一定以上に保つことと、経常損失を続けないことの約束が付く。定期預金を入れた純負債は 2026 年 3 月末で 52 億円ほどある。
配当は年 15 で総額 1.1 億円、配当性向は 15% と低い。自社株買いはしていない。中期経営計画の数値目標は策定中で、資本コストを意識した方針はまだ示されていない。
工場の補助金 7.41 億円は 2026 年 8 月に受け取り、今期の特別利益になる。設備の投資が一巡すれば、営業キャッシュフローは借金の返済に回せる。
投資有価証券は 23 億円あり、理研計器や川崎重工業など取引先の株が中心だ。配当は利益に入っているので価値には足さず、悲観の床としてだけ見た。親会社は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
法令が需要を押し上げている。2024 年の化学物質の管理の変更で、危険を見積もる対象の物質が大きく増えた。現場はマスクと吸収缶を選び直し、交換の頻度も上がる。2026 年 3 月期の売上は過去最高で、今期も伸びる予想だ。
新工場は効率を上げる。吸収缶の生産を一か所に集めれば、人手の不足の中でも量を増やせる。2027 年 3 月期の第 1 四半期は営業利益が前年の 20 倍になり、移設の費用が抜けた効果が出ている。
国内 2 強の地位は固い。国の検定と問屋の販路を持つ新しい会社は現れていない。興研は 2026 年に値上げを通しており、重松も追いつける。輸出もアジアの工業化で伸ばせる。
資産もある。投資有価証券 23 億円と補助金 7 億円で、借金の負担はすぐ軽くなる。投資が一巡すれば、配当性向 15% は引き上げられる。中期経営計画で還元の方針が示されれば、評価は変わる。
興研の中立の倍率と比べても、重松の今の値段は控えめだ。同じ検定品の 2 強で、利幅の差ほど値段の差は無いはずだ。新工場の効率が数字に出始めれば、市場の見方は一段上がる。
慎重な見方
利幅は薄いままだ。過去 12 年の営業利益率の最高は 7.6% にすぎない。売上の 3 分の 1 は輸入の呼吸器を仕入れて売る商品で、仕入れ先との契約が変われば失う。値上げは問屋を通すので遅れ、原料や人件費の上昇にいつも追いかける形になる。
法令の追い風は一度きりだ。2024 年の規則の変更で増えた需要は、選び直しが終われば落ち着く。製造業と建設業で働く人は減り、マスクを使う人の数は 10 年で細る。
借金は重くなった。新工場で借入は 76 億円に増え、融資には純資産と経常損益の約束が付く。金利が上がれば利払いは増える。新工場の稼働が想定を下回れば、償却が利益を削る。
資本の効率も低い。ROE は資本コストに届かず、配当性向は 15% にとどまる。現金は株主に戻らず、取引先の株を持ち続けている。オーナーの視点では、ためた利益の価値は額面より低い。
興研との差もある。興研は自社開発の電動ファン付きマスクと医療・空調の別の柱を持つが、重松はマスクと代理販売の二本だけだ。片方が崩れた時の逃げ場が少ない。
どちらに重みを置いたか
法令の追い風が一度きりという点は慎重な見方に分があり、中立の数量は 3% 増にとどめた。一方、検定品の交換部品が繰り返し売れる底堅さと、新工場の移設費が抜ける効果は前向きな見方の勝ちだ。中立に 38% を置き、楽観側に 32%、悲観側に 30% と、わずかに楽観に寄せた。借金の重さは新工場の投資が一巡すれば軽くなる道筋が見えているので、悲観の確率は大きくしなかった。代理店契約を失う恐れは悲観の筋書きに入れた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,737 円123 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 280 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 1,016 円72 億円、今との差 +19.5%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 2,776 円197 億円 | 422 円30 億円 | +276.2% | +14.2% | 320 円23 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,250 円160 億円 | 352 円25 億円 | +206.1% | +11.8% | 572 円41 億円 |
| 中立 | 38% | 1,930 円137 億円 | 281 円20 億円 | +160.2% | +10.0% | 840 円60 億円 |
| やや悲観 | 20% | 1,027 円73 億円 | 211 円15 億円 | +45.7% | +3.8% | 248 円18 億円 |
