結論
ナカバヤシは、アルバムや製本で知られる大阪の会社だ。製本・手帳・BPOを担うビジネス向けと、アルバム・文具・オフィス家具を扱う消費者向けが、売上の半々を占める。筆者の結論は、今の値段はやや割高である。
2026年3月期の売上は616億円、営業利益は29億円、営業利益率は4.7%。価格改定と原価低減で、利益は前期から6割増えた。自己資本は308億円で、時価総額はその半分にとどまる。
安さの理由は明らかだ。国内の紙の需要は縮み続け、少子化はアルバムを直撃する。BPOや派遣の仕事は、AIエージェントに置き換えられていく。利益率は過去12年を通じて、5%を超えたことがない。
筆者が見るのは、10年後の稼ぐ力だ。値上げで数量の減りを補っても、営業利益は30億円前後にとどまる。ROEは4%台で、資本コストに届かない。ためた利益は、額面より低い価値しか持たない。自己資本の半値は、割安というより、その事実の反映である。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、持ちたい会社と言い切れない。理由は、稼ぐ力が資本コストに届かず、主力の需要が縮み、人手の仕事がAIに置き換えられるからだ。安さは、そのまま割安を意味しない。
良い点は、財務の堅さと、配当を出す姿勢だ。自己資本比率は57%、純有利子負債は自己資本の12%。2026年3月期は価格改定と原価低減で、営業利益を6割増やした。経営陣が利益率を上げる意思を持つのは確かだ。
気になる点は、利益の質だ。営業利益率の最高が4.7%と、価格の支配力が弱い。バイオマス発電では12億円の減損を出し、資本配分の失敗が見えた。
安全域は、資産にある。悲観の床でも、売れる工場や有価証券、現金が残る。ただ、これは稼ぐ力ではなく、清算に近い話だ。
10年後の中立は、純利益19億円、ROE 4%台。ためた利益は額面より低く評価され、価値は今の値段をやや下回る。筆者は、PBR1倍に向けた資産の見直し(政策保有株や遊休地の売却、自社株買い)が実行に移るかを見る。
何で稼ぐ会社か
事業は四つに分かれる。2026年3月期の売上616億円のうち、ビジネスプロセスソリューション(BPS)が296億円、コンシューマーコミュニケーションズ(CC)が306億円、エナジーが13億円、その他が1億円だ。
BPSは、法人向けの仕事を引き受ける。図書館向けの図書製本、法人向け手帳、シール・ラベル、パッケージ、卒業アルバムなどを作る。加えて、書類のデータ化や事務を代行するDPS・BPO、人材派遣、図書館の業務受託も行う。営業利益は11億円、利益率は3.8%と薄い。
CCは、アルバム、ファイル、ノート、文具、オフィス家具、シュレッダ、防災用品、ぬいぐるみを売る。会社の名を広めたフエルアルバムはこの事業だ。営業利益は18億円で、利益率は5.9%。2026年3月期は価格改定で利益が5割増えた。
エナジーは、島根の松江バイオマス発電(55%出資)による木質バイオマス発電と、太陽光発電だ。発電設備で12億円の減損を出し、利益はほぼゼロ。
その他は、野菜プラントとにんにく農場で、小さい。
連結の従業員は2,004人。臨時の従業員が年平均1,467人と多く、人手で回す業務が大きい。
優良さと弱いところ
強みは、長い取引と、全国の販売網だ。図書館や自治体、学校との取引が長く、図書製本や卒業アルバムで安定した需要を持つ。アルバムのブランド力は今も残る。
財務は堅い。自己資本比率は57%、純有利子負債は38億円で、自己資本の12%にすぎない。営業利益は支払利息の29倍を稼ぐ。配当は性向30〜40%を目標とし、2026年3月期の性向は31%だった。
弱みは三つある。第一に、利益率が低い。過去12年の営業利益率は、最高でも4.7%。第二に、主力の需要が縮む。デジタル化、少子化、ペーパーレスの三つが重なる。第三に、BPO・派遣など人の時間で売る仕事が大きい。この領域は、AIエージェントによる置き換えが早い。
加えて、過去に日本年金機構の入札をめぐり、公正取引委員会から排除措置命令と課徴金納付命令を受けた。コンプライアンスの傷として残る。
資本効率も低い。過去10年のROEの中央値は6.4%で、資本コストを下回り続けてきた。堀は強くない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の文具・事務用品の市場は、約3,900億円で縮んでいる。2024年度は前年比0.9%減。デジタル化とペーパーレスで事務用紙が減り、少子化が学童文具とアルバムを細らせる。
図書製本と手帳も同じだ。図書館や企業向けの紙の需要は、電子化で減っていく。卒業アルバムは、子どもの数と、デジタル化の両方に挟まれる。
