結論
フランスベッドは、介護ベッドのレンタルを軸に、病院・施設向けの販売と、家庭用のベッド・寝具を手がける会社だ。筆者の結論は、今の値段は中立の見通しにほぼ見合う、というものだ。大きく割安でも割高でもない。
稼ぎの中心は福祉用具のレンタルだ。介護を受ける人は2030年代まで増えるので、需要は堅い。ただ、貸与の値段は介護保険の上限で決まり、物価の3%には届かない。人件費と配送費は物価並みに上がるため、売上が増えても利益は伸びにくい。
2026年3月期は、売上が2%増えたのに営業利益は8%減った。2月には、2027年3月期を最終年度とする中期計画の数値目標も取り下げた。会社自身が、収益構造の見直しを認めた形だ。
救いは財務と還元にある。実質的に無借金に近く、利益のほぼ全部を配当と自社株買いで株主に返している。一方で、インテリア事業は新築住宅の減少で細っている。
時価総額は約430億円。10年後の中立の利益に妥当な倍率を掛け、還元を足すと、今の値段とほぼ釣り合う。割安の決め手はない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、フランスベッドは「悪くないが、安くもない」会社だ。
まず事業の寿命は長い。介護は景気に左右されにくく、10年後もレンタルは続く。ここは筆者が評価する点だ。
次に堀は薄い。値段を自分で決められず、設備投資が重く、利益の多くが設備に再び吸われる。資本コストをわずかに下回る利益率は、事業のうま味が薄いことの表れだ。オーナーとして持ち続けたい会社の条件である、少ない資本で多く稼ぐ力を、まだ示していない。
資本の使い方は、株主に向いている。利益のほぼ全部を返し、無理な買収もしていない。ここは安心できる。ただ、返した分だけ成長のための再投資が減るので、利益は物価並みにしか伸びない。
安全域は、今の値段にはほとんどない。10年後の中立の利益に、妥当な倍率を掛けて還元を足すと、価値は今の時価総額とほぼ並ぶ。安全域を取るなら、利益率が上がる確かな兆しを待つのが筋だ。分からない部分は、2027年度の貸与価格の見直しの中身だ。確信度は、そこで下がる。
何で稼ぐ会社か
フランスベッドは、「眠り」と「介護」で稼ぐ会社だ。連結売上は約620億円。事業は大きく2つに分かれる。
1つ目はメディカルサービス事業で、売上の約7割を占める。柱は福祉用具のレンタルだ。介護保険を使い、要介護の人にベッドや車いすを月額で貸す。ケアマネジャー(介護の計画を立てる人)に選ばれるのが入口になる。貸したベッドは戻ってきたら整備し、別の人に貸す。使い回すほど儲かる商売だ。ほかに、病院・施設向けのベッド販売、病院や施設のシーツなどを洗って届けるリネンサプライ、補聴器や家具家電のレンタルがある。
2つ目はインテリア健康事業で、売上は約194億円。家庭用のベッドやマットレス、ふとん、家具を作って売る。ホテル向けも手がける。新築住宅の減少で家庭向けは細り、ホテルとネット販売が補っている。
会社の方針は、レンタルの比率を上げることだ。連結売上に占めるレンタルは45.8%で、2029年3月期に50%を目指す。売り切りより、毎月の収入が積み上がる形に寄せる狙いだ。
2021年にはホームケアサービス山口を買い、2025年6月には約4,300人の顧客を引き継いだ。関西には拠点を増やす。成長の手段は、地道な拠点づくりと顧客の引き継ぎだ。大型買収は、いまのところ見えない。
優良さと弱いところ
筆者は、フランスベッドの堀(他社がまねしにくい強み)は「普通」の厚さと見る。
強みは、レンタルの密度にある。全国に拠点を持ち、利用者の自宅へ配送し、戻り品を整備して回す。この仕組みは、拠点が近くにあるほど1件あたりの費用が下がる。ケアマネジャーとの付き合いも、簡単には真似できない。ベッドの製造を自社で持つ点も、戻り品の再生に生きる。
弱みは、値段を自分で決められないことだ。貸与の価格には国の上限がある。全国の平均に1標準偏差を足した額で、3年ごとに見直される。この制度は事業者の値上げを押さえつける。パラマウントベッドなど競合も多く、地域の事業者との競り合いも続く。
資本効率は並だ。自己資本利益率は10年の中央値が6.8%で、直近は6.7%。資本コストをわずかに下回る。会社が掲げた8.5%の目標にも届かなかった。レンタルは設備投資が重く、利益の多くが設備に再び吸われるためだ。
経営は株主に向いている。配当性向は50%を目安に、自社株買いも続ける。ただ、中期計画の目標を取り下げたことは、計画の精度に課題があったことを示す。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
