結論
菊水化学工業は、名古屋に本社を置く建物の外壁の仕上げの塗材と、その下に塗る下地の材料のメーカーだ。マンションや住宅の外壁の、ざらざらした模様の仕上げを思い浮かべるとよい。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正だ。純現金と政策保有の株が時価総額に近い額あり、下値は堅いが、本業の稼ぎが資本コストのおよそ6割にとどまるからだ。
市場は縮んでいる。新築の着工が減り、業界の塗材の生産量は2025年に1割近く落ちた。値段はエスケー化研など大手が決め、菊水化学はそれに沿う立場だ。
会社は塗材を売るだけでなく、加盟店の職人と組んで仕上げまで請け負う責任施工を伸ばし、赤字の続いた中国の工場は売る。中期経営計画は2028年3月期に営業利益10億円を掲げるが、過去12年で4%台の利益率に届いたのは1年だけだ。10年で見ると、縮む市場で薄い利幅を保つ姿がいちばんありそうだ。配当は利益の大半を払う方針で、株主への姿勢は誠実だ。ただ、それで事業の稼ぐ力が上がるわけではない。筆者は、利益率の改善が数字で続くまで、本業の値打ちを高くは見ない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、帳簿の値段の半分という値段は、それだけでは安全域にならない。大事なのは、その帳簿が何を稼ぐかだ。菊水化学の自己資本は、資本コストのおよそ4分の1しか稼いでこなかった。
オーナー利益、つまり設備の更新を済ませたあとに株主に残る利益は、ならせば年に3億円前後だ。配当を厚く払う姿勢は誠実だが、事業が稼がなければ配当も続かない。
堀、つまり他社がまねできない強みは、加盟店の職人の網と、老舗の品質への信用だ。これは本物だが、値段を決めるほどの力ではない。首位の会社が値段を決め、菊水化学はそれに沿う。
下値を支えるのは、純現金と政策保有の株だ。ただ、それが株主に戻る道筋は配当だけで、自己株買いは目立たない。筆者は、責任施工と中国の撤退で利益率が4%台に乗るかを、2〜3年見届けたい。その証拠が出るまでは、下値の堅さだけが取り柄の株だ。
何で稼ぐ会社か
売り物は二つある。一つは材料で、売上の8割ほどを占めるとみられる。外壁の仕上げの塗材、コンクリートの表面を平らに整える下地調整材、タイルの接着材、建物の改修用の塗料を作り、塗装の工事会社や建材の販売店に売る。重さあたりで値が付き、原料は樹脂とセメント、骨材だ。
もう一つは工事だ。責任施工と呼び、全国の加盟店の職人と組んで、材料の提案から仕上げまでをまとめて請け負う。住宅の塗り替えやマンションの修繕が中心で、大和ハウスリフォームが売上の1割強を占める最大の取引先だ。工事は材料より利幅が薄いが、自社の材料を確実に使ってもらえる入り口になる。
稼ぎの形を一言で言えば、建物の外側を守る材料を、施工の仕組みごと売る商売だ。新築では設計の段階で材料が決まり、塗り替えでは施工店の好みと提案で決まる。
海外は小さい。中国の常熟の工場は売却の契約を結び、2026年に台湾で修繕の工事の合弁を始めた。従業員は400人あまりで、売上は200億円を超える規模だ。
工場は国内に持ち、材料の多くを自社で作る。量の多い下地調整材は運ぶ費用がかさむので、工場の近くの市場で強い。
優良さと弱いところ
老舗の信用はあるが、値決め力は弱い。これが筆者の見立てだ。外壁の仕上塗材は、専業の首位のエスケー化研が大きく、売上でも利益でも菊水化学を大きく上回る。日本ペイントや関西ペイント、アイカ工業も塗り替えの市場に力を入れる。値上げは大手の動きに合わせて通すしかない。
利益の記録がそれを示す。営業利益率は過去12年の中ほどで2%前後、良い年でも4%台だった。自己資本の稼ぎは過去10年の中ほどで2%に満たない。中国の子会社の赤字が長く利益を削ってきた。
財務は堅い。純現金は25億円ほどあり、政策保有の上場株が22億円ある。配当は利益の8割ほどを払い、安定して続けてきた。ただ、厚い財務は本業の稼ぎの薄さを補うものではない。自己資本の多くが、事業の外の現金と株に寝ている。
経営は堅実で、無理な買収はしてこなかった。その堅実さが、裏返せば成長への投資の少なさにもなっている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界の前提は、新築の減少と塗り替えの底堅さの二つだ。日本仕上材工業会の統計では、2025年の建築用仕上塗材の生産は14.4万トンで前年より8.5%減り、左官と補修の材料も9%減った。戸建ての塗り替えとマンションの修繕が物価高で先送りされ、人手不足で工事も遅れた。
長い目で見ると、新築の着工は人口と世帯の減少で細る。一方で、建物は年を追って古くなり、外壁は10〜15年ごとに塗り替えが要る。マンションの大規模修繕は、築年数の古い物件が増えるほど件数が増える。材料の数量は新築の分が細り、塗り替えの分が支える形になる。