逆風は、AIにもある。書類をデータ化する仕事や、事務の代行は、AIエージェントに置き換えられる最初の領域だ。派遣や図書館の受託も、人の時間で売る仕事のため同じ影響を受ける。
追い風は小さい。原紙や樹脂の価格が上がる中で、値上げが通ったことだ。紙以外のオフィス家具や防災用品に軸足を移す余地はあるが、まだ小さい。
文具・紙製品の競合は、コクヨ(首位)、キングジムなどだ。リーマン級の谷では、広告と販促の予算が削られ、紙製品の受注が一気に落ちる。2009年3月期も、営業利益率は2.5%に下がった。10年の構造では、縮む需要を値上げと新規事業で補えるかが分かれ目になる。国内の学校や図書館の電子化が進む速さも、受注を左右する。
資本政策と M&A
配当は連結性向30〜40%が目標だ。2026年3月期の性向は31%。自己株式は発行済株式の5.8%を持つ。PBR1倍に向けた資産効率の改善を中期計画に掲げ、固定資産と投資有価証券の見直しを課題に挙げている。
政策保有株は24銘柄で、貸借対照表の計上額は28億円と、自己資本の1割弱にとどまる。保有目的は取引関係の維持だ。持ち合いの売却は、中期計画の議題に入っている。
株主優待は、100株以上に少額の自社製品か寄付、5,000株以上で1万円相当の自社製品を贈る。費用は年1億円に届かず、還元には数えない。
大株主は、フエル共益会が8.8%、第一生命が7.8%、従業員持株会が4.6%、りそな銀行が3.7%。持ち合いが厚く、支配株主はいない。TOBの参考確率は33%だが、筋書きには入れていない。
中期計画「Go on 5ing」は、2027年3月期に売上660億円、営業利益33億円を目標とする。新規事業で50億円の売上も掲げる。
減価償却は物価で増やさない。工場は堺・佐田・松江など複数あり、更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年3月期は、価格改定と原価低減の効果で、営業利益が6割増の29億円になった。営業利益率は4.7%と、約25年ぶりの高さに並んだ。CCは売値が通り、利益が5割増えた。会社は2027年3月期に営業利益33億円、率5%を目標とする。
財務は堅く、自己資本の半値。会社はPBR1倍に向けた資産効率の改善を掲げ、政策保有株の見直しと、配当性向30〜40%の維持を約束している。自己株式の取得にも動く余地がある。
新規事業は、売上50億円を目指す。紙以外の柱を育てる計画だ。BPOの人手は、AIを自社で使いこなして生産性を上げる側に回れる。
エナジー事業は、減損で重荷を落とした。固定価格の売電は安定した現金を生む。競合のコクヨも家具と文具で稼ぎ方を変えており、中堅が生き残る道は、得意の領域に絞ることだ。10年後に売上800億円、営業利益48億円、純利益32億円まで伸びれば、時価総額は今の2倍を超える。
慎重な見方
国内の紙の需要は、どの領域でも縮んでいる。図書製本、手帳、アルバムは、人口減とペーパーレスで、数量が毎年減る。2026年3月期の売上は1.9%減で、利益の伸びは値上げによるものだ。値上げは繰り返せない。
BPS売上の4割強を占める、BPO・派遣・図書館受託は、AIエージェントの置き換えが最も早い領域だ。文書のデータ化は、最初に自動化される仕事のひとつである。
利益率の天井が低い。過去12年の営業利益率は、最高でも4.7%。5%の目標は、一度も届いたことがない。2023年3月期は0.7%まで落ち、赤字を出した。
資本の使い方にも疑問が残る。バイオマス発電で12億円の減損を出した。ROEの中央値は6.4%で、資本コストを下回り続けた。ためた利益は額面の価値がない。
過去に年金機構の入札で、排除措置命令と課徴金を受けている。自己資本の半値は、割安ではなく、稼ぐ力の低さを織り込んだ値段だ。営業利益率が3%台にとどまる年が多く、資本コストを上回る利益を出した年は少ない。
どちらに重みを置いたか
価格改定の効果と、財務の堅さは確かだが、主力需要の縮みと、利益率の低さ、AIによる置き換えも同じくらい確かだ。確率は強気7%、やや強気20%、中立37%、やや悲観24%、悲観12%に置いた。