福祉用具の貸与は、介護保険の中でも安定した分野だ。厚生労働省の調査では、利用者は全国で約234万人、1人あたりの貸与額は月約1.3万円(2020年前後)。ここから、市場は年約3,600億円、足元では4,000億円ほどと推定できる。
需要は人口で決まる。75歳以上の人は2030年代まで増える。要介護の人も増え、利用者は10年で1割ほど増えると筆者は見る。ただし、その先は人口減で頭打ちになる。
値段は制度が決める。上限価格は2018年から導入され、3年ごとに見直される。次の見直しは2027年度とみられる(筆者の推測)。物価が上がる中で、特例で上限を緩めるかが焦点だ。緩めなければ、事業者は人件費の上昇を価格に移せない。軽い用具は、貸与でなく販売を選べる制度も広がっている。
競合は、パラマウントベッドを筆頭に、地域の事業者が多い。事業者の数は長く減り続け、小さな会社が大手に顧客を譲る動きが続く。フランスベッドの顧客承継も、その流れにある。
インテリア側は、新築住宅の着工が減っている。家庭用ベッドは、ニトリなどの低価格との競り合いもある。業界は縮む中で、ホテル向けとネット販売が伸びの芽になる。
資本政策と M&A
還元は厚い。配当性向は連結で50%を目安にし、自社株買いも続ける方針だ。2026年3月期は、配当13.6億円と自社株買い15億円を合わせ、純利益とほぼ同額を株主に返した。配当は前期から増やす予定だ。
資金の使い道は、レンタル資産の購入が中心だ。年間の設備投資は約48.5億円で、うち38億円がレンタル資産。会社は新規投下を抑え、戻り品の再整備で費用を下げる考えだ。
M&Aは、2021年にホームケアサービス山口を子会社にした。福祉用具貸与の拠点とシェアを買う動きで、小さな買収を積む形だ。大型の買収は見えない。2024年には転換社債型の新株予約権付社債を50億円発行している(行使期限は2029年2月)。転換価額は確認できなかったが、転換が進めば株数は増える。
政策保有株は少額で、縮減の方針だ。大株主の上位には個人と不動産会社が並ぶ。参考として、kabufuの推計では10年以内の買収の確率は24%とされるが、筆者は買収を前提にした確率は置いていない。
株主優待もある。200株以上の株主に、自社の寝具や買物割引券(1万〜1.5万円相当)を贈る。年間の費用は開示で確かめられなかったが、対象の株主を約6,000人、原価を額面の約5割と置くと、年約3億円になる(推定)。これは費用として利益に入っており、株主の側から見れば現物の配当だ。10年で約30億円を還元に足した。2027年3月分からは、1年以上の継続保有が条件になる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
フランスベッドは、日本でいちばん確かな需要の上に座っている。介護を受ける人は2030年代まで増える。レンタルの売上は市場の伸び(3%台)を上回る6%台で伸びており、顧客の承継で一気に4,300人が増えた。市場にはまだ、小さな事業者が多い。大手に顧客を譲る流れは続く。
レンタルは使い回すほど儲かる。戻り品の再整備と再投入に力を入れ、設備投資を抑えられれば、利益率は上がる。会社は新規投入を絞る方針を、すでに打ち出した。関西には拠点を増やす。配送の密度が上がれば、1件あたりの費用が下がる。
インテリアも底に近い。ショールームの閉鎖と工場の集約が進み、ホテル向けは25%伸びた。ネット販売は倍になった。構造改革の特別損失は小さい。
株主への姿勢も良い。配当性向50%に加え、自社株買いを続ける。利益をほぼ全部返しても、財務は無借金に近い。中期計画の取り下げは、悪い計画を捨てて収益性を最優先にした、前向きな判断とも読める。
慎重な見方
売上が伸びても、利益は伸びていない。2026年3月期は増収なのに営業利益は8%減った。人件費、配送費、整備費が、貸与の値段の上昇を食っている。運転手の残業上限の規制で、配送の効率も落ちた。
値段は国が決める。貸与価格の上限は3年ごとに見直され、物価が上がっても、事業者は価格に転嫁しにくい。次の見直しで特例が出なければ、利益率はさらに下がる。軽い用具が販売に回る流れも、貸与の売上を削る。
インテリアは構造的に縮んでいる。新築住宅が減り、家庭向けのベッドは売れない。ニトリなどの低価格に価格で勝てない。ショールームを閉じても、売上の縮みは止まらない。
中期計画の取り下げは、計画の見通しが甘かったことを認めたに等しい。自己資本利益率は6.7%で資本コストに届かず、会社の言う8.5%はまだ遠い。レンタルは設備投資が重く、利益を稼ぐほど設備に吸われる。買収の転換社債も、株数を増やす重しだ。
