結論
カワセコンピュータサプライは、企業の請求書や伝票などの帳票を作る千葉県の会社だ。筆者の結論は割高。時価総額は 9 億円で、現預金と有価証券から借入を引いた額とほぼ同じ。純資産の 4 割にも届かない。安く見える理由は、そこにある。
ただ、その資産は稼いでいない。営業利益は 0.5 億円で、会社は次の期を「ゼロ」と予想している。帳票の需要は電子化で細り、売上の 56% を占める主力が毎年縮む。残りの情報処理も、郵便の減少と入札の価格競争にさらされる。
財務の安全は本物だ。自己資本比率は 72%、会社の目標も 70% 以上に置く。ただ、資本の使い方は消極的だ。配当は前の期から 4 割減り、配当性向は 2 割ほど。自社株買いは見当たらない。
余った現金の 4 億円が、株主に戻るのか。筆者はその見込みを、4 分の 3 と見る。10 年の稼ぎで測れば、今の値段は割高だ。純現金の厚みは悲観の下支えにはなるが、中立の価値を押し上げるには稼ぎが足りない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「安く見えるが、買ってもいけない会社」の典型だ。
時価総額は純資産の 4 割に満たず、純現金で説明がつく。バリュー投資家なら、資産の割安さに目が向く。ただ、それだけでは足りない。資産が稼いでいるか、稼いでいなければ、いつ株主に返るかを見る。
この会社の営業利益は 0.5 億円で、資産 34 億円に対して 1.4%。配当性向は 2 割ほどで、自社株買いも無い。現金は 11 億円あり、この 10 年、純現金はほとんど増えておらず、株主への還元も薄い。経営は守りが目的で、資本を働かせる意思が見えない。
事業の堀は薄く、主力は縮む。持ち続けたいオーナーの目で見れば、事業の価値は小さい。現金は残るが、株主に返る見込みは 4 分の 3 と置いた。
安全域は、事業でなく現金にある。悲観でも大きくは崩れないが、中立の価値は今の値段を下回る。上振れの材料は、大株主の山田グループによる買い増しや株主提案だけだ。
何で稼ぐ会社か
事業は二つある。売上の 56% を占めるビジネスフォームは、企業が使う帳票を設計から印刷、加工まで自社で作る。残りの 44% は情報処理で、顧客の請求書や DM のデータを編集し、高速インクジェットやフルカラーで印字し、封入して発送する。電子請求書を配信するクラウドの業務もここに入る。
主力のビジネスフォームは、前期に売上が 1.7% 減った。情報処理も 0.6% 減。2027 年 3 月期の予想は売上 26.5 億円、営業利益ゼロで、中期経営計画は「先が読めない」として出していない。
拠点は千葉県佐倉市の情報センター 1 か所だけで、土地は約 1.7 万平方メートル。東京の本社と大阪・名古屋の営業所が顧客を担う。従業員は 102 名と臨時 50 名相当で、上位 10 社で売上の 36% を占める。原価では紙代が材料費の 79%。開示は分野別の売上のみで、枚数や単価は推定だ。子会社は無く、大株主の山田(株)グループが約 27% を持つが、経営には関与しない。主要な取引先は金融・保険・公共料金などの請求書を大量に出す企業と推定されるが、顧客名は開示されていない。
優良さと弱いところ
筆者は、この会社の優良さを「堅い財務に守られた、縮む下請けの工場」と見る。堀は薄い。
強みは、財務の堅さと、設計から発送までを 1 か所でこなす一貫体制だ。個人情報を扱う印字・発送は、顧客が簡単には乗り換えない。ただ、それは堀というより、取引の継続性に近い。
弱みは明確だ。第一に、主力が構造的に縮む。電子帳簿保存法の改正や請求書の電子化で、紙の帳票は減る方向にある。第二に、値決め力が弱い。紙代・物流・エネルギーの上昇を、顧客に移しにくいと会社自身が書いている。第三に、利益率が低い。営業利益率は過去 12 年のうち 6 期が 0% 以下で、最高でも 2.8% だった。
経営は守りに寄る。目標は自己資本比率 70% 以上と流動比率 200% 以上で、成長の数値目標は出していない。結果として現預金が 11 億円積み上がり、資本の効率は低い。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
帳票印刷の市場は、電子化で長く縮んでいる。請求書や納品書は電子データに置き換わり、2024 年の電子帳簿保存法の義務化と、インボイス制度が追い打ちをかけた。紙の需要は景気ではなく、構造で減る。
そのなかで残るのは、紙と電子の両方を求める顧客の仕事だ。公共料金の通知、保険の案内、カードの明細は、紙で届ける法令や慣行が残る。情報処理は、その印字・封入・発送を請け負う。ただ、郵便料金の引き上げで発送の数は減り、官公庁の入札は価格競争になる。
競合は、大日本印刷や TOPPAN のような大手の情報処理部門に加え、福島印刷のような中堅も多い。大手が高い品質と規模で優位に立ち、小さな会社は価格で競り合う。
原価の紙は国際市況で動き、エネルギーと物流も上がる。印刷機械はインクジェットへの更新が要り、新設備の投資は機械の値上がりで重くなる。AI エージェントは、帳票を使う事務を減らす方向に働く一方、現場の印字・発送の仕事は直接は置き換えない。結局、残る仕事は少ないが、置き換わるまでの時間は長い。市場が縮んでも、廃業する同業が出れば、残った会社が仕事を拾える余地はある。