中立の純利益は19億円で、ROEは4%台。資本コストに遠く、ためた利益は額面を下回る。価値は今の時価総額をやや下回る。強気に寄せなかった点は、確認しておく。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 890 円241 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 213 円58 億円)。 今の値に割り戻すと 546 円148 億円、今との差 +0.7%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,567 円425 億円 | 332 円90 億円 | +250.3% | +13.4% | 133 円36 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,296 円351 億円 | 288 円78 億円 | +192.1% | +11.3% | 317 円86 億円 |
| 中立 | 37% | 1,050 円285 億円 | 240 円65 億円 | +137.9% | +9.1% | 477 円129 億円 |
| やや悲観 | 24% | 451 円122 億円 | 166 円45 億円 | +13.8% | +1.3% | 148 円40 億円 |
| 悲観 | 12% | 203 円55 億円 | 29 円8 億円 | −57.1% | −8.1% | 28 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 890 円241 億円 | 213 円58 億円 | +103.4% | +7.4% | 1,103 円299 億円 |
今の株価時価総額 542 円147 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 7% 値上げが定着し、新規事業も育って営業利益率が5%台後半へ 利益 32 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,567 円425 億円
国内の文具・紙製品は縮むが、値上げの定着と、高付加価値の商品で単価を保つ。コンシューマー事業の売値は名目で1.40倍に上がり、出荷点数は横ばいを保つ。
製本・手帳は需要が細るが、図書館業務や自治体向けのデジタル化の受託が、置き換えを補う。BPOの人手は、AIの活用で生産性を上げ、数量の減りを0.9倍にとどめる。
新規事業の50億円が立ち上がり、バイオマスは黒字に戻る。
売上は800億円、営業利益は48億円(利益率6%)、純利益は32億円。ROEは6.6%で資本コストに届かないが、資産の見直しで資本が軽くなる。
配当は性向35%で、10年で約90億円になる。
(名目の前提)BPSの数量は0.9倍、価格は1.34倍。CCの数量は1.00倍、価格は1.40倍。本社費用は1.34倍。減価償却は物価で増やさない。
- ビジネスプロセスソリューション(図書製本・手帳・BPO・派遣・ラベル):数量 90.0(取扱量(百万単位・推定))× 価格 3.97(1百万単位あたり売上(億円))→ 売上 357 億円・営業利益 18 億円。数量 0.90倍・単価 1.34倍・営業利益率 5.0%
- コンシューマーコミュニケーションズ(アルバム・文具・オフィス家具):数量 100(出荷点数(百万点・推定))× 価格 4.28(1百万点あたり売上(億円))→ 売上 428 億円・営業利益 31 億円。数量 1.00倍・単価 1.40倍・営業利益率 7.2%
- エナジー(木質バイオマス・太陽光発電):数量 40.0(発電量(GWh・推定))× 価格 0.32(1GWhあたり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.00倍・営業利益率 3.0%
- その他(野菜プラント・にんにくファーム):数量 10.0(出荷量(トン・推定))× 価格 0.14(1トンあたり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.34倍・営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 384 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の紙製品の縮小が緩み、価格改定を保ち、計画の新規事業(50億円)も立ち上がる必要がある。BPOの置き換えも想定より遅い、という前提も要る。同じ領域の強気(7〜10%)の下端に置いた。
やや楽観 20% 値上げが通り、紙製品の縮みを価格で補う 利益 25 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,296 円351 億円
価格改定が通り、CCの売値は1.37倍に上がる。出荷点数は0.94倍まで減る。BPSは、製本・手帳が細り、BPO・派遣が一部AIに置き換わって、取扱量が0.85倍になる。