競争は、専業の首位のエスケー化研と大手の塗料会社、菊水化学のような中堅の専業の三つ巴だ。塗り替えでは、施工店や加盟店の網を握る会社が強い。材料の会社が工事まで手がける流れは、菊水化学に限らず業界で広がっている。
原料の樹脂は原油の値段で動き、2026年は中東の情勢で供給が不安になり、受注を絞る場面もあった。原料高を売値に移す速さが、毎年の利益を左右する。
筆者は、この業界の10年を、数量の縮みと値上げの綱引きと見ている。
資本政策と M&A
還元は配当が中心で、利益の大半を払う。2026年3月期の配当総額は約2億円で、配当性向は8割近い。中期経営計画は、自己資本比率50%以上を保ちつつ、2030年に自己資本の稼ぎ8%を目指す。
純現金は25億円ほどあり、中国の工場の売却で約10億円がさらに入る見込みだ。政策保有の上場株は25銘柄で22億円あり、年1回見直して効果の乏しいものを売るとしているが、売る額の目標はない。事業に要らない現金として20億円を分けて見る。
筆頭の株主は創業家の資産管理会社とみられ、株主は分散している。買収の噂はないが、時価総額が純資産の半分ほどなので、同業の大手が関心を持つ余地はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
下値は堅い。純現金は25億円ほどあり、中国の工場を売れば約10億円が入る。政策保有の株は22億円ある。合わせれば今の時価総額に迫り、事業はほとんどただで手に入る。
事業も変わり始めた。責任施工は加盟店の網とともに伸び、2026年3月期は第3四半期から増収に転じた。材料を売るだけの会社から、施工まで請け負う会社に変われば、自社の材料が確実に使われ、利幅も上がる。新しいブランドの立ち上げで、住宅の持ち主への直接の提案も始めた。
中国の工場の売却で、長く利益を削ってきた赤字の芽も断たれる。建物は年を追って古くなり、外壁の塗り替えとマンションの修繕は増え続ける。会社は2028年3月期に営業利益10億円を掲げており、その半分に届くだけでも、今の値段は安い。配当性向は8割近く、株主に報いる姿勢も明確だ。
首位の会社が値上げを主導する業界なので、値段の競争は激しくない。中堅の専業でも、値上げの波に乗れば利幅は戻る。
慎重な見方
市場は縮んでいる。業界の塗材の生産量は2025年に1割近く落ちた。新築の着工は人口とともに減り続け、下地調整材のように新築に頼る材料は先に細る。塗り替えで埋めるといっても、その市場には大手の塗料会社が力を入れている。
値段も自分では決められない。専業の首位のエスケー化研が大きく、値上げはその動きに合わせて通すしかない。原料の樹脂は原油で動き、上がる時は売値への転嫁が遅れる。
記録も厳しい。過去12年で営業利益率が4%台に乗ったのは1年だけで、自己資本の稼ぎは過去10年の中ほどで2%に満たない。中期経営計画の数字は、前の計画も下回ってきた。純現金と政策保有の株は厚いが、株主に戻るのは配当だけで、事業の外に寝たままだ。帳簿の値段の半分という値段は、その稼ぎの低さを映しているにすぎない。
責任施工も、利幅の薄さと補償の引当の重さを考えると、利益を押し上げる力は小さい。塗り替えの需要も、物価高で先送りされると今年のように一気に細る。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうがやや強い。下値を支える現金と株は本物だが、縮む市場と大手の値決めの下で、利益率が計画どおりに上がる確証はない。中心は利幅を薄く保つ筋書きで、責任施工と中国の撤退が効く上振れには3割強を残した。現金と株が厚いので、悲観は1割にとどめた。計画の数字は、過去の達成の記録を見て割り引いた。配当の厚さは評価したが、確率は動かしていない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 648 円81 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 195 円25 億円)。 今の値に割り戻すと 441 円55 億円、今との差 +13.5%、 期待の年率 +8.0%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 1,308 円164 億円 | 318 円40 億円 | +318.1% | +15.4% | 195 円25 億円 |
| やや楽観 | 22% | 891 円112 億円 | 255 円32 億円 | +194.6% | +11.4% | 252 円32 億円 |
| 中立 | 36% | 686 円86 億円 | 207 円26 億円 | +129.5% | +8.7% | 321 円40 億円 |
| やや悲観 | 20% | 172 円22 億円 | 111 円14 億円 | −27.2% | −3.1% | 57 円7 億円 |
| 悲観 | 10% | 135 円17 億円 | 40 円5 億円 | −55.0% | −7.7% | 18 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 648 円81 億円 | 195 円25 億円 | +116.7% | +8.0% | 843 円106 億円 |
