結論
ニホンフラッシュは、マンション向けの室内ドアと収納を作る会社だ。売上の 4 割が日本、6 割が中国。日本は営業利益率が 14% の安定した本業で、中国は不動産不況の中で売上が縮み、利益が薄い。筆者は、日本の稼ぐ力と厚い現金は評価できるが、中国の売掛金の傷が価値を押し下げ続けると見る。10 年の価値は今の時価総額を 2 割ほど下回り、やや割高だ。
利益の源は日本だ。2026 年 3 月期の日本の営業利益は 14 億円で、全社の 8 割を占める。マンション向け内装ドアは国内首位級で、受注ごとに仕様を変えて効率よく作る「マス・カスタマイゼーション」が強みだ。
中国は事情が違う。デベロッパー向けが売上の 88% を占めていたが、不動産会社 108 社のうち 59 社が赤字という状況で、回収が焦げついた。2025 年 3 月期は貸倒引当で赤字に沈み、売掛金は今も 132 億円残る。代物弁済で受け取った投資不動産が 27 億円ある。
会社は販売先を、ルート販売・ホテル・輸出へ広げる構造改革を進める。ただ計画の売上は 2028 年 3 月期に 139 億円と、強気に見える。筆者は、中国の規模が 3 割ほど縮んだまま続く筋書きを中心に置いた。
財務は堅い。自己資本比率は 72%、純現金は 32 億円。配当は維持する見通しだが、自己資本が稼ぎに対して厚すぎ、ROE は 4% 台にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず本業の質を見る。日本の内装ドアは、受注ごとの仕様に合わせて量産する強みがあり、営業利益率 14% は立派だ。10 年後も住宅は建てられ、ドアは要る。ただ新築の数は減るので、成長は期待しない。
次に、資本の使い方を問う。会社は、中国で売上を伸ばすために与信を許し、結果として大きな損失を出した。この判断は学びの対象だ。いま売掛金 132 億円が残るなら、その回収が最優先で、自己資本は見かけほど稼ぐ力にならない。
厚い現金は安全域になる。純現金 32 億円、自己資本比率 72% で、倒産の心配はほぼない。ただ、少数株主は現金の使い方を決められない。中国への資金の流出が最大の懸念だ。
筆者は、日本の稼ぎ 14 億円に控えめな倍率をつけ、中国は黒字を保てれば上々と見る。純資産の半分以下という値付けは、一見すると割安に映る。だが自己資本の中身は現金と中国の売掛金で、稼ぐ力に結びつかない。そこを越える価値があるかは、回収の実績で確かめるしかない。
何で稼ぐ会社か
事業は日本と中国の 2 つに分かれる。売上は日本 99 億円、中国 136 億円(2026 年 3 月期)。
日本は、マンションと戸建ての室内ドア、収納、造作材を作って建材商社や住宅会社、ゼネコンに売る。フラッシュ工法は、骨組みに薄い板を貼る軽くて安いドアの作り方だ。受注のたびに寸法や仕様が違うため、少量多品種を安く作る「マス・カスタマイゼーション」を強みとする。国内では流通経費を減らし、販売価格の適正化も進めた。
中国は、上海・昆山・青島・江西に現地法人を持ち、マンションの内装ドア、家具、流し台を開発業者に納める。売上の 88% がデベロッパー向けだった。ここが不動産不況で崩れ、与信を絞って販売先を入れ替えている。2026 年 3 月期の営業利益は 3.3 億円で、前の期の赤字からは戻った。
新しい柱として、ホテル向けの防火・高遮音ドア、店舗の什器、輸出(台湾の潤泰グループとの代理店契約、中東)を育てる。投資不動産は、中国の取引先から代物弁済で受け取った物件で、運用か売却を進めている。
優良さと弱いところ
強みは日本の量産力だ。マンション向け内装ドアは国内首位級で、少量多品種の受注をこなす生産の仕組みが、他社に真似されにくいとみられる。営業利益率は日本で 14% と、建材では高い。ここが会社の稼ぎのほとんどを支えている。
弱みは中国の与信だ。納入先のデベロッパーが資金繰りに窮すると、売った代金が回収できない。2025 年 3 月期に貸倒引当と投資不動産の減損で 27 億円の最終赤字を出した。売掛金はなお 132 億円あり、うち引当は 33 億円。回収の見通しが最大の不確実性だ。
資本の使い方には課題がある。自己資本 318 億円に対し純利益は 14 億円で、ROE は 4% 台。ここ 10 年の中央値 12.5% を大きく下回る。厚い現金を持ちながら、自社株買いは行っていない。配当は安定するが、積み上がる現金が資本効率を押し下げる。
ガバナンスでは、中国子会社の資金回収と統制が肝になる。過去の判断(与信を伸ばして売上を追ったこと)の検証が欠かせない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