会社が掲げる営業利益率5%に近づく。バイオマスは小さな黒字。
売上は738億円、営業利益は39億円、純利益は25億円。ROEは5.4%。
配当は性向33%で、10年で約78億円になる。
(名目の前提)BPSの数量は0.85倍、価格は1.31倍。CCの数量は0.94倍、価格は1.37倍。本社費用は1.34倍。減価償却は物価で増やさない。
- ビジネスプロセスソリューション(図書製本・手帳・BPO・派遣・ラベル):数量 85.0(取扱量(百万単位・推定))× 価格 3.88(1百万単位あたり売上(億円))→ 売上 330 億円・営業利益 15 億円。数量 0.85倍・単価 1.31倍・営業利益率 4.5%
- コンシューマーコミュニケーションズ(アルバム・文具・オフィス家具):数量 94.0(出荷点数(百万点・推定))× 価格 4.19(1百万点あたり売上(億円))→ 売上 394 億円・営業利益 25 億円。数量 0.94倍・単価 1.37倍・営業利益率 6.4%
- エナジー(木質バイオマス・太陽光発電):数量 40.0(発電量(GWh・推定))× 価格 0.32(1GWhあたり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.00倍・営業利益率 1.0%
- その他(野菜プラント・にんにくファーム):数量 10.0(出荷量(トン・推定))× 価格 0.14(1トンあたり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.34倍・営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 25 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.3% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 303 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2026年3月期に営業利益が6割増え、価格改定とコスト低減が効いた。この勢いが続くとみて、強気側の中心に置いた。ただしBPOの人手の事業は、置き換えを織り込んで数量を減らしている。
中立 37% 売上は横ばい、利益率は4%台半ば。紙製品の縮みを値上げが相殺する 利益 19 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 1,050 円285 億円
紙製品の出荷は人口とペーパーレスで細り、CCの出荷点数は0.88倍になる。BPSは、製本・手帳が0.88倍、BPO・派遣・図書館受託がAIで0.68倍に減り、全体で0.78倍。価格は物価並みに通らず、BPSで1.28倍、CCで1.34倍にとどまる。
売上は671億円、営業利益は30億円(利益率4.5%)。過去12年の最高(4.7%)に近い水準を保つ。
エナジー事業は、売電価格が固定のため、物価で売上が増えない。燃料費だけが上がり、利益はゼロ近辺。
純利益は18.6億円で、ROEは4.2%。配当は性向33%で、10年で約65億円になる。
(名目の前提)BPSの数量は0.78倍、価格は1.28倍。CCの数量は0.88倍、価格は1.34倍。エナジーの価格は1.00倍(売電価格が固定)。本社費用は1.34倍。減価償却は物価で増やさない。
- ビジネスプロセスソリューション(図書製本・手帳・BPO・派遣・ラベル):数量 78.0(取扱量(百万単位・推定))× 価格 3.79(1百万単位あたり売上(億円))→ 売上 296 億円・営業利益 11 億円。数量 0.78倍・単価 1.28倍・営業利益率 3.7%
- コンシューマーコミュニケーションズ(アルバム・文具・オフィス家具):数量 88.0(出荷点数(百万点・推定))× 価格 4.10(1百万点あたり売上(億円))→ 売上 361 億円・営業利益 20 億円。数量 0.88倍・単価 1.34倍・営業利益率 5.6%
- エナジー(木質バイオマス・太陽光発電):数量 40.0(発電量(GWh・推定))× 価格 0.32(1GWhあたり売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.00倍・営業利益率 0.0%