時価総額が小さく、買い手の少ない銘柄だという点も軽く見られない。業績が崩れた時に、株主を守る安全域は厚くない。高齢者の数が頭打ちになる2030年代の後半には、需要の伸びも止まる。レンタルの利用者が減り始めれば、使い回しの仕組みは固定費の重荷に変わる。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分で強いのは、需要の確かさと、利益をほぼ全部返す姿勢だ。慎重な見方で強いのは、値段を国に決められることと、利益率が上がっていない事実だ。筆者は、利益率の改善は会社の言葉でなく実績を見るべきだと考え、確率をやや悲観側に寄せた。中立を38%、やや悲観を24%、悲観を10%とした。結果として、価値は今の時価総額をわずかに下回る程度で、適正の範囲に収まる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,561 円521 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 898 円300 億円)。 今の値に割り戻すと 1,433 円478 億円、今との差 +14.6%、 期待の年率 +7.0%(資本コスト 7.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,005 円1,003 億円 | 1,198 円400 億円 | +236.0% | +12.9% | 336 円112 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,261 円755 億円 | 1,073 円358 億円 | +166.5% | +10.3% | 667 円223 億円 |
| 中立 | 38% | 1,732 円578 億円 | 974 円325 億円 | +116.3% | +8.0% | 1,028 円343 億円 |
| やや悲観 | 24% | 749 円250 億円 | 755 円252 億円 | +20.2% | +1.9% | 361 円120 億円 |
| 悲観 | 10% | 301 円101 億円 | 360 円120 億円 | −47.2% | −6.2% | 66 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,561 円521 億円 | 898 円300 億円 | +96.5% | +7.0% | 2,458 円820 億円 |
今の株価時価総額 1,251 円418 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 介護の需要を取り込み、レンタルの利益率が上がり続ける 利益 55 億円 · PER 18.3 倍 · 株価時価総額 3,005 円1,003 億円
高齢者の数は2030年代に頭打ちになるが、それまで要介護の人は増え続ける。フランスベッドは大手の顧客承継と関西の拠点づくりでレンタルの利用者を増やし、1人あたりの売上も、見守り機能つきのベッドや家具家電のレンタルを足して引き上げる。
貸与価格は、物価上昇を受けた特例で上限が緩み、10年で物価並みに近づく。配送の密度が上がり、戻り品を再整備して使い回す仕組みが回って、レンタルの利益率は11%台に乗る。
病院・施設向けは見守りつきのベッドが定着し、リネンは受け入れ先の詰まりが解けて黒字が戻る。インテリアはホテル向けの電動ベッドのレンタルとネット販売が育ち、ショールームと工場の整理も終わって、利益率が6%台になる。
全社の営業利益率は8%台後半まで上がり、過去の山(7.8%)を上回る。条件が多く重なる、強気の筋書きだ。
- 福祉用具レンタル:数量 20.5(レンタル利用者数(万人))× 価格 1.34(1人あたり年間レンタル売上の指数(今=1.00=約15.6万円))→ 売上 429 億円・営業利益 49 億円。レンタル利用者 20.5 万人、1人あたり年間売上は今の 1.34 倍、営業利益率 11.5%
- 病院・施設向け販売とリネン:数量 5,000(病院・施設の取引先数(件))× 価格 1.40(1件あたり年間売上の指数(今=1.00=約400万円))→ 売上 280 億円・営業利益 17 億円。病院・施設の取引先 5,000 件、1件あたり売上は今の 1.40 倍、営業利益率 6.0%