日本の内装建具は、住宅の新築着工の量と単価で決まる。新設住宅着工は 2025 年に 74 万戸と 62 年ぶりの低水準で、人口減少でさらに細る。ただマンションは都市部で底堅く、リフォームや非住宅(ホテル・オフィス・施設)が補う。建築費の上昇で住宅価格は上がり、建具の単価も物価並みに上げやすい。競合はパナソニックや大建工業などの大手で、ニホンフラッシュはマンション向けの内装ドアに強い。
中国は別の世界だ。不動産の最終赤字は 108 社中 59 社に達し、政府の支援策の効果も限られる。デベロッパー向けの納入は 3 年続けて減り、会社の計画でも 2028 年 3 月期に 41 億円と、2026 年 3 月期の 120 億円から 3 分の 1 に縮む。需要が戻るにしても、新築マンション市場が中国の過去のピークに戻る見通しは立たない。
会社は、その穴をルート販売・ホテル・輸出で埋める計画だ。ルート販売は代理店を使うので回収が早く、与信の傷も小さい。ホテル向けの防火・高遮音ドアは単価が高い。ただ、デベロッパー向け以外の売上は 2028 年 3 月期に 98 億円と、2026 年 3 月期の 16 億円から大きく伸ばす計画になる。筆者は、半分の達成でも成功と見る。
人件費・物流費・原材料の上昇は日本でも中国でも続く。日本では価格転嫁が進み、中国では値引きの圧力が強い。ここに差がつく。
資本政策と M&A
配当は年 8 億円を、赤字の期も維持してきた。2026 年 3 月期の配当性向は 58% だ。利益剰余金が厚いため、業績に応じて安定的に払う方針である。自社株買いは行っていない。
過去に買った自己株式が 21 億円分残る。現預金 56 億円に対し有利子負債は 24 億円ほどで、純現金は 32 億円。時価総額の 2 割にあたるが、中国子会社に滞留する分と、運転資金(売掛金 132 億円)を考えると、すべてが余った現金ではない。
M&A は目立たない。中国の取引先から代物弁済で得た投資不動産 27 億円は、収益性を見て運用する方針だ。台湾の潤泰グループとは代理店契約を結んでおり、資本提携ではない。TOB の確率は kabufu の推定で 28% と高めだが、中国の不透明さが障害になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
日本は、受注ごとの仕様に合わせて量産する仕組みがあり、価格の適正化も進めた。営業利益率は 14% と建材で高く、2015 年 3 月期には 18% まで届いた。マンション向けの首位級の地位に加え、収納やホテルなど非住宅に広げれば、1 戸あたりの売上が伸びる。
中国は構造改革で入れ替えが進んでいる。デベロッパー向けの比率を 88% から 30% へ下げ、ルート販売・ホテル・輸出で 2028 年 3 月期に 139 億円を目指す。台湾の潤泰グループという現地の大手が代理店になり、中東の再開も控える。貸倒引当は前期より 24 億円減り、中国の営業利益は赤字から黒字に戻った。
財務は盤石だ。自己資本比率 72%、純現金 32 億円で、純資産の半分以下という値付けは、売掛金の傷を織り込んでも行き過ぎに見える。中国が普通の黒字に戻るだけで、利益は倍になる。中国の売掛金の回収と投資不動産の売却が進めば、現金も増えて自社株買いの余地が生まれる。
慎重な見方
良い数字の多くは、前期の悪さが消えた反動だ。2026 年 3 月期の営業利益 17 億円は、貸倒引当の減少による戻りで、2027 年 3 月期の会社計画は営業利益が 20% 減る。中国の売上は 3 割縮み、デベロッパー向けの比率が下がるとはいえ、残る売掛金 132 億円の回収は見通せない。
中国の不動産不況は 3 年連続で悪化し、108 社中 59 社が赤字だ。ホテルや輸出は、まだ売上がほぼゼロの新規事業で、2028 年 3 月期の 98 億円という計画は現実離れしている。代物弁済で取得した投資不動産は、市場が弱い中で売れない可能性がある。
日本も安泰ではない。新設住宅の着工は 62 年ぶりの低水準で、人口減少でさらに縮む。大手の建材メーカーとの価格競争も強い。
資本効率の低さは構造的な問題だ。ROE は 4% 台で、現金を溜めても株主には返ってこない。少数株主は、中国への資金の流出に歯止めをかけられない。
どちらに重みを置いたか