- その他(野菜プラント・にんにくファーム):数量 10.0(出荷量(トン・推定))× 価格 0.14(1トンあたり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.34倍・営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.1% が k 8.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍。全体の PER 12.12 倍、時価総額 225 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の紙製品と図書製本は縮み続け、BPOはAIに置き換えられる。一方で、価格改定と原価低減で利益率は上がった。この二つが釣り合い、利益は今の水準に近い、という中心の筋書きに最も重く置いた。
やや悲観 24% 値上げが止まり、BPOが置き換わって利益が3割減る 利益 9 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 451 円122 億円
原紙や樹脂の高騰を、値上げで転嫁しきれない。出荷点数は0.78倍に減り、BPSの取扱量も、AIによるデータ入力やBPOの置き換えで0.68倍になる。売値は名目でも1.18〜1.22倍にとどまる。
バイオマスは、燃料費の上昇で赤字が続く。
売上は542億円、営業利益は19億円、純利益は9.4億円。ROEは2.3%。
配当は性向を保てず、10年で約45億円にとどまる。
(名目の前提)BPSの数量は0.68倍、価格は1.18倍。CCの数量は0.78倍、価格は1.22倍。エナジーの価格は1.00倍。本社費用は1.20倍。減価償却は物価で増やさない。
- ビジネスプロセスソリューション(図書製本・手帳・BPO・派遣・ラベル):数量 68.0(取扱量(百万単位・推定))× 価格 3.49(1百万単位あたり売上(億円))→ 売上 238 億円・営業利益 7 億円。数量 0.68倍・単価 1.18倍・営業利益率 3.0%
- コンシューマーコミュニケーションズ(アルバム・文具・オフィス家具):数量 78.0(出荷点数(百万点・推定))× 価格 3.73(1百万点あたり売上(億円))→ 売上 291 億円・営業利益 13 億円。数量 0.78倍・単価 1.22倍・営業利益率 4.5%
- エナジー(木質バイオマス・太陽光発電):数量 36.0(発電量(GWh・推定))× 価格 0.32(1GWhあたり売上(億円))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90倍・単価 1.00倍・営業利益率 -3.0%
- その他(野菜プラント・にんにくファーム):数量 10.0(出荷量(トン・推定))× 価格 0.12(1トンあたり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00倍・単価 1.20倍・営業利益率 5.0%
倍率:ROE は2.3%と k 8.25% を大きく下回る。PER の上限 1÷k=11.8 倍の約64%の7.5倍に置いた。利益が薄い筋書きのため。
確率:国内の紙製品が縮み、価格改定にも限りがある。AIが文書のデータ化やBPOを置き換える動きは、予想より早い可能性がある。同じ領域の悲観側(20〜24%)の中ほどに置いた。
悲観 12% 紙製品とBPOが構造的に縮み、売上が半分、利益はほぼゼロになる 利益 1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 203 円55 億円
紙製品の国内需要が構造的に縮み、アルバムの需要も戻らない。CCの出荷点数は今の0.55倍まで減り、価格競争で売値は名目でも上がらない。
BPSは、データ化やBPOの仕事をAIエージェントが飲み込み、取扱量は0.45倍に落ちる。派遣や図書館業務の受託も、人手の置き換えが進む。
バイオマス発電は、固定価格の期間が終わり、採算がとれず閉鎖に向かう。
売上は302億円と半分になり、営業利益は1億円にとどまる。10年に設備と事業の整理で約60億円の損失が出て、自己資本は約250億円に削られる。
価値の支えは、稼ぐ力でなく、売れる資産になる。配当は大きく減り、10年で約8億円にとどまる。
(名目の前提)BPSの数量は0.45倍、価格は1.00倍。CCの数量は0.55倍、価格は1.00倍。本社費用は1.10倍。減価償却は物価で増やさない。
- ビジネスプロセスソリューション(図書製本・手帳・BPO・派遣・ラベル):数量 45.0(取扱量(百万単位・推定))× 価格 2.96(1百万単位あたり売上(億円))→ 売上 133 億円・営業利益 0 億円。数量 0.45倍・単価 1.00倍・営業利益率 0.0%
