結論
クリナップは、システムキッチンの国内大手だ。日本で初めてシステムキッチンを売り出した会社で、売上の約 8 割をキッチンが占める。筆者の結論は、今の株価はおおむね適正というものだ。稼ぐ力は戻りつつあるが、新築住宅の縮小が重く、安全域は厚くない。
2026 年 3 月期の営業利益は 39 億円で、前の期の 2 倍近くに増えた。値上げと、高価格帯のキッチンの販売がきいた。2027 年 3 月期の予想は 49 億円で、第 1 四半期は 85% 増と好調だ。ただし営業利益率は 3% 前後にとどまる。会社が掲げる 5% は、まだ遠い。
強みは財務だ。純現金は 119 億円あり、時価総額の 4 割近くに当たる。自己資本比率は 65% で、赤字の年にも耐えられる。一方、ROE は過去 10 年の中央値で 3% にとどまる。資本コストには遠く、現金の使い道は課題だ。
10 年の中心は、新築の 2 割減をリフォームと値上げで埋め、営業利益が 60 億円になる道だ。その場合も ROE は 5% 台で、値付けは今の株価と大差ない。高価格帯と海外が伸びる道が開ければ、評価は 2 倍近くになる。大手との価格競争に敗れる道も 1 割強あり、上下に幅の大きい銘柄である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「悪くない事業と厚い現金を、まだ生かしきれていない会社」である。
事業は 50 年以上続く台所設備で、住宅がある限り需要はなくならない。ただし新築は減り、利益は価格競争に左右される。営業利益率が 3% 台では、持ち主に残る利益は小さい。純利益が 35 億円でも、ROE は 6% に届かない。
一方、現金は本物だ。純現金は 119 億円と、時価総額の 4 割近くある。借金は小さく、赤字になっても倒れない。これは、ほかの住宅設備会社にない安全域になる。
筆者が見たいのは、その現金が株主に戻るかだ。配当は利益の 3 割台で、自社株買いは少ない。2030 年の目標 ROE 8.5% を達成できれば、現金は生きる。今は約束の段階にとどまる。
値付けは、10 年の価値に対してほぼ適正と見る。割安とは言わないが、財務の堅さが下値を支える。
何で稼ぐ会社か
クリナップは、台所と水まわりの設備をつくり、リフォーム会社や工務店、住宅メーカーを通して売る。2026 年 3 月期の売上は 1,345 億円。内訳は、キッチンが 81%、浴室・洗面が 11%、その他が 8% だ。
キッチンは、ステンレスを使った耐久性が特徴で、最高級の CENTRO、中高級の STEDIA、手ごろな品までそろえる。会社の推計では、国内のシェアは約 21.5% だ。システムキッチンの年間出荷は約 114 万台で、同社は約 25 万台を売る計算になる。
売り先は、新築が約 44%、リフォームが約 51% だ。リフォームの窓口は、工務店の網である「水まわり工房」と、東京・横浜・名古屋・大阪の旗艦ショールームだ。新築は、ハウスメーカーやビルダーとの取引が中心になる。
浴室・洗面は、シェアが浴室 3% 台、洗面 4% 台と小さい。販路に苦戦しており、マンション市場への参入が課題とされる。その他には、部材の販売、保守サービス、海外、子会社の外販が入る。
工場は国内に複数あり、神奈川の相模原には 2024 年 4 月に物流拠点を稼働させた。ショールームの家賃と工場の償却は、売上が落ちても減らない固定費だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、中程度だと見る。
強みは、ブランドとステンレスの加工力だ。システムキッチンを日本で最初に売り出した会社で、リフォームの人気ランキングで STEDIA が連続で 1 位を取った。工務店の網とショールームという接点を持つのも、競合に勝つ材料になる。
弱みは、価格を自分で決めにくいことだ。住宅設備は LIXIL、パナソニック、タカラスタンダード、クリナップの寡占だが、新築向けの大口取引では価格競争が厳しい。2021 年の中計は、営業利益で目標の 7 割しか届かなかった。原材料の高騰を値上げで転嫁するのに時間がかかったのだ。
資本効率は低い。営業利益率は 2%〜3% 台、ROE は過去 10 年の中央値で 3% 弱にとどまる。純現金は厚いが、稼ぎに変わっていない。
経営は、筆頭株主の株式会社井上(約 24%)と、取引先の持株会が株式の約 4 割を握る。安定している半面、株主の声が届きにくい面もある。配当は利益の 3 割台と控えめだ。ただ、収益の改善は本物で、値上げ後の利益率が続くかが焦点になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
住宅設備は、数量が減る成熟市場だ。システムキッチンの出荷は、2013 年度の 130 万台から 2024 年度の 114 万台へ減り、2 年連続で前年を割った。
新築住宅の着工は、人口減と空き家の増加で長期に減り続ける。2025 年の法改正の影響で、一時的な落ち込みもあった。クリナップの新築向けは売上の 44% を占め、この縮小の影響を最も受ける。