日本の稼ぎと厚い現金は確かな強みだが、中国の売掛金の傷は大きく、資本効率の低さも続く。慎重な指摘のうち、中国の回収と価格の弱さは中立にそのまま織り込み、悲観の確率を 1 割強に厚くした。一方、純資産の半分以下という水準は、日本の稼ぎと現金だけでほぼ説明できるため、強気の見方に一定の理がある。確率は、楽観 8%・やや楽観 20%・中立 37%・やや悲観 23%・悲観 12%。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 943 円215 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 329 円75 億円)。 今の値に割り戻すと 660 円150 億円、今との差 −1.0%、 期待の年率 +6.7%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,522 円346 億円 | 446 円101 億円 | +195.0% | +11.4% | 157 円36 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,296 円295 億円 | 378 円86 億円 | +151.0% | +9.6% | 335 円76 億円 |
| 中立 | 37% | 1,187 円270 億円 | 363 円83 億円 | +132.4% | +8.8% | 573 円130 億円 |
| やや悲観 | 23% | 411 円93 億円 | 292 円67 億円 | +5.4% | +0.5% | 162 円37 億円 |
| 悲観 | 12% | 238 円54 億円 | 132 円30 億円 | −44.6% | −5.7% | 44 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 943 円215 億円 | 329 円75 億円 | +90.7% | +6.7% | 1,272 円289 億円 |
今の株価時価総額 667 円152 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 中国は販売先を入れ替えて復活し、日本は収納と非住宅で伸びる 利益 26 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 1,522 円346 億円
中国は、与信の低いデベロッパー向けを減らし、ルート販売・ホテル・輸出に軸足を移す構造改革が成功する。台湾の潤泰グループ経由の販売や中東の再開も加わり、納入は今の水準(約 30 万戸相当)に戻る。価格は中国の値引き競争が一巡して 1.25 倍。営業利益率は 7% まで戻る。
日本は収納・造作材とホテルなど非住宅で売上を広げ、1 戸あたりの売上が 1.4 倍になる。営業利益率は 15.5% で、2015 年 3 月期の水準に近づく。全社の営業利益は 33 億円、純利益は 26 億円。ROE は 6% 台に上がるが、積み上がった現金が重く、資本コストにはなお届かない。
- 日本(内装ドア・収納・造作材):数量 3.9(納入(万戸相当・推定))× 価格 35(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 21 億円。3.9 万戸相当 × 1 戸 1.4 倍、営業利益率 15.5%
- 中国(内装ドア・家具・流し台):数量 30.0(納入(万戸相当・推定))× 価格 5.60(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 168 億円・営業利益 12 億円。30.0 万戸相当(今と同じ)× 1 戸 1.25 倍、営業利益率 7%
倍率:事業の純利益 26 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 13.12 倍、時価総額 346 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中国の販売先の入れ替えが計画どおり進み、住宅市況も底を打つ前提が重なる。会社の計画(2028 年 3 月期に中国の売上 139 億円)の達成が前提になるが、中国の不動産は 3 年連続で悪化しており、実現は難しい。8% にとどめた。
やや楽観 20% 日本は着実、中国は規模を縮めて黒字を保つ 利益 20 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 1,296 円295 億円
日本は、マンション向け内装ドアの首位級の地位を守り、収納やホテル向けの水平展開で売上が 1 戸あたり 1.37 倍に上がる。新設住宅の着工は減るが、売上の減りは 1 割ほどに抑える。