- インテリア健康(ベッド・寝具・ホテル):数量 24.2(ベッド・寝具の販売点数(万点/年))× 価格 1.40(1点あたり売上の指数(今=1.00=約8万円))→ 売上 271 億円・営業利益 18 億円。ベッド・寝具の販売 24.2 万点/年、1点あたり売上は今の 1.40 倍、営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 55 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.3 倍。全体の PER 18.27 倍、時価総額 1,003 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利用者の増加・貸与価格の物価特例・インテリアの再建が全部そろう必要がある。条件が重なるので8%にとどめた。
やや楽観 20% レンタルが育ち、インテリアも下げ止まる 利益 45 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 2,261 円755 億円
レンタルは市場を上回る伸びを保ち、シェアが約6.4%から7%強へゆっくり上がる。価格は物価に届かないが、補聴器や家具家電のレンタルなど品揃えを足して、1人あたりの売上を押し上げる。
病院・施設向けは堅調に増え、リネンの採算も戻る。インテリアは、ホテル向けとネットが家庭向けの落ち込みを補い、構造改革の効果で赤字の芽が消える。
全社の営業利益率は7.9%ほどと過去の山とほぼ並ぶ。会社が取り下げた中計の目標(営業利益54億円)は10年かけて超える。
筆者は、この筋書きを「経営の計画がおおむね当たった姿」とみる。配当と自社株買いで利益のおよそ9割が株主に戻る点も、この筋書きでは続く。
- 福祉用具レンタル:数量 18.9(レンタル利用者数(万人))× 価格 1.26(1人あたり年間レンタル売上の指数(今=1.00=約15.6万円))→ 売上 372 億円・営業利益 40 億円。レンタル利用者 18.9 万人、1人あたり年間売上は今の 1.26 倍、営業利益率 10.8%
- 病院・施設向け販売とリネン:数量 4,800(病院・施設の取引先数(件))× 価格 1.33(1件あたり年間売上の指数(今=1.00=約400万円))→ 売上 255 億円・営業利益 14 億円。病院・施設の取引先 4,800 件、1件あたり売上は今の 1.33 倍、営業利益率 5.5%
- インテリア健康(ベッド・寝具・ホテル):数量 23.0(ベッド・寝具の販売点数(万点/年))× 価格 1.34(1点あたり売上の指数(今=1.00=約8万円))→ 売上 247 億円・営業利益 14 億円。ベッド・寝具の販売 23.0 万点/年、1点あたり売上は今の 1.34 倍、営業利益率 5.6%
倍率:事業の純利益 45 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.2% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍。全体の PER 16.92 倍、時価総額 755 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:顧客承継と関西の拠点づくりでシェアが伸び、インテリアの構造改革が効く姿は十分ありうる。ただ中計の目標を取り下げた直後で、強気には寄せない。20%。
中立 38% 利用者は緩やかに増え、値上げは物価に届かない 利益 37 億円 · PER 15.6 倍 · 株価時価総額 1,732 円578 億円
介護を受ける人は増えるが、増え方は緩やかだ。レンタルの利用者は10年で1割ほど増え、シェアは小さく上がる。貸与価格は制度で抑えられ、物価の3%には届かない。年2%ほどの値上がりにとどまる。
一方で、人件費と物流費は物価並みに上がる。配送の密度を高め、戻り品を再投入して設備投資を抑えることで、レンタルの利益率は今の10%台を、ほぼ保つ。病院・施設向けは、取引先がわずかに増える。
インテリアは、新築住宅の減少で家庭向けのベッドが細る。ホテルとネットで一部を補い、ショールームの閉鎖と工場の集約で利益率は5%に戻る。
全社の営業利益率は7.1%と、過去の山(7.8%)より低い。派手さはないが、止まらない稼ぎだ。
- 福祉用具レンタル:数量 17.9(レンタル利用者数(万人))× 価格 1.22(1人あたり年間レンタル売上の指数(今=1.00=約15.6万円))→ 売上 341 億円・営業利益 33 億円。レンタル利用者 17.9 万人、1人あたり年間売上は今の 1.22 倍、営業利益率 9.8%