資本政策と M&A
配当は期末の年 1 回で、配当性向は 2 割ほど、配当の総額は 0.14 億円だった。前の期から 4 割減った。自社株買いは見当たらない。配当の方針は「安定的な配当を保ちながら、成長と財務の強化のために留保する」だ。
設備投資は年 0.7 億円で、その大半が情報処理のインクジェット設備。短期借入は 3 億円とリース債務 1.6 億円があるが、現預金は 11.3 億円ある。投資有価証券 2.4 億円は東京海上や三菱 UFJ など 11 銘柄で、受取配当が利益に入っている。
大株主は山田(株)が 14.2% で、山田芳久氏と関係者を合わせて約 27%。会社は経営に関与しないと開示している。親会社ではないが、持ち合いに近い。公開買付けや再編の発表は確かめられなかった。純現金が時価総額に近いため、株主提案や買収の対象になりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額は 9 億円で、現預金と有価証券から借入を引いた純現金に近い。つまり事業は無料で買える。自己資本は 25 億円、PBR は 0.36 倍。営業利益は 2025 年 3 月期に 0.79 億円まで戻した実績があり、今期の第 1 四半期は経常利益が 0.37 億円と通期予想を上回るペースだ。会社の予想は保守的で、実力は営業利益 0.5 億円以上にある。
情報処理の新設備が稼働し、効率が上がる。紙と電子の橋渡しや電子請求書のクラウド業務は、顧客の導入が進めば利益率を押し上げる。千葉の土地 1.7 万平方メートルは簿価 8 億円強で、含み益も眠っている可能性がある。
さらに、時価総額が純現金並みの会社は、株主提案や買収の対象になりやすい。山田グループは約 27% を持ち、非公開化を考えても不思議はない。そうなれば、買付価格は純資産に近づく。現金が株主に戻る道は、いくつもある。10 年というのは長く、帳票の縮みが続いても、現金を持つ会社が株主の圧力で動く場面は十分に起こりうる。
慎重な見方
資産は事業を生かしていない。営業利益は 0.5 億円で、2027 年 3 月期は会社自身がゼロと予想している。ビジネスフォームは売上の 56% を占めるのに、毎年縮み、紙代の上昇を転嫁できない。営業利益率は過去 12 年のうち 6 期が 0% 以下だった。
現金は 11 億円あるが、配当は前の期から 4 割減り、自社株買いも無い。会社の目標は自己資本比率 70% 以上だけで、資本効率の目標が無い。この 10 年、純現金はほとんど増えていない。株主に返す意思が見えない会社に、現金の額面の価値は与えられない。
有価証券の東京海上や MUFG は配当が利益に入っているだけで、売らない限り現金にならない。千葉の土地は 1 か所の工場の敷地で、売れば事業が止まる。含み益は事業と一体で、独立の資産ではない。
大株主の山田グループが非公開化に動いても、買付価格は市場価格に小さな上乗せがつく程度で、純資産に近づく保証は無い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。現金の厚みは本物だが、稼ぎが無く、株主に返る見込みも薄い。確率は、やや悲観と悲観に 4 割、楽観側に 2 割強を置いた。事業が畳まれても現金は残るため、悲観を 13% にとどめた。余った現金 4 億円には戻り方 0.75 を掛け、投資有価証券は持ち合いとして余った現金に足さず、悲観の床にだけ入れた。非公開化や株主提案は噂の段階で、数字には入れていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 200 円9 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 25 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 105 円5 億円、今との差 −50.4%、 期待の年率 +0.6%(資本コスト 8.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 409 円19 億円 | 55 円3 億円 | +118.9% | +8.1% | 28 円1 億円 |
| やや楽観 | 16% | 303 円14 億円 | 44 円2 億円 | +63.6% | +5.0% | 55 円3 億円 |
| 中立 | 38% | 220 円10 億円 | 29 円1 億円 | +17.1% | +1.6% | 94 円4 億円 |
| やや悲観 | 27% | 118 円5 億円 | 13 円1 億円 | −37.9% | −4.7% | 36 円2 億円 |
| 悲観 | 13% | 88 円4 億円 | 4 円0 億円 | −56.5% | −8.0% | 12 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 200 円9 億円 | 25 円1 億円 | +6.2% | +0.6% | 225 円10 億円 |