一方、リフォームは底堅い。台所は 20 年前後で入れ替える需要があり、住宅の築年数が上がるほど母数が増える。共働き世帯の増加で、時短や収納を求めて入れ替える家庭も多い。ただし、人口減と中古住宅の流通で、リフォームの数量が大きく伸びるとは見ない。
競争は、LIXIL とパナソニックが最大手で、ホーロー製品のタカラスタンダードが追う。クリナップは高価格帯で差をつけようとしている。ステンレス、アルミ、木材などの原材料や、物流・人件費の上昇を、値上げで転嫁できるかが利益を決める。2026 年 7 月に発表した価格改定(10 月受注分から適用)の浸透が、当面の焦点になる。
海外は小さいが、タイで現地生産モデルを売り出し、輸出の新しい販売店を増やしている。
資本政策と M&A
資本政策は、守りが中心だ。配当は前の期から増配し、利益の約 33% に当たる。今期も同水準を予定する。自社株買いは「適宜」とされ、近年は大きな実施がない。
純現金は 119 億円あり、時価総額の 4 割近くに及ぶ。2024-2026 年度の中計は、成長投資として工場の再編、IT、新製品、環境対策、M&A を挙げるが、金額は示していない。ROE の目標は 7.0%(当初)で、2030 年に 8.5% を掲げる。
株主は、株式会社井上が約 24%、真栄会・共進会(取引先の持株会)が各 6% 台、社員持株会が 5% ほどだ。上位 10 者で 6 割を超える。この厚さは、TOB を難しくする一方、少数株主への還元を急がせる力を弱める。確率モデルは、10 年以内に TOB で買われる確率を 3 割ほどと見ている。
財務は堅く、借金は短期の 37 億円と長期の 8 億円ほどだ。M&A は行っていないが、中計では「新たな事業領域」として挙げている。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
値上げが通り、高価格帯が定着した。2026 年 3 月期は営業利益が 91% 増え、第 1 四半期も 85% 増えた。中高級の STEDIA と最高級の CENTRO が伸び、営業利益率は 3% を超えた。価格改定は 10 月に再び入る。会社の 2030 年の目標は、売上 1,500 億円・営業利益 95 億円だ。
リフォームの追い風が強い。築 20 年を超える住宅は増え続ける。共働きの世帯は、時短や収納で台所の価値を高く評価する。ステンレスという素材の強みが、高価格帯の購入を後押しする。
現金の使い道が変わる芽もある。純現金は 119 億円で、時価総額の 4 割近くを占め、PBR は 0.5 倍と低い。会社も ROE の改善を重要課題としている。配当性向 33% は低く、増配の余地が大きい。
海外は小さいが、タイの現地生産が軌道に乗れば、成長の第 2 の柱になる。浴室もマンション市場に入れば赤字を抜け出せる。住宅設備の再編で買われる道もある。TOB の確率が 3 割というモデルの見方もこれを裏づける。
慎重な見方
今の利益は、値上げの一時的な効果が大きい。2026 年 3 月期の営業利益 39 億円は、前の期の低さの反動でもある。営業利益率は 3% 前後で、中計が「安定的な水準」とする 5% には届かない。前の中計も、営業利益の目標の 7 割しか達成できなかった。
新築は縮小が続く。システムキッチンの出荷は、2013 年度の 130 万台から 114 万台へ減った。2025 年の法改正と空き家の増加で、新築向けの売上 44% が今後も細る。リフォームは底堅いが、数量が大きく増えるとは言えない。
大手との競争が厳しい。LIXIL とパナソニックは販売網が広く、タカラスタンダードはホーロー製品で差別化している。新築の大口取引では、値引き圧力が強い。原材料と人件費の上昇を値上げで転嫁できなければ、利益率は一気に下がる。
浴室は赤字に近く、立て直しの手がかりがない。株主の構成も重い。筆頭株主と取引先・従業員の持株会が株式の約 5 割を持ち、現金の使い道に少数株主の声は届きにくい。純現金は厚いが、10 年たっても戻らないまま積み上がる恐れがある。
どちらに重みを置いたか
強気と慎重の見方が拮抗し、確率は中立に寄せた。値上げの効果は事実だが、新築の縮小と大手との競争も事実である。
どちらかに寄せる決め手は、純現金の厚さにあった。悲観でも倒産は遠く、下は浅い。一方、上振れも ROE が 9% 止まりで、倍率に天井がある。そこで楽観を 8%、やや楽観を 2 割、悲観を 12% に置いた。期待値は、今の時価総額に近い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,474 円520 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 496 円175 億円)。 今の値に割り戻すと 982 円346 億円、今との差 +11.0%、 期待の年率 +8.3%(資本コスト 8.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,691 円949 億円 | 930 円328 億円 | +309.2% | +15.1% | 290 円102 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,017 円711 億円 | 647 円228 億円 | +200.9% | +11.6% | 533 円188 億円 |