- コンシューマーコミュニケーションズ(アルバム・文具・オフィス家具):数量 55.0(出荷点数(百万点・推定))× 価格 3.06(1百万点あたり売上(億円))→ 売上 168 億円・営業利益 2 億円。数量 0.55倍・単価 1.00倍・営業利益率 1.0%
- エナジー(木質バイオマス・太陽光発電):数量 0.0(発電量(GWh・推定))× 価格 0.32(1GWhあたり売上(億円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。数量 0.00倍・単価 1.00倍・営業利益率 0.0%
- その他(野菜プラント・にんにくファーム):数量 5.0(出荷量(トン・推定))× 価格 0.10(1トンあたり売上(億円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。数量 0.50倍・単価 1.00倍・営業利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力はほぼゼロ。売れる資産の床(floor_assets_oku)をそのまま時価総額に置いた。今の自己資本308億円に対する PBR は約0.18倍。工場と在庫を売り急ぐ筋書きのため、帳簿の自己資本は価値の床にならない。EV÷営業利益は利益がほぼゼロの年のため意味を持たず、参考にとどめる。
確率:アルバムや手帳、図書製本の需要が人口減とペーパーレスで細り、BPOや派遣はAIエージェントに置き換えられる。過去にも2023年3月期に営業利益率が0.7%まで落ち、赤字を出した。自己資本比率は57%と厚いため、倒産には至らないが、稼ぐ力は失われる。同じ領域の悲観(8〜11%)に合わせ12%に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ビジネスプロセスソリューション(図書製本・手帳・BPO・派遣・ラベル)
図書製本、法人向け手帳、DPS・BPOサービス、人材派遣、図書館業務の受託、シール・ラベル、パッケージ、卒業アルバム。
| 数量取扱量(百万単位・推定) | 価格1百万単位あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.96 | 296 | 11 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 3.79 | 296 | 11 |
取り方:セグメント売上296.18億円を、製造品の出荷と受託業務を合わせた取扱量100百万単位(推定)で割った。開示は点数や件数を出さないため、売上を点数・件数・時間に分けられず、単位は推定の置き方。製造系(図書製本・手帳・ラベル等)が6割弱、人の手で回す受託系(BPO・派遣・図書館)が4割強と推定した。営業利益はセグメント利益11.35億円。
コンシューマーコミュニケーションズ(アルバム・文具・オフィス家具)
アルバム、ファイル、ノートなどの紙製品、文具・事務用品、オフィス家具、防犯・防災用品、シュレッダ、ぬいぐるみ、EC。
| 数量出荷点数(百万点・推定) | 価格1百万点あたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 3.06 | 306 | 18 |
| 10 年後 中立 | 88.0 | 4.10 | 361 | 20 |
取り方:セグメント売上305.91億円を、出荷点数100百万点(推定)で割った。1点あたりの平均は安価な紙製品から高額なシュレッダ・家具までの混ざり。点数は開示がなく推定。営業利益はセグメント利益18.08億円。
エナジー(木質バイオマス・太陽光発電)
松江バイオマス発電(55%出資)の木質バイオマス発電と、太陽光発電。売電価格は制度で固定される。
| 数量発電量(GWh・推定) | 価格1GWhあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.32 | 13 | 0 |
| 10 年後 中立 | 40.0 | 0.32 | 13 | 0 |
取り方:セグメント売上12.84億円を、発電量40GWh(推定)で割った。1GWhあたり約0.32億円は、売電価格の推定。燃料チップの在庫を見ながら出力を調整している。営業利益はセグメント利益0.08億円。木質バイオマスの固定資産で12.29億円の減損を出した。
その他(野菜プラント・にんにくファーム)
野菜プラント事業、にんにくファーム事業。