今の株価時価総額 389 円49 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 12% 塗り替えと責任施工で稼ぐ会社に変わる 利益 11 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 1,308 円164 億円
新築の着工は減るが、建物の塗り替えとマンションの大規模修繕は増え続ける。菊水化学は材料を売るだけでなく、加盟店の職人と組んで仕上げまで請け負う責任施工を広げ、工事の売上は今の2倍になる。
塗材の数量はシェアの上積みで横ばいを保ち、値上げは物価を上回る。中国の工場を売って赤字の芽を断ち、台湾で修繕の事業を育てる。
営業利益率は製品で5%に届き、自己資本の稼ぎは資本コストに並ぶ。中期経営計画が掲げた自己資本の稼ぎ8%が、10年をかけて実現する。配当も厚くなる。純現金と中国の売却代金の一部は自己株買いに回り、株主への戻り方も良くなる。首位の会社との差は縮まらないが、塗り替えの分野では対等に戦える。
- 仕上塗材・下地調整材などの材料:数量 68.0(材料の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 0.35(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 238 億円・営業利益 12 億円。数量 1.00 倍 × 単価 1.40 倍、利益率 5%
- 責任施工の工事:数量 3.1(工事の件数(千件・年、推定))× 価格 420(1 件あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 4 億円。件数 2.0 倍 × 単価 1.40 倍、利益率 3%
倍率:事業の純利益 10 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 14.34 倍、時価総額 164 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:責任施工の売上は伸びており、台湾の合弁も動き出した。中期経営計画の営業利益率5%に届けば上振れは大きいが、過去12年で4%台に乗ったのは1年だけなので、1割強にとどめた。
やや楽観 22% 中期経営計画に近い利益率に乗る 利益 8 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 891 円112 億円
塗材の数量は新築の減りで少し細るが、塗り替えの需要と値上げで売上は保つ。責任施工は加盟店の網を広げ、工事の件数は6割増える。
原料の樹脂やセメントの値上がりは、遅れながらも売値に移せる。工場の効率化と中国の赤字の解消で、製品の営業利益率は4%に上がる。
自己資本の稼ぎは6%台に乗るが、資本コストにはまだ届かない。配当は安定して続き、余った現金は少しずつ株主に戻る。大手との差は埋まらないが、塗り替えの専門の会社として存在感を保つ。台湾の合弁も小さな利益を出し始め、海外の芽が一つ育つ。株主から見れば、配当に加えて少しずつ価値が積み上がる10年だ。
- 仕上塗材・下地調整材などの材料:数量 66.0(材料の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 0.34(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 226 億円・営業利益 9 億円。数量 0.97 倍 × 単価 1.37 倍、利益率 4%
- 責任施工の工事:数量 2.5(工事の件数(千件・年、推定))× 価格 410(1 件あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 101 億円・営業利益 3 億円。件数 1.6 倍 × 単価 1.37 倍、利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.3% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 112 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2027年3月期の会社予想は営業利益が7億円台に増え、値上げと責任施工の伸びが効いている。計画の8割ほどの達成はありうるので、中立に次ぐ重みを置いた。
中立 36% 縮む市場で、薄い利幅を保つ 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 686 円86 億円
新築の着工は減り、仕上塗材と下地調整材の数量は10年で1割弱減る。塗り替えの需要が底を支え、値段は物価並みに上がる。責任施工の工事は加盟店の網とともに3割増える。