| 中立 | 38% | 1,700 円599 億円 | 508 円179 億円 | +149.4% | +9.6% | 839 円296 億円 |
| やや悲観 | 22% | 800 円282 億円 | 337 円119 億円 | +28.5% | +2.5% | 250 円88 億円 |
| 悲観 | 12% | 283 円100 億円 | 210 円74 億円 | −44.3% | −5.7% | 59 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,474 円520 億円 | 496 円175 億円 | +122.6% | +8.3% | 1,970 円695 億円 |
今の株価時価総額 885 円312 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 高価格帯と海外が伸び、営業利益率が 5% を超える 利益 74 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 2,691 円949 億円
高価格帯のキッチンが定着し、営業利益は 100 億円を超える。売上は 2,000 億円近く、営業利益率は 5% 台に乗る。
キッチンの販売台数は 3% 増え、1 台あたりの値段は 4 割上がる。物価の 3 割強に、高価格帯への切り替えが加わる形だ。リフォーム大賞を連続で取った中高級品の STEDIA と、最高級の CENTRO が売上の柱になる。
浴室は、マンション市場への参入が実り、赤字を脱して小さな黒字になる。海外はタイの現地生産モデルが広がり、子会社の外販も伸びて、その他の売上は 35% 増える。
工場の再編が終わり、固定費が下がる。高い利益率は、ステンレスを使う加工力と販売網が値上げを支えた結果だ。ROE は 9% 前後に上がり、資本コストを超える。住宅設備の再編で買われる道もこの筋書きに入れる。
- キッチン(厨房部門):数量 25.4(販売台数(万台)= 市場 × シェア)× 価格 62(1 台あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,571 億円・営業利益 82 億円。市場 123 万台 × シェア 20.7%、営業利益率 5.2%
- 浴室・洗面:数量 8.4(販売セット数(万セット相当))× 価格 24(1 セットあたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 198 億円・営業利益 6 億円。数量の指数 1.00、価格の指数 1.34、営業利益率 3.0%
- その他(部材・保守・海外・子会社外販):数量 48.6(取扱件数(万件相当))× 価格 4.02(1 件あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 195 億円・営業利益 17 億円。数量の指数 1.35、価格の指数 1.34、営業利益率 8.5%
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 12.39 倍、時価総額 949 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高価格帯の定着、浴室の立て直し、海外の拡大がそろう強気の道。会社の 2030 年目標(営業利益 95 億円)に近い。前の中計は営業利益で 7 割の達成にとどまったので、確率は 1 割弱。
やや楽観 20% 価格改定と高価格帯が定着し、利益率が 4% 台に乗る 利益 56 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,017 円711 億円
値上げと高価格帯の販売が定着し、営業利益率が 4% 台に乗る。営業利益は 77 億円になる。
新築の台数は減るが、リフォームがそれを埋める。20 年たった台所の入れ替えは、住宅の築年数が上がるほど増える。キッチンの台数は 2% 減にとどまり、値段は 37% 上がる。
浴室は赤字を脱し、小さな黒字に戻る。その他は海外と外販で 15% 増える。原価低減とスマート工場化が進み、営業利益率は前期の 2.9% から 4% 台へ上がる。
還元は純利益の約半分になる。ROE は 6〜7% で、資本コストにはなお届かない。