| 悲観 | 10% | 252 円18 億円 | 112 円8 億円 | −57.2% | −8.1% | 36 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,737 円123 億円 | 280 円20 億円 | +137.2% | +9.0% | 2,016 円143 億円 |
今の株価時価総額 850 円60 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 法令の追い風が続き、新工場で利幅が過去最高を超える 利益 15 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 2,776 円197 億円
化学物質の自律的な管理が現場に根づき、対象の物質はさらに増える。防毒マスクと吸収缶の交換の頻度が上がり、マスクにきちんと合うかを確かめる試験も広がる。製品の数量は 10 年で 15% 増える。
新工場で吸収缶の生産が一か所に集まり、人手の不足の中でも効率が上がる。値上げは興研と足並みをそろえて定着し、単価は物価を上回って 1.42 倍になる。輸出もアジアの工業化で伸びる。
営業利益は 22 億円に届き、借金は投資の一巡で半分以下に減る。純利益は 15 億円で、配当性向は 3 割に上がる。ROE は 8% を超え、資本コストを上回る。
- 自社製品(マスク・交換部品):数量 34.5(本体と交換部品の出荷(百万個・推定))× 価格 494(1 個あたりの単価(円))→ 売上 170 億円・営業利益 19 億円。数量 15% 増。単価は高機能品と値上げで 1.42 倍
- 仕入れ商品(空気呼吸器など):数量 11,330(販売台数(台・推定))× 価格 70(1 台あたりの単価(万円))→ 売上 79 億円・営業利益 3 億円。台数 1 割増。単価は物価並み
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 2.0% g_long の理由で から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.07 倍、時価総額 197 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 8.9% は過去 12 年の山 7.6% を超える。化学物質の規則の広がりと新工場の効率、値上げの三つが揃う必要があり 10%。
やや楽観 22% 交換部品が伸び、利幅が過去の山の水準に定着する 利益 12 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,250 円160 億円
規則の変更で増えた需要は落ち着くが、選び直した現場は吸収缶を定期的に買い続ける。製品の数量は 10 年で 8% 増え、高機能のマスクへの移りで単価は物価より少し速く上がる。
新工場の移設の費用は 2027 年 3 月期で抜け、原価率は改善する。仕入れ商品は台数が横ばいで、代理店の契約は続く。
営業利益は 18 億円になり、借金は着実に減る。純利益は 12 億円台で、配当性向は 25% ほどに上がる。ROE は資本コストとほぼ同じ 7% 台になる。
輸出はアジアの工場の安全規則が厳しくなる流れに乗り、少しずつ伸びる。中期経営計画では還元の方針が示され、配当は利益に合わせて増える。
- 自社製品(マスク・交換部品):数量 32.4(本体と交換部品の出荷(百万個・推定))× 価格 480(1 個あたりの単価(円))→ 売上 156 億円・営業利益 16 億円。数量 8% 増。単価は物価より少し上の 1.38 倍
- 仕入れ商品(空気呼吸器など):数量 10,300(販売台数(台・推定))× 価格 68(1 台あたりの単価(万円))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円。台数は横ばい。単価は物価並み
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 160 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 8.0% は過去 12 年の山 7.6% をわずかに上回る程度で、新工場の移設費が抜ければ届く水準として 22%。
中立 38% 数量はほぼ横ばい、単価が物価並みに上がり営業利益は 15 億円台 利益 11 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 1,930 円137 億円
2024 年の規則の変更で増えた需要は数年で落ち着く。その後は、法令が保護具の範囲を少しずつ広げる力と、工場や建設で働く人の減りが打ち消し合う。製品の数量は 10 年で 3% 増にとどまり、単価は物価並みに 1.34 倍になる。
仕入れ商品の空気呼吸器は消防と化学工場の更新の需要で台数が横ばい、利幅は 3% のままだ。新工場の移設費は抜け、製品の利幅は 9% 台に戻る。