中国の工場を売り、赤字の子会社の重荷は消える。それでも、塗材の値段はエスケー化研などの大手が決め、菊水化学はそれに沿う立場だ。製品の営業利益率は3%強にとどまる。
自己資本の稼ぎは5%前後で、資本コストの6割ほど。配当は安定して続くが、余った現金と政策保有の株は大きくは動かない。会社は老舗として細く長く続き、株主は配当を受け取りながら待つことになる。年によっては原料の相場で利益が振れるが、10年をならせばこの姿に落ち着く。
- 仕上塗材・下地調整材などの材料:数量 62.5(材料の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 0.34(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 209 億円・営業利益 7 億円。数量 0.92 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 3.3%
- 責任施工の工事:数量 2.0(工事の件数(千件・年、推定))× 価格 402(1 件あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 80 億円・営業利益 2 億円。件数 1.3 倍 × 単価 1.34 倍、利益率 2%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)15 億円。全体の PER 12.9 倍、時価総額 86 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:仕上塗材の業界の数量は2025年に1割近く減り、新築の減少は続く。塗り替えと責任施工で売上は保てても、大手の値決めの下で利幅は過去の山まで届かない道筋がいちばんありそうだ。
やや悲観 20% 新築の落ち込みと値下げで利幅が消える 利益 2 億円 · PER 6.5 倍 · 株価時価総額 172 円22 億円
新築の住宅と建築の着工が想定より速く減り、下地調整材と仕上塗材の数量は10年で2割近く落ちる。大手の塗料会社が塗り替えの市場に力を入れ、値段の競争が強まる。
原料と運送の費用の上昇を売値に移しきれず、製品の営業利益率は1.5%に沈む。責任施工の工事は伸び悩み、採算もとれない。
配当は減り、自己資本の稼ぎは2%を割る。会社は残るが、余った現金と政策保有の株を抱えたまま、事業の稼ぎは資本コストに遠く及ばない。工場の統合も遅れ、固定費が重く残る。経営は配当を守ろうとして、現金を少しずつ取り崩す。政策保有の株を売る判断も遅れる。
- 仕上塗材・下地調整材などの材料:数量 55.8(材料の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 0.32(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 179 億円・営業利益 3 億円。数量 0.82 倍 × 単価 1.28 倍、利益率 1.5%
- 責任施工の工事:数量 1.7(工事の件数(千件・年、推定))× 価格 380(1 件あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 64 億円・営業利益 0 億円。件数 1.1 倍 × 単価 1.27 倍、利益なし
倍率:事業の ROE 1.6% が k を大きく下回り、市場で負ける筋書きなので中立より低い 6.5 倍。余った現金は谷で食う分を引いて今の 0.75 倍の 15 億円を、戻り方 0.75 で足した。
確率:新築の減りが速まれば下地調整材の数量が先に落ち、原料高を移せない年は過去にも何度もあった。営業利益率1%台の年が多い会社なので、厚めに置いた。
悲観 10% 大手に押され、赤字が続く 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 135 円17 億円
新築の減少が続き、塗り替えの市場も大手の塗料会社に取られる。塗材の数量は10年で3割減り、値段は物価に届かない。責任施工の工事も採算が合わず縮む。
営業損益は赤字に落ち、工場の統合と人員の整理に費用がかかる。配当は大きく減る。
価値は事業の稼ぎでは測れず、純現金と政策保有の株の税後から、赤字で食う分を引いた残りのうち、少数株主が受け取れる見込みの分でしか測れない。会社は倒れないが、株主にとっては長く報われない10年になる。同業の大手に事業を譲る話が出ても、値段は帳簿を大きく下回るだろう。老舗の看板だけが残る。
- 仕上塗材・下地調整材などの材料:数量 47.6(材料の出荷量(千トン・年、推定))× 価格 0.30(1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 −1 億円。数量 0.70 倍 × 単価 1.20 倍、赤字