- キッチン(厨房部門):数量 24.2(販売台数(万台)= 市場 × シェア)× 価格 60(1 台あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,463 億円・営業利益 63 億円。市場 114 万台 × シェア 21.2%、営業利益率 4.3%
- 浴室・洗面:数量 8.0(販売セット数(万セット相当))× 価格 24(1 セットあたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 188 億円・営業利益 3 億円。数量の指数 0.95、価格の指数 1.34、営業利益率 1.5%
- その他(部材・保守・海外・子会社外販):数量 41.4(取扱件数(万件相当))× 価格 4.02(1 件あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 166 億円・営業利益 12 億円。数量の指数 1.15、価格の指数 1.34、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 691 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げと高価格帯の販売が定着し、営業利益率が 4% 台まで戻る。第 1 四半期の営業利益が 85% 増えた実績はあるが、新築の縮小がある。2 割を置く。
中立 38% 新築の縮小をリフォームと値上げで埋め、利益率 3% 台後半 利益 44 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 1,700 円599 億円
新築の縮小をリフォームと値上げで埋め、営業利益は 60 億円になる。会社の今期予想の 49 億円からは、物価の分だけ伸びる。
新築の住宅は 10 年で 2 割減る。リフォームは 5% 増える。キッチンの台数は全体で 6% 減り、値段は物価並みの 34% 上がる。営業利益率は 3.6% で、今期の予想とほぼ同じだ。
浴室・洗面は 12% 減って、利益はほぼゼロのままだ。その他は物価の分だけ伸び、安定して稼ぐ。
純現金が厚いので、受取利息が営業外で 5 億円台入る。還元は純利益の 45% ほどで、配当を中心に自社株買いを少し足す。ROE は 5% 台にとどまり、資本コストの 8.5% には遠い。
- キッチン(厨房部門):数量 23.2(販売台数(万台)= 市場 × シェア)× 価格 59(1 台あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,372 億円・営業利益 49 億円。市場 105 万台 × シェア 22.1%、営業利益率 3.6%
- 浴室・洗面:数量 7.4(販売セット数(万セット相当))× 価格 24(1 セットあたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 174 億円・営業利益 2 億円。数量の指数 0.88、価格の指数 1.34、営業利益率 1.0%
- その他(部材・保守・海外・子会社外販):数量 36.0(取扱件数(万件相当))× 価格 4.02(1 件あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 145 億円・営業利益 9 億円。数量の指数 1.00、価格の指数 1.34、営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)45 億円。全体の PER 11.76 倍、時価総額 555 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:最も起こりやすい道。新築の縮小をリフォームと値上げが埋める。営業利益率は会社の今期予想 3.5% の近くに落ち着く。
やや悲観 22% 新築が崩れ、値上げも通らず利益率が 2% に戻る 利益 24 億円 · PER 8.2 倍 · 株価時価総額 800 円282 億円
新築が崩れ、値上げも通らず、営業利益率が 2% に戻る。営業利益は 32 億円まで下がる。
新築の着工が加速して減り、ビルダー向けの値引き競争が強まる。キッチンの台数は 14% 減り、値段は物価に届かない 30% 増にとどまる。リフォームは伸びても、新築の穴を埋めきれない。
浴室は台数が 2 割以上減り、赤字になる。ショールームの家賃と工場の減価償却は、台数が減っても減らない。固定費が重く、利益率が下がる。
還元は純利益の 4 割に落ちる。営業外の受取利息は残るが、事業の稼ぐ力は弱い。倍率は上限の 7 割に置いた。
- キッチン(厨房部門):数量 21.2(販売台数(万台)= 市場 × シェア)× 価格 57(1 台あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 1,218 億円・営業利益 27 億円。市場 93 万台 × シェア 22.8%、営業利益率 2.2%