- 病院・施設向け販売とリネン:数量 4,570(病院・施設の取引先数(件))× 価格 1.30(1件あたり年間売上の指数(今=1.00=約400万円))→ 売上 238 億円・営業利益 12 億円。病院・施設の取引先 4,570 件、1件あたり売上は今の 1.30 倍、営業利益率 5.0%
- インテリア健康(ベッド・寝具・ホテル):数量 21.8(ベッド・寝具の販売点数(万点/年))× 価格 1.30(1点あたり売上の指数(今=1.00=約8万円))→ 売上 227 億円・営業利益 11 億円。ベッド・寝具の販売 21.8 万点/年、1点あたり売上は今の 1.30 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍。全体の PER 15.58 倍、時価総額 578 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利用者は高齢化で緩やかに増え、価格は制度に抑えられ、人件費は物価並みに増える。いちばん実態に近い置き方で最大の確率を置く。
やや悲観 24% 貸与価格の抑制とベッド離れで、稼ぎが痩せる 利益 25 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 749 円250 億円
貸与価格の上限が見直され、物価に追いつかない年が続く。人件費・物流費の上昇を価格に移せず、レンタルの利益率は8%台に下がる。大手の薬局チェーンやネット事業者が、軽い用具の販売で顧客を取り始め、シェアもわずかに失う。
病院・施設向けは人手不足で施設の新設が遅れ、取引先数が減る。リネンは受け入れ先の詰まりが長引く。
インテリアは新築住宅の減少が続き、家庭向けベッドが細る。ホテルは訪日客の波が落ち着き、伸びが止まる。利益率は3%まで下がる。
全社の営業利益率は5.6%に落ちる。事業は壊れないが、配当を保つために自社株買いを絞る。筆者は、これを制度に頭を押さえられた谷の姿とみる。
- 福祉用具レンタル:数量 16.3(レンタル利用者数(万人))× 価格 1.15(1人あたり年間レンタル売上の指数(今=1.00=約15.6万円))→ 売上 293 億円・営業利益 25 億円。レンタル利用者 16.3 万人、1人あたり年間売上は今の 1.15 倍、営業利益率 8.5%
- 病院・施設向け販売とリネン:数量 4,200(病院・施設の取引先数(件))× 価格 1.25(1件あたり年間売上の指数(今=1.00=約400万円))→ 売上 210 億円・営業利益 7 億円。病院・施設の取引先 4,200 件、1件あたり売上は今の 1.25 倍、営業利益率 3.5%
- インテリア健康(ベッド・寝具・ホテル):数量 19.0(ベッド・寝具の販売点数(万点/年))× 価格 1.22(1点あたり売上の指数(今=1.00=約8万円))→ 売上 185 億円・営業利益 6 億円。ベッド・寝具の販売 19.0 万点/年、1点あたり売上は今の 1.22 倍、営業利益率 3.0%
倍率:事業の自己資本利益率は5.7%で資本コスト7%に届かない。ためた利益は額面未満の価値なので、上限 1÷k=13.3倍より低く、ROE÷k の比(約10倍)で10倍に置いた。今の利益は残るが、新しく投じるお金の稼ぎは資本コストを下回る。
確率:2027年度に見込まれる貸与価格の見直しで値上がりが抑えられ、インテリアも新築住宅の減少で縮む。人件費・物流費の上昇を価格に転嫁できないまま利益が痩せる姿は、強気側より少し重く24%。
悲観 10% 制度の転換で貸与が崩れ、優良さを失う 利益 5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 301 円101 億円
介護保険の財源が苦しくなり、貸与から販売へ切り替える用具が広がる。貸与の上限価格も大きく下げられ、レンタルの利益率が5%に落ちる。人手不足で配送コストは上がり続ける。
病院・施設向けでは、安い輸入ベッドとの競り合いで利益が出なくなる。リネンは受け入れ先の詰まりが解けず、撤退に近い縮小になる。インテリアは家庭向けの需要が細り、赤字が続いて、のれんと設備の減損が出る。
全社の営業利益率は2%に満たず、自己資本利益率は資本コストを大きく下回る。もはや優良な会社ではなく、配当も大きく減る。この場合の価値は稼ぐ力でなく、売れる資産(土地・在庫)で測る。