今の株価時価総額 212 円10 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 楽観:情報処理が帳票の縮みを埋め、利益率が 6% に乗る 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 409 円19 億円
紙の帳票は縮むが、請求書や通知を印字・発送する仕事は残り、電子化の入口も会社が担う。情報処理の通数は 5% 増え、単価は物価並みに上がる。高速インクジェットの新設備で効率が上がり、利益率は 6% に届く。
ビジネスフォームは枚数が 35% 減るが、利益はゼロ近くを保つ。紙代の上昇を、配送と加工の付加価値で価格に移せる。
営業利益は 1 億円を超え、純利益は 1 億円強になる。配当も増える。それでも、自己資本 30 億円に対して稼ぎは小さく、ROE は資本コストに届かない。倍率は上限の手前にとどまる。
- ビジネスフォーム(帳票の設計・印刷・加工):数量 1,690(出荷枚数(万枚・推定))× 価格 78(1 枚あたり販売単価(円・推定))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。枚数 0.65 倍・単価 1.30 倍(紙代の転嫁が一部)・営業利益率 0%
- 情報処理(データプリント・発送・クラウド):数量 1,575(処理通数(万通・推定))× 価格 110(1 通あたり処理単価(円・推定))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。通数 1.05 倍・単価 1.34 倍・営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 16 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電子請求書や QR 連動など、紙と電子をつなぐ業務で受注を増やす筋書き。会社は中期計画を出せていないほど先が読めず、確率は低く置く。
やや楽観 16% やや楽観:情報処理は小さく伸び、全体で黒字を保つ 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 303 円14 億円
ビジネスフォームは枚数が 4 割減り、赤字に近づく。ただ、拠点が千葉県の 1 か所に集約されているため、固定費はこれ以上落としにくい代わりに、増えてもいない。
情報処理は通数が 5% 減るにとどまる。官公庁の入札の条件が変わっても、民間の請求書の印字・発送は残る。利益率は 4.5% で、営業利益は 0.6 億円前後。
短期借入は返済が進み、利払いは小さい。受取配当と現金の利息が営業外で 0.3 億円ほど残る。純利益は 0.8 億円で、自己資本は 28 億円台。収益の水準は今の延長で、稼ぎよりも資産の厚みが目立つ姿だ。
- ビジネスフォーム(帳票の設計・印刷・加工):数量 1,560(出荷枚数(万枚・推定))× 価格 77(1 枚あたり販売単価(円・推定))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。枚数 0.60 倍・単価 1.28 倍・営業利益率 −1.0%
- 情報処理(データプリント・発送・クラウド):数量 1,425(処理通数(万通・推定))× 価格 109(1 通あたり処理単価(円・推定))→ 売上 15 億円・営業利益 1 億円。通数 0.95 倍・単価 1.32 倍・営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 12 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025 年 3 月期に営業利益 0.79 億円を出した実績があり、情報処理に新設備を入れて効率化も進んでいる。黒字を保つのは無理のない筋書きだ。
中立 38% 中立:帳票は半分近くまで縮み、情報処理も細って収支は薄い黒字 利益 1 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 220 円10 億円
ビジネスフォームは 10 年で枚数が 45% 減る。電子化は進み、請求書や納品書の紙が減る。単価は紙代の上昇を全部は転嫁できず、物価の 1.34 倍に届かない。赤字がわずかに出る。
情報処理は通数が 15% 減る。郵便料金の上昇と電子化で、発送の数が減る。ただ、現場の印字・封入・発送という体の仕事は、AI エージェントが置き換えにくい。単価は物価並みに上がり、営業利益は 0.5 億円弱を保つ。
人件費と本社費も物価で増える。減価償却は今の 0.8 億円ほどから、インクジェット設備の更新で 1 億円前後に増える。更新の投資は機械の値上がりで償却を上回る。営業利益は 0.3 億円ほどで、受取配当と現金の利息がそれを上回る。純利益は 0.5 億円になる。
- ビジネスフォーム(帳票の設計・印刷・加工):数量 1,430(出荷枚数(万枚・推定))× 価格 75(1 枚あたり販売単価(円・推定))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。枚数 0.55 倍・単価 1.25 倍(紙代の転嫁が追いつかない)・営業利益率 −2.0%