- 浴室・洗面:数量 6.6(販売セット数(万セット相当))× 価格 23(1 セットあたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 150 億円・営業利益 −2 億円。数量の指数 0.78、価格の指数 1.30、営業利益率 -1.0%
- その他(部材・保守・海外・子会社外販):数量 32.4(取扱件数(万件相当))× 価格 3.90(1 件あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 126 億円・営業利益 6 億円。数量の指数 0.90、価格の指数 1.30、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益24億円・ROE 3.1% は k 8.5% 以下なので、上限は 1÷k=11.8倍。新築の縮小と固定費の重さで利益の質が落ちるため、上限の約7割の8.2倍に置いた。PBR は 0.3 倍と低いが、純現金と設備は取り出せないため床にはしない。
確率:新築着工の減少が加速し、ビルダー向けの値引き競争が強まる。値上げが通らず利益率が 2% 台に戻る。2020 年代前半の苦戦の再来でもある。
悲観 12% 価格競争に敗れ、営業利益が 1 桁億円に沈む 利益 7 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 283 円100 億円
価格競争に敗れ、営業利益が 7 億円に沈む。キッチンは台数が 28% 減る。
大手の LIXIL とパナソニック、ホーロー製品を伸ばすタカラスタンダードに、新築の大口取引を奪われる。値段は物価の 2 割増にとどまり、値下げで台数を守ろうとして利益が消える。浴室は 4 割減って赤字が膨らむ。
工場の稼働が落ちて固定費が重くなり、営業利益率は 1% を割る。一方、純現金は残るので、倒産は遠い。それでも少数株主は、その現金の使い道を決められない。
価値は、売れる資産の税引後の額に置いた。構造的に優良とは言えなくなった姿だ。
- キッチン(厨房部門):数量 17.8(販売台数(万台)= 市場 × シェア)× 価格 53(1 台あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 941 億円・営業利益 8 億円。市場 78 万台 × シェア 22.8%、営業利益率 0.8%
- 浴室・洗面:数量 5.0(販売セット数(万セット相当))× 価格 21(1 セットあたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 107 億円・営業利益 −3 億円。数量の指数 0.60、価格の指数 1.20、営業利益率 -3.0%
- その他(部材・保守・海外・子会社外販):数量 27.0(取扱件数(万件相当))× 価格 3.60(1 件あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍))→ 売上 97 億円・営業利益 3 億円。数量の指数 0.75、価格の指数 1.20、営業利益率 3.0%
倍率:事業の純利益7億円では稼ぐ力は小さい(7億円÷k 8.5%=約80億円)。売れる資産の税引後は約100億円。清算されない限り少数株主は取り出せないので、今の自己資本604億円に0.165倍を掛け約100億円に置いた。
確率:大手 2 社との価格競争に敗れ、新築の取引先を失う。構造的な負けの筋書き。純現金が厚く倒産には遠いので、1 割強にとどめる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
キッチン(厨房部門)
システムキッチンの製造・販売。最高級の CENTRO、中高級の STEDIA、手ごろな品まで。新築・リフォームの両方。
| 数量販売台数(万台)= 市場 × シェア | 価格1 台あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.7 | 44 | 1,089 | 30 |
| 10 年後 中立 | 23.2 | 59 | 1,372 | 49 |
取り方:推定。売上 1,089 億円を、国内のシステムキッチン出荷 約 114 万台(2024 年度)× 会社推計のシェア 21.5% の約 24.7 万台と、1 台あたり 44 万円に分けて置いた。営業利益はセグメント別の開示が無く、全社 39 億円から浴室とその他を引いた推定。
浴室・洗面
システムバスと洗面化粧台の製造・販売。シェアは浴室 3% 台、洗面 4% 台。
| 数量販売セット数(万セット相当) | 価格1 セットあたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.4 | 18 | 148 | 1 |