減価償却は新工場の分が乗った 9 億円前後から大きくは増えない。古い設備の償却が終わる分を、更新の投資の新しい値段の償却が埋める。営業利益は 15 億円台、純利益は 10 億円台になる。借金は返済が進むが、運転資金の分は残る。配当性向は 2 割ほどで、ROE は 6% 台にとどまる。
- 自社製品(マスク・交換部品):数量 30.9(本体と交換部品の出荷(百万個・推定))× 価格 466(1 個あたりの単価(円))→ 売上 144 億円・営業利益 13 億円。数量 3% 増。単価は物価並みの 1.34 倍
- 仕入れ商品(空気呼吸器など):数量 10,300(販売台数(台・推定))× 価格 67(1 台あたりの単価(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 2 億円。台数は横ばい。単価は物価並み
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 137 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去 12 年の営業利益率は 0.6〜7.6% で、直近 6 年は 4.6〜7.6%。移設費が抜けた後の 7.4% を中心に置き、最も起こりやすい形として 38%。
やや悲観 20% 追い風が止み、値上げが原価に追いつかない 利益 6 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 1,027 円73 億円
規則の変更で増えた需要は 2 年ほどで止み、工場や建設で働く人の減りが表に出る。製品の数量は 10 年で 5% 減る。値上げは問屋を通して遅れ、原料と人件費の上昇に追いつかず、単価は物価に届かない。
新工場は稼働が想定に届かず、償却が利益を削る。仕入れ商品は代理店の取引条件が厳しくなり、台数も減る。
営業利益は 9 億円ほどにとどまり、借金の利払いが増えて純利益は 6 億円を切る。配当は据え置き、ROE は 4% 弱になる。
融資の約束は守れるが、借金の返済に現金が回り、株主への還元は増えない。2017〜2019 年の利益の細った時期に近い姿で、検定品の地位は残るが稼ぐ力は弱い。
- 自社製品(マスク・交換部品):数量 28.5(本体と交換部品の出荷(百万個・推定))× 価格 425(1 個あたりの単価(円))→ 売上 121 億円・営業利益 8 億円。数量 5% 減。値上げが遅れ単価は 1.22 倍
- 仕入れ商品(空気呼吸器など):数量 9,500(販売台数(台・推定))× 価格 62(1 台あたりの単価(万円))→ 売上 59 億円・営業利益 1 億円。台数 8% 減。単価は物価に届かない
倍率:ROE 3.9% が k 7.75% を大きく下回るので、価値は稼ぐ力(純利益 5.8 億円÷k ≒ 80 億円)が上限。利益の質を割り引いて 1÷k の 80% の 11.0 倍。PBR では 0.43 倍。
確率:2017〜2019 年は営業利益率 1% 前後だった。新工場の償却と人件費の上昇が重なれば 5% 割れは起こりうる水準で 20%。
悲観 10% 需要が縮み利幅が消え、新工場の借金が重荷になる 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 252 円18 億円
工場や建設で働く人の減りが速く、使い捨ての防じんマスクは安い輸入品に押される。製品の数量は 10 年で 2 割減り、値上げは通らない。
空気呼吸器の代理店の契約の条件が悪化し、仕入れ商品の利幅は消える。新工場の償却と利払いが重く、営業利益は 2 億円前後に沈む。
融資の約束を守るために配当を絞り、借金の返済を優先する。純利益はほぼゼロで、稼ぐ力では価値を測れない。株主に残るのは、取引先の株と工場の資産だ。
検定品の地位そのものは残るので、会社が消えるわけではない。ただし稼ぐ力で測る価値はほとんど無く、借金を差し引くと株主の取り分は薄い。
- 自社製品(マスク・交換部品):数量 24.0(本体と交換部品の出荷(百万個・推定))× 価格 383(1 個あたりの単価(円))→ 売上 92 億円・営業利益 2 億円。数量 2 割減。単価は 1.10 倍
- 仕入れ商品(空気呼吸器など):数量 8,000(販売台数(台・推定))× 価格 58(1 台あたりの単価(万円))→ 売上 46 億円・営業利益 0 億円。台数 2 割減。代理店の契約の条件が悪化
倍率:ほぼ赤字なので PBR。稼ぐ力(純利益 0.5 億円÷k ≒ 7 億円)より床の資産が大きいので、床の 18 億円(今の自己資本 94.4 億円の 0.19 倍)。EV(18+純負債 52 億円)÷営業利益 1.8 億円は 38 倍と高く見えるが、谷の利益で測っているためで、価値は床の資産で決まる。
確率:2017〜2019 年に営業利益 1 億円未満の年が 3 年続いた実績があり、仕入れ先との契約を失う恐れも重なれば起こりうるので 10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自社製品(マスク・交換部品)