中国は規模が縮み、納入は今の 85% の 26 万戸相当。ただ、回収の確かなルート販売と非住宅が増えて黒字を保つ。営業利益率は 5.5%。全社の営業利益は 25 億円、純利益は 20 億円で、配当は今の額を維持できる。現金は積み上がり、ROE は 5% にとどまる。中立との差は、日本の営業利益率が 1 ポイント高いことと、中国の納入が 3 割減でなく 15% 減で済むことだ。会社が示す中国の構造改革が、半分以上は実を結ぶ前提になる。
- 日本(内装ドア・収納・造作材):数量 3.7(納入(万戸相当・推定))× 価格 34(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 18 億円。3.65 万戸相当(今の 0.92 倍)× 1 戸 1.37 倍、営業利益率 14.5%
- 中国(内装ドア・家具・流し台):数量 26.0(納入(万戸相当・推定))× 価格 5.00(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 130 億円・営業利益 7 億円。26.0 万戸相当 × 1 戸 1.11 倍、営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 20 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 13.31 倍、時価総額 270 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日本の営業利益率が 14.5% を保てば成り立つ。中国は計画の 105 億円(2027 年 3 月期)より少し上で止まる筋書き。日本の黒字が続く可能性は高いが、中国の水準が読みにくいので 2 割にした。
中立 37% 日本は堅調、中国は規模を縮めて低採算にとどまる 利益 16 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 1,187 円270 億円
日本は、新設住宅着工の減少で納入が今の 0.86 倍に減るが、物価並みの値上げ(1.34 倍)を通して売上を守る。営業利益率は 13.5% と、今より少し低い。人手・原材料・物流の上昇を価格に移せるかが分かれ目だ。
中国は、住宅用の納入が 3 割減ったまま、ルート販売とホテル、輸出で下支えする。住宅市況が弱いため価格は 1.10 倍にとどまり、営業利益率は 4%。全社の営業利益は 20 億円、純利益は 16 億円。配当は今の額を保ち、現金は積み上がる。ROE は 4% で、資本コストを下回り続ける。
- 日本(内装ドア・収納・造作材):数量 3.4(納入(万戸相当・推定))× 価格 34(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 15 億円。3.4 万戸相当(今の 0.86 倍)× 1 戸 1.34 倍、営業利益率 13.5%(今は 14.3%)
- 中国(内装ドア・家具・流し台):数量 22.6(納入(万戸相当・推定))× 価格 4.95(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 112 億円・営業利益 5 億円。22.6 万戸相当(今の 0.75 倍)× 1 戸 1.10 倍(中国は住宅不況で値上げが通らない)、営業利益率 4%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)20 億円。全体の PER 13.54 倍、時価総額 215 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:日本の営業利益率 14% が続き、中国が 10 年かけて今の 6 割ほどの規模で安定する筋書き。日本の稼ぐ力と、中国の不動産不況が続く現実の間で、最も起こりやすい形として 4 割近くにした。
やや悲観 23% 日本の利益率が落ち、中国は回収難で低迷が続く 利益 8 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 411 円93 億円
日本は、新設住宅の着工減が加速し、納入が今の 0.76 倍に減る。価格の上げは 1.24 倍にとどまり、人件費と物流費の上昇で営業利益率は 10% に下がる。