- 情報処理(データプリント・発送・クラウド):数量 1,275(処理通数(万通・推定))× 価格 107(1 通あたり処理単価(円・推定))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。通数 0.85 倍・単価 1.30 倍・営業利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 0 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.9% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)3 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 8 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社自身が 2027 年 3 月期の営業利益をゼロと予想している。ビジネスフォームの縮小は止まらず、収支ほぼゼロが続く姿を最も確からしいと見る。
やや悲観 27% やや悲観:電子化が加速し、帳票が急減して赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 118 円5 億円
電子帳簿保存法と請求書の電子化が進み、帳票の枚数は 55% 減る。紙代は上がり、単価は物価に追いつかない。工場の稼働は落ち、固定費が重くなって赤字は 0.5 億円規模になる。
情報処理も、官公庁の入札で価格を競り合い、郵便の発送数が減って通数が 3 割落ちる。利益率は 2% に下がる。
本社費は物価で増え、営業利益は 0.4 億円の赤字。受取配当と現金の利息で純損益はほぼゼロに収まる。設備は更新を先送りして、固定資産の減損も出る。会社は配当をごく小さな額に絞り、価値は稼ぐ力でなく現金・有価証券の厚みに近づく。
- ビジネスフォーム(帳票の設計・印刷・加工):数量 1,170(出荷枚数(万枚・推定))× 価格 69(1 枚あたり販売単価(円・推定))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。枚数 0.45 倍・単価 1.15 倍・営業利益率 −6.0%
- 情報処理(データプリント・発送・クラウド):数量 1,050(処理通数(万通・推定))× 価格 99(1 通あたり処理単価(円・推定))→ 売上 10 億円・営業利益 0 億円。通数 0.70 倍・単価 1.20 倍・営業利益率 2.0%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置く。今の自己資本 24.9 億円の 0.22 倍。稼ぐ力は無く、現預金から借入を引いた分と有価証券の税引き後の分に戻り方 0.75 を掛けた床(約 6 億円)の下に置いた。帳簿の自己資本は床にしない。
確率:ビジネスフォームの縮小が加速し、紙代と電気代の上昇を転嫁できない筋書き。営業利益は過去 12 年のうち 6 期が 0% 以下で、起こりうる。
悲観 13% 悲観:帳票が 7 割消え、情報処理も大口を失って、清算に近づく 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 88 円4 億円
電子化が一気に進み、帳票の枚数は 7 割減る。情報処理も、上位 10 社で売上の 36% を占める大口の一部を失い、通数が半分になる。固定費は 1 か所の工場に集中していて、数量が落ちると損失が一気に膨らむ。
営業損益は年 1 億円規模の赤字になり、設備の減損で自己資本は 21 億円台に減る。
会社が事業を畳むかどうかは、大株主の山田グループ(約 27%)を含む経営の判断で、少数株主には選べない。現金と有価証券は残るが、従業員の整理や拠点の処分の費用が先に出る。価値は、純現金を整理費用で割り引いた水準に近い。
- ビジネスフォーム(帳票の設計・印刷・加工):数量 780(出荷枚数(万枚・推定))× 価格 63(1 枚あたり販売単価(円・推定))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。枚数 0.30 倍・単価 1.05 倍・営業利益率 −12.0%
- 情報処理(データプリント・発送・クラウド):数量 750(処理通数(万通・推定))× 価格 91(1 通あたり処理単価(円・推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。通数 0.50 倍・単価 1.10 倍・営業利益率 −3.0%
倍率:赤字の筋書きなので PBR で置く。今の自己資本 24.9 億円の 0.16 倍。稼ぐ力は無く、現預金から借入を引いた分と有価証券の税引き後の分に戻り方 0.5 を掛けた床(約 4 億円)の水準。純現金を下回ってよい(清算されない限り使い道は経営が決める)。
確率:帳票の縮小と大口の喪失が重なれば、千葉の 1 拠点の固定費を賄えない。売上は今の 6 割弱まで縮み、起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ビジネスフォーム(帳票の設計・印刷・加工)