- 責任施工の工事:数量 1.2(工事の件数(千件・年、推定))× 価格 360(1 件あたりの平均単価(万円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 −1 億円。件数 0.8 倍 × 単価 1.20 倍、赤字
倍率:赤字なので PER は当てず、今の自己資本 102.3 億円に床の PBR を掛けた。中身は floor_assets_why の純現金と政策保有の株の税後の残り。
確率:仕上塗材の市場は縮み、大手の塗料会社と専業の首位が強い。赤字の続く筋書きも否定できないが、純現金と政策保有の株が厚いので、悲観は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
仕上塗材・下地調整材などの材料
外壁の仕上塗材・下地調整材・タイル接着材・改修用塗料を工事会社と販売店に売る。
| 数量材料の出荷量(千トン・年、推定) | 価格1 トンあたりの平均出荷単価(百万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 68.0 | 0.25 | 170 | 4 |
| 10 年後 中立 | 62.5 | 0.34 | 209 | 7 |
取り方:材料と工事の内訳は非開示。全社 216 億円の約 8 割を材料とみて 170 億円、仕上塗材と下地調整材をならした単価を 1 トン 25 万(百万円で 0.25)とし、年約 6.8 万トンと推定した。仕上材工業会の生産量 43.6 万トンのおよそ 16% にあたる。利益は工事を薄めに置いた残り。
責任施工の工事
加盟店の職人と組み、材料の提案から仕上げまで請け負う塗り替え・修繕の工事。
| 数量工事の件数(千件・年、推定) | 価格1 件あたりの平均単価(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1.5 | 300 | 46 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 402 | 80 | 2 |
取り方:全社売上から材料を引いた約 46 億円を、塗り替えと修繕をならした 1 件 300 万(万円で 300)で割り、年約 1,500 件と推定した。利益率は完成工事の補償の引当を映して薄く置いた。
リスクと懸念
新築の減少
下地調整材や仕上塗材の一部は新築の建物に使われる。着工の減りが速まれば、材料の数量は塗り替えで埋めきれないほど落ちる。業界の生産は2025年に1割近く減った。
大手の値決め
外壁の仕上塗材は専業の首位のエスケー化研が大きく、大手の塗料会社も塗り替えに力を入れる。菊水化学は値段を自分で決められず、値上げの時期も大手に合わせるしかない。
原料の相場
原料の樹脂は原油とナフサの値段で動く。2026年は中東の情勢で供給が不安になり、受注を絞る場面もあった。原料高を売値に移すまでの遅れが、利益を削る。
工事の採算
責任施工は伸びているが、完成工事の補償の引当が増え、利幅は薄い。工事の比率が上がるほど、施工の品質の問題が利益を揺らしうる。
現金と株が眠る
純現金と政策保有の株は時価総額に近いが、株主に戻るのは配当だけだ。売る額の目標もなく、自己資本の稼ぎを押し下げ続ける。
今後の分かれ目
- 2028年3月期に営業利益率4%を超えたら
- 責任施工と中国の撤退が効いたとみて、やや楽観の確率を上げる。
- 中国の工場の売却が終わり、その現金で自己株買いをしたら
- 現金の戻り方を見直し、価値を引き上げる。
- 政策保有の株の売却額の目標を示したら
- 売る分を余った資産として足すことを考える。
- 業界の塗材の生産量が2年続けて5%以上減ったら
- 数量の縮みが速いとみて、やや悲観に寄せる。
- 原料高を移せず営業利益率が1%を割ったら
- 悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 日本仕上材工業会の生産量
- 責任施工の工事の売上と利益率
- 中国の工場の売却の完了と使い道
- 政策保有の株の売却
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の値段から置かず、資本コスト7.75%と10年後の自己資本の稼ぎだけで決めた。中立の ROE は5%前後で k を大きく下回るので、PER は 1÷k を上限にその6割に置き、余った現金20億円は戻り方0.75で別に足した。政策保有の株22億円は配当が利益に入るので価値に足さず、悲観の床にだけ数えた。今の PBR が0.5倍前後であることは計算のあとに見ただけで、割安の根拠にしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.1→14.34 倍・やや楽観 PER 9.3→12.9 倍・中立 PER 8.2→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。