中国は、デベロッパー向けの回収が滞って貸倒が再び出る。納入は今の半分の 15 万戸相当、価格は上がらず、営業利益率は 1% 止まり。全社の営業利益は 10 億円、純利益は 8 億円。配当は今の 7 割ほどに下げ、10 年の還元は 66 億円。自己資本の多くは現金と売掛金で、稼ぐ力は小さい。日本は着工減と価格競争で利益率が落ち、中国の売掛金は追加の引当を迫られるが、赤字が続く事態までは進まない。
- 日本(内装ドア・収納・造作材):数量 3.0(納入(万戸相当・推定))× 価格 31(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 93 億円・営業利益 9 億円。3.0 万戸相当(今の 0.76 倍)× 1 戸 1.24 倍、営業利益率 10%
- 中国(内装ドア・家具・流し台):数量 15.0(納入(万戸相当・推定))× 価格 4.50(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 68 億円・営業利益 1 億円。15.0 万戸相当(今の半分)× 1 戸 1.0 倍、営業利益率 1%
倍率:ROE 2.2% は k 8% を大きく下回る。稼ぎはほぼ維持だけで、新しい投資に超過利益はない。上限 1÷k=11.8 倍の 7 割弱の 8.0 倍。
確率:日本の営業利益率が 10% まで落ち、中国が実質赤字に近づく筋書き。中国の不動産は 3 年連続で悪化しており、日本も着工減が続く。ふたつが同時に起きる確率として 2 割強にした。
悲観 12% 中国の売掛金が焦げつき、日本も着工減で利益が消える 利益 3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 238 円54 億円
中国の不動産不況が 10 年続き、デベロッパー向けの売掛金 100 億円ほどが回収できなくなる。投資不動産(代物弁済で得た 27 億円)も値下がりし、あわせて 60 億円の損失になる。中国の納入は今の 3 割の 8 万戸相当に縮み、営業赤字が続く。
日本も、着工の減少で納入が 0.66 倍に減り、価格が 1.16 倍までしか上がらない。営業利益率は 6%。全社の営業利益は 2 億円にとどまる。受取利息と配当で純利益は 2〜3 億円。配当は 3 億円に縮む。自己資本は損失の分だけ減り、市場は稼ぐ力でなく手元の資産で値付けする。
- 日本(内装ドア・収納・造作材):数量 2.6(納入(万戸相当・推定))× 価格 29(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 75 億円・営業利益 5 億円。2.6 万戸相当(今の 0.66 倍)× 1 戸 1.16 倍、営業利益率 6%
- 中国(内装ドア・家具・流し台):数量 8.0(納入(万戸相当・推定))× 価格 4.50(1 戸あたり売上(万円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 −3 億円。8.0 万戸相当(今の 3 割)× 1 戸 1.0 倍、営業赤字(利益率 −8%)
倍率:稼ぐ力はほぼ無い。今の自己資本 318 億円に 0.17 倍をかけて 54 億円。中国への現金流出と売掛金の損失で、少数株主は純資産の多くを受け取れない。値は床の資産 70 億円の内側に収まる。
確率:中国の不動産不況が続いて売掛金と投資不動産に大きな損失が出て、日本も住宅着工の減少で収益力を失う構造的な負けの筋書き。親会社の現金が中国の穴埋めに使われる。1 割強にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(内装ドア・収納・造作材)
マンションと戸建ての室内ドア、収納、造作材を作り、建材商社・住宅会社・ゼネコンに売る。
| 数量納入(万戸相当・推定) | 価格1 戸あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 25 | 99 | 14 |
| 10 年後 中立 | 3.4 | 34 | 114 | 15 |
取り方:日本セグメントの売上 98.98 億円と営業利益 14.19 億円。数量は開示がないので、住戸 1 戸あたりの内装建具の納入額を約 25 万円と推定し、約 4 万戸相当とした(推定)。
中国(内装ドア・家具・流し台)
上海などの現地工場・販売会社で、マンションの内装ドア・家具・流し台をデベロッパーに納める。
| 数量納入(万戸相当・推定) | 価格1 戸あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.1 | 4.50 | 136 | 3 |