防じん・防毒・送気マスクとその他の呼吸用保護具、吸収缶・フィルターなどの交換部品。国内は問屋経由、輸出はアジア中心。
| 数量本体と交換部品の出荷(百万個・推定) | 価格1 個あたりの単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 348 | 104 | 9 |
| 10 年後 中立 | 30.9 | 466 | 144 | 13 |
取り方:売上は有報の品目別の製品売上 104.5 億円。出荷の数は開示が無く、使い捨ての防じんマスクやフィルターなど安い品が多いので 3,000 万個と推定し、単価は売上÷数量。営業利益は単一セグメントで開示が無く、全社 10.54 億円のうち製品に 9.04 億円と推定(利幅の薄い商品の分を引いた残り)。
仕入れ商品(空気呼吸器など)
エア・ウォーター防災の国内総代理店として仕入れる自給式の空気呼吸器と、その他の保護具。消防・化学工場向け。
| 数量販売台数(台・推定) | 価格1 台あたりの単価(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,300 | 50 | 52 | 2 |
| 10 年後 中立 | 10,300 | 67 | 69 | 2 |
取り方:売上は有報の商品売上 51.4 億円(自給式呼吸器 36.6 億円を含む)。台数は開示が無く、呼吸器と周辺品をならして 1 台 50 万円とみて 1 万 300 台と推定。営業利益は開示が無く、仕入れて売る商品なので売上の 3% 弱の 1.5 億円と推定。
リスクと懸念
仕入れ商品の代理店契約
売上の 3 分の 1 は仕入れて売る商品で、柱の自給式の空気呼吸器はエア・ウォーター防災の国内総代理店として扱う。商品の仕入れの 7 割がこの 1 社だ。契約の条件が変われば、売上と利益の一部を失う。
新工場の借金と融資の約束
第三工場に 43 億円の協調融資を組み、借入は 76 億円に増えた。純資産を保つことと経常損失を続けないことの約束が付く。稼働が想定を下回れば、償却と利払いが利益を削る。
法令の追い風の一巡
2024 年の化学物質の管理の変更で防毒マスクと吸収缶の需要が増えた。現場の選び直しが終われば、伸びは落ち着く。2027 年 3 月期以降の数量の伸びが鈍るおそれがある。
働く人の減り
マスクを使うのは工場、建設、造船の現場だ。こうした仕事で働く人は 10 年で 1 割近く減る見込みがある。法令の広がりで補えなければ、数量が細る。
値上げの遅れ
問屋を通して売るので、原料と人件費の上昇を売値に乗せるまで時間がかかる。過去 12 年の営業利益率の最高は 7.6% で、原価が急に上がれば利幅はすぐ縮む。
今後の分かれ目
- 中期経営計画で配当性向や ROE の数値目標が示される
- 資本の使い方が株主寄りに変わったとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 2028 年 3 月期に営業利益率が 8% を超える
- 新工場の効率と値上げが効いているとみて、中立の利幅を引き上げる。
- エア・ウォーター防災との代理店契約の変更が開示される
- 仕入れ商品の利益が揺らぐとみて、悲観側の確率を上げる。
- 製品の売上が 2 年続けて減る
- 法令の追い風が一巡したとみて、中立の数量を引き下げる。
- 純負債が 30 億円を下回る
- 投資が一巡し現金が株主に回り始めたとみて、やや楽観に寄せる。
見ておくもの
- 品目別の製品売上(防毒・防じん・送気)と吸収缶の伸び
- 仕入れ商品の売上と自給式呼吸器の動き
- 営業利益率と原価率
- 借入金の残高と設備投資の額
- 中期経営計画の還元の方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE と k 7.75% から出し、今の PER(2027 年 3 月期の会社予想で約 8 倍)や過去の PBR は見ていない。補助金 7.41 億円は一度きりなので、期間の利益にだけ入れ、10 年後の利益には入れていない。中立の営業利益率 7.4% は過去 12 年の山 7.6% 以下。減価償却は物価で増やさず、第三工場の分だけ足して 9 億円前後。純負債は定期預金を入れて 52 億円で見た。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→13.07 倍・やや楽観 PER 13.3→12.9 倍・中立 PER 12.1→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality −0.25% = 7.25%。同じ領域の興研は 7.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 7.75%。