- 福祉用具レンタル:数量 13.5(レンタル利用者数(万人))× 価格 1.05(1人あたり年間レンタル売上の指数(今=1.00=約15.6万円))→ 売上 221 億円・営業利益 11 億円。レンタル利用者 13.5 万人、1人あたり年間売上は今の 1.05 倍、営業利益率 5.0%
- 病院・施設向け販売とリネン:数量 3,300(病院・施設の取引先数(件))× 価格 1.15(1件あたり年間売上の指数(今=1.00=約400万円))→ 売上 152 億円・営業利益 2 億円。病院・施設の取引先 3,300 件、1件あたり売上は今の 1.15 倍、営業利益率 1.0%
- インテリア健康(ベッド・寝具・ホテル):数量 14.5(ベッド・寝具の販売点数(万点/年))× 価格 1.10(1点あたり売上の指数(今=1.00=約8万円))→ 売上 128 億円・営業利益 −3 億円。ベッド・寝具の販売 14.5 万点/年、1点あたり売上は今の 1.10 倍、営業利益率 -2.0%
倍率:事業の純利益5億円は自己資本のわずか1%台で、資本コストを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)は約70億円にとどまる。売れる資産の税引き後(土地・在庫)を床にし、時価総額はそれに合わせた。
確率:貸与から販売への移行の拡大や上限価格の大幅な引き下げ、大手の参入が重なると、レンタルの利益率が崩れる。介護保険の骨格は残るので起こりにくいが、5%を上回る1割は置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
福祉用具レンタル
介護保険の福祉用具貸与(介護ベッド・車いすなど)と、家具家電・補聴器・ホテル向けのレンタル。
| 数量レンタル利用者数(万人) | 価格1人あたり年間レンタル売上の指数(今=1.00=約15.6万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 16.0 | 1.00 | 250 | 26 |
| 10 年後 中立 | 17.9 | 1.22 | 341 | 33 |
取り方:数量はレンタル利用者の人数。福祉用具のレンタル売上を約250億円と推定(連結売上のレンタル比率45.8%から、家具家電や補聴器、ホテル向けの電動ベッドのレンタルを除いた分)。全国の1人あたり貸与額が月約1.3万円(国の調査、2020年前後)なので、年約15.6万円で割って約16万人、全国の貸与約4,000億円に対するシェアは約6%。開示はなく推定。営業利益は、メディカルの経常利益約34億円のうち約26億円と推定。
病院・施設向け販売とリネン
病院・介護施設向けの医療介護ベッドの販売、リネンサプライ、介護用品の販売。
| 数量病院・施設の取引先数(件) | 価格1件あたり年間売上の指数(今=1.00=約400万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,350 | 1.00 | 174 | 8 |
| 10 年後 中立 | 4,570 | 1.30 | 238 | 12 |
取り方:数量は病院・介護施設などの取引先の数。病院・施設向けの医療介護ベッドとマットレスの販売、リネンサプライ、介護用品の販売で、メディカル全体の売上約424億円からレンタル約250億円を引いた約174億円と推定。1件あたり年約400万円と置いて約4,350件。開示はなく推定。営業利益はメディカルの残り約7.5億円と推定。
インテリア健康(ベッド・寝具・ホテル)
家庭用ベッド・マットレス・寝装品・家具の製造販売と、ホテル向けのベッド。
| 数量ベッド・寝具の販売点数(万点/年) | 価格1点あたり売上の指数(今=1.00=約8万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 24.2 | 1.00 | 194 | 10 |
| 10 年後 中立 | 21.8 | 1.30 | 227 | 11 |
取り方:数量はベッド・マットレス・寝装品の販売点数。インテリア健康の売上193.8億円(開示)を、1点あたり約8万円(ベッド・マットレス・ふとんの混合の推定)で割って約24万点。営業利益はセグメントの経常利益9.5億円(開示)をそのまま営業利益とみた。
リスクと懸念
貸与価格の上限の見直し
貸与の価格には国の上限があり、3年ごとに見直される。次は2027年度とみられる(筆者の推測)。物価特例が出なければ、人件費・配送費の上昇を価格に移せず、利益率が下がる。事業の根幹を制度が握っている。