| 10 年後 中立 | 7.4 | 24 | 174 | 2 |
取り方:推定。売上 148 億円を、浴室と洗面を合わせたセット換算で約 8.4 万セット、1 セット 17.6 万円に分けて置いた。販路に苦戦しており、中計も低収益と明記しているため、営業利益はほぼゼロと推定した。
その他(部材・保守・海外・子会社外販)
補修部材、保守サービス、タイなど海外、グループ子会社の外販。
| 数量取扱件数(万件相当) | 価格1 件あたり売上(万円。物価 3% で 10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 36.0 | 3.00 | 108 | 9 |
| 10 年後 中立 | 36.0 | 4.02 | 145 | 9 |
取り方:推定。売上 108 億円を、1 件 3 万円で約 36 万件に分けて置いた。保守や外販は競争が緩く、営業利益率は 8% 前後と推定した。
リスクと懸念
新築住宅の着工減
新築向けは売上の約 44% を占める。人口減と空き家の増加で、着工は長期に減り続ける。2025 年の法改正の反動もあり、数量の落ち込みが想定より速い恐れがある。
値上げの定着
2026 年 3 月期の利益増は、価格改定の効果が大きい。ビルダー向けの値引き競争が強まれば、値上げが戻され、利益率は 2% 台に落ちる。2026 年 10 月受注分からの価格改定が通るかが試金石になる。
原材料・物流・人件費の上昇
ステンレス、アルミ、木材、樹脂は外部の相場で動く。円安や運賃の上昇、人手不足の賃上げも重なる。2021 年の中計が目標に届かなかった主因でもあり、転嫁の遅れは利益を直接削る。
浴室・洗面の低収益
売上の 11% を占めるが、販路に苦戦しており、利益はほぼゼロだ。マンション市場への参入は課題のままで、立て直しがうまくいかなければ、固定費だけが残る。
現金が戻らない恐れ
純現金は 119 億円あるが、配当性向は 33% で、自社株買いも少ない。筆頭株主と取引先・従業員の持株会で株式の約 5 割を持つため、少数株主の声は届きにくい。現金が低い利回りのまま積み上がると、ROE は上がらない。
工場・ショールームの固定費
ショールームの家賃と工場の減価償却は、売上が落ちても減らない。2028 年 3 月期から始まる新リース会計基準で、賃借が貸借対照表に載り、数字の見た目も変わる。不況時に利益を急に削る。
今後の分かれ目
- 営業利益率が 4% を超えて 2 期以上続いたら
- 値上げと高価格帯が定着した証拠になる。楽観・やや楽観の確率を上げてよい。会社が掲げる 5% が現実味を帯びる。
- 新築着工が 70 万戸を割り込み、ビルダー向けの値引きが広がったら
- キッチンの数量と値段が同時に落ち、やや悲観に近づく。ビルダー向けの売上比率の低下を見る。
- 純現金を使った自社株買いが 30 億円を超えて実施されたら
- ROE の改善が見えてくる。現金の戻り方を 1.0 に上げ、価値を上方に直す。
- 浴室・洗面がマンション市場で受注を取り、黒字化したら
- 利益率の底上げ要因になる。全社の営業利益が 5 億円ほど増えうる。
- 住宅設備の再編や TOB が公表されたら
- 買収価格は現金を含む資産価値が前提になる可能性が高い。ただし、安定株主が厚く、話は進みにくい。
- 円安や相場でステンレスの価格が 2 割上がり、価格転嫁が遅れたら
- 原価の上昇が半年ほど利益を削る。2021 年の中計の未達と同じ展開になる。
見ておくもの
- 営業利益率(四半期)と価格改定の浸透度
- 新設住宅着工戸数と、キッチン・バス工業会の出荷台数
- 浴室・洗面の売上と利益、マンション向けの受注
- 純現金の水準と、自社株買い・増配の発表
- 2027 年度以降の新しい中期経営計画の数値目標
- ショールーム・工場の再編の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の ROE が資本コスト 8.5% を下回る筋書きでは、上限の 1÷k=11.8 倍に対する割合で置いた。今の PER 9 倍・PBR 0.5 倍には寄せていない。純現金は 60 億円を事業に要らない分として足したが、戻り方を 0.5 とした。新リース会計基準では、ショールームの賃借が貸借対照表に載り、純負債と営業利益の見かけが変わる。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形にそろえた。楽観の倍率は ROE が資本コストを超えるので、式の値に近づけた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12→12.39 倍・やや楽観 PER 11.2→11.76 倍・中立 PER 10.6→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality を足した(決まり v2)。個別の事業リスクは筋書きと確率で表す。