| 10 年後 中立 | 22.6 | 4.95 | 112 | 5 |
取り方:中国セグメントの売上 135.57 億円と営業利益 3.26 億円。数量は開示がないので、1 戸あたり約 4.5 万円と推定し、約 30 万戸相当とした(推定)。中国の価格は住宅不況で物価並みには上がらないと見る。
リスクと懸念
中国の売掛金の回収
売掛金は 132 億円あり、うち引当は 33 億円。中国のデベロッパーが破綻すると、回収できない分が追加の損失になる。2025 年 3 月期には貸倒と減損で最終赤字を出した。再発すれば自己資本が一気に減る。
中国の不動産不況
不動産会社の最終赤字は 108 社中 59 社。政府の支援策の効果は限られる。デベロッパー向けの納入は会社計画でも 3 分の 1 に縮み、住宅向けの価格は値引き圧力が続く。中国の売上と利益率は、10 年を通じて低いままでもおかしくない。
日本の着工減と大手との競争
新設住宅の着工は 74 万戸と 62 年ぶりの低水準で、人口減少でさらに減る。パナソニックや大建工業などの大手が価格で攻めれば、首位級のマンション向けでも利益率が下がる。建築費の上昇を価格に移せるかが鍵になる。
資金の流出と統治
中国子会社への貸付や出資で、親会社の現金が使われる恐れがある。少数株主は現金の使い方を決められない。純現金 32 億円は、中国に滞留する分と運転資金を引くと、実質の余裕は小さくなる。
代物弁済の投資不動産
取引先から受け取った投資不動産は 27 億円。中国の市況が弱いままだと、売却益は出ず、減損の再発もありうる。収益性を見て運用する方針だが、日本の事業と関係が薄い資産を抱えている。
為替と原材料・物流
売上の 6 割が中国で、人民元の変動が円換算の利益を動かす。木材・合板・接着剤の価格や、物流費の上昇も利益率に響く。新たに進出した中東は、情勢の悪化で営業活動が止まっている。
新リース会計基準
2028 年 3 月期から、賃借の建物・倉庫がリース負債として貸借対照表に載る。自己資本比率は少し下がって見え、営業利益の形も変わる。価値は変わらないが、見え方に注意が要る。
今後の分かれ目
- 中国の売掛金が 100 億円を下回るペースで回収される
- 貸倒の再発がなく、中国が黒字を保つ証拠になる。やや楽観の確率を厚くできる。
- 中国のルート販売・ホテル・輸出の合計売上が 2027 年 3 月期に 50 億円を超える
- 構造改革が機能している。デベロッパー向けの縮小を補え、中立の中国の規模を引き上げる。
- 中国で追加の貸倒や投資不動産の減損が 20 億円を超える
- 売掛金の傷が深い。やや悲観の筋書きに近づき、自己資本の評価を下げる。
- 日本の営業利益率が 12% を割る
- 価格転嫁が止まり、大手との競争が激しくなっている。日本の稼ぐ力の評価を下げる。
- 自社株買いや増配など、現金を株主に返す決定が出る
- 厚い現金が評価に結びつく。戻り方の見方が上がり、価値が増える。
- 投資不動産が簿価以上で売却される
- 27 億円の現金化が進み、財務の余裕が増す。
見ておくもの
- 中国の売掛金残高と貸倒引当金の増減
- 中国の販売先別売上(デベロッパー・ルート・ホテル・輸出)
- 日本の営業利益率と新設住宅の着工戸数
- 投資不動産の売却と減損
- 配当・自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は、資本コスト 8%(基本 7.5% に、中国の景気循環 +0.5%・値決め力の弱さ +0.25%・寿命 +0.25%)と ROE から式で出した。今の PBR 0.47 倍や過去の PER は見ていない。ROE が 4〜6% と資本コストを下回るので、PER の上限は 1÷k=11.8 倍で、その 8 割前後に置いた。
本業の利益に現金の利息が含まれているので、余った現金は 20 億円だけ分け、戻り方は 0.5 とした。償却は現在の工場・設備の簿価のままで年 8 億円ほど、新規の更新分だけ新しい価格で増える。10 年後の数字は家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11→13.12 倍・やや楽観 PER 10.5→13.31 倍・中立 PER 9.5→13.54 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に、循環 +0.5%・値決め +0.25%・寿命 +0.25% を足して 8.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。