| 数量出荷量(トン・推定) | 価格1トンあたり売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 0.10 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 10.0 | 0.14 | 1 | 0 |
取り方:セグメント売上1.04億円を、出荷量10トン(推定)で割った。営業利益は0.12億円。
リスクと懸念
紙の国内需要の縮小
図書製本、手帳、アルバム、事務用紙は、デジタル化と少子化で数量が毎年減る。2026年3月期の売上は1.9%減だった。利益の伸びは値上げに頼っており、繰り返せない。図書館・自治体向けの電子化は、製本の受注を直接減らす。
AIエージェントによる置き換え
BPSのうち、文書のデータ化、事務の代行、派遣、図書館業務の受託は、人の時間で売る仕事だ。AIエージェントに置き換えられる最初の領域で、数量と価格の両方に下げ圧力がかかる。売上の4割強がこの型とみる(推定)。
利益率の低さと原価の上昇
営業利益率は最高でも4.7%。原紙や樹脂の価格が上がると、値上げが遅れた期に利益が一気に落ちる。2023年3月期は0.7%まで落ち、赤字を出した。人件費は物価で上がり、1,467人の臨時従業員の賃金も押し上げる。
バイオマス発電の採算
松江バイオマス発電(55%出資)は、12億円の減損を出した。燃料チップの在庫を見ながら出力を調整している。売電価格は固定のため、燃料費が上がると採算が悪化する。固定価格の期間が終わった後の収益は読みにくい。
コンプライアンス
日本年金機構の入札をめぐり、公正取引委員会から排除措置命令と課徴金納付命令を受けた。公共調達に依存する図書館・自治体向けの業務で、再発すれば信用を失う。情報セキュリティ事故も、データを預かるBPOでは重い。
資本配分と持ち合い
政策保有株は24銘柄、28億円ある。PBR1倍に向けた見直しを掲げるが、実行の速度は読めない。バイオマスの減損のように、資本配分の失敗がまた出る恐れもある。自己資本の半分近くが、低い収益の資産に使われている。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が会社計画の33億円を上回る
- 価格改定と原価低減が効き続けた合図で、やや強気の筋書きに寄る。営業利益率が5%を超えるかが分かれ目になる。
- CCの出荷点数が前年を下回る年が続き、値上げが通らなくなる
- 縮む需要を価格で補えない合図だ。やや悲観の筋書きに寄る。
- BPOの受託で、AIを活用した生産性向上が数字に出る
- AIを味方につけた合図で、BPSの数量の減りが緩む。強気側に寄る。
- 政策保有株・遊休地の売却と、自社株買いが実行される
- PBR1倍に向けた資産の見直しが進む合図だ。ためた利益の価値が上がる。
- 松江バイオマス発電の赤字が続く、または追加の減損が出る
- 資本配分の失敗が再発した合図で、悲観側に寄る。
- 新規事業の売上が50億円の目標に向けて積み上がる
- 紙以外の柱が育つ合図で、強気側に寄る。
見ておくもの
- 営業利益率(5%の目標に届くか)と価格改定の効き
- CCの出荷点数と、BPSの製本・BPO・派遣の売上の動き
- 松江バイオマス発電の稼働と損益
- 政策保有株の売却、自己株式の取得、配当性向
- 新規事業の売上(50億円の目標)
- 原紙・樹脂の価格
倍率と資本コストの決め方
数量(取扱量・出荷点数・発電量)と名目の単価から利益を積み、倍率は式で置いた。今の市場の評価(PBR 0.5倍・PER 7〜8倍)には寄せていない。k は基本7.5%に quality 1.0%(循環0・値決め+0.25・借金0・寿命+0.75)を足した8.5%。同じ領域の文具・オフィス小物(k 7.5〜8.2%)より高いのは、薄利でBPOがAIに置き換わるため。ROEがkを下回る中立・やや悲観は、PERの上限1÷k=11.8倍の約7割・約6割に置いた。強気側もROEがkに届かず、上限の約85%にとどめた。AI代替は数量と寿命に効かせ、確率と倍率には重ねていない。減価償却は物価で増やさない。エナジーの売電価格は固定のため、中立でも1.00倍とした。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→12.12 倍・やや楽観 PER 9→12.12 倍・中立 PER 8.2→12.12 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 1.0% = 8.5%。バイオマスの採算や過去の独禁法違反などの個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。