貸与から販売への切り替え
軽い用具は、貸与でなく販売を選べる制度が広がっている。選択制の対象が増えれば、毎月の収入が積み上がるレンタルの前提が崩れる。会社が目指すレンタル比率50%にも逆風になる。
人手と配送費の上昇
配送と整備は人の手がかかる。運転手の残業上限の規制で、配送の時間が短くなり、効率が落ちた例がすでにある。賃上げが物価を超えて続けば、利益率はさらに削られる。
インテリア事業の縮み
新築住宅の減少で、家庭向けのベッドは売れない。ニトリなど低価格との競り合いもある。ショールームの閉鎖と工場の集約を進めているが、売上の縮みが止まらなければ、減損が出る。
リネンの受け入れ先の詰まり
リネンは、施設側の受け入れが詰まり、臨時の費用が出て利益が急減した。増える売上が利益に変わらない典型で、解消に時間がかかれば、メディカルの利益率を下げる。
新株予約権付社債と株数
50億円の転換社債型の新株予約権付社債がある(行使期限は2029年2月)。転換価額は確認できなかったが、株価が上がって転換が進めば株数が増え、既存の株主の取り分が薄まる。
計画の精度と経営の信頼
2027年3月期を最終年度とする中期計画の数値目標を、取り下げた。事業環境の変化と収益構造の見直しが理由だ。計画が当たらないことが繰り返されると、会社の見通しは信じにくくなる。
今後の分かれ目
- 2027年度の貸与価格の見直しで、物価上昇に対応する特例が出たら
- レンタルの価格が物価並みに近づくので、やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- 貸与価格の上限が大きく下がり、販売への切り替え対象も広がったら
- 利益率が崩れる筋書き(やや悲観・悲観)に確率を寄せる。
- レンタルの利用者が市場を上回って伸び続け、営業利益率が8%を超えたら
- 配送の密度の効果が出たと判断し、中立の利益率を引き上げる。
- インテリアの構造改革が終わり、利益率が5%を超えて定着したら
- インテリアの下振れが消えるので、やや楽観に確率を寄せる。
- 転換社債の転換が進み、株数が大きく増えたら
- 既存の株主の取り分が薄まるので、価値を割り引いて見直す。
- 他社が買収を持ちかけたら(時価総額が手頃で、財務が堅い)
- 買収の価格で価値が確定する筋書きが加わる。ただし筆者は、買収を前提にした確率は置いていない。
見ておくもの
- 福祉用具貸与の上限価格の見直し(2027年度)と物価特例の有無
- 貸与から販売への選択制の対象の広がり
- レンタルの売上の伸びと、市場の伸びとの差
- メディカルとインテリアの経常利益率
- 自社株買いの有無と総還元性向
- 新株予約権付社債の転換の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の自己資本利益率と資本コスト7%から、正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の式で出し、市場の倍率は使っていない。中立のROEは約8.4%でkを上回るので、下限は1÷k=13.3倍とし、13.5倍に置いた。今の株価は筋書きを作ったあとで比べただけで、今の値段が倍でも半分でも、価値の計算は変わらない。セグメントの売上と利益は、開示の総額とレンタル比率からの推定で、推定と明記した。貸与の価格は物価3%に届かないとみて10年1.22倍としたが、その理由は国の上限価格の仕組みにあり、今の株価とは関係がない。新リース会計基準は2028年3月期から効くが、10年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。同業の領域(オフィス家具・住宅設備機器)の会社とは事業が違うため、倍率の物差しは式から直接出した。株主優待は年約3億円(推定、対象の株主数が開示で確かめられないため)を10年の還元に足し、悲観側は縮める前提で減らした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.4→18.27 倍・やや楽観 PER 14.1→16.92 倍・中立 PER 13.5→15.58 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に品質0%を足した7.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 7.00%。