伝票・請求書・納品書など、企業が使う帳票を設計から印刷・加工まで自社工場で作る。売上の約 56%。
| 数量出荷枚数(万枚・推定) | 価格1 枚あたり販売単価(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,600 | 60 | 16 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,430 | 75 | 11 | 0 |
取り方:有報の分野別売上(ビジネスフォーム 15.63 億円・開示値)。枚数と単価は開示が無く、1 枚あたり数十円の推定。営業利益は開示が無く、全社の営業利益 0.48 億円から情報処理の利益を引いた残りとして、ほぼ収支ゼロと推定した。
情報処理(データプリント・発送・クラウド)
顧客の請求書・DM などのデータを編集し、高速インクジェットやフルカラーで印字・封入・発送まで請け負う。電子請求書などクラウドの業務も含む。売上の約 44%。
| 数量処理通数(万通・推定) | 価格1 通あたり処理単価(円・推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,500 | 82 | 12 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,275 | 107 | 14 | 0 |
取り方:有報の分野別売上(情報処理 12.34 億円・開示値)。通数と単価は開示が無く、1 通あたり百円弱の推定。営業利益 0.53 億円は、全社の営業利益 0.48 億円とビジネスフォームの収支ゼロの推定から逆算した。
リスクと懸念
帳票の電子化
請求書・納品書の電子化は、電子帳簿保存法とインボイス制度で進む。売上の 56% を占めるビジネスフォームの枚数が加速して減れば、千葉の 1 工場の固定費を賄えず、赤字に沈む。
紙代・エネルギー・物流の上昇
紙代は材料費の 79% を占める。会社は上昇分を顧客に移しにくいと書いており、営業利益率は薄い。転嫁が遅れる年は、営業利益がゼロ近くまで落ちる。
郵便の減少と入札の価格競争
情報処理は郵便の発送数の減少と、官公庁の入札条件の変更の影響を受ける。価格競争が強まると、数少ない利益の源が削られる。
資本の使い方と株主への還元
現預金が 11 億円あるのに、配当は前の期から 4 割減り、自社株買いは無い。余った現金が事業に使われず、株主にも戻らない状態が続けば、価値は帳簿の額を下回る。
大口の取引先と 1 拠点への集中
上位 10 社で売上の 36% を占める。生産は千葉県佐倉市の 1 拠点に集中しており、災害や設備の故障、大口の離脱の影響が大きい。個人情報の漏えいが起これば、信用を失う。
大株主の影響
山田(株)グループが約 27% を持つ。経営には関与しないと開示しているが、株主総会の議決で影響力を持つ。非公開化の局面では、少数株主に不利な価格になりうる。
今後の分かれ目
- 配当性向や総還元性向などの数値方針が示され、自社株買いが始まったら
- 余った現金の戻り方を 1.0 に近づけ、楽観側の確率を上げる。
- ビジネスフォームの売上が 2 年続けて 5% 以上減ったら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。千葉の 1 工場の固定費が賄えなくなる。
- 情報処理の営業利益率が 6% を超えて定着したら
- 情報処理の数量と利益率を引き上げて見直す。楽観の筋書きに近づく。
- 山田グループなどによる公開買付けや非公開化の発表があったら
- 買付価格が本質価値を上回るなら応じる価値がある。発表後は、この分析は意味を失う。
- 千葉の情報センターの土地や有価証券の売却益が示されたら
- 売却後の事業の姿と、現金の使い道を見て、余った現金の額を見直す。
見ておくもの
- ビジネスフォーム・情報処理の分野別の売上と営業損益
- 紙代・郵便料金など原価の転嫁の進み具合
- 配当方針・自社株買い・株主構成の変化
- 現預金・有価証券と短期借入の残高
- 電子帳簿保存法・インボイス制度の電子化の進み
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から出した。ROE が資本コスト 8.5% に届かないため、上限を 1÷k(11.4 倍)にし、利益の質が低いので 70〜92% に置いた。今の PBR 0.36 倍や純現金が時価総額に並ぶことを、価値の根拠にしていない。余った現金は運転用の売上 1 か月分とリースを除いた 4 億円とし、戻り方 0.75 を掛けた。有価証券は持ち合いで、配当が利益に入るため余った現金には足さず、悲観の床にだけ入れた。新リース会計基準で営業利益・負債の形が変わるが、今と同じ形に揃えて置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→11.76 倍・やや楽観 PER 9.5→11.76 倍・中立 PER 8→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.25%。財務の堅さで k を下げない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 9.00%。